JP2020143334A - 焼結部品用鉄系粉末及び鉄系焼結部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄系焼結部品に対して低コストで高密度化を達成する。【解決手段】鉄系焼結部品の製造方法は、鉄系原料粉末を作製する原料粉末作製工程と、該原料粉末作製工程で作製された鉄系原料粉末に加工歪を導入して鉄系粉末を作製する歪導入工程と、該歪導入工程を経た鉄系粉末を用いて成形体を成形する成形工程と、成形体を焼結する焼結工程とを有しており、その鉄系粉末は20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa以上300MPa以下である。【選択図】 図2

Description

本発明は、焼結部品用鉄系粉末及び鉄系焼結部品の製造方法に関する。
粉末冶金法で製造される焼結金属の高強度化には、焼結体の高密度化が効果的であることが知られている。そのための方法として、高温成形による成形体(圧粉体)の高密度化や、添加元素の追加、焼結工程では焼結温度の高温化や長時間化による焼結進行による高密度化が行われている。
例えば、特許文献1には、質量割合にてC:0.02%以下、Si:0.10%以下、Mn:0.30%以下、P:0.02%以下、O:0.20%以下の成分を含み、かつ固溶窒素濃度を質量割合にて10ppm以下とした鉄基粉末を80〜250℃の温度で温間成形することにより、成形体の密度を高め、この成形体を焼結することにより最終焼結体の機械的強度を向上することができると記載されている。
また、特許文献2には、鉄系粉末にホウ化物粒子からなるホウ化物粉末を配合した混合粉末を成形して焼結することにより高密度化することが記載されている。この場合、BとFeとが反応して、これらの共晶点以上の温度で粒界に液相が生じることが要因と考えられると述べられている。
特開2003−171741号公報 特開2016−084534公報
しかしながら、特許文献1記載の方法では成形金型を高温に維持する必要があり、また、特許文献2記載の方法では、添加物が必要になるなど、いずれの場合もコスト増を招く。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、鉄系焼結部品に対して低コストで高密度化を達成することを目的とする。
本発明の焼結部品用鉄系粉末は、20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa以上300MPa以下である。
20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa未満では鉄系粉末に十分な加工歪が導入されておらず、焼結時の再結晶による微細化が不十分で、焼結促進効果を十分に得ることが難しい。その圧縮応力が300MPaを超えていると、鉄系粉末の強度が高くなりすぎるため、成形工程時の圧縮性が低下し、クラックが発生して高密度の成形体を得ることが難しい。
焼結部品用鉄系粉末の一つの実施態様は、平均円形度が0.90以上であるとよい。
平均円形度を0.90以上とすることで、成形工程時の充填性や流動性が良好になり、焼結工程で得られる最終的な到達密度を向上させることができる。
本発明の鉄系焼結部品の製造方法は、鉄系原料粉末を作製する原料粉末作製工程と、該原料粉末作製工程で作製された前記鉄系原料粉末に加工歪を導入して、20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa以上300MPa以下となる鉄系粉末を作製する歪導入工程と、該歪導入工程を経た前記鉄系粉末を用いて成形体を成形する成形工程と、前記成形体を焼結する焼結工程とを有する。
原料粉末作製工程で作製された鉄系原料粉末に歪導入工程により加工歪を導入した後、成形・焼結すると、加工歪を受けた鉄系粉末が焼結時の熱により回復、再結晶して結晶粒が微細化し、これによりエネルギが高められて焼結速度が向上する。その結果、得られる焼結体の高密度化及び高強度化を達成することができる。
その製造方法の一つの実施態様として、前記歪導入工程は、前記鉄系原料粉末同士を衝突させることにより加工歪を導入するものとすることができる。
例えばジェットミルを用い、鉄系原料粉末同士をジェット気流中で衝突させることによって、鉄系原料粉末の表面に加工歪を導入することができる。ジェットミルは粉末破砕に広く用いられている装置であり、コスト増を抑制することができる。
