図1は、燃料電池の単セル2の一例を示す分解斜視図である。燃料電池は、例えば燃料電池車に用いられるが、その用途に限定はない。燃料電池は、固体高分子形であり、複数の単セル2が積層された積層体を含んで構成される。
単セル2は、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気)が供給され、燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する。なお、燃料ガス及び酸化剤ガスは反応ガスの一例である。
単セル2は、単セル2の積層方向に沿って配置されたMEGA20、フレーム21、カソードセパレータ23、及びアノードセパレータ24を有する。なお、カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24は第1セパレータ及び第2セパレータの一例である。
MEGA20には、膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)200と、MEA200を挟持する一対のガス拡散層(GDL: Gas Diffusion Layer)201,202とが含まれる。符号Pは、MEA200の積層構造を示している。MEA200には、電解質膜200aと、電解質膜200aを挟持するアノード電極触媒層200b及びカソード電極触媒層200cとが含まれる。
電解質膜200aは、例えば、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示すイオン交換樹脂膜を含む。このようなイオン交換樹脂膜としては、例えば、ナフィオン(登録商標)などの、イオン交換基としてスルホン酸基を有するフッ素樹脂系のものが挙げられる。
アノード電極触媒層200b及びカソード電極触媒層200cは、それぞれ、触媒担持導電性粒子とプロトン伝導性電解質を含む、ガス拡散性を有する多孔質層として形成されている。例えば、アノード電極触媒層200b及びカソード電極触媒層200cは、白金担持カーボンとプロトン伝導性電解質を含む分散溶液である触媒インクの乾燥塗膜として形成される。
アノード電極触媒層200bには一方のガス拡散層201を介し燃料ガスが供給され、カソード電極触媒層200cには他方のガス拡散層202を介し酸化剤ガスが供給される。ガス拡散層201,202は、例えば、カーボンペーパーなどの基材に撥水性のマイクロポーラス層を積層することにより形成される。なお、マイクロポーラス層としては、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene)などの撥水性樹脂とカーボンブラックなどの導電性材料などを含んで形成される。MEA200は、酸化剤ガス及び燃料ガスを用いた電気化学反応により発電する。
フレーム21は、一例として矩形状の外形を有する樹脂シートにより構成される。フレーム21の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET: Polyethylene Terephthalate)系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS; Syndiotactic Polystyrene)系樹脂、及びポリプロピレン(PP: Polypropylene)系樹脂などが挙げられる。フレーム21は、枠形状を有し、中央部には矩形状の開口210が設けられている。
開口210は、MEGA20に対応する位置に設けられ、その縁にはMEA200の外周側の端部が接着層を介し接着される。これにより、MEA200はフレーム21に保持される。
また、フレーム21の端部には、厚み方向に貫通する貫通孔211~216が設けられている。貫通孔211,215,214は、フレーム21の一方の端部に設けられ、貫通孔213,216,212は、フレーム21の他方の端部に設けられている。貫通孔211~216は、カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24の貫通孔231~236,241~246にそれぞれ重なる。
貫通孔211,241,231は、燃料ガスの供給口であるアノード側入口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って燃料ガスが流れる。貫通孔212,242,232は、燃料ガスの排出口であるアノード側出口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って燃料オフガスが流れる。
