JP2020132822A - シラン化合物および石油樹脂を含んでなるゴム組成物 - Google Patents

シラン化合物および石油樹脂を含んでなるゴム組成物 Download PDF

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雄介 松尾
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Abstract

【課題】有機高分子材料と無機材料との分散不良や混合不良等が生じることがなく、タイヤ性能におけるウェットグリップ性と低燃費性のバランスをとることが可能となる、シラン化合物および石油樹脂を含んでなるゴム組成物の提供。【解決手段】式(1):で表されるシラン化合物、石油樹脂、ガラス転移点が25℃以下のエラストマーおよび無機材料を含んでなる、ゴム組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、シラン化合物および石油樹脂を含んでなるゴム組成物に関する。
従来、反応性官能基および加水分解性基を有するシラン化合物は、ゴム組成物において、ゴム等の有機高分子材料とシリカやガラス等の無機材料との分散性を向上させるために、シランカップリング剤の構成成分として用いられてきた。
通常、このようなシラン化合物は、ゴム等の有機高分子材料との反応性が高い反応性官能基として、メルカプト基、ポリスルフィド基、アミノ基やエポキシ基等の置換基を有し、かつシリカ等の無機材料との反応性が高い加水分解性基として、アルコキシシリル基等の置換基を有する。例えば、特許文献1には、ポリスルフィド系のシランカップリング剤を含有するゴム組成物が開示されている。また、特許文献2には、反応性官能基としてアミノ基、加水分解性基としてメトキシ基を有するシラン化合物が開示されている。
しかしながら、特許文献1および2に記載されたシラン化合物の反応性官能基は極性が高いため、有機高分子材料との親和性が低く、分散不良や混合不良が生じてしまう傾向にあった。一方、このような有機高分子材料との親和性を高めるために、極性が低い反応性官能基を有する従来のシラン化合物を添加した場合、有機高分子材料との反応性が低く、シランカップリング剤や接着助剤としての性能が不十分であった。
また、タイヤのウェットグリップ性を向上させるためには、一般にゴムのガラス転移点(Tg)をあげる手法がとられるが、低燃費性が悪化してしまう問題があった。このため、ゴムの末端を変性してフィラーと反応させ、エンタグルメントの運動を抑えることによりエネルギーロスを低減して、低燃費性の悪化を抑えることが試みられているが十分なものではなかった。さらに、石油樹脂を加えることによってもゴムのガラス転移点を上げてウェットグリップ性を向上できるが、この場合もやはり低燃費性が悪化してしまう問題があった。この石油樹脂による低燃費性の悪化を抑えるためにはゴムと石油樹脂との相溶性を上げる必要があるが、通常のポリスルフィド系シランカップリング剤では極性が高く、低燃費性の悪化を抑えることが難しかった(特許文献3)。
特開平8−259736号公報 特開平11−335381号公報 特表2015−523430号公報
本発明者らは、タイヤ性能におけるウェットグリップ性と低燃費性のバランスのとれた向上といった課題に対し、これを解決する手段を鋭意検討した。その結果、シランカップリング剤として脂環式オレフィンおよびシリル基をもつ脂環式化合物を使用することにより、反応性が高い脂環式オレフィンのアリル水素が、ジエン系ゴムと石油樹脂との共架橋を促進し両者の相溶性を向上させて、低燃費性を向上させる事が可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
従って、本願発明の目的は、有機高分子材料と無機材料との分散不良や混合不良等が生じることがなく、タイヤ性能におけるウェットグリップ性と低燃費性のバランスをとることが可能となる、シラン化合物および石油樹脂を含んでなるゴム組成物を提供することである。
本発明は以下の発明を包含する。
[1]式(1):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
Lは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
または
16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
で表されるシラン化合物、石油樹脂、ガラス転移点が25℃以下のエラストマーおよび無機材料を含んでなる、ゴム組成物。
[2]前記シラン化合物が、式(2):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
または
16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
で表される化合物である、[1]に記載のゴム組成物。
[3]前記シラン化合物が、式(3):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
31は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基である。]
で表される化合物である、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4]前記シラン化合物が、式(4):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
32は、メチル基または炭素数2〜9のアルキル基である。]
で表される化合物である、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[5]前記シラン化合物が、式(5):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
xは、0〜5の整数である。]
で表される化合物である、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[6]前記シラン化合物が、式(6):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または、
式(7):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または、
式(8):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または、
式(9):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]
で表される化合物である、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[7]前記シラン化合物のRSi基が、式(10):
[式中、
19は、それぞれ独立して、アルコキシ基または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基であり、
20は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基であり、
は、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
jは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
kは、1〜3の整数であり、
アスタリスク(*)は、前記シラン化合物のシリル基以外の部分と結合している部位を示す。]
の化学構造を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム組成物。
[8]前記シラン化合物のRSi基がトリエトキシシリル基である、[1]〜[7]のいずれかに記載のゴム組成物。
[9]前記石油樹脂が水添石油樹脂である、[1]〜[8]のいずれかに記載のゴム組成物。
[10]前記ガラス転移点が25℃以下のエラストマーが、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]〜[9]のいずれかに記載のゴム組成物。
[11]前記式(1)で表される化合物以外のシラン化合物をさらに含んでなる、[1]〜[10]のいずれかに記載のゴム組成物。
[12]前記式(1)で表される化合物以外のシラン化合物が、式(11):
[式中、
tおよびvは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、
uは、2〜10の整数であり、
qおよびrは、それぞれ独立して、1〜3の整数であり、
wおよびzは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
およびLは、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
21およびR23は、それぞれ独立して、アルコキシ基または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基であり、
22およびR24は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基である。]
で表されるシラン化合物である、[11]に記載のゴム組成物。
[13]前記ゴム組成物における前記シラン化合物の含有量の総量が、前記エラストマー100質量部に対して、0.1〜30質量部である、[1]〜[12]のいずれかに記載のゴム組成物。
[14]前記ゴム組成物における前記シラン化合物の含有量の総量に対する、前記組成物における前記式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の割合が、質量基準で0.1〜0.9である、[11]〜[13]のいずれかに記載のゴム組成物。
[15][1]〜[14]のいずれかに記載の組成物を製造する方法であって、前記シラン化合物、前記石油樹脂、前記エラストマー、および前記無機材料を混練する工程を含んでなる、方法。
[16]さらに加硫剤を混練する工程を含んでなる、[15]に記載の方法。
[17][1]〜[14]のいずれかに記載のゴム組成物の架橋物。
[18][1]〜[14]のいずれかに記載のゴム組成物を押出す工程、押し出された組成物を成形する工程、および成形された組成物を架橋する工程を含んでなる、架橋物の製造方法。
[19][17]に記載の架橋物を含んでなる、タイヤ。
本発明によれば、ゴム等の有機高分子材料と無機材料との分散不良や混合不良等が生じることがなく、タイヤ性能におけるウェットグリップ性と低燃費性のバランスのとれた向上が可能となる点で有利である。
調製例1で合成したシラン化合物1のH−NMRチャートを表す。 調製例1で合成したシラン化合物1をガスクロマトグラフィーで、(26)画分と(27)画分に分画し、それぞれ分取したことを示すクロマトグラムである。 調製例1で合成したシラン化合物1の(26)画分のH−NMRチャートを表す。a〜gおよび円形に囲まれた整数1〜7で示されたピークは、式(26)で表される化合物の各炭素原子(図3中に示す)に結合したプロトンのピークを示す。 調製例1で合成したシラン化合物1の(26)画分の13C−NMRチャートを表す。a〜gおよび円形に囲まれた整数1〜7で示されたピークは、式(26)で表される化合物の各炭素原子(図4中に示す)のピークを示す。 調製例1で合成したシラン化合物1の(27)画分のH−NMRチャートを表す。A〜Gおよび円形に囲まれた1〜7で示されたピークは、式(27)で表される化合物の各炭素原子(図5中に示す)に結合したプロトンのピークを示す。 調製例1で合成したシラン化合物1の(27)画分の13C−NMRチャートを表す。A〜Gおよび円形に囲まれた1〜7で示されたピークは、式(27)で表される化合物の各炭素原子(図6中に示す)に結合したプロトンのピークを示す。 調製例2で合成したシラン化合物2のH−NMRチャートを表す。
