JP2020142439A - フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルムの搬送から巻取りまでの工程において生ずる微小な擦り傷を軽減させることができるフィルムの製造方法を提供する。【解決手段】フィルムの搬送から巻取りまでの工程において、前記フィルムを複数のフリーロールの間を通過させる工程を有するフィルムの製造方法であって、前記複数のフリーロールが、いずれも下記式(1)を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法。t×d×3.14×α/360≧83 (1)(式中、tはロール回転数を53rpmに回転させたフリーロールが停止するまでの時間(秒)、dはフリーロールの直径(cm)、αは抱き角(deg)を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、フィルムの製造方法に関する。
溶融押出成形により得られる無延伸あるいは二軸延伸したアクリルフィルムは、優れた透明性、透湿バリア性、寸法安定性、耐薬品性、表面硬度を有することから各種用途でのフィルムとして利用されている。
このようなフィルム、特に光学用フィルムでは、液晶ディスプレイ用偏光子保護フィルム、有機ELディスプレイ等の表面保護フィルムに用いられるため、フィルム中に含まれる微小なキズが光学的な欠点になり商品価値を下げることから、微小なキズは極力少ないことが望まれている。
例えば特許文献1には、テンターから出たフィルムをロールに巻き取る際に、すべてのロールにおいて、フィルム速度Vf(m/min)とロール周速Vr(m/min)、ロール直径D(m/min)、抱き角α(rad)が1.001<Vr/Vf<1.010およびαD(Vr/Vf−1)/2<0.5をともに満足するフィルム製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、フィルム表面に界面活性剤を有することで、長さ20mm以上かつ最大深さ0.5μm以上のキズが10個/m以下となるポリエステル系光学フィルムの製造方法が開示されている。
特開2010−254395号公報 特開平9−183201号公報
しかしながら、上記特許文献1では、ベアリングに不具合が発生した場合、ロールの回転抵抗が上昇するため、フィルム速度に対してロール周速は遅くなり、擦り傷が発生することがある。特に、摩擦抵抗の低いフィルムでは、ロールとの密着性が低くなり、擦り傷が発生しやすくなる傾向にある。また、ロールが駆動タイプになると、装置費用が高額となる。また、上記特許文献2に記載のポリエステル系光学フィルムの製造方法では、界面活性剤を塗布するための精密コーターや乾燥機が必要となり製品の製造単価が上がることや、製造ラインが長くなること、各種コーティングが後加工において悪影響を及ぼすことがあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルムの搬送から巻取り工程において生ずる微小な擦り傷を軽減させることができるフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の態様を包含する本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[9]を提供するものである。
[1]フィルムの搬送から巻取りまでの工程において、前記フィルムを複数のフリーロールの間を通過させる工程を有するフィルムの製造方法であって、前記複数のフリーロールが、いずれも下記式(1)を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法。
t×d×3.14×α/360≧83 (1)
(式中、tはロール回転数を53rpmに回転させたフリーロールが停止するまでの時間(秒)、dはフリーロールの直径(cm)、αは抱き角(deg)を表す。)
[2]前記フリーロールは、鉄鋼またはアルミニウムの芯材と、当該芯材の表面に施された硬質クロムメッキとを有することを特徴とする上記[1]に記載のフィルムの製造方法。
[3]前記フリーロールの表面粗さ(Ra)が0.8μm以下であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4]前記フリーロールの表面温度が15〜35℃であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
[5]前記フィルムが、アクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
[6]前記フィルムの25℃における貯蔵弾性率が1GPa以上であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
[7]前記フィルムの厚みが10〜300μmであることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
[8]前記フィルムが、溶融押出により製造されたフィルムであることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
[9]前記フィルムが、2.25〜6.25倍に延伸した二軸延伸フィルムであることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
本発明によれば、フィルムの搬送から巻取りまでの工程において生ずる微小な擦り傷を軽減させることができるフィルムの製造方法を提供することができる。
本発明のフィルムの製造方法で用いられる装置の一実施形態を示す模式図である。 本発明のフィルムの製造方法で用いられる装置の他の実施形態を示す模式図である。 実施例8における二軸延伸工程を示す工程図である。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態又は実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。
本発明のフィルムの製造方法は、フィルムの搬送から巻取りまでの工程において、前記フィルムを複数のフリーロールの間を通過させる工程を有するフィルムの製造方法であって、前記複数のフリーロールが、いずれも下記式(1)を満たすことを特徴とする。
t×d×3.14×α/360≧83 (1)
