JP5965612B2 - 光学フィルム及びその製造方法 - Google Patents
光学フィルム及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5965612B2 JP5965612B2 JP2011240369A JP2011240369A JP5965612B2 JP 5965612 B2 JP5965612 B2 JP 5965612B2 JP 2011240369 A JP2011240369 A JP 2011240369A JP 2011240369 A JP2011240369 A JP 2011240369A JP 5965612 B2 JP5965612 B2 JP 5965612B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- carbon atoms
- film
- resin
- thermoplastic resin
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Polarising Elements (AREA)
Description
[1]アクリル系熱可塑性樹脂を含有する光学フィルムであり、アクリル系熱可塑性樹脂が、その総量基準で、下記式(1)で表される第一の構造単位50〜95質量%と、下記式(2)で表される第二の構造単位0.1〜20質量%と、下記式(3)で表される第三の構造単位0.1〜49.9質量%と、を有し、
[式中、R1は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記A群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基を示す。
A群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基及び炭素数1〜12のアルキル基。]
[式中、R2は、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示し、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
B群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基。]
[式中、R5は、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は、下記C群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基、を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
C群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基。]
JIS P−8115に従って測定される耐折回数が、フィルム長手方向及びフィルム幅方向のいずれも1回以上であり、
ASTM D−1003に従って測定される曇度が2.0%以下であり、
下記式(a)で表される面内方向の位相差(Re)の絶対値が20nm以下、かつ、下記式(b)で表される厚さ方向の位相差(Rth)の絶対値が20nm以下である、光学フィルム。
Re=(Nx−Ny)×d (a)
Rth=〔(Nx+Ny)/2−Nz〕×d (b)
[式中、NxはX軸方向の屈折率、NyはY軸方向の屈折率、NzはZ軸方向の屈折率をそれぞれ示し、dは厚さを示す。]
[2]第三の構造単位の含有量に対する第二の構造単位の含有量のモル比が、0より大きく15以下である、[1]に記載の光学フィルム。
[3]R1が、メチル基又はベンジル基であり、R2が、フェニル基又はB群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有するフェニル基であり、R5が、シクロヘキシル基である、[1]又は[2]のに記載の光学フィルム。
[4]耐折回数がフィルム長手方向及びフィルム幅方向のいずれも10回以上であり、曇度が1.5%以下であり、Reの絶対値が10nm以下であり、Rthの絶対値が10nm以下であり、dが5μm〜200μmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学フィルム。
[5]アクリル系熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが125℃以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光学フィルム。
[6]溶融インフレーション法により製造されたものである[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルム。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法であって、
上記アクリル系熱可塑性樹脂を含む原料樹脂を、ダイリップ出口における原料樹脂の温度が、該原料樹脂の溶融張力が50mN以上600mN以下となる温度でダイリップを通して押出し、円筒状の溶融樹脂を押出す工程と、上記溶融樹脂を、フィルム幅方向の延伸倍率2.0倍以上、かつ、フィルム長手方向の延伸倍率1.5倍以上で、連続して延伸する工程と、を有する光学フィルムの製造方法。
[8][1]〜[6]のいずれかに記載の光学フィルムよりなる偏光板保護フィルム。
[9][1]〜[6]のいずれかに記載の光学フィルムよりなる透明プラスチック基板。