貫通孔213,243,233は、酸化剤ガスの供給口であるカソード側入口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って酸化剤ガスが流れる。貫通孔214,244,234は、酸化剤ガスの排出口であるカソード側出口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って酸化剤オフガスが流れる。
貫通孔215,245,235は、単セル2を冷却する冷却水の供給口である冷却水入口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って冷却水が流れる。貫通孔216,246,236は、冷却水の排出口である冷却水出口マニホルドの一部であり、単セル2の積層方向に沿って冷却水が流れる。
カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24は、例えばSUSなど金属やチタンなどにより板状に形成され、矩形状の外形を有する。カソードセパレータ23及びアノードセパレータ24は、各々の板面を対向させた状態で重なり、例えばレーザ溶接により互いに接合されている。アノードセパレータ24はMEGA20のアノード側に配置され、カソードセパレータ23は、単セル2に隣接する他の単セル2のMEGA20のカソード側に配置される。
また、アノードセパレータ24は接着剤によりフレーム21に接着されている。これにより、フレーム21はアノードセパレータ24に固定される。
アノードセパレータ24は、厚み方向に貫通する貫通孔241~246と、波板形状のアノード流路部240を有する。貫通孔241,245,244はアノードセパレータ24の一方の端部に設けられ、貫通孔243,246,242はアノードセパレータ24の他方の端部に設けられている。なお、貫通孔241~244は、反応ガスが流れるマニホルド孔の一例である。
MEGA20側のアノード流路部240の面には、燃料ガスが流れる溝状の燃料ガス流路が形成されている。燃料ガス流路はガス拡散層201に対向し、燃料ガスは燃料ガス流路からガス拡散層201に供給される。また、カソードセパレータ23側のアノード流路部240の面には、冷却水が流れる溝状の冷却水流路が形成されている。
アノード流路部240は、例えばプレス金型による曲げ加工により形成される。燃料ガス流路及び冷却水流路は、例えば直線状に形成されてもよいし、蛇行するように形成されてもよい。
また、カソードセパレータ23は、厚み方向に貫通する貫通孔231~236と、波板形状のカソード流路部230を有する。貫通孔231,235,234はカソードセパレータ23の一方の端部に設けられ、貫通孔233,236,232はカソードセパレータ23の他方の端部に設けられている。
アノードセパレータ24側のカソード流路部230の面には、冷却媒体が流れる溝状の冷却水流路が形成されている。また、隣接する他の単セルのMEGA20側のカソード流路部230の面には、酸化剤ガスが流れる溝状の酸化剤ガス流路が形成されている。酸化剤ガス流路は、隣接する他の単セル2のMEGA20のガス拡散層202に対向し、酸化剤ガスは酸化剤ガス流路からガス拡散層202に供給される。
カソード流路部230は、例えばプレス金型による曲げ加工により形成される。冷却媒体流路及び燃料ガス流路は、例えば直線状に形成されてもよいし、蛇行するように形成されてもよい。
(アノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の構成)
図2は、アノードセパレータ24の一例を示す平面図であり、図3は、カソードセパレータ23の一例を示す平面図である。図2には、アノードセパレータ24のMEGA20側の板面が示され、図3には、アノードセパレータ24側から正面視した場合のカソードセパレータ23の板面が示されている。
燃料ガスは、貫通孔241,231からアノード流路部240内の燃料ガス流路を流れて貫通孔242,232に排出される。アノード流路部240内の燃料ガス流路にはMEGA20が積層され、燃料ガス流路からMEGA20に燃料ガスが供給される。
酸化剤ガスは、貫通孔243,233からカソード流路部230内の酸化剤ガス流路を流れて貫通孔244,234に排出される。カソード流路部230内の酸化剤ガス流路には、隣接する単セル2のMEGA20が積層され、酸化剤ガス流路からMEGA20に酸化剤ガスが供給される。