(式中、tはロール回転数を53rpmに回転させたフリーロールが停止するまでの時間(ロール回転時間)(秒)、dはフリーロールの直径(cm)、αは抱き角(deg)を表す。)
図1は、本発明のフィルムの製造方法で用いられる装置の一実施形態を示す模式図であり、図2は、本発明のフィルムの製造方法で用いられる装置の他の実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、押出機1で混練されたフィルム材料は、押出機1で加熱溶融された後、Tダイ4からフィルム状に吐出され、表面を鏡面処理された成形ロールのポリッシングロール5、6、7間で挟持され、加圧及び冷却されて成形される。成形されたフィルムは、さらに、ニップロール8,8’間、フリーロール9、10、11、12、及びニップロール13,13’間を順に通過し、巻取機ロール14で巻き取られる。図1において、フリーロール10は上下に移動可能な移動式フリーロールであり、フリーロール10の位置を変えることにより、フリーロール9、10、11の抱き角を調整することができる。
押出機1とTダイ4の間には、ギアポンプ2、ポリマーフィルター3が配置されていてもよい。
また、図2に示すように、フィルムに延伸処理を行う場合には、ニップロール8とフリーロール9との間に同時二軸延伸機等の延伸機15を配置し、フィルム幅を安定させる場合には、ポリッシングロール6を通過するフィルム材料に静電気を印加できる位置に静電印加装置16を配置してもよい。
前記押出機1は、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機など、公知の押出機を用いることができる。
前記フィルムは、押出機1で混練されたフィルム材料を成形することによって得られる。成形方法は特に限定されない。例えば押出成形(Tダイ法など)、インフレーション成形、ブロー成形、カレンダー成形、キャスト成形、などの公知の成形方法を採用することができ、押出成形法が好ましく採用される。押出成形法、特にTダイ法によれば、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度及び剛性とのバランスに優れたフィルムを得ることができる。押出成形法、特にTダイ法に用いられる押出機1は、単軸スクリュー又は二軸スクリューを有することが好ましい。また、フィルムの着色を抑制する観点から、ベントを使用して減圧下で溶融押出することが好ましい。さらに、均一な厚さのフィルムを得る観点から、押出機1にギアポンプ2を接続し、さらに、フィッシュアイ欠点を低減させるためにポリマーフィルター3を通して溶融押出することが好ましい。さらに、酸化劣化を抑制する観点から、窒素気流下での溶融押出を行うことが好ましい。押出機1から吐出される材料の温度は好ましくは220〜290℃であり、より好ましくは230〜280℃である。
前記ポリッシングロール5、6、7は、鏡面ロールであることが好ましく、表面を鏡面処理された金属弾性ロール又は表面を鏡面処理された金属剛体ロールであることがより好ましい。鏡面ロール間の線圧は、得られるフィルムの表面平滑性の観点から、好ましくは10N/mm以上であり、より好ましく30N/mm以上である。鏡面ロールの表面温度は、得られるフィルムの表面平滑性、ヘーズ、外観などの観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。また、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは110℃以下である。
前記ニップロール8、8’、13、13’は、フィルムを搬送するために駆動力を与える回転自在のロールである。ニップロールとしては、ゴムロール、金属ロール等が挙げられる。
前記フリーロール9、10、11、12は、フィルム搬送用に用いる自身で駆動しないロールである。フィルムの搬送から巻取りまでの工程で用いる全てのフリーロールは下記式(1)を満たす。
t×d×3.14×α/360≧83 (1)
式中、tはフィルムを巻いていない状態でロール回転数を53rpmに回転させたフリーロールが停止するまでの時間(秒)、dはフリーロールの直径(cm)、αは抱き角(deg)を表す。上記式(1)の左辺が83未満であると、フィルムに生じる擦り傷が多くなり、外観不良となるおそれがある。このような観点から、上記式(1)の左辺は好ましくは86以上であり、より好ましくは180以上であり、さらに好ましくは500以上である。
上記式(1)の左辺の上限値は特に制限はないが、通常5000である。
フィルムの搬送から巻取りまでの工程で用いる全てのフリーロールは、上記式(1)を満たせば、ロール回転数を53rpmに回転させたフリーロールが停止するまでの時間t(秒)に制限はないが、この時間が長いほどロールに抵抗がなく回転できることを示すことから、5秒以上であることが好ましく、10秒以上であることがより好ましく、20秒以上であることがさらに好ましい。
ロール回転数を53rpmに回転させたフリーロールが停止するまでの時間(t)(秒)の上限値としては特に制限はないが、通常500秒である。
本工程で用いる全てのフリーロールは、上記式(1)を満たせば、フリーロールの直径に制限はないが、直径8〜25cmのものが好ましく、直径10〜15cmのものがさらに好ましい。直径8cm以上であると同じ抱き角でも接触する距離が長くなりトルクがかけやすくなり、フィルムに擦り傷が発生しにくくなる。また、直径25cm以下であると軽量のアルミニウム製ロールを用いた場合に、ロールとフィルムとの間に発生する滑りが抑えられ、フィルムに擦り傷が発生しにくくなる。
本工程で用いる全てのフリーロールは上記式(1)を満たせば、フリーロールの抱き角に制限はないが、10deg以上であることが好ましく、15deg以上であることがより好ましく、20deg以上であることがさらに好ましい。上限値としては、好ましくは160degである。抱き角を10deg以上とすることによってロールとフィルムとの間で発生する滑りを抑えることができる。
前記フリーロールは、鉄鋼またはアルミニウムの芯材と、当該芯材の表面に施された硬質クロムメッキとを有することが好ましい。芯材が鉄鋼またはアルミニウムであるとコスト削減を図ることができる。特に好ましいのはアルミ芯材からなる軽量のロールである。また、上記芯材の表面に硬質クロムメッキを施すことにより、耐摩耗性、耐腐食性、離型性を向上させることができる。
前記フリーロールの表面粗さ(Ra)は、フィルムへの傷つきに影響するため、好ましくは0.8μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以下であり、よりさらに好ましくは0.05μm以下である。
