JP2020133876A - 電動車両の駆動装置 - Google Patents

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博幸 西澤
裕一郎 加藤
Yuichiro Kato
裕一郎 加藤
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Katsuaki Takahashi
克明 高橋
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Abstract

【課題】遊星歯車機構を介して接続される2機の電動機を有する車両において、低速走行時により大きな駆動力を得ることができる駆動装置を提供する。【解決手段】第1電動機12は第1サンギア24に接続され、第2電動機14は接続切換機構18を介して第2サンギア34またはリングギア26に接続される。駆動装置10は、第1および第2電動機12,14で車両を駆動する場合、第2電動機14が第2サンギア34に接続されたときには、キャリア32の回転速度が、第1および第2サンギア24,34の回転速度と等しいか、または第1および第2サンギア24,34の回転速度の間の回転速度となり、第2電動機14がリングギア26に接続されたときには、第2サンギア34がワンウェイクラッチ42により固定され、キャリア32の回転速度が、第1サンギア24およびリングギア26の回転速度よりも遅くなる。【選択図】図1

Description

本発明は、電動車両の駆動装置、特に2機の電動機を有する駆動装置に関する。
電動機の動力により車両を駆動する電動車両が知られている。下記特許文献1には、2機の電動機を備えた駆動装置(10)が開示されている。一方の電動機(モータジェネレータ80)は、遊星歯車機構のリングギア(70)に接続可能であり、他方の電動機(モータジェネレータ82)は、サンギア(71)に接続されている。遊星歯車機構のプラネタリキャリア(72)に出力軸(18)が接続されている。この駆動装置(10)は、クラッチ(C2)を切断し、ブレーキ(C1)でリングギア(70)を固定することが可能である。
下記特許文献2には、2機の電動機を備えた電気車両駆動システムが開示されている。一方の電動機(第1のモータ2)が遊星歯車機構のリングギア(歯車リング5)に接続され、他方の電動機(速度調整モータ3)がサンギア(太陽歯車4)に接続されている。遊星歯車機構のプラネタリキャリア(遊星キャリア7)に出力軸が接続されている。このシステムは、ブレーキ(制動装置8)によりサンギア(4)を固定することが可能である。
下記特許文献3には、遊星歯車機構(15)に接続された2機の電動機(第1の動力源1、第2の動力源2)を備えた車両動力伝達装置が開示されている。しかし、遊星歯車機構(15)のいずれかの要素を固定することは記載されていない。
なお、上記の( )内の部材名および符号は、下記特許文献1−3で用いられているものであり、本願の実施形態で用いられる部材名および符号とは関連しない。
米国特許第7867124号明細書 特表2013−531958号公報 特開2006−311784号公報
遊星歯車機構に接続された2機の電動機を有する駆動装置において、低速走行時に、より大きな駆動力を得たいという要望がある。
本発明は、遊星歯車機構に接続された2機の電動機を有する駆動装置において、低速走行時に大きな駆動力を得ることが可能な電動車両の駆動装置を提供する。
本発明に係る電動車両の駆動装置は、第1電動機および第2電動機と、これら2機の電動機を出力軸に接続するための遊星歯車機構とを備える。遊星歯車機構は、所定の関係をもって相対回転する第1要素、第2要素、第3要素および第4要素を有する。第4要素は出力軸等に接続される出力要素である。遊星歯車機構の第1要素に第1電動機が接続されている。さらに、当該駆動装置は、第2電動機を、遊星歯車機構の第2要素と第3要素に切換可能に接続する接続切換機構と、遊星歯車機構の第2要素の、前進方向とは逆方向の回転を阻止する逆転阻止機構とを備える。第1電動機と第2電動機で車両を駆動する場合、第2電動機が第2要素に接続されたときには、第4要素の回転速度が第1要素と第2要素の回転速度と等しいか、または第1要素と第2要素の間の回転速度となり、第2電動機が第3要素に接続されたときには、第2要素が逆転阻止機構によって固定され、第4要素の回転速度が第1要素および第3要素の回転速度より遅くなる。
遊星歯車機構の第1要素を1つのサンギアとすることができ、第2要素をもう1つのサンギアとすることができる。さらに、遊星歯車機構の第3要素と第4要素の一方をキャリアとし、他方をリングギアとすることができる。
また、遊星歯車機構は、シングルピニオン歯車列とダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式遊星歯車機構とすることができ、第1要素をダブルピニオン歯車列のサンギア、第2要素をシングルピニオン歯車列のサンギア、第3要素をリングギア、第4要素をキャリアとすることができる。
また、遊星歯車機構は、シングルピニオン歯車列とダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式遊星歯車機構とすることができ、第1要素をシングルピニオン歯車列のサンギア、第2要素をダブルピニオン歯車列のサンギア、第3要素をキャリア、第4要素をリングギアとすることができる。
また、遊星歯車機構は、第1歯車列と、シングルピニオン歯車列およびダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式の第2歯車列とを有するものとでき、第1歯車列と第2歯車列のキャリアおよびリングギアは、それぞれ一体に回転し、第1要素を第1歯車列のサンギア、第2要素をダブルピニオン歯車列のサンギア、第3要素をシングルピニオン歯車列のサンギア、第4要素をキャリアとすることができる。
さらにまた、接続切換機構は、第2電動機を第2要素と第3要素に同時に接続可能なものとすることができる。
接続切換機構によって第2電動機が接続される要素を切り換えることにより、第1電動機の出力、および第2電動機の出力の両者を減速して第4要素に伝達することができ、低速走行時により大きな駆動力を得ることができる。