また、冷却水は、貫通孔245,235からアノード流路部240内の冷却水流路を流れて貫通孔246,236に排出される。冷却水流路は、カソード流路部230とアノード流路部240の間に形成されている。冷却水は、MEGA20の発電により生じた熱を吸収する。
符号L0w~L4wは、アノードセパレータ24とカソードセパレータ23を、例えば溶接により接合するための溶接ラインを示す。アノードセパレータ24とカソードセパレータ23は溶接ラインL0w~L4wに沿って溶接される。
溶接ラインL0wはアノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の外縁に沿って設定されている。溶接ラインL1w~L4wは貫通孔241~244,231~234に沿ってそれぞれ設定されている。このため、燃料ガス及び酸化剤ガスが、アノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の間の冷却水流路や燃料電池の外部に漏れることが抑制される。
また、符号L0s~L6sは、燃料電池内部を外気に対して封止するためのばねシールラインを示す。アノードセパレータ24の板面には、フレーム21側に突出した凸部がばねシールラインL0s~L6sに沿って設けられている。アノードセパレータ24にフレーム21が重なると、凸部はフレーム21に当接してフレーム21を弾性力により支持する。このとき、凸部がフレーム21を押圧するため、ばねシールラインL0s~L6sの内側の領域が封止される。
一方、カソードセパレータ23の板面には、隣接する単セル2のフレーム21側に突出した凸部がばねシールラインL0s~L6sに沿って設けられている。アノードセパレータ24及びカソードセパレータ23のばねシールラインL0s~L6s沿いの各凸部は重なり合う。
カソードセパレータ23にフレーム21が重なると、カソードセパレータ23の凸部はフレーム21に当接してフレーム21を弾性力により支持する。このとき、凸部がフレーム21を押圧するため、ばねシールラインL0s~L6sの内側の領域が封止される。
また、アノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の凸部の裏面には、凸部と表裏一体の溝が形成されており、各溝は燃料ガス、酸化剤ガス、または冷却水が流れるシール流路が形成されている。
ばねシールラインL0sは、貫通孔241~246,231~236、アノード流路部240、カソード流路部230を囲むように設定されている。ばねシールラインL1s~L6sは貫通孔241~246,231~236をそれぞれ囲むように設定されている。ばねシールラインL0s~L6sによって、燃料ガス、酸化剤ガス、冷却水が、アノードセパレータ24とフレーム21の間から外部に漏れることが抑制される。
ばねシールラインL5s,L6s沿いのシール流路には冷却水が流れる。冷却水は、貫通孔245,235から複数の導入流路R5を流れてアノード流路部240及びカソード流路部230の冷却水流路に流入する。導入流路R5は、アノードセパレータ24の板面から突出する凸部の裏面の溝と、カソードセパレータ23の板面から突出する凸部の裏面の溝との間に形成されている。
導入流路R5は、ばねシールラインL5s沿いのシール流路に接続されている。冷却水は導入流路R5とばねシールラインL5s沿いのシール流路の間で流通する。
また、冷却水はアノード流路部240及びカソード流路部230の冷却水流路から複数の排出流路R6を流れて貫通孔246,236から排出される。排出流路R6は、アノードセパレータ24の板面から突出する凸部の裏面の溝と、カソードセパレータ23の板面から突出する凸部の裏面の溝との間に形成されている。
排出流路R6は、ばねシールラインL6s沿いのシール流路に接続されている。冷却水は排出流路R6からばねシールラインL6s沿いのシール流路の間で流通する。
ばねシールラインL1s,L2s沿いのシール流路には燃料ガスが流れる。燃料ガスは、貫通孔241,231から複数の導入流路R1を流れ、アノードセパレータ24の板面の開口部H1を抜けてアノード流路部240内の燃料ガス流路に流入する。
