JP2020132602A - 2−オキサゾリジノン類の製造方法 - Google Patents

2−オキサゾリジノン類の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】医農薬中間体として有用な2−オキサゾリジノン類の新規製造方法の提供。【解決手段】固相担体−金粒子複合体やポリ(アミドアミン)デンドリマー、金化合物と還元剤より調製されるデンドリマー−金粒子複合体等の金粒子存在下で、下記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から下記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を製造する方法。(一般式(I)及び(II)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R2、及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。)【選択図】なし

Description

本発明は、2−オキサゾリジノン類の製造方法に関し、より詳しくは、イオン化されていない0価の金粒子を利用した2−オキサゾリジノン類の製造方法に関する。
2−オキサゾリジノン類は、医農薬中間体として有用であることが知られている。二酸化炭素は無毒で安価なため、2−オキサゾリジノン類の合成において、その利用が求められている。例えば、二酸化炭素を炭素源とし、四級アンモニウム塩、または銀(I)錯体や金(I)錯体等の遷移金属錯体を触媒とした、プロパルギルアミン類を原料とした2−オキサゾリジノン類の製造方法が報告されている(特許文献1、非特許文献1〜3参照)。
なかでも金錯体は、プロパルギルアミン類の三重結合の活性化に有効であるため、金(I)錯体のみならず金(III)錯体も含む各種金錯体を触媒とする、二酸化炭素とプロパルギルアミン類を原料とした2−オキサゾリジノン類の製造方法が近年報告されている(非特許文献4〜6参照)
最近、固相担体上に金粒子を固定化した固相担体−金粒子複合体や、ポリ(アミドアミン)デンドリマー内部に金粒子が調製されたデンドリマー−金粒子複合体が報告されている(非特許文献7〜10参照)。
しかし、高い活性が見込まれるこれらを触媒とする、二酸化炭素とプロパルギルアミン類を原料とした2−オキサゾリジノン類の製造方法は、これまでに報告されていない。
特開2019−19066号公報
Tetrahedron Lett.2017年、第58巻、p.4483 Bull.Chem.Soc.Jpn.2011年、第84巻、p.698 Organometallics、2013年、第32巻、p.5285 Tetrahedron、2016年、第72巻、p.1205 Appl.Organometal.Chem.2016年、第30巻、p.835 J.Mol.Catal.A:Chem.2016年、第423巻、p.216 Chem.Rec.2003年、第3巻、p.75 Green Chem.2009年、第11巻、p.793 Macromolecules、2000年、第33巻、p.6042 Chem.Mater.2004年、第16巻、p.167
本発明は、医農薬中間体として有用な2−オキサゾリジノン類を製造することができる新規な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、金粒子の存在下で、プロパルギルアミン類と二酸化炭素から2−オキサゾリジノン類が生成することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)固相担体−金粒子複合体の存在下、下記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から、下記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる環化反応工程により、2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
Figure 2020132602
(一般式(I)及び(II)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R2、及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。)
(2)金粒子の存在下、上記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から、上記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる環化反応工程により、2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
(3)前記固相担体が、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)等の無機層状化合物、炭素、及びアルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、酸化鉄(Fe23)等の金属酸化物から選択される少なくとも一種である、上記(1)に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
(4)下記一般式(III)で表されるポリ(アミドアミン)デンドリマーと、金化合物と還元剤より調製されるデンドリマー−金粒子複合体の存在下、上記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から上記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる環化反応工程により、2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
Figure 2020132602
(一般式(III)中、mは2以上10以下の整数、nは1以上10以下の整数を表す。Xはアミノ基、ヒドロキシ基、又はQを表す。Q中、Z-はハロゲン化物イオンを表す。)
(5)前記環化反応工程が、さらにメソポーラス担体の存在下で行われる、上記(4)に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
(6)前記メソポーラス担体が、3−10nmの空孔を有するメソポーラス担体である、上記(5)に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