本実施形態の駆動装置の概略構成を示す図である。 駆動装置の各動作モードにおける電動機、クラッチ等の状態を示す図である。 駆動装置の出力特性を示す図である。 図1に示す駆動装置の2機駆動/差動モードの共線図である。 図1に示す駆動装置の2機駆動/固定モードの共線図である。 図1に示す駆動装置の1機駆動/低減速比モードの共線図である。 図1に示す駆動装置の2機駆動/高減速比モードの共線図である。 電動機の出力特性、特に回転速度およびトルクと効率の関係を示す図である。 2機駆動/差動モードにおける電動機の運転範囲を説明する図である。 2機駆動/固定モードにおける電動機の運転範囲を説明する図である。 1機駆動/低減速比モードおよび1機駆動/高減速比モードにおける電動機の運転範囲を説明する図である。 他の実施形態の駆動装置の概略構成を示す図である。 図12に示す駆動装置の2機駆動/差動モードの共線図である。 図12に示す駆動装置の2機駆動/固定モードの共線図である。 図12に示す駆動装置の1機駆動/低減速比モードの共線図である。 図12に示す駆動装置の2機駆動/高減速比モードの共線図である。 さらに他の実施形態の駆動装置の概略構成を示す図である。 図17に示す駆動装置の2機駆動/差動モードの共線図である。 図17に示す駆動装置の2機駆動/固定モードの共線図である。 図17に示す駆動装置の1機駆動/低減速比モードの共線図である。 図17に示す駆動装置の2機駆動/高減速比モードの共線図である。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、電動車両の駆動装置10の構成を模式的に示す骨格図である。駆動装置10は、2機の電動機、つまり第1電動機12および第2電動機14と、遊星歯車機構16と、遊星歯車機構16の2つの要素に第2電動機14を切換可能に接続する接続切換機構18を備える。第1電動機12と第2電動機14は、およそ同一の性能または同一の性能を有するものとすることができる。遊星歯車機構16は、一部の要素を共有するダブルピニオン歯車列20とシングルピニオン歯車列22を有する、いわゆるラビニオ式遊星歯車機構である。
ダブルピニオン歯車列20は、第1サンギア24と、リングギア26と、アウタプラネタリピニオン28およびインナプラネタリピニオン30を回転可能に支持するプラネタリキャリア32とを有する。アウタプラネタリピニオン28、インナプラネタリピニオン30、プラネタリキャリア32をそれぞれアウタピニオン28、インナピニオン30、キャリア32と記す。アウタピニオン28はリングギア26とかみ合い、インナピニオン30は、アウタピニオン28および第1サンギア24とかみ合う。シングルピニオン歯車列22は、第2サンギア34とダブルピニオン歯車列20と共通のリングギア26、アウタピニオン28およびキャリア32を有する。アウタピニオン28は、リングギア26および第2サンギア34とかみ合う。遊星歯車機構16の相対回転する各要素、つまり第1サンギア24、第2サンギア34、リングギア26およびキャリア32は同軸配置され、この軸線周りを回転することができる。
第1サンギア24は、第1入力軸36に結合され、第1入力軸36と一体に回転する。第1入力軸36には、第1歯車対38を介して第1電動機12が接続されている。第1歯車対38は、第1電動機12の出力を減速して第1入力軸36に伝達する。第2サンギア34は、第2入力軸40に結合され、第2入力軸40と一体に回転する。第2入力軸40には、ワンウェイクラッチ42が設けられている。ワンウェイクラッチ42は、駆動装置10が駆動する電動車両が前進しているときの回転方向とは逆方向の第2入力軸40の回転を阻止する逆転阻止機構として機能する。リングギア26は、第3入力軸44に結合され、第3入力軸44と一体に回転する。第2入力軸40と第3入力軸44は、接続切換機構18と、第2歯車対46および第3歯車対48を介して第2電動機14に接続可能となっている。接続切換機構18は、ドグクラッチなどのかみ合いクラッチである第1クラッチ50と第2クラッチ52を含む。第1クラッチ50を結合状態とすることで、第2入力軸40が第2歯車対46を介して第2電動機14に接続される。第2クラッチ52を結合状態とすることで、第3入力軸44が第3歯車対48を介して第2電動機14に接続される。
キャリア32は、出力軸54に結合されており、出力軸54と一体に回転する。出力軸54には、動力伝達機構の一部である出力ギア56が設けられ、動力伝達機構を介して駆動輪に向けて動力が送出される。
第1電動機12と第2電動機14の回転速度および出力トルクは制御部58により制御される。制御部58は、第1電動機12と第2電動機14に電力を供給する電力制御装置を含み、例えば、供給電力の電圧および周波数を制御することにより、第1電動機12および第2電動機14の回転速度および出力トルクを制御する。また、制御部58は、第1クラッチ50および第2クラッチ52の制御も行う。制御部58は、例えば、第1および第2クラッチ50,52のドグリンク60,62を軸方向に摺動させるアクチュエータを制御して第1および第2クラッチ50,52を制御する。
遊星歯車機構16は、相対回転する4つの要素を含み、第1要素が第1電動機12に接続される第1サンギア24であり、第2要素および第3要素が第2電動機14に切換可能に接続される第2サンギア34およびリングギア26であり、第4要素が出力軸54に接続されるキャリア32である。
駆動装置10は、4つの動作モードで動作可能である。図2に、4つの動作モードにおける第1および第2電動機12,14、第1および第2クラッチ50,52、ワンウェイクラッチ42の状態が示されている。第1の動作モードは、第1および第2電動機12,14で車両を駆動し、さらに、第1クラッチ50を結合状態、第2クラッチ52を解放状態とすることで遊星歯車機構16を各要素が相対回転可能な差動状態とした動作モードである。この動作モードを「2機駆動/差動モード」と記す。第2の動作モードは、2機の電動機で車両を駆動し、第1および第2クラッチ50,52を結合状態とすることで遊星歯車機構16を各要素が一体となって回転する固定状態とした動作モードである。この動作モードを「2機駆動/固定モード」と記す。第3の動作モードは、第1電動機12のみで車両を駆動し、第1クラッチ50および第2クラッチ52を解放状態とした動作モードである。このとき、ワンウェイクラッチ42は、結合状態となる。この動作モードを「1機駆動モード」と記す。第4の動作モードは、第1および第2電動機12,14で車両を駆動し、第1クラッチ50を解放状態、第2クラッチ52を結合状態とした動作モードである。このとき、ワンウェイクラッチ42は、結合状態となる。この動作モードを「2機駆動/高減速比モード」と記す。