導入流路R1は、貫通孔241,231からばねシールラインL1s沿いのシール流路を横切り、MEGA20と重なる領域(以下、「発電領域」と表記)に向けて延びる。導入流路R1は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接の単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝との間に形成されている。
開口部H1は、導入流路R1の出口であり、アノードセパレータ24の板面において、凸部が無い平坦面に設けられている。また、カソードセパレータ23には、各開口部H1と対向する領域に、各導入流路R1を接続する接続流路R10が設けられている。接続流路R10は、カソードセパレータ23の板面から隣接の単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝内に形成されている。
また、発電に使用された燃料ガス(燃料オフガス)は、アノード流路部240内の燃料ガス流路からアノードセパレータ24の板面の開口部H2を抜けて複数の排出流路R2に流入し、排出流路R2を流れて貫通孔242,232に排出される。
排出流路R2は、貫通孔241,231からばねシールラインL2s沿いのシール流路を横切り、発電領域に向けて延びる。排出流路R2は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接の単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝との間に形成されている。
開口部H2は、排出流路R2の入口であり、アノードセパレータ24の板面において、凸部が無い平坦面に設けられている。また、カソードセパレータ23には、各開口部H2と対向する領域に、各排出流路R2を接続する接続流路R20が設けられている。接続流路R20は、カソードセパレータ23の板面から隣接の単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝内に形成されている。
ばねシールラインL3s,L4s沿いのシール流路には酸化剤ガスが流れる。酸化剤ガスは、貫通孔243,233から複数の導入流路R3を流れ、カソードセパレータ23の板面の開口部H3を抜けてカソード流路部230内の酸化剤ガス流路に流入する。
導入流路R3は、貫通孔243,233からばねシールラインL3s沿いのシール流路を横切り、発電領域に向けて延びる。導入流路R3は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝と、カソードセパレータ23の板面から隣接の単セル2のフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝との間に形成されている。
開口部H3は、導入流路R3の出口であり、カソードセパレータ23の板面において、凸部が無い平坦面に設けられている。また、アノードセパレータ24には、各開口部H3と対向する領域に、各導入流路R3を接続する接続流路R30が設けられている。接続流路R30は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝内に形成されている。
また、発電に使用された酸化剤ガス(酸化剤オフガス)は、カソード流路部230内の酸化剤ガス流路からカソードセパレータ23の板面の開口部H4を抜けて排出流路R4に流入し、排出流路R4を流れて貫通孔244,234に排出される。排出流路R4は、貫通孔244,234からばねシールラインL4s沿いのシール流路を横切り、発電領域に向けて延びる。
開口部H4は、排出流路R4の入口であり、カソードセパレータ23の板面において、凸部が無い平坦面に設けられている。また、アノードセパレータ24には、各開口部H4と対向する領域に、各排出流路R4を接続する接続流路R40が設けられている。接続流路R40は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21に向かって突出する凸部の裏面の溝内に形成されている。
(燃料ガスの入口側マニホルド孔周辺の構成)
図4は、アノードセパレータ24における燃料ガスの入口側マニホルド孔周辺の構成を示す平面図であり、図5は、カソードセパレータ23における燃料ガスの入口側マニホルド孔周辺の構成を示す平面図である。なお、図5は、アノードセパレータ24側からカソードセパレータ23の板面を正面視した場合の平面図である。また、図4及び図5において、図2及び図3と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