1.定義
本明細書において、配合を示す「部」、「%」等は特に断らない限り質量基準である。
2.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、下記式(1)で表されるシラン化合物、石油樹脂、ガラス転移点が25℃以下のエラストマーおよび無機材料を含むことを特徴とする。
(1)シラン化合物
(i)シラン化合物の化学構造
本発明のゴム組成物に含まれるシラン化合物は、下記の式(1):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
Lは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
または
16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
で表される化合物である。
上記式(1)において、aは、0か1の整数であり、好ましくは1である。
また、bは、0か1の整数であり、好ましくは1である。
また、cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、好ましくは1である。
また、dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、好ましくは1である。
また、eは、0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0または1の整数である。
また、R、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよい。
また、fは、1〜5の整数であり、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1である。
また、R、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよい。
また、gは、1〜5の整数であり、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1である。
また、R16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、好ましくは、水素原子、メチル基または炭素数2または3のアルキル基、より好ましくは、水素原子またはメチル基、さらにより好ましくは、水素原子であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、好ましくは、水素原子、メチル基または炭素数2〜5のアルキル基、より好ましくは、水素原子またはメチル基、さらにより好ましくは、水素原子であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、または
16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素、好ましくは4〜7員の脂環式炭化水素、より好ましくは5員または6員の脂環式炭化水素、さらに好ましくは5員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。
また、上記式(1)において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基またはアリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数は1〜60が好ましく、1〜30がより好ましく、中でもメチル基またはエチル基であることが好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素原子数は7〜60が好ましく、7〜20がより好ましく、7〜14がさらに好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素原子数は6〜60が好ましく、6〜24がより好ましく、6〜12がさらに好ましい。
酸素原子または窒素原子を含む炭化水素基とは、炭化水素基中の炭素原子が酸素原子または窒素原子で置き換えられた構造を有する基である。
本発明のさらに好ましい実施態様において、上記R、RおよびRにおける酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基は、アルコキシ基、1以上のアルキル基で置換されたアミノ基、またはアルキル基である。より好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、より好ましくは1以上の炭素数1〜30のアルキル基で置換されたアミノ基、さらに好ましくは1以上の炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアミノ基、あるいは、より好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基およびイソブトキシ基等が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。また、1以上のアルキル基で置換されたアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基およびN−イソプロピルアミノ基等が挙げられ、これらの中でも、N−メチルアミノ基またはN−エチルアミノ基が好ましい。また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基およびシクロへキシル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基およびエチル基が好ましい。
また、上記式(1)において、Lは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜30の炭化水素基、より好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、さらに好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基である。その中でも、Lは、硫黄を含む炭化水素基であることが特に好ましい。かかる炭化水素基におけるシリル基と脂環式炭化水素部分をつなぐ直鎖部分の長さが、炭素、窒素、酸素または硫黄の原子数の総和として、好ましくは3〜8、より好ましくは4〜7、さらに好ましくは4〜6とされる。
本発明のゴム組成物におけるシラン化合物は、好ましくは含硫黄シラン化合物である。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物は、好ましくは、式(2):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
または
16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
で表される化合物である。
上記式(2)で表される化合物におけるhは、1〜10の整数であり、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは3〜6、さらにより好ましくは3〜5の整数であり、特に好ましくは3である。また、a〜gおよびR〜R18については、上記式(1)において説明した通りである。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物は、より好ましくは、式(3):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
31は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基である。]
で表される化合物である。
上記式(3)で表される化合物のうち、a〜gおよびR〜R11については、上記式(1)において説明した通りであり、hについては、上記式(2)で説明した通りである。
式(3)におけるR31は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、好ましくは、水素原子、メチル基または炭素数2〜5のアルキル基、より好ましくは、水素原子、メチル基または炭素数1または2のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物は、より好ましくは、式(4):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
32は、メチル基または炭素数2〜9のアルキル基である。]
で表される化合物である。
上記式(4)で表される化合物のうち、a〜gおよびR〜R11については、上記式(1)において説明した通りであり、hについては、上記式(2)で説明した通りである。
式(4)におけるR32は、メチル基または炭素数2〜9のアルキル基であり、好ましくは、メチル基または炭素数2〜5のアルキル基、より好ましくは、メチル基または炭素数1または2のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物は、より好ましくは、式(5):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数であり、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
xは、0〜5の整数である。]
で表される化合物である。
上記式(5)で表される化合物のうち、a〜gおよびR〜R11については、上記式(1)において説明した通りであり、hについては、上記式(2)で説明した通りである。
式(5)におけるxは、0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは1または2、さらに好ましくは1である。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物は、さらに好ましくは、式(6):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または
式(7):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または
式(8):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または、
式(9):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]
で表される化合物である。
上記式(6)〜式(9)で表される化合物において、R〜Rについては、上記式(1)において説明した通りである。
本発明のゴム組成物における式(1)で表される化合物の別のさらに好ましい態様としては、式(12)〜式(25):
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]
で表される化合物が挙げられる。
上記式(12)〜式(25)で表される化合物において、R〜Rについては、上記式(1)において説明した通りである。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物のさらにより好ましい態様としては、上記式(1)〜式(9)および式(12)〜式(25)において、RSi基が、式(10):
[式中、
19は、それぞれ独立して、アルコキシ基または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基であり、
20は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基であり、
は、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