図3は、各動作モードにおける駆動装置10の出力特性を示す図である。横軸が車両の速度、縦軸が車両の駆動力を示す。2機駆動/差動モードおよび2機駆動/固定モードの動作領域は、図3においてA1で示す線と、縦軸、横軸に囲まれた範囲である。1機駆動モードの動作領域はA2で示す線と縦軸、横軸で囲まれた範囲、2機駆動/高減速比モードの動作領域はA3で示す線と縦軸、横軸で囲まれた範囲である。
図4から図7は、遊星歯車機構16の4つの要素の速度およびトルクの関係を説明する図、いわゆる共線図である。Sd,R,C,Ssで示す縦軸は、それぞれ第1サンギア24、リングギア26、キャリア32、第2サンギア34の回転速度ωSd,ωR,ωC,ωSsを表す。第1サンギア24、リングギア26、キャリア32、第2サンギア34のトルクがTSd,TR,TC,TSsで示されている。ダブルピニオン歯車列20の第1サンギア24の歯数とリングギア26の歯数の比を遊星歯車比ρdと記し、シングルピニオン歯車列22の第2サンギア34の歯数とリングギア26の歯数の比を遊星歯車比ρsと記す。さらに、第1歯車対38の減速比をZ1、第2歯車対46および第3歯車対48の減速比をZ2と記す。
図4は、2機駆動/差動モードの動作を説明する共線図である。第1サンギア24のトルクTSdは、第1電動機12のトルクT1に第1歯車対38の減速比Z1を掛けた値である(TSd=Z1×T1)。第2サンギア34のトルクTSsは、2機駆動/差動モードにおいては、第2電動機14のトルクT2に第2歯車対46の減速比Z2を掛けた値である(TSs=Z2×T2)。さらに、キャリア32のトルクTCは、第1サンギア24と第2サンギア34のトルクTSd,TSsの和であり(TC=TSd+TSs)、キャリア32のトルクTCは出力軸54のトルクT0に等しいから、出力軸54のトルクT0と第1および第2電動機12,14のトルクT1,T2は、
0=Z1×T1+Z2×T2・・・(1)
の関係を有する。また、第1電動機12のトルクT1と第2電動機14のトルクT2は、
ρs×Z1×T1=ρd×Z2×T2 ・・・(2)
の関係を有する。出力軸のトルクT0を固定した場合、トルクT1,T2は式(1)、(2)を満たさなければならないので一意に定められる。3つの要素の回転速度ωSd,ωSs,ωCは、各縦軸Sd,Ss,Cに交差する直線の交点として表される。3つの要素の回転速度は、例えば、図4において、実線で表された直線との交点ωSd,ωSs,ωCを採ることができ、またこの直線と異なる傾きの直線(例えば、図4において破線で表された直線)との交点ωSd’,ωSs’,ωCを採ることもできる。つまり、ある出力軸54のトルクと回転速度を満たす第1電動機12と第2電動機14の回転速度の組は無数に存在する。このように、2機駆動/差動モードにおいては、出力軸54のトルク、回転速度が定まっているとき、第1および第2電動機12,14の回転速度は変更可能であるが、トルクは固定される。ただし、各要素の相対速度が大きくなると、摩擦損失が増加するので、相対速度が小さくなるように第1および第2電動機12,14を運転することが好ましい。
図5は、2機駆動/固定モードの動作を説明する共線図である。2機駆動/固定モードにおいて、第1および第2クラッチ50,52は共に結合状態とされており、第2サンギア34とリングギア26が共に第2電動機14のロータ軸に結合され、第2サンギア34とリングギア26は一体となって回転する。この結果、キャリア32も他の要素と共に一体となって回転する。つまり、遊星歯車機構16は、差動動作を行わない状態すなわち固定状態となる。これにより、第1電動機12と第2電動機14のトルクT1,T2は式(2)の条件を満たす必要がなくなるので、トルクT1,T2を変更することが可能になる。2機駆動/固定モードにおいては、出力軸54のトルク、回転速度が定まっているとき、第1および第2電動機12,14の回転速度が固定されるが、トルクは変更可能である。
図6は、1機駆動モードの動作を説明する共線図である。1機駆動モードにおいて、第2電動機14は停止されるので、第2入力軸40は、第1電動機12および出力軸54のトルクにより、逆方向に駆動される。しかし、第2入力軸40上にはワンウェイクラッチ42が設けられているため、第2入力軸40は逆転せず、固定された状態となる。第1サンギア24に対するキャリア32の減速比は(ρs+ρd)/ρdであり、第1電動機12のトルクT1と出力軸54のトルクT0の関係は、
0={(ρs+ρd)/ρd}×Z1×T1 ・・・(3)
である。(ρs+ρd)/ρd>1であるので、第1サンギア24のトルクTSd(=Z1×T1)、すなわち第1入力軸36のトルクはキャリア32および出力軸54に向けて増幅される。第1電動機12のトルクT1が増幅されるので、車両速度が低い場合には、1機の電動機による駆動であっても、2機の電動機による駆動と同じ駆動力を発生することができる。
図7は、2機駆動/高減速比モードの動作を説明する共線図である。2機駆動/高減速比モードにおいては、第2電動機14はリングギア26を駆動する。第2入力軸40は、第1電動機12、第2電動機14、出力軸54のトルクにより、逆方向に駆動される。しかし、第2入力軸40上にはワンウェイクラッチ42が設けられているため、逆転はせず、固定された状態となる。第1サンギア24に対するキャリア32の減速比は(ρs+ρd)/ρdであり、リングギア26に対するキャリア32の減速比は1+ρdである。第1電動機12のトルクT1および第2電動機14のトルクT2と出力軸54のトルクT0の関係は、
0={(ρs+ρd)/ρd}×Z1×T1+(1+ρd)×Z2×T2・・・(4)
である。(ρs+ρd)/ρs>1,1+ρd>1なので、第1入力軸36のトルクおよび第3入力軸44のトルクは増幅される。式(4)を式(1)と比較すると、2機駆動/高減速比モードにおいて、2機駆動/差動モードおよび2機駆動/固定モードよりも大きな駆動力を得られることが理解できる。
図8は、電動機のトルク特性を示す図である。電動機の運転可能範囲に示されている曲線は、効率が等しい動作点を結んだ等効率線である。電動機の回転速度およびトルクが中程度のときに効率が高く、ここから離れるに従い効率が低下することが示されている。回転速度が中程度のときには、回転速度を変化させても効率は大きく変化しないが、トルクを変化させた場合には効率が変化することが理解できる。