アノードセパレータ24は、外周のシールラインL0sに沿った外周凸部247と、貫通孔241を囲むばねシールラインL1sに沿った環状凸部248と、環状凸部248と交差する複数の交差凸部10と、環状凸部248の屈曲部248bに接続された補助凸部11と、導入流路R1内の燃料ガスの出口である複数の開口部H1とを有する。外周凸部247、環状凸部248、交差凸部10、及び補助凸部11は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21側に突出する。
また、カソードセパレータ23は、外周のシールラインL0sに沿った外周凸部237と、貫通孔231を囲むばねシールラインL1sに沿った環状凸部238と、環状凸部238と交差する複数の交差凸部30と、環状凸部238の屈曲部238bに接続された補助凸部31と、各交差凸部30と接続された接続凸部32とを有する。外周凸部237、環状凸部238、交差凸部30、補助凸部31、及び接続凸部32は、カソードセパレータ23の板面から隣接の単セル2のフレーム21側、つまり外周凸部247、環状凸部248、交差凸部10、及び補助凸部11とは反対側に突出する。
互いに接合されたアノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の板面を正面視した場合、外周凸部247,237は互いに重なり、環状凸部248,238は互いに重なる。また、交差凸部10,30同士、及び補助凸部11,31同士も重なる。
図6は、図4のA-A線に沿った断面図であり、図7は、図4のB-B線に沿った断面図であり、図8は、図4のC-C線に沿った断面図である。以下の図4~図8を参照し、燃料ガスが入口側マニホルド孔からアノード流路部240に至るまでの流路の構成を説明する。
環状凸部248,238は、燃料ガスが流れる環状のシール流路K1を形成する溝248a,238aが裏面にそれぞれ設けられている。シール流路K1は、貫通孔241,231を囲むように形成されている。なお、環状凸部248,238は、それぞれ、第1凸部及び第2凸部の一例であり、シール流路K1は環状流路の一例である。
交差凸部10,30は、貫通孔241,231から環状凸部248,238を横切り発電領域に向かって直線状に延びる。交差凸部10,30の裏面には、貫通孔241,231からシール流路K1を横切って発電領域に向けて延びる流路溝10a,30aが設けられている。流路溝10a,30aは互いに重なることで燃料ガスの導入流路R1を形成する。なお、交差凸部30は第3凸部の一例である。
カソードセパレータ23の交差凸部30の長さは、アノードセパレータ24の交差凸部10より短い。このため、交差凸部30の発電領域側の端部は、交差凸部10とは重なり合わず、接続凸部32と接続される。
接続凸部32の裏面には、交差凸部30の裏面の各流路溝30aとシール流路K1のMEGA20側で接続される接続溝32aが設けられている。接続溝32aは、アノードセパレータ24の平坦面12と対向し、平坦面12には、接続溝32aに沿って複数の開口部H1が設けられている。また、接続溝32aと平坦面12の間には、導入流路R1と接続された接続流路R10が設けられている。なお、接続凸部32は第4凸部の一例である。
補助凸部11,31は環状凸部248,238から発電領域に向かって直線状に延びる。補助凸部11,31の裏面には、一端がシール流路K1に接続され他端が接続溝32aに接続された連通溝11a,31aが設けられている。連通溝11a,31aは互いに重なり合うことで燃料ガスの導入流路R1を形成する。なお、補助凸部31は第5凸部の一例である。
符号Sa~Sdは燃料ガスの経路の例を示す。燃料ガスは、符号Saで示されるように貫通孔241,231から導入流路R1に流入し、シール流路K1を経由して他の導入流路R1に拡散されて複数の開口部H1から流出する。このとき、燃料ガスは、符号Sbで示されるように、1つの導入流路R1内ではシール流路K1を横切り、接続流路R10に流れ込み、開口部H1から流出する。
また、燃料ガスは、符号Scで示されるように、交差凸部10,30内の導入流路R1からシール流路K1を通って補助凸部11,31内の導入流路R1に入って接続流路R10に至る。燃料ガスは、符号Sdで示されるように、各導入流路R1から接続流路R10を流れて複数の開口部H1から流出する。
