JP4103866B2 - ハイブリッド変速機 - Google Patents
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Description
また減速に際しては、要求駆動力や車速といった走行状態に応じて目標変速比を決定し、実変速比がこれに追従するようハイブリッド変速機を変速制御しながら減速を行わせる。
そこで、エンジンに係わる回転要素とエンジンとの間にエンジンクラッチを介在させ、これらの間を適宜切り離し得るようになすのが一般的である。
しかし、かようにモータ/ジェネレータの制御を停止させると共にエンジンクラッチを解放させた状態で減速を行うと、今度は、ハイブリッド変速機を表す共線図上のレバーが、制動操作に依らない自然減速時はイナーシャの最も大きな出力軸を中心として回動し、制動操作に依る制動減速時は、モータ/ジェネレータのうちイナーシャの大きい方のモータ/ジェネレータを中心として回動し、この場合もモータ/ジェネレータの過回転に関する問題を生ずる。
ちなみに、この時エンジンクラッチを締結したままだと、エンジン回転数を維持するために、ハイ側への変速が行われる可能性があり、この変速によっても運転者が減速不足を感じるようになる。
先ず前提となるハイブリッド変速機は、エンジンと、出力軸と、2個のモータ/ジェネレータとの間を差動装置により相互に連結して該モータ/ジェネレータの制御により変速可能に構成され、上記差動装置を構成する回転要素のうち、エンジンに係わる回転要素、およびエンジン間にエンジンクラッチを介在させたものである。
つまり、上記エンジンクラッチを解放すると共に上記両モータ/ジェネレータの制御を停止した状態での減速時に、これらモータ/ジェネレータの回転数が許容回転数を越えることのないよう、これらモータ/ジェネレータの制御停止状態でのフリクショントルクを定めて両モータ/ジェネレータを構成した点に特徴づけられる。
上記の減速時でも、モータ/ジェネレータの回転数が許容回転数を越えることがなくなり、モータ/ジェネレータの過回転を防止してその耐久性が損なわれたり、運転者に違和感を与えるという問題を回避することができる。
図1は、本発明の一実施例になるハイブリッド変速機1を搭載する車両の駆動系を示す。
車両の駆動系は、ハイブリッド変速機1と、その入力側におけるエンジン2と、これら両者間に介在させたエンジンクラッチE/Cと、ハイブリッド変速機1の出力側におけるディファレンシャルギヤ装置3と、ハイブリッド変速機1からの出力をディファレンシャルギヤ装置3により分配されて伝達される左右駆動輪4L,4Rとで構成する。
ハイブリッド変速機1を図1に基づき詳述するに、これは、軸線方向(図の左右方向)に2個の単純遊星歯車組21,22を同軸に配して具える。
エンジン2に近い側における遊星歯車組21を、リングギヤR1、サンギヤS1、および、これらギヤに噛合させたピニオンP1により構成し、
エンジン2から遠い側における遊星歯車組22を、リングギヤR2、サンギヤS2、および、これらギヤに噛合させたピニオンP2により構成する。
これらピニオンP1,P2を共通なキャリアCに回転自在に支持して、遊星歯車組21,22がラビニョオ型プラネタリギヤセットを構成するようになす。
このラビニョオ型プラネタリギヤセットが本発明における差動装置に相当する。
複合電流2層モータ23は、内側ロータ23riと、これを包囲する環状の外側ロータ23roとを、変速機ケース24内に同軸に回転自在に支持して具え、これら内側ロータ23riおよび外側ロータ23ro間における環状空間に同軸に配置した環状ステ-タ23sを変速機ケース1に固設して構成する。
第1のモータ/ジェネレータMG1(外側ロータ23ro)を、上記ラビニョオ型プラネタリギヤセットにおけるサンギヤS1に結合し、第2のモータ/ジェネレータMG2(内側ロータ23ri)を、上記ラビニョオ型プラネタリギヤセットにおけるサンギヤS2に結合する。
そしてリングギヤR1は入力要素とし、エンジンクラッチE/Cを介してエンジン2に結合可能とする。
更にキャリアCは出力要素とし、これに出力歯車25を同軸一体に結合して出力軸となし、出力歯車25にカウンターギヤ26を噛合させる。
カウンターギヤ26はカウンターシャフト27に結合して設け、このカウンターシャフト27には更にファイナルドライブピニオン28を結合して設ける。
そしてファイナルドライブピニオン28を、ディファレンシャルギヤ装置3に結合されたファイナルドライブリングギヤ29に噛合させる。