2機駆動/差動モードにおいては、出力軸54のトルク、つまりキャリア32のトルクTCと回転速度ωCが定まると、第1サンギア24のトルクTSdおよび第2サンギア34のトルクTSsは、一意に定まる。一方で、第1サンギア24と第2サンギア34の回転速度ωSd,ωSsは、遊星歯車比ρd, ρsで定まる関係を満たす必要があるが、変化させることができる。したがって、図9の矢印で示すように、第1電動機12および第2電動機14は、出力トルク一定のまま、回転速度を変えることができる。しかし、図9から理解されるように、回転速度を変化させても効率は大きく変化しない。
2機駆動/固定モードにおいては、キャリア32のトルクTCと回転速度ωCが定まると、第1サンギア24と第2サンギア34の回転速度ωSd,ωSsが定まる。一方で、第1サンギア24のトルクTSdおよび第2サンギア34のトルクTSsは、これらのトルクの和がキャリア32のトルクTCとなるという条件の下、変化させることができる。したがって、図10に示すように、回転速度を維持したまま、第1電動機12および第2電動機14のトルクT1,T2を変更することができる。図10から理解されるように、回転速度が中程度の領域では、トルクを変更すると効率が変化し、2機の電動機の総合効率が、2機駆動/差動モードに比べて高くなる可能性がある。
1機駆動モードにおいては、第1電動機12のみで車両を駆動する。第1電動機12に着目すれば、図11に示すように、第1および第2電動機12,14の2機で駆動している場合に比べ、第1電動機12のトルクT1は高くなり、回転速度も高くなる。これにより、高効率の領域で運転することができる。
2機駆動/高減速比モードにおいては、第1入力軸36および第3入力軸44の回転は、減速して出力軸54に伝達され、第1入力軸36のトルクおよび第3入力軸44のトルクはいずれも増幅されて出力軸に伝達される。したがって、2機駆動/高減速比モードにおいては、図3に示すように、車両速度が低速のとき、より大きなトルクを発生することができる。
図12は、電動車両の駆動装置110の構成を模式的に示す骨格図である。駆動装置110は、2機の電動機、つまり第1電動機112および第2電動機114と、遊星歯車機構116と、遊星歯車機構116の2つの要素に第2電動機114を切換可能に接続する接続切換機構118を備える。第1電動機112と第2電動機114は、およそ同一の性能または同一の性能を有するものとすることができる。遊星歯車機構116は、一部の要素を共有するダブルピニオン歯車列120とシングルピニオン歯車列122を有する、いわゆるラビニオ式遊星歯車機構である。
シングルピニオン歯車列122は、第1サンギア124と、リングギア126と、第1サンギア124およびリングギア126とかみ合うアウタプラネタリピニオン128を回転可能に支持するプラネタリキャリア132とを有する。アウタプラネタリピニオン128およびプラネタリキャリア132をそれぞれアウタピニオン128、キャリア132と記す。ダブルピニオン歯車列120は、第2サンギア134と、シングルピニオン歯車列122と共通のリングギア126およびキャリア132を有する。キャリア132は、アウタピニオン128および第2サンギア134の両者とかみ合うインナプラネタリピニオン130を回転可能に支持する。インナプラネタリピニオン130をインナピニオン130と記す。アウタピニオン128は、ダブルピニオン歯車列120とシングルピニオン歯車列122で共通である。遊星歯車機構116の相対回転可能な各要素、つまり第1サンギア124、第2サンギア134、リングギア126およびキャリア132は、同軸配置され、この軸周りに回転可能である。
第1サンギア124は、第1入力軸136に結合され、第1入力軸136と一体に回転する。第1入力軸136には、第1歯車対138を介して第1電動機112が接続されている。第1歯車対138は、第1電動機112の出力を減速して第1入力軸136に伝達する。第2サンギア134は、第2入力軸140に結合され、第2入力軸140と一体に回転する。第2入力軸140には、ワンウェイクラッチ142が設けられている。ワンウェイクラッチ142は、駆動装置110が駆動する電動車両が前進しているときの回転方向とは逆方向の第2入力軸140の回転を阻止する逆転阻止機構として機能する。リングギア126は、第3入力軸144に結合され、第3入力軸144と一体に回転する。第2入力軸140と第3入力軸144は、接続切換機構118と、第2歯車対146および第3歯車対148を介して第2電動機114に接続可能となっている。接続切換機構118は、ドグクラッチなどのかみ合いクラッチである第1クラッチ150と第2クラッチ152を含む。第1クラッチ150を結合状態とすることで、第2入力軸140が第2歯車対146を介して第2電動機114に接続される。第2クラッチ152を結合状態とすることで、第3入力軸144が第3歯車対148を介して第2電動機114に接続される。
キャリア132は、出力軸154に結合されており、出力軸154と一体に回転する。出力軸154には、動力伝達機構の一部である出力ギア156が設けられ、動力伝達機構を介して駆動輪に向けて動力が送出される。
第1電動機112と第2電動機114の回転速度および出力トルクは制御部158により制御される。制御部158は、第1電動機112と第2電動機114に電力を供給する電力制御装置を含み、例えば、供給電力の電圧および周波数を制御することにより、第1電動機112および第2電動機114の回転速度および出力トルクを制御する。また、制御部158は、第1クラッチ150および第2クラッチ152の制御も行う。制御部158は、例えば、第1および第2クラッチ150,152のドグリンク160,162を軸方向に摺動させるアクチュエータを制御して第1および第2クラッチ150,152を制御する。
遊星歯車機構116は、相対回転する4つの要素を含み、第1要素が第1電動機112に接続される第1サンギア124であり、第2要素および第3要素が第2電動機114に切換可能に接続される第2サンギア134およびキャリア132であり、第4要素が出力軸154に接続されるリングギア126である。
駆動装置10は、4つの動作モードで動作可能である。4つの動作モードにおける第1および第2電動機112,114、第1および第2クラッチ150,152、ワンウェイクラッチ142の状態は、前述の図2に示すとおりである。各動作モードの名称について、駆動装置10のものを流用する。また、駆動装置110の各動作モードにおける出力特性は、前述の図3に示すとおりである。