jは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
kは、1〜3の整数であり、
アスタリスク(*)は、前記シラン化合物のシリル基以外の部分と結合している部位を示す。]
の化学構造を有するシラン化合物が挙げられる。
上記式(10)において、R19は、それぞれ独立して、アルコキシ基または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基である。好ましい一つの実施態様としては、R19は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、アルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基、より好ましくは1以上の炭素数1〜30のアルキル基で置換されたアミノ基、さらに好ましくは1以上の炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアミノ基である。具体的には、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基およびイソブトキシ基等が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。また、1以上のアルキル基で置換されたアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基およびN−イソプロピルアミノ基等が挙げられ、これらの中でも、N−メチルアミノ基またはN−エチルアミノ基が好ましい。なお、アルコキシ基およびアミノ基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基からなる連結基を介してケイ素(Si)と結合してもよい。
また、R20は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基およびシクロへキシル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基およびエチル基が好ましい。
上記式(10)において、Lは、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜30の炭化水素基、より好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、さらに好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基である。
上記式(10)において、kは、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、より好ましくは3である。
また、jは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、好ましくは0である。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物は、上記式(1)〜式(9)および式(12)〜式(25)において、RSi基がトリエトキシシリル基またはトリメトキシシリル基であるシラン化合物が一層好ましく、RSi基がトリエトキシシリル基であるシラン化合物がより一層好ましい。
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物の特に好ましい実施態様としては、式(26)〜(43):
で表される化合物が挙げられる。
本発明の上記式(1)で表される化合物は、好ましくは、その立体異性体、またはそれらの立体異性体の任意の混合物である。
(ii)式(1)で表されるシラン化合物の製造方法
本発明のゴム組成物に含まれる式(1)で表される化合物は、式(42):
[式中、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
または
16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
で表される化合物と、式(43):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
Yは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である。]
で表される化合物を反応させることにより、製造することができる。
上記式(42)および式(43)において、R〜R18、L、a〜gは、式(1)で表される化合物において説明した通りである。
また、上記式(43)において、Yは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜30の窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜20の窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1〜10の窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である。その中でも、Yは、硫黄を含む炭化水素基であることが特に好ましい。かかる炭化水素基におけるシリル基と脂環式炭化水素部分に結合する箇所をつなぐ直鎖部分の長さが、炭素、窒素、酸素または硫黄の原子数の総和として、好ましくは3〜8、より好ましくは4〜7、さらに好ましくは4〜6とされる。
ここで、上記の式(1)で表される化合物の製造においては、式(42)で表される化合物と、式(43)で表される化合物とを、付加反応または縮合反応に供することで合成することができる。ここにおける付加反応として、ラジカル付加反応、共役付加反応、求核付加反応、求電子付加反応などを用いることができ、例えばペリ環状反応に類する反応、ヒドロシリル化反応、ヒドロアミノ化反応などを用いることができる。縮合反応として、例えばエステル化反応、アミド化反応、チオエステル化反応、チオアミド化反応、フリーデルクラフツ反応等を用いることができる。
なお、上記式(42)で表される化合物は、当業者に既に知られた知識に基づいて、同一もしくは異なる共役ジエン類化合物同士によるディールズ・アルダー反応、あるいは、共役ジエン類化合物とアルケン類化合物とのディールズ・アルダー反応により合成することができる。また、式(42)で表される化合物は、当該ディールズ・アルダー反応により合成された化合物を、必要に応じて熱変性させることにより、および/または必要に応じて精製することにより調製することができる。
上記式(2)で表される化合物は、式(42):
[式中、
aは、0か1の整数であり、
bは、0か1の整数であり、
cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
eは、0〜5の整数であり、
、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
fは、1〜5の整数であり、
、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
gは、1〜5の整数であり、
16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
または
16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
で表される化合物と、式(44):
[式中、
、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
hは、1〜10の整数である。]
で表される化合物を反応することにより、製造することができる。
上記式(42)および式(44)において、R〜R18およびa〜gは、式(1)で表される化合物において説明した通りである。さらに、hは、式(2)で表される化合物において説明した通りである。
ここで、上記式(2)で表される化合物は、上記式(42)で表される化合物と、上記式(44)で表される化合物とを混合し、加熱することにより、上記式(44)で表される化合物におけるメルカプト基と上記式(42)で表される化合物における炭素−炭素不飽和結合部分とが反応することにより、合成されると考えられる。上記式(44)で表される化合物は、上記式(42)で表される化合物1モルに対し、0.1〜4モルとなるように混合することが好ましく、0.3〜3モルとなるように混合することがより好ましい。また、加熱温度は、40〜300℃とすることが好ましく、50〜200℃とすることがより好ましい。
上記式(44)で表される化合物としては、たとえばメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物としては、メルカプトトリメトキシシラン、メルカプトトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、4−メルカプトブチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、4−メルカプトブチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、4−メルカプトブチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、4−メルカプトブチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
また、上記した式(2)で表される化合物は、上記式(42)で表される化合物と、後述する式(11)で表される化合物を混合し、加熱することによっても合成することができる。後述の式(11)で表される化合物におけるポリスルフィド結合が開裂し、これが上記式(42)で表される化合物における炭素−炭素不飽和結合部分と反応することにより、合成されると考えられる。後述する式(11)で表される化合物は、上記式(42)で表される化合物1モルに対し、0.1〜4モルとなるように混合することが好ましく、0.3〜3モルとなるように混合することがより好ましい。また、加熱温度は、40〜300℃とすることが好ましく、50〜200℃とすることがより好ましい
必要に応じて、ラジカル開始剤を併用することもできる。ラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)等のアゾ化合物、ジ−tert−ブチルペルオキシド(t−BuOOBu−t)やtert−ブチルヒドロペルオキシド(t−BuOOH)、過酸化ベンゾイル(BPO, PhC(=O)OOC(=O)pH)、メチルエチルケトンペルオキシド、ジクミルペルオキシド(DCP)等の過酸化物、塩素分子等のジハロゲン化合物、低温でラジカルを発生させられる試薬として、過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなど、酸化剤と還元剤の組み合わせのレドックス開始剤、トリエチルボラン(EtB)やジエチル亜鉛(EtZn)も用いることができる。
なお、後述する式(11)で表される化合物のうち、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドは、市販されているものを使用してもよく、例えば、エボニック社製のSi−69が挙げられる。また、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィドについても、市販されているものを使用してもよく、例えば、エボニック社製のSi−75が挙げられる。
(2)石油樹脂
本発明のゴム組成物に含まれる石油樹脂は、ナフサを熱分解してエチレン、プロピレンおよびブタジエンなどの有用な化合物を取り去った残りのC〜C留分(主としてC留分)あるいはC〜C留分(主としてC留分)を混合状態のまま重合して得られた樹脂である。原料のオレフィン留分の組成比率によって生成樹脂の性質が異なるが、分子量200〜8000、軟化点5〜180℃の透明な淡黄色ないし黄褐色の松脂(まつやに)状樹脂である。これら石油樹脂には、C9系石油樹脂、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、脂環式化合物(DCPD)系石油樹脂およびそれらの水添石油樹脂が挙げられるが、なかでも水添石油樹脂が好ましい。
