図1は、燃料電池の単セル2の一例を示す分解斜視図である。燃料電池は、例えば燃料電池車に用いられるが、その用途に限定はない。燃料電池は、固体高分子形であり、複数の単セル2が積層された積層体を含んで構成される。
単セル2は、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気)が供給され、燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する。なお、燃料ガス及び酸化剤ガスは反応ガスの一例である。
単セル2は、単セル2の積層方向に沿って配置されたMEGA20、フレーム21、カソードセパレータ23、及びアノードセパレータ24を有する。なお、カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24は一対のセパレータの一例である。
MEGA20には、膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)200と、MEA200を挟持する一対のガス拡散層(GDL: Gas Diffusion Layer)201,202とが含まれる。符号Pは、MEA200の積層構造を示している。MEA200には、電解質膜200aと、電解質膜200aを挟持するアノード電極触媒層200b及びカソード電極触媒層200cとが含まれる。
電解質膜200aは、例えば、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示すイオン交換樹脂膜を含む。このようなイオン交換樹脂膜としては、例えば、ナフィオン(登録商標)などの、イオン交換基としてスルホン酸基を有するフッ素樹脂系のものが挙げられる。
アノード電極触媒層200b及びカソード電極触媒層200cは、それぞれ、触媒担持導電性粒子とプロトン伝導性電解質を含む、ガス拡散性を有する多孔質層として形成されている。例えば、アノード電極触媒層200b及びカソード電極触媒層200cは、白金担持カーボンとプロトン伝導性電解質を含む分散溶液である触媒インクの乾燥塗膜として形成される。
アノード電極触媒層200bには一方のガス拡散層201を介し燃料ガスが供給され、カソード電極触媒層200cには他方のガス拡散層202を介し酸化剤ガスが供給される。ガス拡散層201,202は、例えば、カーボンペーパーなどの基材に撥水性のマイクロポーラス層を積層することにより形成される。なお、マイクロポーラス層としては、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene)などの撥水性樹脂とカーボンブラックなどの導電性材料などを含んで形成される。MEA200は、酸化剤ガス及び燃料ガスを用いた電気化学反応により発電する。
フレーム21は、一例として矩形状の外形を有する樹脂シートにより構成される。フレーム21の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET: Polyethylene Terephthalate)系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS; Syndiotactic Polystyrene)系樹脂、及びポリプロピレン(PP: Polypropylene)系樹脂などが挙げられる。フレーム21は、枠形状を有し、中央部には矩形状の開口210が設けられている。
開口210は、MEGA20に対応する位置に設けられ、その縁にはMEA200の外周側の端部が接着層を介し接着される。これにより、MEA200はフレーム21に保持される。
また、フレーム21の端部には、厚み方向に貫通する貫通孔211〜216が設けられている。貫通孔211,215,214は、フレーム21の一方の端部に設けられ、貫通孔213,216,212は、フレーム21の他方の端部に設けられている。貫通孔211〜216は、カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24の貫通孔231〜236,241〜246にそれぞれ重なる。
貫通孔211,241,231は、燃料ガスの供給口であるアノード側入口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って燃料ガスが流れる。貫通孔212,242,232は、燃料ガスの排出口であるアノード側出口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って燃料オフガスが流れる。