また、ジェットミル等で鉄系原料粉末同士を衝突させながら加工歪を導入すると、鉄系原料粉末の表面が滑らかになり、成形密度をより高めることができ、より高密度の焼結部品を作製することができる。
製造方法の他の一つの実施態様として、前記原料粉末作製工程は、前記鉄系原料粉末をアトマイズ法により作製するとよい。
アトマイズ法により低コストで鉄系原料粉末を作製することができ、かつ原料粉末が球形に近くなるため、高密度化に有利である。
本発明によれば、鉄系焼結部品に対して低コストで高密度化を達成することができる。
本発明の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。 加工歪の導入の有無による圧縮歪と応力との関係の違いを示すグラフである。 加工歪を導入した粉末と加工歪を導入していない粉末との焼結時の寸法変化率の違いを示すグラフである。 加工歪導入前の鉄系原料粉末と、加工歪導入後の鉄系粉末との顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
この実施形態の鉄系焼結部品の製造方法は、図1に示すように、鉄系原料粉末を作製する原料粉末作製工程と、該原料粉末作製工程で作製された鉄系原料粉末に加工歪を導入して鉄系粉末を作製する歪導入工程と、該歪導入工程を経た鉄系粉末を用いて成形体(圧粉体)を成形する成形工程と、成形体を焼結する焼結工程とを有する。以下、これらを詳述する。
(原料粉末作製工程)
鉄系原料粉末としては、鉄を主成分とするものであれば特に限定されるものではないが、純鉄粉、ステンレス鋼粉、Fe−Mo合金粉末、Fe−Ni合金粉末、Fe−Cr合金粉末、Fe−Cr−Mo合金粉末等が適用される。
この鉄系原料粉末は、鉄の溶湯を流下させながら空気や窒素ガス等の気体、もしくは水を吹き付けて溶湯を飛散させるなどにより粉末とするアトマイズ法により作製するとよい。アトマイズ法により作製された粉末は、球形に近いため、圧縮性、流動性に優れており、高密度化に有利である。
この工程で得られる鉄系原料粉末は、平均粒径が10μm以上100μm以下、比表面積が1.0m/g以上10.0m/g以下である。
(歪導入工程)
原料粉末作製工程で得られた鉄系原料粉末を粉砕機にかけることにより、鉄系原料粉末に歪を導入して鉄系粉末を作製する。粉砕機としてはジェットミルが好適である。ジェットミルは、粉末破砕に広く用いられている装置であり、コスト増を抑制することができる。このジェットミルにおいては、ハウジング内の高圧ガス気流中に鉄系原料粉末を供給し、鉄系原料粉末同士を衝突させるので、粉末自体を細かく破砕することなく、歪を導入することができる。したがって、ジェットミルで歪を導入した鉄系粉末は、その処理前の鉄系原料粉末からの平均粒径及び粒径分布の変化は少ない。また、衝突により、鉄系粉末の表面は滑らかになる。
このジェットミルによる加工歪の導入に際しては、十分な加工歪を付与するため、ジェットミルのガス圧力は0.3MPa以上1.0MPa以下とするのが好ましい。0.3MPa未満では十分な加工歪を付与することが難しく、焼結性の向上を図れないおそれがある。1.0MPa以下では、加工歪が過度に付与されることとなり、成形性が低下し、成形時にクラックが発生するおそれがある。
この鉄系粉末の平均円形度は、0.90以上である。円形度とは、鉄系粉末を投影した画像における図形の複雑さを表しており、投影像と同じ面積を持つ円の円周とその周囲長により求められ、「円形度=4π×(粒子投影面積)÷(粒子投影周囲長)」で規定される。この円形度の値の50%累積度数を平均円形度として定義した。この円形度は、真円が1.0で最大であり、数値が小さいほど形状が複雑であることを示す。
この平均円形度を0.90以上とすることで、次の成形工程時に金型のキャビティ内への充填性が良好で、成形時の流動性に優れ、最終的な等圧密度を向上させることができる。
また、この歪導入により鉄系粉末は鉄系原料粉末よりも圧縮強度が高くなっている。図2は、歪導入工程を経た粉末(「実施例」と表記)と、歪を導入していない粉末(「比較例」と表記)とを圧縮試験機で圧縮したときの歪と圧縮応力との関係を示すグラフである。歪を導入した粉末は、歪を導入していない粉末に比べて、同じ歪で高い圧縮応力を示すことがわかる。