本実施形態の光学フィルムは、アクリル系熱可塑性樹脂を含有する。アクリル系熱可塑性樹脂は、第一の構造単位、第二の構造単位及び第三の構造単位を有する。以下、各構造単位について説明する。
第一の構造単位は、下記式(1)で表される構造単位である。
式中、R1は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記A群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基を示す。ここで、A群は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群である。
第二の構造単位は、下記式(2)で表される構造単位である。
式中、R2は、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示し、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。B群は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基からなる群である。
第三の構造単位は、下記式(3)で表される構造単位である。
式中、R5は、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は、下記C群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基、を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。C群は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群である。
アクリル系熱可塑性樹脂は、上記以外の構造単位をさらに含有していてもよい。例えば、アクリル系熱可塑性樹脂は、発明の目的を損なわない範囲で、上記第一、第二及び第三の単量体と共重合可能なその他の単量体に由来する構造単位を、さらに有していてもよい。以下、アクリル系熱可塑性樹脂中の第一、第二及び第三の構造単位以外の構造単位を、第四の構造単位と称する。
(光弾性係数)
アクリル系熱可塑性樹脂を成形して得られるフィルム又はシート状の成形体の光弾性係数の絶対値は、3.0×10−12Pa−1以下であることが好ましく、2.0×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、1.0×10−12Pa−1以下であることがさらに好ましい。
CR=|Δn|/σR
|Δn|=nx−ny
式中、CRは光弾性係数、σRは伸張応力、|Δn|は複屈折の絶対値、nxは伸張方向の屈折率、nyは伸張方向と垂直な屈折率を、それぞれ示す。
アクリル系熱可塑性樹脂を成形して得られるフィルムを一軸延伸したときに発現する複屈折(Δn(S))と延伸倍率(S)との最小二乗法近似直線関係式(A)の傾きから求められる複屈折変化率Kの絶対値が、下記式(B)を満たすことが好ましい。
Δn(S)=K×S+C (A)
|K|≦0.30×10−5 (B)
式中、Cは定数であり無延伸時の複屈折値を示す。複屈折とは、フィルムとして測定した値を100μm厚に換算して求めた値である。
アクリル系熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が125℃以上であることが好ましい。アクリル系熱可塑性樹脂のTgが125℃以上あれば、近年のレンズ成形体、液晶ディスプレイ用フィルム成形体光学フィルムとして必要十分な耐熱性をより容易に得ることができる。使用環境温度下での寸法安定性の観点から、アクリル系熱可塑性樹脂のTgは、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上である。一方、アクリル系熱可塑性樹脂のTgの上限は、好ましくは180℃以下である。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤やアクリル系熱可塑性樹脂以外の樹脂と混合して、アクリル系熱可塑性樹脂組成物として用いることもできる。すなわち、アクリル系熱可塑性樹脂組成物は、アクリル系熱可塑性樹脂と同様の耐熱性及び光学特性を有することが望ましい。
本実施形態の光学フィルムは、インフレーション法により製造することができる。インフレーション法による樹脂フィルムの製造工程については、例えば、「実用プラスチック成型加工事典」(株式会社産業調査会事典出版センター、1997年3月24日発行、199〜202頁参照)に技術開示がなされている。
(i)原料樹脂である溶融樹脂のダイリップ出口における温度を溶融張力(溶融樹脂を一定速度で延伸した時の応力を測定することにより求められる値)が50mN以上600mN以下となる温度に調整し、溶融樹脂を押し出す。
(ii)押し出した溶融樹脂を連続してフィルム幅方向(TD方向)の延伸倍率(BUR)が2.0倍以上、かつフィルムの長手方向(MD方向)の延伸倍率(DDR)が1.5倍以上になるように、ダイリップのクリアランス、樹脂の押出量、注入する空気量、及びピンチロールによるフィルムの巻き取り速度を調整し、バブル状に膨らませる。
DDR=(バブルを形成し、冷却した後のフィルムをピンチロールで巻き取る速度)/(押出量とダイリップ開口部面積とから算出される、ダイ出口から流れ出る溶融樹脂のMD方向の速度)。
BUR=(最終的に得られるチューブ状フィルムを切り開き、フラット状にした時のフィルムの全幅)/(外側ダイリップ周長と内側ダイリップ周長との平均値)。