貫通孔213,243,233は、酸化剤ガスの供給口であるカソード側入口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って酸化剤ガスが流れる。貫通孔214,244,234は、酸化剤ガスの排出口であるカソード側出口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って酸化剤オフガスが流れる。
貫通孔215,245,235は、単セル2を冷却する冷却水の供給口である冷却水入口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って冷却水が流れる。貫通孔216,246,236は、冷却水の排出口である冷却水出口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って冷却水が流れる。
カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24は、例えばSUSなど金属やチタンなどにより板状に形成され、矩形状の外形を有する。カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24は、各々の板面を対向させた状態で例えばレーザ溶接により互いに接合されている。アノードセパレータ24はMEGA20のアノード側に配置され、カソードセパレータ23は、単セル2に隣接する他の単セル2のMEGA20のカソード側に配置される。
また、アノードセパレータ24は接着剤によりフレーム21に接着されている。これにより、フレーム21はアノードセパレータ24に固定される。
アノードセパレータ24は、厚み方向に貫通する貫通孔241〜246と、波板形状のアノード流路部240を有する。貫通孔241,245,244はアノードセパレータ24の一方の端部に設けられ、貫通孔243,246,242はアノードセパレータ24の他方の端部に設けられている。なお、貫通孔241〜244は、反応ガスが流れるマニホルド孔の一例である。
MEGA20側のアノード流路部240の面には、燃料ガスが流れる溝状の燃料ガス流路が形成されている。燃料ガス流路はガス拡散層201に対向し、燃料ガスは燃料ガス流路からガス拡散層201に供給される。また、カソードセパレータ23側のアノード流路部240の面には、冷却水が流れる溝状の冷却水流路が形成されている。
アノード流路部240は、例えばプレス金型による曲げ加工により形成される。燃料ガス流路及び冷却水流路は、例えば直線状に形成されてもよいし、蛇行するように形成されてもよい。
また、カソードセパレータ23は、厚み方向に貫通する貫通孔231〜236と、波板形状のカソード流路部230を有する。貫通孔231,235,234はカソードセパレータ23の一方の端部に設けられ、貫通孔233,236,232はカソードセパレータ23の他方の端部に設けられている。
アノードセパレータ24側のカソード流路部230の面には、冷却媒体が流れる溝状の冷却水流路が形成されている。また、隣接する他の単セルのMEGA20側のカソード流路部230の面には、酸化剤ガスが流れる溝状の酸化剤ガス流路が形成されている。酸化剤ガス流路は、隣接する他の単セル2のMEGA20のガス拡散層202に対向し、酸化剤ガスは酸化剤ガス流路からガス拡散層202に供給される。
カソード流路部230は、例えばプレス金型による曲げ加工により形成される。冷却媒体流路及び燃料ガス流路は、例えば直線状に形成されてもよいし、蛇行するように形成されてもよい。なお、カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24は、金属に限定されず、例えばカーボン成型により形成されてもよい。
(アノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の構成)
図2は、アノードセパレータ24の一例を示す平面図であり、図3は、カソードセパレータ23の一例を示す平面図である。図2には、アノードセパレータ24のMEGA20側の板面が示され、図3には、アノードセパレータ24側から正面視した場合のカソードセパレータ23の隣接する単セル2側の板面が示されている。
燃料ガスは、貫通孔241,231からアノード流路部240内の燃料ガス流路を流れて貫通孔242,232に排出される。アノード流路部240内の燃料ガス流路にはMEGA20が積層され、燃料ガス流路からMEGA20に燃料ガスが供給される。
酸化剤ガスは、貫通孔243,233からカソード流路部230内の酸化剤ガス流路を流れて貫通孔244,234に排出される。カソード流路部230内の酸化剤ガス流路には、隣接する単セル2のMEGA20が積層され、酸化剤ガス流路からMEGA20に酸化剤ガスが供給される。