表面粗さ(Ra)は、JIS B0601:2001に準拠して測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
前記フリーロールの表面温度は、好ましくは15〜35℃である。フリーロールの表面温度が15℃よりも低くなると結露によってロール表面に水滴が発生し、その水滴がフィルムに付着することでフィルム表面を汚すおそれがある。一方、フリーロールの温度が35℃より高くなると、フィルムとロールとの密着性は上がるためフィルムの滑りは改善されるが、一方でフィルムが柔軟になるため、ロールに付着した異物の形状を転写しやすくなるため好ましくない。また、フィルム温度が高い状態でロールに巻き取った場合は、室温放置の際にフィルムの温度が下がるにつれてフィルムは収縮し、ウェブ座屈などの巻取り不良が発生するおそれがある。
前記フィルムは、フィルム状に成形した後、延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理によってフィルムの機械的強度が向上し、ひび割れしにくくなる。延伸処理は、延伸前のフィルムを、MD方向(フィルム製造における機械方向、長さ方向、押出方向)およびTD方向(機械方向と直行する幅方向)に加熱延伸することにより行う。具体的には、複数のクリップを用いて延伸前のフィルムを一定間隔ごとに把持して加熱炉内に搬送し、次に延伸炉内にてMD方向とTD方向を同時に引っ張ることで延伸する。その後、冷却炉内にてフィルムを冷却することで連続的に延伸フィルムを得ることができる。また、延伸処理の後に熱固定を行うことが好ましい。熱固定によって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法などが挙げられる。延伸時の温度は、好ましくはフィルム材料のガラス転移温度以上であり、好ましくは材料のガラス転移温度より50℃高い温度以下である。フィルム材料が複数のガラス転移温度を有する場合、最も高い値を係る延伸温度の基準として採用する。延伸の速度は好ましくは100〜5000%/分である。
また、延伸倍率は、機械的強度やひび割れのしにくさの観点から、MD方向及びTD方向各々好ましくは2.25〜6.25倍であり、より好ましくは2.3〜5.6倍である。
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムに好適に適用される。前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂には特に制限はなく、例えば、ポリカーボネート;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、スチレン−マレイミド樹脂、スチレン系熱可塑エラストマー等の芳香族ビニル系樹脂又はその水素添加物;非晶性ポリオレフィン、結晶相を微細化した透明なポリオレフィン、エチレン−メタクリル酸メチル樹脂等のオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸などで部分変性されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のエステル系樹脂;アミド系樹脂;イミド系樹脂;エーテルサルホン系樹脂;トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂;フェニレンオキサイド系樹脂などが挙げられるが、透明性及び成形性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
なお、本明細書において(メタ)アクリル系樹脂とはメタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を指す。
<(メタ)アクリル系樹脂(A)>
前記フィルムを構成する熱可塑性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有する樹脂であれば特に制限はないが、耐熱性を向上させる観点から、例えば、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主体とするものが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A)がメタクリル酸メチルに由来する構造単位を主体とする場合、その含有量は、耐熱性を向上させる観点から、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、全ての構造単位がメタクリル酸メチル単位であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチル以外の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、メタクリル酸メチルと共重合可能であれば特に制限なく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸又はその酸無水物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテン等のオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセン等の共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸エステルであることが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、及びアクリル酸sec−ブチルがより好ましい。
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂(A)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併せて使用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、無水マレイン酸等のように分子中に環構造を有する化合物に由来する構造単位とを含有する重合体であってもよい。分子中に環構造を有する化合物に由来する構造単位を含有することによって(メタ)アクリル系樹脂(A)及び得られるフィルムの耐熱性が向上する。(メタ)アクリル系樹脂(A)が分子中に環構造を有する化合物に由来する構造単位を含有する場合、分子中に環構造を有する化合物に由来する構造単位の(メタ)アクリル系樹脂(A)中の総含有量は、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%である。