このように、アノードセパレータ24の平坦面12には、カソードセパレータ23側の接続溝32aと対向する複数の開口部H1が設けられているため、燃料ガスは貫通孔241,231から各導入流路R1を流れて各開口部H1から流出する。開口部H1は、交差凸部10及び補助凸部11が存在しない平坦面12に設けられるため、交差凸部10または補助凸部11上に開口部H1を設ける場合よりも開口部H1を容易に位置決めすることができるため、アノードセパレータ24の生産性を向上することができる。
また、開口部H1は、接続溝32aに対向する平坦面12のどの位置に設けられても、燃料ガスを導入流路R1から接続溝32aを介し流出させることができる。このため、開口部H1の位置は、交差凸部10,30同士の間隔による制約を受けることがなく、燃料ガス流路の設計に応じて平坦面12上に配置することが可能である。
したがって、本例によると、燃料電池の流路設計の自由度と生産性が向上することが可能である。
また、各開口部H1は、各流路溝10a,30a及び連通溝11a,31aが延びる方向からずれた位置に設けられている。このため、各開口部H1と各交差凸部10,30及び補助凸部11,31の間の距離を、開口部H1の位置がずれていない場合より長く確保することができるため、開口部H1の位置決めを容易にすることができ、アノードセパレータ24の生産性をさらに向上することができる。なお、各開口部H1は、各流路溝10a,30a及び連通溝11a,31aの延びる方向上に設けられてもよい。
さらに開口部H1の数は、流路溝10a,30aの数より多い。このため、流路溝10a,30aと発電領域の間の燃料ガスの流量を、開口部H1の数が流路溝10a,30aの数より少ない場合より増加させることができる。
また、補助凸部11,31は、交差凸部10,30とは異なり、環状凸部248,238と接続凸部32の間だけに設けられるため、交差凸部10,30より全長が短い。このため、補助凸部11,31は、例えば環状凸部248,238の屈曲部248b,238bのように、交差凸部10,30が集中する部分にも設けることができるので、補助凸部11,31により導入流路R1の数を増やしてアノード流路部240の燃料ガス流路へ供給される燃料ガスの流量を増加させることができる。
また、環状凸部248,238内のシール流路K1は貫通孔241,231の縁に沿って設けられているため、シール流路K1と貫通孔241,231の間の距離を、シール流路K1の全体にわたってほぼ一定にすることができる。このため、交差凸部10,30の貫通孔241,231側の導入流路R1の長さのばらつきを抑制することが可能である。
さらに、接続凸部32内の接続溝32aも貫通孔241,231の縁に沿って設けられているため、交差凸部10,30の開口部H1側の導入流路R1の長さのばらつきも抑制することが可能である。
また、本例において、円形の複数個の開口部H1が接続溝32aに沿って設けられているが、例えば接続溝32aに沿って延びたスリット形状の1つの開口部が設けられてもよい。
図9は、スリット形状の開口部を有するアノードセパレータ24における燃料ガスの入口側マニホルド孔周辺の構成を示す平面図である。図9において、図4と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
開口部H1aは、接続凸部32の裏面の接続溝32aに沿って延びたスリット形状を有する。スリット形状の開口部H1aの面積は、円形の開口部H1より大きい。このため、例えば氷点下の環境で燃料電池を運用する場合、燃料ガス中の水分が凍結しても、開口部H1aは氷により閉塞されにくい。なお、本例においてスリット形状の開口部H1aは1個だけ設けられているが、複数個に分けて設けられてもよい。また、複数個の開口部H1aが設けられた場合、アノードセパレータ24の生産性が向上するように、各開口部H1aは導入流路R1の延びる方向からずれた位置に設けられてもよい。
なお、上記の燃料ガスの入口側マニホルド孔周辺の構成は、カソードセパレータ23の酸化剤ガスの入口側マニホルド孔周辺にも同様に設けることができる。この場合、カソードセパレータ23について、上述した内容と同様の効果が得られる。
(燃料ガスの出口側マニホルド孔周辺の構成)
図10は、アノードセパレータ24における燃料ガスの出口側マニホルド孔周辺の構成を示す平面図であり、図11は、カソードセパレータ23における燃料ガスの出口側マニホルド孔周辺の構成を示す平面図である。なお、図11は、アノードセパレータ24側からカソードセパレータ23の板面を正面視した場合の平面図である。また、図10及び図11において、図2及び図3と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
