JP2020132648A - 油浸透防止膜形成用液組成物 - Google Patents
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本実施形態の油浸透防止膜形成用液組成物の製造方法を説明する。この製造方法では、先ず、ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、下記の一般式(2−1)又は下記の一般式(2−2)で示されるフッ素含有基成分としてのフッ素含有シランと、メチル基成分としてのメチル基含有シランと、ホウ素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素成分を含むアルコキシドと、エタノール、2−プロパノール等のアルコールと、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素と、水とを混合して混合液を調製する。次いでこの混合液と有機酸、又は無機酸からなる触媒とを混合してケイ素アルコキシドとメチル基含有シランとを加水分解することにより加水分解物を調製する。次にこの加水分解物に、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒とを混合して、シリカゾルゲルを含む油浸透防止膜形成用液組成物を製造する。
上記ホウ素等の元素成分は、シリカゾルゲル中に1質量%〜10質量%含まれる。好ましい含有割合は2質量%〜9質量%である。1質量%未満では、膜を形成した後の上記ホウ素等の元素成分が三次元に重合する働きが弱くなり、膜密度の向上が図れないため、膜に付着した脂肪酸等の膜への浸透を許容して、脂肪酸等の汚れを簡便に落とすことができない。10質量%を超えると、塗膜が基材等に密着せずに、膜を擦ったときに膜が基材等から剥離し易くなる。
上記調製された混合液と有機酸又は無機酸からなる触媒とを混合する。このとき液温を好ましくは30℃〜80℃の温度に保持して好ましくは1時間〜24時間撹拌する。これにより、混合液中のケイ素アルコキシドとメチル基含有シランと上記ホウ素等の元素成分を含むアルコキシドが加水分解される。有機酸又は無機酸は加水分解反応を促進させるための触媒として機能する。有機酸としてはギ酸、シュウ酸が例示され、無機酸としては塩酸、硝酸、リン酸が例示される。触媒は上記のものに限定されない。
本実施の形態の油浸透防止膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、このシリカゾルゲルを100質量%とするときに、シリカゾルゲルが上記の一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分又は上記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分を0.5質量%〜10質量%とメチル基成分を5質量%〜25質量%とホウ素等の元素成分を1質量%〜10質量%含み、上記溶媒が、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒であることを特徴とする。
また上記シリカゾルゲルは、上記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分と炭素数2〜7のアルキレン基成分を含む。より具体的には、上述した式(35)〜(49)で示されるペルフルオロエーテル構造を挙げることができる。
本実施の形態の油浸透防止膜は、例えば、基材であるステンレス鋼(SUS)、鉄、アルミニウム等の金属板上、窓ガラス、鏡等のガラス上、タイル上、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック上、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム上に、上記液組成物を、スクリーン印刷法、バーコート法、ダイコート法、ドクターブレード、スピン法等により塗布した後に、室温乾燥もしくは乾燥機等により室温〜130℃の温度で乾燥させることにより、形成される。
本実施の形態の油浸透防止膜は、上記方法で形成され、撥水撥油性を有し、特に膜に付着した脂肪酸等の汚れが膜に浸透せず、この脂肪酸等の汚れを簡便に落とすことができる。
ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン(TMOS)の3〜5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)7.11gと、メチル基含有シランとしてのオリゴマータイプ(信越化学工業社製KR−500)0.65gと、チタン元素成分を含むテトライソプロポキシチタン0.90gと、式(31)で表わされるフッ素含有シラン0.09gと、有機溶媒としてのエタノール(EtOH)(沸点78.3℃)19.1gとに、イオン交換水2.13gを添加して、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。またこの混合液に、触媒として酢酸0.03gを添加し、40℃で2時間撹拌した。これにより、シリカゾル加水分解物Iを調製した。得られたシリカゾルゲルである加水分解物Iをエタノール、1−プロパノール、2−プロパノールの混合液(比率 85:10:5)で5倍に希釈して、液組成物が得られた。加水分解物I(シリカゾルゲル)を作るための液組成を表1に、シリカゾルゲルと溶媒を含む液組成物を表2に、加水分解物I(シリカゾルゲル)の組成を表3にそれぞれ示す。