分子中に環構造を有する化合物に由来する構造単位としては、>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む化合物に由来する構造単位、−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む化合物に由来する構造単位、−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む化合物に由来する構造単位、及び>CH−O−CH<基を環構造に含む化合物に由来する構造単位であることが好ましい。分子中に環構造を有する化合物に由来する構造単位は、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等のような重合性不飽和炭素−炭素二重結合を有する環状単量体をメタクリル酸メチル等と共重合させることによって、又は重合によって得られた(メタ)アクリル系樹脂(A)の分子鎖の一部を分子内縮合環化させることによって、(メタ)アクリル系樹脂(A)に含有させることができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)が、メタクリル酸メチル以外の他の単量体に由来する構造単位を含む場合、その含有量は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることがよりさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性と成形性のバランス等の観点から、80〜140℃であることが好ましく、100〜135℃であることがより好ましく、105〜130℃であることがさらに好ましく、105〜125℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度はメタクリル酸メチルと共重合する単量体の種類や量を変更することや、重合温度等により立体規則性を変更すること等によって調整することができる。
ガラス転移温度はJIS K7121:2012に準拠して測定することができる。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂を200℃まで一度昇温し、次いで30℃以下まで冷却し、その後30℃から200℃までを10℃/分で昇温させる条件にて、示差走査熱量測定法によりDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度とすることができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の立体規則性に特に制限はなく、例えば、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチック等の立体規則性を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は60,000〜150,000であることが好ましい。重量平均分子量が前記下限値以上であることによって機械物性が高くなり、前記上限値以下であることによって溶融粘度が低くなり加工性が向上する。重量平均分子量は、前記観点から、85,000〜120,000であることがより好ましく、90,000〜100,000であることがさらに好ましい。
なお、(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造方法に特に制限はなく、例えば、メタクリル酸メチルを主体とする単量体を重合することによって得ることができる。なお、(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、重合開始剤及び連鎖移動剤の量等によって調整することができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造に用いる重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に制限はなく、例えばtert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造に用いる連鎖移動剤としては、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等のアルキルメルカプタン類等が挙げられる。これらのうちn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の単官能アルキルメルカプタンが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)としては、市販品を用いてもよく、例えば「パラペットH1000B」〔MFR:22g/10分(230℃、37.3N)〕、「パラペットGF」〔MFR:15g/10分(230℃、37.3N)〕、「パラペットEH」〔MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N)〕、「パラペットHRL」〔MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N)〕、「パラペットHRS」〔MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N)〕及び「パラペットG」〔MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N)〕[いずれも商品名、株式会社クラレ製]等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂のほかにゴム粒子を含むことができる。特に熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂(A)である場合、分散性等の観点から、ゴム粒子はアクリル系ゴム粒子(B)であることが好ましく、たとえば、国際公開第2014/167868号、国際公開第2017/204243号などに記載のアクリル系多層重合体粒子、多層構造重合体をアクリル系ゴム粒子(B)として用いることができる。