アノードセパレータ24は、外周のシールラインL0sに沿った外周凸部247と、貫通孔242を囲むばねシールラインL2sに沿った環状凸部249と、環状凸部249と交差する複数の交差凸部40と、環状凸部249の屈曲部249bに接続された補助凸部41と、排出流路R2に流れ込む燃料ガスの入口である複数の開口部H2とを有する。外周凸部247、環状凸部249、交差凸部40、及び補助凸部41は、アノードセパレータ24の板面からフレーム21側に突出する。
また、カソードセパレータ23は、外周のシールラインL0sに沿った外周凸部237と、貫通孔232を囲むばねシールラインL2sに沿った環状凸部239と、環状凸部239と交差する複数の交差凸部50と、環状凸部239の屈曲部239bに接続された補助凸部51と、各交差凸部50と接続された接続凸部52とを有する。外周凸部237、環状凸部239、交差凸部50、補助凸部51、及び接続凸部52は、カソードセパレータ23の板面から隣接の単セル2のフレーム21側、つまり外周凸部247、環状凸部249、交差凸部40、及び補助凸部41とは反対側に突出する。
互いに接合されたアノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の板面を正面視した場合、外周凸部247,237は互いに重なり、環状凸部249,239は互いに重なる。また、交差凸部40,50同士、及び補助凸部41,51同士も重なる。
図12は、図10のD-D線に沿った断面図を示し、図13は、図10のE-E線に沿った断面図を示し、図14は、図10のF-F線に沿った断面図を示す。以下の図10~図14を参照し、燃料ガスがアノード流路部240から出口側マニホルド孔に至るまでの流路の構成を説明する。
環状凸部249,239は、燃料ガスが流れる環状のシール流路K2を形成する溝249a,239aが裏面にそれぞれ設けられている。シール流路K2は、貫通孔242,232を囲むように形成されている。なお、環状凸部249,239は、それぞれ、第1凸部及び第2凸部の一例であり、シール流路K2は環状流路の一例である。
交差凸部40,50は、貫通孔242,232から環状凸部249,239を横切り発電領域に向かって直線状に延びる。交差凸部40,50の裏面には、貫通孔242,232からシール流路K2を横切って発電領域に向けて延びる流路溝40a,50aが設けられている。流路溝40a,50aは互いに重なることで燃料ガスの排出流路R2を形成する。なお、交差凸部50は第3凸部の一例である。
カソードセパレータ23の交差凸部50の長さは、アノードセパレータ24の交差凸部40より短い。このため、交差凸部50の発電領域側の端部は、交差凸部40とは重なり合わず、接続凸部52と接続される。
接続凸部52の裏面には、交差凸部50の裏面の各流路溝50aとシール流路K2のMEGA20側で接続される接続溝52aが設けられている。接続溝52aは、アノードセパレータ24の平坦面42と対向し、平坦面42には、接続溝52aに沿って複数の開口部H2が設けられている。また、接続溝52aと平坦面42の間には、排出流路R2と接続された接続流路R20が設けられている。なお、接続凸部52は第4凸部の一例である。
補助凸部41,51は環状凸部249,239から発電領域に向かって直線状に延びる。補助凸部41,51の裏面には、一端がシール流路K2に接続され他端が接続溝52aに接続された連通溝41a,51aが設けられている。連通溝41a,51aは互いに重なり合うことで燃料ガスの排出流路R2を形成する。なお、補助凸部51は第5凸部の一例である。
符号Ta~Teは燃料ガス(燃料オフガス)の経路の例を示す。燃料ガスは、符号Taで示されるように、アノード流路部240の燃料ガス流路から開口部H2を抜けて接続流路R20から複数の交差凸部40,50内の排出流路R2に分岐して貫通孔242,232に排出される。また、燃料ガスは、符号Tbで示されるように、アノード流路部240の燃料ガス流路から開口部H2を抜けて接続流路R20から補助凸部41,51内の排出流路R2を流れて複数の排出流路R2に分岐して貫通孔242,232に排出される。