(iii)原料樹脂である溶融樹脂のダイリップ出口における温度を溶融張力が100mN以上500mN以下となる温度に調整し、溶融樹脂を押し出す。
(iv)押し出した溶融樹脂を連続してBURが3.0倍以上、かつ、DDRが2.0倍以上になるように、ダイリップのクリアランス、樹脂の押出量、注入する空気量、及びピンチロールによるフィルムの巻き取り速度を調整し、バブル状に膨らませる。
(a)非接着性の樹脂層による断熱効果と、膜強度向上の効果とでインフレーション時の製膜安定性を向上できる点。
(b)製膜時に空気中のチリ、浮遊物、ゴミ、添加剤等の気化物、その他の異物がフィルムに付着するのを防ぐ効果がある点。
(c)製膜後の取り扱い時のフィルム表面の傷つき防止、及び、ゴミ等の異物の付着防止の効果がある点。
(フィルムの厚み)
本実施形態の光学フィルムの厚みは、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。厚みが5μm以上であれば、実用上十分な強度が確保でき、取り扱い時に容易に破断しにくい。また、光学フィルムの厚みが200μm以下であれば、上述した位相差(Re、Rth)、耐折強度及び曇度(Haze)の全てにおいて、良好なバランスとなる。
本実施形態の光学フィルムは、下記式(a)で表される面内方向の位相差(Re)の絶対値が20nm以下である。
Re=(Nx−Ny)×d (a)
式(a)中、NxはフィルムのX軸方向の屈折率を、NyはフィルムのX軸方向の屈折率を示す。X軸とは、フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸とはフィルムの面内においてX軸に対して垂直な軸方向である。dはフィルムの厚さを示す。
本実施形態の光学フィルムは、下記式(b)で表される厚さ方向の位相差(Rth)の絶対値が20nm以下である。
Rth=〔(Nx+Ny)/2−Nz〕×d (b)
式(b)中、NxはX軸方向の屈折率を、NyはY軸方向の屈折率を、NzはZ軸方向の屈折率をそれぞれ示す。X軸とは、フィルムの面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸とはフィルムの面内においてX軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、X軸、Y軸に垂直な厚さ方向である。dはフィルムの厚さを示す。
フィルムの耐折強度は、フィルムを所定の条件で折り曲げする耐折試験により評価することができる。本実施形態の光学フィルムは、JIS P−8115に従って測定した耐折回数が、フィルムのMD方向及びTD方向のいずれも1回以上である。耐折強度は、MD方向及びTD方向がいずれも10回以上であることがより好ましく、30回以上であることがさらに好ましい。MD方向及びTD方向のいずれかの耐折強度が1回未満であると、その方向へ1回曲げただけで割れてしまうため、取り扱い性が極めて悪いものとなる。
本実施形態の光学フィルムは、ASTM D−1003で測定したHaze(%)が、2.0%以下である。フィルムのHazeは、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。フィルムのHazeが2.0%を超えると、液晶表示装置の画像形成面に使用された場合、輝度が低くなり、光学特性が低下する。Hazeを低く抑えるためには、材料樹脂として透明性の高い樹脂を選択すること、さらにはフィルム表面をより平滑化し、表面における光の散乱を低減することが挙げられる。
本実施形態の光学フィルムは、雰囲気温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内で96時間放置した際、試験前後におけるフィルムのRthの変化量が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の光学フィルムは、上述したアクリル系熱可塑性樹脂やアクリル系熱可塑性樹脂組成物を含む単層のフィルム構成としてもよいが、その他、所定の基材や機能層に上記アクリル系熱可塑性樹脂を含む層を積層した多層構成として用いてもよい。例えば、ガラス、ポリオレフィン樹脂及びガスバリア性に優れる樹脂(エチレンビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等)の基材に、アクリル系熱可塑性樹脂を含むフィルムを、接着剤を介して積層することができる。また、アクリル系熱可塑性樹脂を含む原料樹脂とを、上記基材を形成する樹脂とを多層共押出成形を行うことにより積層構成として実用に供することができる。
本実施形態の光学フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等のディスプレイデバイス用のフィルムとして利用できる。さらに、偏光子保護フィルムのように、フィルム単独で使用する場合の他、視野角拡大フィルム、導電性フィルム等、所定の機能膜を積層されて用いられるフィルムの支持体となるフィルムとしても利用できる。
(調製例1:メタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド/N−シクロヘキシルマレイミド共重合体)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、原料溶液導入ノズル、開始剤溶液導入ノズル及び重合溶液排出ノズルを備えたSUS製重合反応器(容量0.5L)を用いた。SUS製重合反応器の圧力は、微加圧、反応温度はオイルバスで130℃に制御した。