図13から図16は、遊星歯車機構16の4つの要素の速度およびトルクの関係を説明する図、いわゆる共線図である。Sd,R,C,Ssで示す縦軸は、それぞれ第2サンギア134、リングギア126、キャリア132、第1サンギア124の回転速度ωSd,ωR,ωC,ωSsを表す。第2サンギア134、リングギア126、キャリア132、第1サンギア124のトルクがTSd,TR,TC,TSsで示されている。ダブルピニオン歯車列120の第2サンギア134の歯数とリングギア126の歯数の比を遊星歯車比ρdと記し、シングルピニオン歯車列122の第1サンギア124の歯数とリングギア126の歯数の比を遊星歯車比ρsと記す。さらに、第1歯車対138の減速比をZ1、第2歯車対146および第3歯車対148の減速比をZ2と記す。
図13は、2機駆動/差動モードの動作を説明する共線図である。第1サンギア124のトルクTSsは、第1電動機12のトルクT1に第1歯車対138の減速比Z1を掛けた値である(TSs=Z1×T1)。第2サンギア134のトルクTSdは、2機駆動/差動モードにおいては、第2電動機114のトルクT2に第2歯車対146の減速比Z2を掛けた値である(TSd=Z2×T2)。さらに、キャリア32のトルクTCは、第1サンギア124と第2サンギア134のトルクTSs,TSdの和であり(TC=TSs+TSd)、キャリア132のトルクTCは出力軸154のトルクT0に等しいから、出力軸154のトルクT0と第1および第2電動機112,114のトルクT1,T2は、
0=Z1×T1+Z2×T2・・・(5)
の関係を有する。また、第1電動機112のトルクT1と第2電動機114のトルクT2は、
(1−ρd) ×ρs×Z1×T1=(1+ρs) ×ρd×Z2×T2 ・・・(6)
の関係を有する。出力軸のトルクT0を固定した場合、トルクT1,T2は式(5)、(6)を満たさなければならないので一意に定められる。3つの要素の回転速度ωSd,ωSs,ωRは、各縦軸Sd,Ss,Rに交差する直線の交点として表される。3つの要素の回転速度は、例えば、図13において、実線で表された直線との交点ωSd,ωSs,ωRを採ることができ、またこの直線と異なる傾きの直線(例えば、図13において破線で表された直線)との交点ωSd’,ωSs’,ωRを採ることもできる。つまり、ある出力軸154のトルクと回転速度を満たす第1電動機112と第2電動機114の回転速度の組は無数に存在する。このように、2機駆動/差動モードにおいては、出力軸154のトルク、回転速度が定まっているとき、第1および第2電動機112,114の回転速度は変更可能であるが、トルクは固定される。ただし、各要素の相対速度が大きくなると、摩擦損失が増加するので、相対速度が小さくなるように第1および第2電動機112,114を運転することが好ましい。
図14は、2機駆動/固定モードの動作を説明する共線図である。2機駆動/固定モードにおいて、第1および第2クラッチ150,152は共に結合状態とされており、第2サンギア134とキャリア132が共に第2電動機114のロータ軸に結合され、第2サンギア134とキャリア132一体となって回転する。この結果、リングギア126も他の要素と共に一体となって回転する。つまり、遊星歯車機構116は、差動動作を行わない状態すなわち固定状態となる。これにより、第1電動機112と第2電動機114のトルクT1,T2は式(6)の条件を満たす必要がなくなるので、トルクT1,T2を変更することが可能になる。2機駆動/固定モードにおいては、出力軸154のトルク、回転速度が定まっているとき、第1および第2電動機112,114の回転速度が固定されるが、トルクは変更可能である。
図15は、1機駆動モードの動作を説明する共線図である。1機駆動モードにおいて、第2電動機114は停止されるので、第2入力軸140は、第1電動機112および出力軸154のトルクにより、逆方向に駆動される。しかし、第2入力軸140上にはワンウェイクラッチ142が設けられているため、第2入力軸140は逆転せず、固定された状態となる。第1サンギア124に対するキャリア132の減速比は(ρs+ρd)/ρsであり、第1電動機112のトルクT1と出力軸154のトルクT0の関係は、
0={(ρs+ρd)/ρs}×Z1×T1 ・・・(7)
である。(ρs+ρd)/ρs>1であるので、第1サンギア124のトルクTSs(=Z1×T1)はキャリア132および出力軸154に向けて増幅される。第1電動機112のトルクT1が増幅されるので、車両速度が低い場合には、1機の電動機による駆動であっても、2機の電動機による駆動と同じ駆動力を発生することができる。
図16は、2機駆動/高減速比モードの動作を説明する共線図である。2機駆動/高減速比モードにおいては、第2電動機114はキャリア132を駆動する。第2入力軸140は、第1電動機112、第2電動機114、出力軸154のトルクにより、逆方向に駆動される。しかし、第2入力軸140上にはワンウェイクラッチ142が設けられているため、逆転はせず、固定された状態となる。第1サンギア124に対するキャリア132の減速比は(ρs+ρd)/ρsであり、リングギア126に対するキャリア132の減速比は1/(1−ρd)である。第1電動機12のトルクT1および第2電動機14のトルクT2と出力軸154のトルクT0の関係は、
0={(ρs+ρd)/ρs}×Z1×T1+{1/(1−ρd)}×Z2×T2・・・(8)
である。(ρs+ρd)/ρs>1,1/(1−ρd)>1なので、第1入力軸136のトルクおよび第3入力軸144のトルクは増幅される。式(8)を式(5)と比較すると、2機駆動/高減速比モードにおいて、2機駆動/差動モードおよび2機駆動/固定モードよりも大きな駆動力を得られることが理解できる。
駆動装置110においても、駆動装置10と同様、2機の電動機で車両を駆動する場合に、高低2つの減速比を達成することができ、後減速比を選択することにより、より大きな車両駆動力を発生することができる。