<熱可塑性樹脂組成物>
前記熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂(A)とアクリル系ゴム粒子(B)を含むもの((メタ)アクリル系樹脂組成物)であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A)とアクリル系ゴム粒子(B)との質量比〔(A)/(B)〕は、成形性、フィルムの力学物性、及び耐熱性の観点から、5/95〜95/5であることが好ましく、30/70〜90/10であることがより好ましく、50/50〜85/15であることがさらに好ましく、60/40〜84/16であることがよりさらに好ましく、77/23〜83/17であることが特に好ましい。
また成形性や得られたフィルムの力学物性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂組成物中の(メタ)アクリル系樹脂(A)及びアクリル系ゴム粒子(B)の含有量は、それぞれ以下の範囲であることが好適である。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂(A)は5〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、60〜90質量%であることがさらに好ましく、アクリル系ゴム粒子(B)の含有量は95〜5質量%であることが好ましく、70〜10質量%であることがより好ましく、40〜10質量%であることがさらに好ましい。本発明の製造方法によれば、アクリル系ゴム粒子が少ない場合(たとえばアクリル系ゴム粒子の含有量が30〜10質量%)であっても、微小な擦り傷を抑制することが可能となる。
<添加剤>
前記フィルムを構成する熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。添加剤の種類は特に限定されず、例えば、紫外線吸収剤、高分子加工助剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、艶消し剤、充填剤、耐衝撃助剤、及び可塑剤等が挙げられる。添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加剤は有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよいが、樹脂組成物中での分散性の観点から、有機化合物であることが好ましい。
本発明の製造方法が適用されるフィルムの25℃における貯蔵弾性率は、1GPa以上であることが好ましく、1.5GPa以上であることがより好ましく、2GPa以上であることがさらに好ましい。25℃における貯蔵弾性率が、1GPa以上であるとフィルムを搬送する際の引取り張力によるしわの発生を抑えることができ、外観を良好にすることができる。
なお、フィルムの25℃における貯蔵弾性率の上限値としては特に制限はないが、通常7GPaである。
上記貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
フィルムの厚みは、偏光板などの寸法安定性や、液晶表示装置の色味変化を減少させる観点から、10μm〜300μmであることが好ましく、より好ましくは15〜150μmであり、さらに好ましく20〜70μmである。また、厚みむらはMD方向、TD方向いずれも厚みの±4μm以下であることが好ましく、より好ましくは±2μm以下であり、さらに好ましくは±1μm以下である。フィルムの厚みむらが大きくなるとフィルムを巻き取ったロールが凹凸形状となることでしわが発生したり、フィルム表面に傷がつき品質を低下させるため好ましくない。
本発明の製造方法により得られるフィルムは、擦り傷が少ないため、各種光学部材に好適に用いることができる。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の端末の液晶画面の前面板;液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光フィルム透明樹脂シート、位相差フィルム、光拡散フィルム、プリズムシート、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルム、透明導電フィルム等の液晶ディスプレイ用フィルム等として液晶表示装置周辺;表面保護フィルム等の情報機器分野;有機EL用フィルムとして有機EL装置周辺等の公知の光学的用途に適用できる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせてなるすべての態様を包含する。
なお、実施例及び比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
(重量平均分子量 Mw)
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZM−M」と「SuperHZ4000」を直結
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.35mL/分
・サンプル濃度:8mg/10mL
・カラム温度 :40℃
(ガラス転移温度)
JIS K7121:2012に準拠して、(メタ)アクリル系樹脂を200℃まで一度昇温し、次いで30℃以下まで冷却し、その後30℃から200℃までを10℃/分で昇温させる条件にて、示差走査熱量測定法によりDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を、ガラス転移温度とした。
(平均粒子径)
平均粒子径は、試料粒子を含むラテックスを水で200倍に希釈し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名「LA−950V2」)を用いて25℃で係る希釈液を分析し、粒子径を測定した。この際、アクリル系ゴム粒子(B−1)及び水の絶対屈折率をそれぞれ、1.4900、1.3333とした。
(ロール回転時間)
ロール回転時間は、フィルムを巻いていない状態の金属フリーロールを素手で53rpm以上になるよう回転させた後、回転数が53rpmから回転停止までの時間をストップウォッチで計測した。
(抱き角)
フィルムとフリーロールとが接触する部分の円弧をタコ糸で測定し、下記式(2)により抱き角(deg)を求めた。
抱き角(deg)=円弧(cm)×360/(ロール直径(cm)×3.14) (2)