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、原料溶液導入ノズル、及び開始剤溶液導入ノズルを備えたガラス製重合反応器(容量1.0L)を用いた。ガラス製重合反応器の圧力は、微加圧、反応温度はオイルバスで100℃に制御した。
調整例1において、メタクリル酸メチル960g、メチルイソブチルケトン240gのみを用いた以外は、調製例1と同様の操作を行ってアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
公知の方法(例えば、特公昭63−1964号公報に記載の方法)で、単量体としてメタクリル酸メチル、スチレン及び無水マレイン酸を用いて、目的とするアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
重合により得られたアクリル系熱可塑性樹脂をCDCl3に溶解し、ブルーカー株式会社製、商品名「DPX−400」を用い、1H−NMR、13C−NMR(測定温度:40℃)測定を実施し、第一の構造単位、第二の構造単位、第三の構造単位及び第四の構造単位の量をそれぞれ同定し、その比率から組成を確認した。
重合により得られたアクリル系熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー(株)製、商品名「HLC−8220」)を用いて、展開溶媒テトラヒドロフラン、設定温度40℃で、市販の標準PMMA換算により求めた。
アクリル系熱可塑性樹脂として、下記表1に示すメタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド/N−シクロヘキシルマレイミド共重合体又はメタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド/N−シクロヘキシルマレイミド/スチレン共重合体を用いて光学フィルムを作製した。本実施例では、中間層をアクリル系熱可塑性樹脂層とし、両外層をポリプロピレン層とする2種3層構成のフィルムをインフレーション法で作製し、得られた1枚の2種3層フィルムから、外側の2枚のポリプロピレン層を剥がし、アクリル系熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルム1枚を得た。
アクリル系熱可塑性樹脂として、メタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド/N−シクロヘキシルマレイミド共重合体、メタクリル酸メチル重合体又はメタクリル酸メチル/スチレン/無水マレイン酸共重合体を用いた以外は実施例と同様にして、光学フィルム1枚を作製した。
ダイ出口における樹脂温度は、フィルムを一定条件で連続して製膜している際、溶融樹脂がダイから出る直前に接触するダイリップ部分の温度を、予めその付近に埋め込んでおいた温度検出端により測定した。
溶融張力は、東洋精機製メルトテンション測定器である商品名「キャピログラフ 1C」を用い、樹脂温度200℃〜280℃の範囲で、ノズル径2.095mm、ノズル長さ8mm、押出速度10mm/分及び巻取速度を15m/分の条件で測定した。
JIS−K7121に準拠して、アクリル系熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを測定した。先ず、標準状態(23℃、65%RH)で状態調節(23℃で1週間放置)した試料から試験片として4点(4箇所)、それぞれ約10mgを切り出した。次に、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)社製の示差走査熱量計(熱流速型DSC):DSC−7型(商品名)を用いて、窒素ガス流量25mL/分、10℃/分で室温(23℃)から200℃まで昇温し(1次昇温)、200℃で5分間保持して完全に融解させた後、10℃/分で40℃まで降温させて、40℃で5分間保持し、更に上記昇温条件で2回目の昇温(2次昇温)する間に描かれるDSC曲線のうち、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をTg(単位℃)として測定した。1試料当り4点の算術平均(小数点以下四捨五入)を算出し、これを測定値とした。
Polymer Engineering and Science 1999,39,2349−2357頁に詳細な記載のある複屈折測定装置を用いた。23℃、湿度60%に調整した恒温恒湿室内で24時間以上養生を行ったアクリル系熱可塑性樹脂からなるフィルム(厚み約150μm、幅6mm)を用い、同様に恒温恒湿室に設置したフィルムの引張り装置(井元製作所製)にチャック間50mmになるようにフィルムを配置した。次いで、後述する複屈折測定装置(大塚電子製、商品名「RETS−100」)のレーザー光経路がフィルムの中心部になるようにし、歪速度50%/分(チャック間:50mm、チャック移動速度:5mm/分)で伸張応力をかけながら複屈折を測定した。複屈折の絶対値(|Δn|)と伸張応力(σR)の関係から、最小二乗近似によりその直線の傾きを求め光弾性係数(CR)を計算した。計算には伸張応力が2.5MPa≦σR≦10MPaの間のデータを用いた。
CR=|Δn|/σR
|Δn|=|nx−ny|
(CR:光弾性係数、σR:伸張応力、|Δn|:複屈折の絶対値、nx:伸張方向の屈折率、ny:伸張方向の垂直な屈折率)