石油樹脂は、例えば、石油化学工業のナフサの熱分解により、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎原料と共に副生するオレフィンやジオレフィン等の不飽和炭化水素を含む分解油留分を混合物のままフリーデルクラフツ型触媒による重合や熱重合により得られる。
該石油樹脂としては、ナフサの熱分解によって得られるC5留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂、ナフサの熱分解によって得られるC9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、前記C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系等の脂環式化合物(DCPD)系石油樹脂、およびそれらの水添石油樹脂が挙げられる。
C5留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂は、ナフサの熱分解によって得られるC5留分を共重合して得ることが出来、ナフサの熱分解によって得られるC5留分には、通常、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン等のオレフィン系炭化水素、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンなどのジオレフィン系炭化水素が含まれる。
C5留分を(共)重合して得られる石油樹脂は、石油類の熱分解により得られる沸点範囲留分のうち沸点範囲が20〜110℃程度の沸点範囲の留分を出発原料とするのが一般的である。この留分は炭素数5個から構成されるオレフィン類を主成分とするため、石油系樹脂はC5系石油樹脂とも呼ばれている。
C9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂とはビニルトルエン、インデンを主要なモノマーとして重合した樹脂であり、ナフサの熱分解によって得られるC9留分の具体例としては、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、γ−メチルスチレン等のスチレン同族体やインデン、クマロン等のインデン同族体等が挙げられる。
C9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂は、石油類の熱分解により得られる沸点範囲留分のうち100℃〜280℃程度の沸点範囲の留分を出発原料とするのが一般的である。この留分はスチレンおよびその誘導体、およびインデンおよびその誘導体等から構成される芳香族オレフィン類を主成分とし、芳香族系石油樹脂はC9系石油系樹脂とも呼ばれている。
一般的なC9系石油樹脂、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂の製造法は、原料油に対して0.01〜5重量%のフリーデルクラフツ型触媒を添加し、反応終了後、アルカリを用いて触媒を分解除去し、最後に蒸留等により未反応油および低分子重合物を除去して製品とするものである。一般的にフリーデルクラフツ型触媒としては、例えば三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素あるいはそのフェノール錯体、ブタノール錯体等が挙げられる。中でも三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素のフェノール錯体、三フッ化ホウ素のブタノール錯体が好ましい。重合温度は0〜100℃が好ましく、特に好ましくは0〜80℃である。また、触媒量及び重合時間は、原料油100質量部に対して触媒0.1〜2.0質量部で0.1〜10時間の範囲が好ましい。反応圧力は大気圧〜1MPaが好ましい
脂環式化合物(DCPD)系石油系樹脂は、C5留分中に含まれるシクロペンタジエン類を2量化させてジシクロペンタジエン類にし、蒸留にて他のC5留分と分離したものを加熱によるディールズ・アルダー反応により重合させたものである。この重合の際には、50重量%程度の重合性の不純物を含んでいてもよい。シクロペンタジエン類とは、たとえば、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなどがあげられる。また、ジシクロペンタジエン類とは、たとえば、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなどがあげられる。使用する不飽和脂環式化合物として、特に好ましくは、ジシクロペンタジエンが望ましい。
本発明の石油樹脂は一部に種々官能基を有する化合物が重合していてもよい。官能基の例としては、水酸基を有する、アルコール化合物やフェノール化合物が挙げられる。アルコール化合物の具体例としては、アリルアルコール、2−ブテン−1,4−ジオール等の二重結合を有するアルコール化合物が挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等のアルキルフェノール類を使用できる。これらの水酸基を有する化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよいものである。
また、水酸基含有石油系樹脂は、石油留分と共に(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を熱重合して石油系樹脂中のエステル基を導入した後、該エステル基を還元する方法、石油系樹脂中の二重結合を残存又は導入した後、当該二重結合を水和する方法等によっても製造できる。本発明では、水酸基含有石油樹脂として、上記にように各種の方法により得られるものが使用できるが、性能面、製造面から見て、フェノール変性石油樹脂等を使用するのが好ましい。
該フェノール変性石油樹脂は、C9留分をフェノールの存在下でカチオン重合して得られ、変性が容易である。
重合の方法は、上述のディールズ・アルダー反応を中心とした150℃〜300℃程度で1〜10時間程度の加熱を行う熱重合もしくは上述したようなフリーデルクラフツ型の反応から選択できる。
上述のこれらの樹脂は、軟化点が200℃以下(測定法:ASTM E28−58−T)となる樹脂の使用が必要であり、更に好ましくは、45〜160℃が望ましい。
本発明においては、上述の石油樹脂を部分水素添加または完全水素添加した水添石油樹脂として使用することが出来る。水素添加の条件は任意であるが、常圧での沸点が実質的に140〜280℃の飽和炭化水素,飽和環状炭化水素,芳香族炭化水素より選ばれた1種以上の溶剤と石油系樹脂と混合し、一般的な水素化触媒を利用し、反応温度150〜320℃,反応圧力30〜300Kg/cm2 ,反応時間1〜10時間の条件で反応を行うものである。
使用できる市販品としては、出光興産(株)製アイマーブS100(軟化点:100℃)、出光興産(株)製アイマーブS110(軟化点:110℃)、出光興産(株)製アイマーブY100(軟化点:100℃)、出光興産(株)製アイマーブY135(軟化点:135℃)、出光興産(株)製アイマーブP90(軟化点:90℃)、出光興産(株)製アイマーブP100(軟化点:100℃)、出光興産(株)製アイマーブP125(軟化点:125℃)、出光興産(株)製アイマーブP140(軟化点:140℃)、荒川化学工業(株)製アルコンP70(軟化点:70℃)、荒川化学工業(株)製アルコンP90(軟化点:90℃)、荒川化学工業(株)製アルコンP100(軟化点:100℃)、荒川化学工業(株)製アルコンP115(軟化点:115℃)、荒川化学工業(株)製アルコンP125(軟化点:125℃)、荒川化学工業(株)製アルコンP140(軟化点:140℃)、荒川化学工業(株)製アルコンSP10(軟化点:100℃)、荒川化学工業(株)製アルコンM90(軟化点:90℃)、荒川化学工業(株)製アルコンM100(軟化点:100℃)、荒川化学工業(株)製アルコンM115(軟化点:115℃)、荒川化学工業(株)製アルコンM135(軟化点:135℃)、荒川化学工業(株)製アルコンSM10(軟化点:100℃)、荒川化学工業(株)製KR1840(軟化点:100℃)、荒川化学工業(株)製KR1842(軟化点:120℃)、丸善石油化学(株)製マルカレッツH505(軟化点:105℃)、丸善石油化学(株)製マルカレッツH90(軟化点:90℃)、丸善石油化学(株)製マルカレッツ700F(軟化点:95℃)、丸善石油化学(株)製マルカレッツH925(軟化点:123℃)、丸善石油化学(株)製マルカレッツH970(軟化点:175℃)、JXTGエネルギー(株)製T-REZ HA085(軟化点:85℃)、JXTGエネルギー(株)製T-REZ HA103(軟化点:103℃)、JXTGエネルギー(株)製T-REZ HA105(軟化点:105℃)、JXTGエネルギー(株)製T-REZ HA125(軟化点:125℃)、JXTGエネルギー(株)製T-REZ HB103(軟化点:103℃)、JXTGエネルギー(株)製T-REZ HB125(軟化点:125℃)等が挙げられる。
(3)エラストマー
本発明のゴム組成物に含まれるエラストマーは、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下のエラストマーを含むものである。本発明の好ましい一つの実施態様によれば、本発明のゴム組成物におけるエラストマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のエラストマーを含むものである。本発明のゴム組成物に含まれるエラストマーのガラス転移温度(Tg)がこの範囲であると、ゴム組成物が室温でゴム状弾性を示すため好ましい。本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
本発明のゴム組成物に含まれるエラストマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、クロロプレンゴム、ブチルゴムおよびハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムが挙げられ、その中でも天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、ブチルゴムおよびハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムが好ましく、その中でも天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ブチルゴムおよびハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムがさらに好ましく、その中でも天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびブタジエンゴムがより好ましい。本発明のゴム組成物におけるエラストマーとしては、上述したゴムのうちの1種または2種以上のものであってもよい。
本発明のゴム組成物におけるエラストマーの重量平均分子量は、1,000〜3,000,000であることが好ましく、10,000〜1,000,000であることがさらに好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルムを溶媒として用いるのが好ましい。