(フリーロールの表面粗さ(Ra))
JIS B0601:2001に準拠して、小形表面粗さ測定機(サーフテストSJ−210、株式会社ミツトヨ製)を使用し、測定速度0.25mm/s、測定長さ2.5mmにて測定し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(2.5mm)だけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(X)で表したときに、下記式(3)により算出した。なお、式中、lは基準長さを示す。
ロール表面の表面粗さは、ロール長手方向の表面粗さを測定した。
(フリーロールの表面温度)
フィルム製膜を30分間実施した後に装置を停止し、ハンディタイプ接触式温度計(DP−350、理化工業株式会社製)を使用してフリーロールの表面温度の測定を行った。
(擦り傷)
縦×横1mに切り出したフィルムを架台に吊るし、ポラリオン製、ポラリオンライト(型式NP−1、ハロゲンランプ35W)を照射し、目視にて擦り傷を観察した。擦り傷の長さはノギスにて測定した。観察環境は暗幕で囲った検査室で行ない、以下の通り評価した。
なお、下記評価基準でAおよびBを合格とした。
[評価基準]
A:擦り傷なし
B:長さ3mm未満の擦り傷がある
C:長さ3mm以上の擦り傷がある
(フィルム厚み)
フィルムの、中央部、両端部から100mmの位置の厚みをマイクロメーター(ミツトヨ社製、型番:MDH−25)で測定し、その平均値をフィルム厚みとした。
(25℃における貯蔵弾性率)
フィルムを縦15mm×横5mmに切り出した試験片について、動的粘弾性測定装置(Rheogel-E4000、株式会社ユービーエム製)を使用し、測定方法:引張り、周波数:1Hz、昇温速度:3℃/minにて、当該試験片の−50〜200℃の貯蔵弾性率を測定し、25℃における貯蔵弾性率の値を求めた。
<製造例1:(メタ)アクリル系樹脂(A−1)の製造>
メタクリル酸メチル99.3質量部及びアクリル酸メチル0.7質量部に重合開始剤〔2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃〕0.008質量部、及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.26質量部を加え、溶解させて3000kgの原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部、及び懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて6000kgの混合液を得た。耐圧重合槽に、当該混合液と前記原料液(合計9000kg)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行うことによりビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル系樹脂(A−1)を得た。
得られた(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、メタクリル酸メチル単位の含有量が99.3質量%、アクリル酸メチル単位の含有量が0.7質量%であり、重量平均分子量(Mw)が92,000、ガラス転移温度は120℃であった。
<製造例2:(メタ)アクリル系樹脂(A−2)の製造>
使用した単量体をメタクリル酸メチル100質量部に変更し、連鎖移動剤の量を0.20質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂(A−2)を得た。
得られた(メタ)アクリル系樹脂(A−2)は、メタクリル酸メチル単位の含有量が100質量%であり、重量平均分子量(Mw)が100,000、ガラス転移温度は121℃であった。
<製造例3:アクリル系ゴム粒子(B−1)の製造>
(1)内層の合成
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.3質量部及び炭酸ナトリウム0.7質量部(合計2100kg)を仕込み、反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで内温を80℃にした。そこに、過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間撹拌した。これに、メタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%及びメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物245質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)弾性体層の合成
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した。その後、アクリル酸n−ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%及びメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(3)外層の合成
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%及びn−オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
以上の操作によって、アクリル系ゴム粒子(B−1)を含むラテックスを得た後、アクリル系ゴム粒子(B−1)を含むラテックスを凍結して凝固させた。次いで水洗、及び乾燥してアクリル系ゴム粒子(B−1)を得た。当該粒子の平均粒子径は0.23μm、グラフト率は23%であった。
(実施例1)