アクリル系熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるフィルム(厚み約300μm、幅40mm)をインストロン社製10t引張り試験機を用いて、延伸温度(Tg+20)℃、延伸速度(500mm/分)で一軸フリー延伸して延伸光学等方性支持板を成形した。延伸倍率は、100%、200%、及び300%で延伸した。次いで、得られた延伸フィルムの複屈折を前述の方法で測定し、一軸延伸したときに発現する複屈折(Δn(S))を求めた。求めた延伸光学等方性支持板の発現している複屈折(Δn(S))の値を、その延伸倍率(S)に対してプロットして得られる最小二乗法近似直線関係式(A)の傾きから求められる複屈折変化率Kの値を求めた。Kの絶対値が小さいほど複屈折(Δn(S))、その変化が小さいことを意味する。
Δn(S)=K×S+C (Cは定数:無延伸時の複屈折値) (A)
但し、ここで複屈折とは、測定した値を100μm厚に換算して求めた値である。
アクリル系熱可塑性樹脂の物理的特性は、光弾性係数の絶対値、複屈折変化率|K|、ガラス転移温度の値を用いて、下記のように評価した。
B:光弾性係数の絶対値が1.0×10−12Pa−1より大きく3.0×10−12Pa−1以下、複屈折変化率|K|が0.1×10−5より大きく0.3×10−5以下、ガラス転移温度が125℃以上135℃未満のいずれかを含む。
C:光弾性係数の絶対値が3.0×10−12Pa−1より大きい、複屈折変化率|K|が0.3×10−5より大きい、ガラス転移温度が125℃未満のいずれかを含む。
フィルムの厚さは、JIS−K−7130に従い、マイクロメータを用いて測定した。
王子計測機器(株)製の自動複屈折計である商品名「KOBRA−21ADH」を使用して、面内の位相差(Re)、厚さ方向の位相差(Rth)を測定した。
A:Re及びRthいずれの絶対値も5nm以下。
B:Re及びRthいずれかの絶対値が5nmより高く20nm以下。
C:Re及びRthいずれかの絶対値が20nmより高い。
フィルムの耐折強度は、JIS P−8115に準拠して、15mm幅のフィルム試験片に9.8Nの荷重を掛けて、フィルムのMD方向及びTD方向ついて折り曲げ試験を行い耐折回数を測定した。
A:MD及びTD方向の耐折強度の回数が30回以上。
B:MD及びTD方向のいずれかの耐折強度の回数が1回以上30回未満。
C:MD及びTD方向のいずれかの耐折強度の回数が0回。
標準状態(23℃、65%RH)の条件で状態調節(23℃で1週間放置)を行ったフィルムから、試験片として50mm角の正方形状のフィルムを切り出した。
この試験片を用いて、ASTM−D1003に準拠して、日本電色工業製の濁度計(ヘーズメーター)、NDH−1001DP型を用いて、曇り度(Haze:単位%)を標準状態下で測定し、1種フィルム当り6点の算術平均値(有効数字2桁)を算出し、これを測定値とした。
A:Hazeの値が1.0%以下。
B:Hazeの値が1.0%より高く2.0%以下。
C:Hazeの値が2.0%より高い。
雰囲気温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内で96時間放置して、試験前後におけるRthの変化量を測定した。
A:Rthの変化量が1nm以下。
B:Rthの変化量が1nmより高く10nm以下。
C:Rthの変化量が10nmより高い。
フィルムの総合評価は、アクリル系熱可塑性樹脂の物理的特性、光学等方性、耐折強度、透明性、湿熱環境下における光学特性の長期安定性を総合し、以下のように評価した。
A:アクリル系熱可塑性樹脂の物理的特性、光学等方性、耐折強度、透明性、湿熱環境下における光学特性の長期安定性評価結果の全てがAのフィルム。
B:アクリル系熱可塑性樹脂の物理的特性、光学等方性、耐折強度、透明性、湿熱環境下における光学特性の長期安定性評価結果のいずれかにBが含まれるフィルム。
C:アクリル系熱可塑性樹脂の物理的特性、光学等方性、耐折強度、透明性、湿熱環境下における光学特性の長期安定性評価結果のいずれかにCが含まれるフィルム。
Claims (8)
- アクリル系熱可塑性樹脂を含有する光学フィルムであり、
前記アクリル系熱可塑性樹脂が、その総量基準で、下記式(1)で表される第一の構造単位50〜95質量%と、下記式(2)で表される第二の構造単位0.1〜20質量%と、下記式(3)で表される第三の構造単位0.1〜49.9質量%と、を有し、
[式中、R1は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記A群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基を示す。
A群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基及び炭素数1〜12のアルキル基。]
[式中、R2は、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は、下記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数6〜14のアリール基、を示し、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
B群:炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数7〜14のアリールアルキル基。]