本発明のゴム組成物における式(1)で表される化合物の含有量は、エラストマー100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.3〜20質量部、さらに好ましくは0.4〜15質量部、さらにより好ましくは0.7〜10質量部、特に好ましくは0.7〜6.9質量部、特により好ましくは1〜5.0質量部、特にさらに好ましくは1〜3.4質量部である。また、式(1)で表される化合物の含有量は、ゴム組成物に含まれる無機材料の総量100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは1.0〜15質量部である。
本発明のゴム組成物における石油樹脂の含有量は、エラストマー100質量部に対し、好ましくは1〜100質量部であり、より好ましくは2〜80質量部、さらに好ましくは3〜50質量部である。
また、上記式(1)で表される化合物および石油樹脂を本発明のゴム組成物に含有させることにより、タイヤ性能におけるウェットグリップ性と低燃費性のバランスの向上が可能となる。
(4)式(1)で表される化合物以外のシラン化合物
本発明のゴム組成物は、式(1)で表される化合物以外のシラン化合物(本明細書において、「その他のシラン化合物」と称することもある)をさらに含んでいてもよい。式(1)で表される化合物以外のシラン化合物を含んでなるゴム組成物を加硫反応させると、式(1)で表される化合物以外のシラン化合物が加硫反応に組み込まれるため、シランカップリング剤として機能する式(1)で表される化合物以外のシラン化合物と式(1)で表される化合物が反応する。この反応によって、カップリング効率が高まるという相乗効果が生まれると考えられる。本発明のゴム組成物において、式(1)で表される化合物以外のシラン化合物は、好ましくは、式(1)で表される化合物以外の含硫黄シラン化合物(その他の含硫黄シラン化合物)である。
式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量は、エラストマー100質量部に対し、好ましくは0.01〜27質量部であり、より好ましくは0.03〜18質量部である。また、式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量は、ゴム組成物に含まれる無機材料の総量100質量部に対し、好ましくは0.01〜27質量部であり、より好ましくは0.05〜18質量部、さらに好ましくは0.1〜13.5質量部である。
本発明のゴム組成物において、式(1)で表される化合物の含有量および式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の合計が、エラストマー100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.3〜20質量部、さらに好ましくは0.4〜15質量部、さらにより好ましくは0.7〜10質量部、特に好ましくは0.7〜6.9質量部、特により好ましくは1〜5.0質量部、特にさらに好ましくは1〜3.4質量部である。また、式(1)で表される化合物の含有量および式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の合計が、ゴム組成物に含まれる無機材料の総量100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは1.0〜15質量部である。
本発明のゴム組成物において、式(1)で表される化合物の含有量および式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の合計に対する、式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の割合は、好ましくは質量基準で0.1〜0.9であり、さらに好ましくは0.2〜0.8である。
式(1)で表される化合物以外のシラン化合物として、例えば、式(11):
[式中、
tおよびvは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、
uは、2〜10の整数であり、
qおよびrは、それぞれ独立して、1〜3の整数であり、
wおよびzは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
およびLは、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
21およびR23は、それぞれ独立して、アルコキシ基または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基であり、
22およびR24は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基である。]
で表される化合物を使用することができる。
上記式(11)中、tおよびvは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは1〜3の整数であり、さらに好ましくは2である。
また、uは、2〜10の整数であり、より好ましくは、2〜8の整数である。
また、qおよびrは、それぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、より好ましくは3である。
また、wおよびzは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、好ましくは0である。
また、LおよびLは、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜30の炭化水素基、より好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、さらに好ましくは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基である。
また、R21およびR23は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、アルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基、より好ましくは1以上の炭素数1〜30のアルキル基で置換されたアミノ基、より好ましくは1以上の炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアミノ基である。具体的には、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基およびイソブトキシ基等が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。また、1以上のアルキル基で置換されたアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基およびN−イソプロピルアミノ基等が挙げられ、これらの中でも、N−メチルアミノ基またはN−エチルアミノ基が好ましい。なお、アルコキシ基およびアミノ基は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基からなる連結基を介してケイ素(Si)と結合してもよい。
また、R22およびR24は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基およびシクロへキシル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基およびエチル基が好ましい。
本発明のゴム組成物における上記式(11)で表される化合物の含有量は、エラストマー100質量部に対し、好ましくは0.01〜27質量部であり、より好ましくは0.03〜18質量部である。また、本発明のゴム組成物における上記式(11)で表される化合物の含有量は、ゴム組成物に含まれる無機材料の総量100質量部に対し、好ましくは0.01〜27質量部であり、より好ましくは0.05〜18質量部、さらに好ましくは0.1〜13.5質量部である。
式(1)で表される化合物以外のシラン化合物として、上記式(11)で表される化合物以外にも、上記式(44)で表される化合物、特に以下のような構造を有するシラン化合物を使用することができる。
(5)無機材料
本発明のゴム組成物に含まれる無機材料としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレイおよびタルク等が挙げられ、これらの中でも、機械的特性および耐熱性をより向上させることができることから、シリカ、またはカーボンブラックを用いることが好ましい。
シリカとしては、特に限定されないが、例えば、乾式法シリカ、湿式法シリカ、コロイダルシリカ、および沈降シリカ等が挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。これらのシリカは、エラストマー100質量部に対し、10〜300質量部の配合量で、それぞれ単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらシリカの比表面積は、特に制限されないが、窒素吸着比表面積(BET法)で通常10〜400m2/g、好ましくは20〜300m2/g、更に好ましくは120〜190m2/gの範囲であるときに、補強性、耐摩耗性および発熱性等の改善が十分に達成され好適である。ここで、窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じ、BET法で測定される値である。
カーボンブラックは、用途に応じて適宜選択使用される。一般に、カーボンブラックは粒子径に基づいて、ハードカーボンとソフトカーボンとに分類される。ソフトカーボンはゴムに対する補強性が低く、ハードカーボンはゴムに対する補強性が高い。本発明のゴム組成物では、特に補強性の高いハードカーボンを用いるのが好ましい。エラストマー100質量部に対して10〜300質量部、好ましくは20〜200質量部、より好ましくは30〜150質量部含んでいるのがよい。
無機材料の添加量は、エラストマー100質量部に対し、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜300質量部であることがより好ましい。
(6)その他の加工助剤
本発明のゴム組成物は、その機能を損なわない範囲で、硫黄、酸化亜鉛等の加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、軟化剤、各種オイル、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤及び可塑材等のその他の加工助剤を含んでいてもよい。
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物が挙げられ、エラストマー100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部添加するのがよい。また、酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。エラストマー100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部添加するのがよい。
着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。エラストマー100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部添加するのがよい。
加硫剤としては、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等の硫黄系加硫剤や酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキサム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロベンゼン、メチレンジアニリン、フェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂、塩素化アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