このとき、燃料ガスは、符号Tc,Teで示されるように、開口部H2から接続流路R20を経由して排出流路R2に流入し、その排出流路R2内ではシール流路K2を横切り、接続流路R10に流れ込んで貫通孔242,232から排出される。また、補助凸部41,51内の排出流路R2に流入した燃料ガスは、符号Tdで示されるように、排出流路R2からシール流路K2に入り、シール流路K2から交差凸部40,50内の排出流路R2に流れる。
このように、アノードセパレータ24の平坦面42には、カソードセパレータ23側の接続溝52aと対向する複数の開口部H2が設けられているため、燃料ガスは開口部H2から各排出流路R2を流れて貫通孔242,232に排出される。開口部H2は、交差凸部40及び補助凸部41が存在しない平坦面42に設けられるため、交差凸部40または補助凸部41上に開口部H2を設ける場合よりも開口部H2を容易に位置決めすることができるため、アノードセパレータ24の生産性を向上することができる。
また、開口部H2は、接続溝52aに対向する平坦面42のどの位置に設けられても、燃料ガスをアノード流路部240の燃料ガス流路から排出流路R2に流入させることができる。このため、開口部H2の位置は、交差凸部40,50同士の間隔による制約を受けることがなく、燃料ガス流路の設計に応じて平坦面42上に配置することが可能である。
したがって、本例によると、燃料電池の流路設計の自由度と生産性が向上することが可能である。
また、各開口部H2は、各流路溝40a,50a及び連通溝41a,51aが延びる方向からずれた位置に設けられている。このため、各開口部H1と各交差凸部10,30及び補助凸部41,51の間の距離を、開口部H2の位置がずれていない場合より長く確保することができるため、開口部H2の位置決めを容易にすることができ、アノードセパレータ24の生産性をさらに向上することができる。なお、各開口部H2は、各流路溝40a,50a及び連通溝41a,51aの延びる方向上に設けられてもよい。
さらに開口部H2の数は、流路溝40a,50aの数より多い。このため、流路溝40a,50aと発電領域の間の燃料ガスの流量を、開口部H2の数が流路溝40a,50aの数より少ない場合より増加させることができる。
また、補助凸部41,51は、交差凸部40,50とは異なり、環状凸部249,239と接続凸部52の間だけに設けられるため、交差凸部40,50より全長が短い。このため、補助凸部41,51は、例えば環状凸部249,239の屈曲部249a,239bのように、交差凸部40,50が集中する部分にも設けることができるので、補助凸部41,51により排出流路R2の数を増やしてアノード流路部240の燃料ガス流路からら排出される燃料ガスの流量を増加させることができる。
また、環状凸部249,239内のシール流路K2は貫通孔242,232の縁に沿って設けられているため、シール流路K2と貫通孔242,232の間の距離を、シール流路K2の全体にわたってほぼ一定にすることができる。このため、交差凸部40,50の貫通孔242,232側の排出流路R2の長さのばらつきを抑制することが可能である。
さらに、接続凸部52内の接続溝52aも貫通孔242,232の縁に沿って設けられているため、交差凸部40,50の開口部H2側の導入流路R1の長さのばらつきも抑制することが可能である。
また、本例において、円形の複数個の開口部H2が接続溝52aに沿って設けられているが、図9に示された開口部H1aのように、接続溝52aに沿って延びたスリット形状を有する1つの開口部が設けられてもよい。なお、本例においてスリット形状の開口部は複数個に分けて設けられてもよい。
なお、上記の燃料ガスの出口側マニホルド孔周辺の構成は、カソードセパレータ23の酸化剤ガスの出口側マニホルド孔周辺にも同様に設けることができる。この場合、カソードセパレータ23について、上述した内容と同様の効果が得られる。
また、本実施例において、単セル2は、フレーム21の一方の面側に重なる一組のアノードセパレータ24及びカソードセパレータ23を含むが、これに限定されない。単セル2は、フレーム21の一方の面側のアノードセパレータ24と、フレーム21の他方の面側のカソードセパレータ23とを含んでもよい。この場合、シール流路K1,K2、導入流路R1,R3,R5、及び排出流路R2,R4,R6は、隣接する2つの単セル2のアノードセパレータ24及びカソードセパレータ23の間に形成される。
上述した実施形態は本発明の好適な実施例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。