また、冷却水は、貫通孔245,235からアノード流路部240内の冷却水流路を流れて貫通孔246,236に排出される。冷却水流路は、カソード流路部230とアノード流路部240の間に形成されている。冷却水は、MEGA20の発電により生じた熱を吸収する。
符号L0s〜L6sは、燃料電池内部を外気に対して封止するためのばねシールラインを示す。カソードセパレータ23の板面には、フレーム21側に突出した凸部がばねシールラインL0s〜L6sに沿って設けられている。アノードセパレータ24にフレーム21が重なると、凸部はフレーム21に当接してフレーム21を弾性力により支持する。このとき、凸部がフレーム21を押圧するため、ばねシールラインL0s〜L6sの内側の領域が封止される。
一方、アノードセパレータ24の板面には、隣接する単セル2のフレーム21側に突出した凸部がばねシールラインL0s〜L6sに沿って設けられている。アノードセパレータ24にフレーム21が重なると、凸部はフレーム21に当接してフレーム21を弾性力により支持する。このとき、凸部がフレーム21を押圧するため、ばねシールラインL0s〜L6sの内側の領域が封止される。
また、アノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の凸部の背面側には、凸部と表裏一体の凹部、つまり溝が形成されており、各の間には燃料ガス、酸化剤ガス、または冷却水が流れるシール流路が形成されている。
ばねシールラインL0sは、貫通孔241〜244,231〜234、アノード流路部240、カソード流路部230を囲むように設定されている。ばねシールラインL1s〜L6sは貫通孔241〜246,231〜236をそれぞれ囲むように設定されている。ばねシールラインL0s〜L6sによって、燃料ガス、酸化剤ガス、冷却水が、アノードセパレータ24とフレーム21の間から外部に漏れることが抑制される。
ばねシールラインL0s,L5s,L6s沿いのシール流路には冷却水が流れる。冷却水は、貫通孔245,235から導入流路R5を流れてアノード流路部240及びカソード流路部230の冷却水流路に流入する。導入流路R5は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
導入流路R5は、ばねシールラインL0s,L5s沿いのシール流路に接続されている。冷却水は導入流路R5とばねシールラインL0s,L5s沿いのシール流路の間で流通する。
また、冷却水はアノード流路部240及びカソード流路部230の冷却水流路から導出流路R6を流れて貫通孔246,236から排出される。導出流路R6は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
導出流路R6は、ばねシールラインL0s,L6s沿いのシール流路に接続されている。冷却水は導出流路R6からばねシールラインL0s,L6s沿いのシール流路の間で流通する。
ばねシールラインL1s,L2s沿いのシール流路には燃料ガスが流れる。燃料ガスは、貫通孔241,231から導入流路R1を流れ、アノードセパレータ24の板面の開口H1を抜けてアノード流路部240内の燃料ガス流路に流入する。導入流路R1は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
導入流路R1は、ばねシールラインL1s沿いのシール流路に接続されている。燃料ガスは導入流路R1とばねシールラインL1s沿いのシール流路の間で流通する。
燃料ガスは、アノード流路部240の燃料ガス流路からアノードセパレータ24の板面の開口H2を抜けて導出流路R20に流入する。導出流路R20はばねシールラインL2s沿いのシール流路に接続されているため、燃料ガスは導出流路R20からシール流路に流れる。導出流路R20は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
ばねシールラインL2s沿いのシール流路は排出流路R21を介して貫通孔242,232と接続されている。燃料ガスはシール流路から排出流路R21を通り貫通孔242,232に排出される。排出流路R21は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
ばねシールラインL3s,L4s沿いのシール流路には酸化剤ガスが流れる。酸化剤ガスは、貫通孔243,233から導入流路R3を流れ、カソードセパレータ23の板面の開口H3を抜けてカソード流路部230内の酸化剤ガス流路に流入する。導入流路R3は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