[式中、R5は、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は、下記C群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基、を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を示す。
C群:ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基。]
JIS P−8115に従って測定される耐折回数が、フィルム長手方向及びフィルム幅方向のいずれも1回以上であり、
ASTM D−1003に従って測定される曇度が2.0%以下であり、
下記式(a)で表される面内方向の位相差(Re)の絶対値が20nm以下、かつ、下記式(b)で表される厚さ方向の位相差(Rth)の絶対値が20nm以下である、光学フィルム。
Re=(Nx−Ny)×d (a)
Rth=〔(Nx+Ny)/2−Nz〕×d (b)
[式中、NxはX軸方向の屈折率を、NyはY軸方向の屈折率を、NzはZ軸方向の屈折率をそれぞれ示し、dは厚さを示す。] - 前記第三の構造単位の含有量に対する前記第二の構造単位の含有量のモル比が、0より大きく15以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記R1が、メチル基又はベンジル基であり、
前記R2が、フェニル基又は前記B群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有するフェニル基であり、
前記R5が、シクロヘキシル基である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。 - 前記耐折回数がフィルム長手方向及びフィルム幅方向のいずれも10回以上であり、前記曇度が1.5%以下であり、前記Reの絶対値が10nm以下であり、前記Rthの絶対値が10nm以下であり、前記dが5μm〜200μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記アクリル系熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが125℃以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
前記アクリル系熱可塑性樹脂を含む原料樹脂を、ダイリップ出口における前記原料樹脂の温度が、該原料樹脂の溶融張力が50mN以上600mN以下となる温度で前記ダイリップを通して押出し、円筒状の溶融樹脂を押出す工程と、
前記溶融樹脂を、フィルム幅方向の延伸倍率2.0倍以上、かつ、フィルム長手方向の延伸倍率1.5倍以上で、連続して延伸する工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルムよりなる、偏光板保護フィルム。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルムよりなる、透明プラスチック基板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011240369A JP5965612B2 (ja) | 2011-11-01 | 2011-11-01 | 光学フィルム及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011240369A JP5965612B2 (ja) | 2011-11-01 | 2011-11-01 | 光学フィルム及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013097192A JP2013097192A (ja) | 2013-05-20 |
JP5965612B2 true JP5965612B2 (ja) | 2016-08-10 |
Family
ID=48619176
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2011240369A Active JP5965612B2 (ja) | 2011-11-01 | 2011-11-01 | 光学フィルム及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5965612B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105026445A (zh) * | 2012-11-22 | 2015-11-04 | 学校法人庆应义塾 | 丙烯酸系共聚物、光学膜、偏振片以及液晶显示装置 |
EP3822295A4 (en) * | 2018-07-13 | 2021-12-01 | Asahi Kasei Kabushiki Kaisha | METHACRYLIC RESIN, MOLDED ARTICLES, OPTICAL COMPONENT OR MOTOR VEHICLE COMPONENT |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06242301A (ja) * | 1993-02-16 | 1994-09-02 | Kuraray Co Ltd | 光学素子 |
JP3429954B2 (ja) * | 1995-07-14 | 2003-07-28 | 三菱レイヨン株式会社 | 光学式情報記録媒体 |
JP4424636B2 (ja) * | 2000-04-11 | 2010-03-03 | 株式会社日本触媒 | 透明耐熱性熱可塑性樹脂組成物 |