表1〜表3に示すように、ケイ素アルコキシド、フッ素含有シラン、メチル基含有シラン、ホウ素等の元素成分を含むアルコキシド、水、エタノール(EtOH)、触媒を用い、実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜4の加水分解物II〜XI及び液組成物を得た。なお、実施例4の触媒であるEDTAは、エチレンジアミン四酢酸の略称である。また実施例6では、ホウ素等の元素成分を含むアルコキシドとして、テトライソプロポキシチタンとテトラブトキシジルコニウムの2種類のアルコキシドを質量比で1:1の割合で用いた。また実施例7では、炭素数1〜4のアルコール以外の溶媒として、トルエンと水(イオン交換水)を質量比で1:1の割合で用いた。
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた11種類の液組成物を、バーコーター(安田精機製作所製、型番No.3)を用いて、厚さ2mm、たて150mm、よこ75mmのSUS基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが0.5〜1μmとなるように塗布し、11種類の塗膜を形成した。ここで、先ずバーコーターによる塗布時の成膜性を評価した。続いてすべての塗膜を室温にて、20時間乾燥して11種類の防汚性が付与された膜を得た。これらの膜について、膜表面の撥水性、撥油性、n−ヘキサデカンの転落性、膜の基材への密着性及び脂肪酸等の浸透性を次の方法で測定して評価した。これらの結果を表4に示す。なお、表4では、n−ヘキサデカンを単に「HD」と表記している。
成膜性は、膜を目視にて評価した。膜全体に弾き、筋等の発生がなく、液組成物を均一に塗布できたものは「良好」とし、膜の一部に僅かに弾き、筋等が生じたものは「可」とし、膜全体に弾き、筋等が生じたものは「不良」とした。
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS基材上の油浸透防止膜をこの液滴に近づけて油浸透防止膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の撥水性を評価した。
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS基材上の油浸透防止膜をこの液滴に近づけて油浸透防止膜に液滴を付着させる。この付着したn−ヘキサデカンの接触角を測定した。静止状態でn−ヘキサデカンが膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値をn−ヘキサデカンの接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。膜の表面状態が凸凹になって荒れていると通常よりも高い値を示すため、接触角が高過ぎる場合には、成膜性が不良であるとの判断基準となる。
協和界面科学製ドロップマスターDM−700を用いて、シリンジに25℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、水平に置いたSUS基材上にシリンジからn−ヘキサデカンを9μLの液滴を滴下し、基材を2度/分の速度で傾斜させ、n−ヘキサデカンの液滴が移動開始するときの基材の傾けた角度を測定した。(3)の接触角が低くてもこの転落角度が小さい方が防汚性が高いことを意味する。
75mm×150mm×厚さ2mmのSUS304基材上に塗膜を形成した。塗膜の上に、セロファンテープを貼り付けた後、テープを剥がしたときに、塗膜がテープ側に全く付かなかった場合を密着性が「良好」であるとし、塗膜の大部分がテープ側に貼り付き、SUS基材界面で塗膜が剥がれてしまった場合を密着性が「不良」であるとした。
75mm×150mm×厚さ2mmのSUS304基材上に形成した塗膜の上に、オレイン酸、醤油、ケチャップ、マヨネーズの4種類の液体を滴下し、乾燥防止のために、蓋をして、24時間静置した。24時間後に、ベンコット(旭化成社製)にて、滴下した部分を擦って、膜面の状態を目視にて観察した。液体汚れが膜に浸透せずに液体汚れを除去でき、かつ膜面に変化がないものを「良好」とし、膜が剥離したり、液体汚れが膜に浸透し、膜が変色したものを「不可」とした。
Claims (1)
- シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、
前記シリカゾルゲルを100質量%とするときに、前記シリカゾルゲルが下記の一般式(1−1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分又は下記の一般式(1−2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基成分を0.5質量%〜10質量%とメチル基成分を5質量%〜25質量%とホウ素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素成分を1質量%〜10質量%含み、
前記溶媒が、炭素数1〜4のアルコール及び/又は前記アルコール以外の溶媒であることを特徴とする油浸透防止膜形成用液組成物。
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