導入流路R3は、ばねシールラインL3s沿いのシール流路に接続されている。酸化剤ガスは導入流路R3とばねシールラインL3s沿いのシール流路の間で流通する。
酸化剤ガスは、カソード流路部230の酸化剤ガス流路からカソードセパレータ23の板面の開口H4を抜けて導出流路R40に流入する。導出流路R40はばねシールラインL4s沿いのシール流路に接続されているため、燃料ガスは導出流路R40からシール流路に流れる。導出流路R40は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
ばねシールラインL4s沿いのシール流路は排出流路R41を介して貫通孔244,234と接続されている。酸化剤ガスはシール流路から排出流路R41を通り貫通孔244,234に排出される。排出流路R41は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接する単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の背面側の溝との間に形成されている。
(比較例の流路)
図4は、比較例のアノードセパレータ24の貫通孔242の周辺を示す平面図である。燃料ガスが排出される貫通孔242の周囲には、ばねシールラインL2sに沿って凸部247が設けられている。凸部247は貫通孔242を囲むように設けられている。
また、凸部247とアノードセパレータ24の端部の間には、ばねシールラインL0sに沿って他の凸部248が設けられている。凸部247,248は、フレーム21と当接してフレーム21を弾性力により支持する。
開口H2は、凸部247のアノード流路部240側に設けられている。開口H2は、一例としてスリット形状を有するが、これに限定されない。開口H2と凸部247の間は、フレーム21側に突出する凸部10〜12により接続されている。また、凸部247と貫通孔242の間は、フレーム21側に突出する凸部13〜15により接続されている。
燃料ガスは、MEGA20から点線の矢印に沿って貫通孔242から排出される。
図5は、図4のA−A線に沿った断面図である。カソードセパレータ23は、凸部12と対向する位置に、凸部12とは反対側に突出する凸部32を有する。各凸部12,32の背面側の溝は、燃料ガスが流れる導出流路R20を構成する。
また、カソードセパレータ23は、凸部15と対向する位置に、凸部15とは反対側に突出する凸部35を有する。各凸部15,35の背面側の溝は、燃料ガスが流れる排出流路R21を構成する。
また、カソードセパレータ23は、凸部247と対向する位置に、凸部247とは反対側に突出する凸部237を有する。各凸部247,237の背面側の溝は、燃料ガスが流れる環状のシール流路R2を構成する。シール流路R2は、貫通孔242を囲む環状流路の一例である。導出流路R20は、シール流路R2とMEA200の間を接続する第1接続流路の一例であり、排出流路R21は、貫通孔242とシール流路R2の間を接続する第2接続流路の一例である。
燃料ガスは、矢印Faで示されるように、MEGA20から開口H2を抜けて導出流路R20を流れてシール流路R2に入る。燃料ガスは、矢印Fbで示されるように、シール流路R2から排出流路R21に入り貫通孔242から排出される。
図6は、図4のB−B線に沿った断面図である。カソードセパレータ23は、凸部10,11,12と対向する位置に、凸部10,11,12とは反対側に突出する凸部30,31,32をそれぞれ有する。凸部10,30の背面側の溝、凸部11,31の背面側の溝、及び凸部12,32の背面側の溝は、それぞれ、燃料ガスが流れる導出流路R20を構成する。
凸部10,30の間、凸部11,31の間、及び凸部12,31の間の各導出流路R20は、高さHa及び幅Waが同一であり、断面積も同一である。
図7は、図4のC−C線に沿った断面図である。カソードセパレータ23は、凸部13,14,15と対向する位置に、凸部13,14,15とは反対側に突出する凸部33,34,35をそれぞれ有する。凸部13,33の背面側の溝、凸部14,34の背面側の溝、及び凸部15,35の背面側の溝は、それぞれ、燃料ガスが流れる排出流路R21を構成する。
凸部13,33の間、凸部14,34の間、及び凸部15,35の間の各導出流路R20は、高さHb及び幅Wbが同一であり、断面積も同一である。なお、凸部10,30,13,33を通る断面、凸部11,31,14,34を通る断面、及び凸部12,32,15,35を通る断面は、図5と同様である。
再び図4を参照すると、凸部10〜12は、製造時の誤差により均等な間隔に配置されていない。一例として、凸部10,11の間隔Daは、凸部11,12の間隔Dbより広い。つまり、3個の凸部10〜12のうち、凸部10が他の2個の凸部11,12から離れている。