JPWO2009031544A1 (ja) * | 2007-09-04 | 2010-12-16 | 電気化学工業株式会社 | 熱可塑性共重合樹脂及びその光学成形体 |
JP5006891B2 (ja) * | 2008-08-04 | 2012-08-22 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | アクリル系樹脂フィルムの製造方法及びアクリル系樹脂フィルム |
-
2011
- 2011-11-01 JP JP2011240369A patent/JP5965612B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013097192A (ja) | 2013-05-20 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4905082B2 (ja) | 位相差フィルム | |
KR102059714B1 (ko) | 수지 조성물 및 그의 필름 | |
JP4686261B2 (ja) | 偏光子保護フィルムおよびその製造方法、ならびにそれを用いた偏光板 | |
JP6731913B2 (ja) | 樹脂組成物およびフィルム | |
KR101269673B1 (ko) | 광학 필름용 수지 조성물 및 이를 이용한 광학 필름 | |
JP4816506B2 (ja) | 偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、偏光板、および液晶表示装置 | |
WO2005105918A1 (ja) | アクリル樹脂フィルムおよび製造方法 | |
JP5928852B2 (ja) | 連続塊状重合法による光学フィルム用樹脂組成物の製造方法、これを用いた光学フィルム及び偏光板の製造方法 | |
JP6122327B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法、成形体、及びフィルム | |
JP5965621B2 (ja) | 光学フィルム及びその製造方法 | |
JP5260165B2 (ja) | 光学フィルム | |
TWI649369B (zh) | 具有高滑動特性的光學膜以及包含此光學膜的偏光板 | |
JP2008276207A (ja) | 光学フィルム | |
WO2015098980A1 (ja) | 光学用熱可塑性樹脂、および成形体 | |
WO2005108438A1 (ja) | イミド樹脂とその製造方法、およびそれを用いた成形体 | |
JP2005314534A (ja) | アクリル樹脂フィルム、積層フィルムおよび光学フィルター | |
US9429682B2 (en) | Method for preparing acrylic copolymer resin for optical film and method for fabricating optical film using the same | |
JP5965612B2 (ja) | 光学フィルム及びその製造方法 | |
KR20140084096A (ko) | 광학 필름 및 그것을 구비하는 액정 표시 장치 | |
JP2008179813A (ja) | 面状熱可塑性樹脂成形体 | |
JP2009199044A (ja) | 位相差フィルム | |
JP7040515B2 (ja) | 熱可塑性樹脂積層延伸フィルム | |
JP2012068430A (ja) | 位相差フィルム | |
JP5544877B2 (ja) | 光学補償フィルム | |
JP5387647B2 (ja) | 位相差フィルム |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20141024 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20150722 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20150728 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20150918 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20160209 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20160405 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160509 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160518 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20160603 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20160628 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20160704 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5965612 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |