JP2020138157A - 酸化鉄触媒の製造方法、並びにアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法 - Google Patents

酸化鉄触媒の製造方法、並びにアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カルボン酸の水素化により対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する際、経時的な触媒活性の低下が小さく、カルボン酸の転化率の経時的低下を抑制し、アルデヒド及び/又はアルコールの選択率や収率を長時間高いレベルで維持することが可能な酸化鉄触媒の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の酸化鉄触媒の製造方法は、カルボン酸を水素化して前記カルボン酸に対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造するための酸化鉄触媒の製造方法であって、ゼラチンと焼成により酸化鉄を生成しうる鉄化合物とを混合比率[前者/後者(重量比)]0.02〜0.4で含む混合物を、650〜800℃の温度で1〜10時間焼成することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、酸化鉄触媒の製造方法、並びにアルデヒド及び/又はアルコールを製造する方法に関する。詳細には、本発明は、カルボン酸の水素化により対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造するための酸化鉄触媒を製造する方法、並びに当該酸化鉄触媒を用いてカルボン酸の水素化により対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する方法に関する。
特許文献1には、酢酸から水素化によりアセトアルデヒドを製造するための触媒として、2.5ないし90重量%のパラジウムを含む酸化鉄触媒(パラジウム担持酸化鉄触媒)が開示されている。また、当該触媒を用いた酢酸からのアセトアルデヒドの製造方法により、主生成物のアセトアルデヒド以外に、メタン、エタン、エチレン、二酸化炭素、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水、未反応の酢酸等を含むガス状生成物が得られることが開示されている。
特許文献2には、酢酸から水素化によりアセトアルデヒドを製造する方法として、シリカ触媒担体上に鉄、ルテニウム、白金、錫を担持させた触媒を用いることが開示されている。
特許文献3には、酢酸から水素化によりアセトアルデヒドを製造する方法として、酸化鉄又はシリカ触媒担体上にコバルトと、鉄、モリブデンを担持させた触媒を用いることが開示されている。
非特許文献1には、酢酸から水素化によりアセトアルデヒドを製造する方法として、白金担持酸化鉄触媒を用いることにより、高選択的にアセトアルデヒドが得られることが開示されている。
特開平11−322658号公報 特表2011−529494号公報 特開2012−153698号公報
"JOURNAL OF CATALYSIS" 168, 255-264 (1997)
本発明者らは、上記文献のように酸化鉄などの鉄成分を触媒に用いて水素化反応を行ったとき、還元された鉄粒子の凝集や鉄粒子上での酢酸等のカルボン酸類の分解による鉄カーバイド(鉄炭化物)の生成などにより、反応時間が経過するにつれて触媒の活性が低下していくという問題を見出した。また、上記文献に記載の触媒では、アルデヒド及び/又はアルコールの選択率や収率が充分満足できるものではなかった。
本発明の目的は、カルボン酸の水素化により対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する際、経時的な触媒活性の低下が小さく、カルボン酸の転化率の経時的低下を抑制し、アルデヒド及び/又はアルコールの選択率や収率の経時的低下を抑制できる酸化鉄触媒の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、カルボン酸の水素化により対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する際、カルボン酸の転化率の経時的低下が小さく、アルデヒド及び/又はアルコールの選択率や収率の経時的低下を抑制できるアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ゼラチンと、焼成により酸化鉄を生成しうる鉄化合物とを特定の割合で混合した混合物を、特定の温度範囲で特定時間焼成して得られる酸化鉄触媒を用いると、カルボン酸の水素化により対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する際、経時的な触媒活性の低下が小さく、カルボン酸の転化率の経時的低下を抑制でき、アルデヒド及び/又はアルコールの選択率や収率の経時的低下も抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、カルボン酸を水素化して前記カルボン酸に対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造するための酸化鉄触媒の製造方法であって、
ゼラチンと焼成により酸化鉄を生成しうる鉄化合物とを混合比率[前者/後者(重量比)]0.02〜0.4で含む混合物を、650〜800℃の温度で1〜10時間焼成する酸化鉄触媒の製造方法を提供する。
本発明は、また、上記の製造方法で得られた酸化鉄触媒の存在下、気相中でカルボン酸を水素化して前記カルボン酸に対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する、アルデヒド及び/又はアルコールの製造方法を提供する。
上記のアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法において、酢酸を水素化してアセトアルデヒド及び/又はエタノールを製造してもよい。
本発明の酸化鉄触媒の製造方法によれば、ゼラチンと、酸化鉄の原料となる鉄化合物とを特定の割合で含む混合物を特定の温度範囲で特定時間焼成することにより製造するので、該酸化鉄触媒を前処理(還元処理)すると、アルデヒド及び/又はアルコール生成反応を触媒する鉄(金属)が円滑に生成するとともに、過度の還元による鉄(金属)の凝集が抑えられ、粒子サイズの小さい鉄(金属)が高分散状態となって存在し、触媒(活性点)の有効面積が大きくなるためか、良好な触媒活性が得られるとともに、触媒活性の経時的低下、並びにアルデヒド及び/又はアルコールの選択率や収率の経時的低下を抑制できる。
また、本発明のアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法によれば、上記の酸化鉄触媒を用いるので、カルボン酸の転化率の経時的低下を抑制できるとともに、炭化水素、ケトン、二酸化炭素などの副生を抑制でき、目的物であるアルデヒド及び/又はアルコールの選択率や収率を向上できるとともに、その選択率や収率の経時的な低下を抑制できる。
本発明のアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法の一例を示す概略フロー図である。 比較例2の触媒におけるXRD測定データを示す。 比較例3の触媒におけるXRD測定データを示す。 実施例1の触媒におけるXRD測定データを示す。 参考例1の触媒におけるXRD測定データを示す。 参考例2の触媒におけるXRD測定データを示す。 比較例2及び4の触媒におけるH2−TPR測定データを示す。
[触媒の製造方法]
本発明の酸化鉄触媒の製造方法では、カルボン酸を水素化して前記カルボン酸に対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造するための酸化鉄触媒の製造方法であって、
ゼラチンと焼成により酸化鉄を生成しうる鉄化合物とを混合比率[前者/後者(重量比)]0.02〜0.4で含む混合物を、650〜800℃の温度で1〜10時間焼成する。
上記のカルボン酸に対応するアルデヒドとは、原料カルボン酸のカルボキシル基がホルミル基に変換された化合物を意味し、カルボン酸に対応するアルコールとは、原料カルボン酸のカルボキシル基がヒドロキシメチル基に変換された化合物を意味する。上記酸化鉄には、Fe23のほか、FeOやFe34などの他の酸化状態のものも含まれる。なお、アルデヒド及び/又はアルコールとは、アルデヒドおよびアルコールのいずれか一方又は両方という意味である。以下、アルデヒド及び/又はアルコールを単に「アルデヒド等」と称する場合もある。また、カルボン酸を「カルボン酸類」、アルデヒドを「アルデヒド類」、アルコールを「アルコール類」と称する場合がある。
上記ゼラチン(CAS No.9000−70−8)は、コラーゲン分子の三重らせん構造が熱変形によってほどけたものを主成分とする混合物である。また、ゼラチンは、例えば変性したコラーゲンで、牛や豚などの動物の骨や皮をアルカリ処理したのち熱湯で抽出すると得られるものである。ゼラチンとしては、市販品を用いることができ、例えば和光純薬社製の一級ゼラチン(製品No.077-03155)を用いることができる。本発明においてゼラチンは、カルボン酸の水素化によりアルデヒド等を製造する際に、触媒である酸化鉄(Fe23)の酸素が部分的に炭素(C)に置き換わった、あるいは酸化鉄表面に炭素被膜のようなものができることによって、過剰な還元反応が抑制され、アルデヒドの選択率や収率を向上させる作用をすると推測される。
ゼラチンと前記鉄化合物の混合比率[前者/後者(重量比)])は、0.02〜0.4であり、好ましくは0.03〜0.3、より好ましくは0.04〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.2、特に好ましくは0.07〜0.15である。上記混合比率が0.02以上であることにより、炭化水素の副生が抑制され、上述のゼラチンを添加することによるアルデヒド等の選択率や収率を向上させる効果が得られる。また、上記混合比率が0.4以下であることにより、ケトンや二酸化炭素などの副生が抑制され、アルデヒド等の選択率や収率を向上させることができ、さらにその選択率や収率の経時的な低下を抑制できる。
前記ゼラチンと鉄化合物との混合物におけるゼラチンの含有量は、前記混合物全量に対して、例えば1重量%以上(1〜30重量%)、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%、さらに好ましくは4〜12重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。ゼラチンの含有量が上記範囲であると、カルボン酸転化率の経時的低下を抑制することができ、アルデヒド等の選択率や収率を向上させることができ、さらにその選択率や収率の経時的な低下を抑制できる。
本発明の製造方法で製造される酸化鉄触媒における酸化鉄(Fe23換算)の含有量は、触媒成分全量に対して、例えば30重量%以上(30〜99.9重量%)、好ましくは40〜99.8重量%、より好ましくは50〜99.5重量%、さらに好ましくは60〜99重量%、特に好ましくは70〜98.5重量%である。酸化鉄触媒における酸化鉄の含有量が上記範囲であると、十分な触媒活性を保ち、アルデヒド等への高い選択率が得られる。酸化鉄触媒における酸化鉄の含有量は、酸化鉄触媒を元素分析し、鉄(Fe)元素の割合を求め、これをFe23に換算することにより算出することができる。
上記酸化鉄触媒は、更に鉄(酸化鉄)以外の金属種を含んでいてもよく、鉄以外の金属種としては、例えば、パラジウム、モリブデンが挙げられる。なかでも、酸化鉄触媒は、更にパラジウムを含むことが好ましい。パラジウムを含む場合のパラジウム(Pd元素換算)の含有量は、酸化鉄(Fe23換算)100重量部に対して、例えば0.1〜50重量部、好ましくは0.2〜40重量部、より好ましくは0.3〜35重量部、さらに好ましくは0.4〜30重量部、特に好ましくは0.5〜25重量部である。パラジウムの含有量が上記範囲であると、十分な触媒活性を保ち、アルデヒド等の高い選択率が得られる。パラウジムは通常、焼成後はPdOなどの酸化物としても存在しているが、カルボン酸から水素化によりアルデヒド等を製造する際の還元雰囲気下(例えばH2雰囲気下)では、これらの酸化物等は、金属パラウジム(Pd)に還元される。なお、パラウジムの含有量は、触媒を元素分析し、パラウジム(Pd)元素の含有量から算出することができる。
パラジウムとしては、パラジウム(Pd)元素を含む化合物(パラジウム化合物)であればよく、硝酸パラジウム(II)水和物などの硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、酢酸パラジウムなどを用いることができる。パラジウムを配合する場合の配合量は、触媒成分全量に対して、例えば0.5〜50重量%、好ましくは1.0〜30重量%である。なお、パラジウムは、市販のものを用いることもでき、1種を単独で、2種以上を組合せて使用することができる。
上記酸化鉄触媒は、上記以外に本願発明の効果を損なわない範囲で、シリカ等からなる担体を共存させたり、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化亜鉛等の金属酸化物を含有させることができる。また、これらの金属酸化物に、白金、銅、金等の他の金属を含有させてもよい。金属酸化物(酸化鉄を除く)の含有量は、触媒全体に対して、例えば0.1〜50重量%程度である。他の金属(酸化鉄およびパラジウムを除く)の添加量は触媒全体に対して、例えば0.1〜50重量%程度である。
酸化鉄触媒の形状は、特に制限されず、粉末状であってもよく、ペレット形状等の成形したものであってもよい。なお、ペレット形状とは、1〜10mm程度の粒子状のものを意味し、円の直径が1〜10mm程度で高さ(長さ)1〜10mm程度の円柱状のものであってもよい。
本発明の酸化鉄触媒の製造方法では、ゼラチン、鉄化合物(鉄成分)などを含む触媒成分の分散液又は溶液を乾固させた後に焼成することが好ましい。また、本発明の酸化鉄触媒の製造方法では、鉄化合物(鉄成分)とゼラチン、及び必要に応じてパラジウム等を含む触媒成分の分散液又は溶液を乾固させた後、焼成してもよい。詳細には、本発明の酸化鉄触媒の製造方法は、例えば、以下(1)〜(4)の工程を含む。なお、本明細書において、触媒成分とは、ゼラチン、鉄化合物、及び鉄以外の金属の単体又は化合物をいう。
(1)鉄化合物(鉄成分)とゼラチン、必要に応じてパラジウム、および溶媒を加えて撹拌し、分散液又は溶液を調製する。
(2)調製した分散液又は溶液を加熱し、蒸発乾固させる。
(3)蒸発乾固後、乾燥させる。
(4)乾燥後、650〜800℃の温度で1〜10時間焼成する。
なお、鉄化合物(鉄成分)は、焼成後に酸化物である酸化鉄となる。つまり、鉄化合物(鉄成分)は、焼成により酸化鉄となる前駆成分である。(2)の蒸発乾固と(3)の乾燥は、分けずに一度に行ってもよい。乾燥は必ずしも行わなくてもよい。
また、上記の方法以外にも、二酸化ケイ素(シリカ)やアルミナ等の担体に鉄化合物(鉄成分)およびゼラチン、必要に応じてパラジウムなどの触媒成分を担持させる方法により製造してもよい。詳細には、シリカやアルミナ等の担体を鉄成分とゼラチン、必要に応じてパラジウムなどの触媒成分を含んだ溶液又は分散液に浸して触媒成分を含浸させた後、溶液又は分散液を蒸発乾固させ、その後、減圧あるいは常圧下で乾燥させ、乾燥後、焼成する方法により製造することができる。この方法によれば、触媒成分が担体に担持された触媒が得られる。なお、鉄化合物(鉄成分)とゼラチンの担体への含浸は、公知乃至慣用の方法にて行うことができる。
担体を用いる場合の担体の配合量は、触媒成分全量100重量部に対して、例えば10〜500重量部、好ましくは30〜300重量部である。なお、シリカやアルミナ等の担体としては、市販のものを用いることができ、シリカとしては、日本アエロジル社製「Aerosil200」等を使用することができる。特にカルボン酸の水素化における中間生成物であるアルデヒドを選択的に得たい場合は、細孔内での逐次反応の進行を防ぐため、細孔がない、もしくは細孔径が0.1マイクロメートル以上である担体を使用することが好ましい。
鉄化合物(鉄成分)としては、鉄(Fe)元素を含む化合物であればよく、酸化鉄などの酸化物、窒化鉄などの窒素化物、その他鉄化合物を用いることができる。その他鉄化合物としては、硝酸鉄(III)六水和物などの硝酸鉄、塩化鉄(III)六水和物などの塩化鉄、硫酸鉄などが挙げられる。鉄化合物(鉄成分)の配合量は、触媒成分全量に対して、例えば20〜99重量%、好ましくは40〜95重量%である。鉄化合物(鉄成分)は、市販のものを用いることもでき、1種を単独で、2種以上を組合せて使用することができる。なお、硫酸鉄を使用する場合、アンモニア等のアルカリ沈殿剤を添加して不溶性の鉄化合物として沈殿させた後、沈殿を十分水洗して硫酸イオンを除去する必要がある。
ゼラチンとしては、例えば和光純薬社製の一級ゼラチン(製品No.077-03155)を用いることができる。ゼラチンの配合量は、ゼラチンと前記鉄化合物との混合比率(原料重量比)が0.02〜0.4となる量である。具体的には、ゼラチンの配合量は、触媒成分全量に対して、例えば1重量%以上(1〜30重量%)、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%である。
溶媒としては、例えば、水;アルコール、トルエン等の有機溶媒が挙げられるが、中でも水が好ましい。よって、上記の分散液又は溶液は、水溶液又は水分散液であることが好ましい。溶媒の使用量は、加えた金属化合物(鉄化合物等)を分散又は溶解できる分量であれば特に制限されないが、触媒成分全量100重量部に対して、例えば100〜5000重量部、好ましくは300〜1000重量部である。また、パラジウム等の白金族の塩は、鉄、その他の卑金属塩と比較して析出し易いため、分散液又は溶液にクエン酸、EDTA等のキレート剤を共存させることも、触媒活性向上に有効である。キレート剤の配合量は、溶媒100重量部に対し、例えば10〜1000重量部である。また、本発明の触媒の製造方法においては溶媒を用いなくてもよい。
上記酸化鉄触媒の製造方法における蒸発乾固は、例えば50〜150℃の温度で2〜48時間行う。乾燥は、例えば50〜300℃の温度で1〜48時間行う。
本発明の酸化鉄触媒の製造方法における焼成温度は、650〜800℃であり、好ましくは660〜780℃、より好ましくは670〜760℃、さらに好ましくは670〜740℃、特に好ましくは680〜720℃である。焼成温度が650〜800℃であることにより、カルボン酸転化率の経時的低下を抑制することができ、アルデヒド等の選択率や収率を向上させることができ、またアルデヒド等の選択率や収率の経時的低下を抑制できる。
本発明の触媒の製造方法における焼成時間(焼成保持時間)は、1〜10時間、好ましくは2〜8時間、より好ましくは2.5〜7時間である。焼成時間を1〜10時間とすることにより、ケトン、一酸化炭素、二酸化炭素などの副生成物の生成を抑制することができ、アルデヒド等の選択率や収率を向上させることができ、またアルデヒド等の選択率や収率の経時的低下を抑制できる。
これらの蒸発乾固、乾燥および焼成は、一般的な電気炉などを用いて空気雰囲気下で行うことができる。焼成後、得られた粉末状の触媒を、さらに、打錠してタブレット形状にしたり、固めて成型してペレット形状にしたり、破砕したり、メッシュ等で分級したりしてもよい。
[アルデヒド及び/又はアルコールの製造方法]
本発明のアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法は、上記本発明の酸化鉄触媒の製造方法で得られた酸化鉄触媒の存在下、気相中でカルボン酸を原料として、水素化により対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する方法である。以下、本発明のアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法を、単に「アルデヒド等の製造方法」と称する場合がある。アルデヒド等の製造方法では、アルデヒドのみを製造してもよく、アルコールのみを製造してもよく、アルデヒドとともにアルコールを製造してもよい。特に本発明のアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法では、アルデヒドを製造することが好ましい。また、アルデヒド等の製造方法では、水素化は、水素(H2)ガスを用いることが好ましい。
原料として用いるカルボン酸は、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有する有機酸である。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などが挙げられる。これらの中でも、酢酸やプロピオン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましく、特に酢酸が好ましい。
目的物であるアルデヒドは、分子内に少なくとも1つのホルミル基を有する化合物である。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、アクロレイン、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。なお、アルデヒド等の製造方法では、原料であるカルボン酸に対応したアルデヒドが得られる。
目的物であるアルコール類は、分子内に少なくとも1つのヒドロキシル(水酸)基を有する化合物である。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。なお、アルデヒド等の製造方法では、原料であるカルボン酸に対応したアルコールが得られる。
アルデヒド等の製造方法では、原料カルボン酸が酢酸であり、目的物であるアルデヒドがアセトアルデヒドであり、目的物であるアルコールがエタノールであることが特に好ましい。
図1は、アルデヒド等の製造方法の一例を示す概略フロー図である。特に図1は、アルデヒド類を主な目的物とする場合の概略フロー図である。
図1に示す例では、水素ガスは水素設備Pからライン1により供給され、コンプレッサーI−1で加圧され、バッファータンクJ−1を経て、ライン2の循環ガスと合流して、ライン3により蒸発器A(カルボン酸類蒸発器)に仕込まれる。蒸発器Aには、カルボン酸類タンクK−1からポンプN−1を用いてライン4よりカルボン酸類が供給され、気化したカルボン酸類が水素ガスと共に熱交換器(加熱器)L−1、L−2で加熱され、ライン5より本発明の触媒を充填した反応器Bに仕込まれる。蒸発器Aには循環ポンプN−2が備えられている。反応器Bでカルボン酸類は水素化され、主生成物のアルデヒド類やアルコール類のほか、非凝縮性のメタン、エタン、エチレン、二酸化炭素、凝縮性のアセトン等のケトン類、水などが生成する。また、他にプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2以上の炭化水素が生成する。
カルボン酸類の水素化は、公知の方法で行うことができる。例えば、カルボン酸類を本発明の触媒の存在下で水素と反応させる。本発明の触媒は、カルボン酸類の水素化に用いる前に、予め、例えば水素と接触させることにより還元処理(前処理)を施すことが好ましい。還元処理は、例えば、50〜500℃、0.1〜5MPaの条件下、水素(H2)ガスを1〜300ml/min流通させることにより行われる。
反応器での反応温度は、例えば250〜400℃、好ましくは270〜350℃である。反応温度が高すぎるとアセトン等のケトン類の副生が増大し、アルデヒド類等の選択率が低下しやすくなる。反応器での反応圧力は、常圧、減圧、加圧下のいずれであってもよいが、例えば0〜10MPa、好ましくは0.1〜3MPaの範囲である。反応器での接触時間は、例えば0.1〜20sec、好ましくは0.1〜10secである。
反応器への水素とカルボン酸類の供給比(モル比)は、例えば水素/カルボン酸類=0.5〜200、好ましくは水素/カルボン酸類=2〜100である。
反応器におけるカルボン酸類の転化率は80%以下(例えば5〜80%)であることが望ましい。カルボン酸類の転化率が80%を超えると、副生物(アセトン等)が生成しやすくなり、アルデヒド類の選択率が低下する傾向がある。したがって、反応器における滞留時間、水素の流通速度を、カルボン酸類の転化率が80%以下となるように調整することが望ましい。
カルボン酸類と水素との反応により、前述したように、主に、未転化のカルボン酸類、未転化の水素、反応で生成したアルデヒド類、アルコール類、水、およびその他の生成物(酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類)からなるガス状反応生成物が得られる。
ガス状反応生成物から非凝縮性ガスと凝縮性成分とを分離し、当該凝縮性成分を反応液とすることができる。ガス状反応生成物から非凝縮性ガスと凝縮性成分とを分離する方法としては、例えば、カルボン酸類を水素化した反応流体を吸収塔に仕込み、該反応流体中の凝縮成分を吸収液で吸収することにより、凝縮性成分と非凝縮性のガスとを分離できる(吸収工程)。副生する炭素数2以上の炭化水素の少なくとも一部は、吸収液で吸収される。本発明の製造方法においては、このような吸収液に吸収された凝縮性成分(凝縮性成分と吸収液の混合物)も「反応液」に含める。なお、吸収工程では、非凝縮性ガスの一部が吸収液に溶解するが、吸収塔の缶出液の圧力を減じることにより、吸収液に溶解した非凝縮性ガスを放散させ、該非凝縮性ガス放散後の液を吸収塔にリサイクルする工程(放散工程)を設けることにより、水素と他の非凝縮性ガス成分とを効率よく分離できる。
吸収工程では、例えば、カルボン酸類を水素化した反応流体を吸収塔に仕込み、当該反応流体中の凝縮成分を吸収液で吸収するとともに、非凝縮性ガスを吸収液に溶解する。この吸収工程は、通常、反応工程で得られた反応流体と吸収液とを吸収塔に供給し、吸収塔内で両者を接触させることにより行われる。吸収塔としては、特に限定されず、公知乃至周知のガス吸収装置、例えば、充填塔、棚段塔、スプレー塔、濡れ壁塔などを使用できる。
また、放散工程では、吸収塔の缶出液の圧力を減じて吸収液に溶解した非凝縮性ガスを放散し、該非凝縮性ガス放散後の液を吸収塔にリサイクルする。この放散工程は、通常、吸収工程で得られた吸収塔の缶出液(凝縮成分および非凝縮性ガスを吸収、溶解した後の吸収液)を圧力を減じた放散塔に供給し、非凝縮性ガスを放散することにより行われる。放散塔としては、特に限定されず、公知乃至周知のガス放散装置、例えば、充填塔、棚段塔、スプレー塔、濡れ壁塔、気液分離器などを使用できる。
図1に示す例では、反応器Bから流出した反応流体はライン6により熱交換器L−1を経た後、熱交換器(冷却器)M−1、M−2で冷却され、ライン7より吸収塔Cの下方部に仕込まれる。吸収塔Cには、吸収液として、ライン9より後述する放散塔Dの缶出液(以後、「循環液」と称する場合がある)が仕込まれる。循環液は主に非凝縮性ガスである水素、メタン、エタン、エチレン、二酸化炭素を吸収、溶解する。また、循環液以外の吸収液(以後、「吸収塔補給液」と称する場合がある)として、ライン11より共沸溶剤(水と共沸する溶剤)を多く含む留出上相液を吸収液として仕込んでもよい。吸収塔補給液は非凝縮性ガスとともに低沸点の凝縮性成分であるアルデヒド類を吸収する。なお、留出上相液は、ライン15を通り冷却器M−3を経てライン11に供給される。放散塔Dの缶出液(ライン9)(循環液)および留出上相液(ライン11)(吸収塔補給液)の吸収塔Cへの仕込位置は、アルデヒド類および非凝縮性ガスの吸収効率等を考慮して適宜選択できるが、循環液は吸収塔Cの中段部へ、吸収塔補給液は吸収塔Cの上方部へ仕込むのが好ましい。
吸収塔Cの缶出液は、反応液タンクK−2に供されるライン14と放散塔Dに仕込まれるライン8に分かれる。ライン14の缶出液は、反応液として反応液タンクK−2に貯留される。必要に応じてこの貯留された反応液を、精製工程に供してもよい。ライン8は放散塔Dで減圧され、ライン10より吸収液に溶解した非凝縮性ガスである水素、メタン、エタン、エチレン、二酸化炭素が放散され、該非凝縮性ガス放散後の液はライン9より吸収塔Cにリサイクルされる。Q−2はベントである。
吸収塔Cに仕込まれる吸収液としては、吸収塔Cの缶出液(循環液)のみでもよいが、アルデヒド類が沸点20℃と低いアセトアルデヒドである場合は、アセトアルデヒドの回収率を向上させるため、アセトアルデヒドを含まない吸収液が好ましい。吸収液としては、未反応のカルボン酸類と副生した水とを共沸蒸留により分離する際に使用する共沸溶剤含有液のほか、吸収塔Cの缶出液からアルデヒド類を分離した後の液等の酢酸水溶液が好ましい。
吸収液として共沸溶剤含有液を用いる場合、共沸溶剤含有液中の共沸溶剤含有量は、例えば10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上である。
共沸溶剤は、水と共沸混合物を形成して沸点を下げ、かつ、水と分液することでカルボン酸類と水の分離を容易にする。共沸溶剤の例としては、エステルとしては、ギ酸イソプロピル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピルなどが、ケトンとしては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトンなどが、脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどが、脂環式炭化水素としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどが、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
これらの中でも、酢酸エチルは、カルボン酸類の水素化の副生成物として存在しやすいため、共沸溶剤の回収工程を省略することができるので、共沸溶剤として好ましい。
また、酢酸プロピル(沸点102℃)、酢酸イソブチル(沸点117℃)、酢酸sec-ブチル(沸点112℃)、プロピオン酸イソプロピル(沸点110℃)、酪酸メチル(沸点102℃)、イソ酪酸エチル(沸点110℃)など、常圧における沸点が100℃から118℃のエステルは、水との共沸混合物の水の比率が高く、かつ、酢酸より沸点が低いため、カルボン酸類と水の分離をより容易にする。また、これらのエステルは、エタノールとも共沸しないか、または、エタノールとの共沸混合物のエタノールの比率が低く、共沸溶剤の分離・回収が比較的容易である。したがって、常圧における沸点が100℃から118℃のエステルも共沸溶剤として好ましい。
また、非凝縮性ガスとして存在しやすいメタンは、極性の高い酢酸水溶液よりも極性の低い共沸溶剤によく溶解するため、共沸溶剤は、非凝縮性ガスの吸収液に適している。
吸収塔Cに供給される吸収塔補給液(ライン11)の供給量と反応流体(ライン7)の供給量との比(重量比)は、例えば前者/後者=0.1〜10であり、好ましくは前者/後者=0.3〜2である。また、吸収塔Cに供給される循環液(ライン9)の量と反応流体(ライン7)の供給量との比(重量比)は、例えば前者/後者=0.05〜20であり、好ましくは前者/後者=0.1〜10である。
吸収塔Cの段数(理論段数)は、例えば1〜20、好ましくは3〜10である。また、吸収塔Cにおける温度は、例えば0〜70℃であり、吸収塔Cにおける圧力は、例えば0.1〜5MPa(絶対圧)である。
放散塔Dにおける温度は、例えば0〜70℃である。放散塔Dにおける圧力は、吸収塔Cの圧力より低ければよく、例えば0.05〜4.9MPa(絶対圧)である。吸収塔Cの圧力と放散塔Dの圧力との差(前者−後者)は、非凝縮性ガスの放散効率やアルデヒド類のロス抑制の観点から適宜選択できるが、例えば0.05〜4.9MPa、好ましくは0.5〜2MPaである。
アルデヒド等の製造方法におけるアルデヒド類の選択率は、反応条件によっても異なるが、例えば30〜90%、好ましくは40〜90%である。また、アルコール類の選択率は、反応条件によっても異なるが、例えば5〜50%、好ましくは5〜40%である。アルデヒド類とアルコール類の合計の選択率は、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。アルデヒド類の収率は、例えば10〜50%、好ましくは20〜50%である。また、アルコール類の収率は、例えば10〜50%、好ましくは20〜50%である。なお、アルデヒド類およびアルコール類の選択率や収率は、反応液をガスクロマトグラフィー等で分析することにより求めることができる。
アルデヒド等の製造方法により得られるアルデヒド類の純度は、例えば90.0重量%以上、好ましくは95.0重量%以上、さらに好ましくは98.0重量%以上である。また、アルコール類の純度は、例えば90.0重量%以上、好ましくは95.0重量%以上、さらに好ましくは98.0重量%以上である。なお、得られたアルデヒド類やアルコール類は、必要に応じてさらに蒸留などにより精製し、さらに純度を高めることもできる。
アルデヒド等の製造方法は、上記本発明の酸化鉄触媒の製造方法で得られた触媒を用いているため、炭素数2以上の炭化水素(例えば、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、ブテン)の副生が抑制される効果を有する。炭素数2以上の炭化水素の合計の選択率は、例えば15%以下、好ましくは10%以下である。また、反応条件を上記のように調整することで、アルデヒド類等を選択的に生成できるため、別の副反応で生成するアセトン等のケトン類や二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどのガスの発生も抑制できる。アセトン等のケトン類の選択率は、例えば10%以下、好ましくは5%以下である。また、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどのガスのそれぞれの選択率は、例えば10%以下、好ましくは5%以下である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下、比較例1−5、実施例1−2、および参考例1−2に記載の方法で触媒を得た。
[比較例1]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)4.04gをイオン交換水50mLに溶解後、ホットプレートにより100℃で蒸発乾固させ、その後600℃で3hr焼成し触媒を得た。
[比較例2]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)10.10gをイオン交換水50mLに溶解後、添加剤としてゼラチン(和光純薬工業株式会社製)10.10gをゼラチン/Fe原料仕込み重量比=1.0になるよう加え、均一に混合した後、電気炉により80℃で乾燥し、600℃で3hr焼成して触媒を得た。
[比較例3]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)4.48gをイオン交換水50mLに溶解後、添加剤としてエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製)5mL、1MNaOHaq.をpHが9.0になるまで加え、均一に混合した後、電気炉により60℃で乾燥し、600℃で3hr焼成して触媒を得た。
[比較例4]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)2.53gをイオン交換水50mLに溶解後、添加剤としてゼラチン(和光純薬工業株式会社製)0.253gをゼラチン/Fe原料仕込み重量比=0.1になるよう加え、均一に混合した後、電気炉により80℃で乾燥後、600℃で6hr焼成し触媒を得た。
[比較例5]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)2.53gをイオン交換水50mLに溶解後、添加剤としてゼラチン(和光純薬工業株式会社製)1.265gをゼラチン/Fe原料仕込み重量比=0.5になるよう加え、均一に混合した後、電気炉により80℃で乾燥し、600℃で6hr焼成して触媒を得た。
[実施例1]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)2.53gをイオン交換水50mLに溶解後、添加剤としてゼラチン(和光純薬工業株式会社製)0.253gをゼラチン/Fe原料仕込み重量比=0.1になるよう加え、均一に混合した後、電気炉により80℃で乾燥し、700℃で6hr焼成して触媒を得た。
[実施例2]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)2.53gをイオン交換水50mLに溶解後、ゼラチン(和光純薬工業株式会社製)0.253gをゼラチン/Fe原料仕込み重量比=0.1になるよう加え、均一に混合した後、電気炉により80℃で乾燥後、700℃で3hr焼成し触媒を得た。
[参考例1]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)12.12gをイオン交換水50mLに溶解後、10%アンモニア水溶液(NH3aq.;和光純薬工業株式会社製)をpHが9.0になるまで加え、均一に混合した後、電気炉により110℃で乾燥し、600℃で3hr焼成して触媒を得た。
[参考例2]
硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)2.02gをイオン交換水50mLに溶解後、尿素(和光純薬工業株式会社製)3.0gを加え均一に混合し、150℃で24hr水熱合成した後、電気炉により110℃で乾燥し、600℃で3hr焼成して触媒を得た。
上記の比較例1−5、実施例1−2、および参考例1−2に記載の方法で得た触媒の添加剤、ゼラチン/Fe原料仕込み重量比および焼成条件は、次の表1に記載のとおりである。
Figure 2020138157
[触媒の反応性評価]
上記の比較例1−5、実施例1−2、および参考例1−2で得たそれぞれの触媒について、反応性評価を行った。
触媒50.0mgを固定床式気相連続流通反応装置(反応器)に接続した12mmφのSUS製反応管に充填し、10mL/minの水素ガス流通下で電気炉により触媒層温度が350℃になるように0.5時間加熱して前処理(還元処理)を行った。
上記の前処理を行った後、1.7vol.%の酢酸と10mL/minの水素ガスとを反応器に流通させて反応させた。反応器出口ガスはクーラーにて冷却して気液分離し、凝縮液を捕集した。凝縮しないガス中のアセトアルデヒド等の低沸点成分は300ccの水中にバブリングすることで捕集し、さらに捕集されないガス成分は気体状態で捕集した。反応中は、触媒層温度が350℃、反応圧力が0MPa(ゲージ圧)になるように電気炉、背圧弁を調整した。反応開始から定期的に40、130および220分経過後において、ガスを捕集し、定量および組成分析を行った。定量および組成分析は、ガスクロマトグラフとカールフィッシャー水分計を使用した。反応を開始して40分経過後の評価結果を表2、反応を開始して130分経過後の評価結果を表3、反応を開始して220分経過後の評価結果を表4に示す。なお、表2から4における「−」は、その化合物が観測されなかったことを示している。
Figure 2020138157
Figure 2020138157
Figure 2020138157
(Fe原料に対するゼラチン添加重量比による成績の比較)
表2の比較例2と実施例1との比較より、ゼラチンとFeの比率をゼラチン/Fe原料重量比を1.0から0.1に変更することで、初期(反応時間40分)のアセトアルデヒド選択率が大きく向上し、アセトアルデヒド収率も大きく向上することが分かる。また、表2の比較例1と実施例1との比較より、実施例1のゼラチンとFeの比率をゼラチン/Fe原料重量比0.1とすることで、比較例1のゼラチンを含まないときよりも初期(反応時間40分)のアセトアルデヒド選択率が大きく向上し、アセトアルデヒド収率も大きく向上することが分かる。これらのことから、Fe原料に対するゼラチンの比率を0.02〜0.4という割合とすることで、アセトアルデヒドの選択率及び収率が格段に向上するものと考えられる。
さらに検討すると、実施例1では、表3及び4から分かるとおり、反応時間経過により酢酸転化率は低下する傾向にある。一方、比較例2では、表3及び4から分かるとおり、反応時間経過により酢酸転化率は低下していない。これより、ある程度Feに対するゼラチン比率が大きい比較例2のほうが一部Fe酸化物の還元を抑制でき、全てが金属化(炭化物化)し凝集することで生じる活性低下(酢酸転化率低下)を抑制できていると考えられる。ただし、比較例2においては、酢酸転化率の低下を抑制できるが、主な生成物はアセトンであり、アセトアルデヒドはほとんど得られていない。
(焼成温度による成績の比較)
表2の比較例4と実施例1を比較すると、初期(反応時間40分)では酢酸転化率の差はない。しかし、表3及び4より、反応時間経過により比較例4(焼成温度600℃)の方が実施例1(焼成温度700℃)よりも著しく酢酸転化率が低下していることが分かる。このように焼成温度を600℃から700℃に上げることにより反応時間経過による酢酸転化率の低下を抑制できることが分かった。これは、焼成温度を上げることで、触媒表面における炭素残留物が減少し、活性点となる有効表面積が増えていることが原因であると考えられる。よって、反応時間経過による酢酸転化率の低下を抑制するうえで、焼成温度を650℃以上とすることが適切であると考えられる。
(焼成保持時間による成績の比較)
表2−4において実施例1(焼成時間6hr)と実施例2(焼成時間3hr)の比較より、焼成時間を短くすることで反応時間経過による酢酸転化率の低下を抑制できることが分かった。これは、焼成保持時間を短いと焼成時のFe粒子の凝集を抑制することができ、高い酢酸転化率を維持できるためと考えられる。また、実施例1(焼成時間6hr)の方が実施例2(焼成時間3hr)に比べて、アセトアルデヒド選択率が高く、アセトン、CO、CO2といった副生成物の生成を抑制できていることが分かる。一方、実施例2(焼成時間3hr)では、反応開始して220分経過後には、酢酸転化率は反応開始持より低下するものの、アセトアルデヒド選択率は反応開始時よりむしろ増大し、アセトアルデヒド収率も反応開始時より高い値となる。以上より、酢酸転化率、アセトアルデヒド選択率、及びアセトアルデヒド収率が高く、反応時間経過による酢酸転化率やアセトアルデヒド収率の大幅な低下も抑制できるという観点から、焼成時間を1〜10時間とすることが適切であると考えられる。
(各添加剤の反応成績比較)
比較例2−3及び参考例1−2の各添加剤を用いた結果を比較すると、参考例1の10%アンモニア水溶液を添加したとき、表4の反応時間220分において、アセトアルデヒド収率が最も高いことが分かった。また、参考例2の尿素を用いたときは、初期(反応時間40分)から反応時間130分まででアセトアルデヒド収率が向上していく傾向にある。比較例2のゼラチン、比較例3のエチレングリコール添加触媒は、アセトアルデヒド生成がほとんどなく、むしろアセトン生成が進行していることが分かる。
[XRD測定]
比較例2−3、実施例1及び参考例1−2の触媒について、全自動水平型多目的X線回折装置((株)リガク製、商品名「SmartLab」)を用いて、X線回折(XRD)パターンを分析した。比較例2の触媒の反応後の測定結果を図2、比較例3の触媒の反応後の測定結果を図3、実施例1の触媒の反応前後の測定結果を図4、参考例1の触媒の反応後の測定結果を図5、参考例2の触媒の反応後の測定結果を図6に示す。
XRD測定結果より、アセトアルデヒド選択性にはFeの粒子サイズが影響し、粒子サイズが小さいときはアセトアルデヒド選択率(収率)が高くなることが確認された。アセトンが主生成物である比較例2−3のXRDデータ(図2−3)より、アセトン生成にはFe23が部分的に還元されたFe34が寄与していることが推測される。酢酸からアセトアルデヒドへの反応はFe(metal)上で進行すると考えられている。アセトアルデヒド収率が高い参考例1−2や実施例1のように、Fe(metal)の表面でアセトアルデヒド生成が起こり、その過程でFe3Cが形成されることが示唆される。
[H2−TPR測定]
比較例2及び4の触媒を試料とし、H2−TPR(水素雰囲気下での昇温還元法)測定によりFeの化学状態を確認した。測定結果を図7に示す。下の曲線が比較例2の触媒のデータ、上の曲線が比較例4の触媒のデータである。
水素雰囲気下の昇温によるFeの推定化学変化は、Fe23→Fe34→Feであると推測される。焼成後に得られる触媒(Fe23触媒)は、昇温されるにつれFeへ変化し、化学変化時に還元ピークが見られる。図7より、比較例2(ゼラチン/Fe原料重量比=0.1)の方が、比較例4(ゼラチン/Fe原料重量比=1.0)よりも低温度領域に還元ピークが見られる。これより、比較例2のゼラチンの割合が少ない方が、低温度で還元が進行することを確認した。この結果より、ゼラチンの割合が少ない方が、アセトアルデヒドへの反応が進行するFe(金属)までの還元が低温度で進むと考えられる。よって、ゼラチン/Fe原料重量比=0.1といったゼラチンの割合が少ない方が、触媒活性の高いFe(金属)が生成しやすくなることにより、高いアセトアルデヒド収率を示すことが分かる。
以上の結果より、実施例1及び2のようにゼラチン/Fe原料重量比=0.1、焼成温度700℃程度で調製することによりFeが高分散度となり(Fe粒子サイズが小さい)有効表面積が増え、高いアセトアルデヒド収率を示すことが分かる。
A 蒸発器
B 反応器
C 吸収塔
D 放散塔
I−1〜I−2 コンプレッサー
J−1〜J−3 バッファータンク
K−1 カルボン酸類タンク
K−2 反応液タンク
L−1〜L−2 加熱器
M−1〜M−4 冷却器(クーラー)
N−1〜N−3 ポンプ(送液ポンプ)
P 水素設備(水素ボンベ)
Q−1〜Q−2 ベント
1〜15 ライン

Claims (3)

  1. カルボン酸を水素化して前記カルボン酸に対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造するための酸化鉄触媒の製造方法であって、
    ゼラチンと焼成により酸化鉄を生成しうる鉄化合物とを混合比率[前者/後者(重量比)]0.02〜0.4で含む混合物を、650〜800℃の温度で1〜10時間焼成する酸化鉄触媒の製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法で得られた酸化鉄触媒の存在下、気相中でカルボン酸を水素化して前記カルボン酸に対応するアルデヒド及び/又はアルコールを製造する、アルデヒド及び/又はアルコールの製造方法。
  3. 酢酸を水素化してアセトアルデヒド及び/又はエタノールを製造する請求項2記載のアルデヒド及び/又はアルコールの製造方法。
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