各凸部10〜12に沿った導出流路R20からシール流路R2に流入した燃料ガスは、2方向L1,L2(紙面の上下方向)に分流する。このとき、凸部10に沿った導出流路R20からの燃料ガスは、間隔Da,Dbの差分のため、方向L1の流速が方向L2の流速より速くなる。一方、凸部11,12に沿った導出流路R20からの燃料ガスは、間隔Da,Dbの差分のため、方向L2の流速が方向L1の流速より速くなる。すなわち、方向L1,L2燃料ガスの流速が一方向L2に偏っている。
したがって、シール流路R2内では、凸部10に沿った導出流路R20の出口付近と凸部11,12に沿った導出流路R20の出口付近の間に燃料ガスが滞留しやすい領域P1が生ずる。領域P1内の水滴は、燃料ガスの流れが弱いために貫通孔242に排出されず、シール流路R2に詰まり、燃料ガスの流れを阻害して燃料電池の発電性能に影響を及ぼすおそれがある。
このような現象は、以下に述べるように排出流路R21にも存在する。
凸部13〜15は、製造時の誤差により均等な間隔に配置されていない。一例として、凸部14,15の間隔Ddは、凸部13,14の間隔Dcより広い。つまり、3個の凸部13〜15のうち、凸部15が他の2個の凸部13,14から離れている。
燃料ガスは、シール流路R2の2方向L3,L4から、各凸部13〜15に沿った排出流路R21に流入する。このとき、凸部15に沿った排出流路R21に流入する燃料ガスは、間隔Dc,Ddの差分のため、方向L4の流速が方向L3の流速より速くなる。一方、凸部13,14に沿った排出流路R21に流入する燃料ガスの流速は、間隔Dc,Ddの差分のため、方向L3の流速が方向L4の流速より速くなる。すなわち、方向L3,L4燃料ガスの流速が一方向L3に偏っている。
したがって、シール流路R2内では、凸部15に沿った排出流路R21の入口付近と凸部13,14に沿った排出流路R21の入口付近の間に燃料ガスが滞留しやすい領域P2が生ずる。領域P2内の水滴は、燃料ガスの流れが弱いために貫通孔242に排出されず、シール流路R2に詰まり、燃料ガスの流れを阻害して燃料電池の発電性能に影響を及ぼすおそれがある。
(実施例の流路)
そこで、実施例では、凸部10〜12に沿った3本の導出流路R20うち、導出流路R20が並ぶ方向における中心に最も近い導出流路R20の断面積が他の導出流路R20の断面積より大きくなるように凸部10〜12の幅Waを設定する。また、凸部13〜15に沿った3本の排出流路R21うち、排出流路R21が並ぶ方向における中心に最も近い排出流路R21の断面積が他の排出流路R21の断面積より大きくなるように凸部13〜15の幅Wbを設定する。つまり、導出流路R20の配列及び排出流路R21の配列の小各々において、配列方向の中心に最も近い流路の断面積が他の流路の断面積より大きい。
図8は、実施例のアノードセパレータ24の貫通孔242の周辺を示す平面図である。図8において、図4と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
アノードセパレータ24は、比較例のアノードセパレータ24の凸部11に代えて凸部11sを有する。凸部11sは、3つの凸部10,11s,12のうち、凸部10,11s,12が並ぶ方向における中心に最も近い位置に配置されている。
凸部11sは、一例として、凸部11の幅を凸部10側に向けて広げたものである。このため、凸部10,11sの間隔Da’は凸部10,11の間隔Daより狭くなる。また、凸部11s,12の間隔Dbは比較例と同じである。このため、間隔Da’と間隔Dbの差分は、比較例の間隔Da,Dbの差分より小さい。
図9は、図8のB’−B’線に沿った断面図である。図9において、図6と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
カソードセパレータ23は、比較例の凸部31に代えて凸部31sを有する。凸部31sは、3つの凸部30,31s,32のうち、凸部30,31s,32の配列方向における中心に最も近い位置に配置されている。凸部31sは、一例として、凸部31の幅を凸部30側に向けて広げ、凸部11sと実質的に同じ幅としたものである。
このため、凸部11s,31sに沿った導出流路R20の幅Wasは、両側の導出流路R20の幅Waより広くなる。したがって、凸部11s,31sに沿った導出流路R20の断面積は、両側の導出流路R20の断面積より大きい。なお、各導出流路R20の高さHaは同一であるが、中心の導出流路R20の高さHaを、幅Wasに代えて、または幅Wasとともに増加させことにより、中心の導出流路R20の断面積を両側の導出流路R20の断面積より大きくしてもよい。