具体的には、鉄系粉末を圧縮試験機で圧縮し、20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa以上300MPa以下とされる。20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa未満では鉄系原料粉末に十分な加工歪が導入されておらず、焼結時の再結晶による微細化が不十分で、焼結促進効果を十分に得ることが難しい。その圧縮応力が300MPaを超えていると、鉄系原料粉末の強度が高くなりすぎるため、成形工程時の圧縮性が低下し、クラックが発生して高密度の成形体を得ることが難しい。
(成形工程)
金型のキャビティ内に鉄系粉末を充填し、これを圧縮して成形体を形成する。焼結部品が歯車であると、金型にはダイ、コアロッド、上パンチ、下パンチ等が設けられ、これらに囲まれてキャビティが形成される。
この成形に際しては、ステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を有機溶剤に分散させた溶液を金型のキャビティ内面に塗布して成形を行うとよい。その他、成形性を向上させるため、ステアリン酸亜鉛やエチレンビスステアリン酸アミド等の固体潤滑剤を上記原料粉末に2質量%以下の割合で加えても良い。
また、成形時の圧力は、500MPa以上1000MPa以下が好ましい。成形圧力が500MPa未満では所望の高密度を得ることが難しく、1000MPaを超えると金型の損耗が激しくなる。
なお、成形圧力が高い(例えば600MPa以上)場合、歪導入工程を経た粉末で形成した成形体の密度は、歪を導入していない粉末で形成した成形体の密度よりも小さいが、焼結すると、その関係が逆転し、歪導入工程を経た粉末で形成した成形体を焼結したものの方が密度は高くなる。
つまり、歪を導入した鉄系粉末は、前述したように球形に近いため、充填性は良好であり、成形時の圧力が小さい場合でも高い密度で充填されることから、成形体の密度が歪を導入していない粉末の成形体より高くなり、一方、圧縮強度が高いため、成形時のキャビティ内での圧縮性は低く、このため、成形時の圧力が大きい場合は、歪を導入していない粉末の成形体より密度が小さくなるものと想定される。
(焼結工程)
成形工程で得られた成形体を加熱して焼結する。具体的には、窒素−水素混合ガスやRXガス(吸熱型変成ガス)等の還元雰囲気下において、鉄系粉末の融点の0.3倍以上の温度まで昇温し、このピーク温度に5分以上120分以下保持した後、冷却する。
鉄系粉末は先の歪導入工程により加工歪が導入されているので、この焼結工程時の熱により回復、再結晶して結晶粒が微細化し、これによりエネルギが高められて焼結速度が向上する。その結果、得られる焼結体の高密度化及び高強度化を達成することができる。このため、前述の図3に示されるように、成形時圧力が高い場合に、歪を導入した鉄系粉末の成形体の密度が歪を導入していない鉄系粉末の密度より小さいにもかかわらず、焼結体では逆転して高密度となっている。
この焼結工程での温度は、再結晶による結晶粒径の微細化を起こすため、金属の一般的な再結晶開始温度である融点の0.3倍以上の温度での加熱が好ましい。加熱温度の上限は、成形体の形状を維持するため、融点以下が好ましい。
図3は焼結時の寸法変化率を示すグラフであり、加工歪が導入された粉末の成形体(「実施例」と表記)は、500℃付近より高温の温度領域では、歪を導入していない粉末の成形体(「比較例」と表記)より寸法変化率が徐々に小さくなっている。これは、加工歪が導入された粉末が歪を導入していない粉末よりも早い段階で焼結が始まっており、そのための収縮によるものと想定される。つまり、加工歪を導入した粉末は、より低温での焼結性に優れており、例えば1150℃の焼結温度までに焼結が加速して、高密度の焼結部品を得ることができる。
なお、図3において、寸法変化率が急激に変化している箇所(Xで示す910℃付近)は、鉄の相変態によるものである。
また、前述したように、この鉄系粉末はキャビティ内への充填性、流動性が高いので、充填ばらつきや密度偏析も少なく、高精度の焼結部品を得ることができる。
この焼結工程の後、必要に応じて、サイジングやコイニング、穴あけ等の機械加工、表面処理などの後処理が施されて、最終製品となる。