図17は、電動車両の駆動装置210の構成を模式的に示す骨格図である。駆動装置210は、2機の電動機、つまり第1電動機212および第2電動機214と、遊星歯車機構216と、遊星歯車機構216の2つの要素に第2電動機214を切換可能に接続する接続切換機構218を備える。第1電動機212と第2電動機214は、およそ同一の性能または同一の性能を有するものとすることができる。遊星歯車機構216は、第1歯車列219と第2歯車列220を有し、第2歯車列220は、一部の要素を共有するダブルピニオン歯車列221とシングルピニオン歯車列222を有する、いわゆるラビニオ式遊星歯車機構である。
第1歯車列219は、第1サンギア224と、第1リングギア226と、第1プラネタリピニオン228を回転可能に支持するプラネタリキャリア232とを有する。第1プラネタリピニオン228およびプラネタリキャリア232をそれぞれ第1ピニオン228およびキャリア232と記す。
第2歯車列220のダブルピニオン歯車列221は、第2サンギア225と第2リングギア227と、第1歯車列219と共通のキャリア232を有し、キャリア232は、第1ピニオン228と共通の軸にてアウタプラネタリピニオン229を回転可能に支持し、さらにインナプラネタリピニオン230を回転可能に支持する。アウタプラネタリピニオン229およびインナプラネタリピニオン230をそれぞれアウタピニオン229、インナピニオン230と記す。第2リングギア227は、第1リングギア226と一体に回転する。アウタピニオン229は、第1ピニオン228と共通の軸上に配置されるが、第1ピニオン228とは独立して回転することができる。アウタピニオン229は、リングギア227およびインナピニオン230とかみ合い、インナピニオン230はさらに第2サンギア225とかみ合う。
第2歯車列220のシングルピニオン歯車列222は、第3サンギア234とダブルピニオン歯車列221と共通の第2リングギア227、アウタピニオン229およびキャリア232を有する。アウタピニオン229は、第2リングギア227と第3サンギア234とかみ合う。遊星歯車機構216の相対回転する各要素、つまり第1サンギア224、第2サンギア225、第1および第2リングギア226,227並びにキャリア232は同軸配置され、この軸線周りを回転することができる。
第1サンギア224は、第1入力軸236に結合され、第1入力軸236と一体に回転する。第1入力軸236には、第1歯車対238を介して第1電動機212が接続されている。第1歯車対238は、第1電動機212の出力を減速して第1入力軸236に伝達する。第2サンギア225は、第2入力軸240に結合され、第2入力軸240と一体に回転する。第2入力軸240には、ワンウェイクラッチ242が設けられている。ワンウェイクラッチ242は、駆動装置210が駆動する電動車両が前進しているときの回転方向とは逆方向の第2入力軸240の回転を阻止する逆転阻止機構として機能する。第3サンギア234は、第3入力軸244に結合され、第3入力軸244と一体に回転する。第2入力軸240と第3入力軸244は、接続切換機構218と、第2歯車対246および第3歯車対248を介して第2電動機214に接続可能となっている。接続切換機構218は、ドグクラッチなどのかみ合いクラッチである第1クラッチ250と第2クラッチ252を含む。第1クラッチ250を結合状態とすることで、第2入力軸240が第2歯車対246を介して第2電動機214に接続される。第2クラッチ252を結合状態とすることで、第3入力軸244が第3歯車対248を介して第2電動機214に接続される。
キャリア232は、出力軸254に結合されており、出力軸254と一体に回転する。出力軸254には、動力伝達機構の一部である出力ギア256が設けられ、動力伝達機構を介して駆動輪に向けて動力が送出される。
第1電動機212と第2電動機214の回転速度および出力トルクは制御部258により制御される。制御部258は、第1電動機212と第2電動機214に電力を供給する電力制御装置を含み、例えば、供給電力の電圧および周波数を制御することにより、第1電動機212および第2電動機214の回転速度および出力トルクを制御する。また、制御部258は、第1クラッチ250および第2クラッチ252の制御も行う。制御部258は、例えば、第1および第2クラッチ250,252のドグリンク260,262を軸方向に摺動させるアクチュエータを制御して第1および第2クラッチ250,252を制御する。
遊星歯車機構216は、相対回転する4つの要素を含み、第1要素が第1電動機212に接続される第1サンギア224であり、第2要素および第3要素が第2電動機214に切換可能に接続される第2サンギア225および第3サンギア234であり、第4要素が出力軸254に接続されるキャリア232である。
駆動装置210は、4つの動作モードで動作可能である。4つの動作モードにおける第1および第2電動機212,214、第1および第2クラッチ250,252、ワンウェイクラッチ242の状態は、前述の図2に示すとおりである。各動作モードの名称について、駆動装置10のものを流用する。また、駆動装置110の各動作モードにおける出力特性は、前述の図3に示すとおりである。
図18から図21は、遊星歯車機構16の4つの要素の速度およびトルクの関係を説明する図、いわゆる共線図である。Sd,R,C,Ss,Sで示す縦軸は、それぞれ第2サンギア225、第1および第2リングギア226,227、キャリア232、第3サンギア234、第1サンギア224の回転速度ωSd,ωR,ωC,ωSs,ωSを表す。第2サンギア225、第1および第2リングギア226,227、キャリア232、第3サンギア234、第1サンギア224のトルクがTSd,TR,TC,TSs,TSで示されている。第1歯車列219の第1サンギア224と第1リングギア226の歯数比を遊星歯車比ρと記し、第2歯車列220のダブルピニオン歯車列221の第2サンギア225と第2リングギア227の歯数比を遊星歯車比ρdと記し、シングルピニオン歯車列222の第3サンギア234とリングギア227の歯数比を遊星歯車比ρsと記す。さらに、第1歯車対38の減速比をZ1、第2歯車対46および第3歯車対48の減速比をZ2と記す。
図18は、2機駆動/差動モードの動作を説明する共線図である。第1サンギア224のトルクTSは、第1電動機212のトルクT1に第1歯車対238の減速比Z1を掛けた値である(TS=Z1×T1)。第2サンギア225のトルクTSdは、2機駆動/差動モードにおいては、第2電動機14のトルクT2に第2歯車対246の減速比Z2を掛けた値である(TSd=Z2×T2)。さらに、キャリア232のトルクTCは、第1サンギア224と第2サンギア225のトルクTS,TSdの和であり(TC=TS+TSd)、キャリア232のトルクTCは出力軸254のトルクT0に等しいから、出力軸254のトルクT0と第1および第2電動機212,214のトルクT1,T2は、