これにより、図8に示されるように、凸部11sに沿った導出流路R20からシール流路R2に流れる燃料ガスの流量は、圧力損失の低下によって両側の導出流路R20からシール流路R2に流れる燃料ガスの流量より多くなる。このため、凸部11sに沿った導出流路R20からシール流路R2内を方向L1と方向L2に流れる各燃料ガスの流速の偏りが比較例の場合より低減される。
したがって、シール流路R2内に燃料ガスが滞留しやすい領域P1が生じて水滴がシール流路R2に詰まることが抑制される。
上記の効果は、以下の構成により排出流路R21についても得られる。
アノードセパレータ24は、比較例のアノードセパレータ24の凸部14に代えて凸部14sを有する。凸部14sは、3つの凸部13,14s,15のうち、凸部13,14s,15が並ぶ方向における中心に最も近い位置に配置されている。
凸部14sは、一例として、凸部14の幅を凸部15側に向けて広げたものである。このため、凸部15,14sの間隔Dd’は凸部15,14の間隔Ddより狭くなる。また、凸部13,14sの間隔Dcは比較例と同じである。このため、間隔Dd’と間隔Dcの差分は、比較例の間隔Dd,Dcの差分より小さい。
図10は、図8のC’−C’線に沿った断面図である。図10において、図7と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
カソードセパレータ23は、比較例の凸部34に代えて凸部34sを有する。凸部34sは、3つの凸部33,34s,35のうち、凸部33,34s,35の配列方向における中心に最も近い位置に配置されている。凸部34sは、一例として、凸部34の幅を凸部35側に向けて広げ、凸部14sと実質的に同じ幅としたものである。
このため、凸部14s,34sに沿った排出流路R21の幅Wbsは、両側の排出流路R21の幅Wbより広くなる。したがって、凸部14s,34sに沿った排出流路R21の断面積は、両側の排出流路R21の断面積より大きい。なお、各排出流路R21の高さHbは同一であるが、中心の排出流路R21の高さHbを、幅Wbsに代えて、または幅Wbsとともに増加させことにより、中心の排出流路R21の断面積を両側の排出流路R21の断面積より大きくしてもよい。
これにより、図8に示されるように、凸部14sに沿った排出流路R21から貫通孔242に流れる燃料ガスの流量は、圧力損失の低下によって両側の排出流路R21から貫通孔242に流れる燃料ガスの流量より多くなる。このため、凸部14sに沿った排出流路R21にシール流路R2内の方向L3,L4から流れる各燃料ガスの流速の偏りが比較例の場合より低減される。
したがって、シール流路R2内に燃料ガスが滞留しやすい領域P2が生じて水滴がシール流路R2に詰まることが抑制される。
なお、本実施例では、燃料ガスの入口において中心の導出流路R20の断面積を両側の導出流路R20の断面積より大きくするとともに、燃料ガスの出口において中心の排出流路R21の断面積を両側の排出流路R21より大きくしたが、導出流路R20及び排出流路R21の一方だけの断面積を大きくしてもよい。また、本実施例では、一例として3本の導出流路R20及び3本の排出流路R21を挙げたが、4本以上の導出流路R20及び4本以上の排出流路R21が設けられた場合でも、その配列方向の中心に最も近い導出流路R20または排出流路R21の幅を広くすることにより上記と同様の効果が得られる。
また、上記の構成は、カソードセパレータ23において、酸化剤ガスが排出される貫通孔244の周囲の導出流路R40及び排出流路R41の何れかにも適用することができる。この場合、3本の導出流路R40のうち、3本の導出流路R40の配列方向における中心に最も近い導出流路R40の断面積が他の導出流路R40の断面積より大きくなる。これにより、ばねシールラインL4s沿いのシール流路内において、導出流路R40の出口近傍に水滴が詰まることが抑制される。なお、導出流路R40は第1接続流路の一例であり、排出流路R41は第2接続流路の一例である。
また、3本の排出流路R41のうち、3本の排出流路R41の配列方向における中心に最も近い排出流路R41の断面積が他の排出流路R41の断面積より大きくなる。これにより、ばねシールラインL4s沿いのシール流路内において、排出流路R41の入口近傍に水滴が詰まることが抑制される。なお、上記と同様の構成は、アノードセパレータ24における燃料ガスの入口の貫通孔241の周囲のシール流路やカソードセパレータ23における酸化剤ガスの入口の貫通孔233の周囲のシール流路にも適用することができる。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。