図2にレバーLBで示すように、ローブレーキL/Bを締結させてリングギヤR2を回転数0に固定した変速(LB)モードでは、共線図上のレバーLBがAを支点として回動するため変速比固定モードとなり、そのレバー比でエンジン2(入力In)からのトルクおよびモータ/ジェネレータMG1,MG2からのトルクがそれぞれ増大されて出力Outに至るため、ローブレーキL/Bを解放している場合よりも大きな駆動力を車輪4L,4Rに向かわせることができる。
従って、この変速比固定のLBモードは大きな駆動力が要求される車両の発進時に用いる。
この時、オーバードライブブレーキOD/Bの解放と相まって、モータ/ジェネレータMG1,MG2の制御により無段変速が可能である。
なお、ローブレーキL/Bを締結させた変速比固定モードから当該無段変速モードへの切り替えに当たっては、モータ/ジェネレータMG1,MG2の適切な出力トルク制御により当該モード切り替え時における出力トルク変化を滑らかなものにし、モード切り替えショックを緩和することができる。
ところで無段変速モードにおいては、第1モータ/ジェネレータMG1が後進回転している場合、この第1モータ/ジェネレータMG1で発電して得られた電力で第2モータ/ジェネレータMG2を駆動し、第1モータ/ジェネレータMG1が前進回転している場合、第2モータ/ジェネレータMG2で発電して得られた電力で第1モータ/ジェネレータMG1を駆動というように、電力収支が釣り合ってバッテリ持ち出し電力の少ない、若しくは0の状態での走行が可能である。
また必要であれば、発電中のモータ/ジェネレータを駆動出力が増大するよう制御したり、両モータ/ジェネレータMG1,MG2を共に駆動状態となるよう制御することにより、エンジン出力以上の大きなパワーで車両を走行させることもできる。
またこれら変速比のもとでは、機械的な伝動効率よりも効率の低い電気的な伝動の割合を低いことから、ハイブリッド変速機の伝動効率を高めることができる。
このとき共線図上のレバーODがBを支点として回動するため、この場合も変速比固定モードとなるが、ここではそのレバー比でエンジン2(入力In)の回転が増速されて出力Outに至るため、オーバードライブブレーキOD/Bを解放している場合よりも高速回転を車輪4L,4Rに向かわせることができる。
従って、この変速比固定のODモードは出力Outの高速回転が要求される車両の高速走行時に用いる。
そして電気走行中の変速制御に当たっては、モータ/ジェネレータMG1の逆回転速度およびモータ/ジェネレータMG2の正回転速度を制御することにより要求される変速を遂行することができる。
なお電気走行中に上記のごとく、エンジンに結合したリングギヤR1の回転数を0に保つ場合、エンジンクラッチE/Cの解放は必ずしも必要ではないが、本実施例では電気走行中にエンジンクラッチE/Cを解放するものとする。
しかし、かようにモータ/ジェネレータMG1,MG2の制御を停止させると共にエンジンクラッチE/Cを解放させた状態で減速を行うと、今度は、図2に示す共線図上においてレバーが、制動操作に依らない自然減速時は図3に矢印で示すように、イナーシャの最も大きな車輪駆動系への出力Outを中心として回動し、制動操作に依る制動減速時は図4に矢印で示すように、モータ/ジェネレータMG1,MG2のうちイナーシャの大きい方のモータ/ジェネレータ(本実施例では、MG2とする)を中心として回動し、この場合もモータ/ジェネレータMG1,MG2の過回転に関する問題を生ずる。
ちなみに、この時エンジンクラッチE/Cを締結したままだと、エンジン回転数を維持するために、ハイ側への変速が行われる可能性があり、この変速によっても運転者が減速不足を感じるようになる。
この場合は、共線図上のレバーが図3に示すように、イナーシャの最も大きな車輪駆動系への出力OutにおけるD点を中心として、共線図上のフリクショントルクバランスの関係で例えば破線図示の状態から矢印で示す方向へ実線図示の状態へと回動し、モータ/ジェネレータMG1がX1で示すように回転数を低下され、モータ/ジェネレータMG2がX2で示すように回転数を上昇されることから、モータ/ジェネレータMG2の回転数がモータ/ジェネレータMG1の回転数よりも高い状態でトルクバランスする。
(α+1)T1=β・T2
が成立し、
また、モータ/ジェネレータMG1,MG2の制御停止状態でのフリクショントルクをそれぞれT1r,T2rとすると、
(α+1)T1r=β・T2r
が成立し、
更に、モータ/ジェネレータMG1,MG2のフリクショントルク調整量をそれぞれTft1,Tft2とすると、
(α+1)(T1r+Tft1)=β・(T2r+Tft2)
が成立する。