0=Z1×T1+Z2×T2・・・(9)
の関係を有する。また、第1電動機212のトルクT1と第2電動機214のトルクT2は、
ρd×Z1×T1=ρ×Z2×T2 ・・・(10)
の関係を有する。出力軸のトルクT0を固定した場合、トルクT1,T2は式(9)、(10)を満たさなければならないので一意に定められる。3つの要素の回転速度ωSd,ωS,ωCは、各縦軸Sd,S,Cに交差する直線の交点として表される。3つの要素の回転速度は、例えば、図18において、実線で表された直線との交点ωSd,ωS,ωCを採ることができ、またこの直線と異なる傾きの直線(例えば、図18において破線で表された直線)との交点ωSd’,ωS’,ωCを採ることもできる。つまり、ある出力軸254のトルクと回転速度を満たす第1電動機212と第2電動機214の回転速度の組は無数に存在する。このように、2機駆動/差動モードにおいては、出力軸254のトルク、回転速度が定まっているとき、第1および第2電動機212,214の回転速度は変更可能であるが、トルクは固定される。ただし、各要素の相対速度が大きくなると、摩擦損失が増加するので、相対速度が小さくなるように第1および第2電動機212,214を運転することが好ましい。
図19は、2機駆動/固定モードの動作を説明する共線図である。2機駆動/固定モードにおいて、第1および第2クラッチ250,252は共に結合状態とされており、第2サンギア225と第3サンギア234が共に第2電動機214のロータ軸に結合され、第2サンギア225と第3サンギア234が一体となって回転する。この結果、キャリア232も他の要素と共に一体となって回転する。つまり、第2歯車列220は、差動動作を行わない状態すなわち固定状態となり、遊星歯車機構216も固定状態となる。これにより、第1電動機212と第2電動機214のトルクT1,T2は式(10)の条件を満たす必要がなくなるので、トルクT1,T2を変更することが可能になる。2機駆動/固定モードにおいては、出力軸254のトルク、回転速度が定まっているとき、第1および第2電動機212,214の回転速度が固定されるが、トルクは変更可能である。
図20は、1機駆動モードの動作を説明する共線図である。1機駆動モードにおいて、第2電動機214は停止されるので、第2入力軸240は、第1電動機212および出力軸254のトルクにより、逆方向に駆動される。しかし、第2入力軸240上にはワンウェイクラッチ242が設けられているため、第2入力軸240は逆転せず、固定された状態となる。第1サンギア224に対するキャリア232の減速比は(ρ+ρd)/ρであり、第1電動機212のトルクT1と出力軸254のトルクT0の関係は、
0={(ρ+ρd)/ρ}×Z1×T1 ・・・(11)
である。(ρ+ρd)/ρ>1であるので、第1サンギア224のトルクTS(=Z1×T1)はキャリア232および出力軸254に向けて増幅される。第1電動機212のトルクT1が増幅されるので、車両速度が低い場合には、1機の電動機による駆動であっても、2機の電動機による駆動と同じ駆動力を発生することができる。
図21は、2機駆動/高減速比モードの動作を説明する共線図である。2機駆動/高減速比モードにおいては、第2電動機214は第3サンギア234を駆動する。第2入力軸240は、第1電動機212、第2電動機214、出力軸254のトルクにより、逆方向に駆動される。しかし、第2入力軸240上にはワンウェイクラッチ242が設けられているため、逆転はせず、固定された状態となる。第1サンギア224に対するキャリア232の減速比は(ρ+ρd)/ρであり、第3サンギア234に対するキャリア232の減速比は(ρs+ρd)/ρsである。第1電動機212のトルクT1および第2電動機214のトルクT2と出力軸254のトルクT0の関係は、
0={(ρ+ρd)/ρ}×Z1×T1+{(ρs+ρd)/ρs}×Z2×T2・・・(12)
である。(ρ+ρd)/ρ>1,(ρs+ρd)/ρs>1なので、第1入力軸136のトルクおよび第3入力軸244のトルクは増幅される。式(12)を式(9)と比較すると、2機駆動/高減速比モードにおいて、2機駆動/差動モードおよび2機駆動/固定モードよりも大きな駆動力を得られることが理解できる。
駆動装置210においても、駆動装置10と同様、2機の電動機で車両を駆動する場合に、高低2つの減速比を達成することができ、高減速比で駆動することにより、より大きな車両駆動力を発生することができる。
駆動装置10,110,210のワンウェイクラッチ42,142,242は、第2電動機14,114、214を停止する際に作動するブレーキに置き換えることができる。また、第1クラッチ50,150,250および第2クラッチ52,152,252は、摩擦クラッチとすることができる。
以下、本発明の他の態様を記す。
(1)所定の関係をもって相対回転する第1要素、第2要素、第3要素および第4要素を有し、第4要素が出力要素である遊星歯車機構と、
遊星歯車機構の第1要素に接続された第1電動機と、
第2電動機と、
第2電動機を、遊星歯車機構の第2要素と第3要素に切換可能に接続する接続切換機構と、
遊星歯車機構の第2要素の、前進方向とは逆方向の回転を阻止する逆転阻止機構と、
を備え、
遊星歯車機構の第1要素が第1サンギアであり、第3要素が第2サンギアであり、
遊星歯車機構の第3要素と第4要素の一方がキャリアであり、他方がリングギアである、
電動車両の駆動装置。
(2)
上記(1)に電動車両の駆動装置であって、
遊星歯車機構は、シングルピニオン歯車列とダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式遊星歯車機構であり、
第1要素がダブルピニオン歯車列のサンギアであり、
第2要素がシングルピニオン歯車列のサンギアであり、
第3要素がリングギアであり、
第4要素がキャリアである、
電動車両の駆動装置。
(3)
上記(1)に電動車両の駆動装置であって、
遊星歯車機構は、シングルピニオン歯車列とダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式遊星歯車機構であり、
第1要素がシングルピニオン歯車列のサンギアであり、
第2要素がダブルピニオン歯車列のサンギアであり、
第3要素がキャリアであり、