加硫促進助剤としては、アセチル酸、プロピオン酸、ブタン酸、ステアリン酸、アクリル酸、マレイン酸等の脂肪酸、アセチル酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ブタン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、マレイン酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられる。
加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)等のチウラム系、ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒド・アンモニア系、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)等のチアゾール系、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアマイド(BBS)等のスルフェンアミド系、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)等のジチオカルバミン酸塩系挙げられる。
本発明では、その他の加工助剤は、公知のゴム用混練機、例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練し、任意の条件で加硫してゴム組成物として使用することができる。これらその他の加工助剤の添加量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
(7)ゴム組成物を製造する方法
本発明のゴム組成物を製造する方法は、上記シラン化合物、上記石油樹脂、上記ガラス転移点が25℃以下のエラストマーおよび上記無機材料を混練する工程を含んでなるものである。かかる上記シラン化合物には、式(1)で表される化合物以外のシラン化合物が含まれていてもよい。本発明のゴム組成物を製造する方法は、好ましくは、該シラン化合物、該石油樹脂、該ガラス転移点が25℃以下のエラストマー、該無機材料および上記加硫促進助剤を混練する工程を含んでなるものである。
上述のゴム組成物を製造する方法は、好ましくは、さらに上記加硫剤を混練する工程を含んでなるものであってもよい。より好ましくは、さらに該加硫剤と上記加硫促進剤を混練する工程を含んでなるものであってもよい。
ここで、該ゴム組成物における式(1)で表される化合物の含有量および式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の合計が、該エラストマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.3〜20質量部、さらに好ましくは0.4〜15質量部、さらにより好ましくは0.7〜10質量部、特に好ましくは0.7〜6.9質量部、特により好ましくは1〜5.0質量部、特にさらに好ましくは1〜3.4質量部である。また、該ゴム組成物が式(1)で表される化合物以外のシラン化合物を含む場合、式(1)で表される化合物の含有量および式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の合計に対する、式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の割合は、質量基準で0.1〜0.9であることが好ましく、0.2〜0.8であることがさらに好ましい。
また、上述の各工程において、ゴム組成物の機能を損なわない範囲で、上述のその他の加工助剤を適宜配合することができる。
(8)本発明のゴム組成物の架橋物
本発明のゴム組成物を用いて、従来公知の方法および当業者に広く知られた技術常識に従い、ゴム組成物の架橋物を製造することができる。例えば、上記ゴム組成物を押し出し、次いで、成型機を用いて成形した後、加硫機を用いて加熱・加圧することにより架橋が形成され、架橋物を製造することができる。
(9)タイヤ
上記ゴム組成物を用いて、従来公知の方法および当業者に広く知られた技術常識によりタイヤを製造することができる。例えば、上記ゴム組成物を押し出し、次いで、タイヤ成型機を用いて成形した後、加硫機を用いて加熱・加圧することにより架橋が形成され、タイヤを製造することができる。一つの実施態様としては、本発明のタイヤは、上記架橋物を含んでなるタイヤとされる。
本発明のゴム組成物を用いてタイヤを製造することにより、タイヤ性能におけるウェットグリップ性と低燃費性のバランスのとれた向上が可能となる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
1.調製例1:シラン化合物1(VNB-SSi)の合成
100mLの2口フラスコに玉栓、および真空ラインを繋いだ3方コックを設置し、スターラーバーを入れ、真空ラインを用いて、ドライヤーで加熱しながら系内の脱気−窒素置換を10回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。そのフラスコ内に、5−ビニル−2−ノルボルネン(5- Vinyl-2- Norbornene)(VNB)38.65g(0.317モル)を入れた後、71.93gのトルエン溶媒を、シリンジを用いて注入した。その後、スターラーを用いて撹拌し溶解させた。次に、シリンジを用いて、68.6g(0.288モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを注入した。最後にアゾビスイソブチロニトリルを0.4725g(2.88ミリモル)を窒素を流しながら添加した後、窒素バブリングを20分間行った。フラスコをオイルバスに浸漬し、バス温度を70℃まで徐々に上昇させ反応させた。70℃になってから6時間後、フラスコからオイルバスをはずし、室温まで放置した。次に、トルエンおよび未反応の5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)を減圧留去した後、98.64g(収率95%)の目的のシラン変性ビニルノルボルネン(VNB−SSi)を得た。得られた化合物のH−NMRの測定結果を図1に示す。H−NMRの測定および13C−NMRの測定によりシランの導入率は100%であり、ノルボルネン環の二重結合が消失していることを確認した。
シラン化合物1の立体異性体の検出
得られたシラン化合物1を、ガスクロマトグラフィーにより、上記の式(26)で表される化合物が多く含まれる画分(「(26)画分」)と、上記の式(27)で表される化合物が多く含まれる画分(「(27)画分」)とに分画し、分取した(図2)。(26)画分のH−NMRの測定結果を図3に、13C−NMRの測定結果を図4に示す。また、(27)画分のH−NMRの測定結果を図5に、13C−NMRの測定結果を図6に示す。式(26)および(27)で表される化学構造において、ビニル基の二重結合のノルボルネン環に直接結合している方の炭素原子(図3または図5において、円形で囲まれた整数2により表示された炭素原子)に結合するプロトンのピークが分裂していることが認められた。このデータより、ノルボルネン環に結合したビニル基がノルボルネン環の架橋構造と同様に紙面向かって前側に伸びている異性体(シン異性体)と、ノルボルネン環に結合したビニル基がノルボルネン環の架橋構造と反対に紙面向かって後側に伸びている異性体(アンチ異性体)の2種の立体異性体が存在していることが推察された。同様に、ノルボルネン環に結合した硫黄原子がノルボルネン環の架橋構造と同様に紙面向かって前側に伸びている異性体(シン異性体)と、ノルボルネン環に結合した硫黄原子がノルボルネン環の架橋構造と反対に紙面向かって後側に伸びている異性体(アンチ異性体)の2種の立体異性体が存在していると推察される。以上により、得られたシラン化合物1は、以下の式:
で表される8種の立体異性体の混合物であると推察される。
2.調製例2:シラン化合物2(DCPD-SSi)の合成
100mLの2口フラスコに玉栓および真空ラインを繋いだ3方コックを設置し、スターラーバーを入れ、真空ラインを用いて、ドライヤーで加熱しながら系内の脱気−窒素置換を10回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。そのフラスコ内に、ジシクロペンタジエン(DCPD)を6.62g(0.0501モル)を入れた後、4.33gのトルエン溶媒を、シリンジを用いて注入した。その後、スターラーを用いて撹拌し溶解させた。次に、シリンジを用いて、11.9g(0.0500モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを注入した。最後にアゾビスイソブチロニトリルを0.125g(0.761ミリモル)を窒素を流しながら添加した後、窒素バブリングを20分間行った。フラスコをオイルバスに浸漬し、バス温度を70℃まで徐々に上昇させ反応させた。70℃になってから6時間後、フラスコからオイルバスをはずし、室温になるまで放置した。次に、トルエンおよび未反応のジシクロペンタジエン(DCPD)を減圧留去した後、17.6g(収率95%)の目的のシラン変性ジシクロペンタジエン(DCPD−SSi)を得た。得られた化合物のH−NMRの測定結果を図7に示す。H−NMRおよび13C−NMRの測定により、シランの導入率は100%であり、ノルボルネン環の二重結合が消失していることを確認した。
得られたシラン化合物2は、以下の式:
で表される8種の立体異性体の混合物であると推察される。
3.調製例3:シラン化合物3の合成
100mLの2口フラスコに玉栓、および真空ラインを繋いだ3方コックを設置し、スターラーバーを入れ、真空ラインを用いて、ドライヤーで加熱しながら系内の脱気−窒素置換を10回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。そのフラスコ内に、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)を6.73g(0.0551モル)を入れた後、4.33gのトルエン溶媒を、シリンジを用いて注入した。その後、スターラーを用いて撹拌し溶解させた。次に、シリンジを用いて、11.9g(0.0498モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを注入した。最後にアゾビスイソブチロニトリルを0.123g(0.746ミリモル)を窒素を流しながら添加した後、窒素バブリングを20分間行った。フラスコをオイルバスに浸漬し、バス温度を70℃まで徐々に上昇させ反応させた。70℃になってから6時間後、フラスコからオイルバスをはずし、室温になるまで放置した。次に、トルエンおよび未反応の5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)を減圧留去した後、17.1g(収率95%)の目的のシラン変性5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB−SSi)を得た。H−NMRおよび13C−NMRの測定により、シランの導入率は100%であり、ノルボルネン環の二重結合が消失していることを確認した。
得られたシラン化合物3は、以下の式:
で表される8種の立体異性体の混合物であると推察される。
4.調製例4:シラン化合物4の合成