なおモータ/ジェネレータMG1,MG2のフリクショントルク調整量Tft1,Tft2を実現するには、モータ/ジェネレータMG1,MG2内における軸受などの回転部分の動摩擦係数を材質変更や構造変更などにより調整したり、コギングトルクを変更するなど、様々な手法を用いることができる。
この場合は、共線図上のレバーが図4に示すように、制動操作に依る出力Outの矢印Y2で示す回転数低下により、イナーシャの大きい方のモータ/ジェネレータMG2におけるF点を中心として、例えば破線図示の状態から矢印で示す方向へ実線図示の状態へと回動し、出力Outの0への回転数低下につれ共線図上のフリクショントルクバランスの関係でモータ/ジェネレータMG1がY1で示すように回転数を一旦0にされた後、後進回転数を上昇されることから、モータ/ジェネレータMG1の回転数がモータ/ジェネレータMG2の回転数よりも高い状態でトルクバランスする。
(α+1)T1=β・T2
が成立し、
また、モータ/ジェネレータMG1,MG2の制御停止状態でのフリクショントルクをそれぞれT1r,T2rとすると、
(α+1)T1r=β・T2r
が成立し、
更に、モータ/ジェネレータMG1,MG2のフリクショントルク調整量をそれぞれTft1,Tft2とすると、
(α+1)(T1r+Tft1)=β・(T2r+Tft2)
が成立する。
なおモータ/ジェネレータMG1,MG2のフリクショントルク調整量Tft1,Tft2を実現するには、モータ/ジェネレータMG1,MG2内における軸受などの回転部分の動摩擦係数を材質変更や構造変更などにより調整したり、コギングトルクを変更するなど、様々な手法を用いることができる。
前記のような自然減速時や制動減速時でも、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数が許容回転数を越えることがなくなり、モータ/ジェネレータの過回転を防止してその耐久性が損なわれたり、運転者に違和感を与えるという問題を回避することができる。
2 エンジン
E/C エンジンクラッチ
3 ディファレンシャルギヤ装置
4L 左駆動輪
4R 右駆動輪
21 単純遊星歯車組(差動装置)
22 単純遊星歯車組(差動装置)
25 出力歯車
27 カウンターシャフト
MG1,MG2 モータ/ジェネレータ
Claims (4)
- エンジンと、出力軸と、2個のモータ/ジェネレータとの間を差動装置により相互に連結して該モータ/ジェネレータの制御により変速可能に構成され、前記差動装置を構成する回転要素のうち、前記エンジンに係わる回転要素、およびエンジン間にエンジンクラッチを介在させたハイブリッド変速機において、
前記エンジンクラッチを解放すると共に前記両モータ/ジェネレータの制御を停止した状態での減速時に、これらモータ/ジェネレータの回転数が許容回転数を越えることのないよう、これらモータ/ジェネレータの制御停止状態でのフリクショントルクを定めて両モータ/ジェネレータを構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項1に記載のハイブリッド変速機において、
前記エンジンクラッチを解放すると共に前記両モータ/ジェネレータの制御を停止した状態での前記減速時に回転数が高くなる方のモータ/ジェネレータの回転数が許容回転数を超えることのない変速比となるよう、これらモータ/ジェネレータの制御停止状態でのフリクショントルクを定めて両モータ/ジェネレータを構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項2に記載のハイブリッド変速機において、
前記エンジンクラッチを解放すると共に前記両モータ/ジェネレータの制御を停止した状態での前記減速が、制動操作に依らない自然減速である場合、回転数が上昇する方のモータ/ジェネレータの回転数が許容回転数を超えることのない変速比となるよう、これらモータ/ジェネレータの制御停止状態でのフリクショントルクを定めて両モータ/ジェネレータを構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。 - 請求項2または3に記載のハイブリッド変速機において、
前記エンジンクラッチを解放すると共に前記両モータ/ジェネレータの制御を停止した状態での前記減速が、制動操作に依る制動減速である場合、イナーシャが小さい方のモータ/ジェネレータの回転数が許容回転数を超えることのない変速比となるよう、これらモータ/ジェネレータの制御停止状態でのフリクショントルクを定めて両モータ/ジェネレータを構成したことを特徴とするハイブリッド変速機。
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