このようにして製造される焼結機械部品は、歪導入工程を付加したことにより、高密度の焼結部品を形成することができ、しかもその歪導入工程ではジェットミル等の粉末冶金で広く用いられている装置を用いることができ、コスト増を抑制することができる。
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
鉄系原料粉末としてHoganas社のアトマイズ鉄紛(ASC100.29)を使用し、ジェットミル(日清エンジニアリング株式会社製SJ−100)により、粉末供給速度500g/時の条件下で、表1に示す所定の供給ガス圧下で加工して、鉄系原料粉末に加工歪を導入して鉄系粉末を得た。得られた鉄系粉末について、平均円形度、20%圧縮時の圧縮応力を測定した。
平均円形度:測定はMalvern社製乾式粒子画像分析装置Morphologi G3Sを用いて20,000粒子を測定した値から平均円形度を求めた。
20%圧縮時の圧縮応力:粉末圧縮硬度測定装置(株式会社セイシン企業製BHT−500)を用いて、10粒子を測定した値の平均値を用いた。
その鉄系粉末を金型に充填し、幅6mm、高さ6mm、長さ30mmの棒状に成形した。この成形に際しては、ステアリン酸亜鉛を有機溶剤に分散させた溶液を金型のキャビティ内面に塗布し、成形を行った。この成形時の圧力は表1の通りとした。
得られた成形体を、窒素−水素混合ガス雰囲気下で、1150℃×30min加熱して焼結を行った。
成形体及び焼結体について、密度、相対密度を求めた。
密度:成形体及び焼結体の重量w(g)及びマイクロメーターにて測定した幅W(cm)、高さH(cm)、長さL(cm)から、密度D(g/cm)をD=w/(W×H×L)により算出した。
相対密度:成形体及び焼結体の密度Dと金属粉末の真密度Dtから、相対密度DRをDR=D/DTにより算出した。
比較例8〜14は歪導入工程を設けずに、原料粉末作製工程で作製した原料粉末をそのまま成形、焼結した。
表1からわかるように、20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa以上300MPa以下である実施例の粉末を用いて得られた焼結体は、その圧縮応力が100MPa未満の比較例8〜16の粉末で得られた焼結体に比べて、成形体から焼結体への相対密度の増加量が大きい。成形時の圧力にもよるが、実施例の粉末で得られた焼結体は、成形体に比べて相対密度が0.007〜0.013増加している。同じ成形圧力であれば、実施例の粉末で得られた焼結体の方が、比較例の粉末で得られた焼結体よりも高い相対密度であった。
また、20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が300MPaを超えた比較例17,18の粉末では、成形圧力が770MPa以上であると、成形時にクラックが発生したが、実施例の粉末では、高い成形圧力でもクラックのない成形体が得られた。
図4の左側の写真は実施例1の原料粉末作製工程で得られた原料粉末であり、右側の写真は、その原料粉末に加工歪を導入した後の粉末である。これらの比較でわかるように、加工歪を導入した後の粉末は表面が滑らかになっている。

Claims (5)

  1. 20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa以上300MPa以下であることを特徴とする焼結部品用鉄系粉末。
  2. 平均円形度が0.90以上であることを特徴とする請求項1に記載の焼結部品用鉄系粉末。
  3. 鉄系原料粉末を作製する原料粉末作製工程と、該原料粉末作製工程で作製された前記鉄系原料粉末に加工歪を導入して、20%圧縮歪を付与したときの圧縮応力が100MPa以上300MPa以下となる鉄系粉末を作製する歪導入工程と、該歪導入工程を経た前記鉄系粉末を用いて成形体を成形する成形工程と、前記成形体を焼結する焼結工程とを有することを特徴とする鉄系焼結部品の製造方法。
  4. 前記歪導入工程は、前記鉄系原料粉末同士を衝突させることにより加工歪を導入することを特徴とする請求項3に記載の鉄系焼結部品の製造方法。
  5. 前記原料粉末作製工程は、前記鉄系原料粉末をアトマイズ法により作製することを特徴とする請求項3又は4に記載の鉄系焼結部品の製造方法。
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