100mLの2口フラスコに玉栓、および真空ラインを繋いだ3方コックを設置し、スターラーバーを入れ、真空ラインを用いて、ドライヤーで加熱しながら系内の脱気−窒素置換を10回繰り返し、常圧窒素雰囲気下とした。そのフラスコ内に、ビニルジメタノオクタヒドロナフタレン(VDMON)を5.73g(0.0308モル)を入れた後、2.68gのエタノール溶媒を、シリンジを用いて注入した。その後、スターラーを用いて撹拌し溶解させた。次に、シリンジを用いて、7.34g(0.0308モル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを注入した。最後にアゾビスイソブチロニトリルを0.077g(0.468ミリモル)を窒素を流しながら添加した後、窒素バブリングを20分間行った。フラスコをオイルバスに浸漬し、バス温度を70℃まで徐々に上昇させ反応させた。70℃になってから6時間後、フラスコからオイルバスをはずし、室温になるまで放置した。次に、エタノールを減圧留去した後、12.55g(収率96%)の目的のシラン変性VDMON(VDMON−SSi)を得た。H−NMRおよび13C−NMRの測定により、シランの導入率は100%であり、ノルボルネン環の二重結合が消失していることを確認した。
得られたシラン化合物4は、少なくとも以下の式:
で表される16種の立体異性体を含む複数の立体異性体の混合物であると推察される。
5.実施例1:シラン化合物1および2、石油樹脂並びに天然ゴムを含むゴム組成物およびゴムシートの調製と評価
(1)実施例1−1
ゴム組成物およびゴムシートの作製
以下の各成分を、100mLニーダー(東洋精機社製ラボプラストミル)を用いて混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物について160℃、30分間のプレス加硫を行い、ゴム組成物からなる厚さ2mmのゴムシートを得た。
・天然ゴム(タイ製、RSS#3) 100質量部
・石油樹脂(JXTGエネルギー社製、商品名:HB103) 15質量部
・シラン化合物1(VNB−SSi)(調製例1) 3.2質量部
・シリカAQ(東ソー社製、商品名:ニップシールAQ) 40質量部
・酸化亜鉛3号(東邦亜鉛社製、商品名:銀嶺R) 3質量部
・ステアリン酸(新日本理化製、商品名:ステアリン酸300) 1質量部
・老化防止剤(大内新興化学社製、商品名:ノクラック6C) 1質量部
・硫黄(細井化学社製、油処理硫黄) 2質量部
・加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名:ノクセラーCZ) 1質量部
・加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名:ノクセラーD) 0.5質量部
(2)実施例1−2
シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、調製例2で合成したシラン化合物2(DCPD−SSi)の添加量を3.2質量部にした以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(3)実施例1−3
シラン化合物1(VNB−SSi)の添加量を1.6質量部とし、その他のシラン化合物(Si69)(デグサ社製、商品名:Si69)の添加量を1.6質量部にした以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(4)実施例1−4
シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、シラン化合物2(DCPD−SSi)の添加量を1.6質量部にし、その他のシラン化合物(Si69)の添加量を1.6質量部にした以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(5)比較例1−1
石油樹脂を含有させず、シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、その他のシラン化合物(Si69)の添加量を3.2質量部にした以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(6)比較例1−2
シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、その他のシラン化合物(Si69)の添加量を3.2質量部にした以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(7)参考例1−1
石油樹脂を含有させず、シラン化合物1(VNB−SSi)の添加量を3.2質量部にした以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(8)参考例1−2
石油樹脂を含有させず、シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、シラン化合物2(DCPD−SSi)の添加量を3.2質量部にした以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(9)物性評価
上記実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−2および参考例1−1〜1−2で得られたゴムシートの物性を下記の方法により評価した。
(粘弾性)
粘弾性測定装置(UBM社製REOGEL E−4000)を用い、JIS K 63
94に準拠して、歪20μm、約0.1%、周波数10Hzの条件下において、実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−2および参考例1−1〜1−2で得られたゴムシートの、測定温度0℃および60℃におけるtanδを求め、この値からtanδバランス(=tanδ(0℃)/tanδ(60℃))を算出した。以上の測定結果および算出結果(tanδバランス)を表1に表す。なお、tanδ(0℃)、tanδ(60℃)およびtanδバランスは、比較例1−1における各値を100.0とした場合の相対値として記載した。
実施例1−1〜1−4と比較例1−1〜1−2を比較すると、tanδ(0℃)については、実施例1−1〜1−4で得られたゴムシートは比較例1−1〜1−2で得られたゴムシートよりも高いことがわかる。また、tanδ(60℃)については、実施例1−1〜1−4で得られたゴムシートは比較例1−1〜1−2で得られたゴムシートよりも低いことがわかる。さらには、tanδバランスについては、実施例1−1〜1−4で得られたゴムシートは比較例1−1〜1−2で得られたゴムシートよりも高いことがわかる。以上の結果より、実施例1−1〜1−4で得られたゴムシートの方が、比較例1−1〜1−2で得られたゴムシートと比べて粘弾性に優れることがわかる。これは、石油樹脂によるTgの上昇によるtanδ(0℃)により、ウェットグリップ性が向上し、当該シラン化合物によるゴムのエンタングルメントの運動の抑制によりtanδ(60℃)が低下し、低燃費性に寄与すると考えられる。実施例1−1、1−2は、それぞれ参考例1−1,1−2に比べてtanδ(60℃)はほぼ同等であるが、tanδ(0℃)が高く、そのため、tanδバランスに優れる。
6.実施例2:シラン化合物1および2、石油樹脂並びにスチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムを含むゴム組成物およびゴムシートの調製と評価
(1)実施例2−1
ゴム組成物およびゴムシートの作製
以下の各成分を、100mLニーダー(東洋精機社製ラボプラストミル)を用いて混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物について160℃、30分間のプレス加硫を行い、ゴム組成物からなる厚さ2mmのゴムシートを得た。
・スチレンブタジエンゴム(SBR:ランクセス社製、商品名:3234)
96.25質量部
・ブタジエンゴム(BR:宇部興産社製、商品名:UBEPOL BR150L)
30質量部
・石油樹脂(JXTGエネルギー社製、商品名:HB103) 15質量部
・シラン化合物1(VNB−SSi)(調製例1) 2.4質量部
・その他のシラン化合物(エボニック社製、商品名:Si75) 2.4質量部
・シリカ(エボニック社製、商品名:ULTRASILVN3) 60質量部
・酸化亜鉛2種(東邦亜鉛社製、商品名:銀嶺R) 1.9質量部
・ステアリン酸(新日本理化製、商品名:ステアリン酸300) 2質量部
・老化防止剤(大内新興化学社製、商品名:ノクラック6C) 2.3質量部
・硫黄(細井化学社製、油処理硫黄) 1質量部
・加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名:ノクセラーCZ) 2.3質量部
・加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名:ノクセラーD) 1.1質量部
(2)実施例2−2
その他のシラン化合物(Si75)を含有させず、シラン化合物1(VNB−SSi)の添加量を4.8質量部にした以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(3)実施例2−3
シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、調製例2で合成したシラン化合物2(DCPD−SSi)の添加量を2.4質量部にした以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(4)実施例2−4
シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、その他のシラン化合物(Si75)を含有させず、シラン化合物2(DCPD−SSi)の添加量を4.8質量部にした以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(5)比較例2−1
石油樹脂を含有させず、シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、その他のシラン化合物(Si75)の添加量を4.8質量部にした以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(6)比較例2−2
シラン化合物1(VNB−SSi)を含有させず、その他のシラン化合物(Si75)の添加量を4.8質量部にした以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(7)参考例2−1
石油樹脂を含有させない以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(8)参考例2−2
石油樹脂を含有させず、その他のシラン化合物(Si75)を含有させず、シラン化合物1(VNB−SSi)の添加量を4.8質量部にした以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物およびゴムシートを得た。
(9)物性評価
上記実施例2−1〜2−4、比較例2−1〜2−2および参考例2−1〜2−2で得られたゴムシートの物性を、実施例1(9)に記載された方法により測定した。
以上の測定結果および算出結果(tanδバランス)を表2に表す。なお、tanδ(0℃)、tanδ(60℃)およびtanδバランスは、比較例2−1における各値を100.0とした場合の相対値として記載した。
実施例2−1〜2−4と比較例2−1〜2−2を比較すると、tanδ(0℃)については、実施例2−1〜2−4で得られたゴムシートは比較例2−1〜2−2で得られたゴムシートよりも高いことがわかる。また、tanδ(60℃)については、実施例2−1〜2−4で得られたゴムシートは比較例2−1〜2−2で得られたゴムシートよりも低いことがわかる。さらには、tanδバランスについては、実施例2−1〜2−4で得られたゴムシートは比較例2−1〜2−2で得られたゴムシートよりも高いことがわかる。以上の結果より、実施例2−1〜2−4で得られたゴムシートの方が、比較例2−1〜2−2で得られたゴムシートと比べて粘弾性に優れることがわかる。これは、石油樹脂によるTgの上昇によるtanδ(0℃)により、ウェットグリップ性が向上し、当該シラン化合物によるゴムのエンタングルメントの運動の抑制によりtanδ(60℃)が低下し、低燃費性に寄与すると考えられる。実施例2−1、2−2は、それぞれ参考例2−1,2−2に比べてtanδ(60℃)はほぼ同等であるが、tanδ(0℃)が高く、そのため、tanδバランスに優れる。