第4要素がリングギアである、
電動車両の駆動装置。
(4)所定の関係をもって相対回転する第1要素、第2要素、第3要素および第4要素を有し、第4要素が出力要素である遊星歯車機構と、
遊星歯車機構の第1要素に接続された第1電動機と、
第2電動機と、
第2電動機を、遊星歯車機構の第2要素と第3要素に切換可能に接続する接続切換機構と、
遊星歯車機構の第2要素の、前進方向とは逆方向の回転を阻止する逆転阻止機構と、
を備え、
遊星歯車機構は、第1歯車列と、シングルピニオン歯車列およびダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式の第2歯車列とを有し、第1歯車列と第2歯車列のキャリアおよびリングギアは、それぞれ一体に回転し、
第1要素が第1歯車列のサンギアであり、
第2要素がダブルピニオン歯車列のサンギアであり、
第3要素がシングルピニオン歯車列のサンギアであり、
第4要素がキャリアである、
電動車両の駆動装置。
10 駆動装置、12 第1電動機、14 第2電動機、16 遊星歯車機構、18 接続切換機構、20 ダブルピニオン歯車列、22 シングルピニオン歯車列、24 第1サンギア(第1要素)、26 リングギア(第3要素)、28 アウタピニオン、30 インナピニオン、32 キャリア(第4要素)、34 第2サンギア(第2要素)、36 第1入力軸、38 第1歯車対、40 第2入力軸、42 ワンウェイクラッチ(逆転阻止機構)、44 第3入力軸、46 第2歯車対、48 第3歯車対、50 第1クラッチ、52 第2クラッチ、54 出力軸、56 出力ギア、58 制御部、60,62 ドグリンク、110 駆動装置、112 第1電動機、114 第2電動機、116 遊星歯車機構、118 接続切換機構、120 ダブルピニオン歯車列、122 シングルピニオン歯車列、124 第1サンギア(第1要素)、126 リングギア(第4要素)、128 アウタピニオン、130 インナピニオン、132 キャリア(第3要素)、134 第2サンギア(第2要素)、136 第1入力軸、138 第1歯車対、140 第2入力軸、142 ワンウェイクラッチ(逆転阻止機構)、144 第3入力軸、146 第2歯車対、148 第3歯車対、150 第1クラッチ、152 第2クラッチ、154 出力軸、156 出力ギア、158 制御部、160,162 ドグリンク、210 駆動装置、212 第1電動機、214 第2電動機、216 遊星歯車機構、218 接続切換機構、219 第1歯車列、220 第2歯車列、221 ダブルピニオン歯車列、222 シングルピニオン歯車列、224 第1サンギア(第1要素)、225 第2サンギア(第2要素)、226 第1リングギア、227 第2リングギア、228 第1ピニオン、229 アウタピニオン、230 インナピニオン、232 キャリア(第4要素)、234 第3サンギア(第3要素)、236 第1入力軸、238 第1歯車対、240 第2入力軸、242 ワンウェイクラッチ(逆転阻止機構)、244 第3入力軸、246 第2歯車対、248 第3歯車対、250 第1クラッチ、252 第2クラッチ、254 出力軸、256 出力ギア、258 制御部、260,262 ドグリンク。

Claims (6)

  1. 所定の関係をもって相対回転する第1要素、第2要素、第3要素および第4要素を有し、第4要素が出力要素である遊星歯車機構と、
    遊星歯車機構の第1要素に接続された第1電動機と、
    第2電動機と、
    第2電動機を、遊星歯車機構の第2要素と第3要素に切換可能に接続する接続切換機構と、
    遊星歯車機構の第2要素の、前進方向とは逆方向の回転を阻止する逆転阻止機構と、
    を備え、
    第1電動機と第2電動機で車両を駆動する場合、第2電動機が第2要素に接続されたときには、第4要素の回転速度が第1要素と第2要素の回転速度と等しいか、または第1要素と第2要素の間の回転速度となり、第2電動機が第3要素に接続されたときには、第2要素が逆転阻止機構によって固定され、第4要素の回転速度が第1要素および第3要素の回転速度より遅くなる、
    電動車両の駆動装置。
  2. 請求項1に記載の電動車両の駆動装置であって、
    遊星歯車機構の第1要素が1つのサンギアであり、第3要素がもう1つのサンギアであり、
    遊星歯車機構の第3要素と第4要素の一方がキャリアであり、他方がリングギアである、
    電動車両の駆動装置。
  3. 請求項2に記載の電動車両の駆動装置であって、
    遊星歯車機構は、シングルピニオン歯車列とダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式遊星歯車機構であり、
    第1要素がダブルピニオン歯車列のサンギアであり、
    第2要素がシングルピニオン歯車列のサンギアであり、
    第3要素がリングギアであり、
    第4要素がキャリアである、
    電動車両の駆動装置。
  4. 請求項2に記載の電動車両の駆動装置であって、
    遊星歯車機構は、シングルピニオン歯車列とダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式遊星歯車機構であり、
    第1要素がシングルピニオン歯車列のサンギアであり、
    第2要素がダブルピニオン歯車列のサンギアであり、
    第3要素がキャリアであり、
    第4要素がリングギアである、
    電動車両の駆動装置。
  5. 請求項1に記載の電動車両の駆動装置であって、
    遊星歯車機構は、第1歯車列と、シングルピニオン歯車列およびダブルピニオン歯車列を有するラビニオ式の第2歯車列とを有し、第1歯車列と第2歯車列のキャリアおよびリングギアは、それぞれ一体に回転し、
    第1要素が第1歯車列のサンギアであり、
    第2要素がダブルピニオン歯車列のサンギアであり、
    第3要素がシングルピニオン歯車列のサンギアであり、
    第4要素がキャリアである、
    電動車両の駆動装置。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の電動車両の駆動装置であって、接続切換機構は、第2電動機を第2要素と第3要素に同時に接続可能である、電動車両の駆動装置。
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