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)80質量部、アクリル系ゴム粒子(B−1)20質量部、紫外線吸収剤((株)ADEKA製 アデカスタブLA−31)2質量部、及び高分子加工助剤(ダウ・ケミカル社製 パラロイドK−125P)1.5質量部をヘンシェルミキサーで混合し、230℃に設定されたスクリュー径58mmのベント付き二軸押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。係るペレットを図1に示すようにベント付き単軸押出機1のホッパーに供給し、260℃で溶融混練してギアポンプ2、ポリマーフィルター3の順に通過させ、リップ開度1mmのTダイ4からフィルム状に吐出し、表面を鏡面処理された金属弾性ロール5(表面温度:95℃)と表面を鏡面処理された金属剛体ロール6(表面温度:90℃)でバンク無く30N/mmの線圧で挟持、金属剛体ロール7(表面温度:85℃)で冷却、ゴムロール8でニップした後、金属フリーロール9(回転時間60秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)、移動式金属フリーロール10(回転時間55秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)、金属フリーロール11(回転時間82秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)、金属フリーロール12(回転時間75秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)、およびゴムロール13とフィルムを通過させ巻取り機14で巻取り、厚み60μmのロール状フィルムを得た。3本の金属フリーロールと1本の移動式金属フリーロールの抱き角は全て90degになるように設置した。また、各フリーロールの表面温度は全て28℃であった。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、各フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は確認されなかった。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(実施例2)
実施例1の製造方法において、移動式金属フリーロール10のベアリングを交換し、回転時間が29秒になるように調整した後、フリーロール10を上側に移動させて、各フリーロールの抱き角を、フリーロール9が75deg、フリーロール10が60deg、フリーロール11が75degになるように変更した以外は実施例1と同様にして厚み60μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は観察されなかった。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(実施例3)
実施例1の製造方法において、移動式金属フリーロール10のベアリングを交換し、回転時間が61秒になるように調整した後、フリーロール10を上側に移動させて、各フリーロールの抱き角を、フリーロール9が56deg、フリーロール10が22deg、フリーロール11が56degになるように変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み60μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は観察されなかった。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(実施例4)
実施例1の製造方法において、移動式金属フリーロール10のベアリングを交換し、回転時間が70秒になるように調整した後、フリーロール10を上側に移動させて、各ロールの抱き角を、フリーロール9が51deg、フリーロール10が12deg、フリーロール11が51degになるように変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み60μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は観察されなかった。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(実施例5)
実施例1の製造方法において、移動式金属フリーロール10のベアリングを交換し、回転時間が136秒になるように調整した後、フリーロール10を上側に移動させて、各ロールの抱き角を、フリーロール9が52deg、フリーロール10が13deg、フリーロール11が52degになるように変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み60μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は観察されなかった。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(比較例1)
実施例1の製造方法において、移動式金属フリーロール10のベアリングを交換し、回転時間が11秒になるように調整した後、フリーロール10を上側に移動させて、各ロールの抱き角を、フリーロール9が80deg、フリーロール10が70deg、フリーロール11が80degになるように変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み60μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりで、フリーロール10の式(1)の左辺が81であり、長さ3mm以上の擦り傷が多数観察された。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(実施例6)
実施例1の製造方法において、移動式金属フリーロール10を直径20cmのロールに変更し、ベアリング交換で回転時間を7秒に変更し、さらにフリーロール9〜12をいずれも周速33m/分になるように調整した後、フリーロール10を上側に移動させて、各ロールの抱き角を、フリーロール9が80deg、フリーロール10が70deg、フリーロール11が80degになるように変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み60μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は3mm未満のものは観察されたが、3mm以上のものは観察されなかった。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(実施例7)