Claims (19)

  1. 式(1):
    [式中、
    、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
    Lは、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
    aは、0か1の整数であり、
    bは、0か1の整数であり、
    cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    eは、0〜5の整数であり、
    、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    fは、1〜5の整数であり、
    、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    gは、1〜5の整数であり、
    16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
    または
    16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
    で表されるシラン化合物、石油樹脂、ガラス転移点が25℃以下のエラストマーおよび無機材料を含んでなる、ゴム組成物。
  2. 前記シラン化合物が、式(2):
    [式中、
    、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
    hは、1〜10の整数であり、
    aは、0か1の整数であり、
    bは、0か1の整数であり、
    cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    eは、0〜5の整数であり、
    、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    fは、1〜5の整数であり、
    、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    gは、1〜5の整数であり、
    16は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、R17は、水素原子、メチル基または炭素数2〜10のアルキル基であり、ここで、R12およびR13は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R14、R15およびR18は水素原子であり、若しくは、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子であり、
    または
    16およびR17は、互いに結合して4〜9員の脂環式炭化水素を形成してもよく、ここで、R14およびR15は、互いに結合して二重結合を形成し、かつ、R12、R13およびR18は水素原子である。]
    で表される化合物である、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記シラン化合物が、式(3):
    [式中、
    、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
    hは、1〜10の整数であり、
    aは、0か1の整数であり、
    bは、0か1の整数であり、
    cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    eは、0〜5の整数であり、
    、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    fは、1〜5の整数であり、
    、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    gは、1〜5の整数であり、
    31は、水素原子、メチル基または炭素数2〜8のアルキル基である。]
    で表される化合物である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. 前記シラン化合物が、式(4):
    [式中、
    、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
    hは、1〜10の整数であり、
    aは、0か1の整数であり、
    bは、0か1の整数であり、
    cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    eは、0〜5の整数であり、
    、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    fは、1〜5の整数であり、
    、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    gは、1〜5の整数であり、
    32は、メチル基または炭素数2〜9のアルキル基である。]
    で表される化合物である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
  5. 前記シラン化合物が、式(5):
    [式中、
    、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表し、
    hは、1〜10の整数であり、
    aは、0か1の整数であり、
    bは、0か1の整数であり、
    cは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    dは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    eは、0〜5の整数であり、
    、R、RおよびRは、水素を表し、または、R若しくはRおよびR若しくはRの1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    fは、1〜5の整数であり、
    、R、R10およびR11は、水素を表し、または、R若しくはRおよびR10若しくはR11の1つが、−(CH−で表される架橋構造を形成してもよく、
    gは、1〜5の整数であり、
    xは、0〜5の整数である。]
    で表される化合物である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
  6. 前記シラン化合物が、式(6):
    [式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または、
    式(7):
    [式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または、
    式(8):
    [式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]、または、
    式(9):
    [式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基、あるいは水素原子を表す。]
    で表される化合物である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
  7. 前記シラン化合物のRSi基が、式(10):
    [式中、
    19は、それぞれ独立して、アルコキシ基または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基であり、
    20は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基であり、
    は、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
    jは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    kは、1〜3の整数であり、
    アスタリスク(*)は、前記シラン化合物のシリル基以外の部分と結合している部位を示す。]
    の化学構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  8. 前記シラン化合物のRSi基がトリエトキシシリル基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  9. 前記石油樹脂が水添石油樹脂である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  10. 前記ガラス転移点が25℃以下のエラストマーが、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレンコポリマー、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  11. 前記式(1)で表される化合物以外のシラン化合物をさらに含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  12. 前記式(1)で表される化合物以外のシラン化合物が、式(11):
    [式中、
    tおよびvは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、
    uは、2〜10の整数であり、
    qおよびrは、それぞれ独立して、1〜3の整数であり、
    wおよびzは、それぞれ独立して、0か1の整数であり、
    およびLは、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
    21およびR23は、それぞれ独立して、アルコキシ基または1以上のアルキル基で置換されたアミノ基であり、
    22およびR24は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基である。]
    で表されるシラン化合物である、請求項11に記載のゴム組成物。
  13. 前記ゴム組成物における前記シラン化合物の含有量の総量が、前記エラストマー100質量部に対して、0.1〜30質量部である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  14. 前記ゴム組成物における前記シラン化合物の含有量の総量に対する、前記組成物における前記式(1)で表される化合物以外のシラン化合物の含有量の割合が、質量基準で0.1〜0.9である、請求項11〜13のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、前記シラン化合物、前記石油樹脂、前記エラストマー、および前記無機材料を混練する工程を含んでなる、方法。
  16. さらに加硫剤を混練する工程を含んでなる、請求項15に記載の方法。
  17. 請求項1〜14のいずれか一項に記載のゴム組成物の架橋物。
  18. 請求項1〜14のいずれか一項に記載のゴム組成物を押出す工程、押し出された組成物を成形する工程、および成形された組成物を架橋する工程を含んでなる、架橋物の製造方法。
  19. 請求項17に記載の架橋物を含んでなる、タイヤ。
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