実施例6の製造において、移動式金属フリーロール10のベアリングを交換し、回転時間を10秒になるように調整した。各ロールの抱き角は実施例6と同じ、フリーロール9が80deg、フリーロール10が70deg、フリーロール11が80degになるように設置したこと以外は実施例6と同様にして厚み60μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は観察されなかった。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は2.2GPaであった。
(実施例8)
(メタ)アクリル系樹脂(A−2)97.5質量部、ポリカーボネート(住化ポリカーボネート(株)製 SDポリカ301−40)0.8質量部、フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製 YP−50S)2.8質量部、高分子加工助剤(三菱ケミカル(株)製 メタブレンP550A)2質量部、及び紫外線吸収剤(ADEKA(株)製 アデカスタブLA−F70)0.9質量部をヘンシェルミキサーで混合し、230℃に設定されたスクリュー径58mmのベント付き二軸押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。係るペレットを図2に示すように、ベント付き単軸押出機1のホッパーに供給し、260℃で溶融混練してギアポンプ2、ポリマーフィルター3の順に通過させ、リップ開度1mmのTダイ4からフィルム状に吐出し、ポリッシングロール6で静電印加装置16を使用してフィルムの両端部を帯電させることでロールと密着させてフィルムの幅を安定させた。その後、図3に示すように当該フィルムを複数のクリップ17を用いて一定間隔ごとに把持し、同時二軸延伸機(東芝機械(株)製)15へ搬送し、図3に示す予熱工程を145℃、二軸延伸工程を145℃、延伸倍率がMD方向に2.4倍、TD方向に2.4倍、冷却工程を80℃で搬送させた後、金属フリーロール9(回転時間60秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)、移動式金属フリーロール10(回転時間61秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)、金属フリーロール11(回転時間82秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)、金属フリーロール12(回転時間75秒、周速20m/分、直径12cm、ロール芯材:アルミニウム製、表面処理:硬質クロムメッキ、表面粗さ(Ra):0.03μm)およびゴムロール13とフィルムを通過させ、巻取り機14で巻取り、厚み40μmのロール状フィルムを得た。各フリーロールの抱き角を、フリーロール9が56deg、フリーロール10が22deg、フリーロール11が56deg、フリーロール12が90degになるように各フリーロールを設置した。また、各フリーロールの表面温度は全て25℃であった。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりであり、各フリーロールの式(1)の左辺は全て83以上であり、擦り傷は確認されなかった。また、当該フィルムの貯蔵弾性率は3.1GPaであった。
(比較例2)
実施例8の製造において、移動式金属フリーロール10のベアリングを交換し、回転時間を13秒になるように調整した後、フリーロール10を上側に移動させて、各ロールの抱き角を、フリーロール9が75deg、フリーロール10が60deg、フリーロール11が75degになるように変更したこと以外は実施例8と同様にして厚み40μmのロール状フィルムを得た。式(1)の左辺の計算結果は表1のとおりで、フリーロール10の式(1)の左辺が82であり、長さ3mm以上の擦り傷が多数観察された。また、当該フィルムの25℃における貯蔵弾性率は3.1GPaであった。
本発明の製造方法により得られるフィルムは、微小な擦り傷が軽減され、外観品位の優れたフィルムとして利用可能である。
1 押出機
2 ギアポンプ
3 ポリマーフィルター
4 Tダイ
5 ポリッシングロール(金属弾性ロール)
6、7 ポリッシングロール(金属剛体ロール)
8’、13’ ニップロール(金属ロール)
8、13 ニップロール(ゴムロール)
9、11、12 フリーロール(金属フリーロール)
10 移動式フリーロール(移動式金属フリーロール)
14 巻取機ロール
15 延伸機(同時二軸延伸機)
16 静電印加装置
17 クリップ

Claims (9)

  1. フィルムの搬送から巻取りまでの工程において、前記フィルムを複数のフリーロールの間を通過させる工程を有するフィルムの製造方法であって、
    前記複数のフリーロールが、いずれも下記式(1)を満たすことを特徴とするフィルムの製造方法。
    t×d×3.14×α/360≧83 (1)
    (式中、tはロール回転数を53rpmに回転させたフリーロールが停止するまでの時間(秒)、dはフリーロールの直径(cm)、αは抱き角(deg)を表す。)
  2. 前記フリーロールは、鉄鋼またはアルミニウムの芯材と、当該芯材の表面に施された硬質クロムメッキとを有することを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 前記フリーロールの表面粗さ(Ra)が0.8μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 前記フリーロールの表面温度が15〜35℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  5. 前記フィルムが、アクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  6. 前記フィルムの25℃における貯蔵弾性率が1GPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  7. 前記フィルムの厚みが10〜300μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  8. 前記フィルムが、溶融押出により製造されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  9. 前記フィルムが、2.25〜6.25倍に延伸した二軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
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