(7)前記メソポーラス担体がグラファイト化メソポーラスカーボンである、上記(5)または(6)に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
(8)前記環化反応工程が、メソポーラス担体の非存在下で行われる、上記(4)に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
(9)前記一般式(III)中のmは2、nは4、およびXはアミノ基である、上記(4)に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
本発明は、医農薬中間体として有用な2−オキサゾリジノン類を、短時間で収率よく製造することができるという優れた製造方法となる。
固相担体−金粒子複合体を模式的に表したものである。 本発明の実施例28の反応条件における2−オキサゾリジノン類の反応時間と収率との関係を表したグラフである。
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
<2−オキサゾリジノン類の製造方法>
本発明の2−オキサゾリジノンの製造方法は、固相担体−金粒子複合体、金粒子、または下記一般式(III)で表されるポリ(アミドアミン)デンドリマー(以下、「デンドリマー」と略す場合がある)と金化合物と還元剤より調製されるデンドリマー−金粒子複合体(以下、「デンドリマー−金粒子複合体」と略す場合がある)などの存在下、下記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類(以下、「プロパルギルアミン類」と略す場合がある。)と二酸化炭素から下記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる環化反応工程を含むことを特徴とする。
Figure 2020132602
(一般式(I)及び(II)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R2、及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。)
Figure 2020132602
(一般式(III)中、mは2以上10以下の整数、nは1以上10以下の整数を表す。Xはアミノ基、ヒドロキシ基、又はQを表す。Q中、Z-はハロゲン化物イオンを表す。)
本発明者らは、医農薬中間体として有用な2−オキサゾリジノン類を製造することができる新規な製造方法を求めて検討を重ねた結果、金粒子の存在下で、プロパルギルアミン類と二酸化炭素から2−オキサゾリジノン類が生成する環化反応工程を見出した。
即ち、無毒で安価、さらに地球温暖化の原因の1つとして考えられている二酸化炭素を利用して、医農薬中間体として有用な2−オキサゾリジノン類を製造することができる。
環化反応工程は、図1に示すように模式的に表される固相担体−金粒子複合体、または上記一般式(III)で表されるポリ(アミドアミン)デンドリマーと金化合物と還元剤より調製されるデンドリマー−金粒子複合体などの金粒子存在下で行われる。
金粒子の粒径としては、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは1nm以上であり、通常1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは10nm以下(金ナノ粒子)である。
図1に示す模式的に表される固相担体−金粒子複合体の構造について説明する。金粒子は、固相担体に固定化されており、固相担体の形状や粒径は様々であり、また、金粒子の固定化も固相表面上での固定化に限定されず、例えば固相担体が層状化合物の場合、層間でもよい。固相担体の形状としては、多くの場合球状と見なすことができる。また固相担体の粒径としては、通常10nm以上、好ましくは100nm以上、より好ましくは1μm以上であり、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは10μm以下である。
固相担体の種類としては、特に限定されず、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)等の無機層状化合物、炭素、及びアルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、酸化鉄(Fe23)等の金属酸化物などが挙げられる。
固相担体−金粒子複合体は、固相担体存在下、テトラクロロ金(III)酸などの水溶液において、クエン酸、水素、または水素化ホウ素塩等を用いた化学的な還元や超音波、光照射、またはγ線照射などのエネルギー照射による還元により調製される。
一方、デンドリマー−金粒子複合体は、2−オキサゾリジノン類の製造において使用するたびに調製するのが望ましい。原料として用いられる一般式(III)で表されるデンドリマーの具体的種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
Figure 2020132602
(一般式(III)中、mは2以上10以下の整数、nは1以上10以下の整数を表す。Xはアミノ基、ヒドロキシ基、又はQを表す。Q中、Z-はハロゲン化物イオンを表す。)
デンドリマーについて説明する。
(1)mは2以上10以下の整数を表し、好ましくは2〜4である。
(2)繰り返し構造のnは1以上10以下の整数を表わし、好ましくは3〜5である。
(3)Xは、アミノ基、ヒドロキシ基、又はQを表す。Q中、Z-はフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンを表す。
符号Gで表される基の一例として、n=3の場合について示すと次のとおりである。
−CH2CH2CONHCH2CH2N[CH2CH2CONHCH2CH2N[CH2CH2CONHCH2CH2N[CH2CH2CONHCH2CH2X]222
以下、デンドリマー−金粒子複合体の調製方法について説明する。
不活性ガス雰囲気下、(III)の溶液を攪拌しながら、金化合物を添加する。
溶媒としては、(III)と金化合物を溶解させる、水またはメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの非プロトン性溶媒でもよい。またこれらの混合溶媒でもよい。
金化合物としては、デンドリマーの三級アミン骨格と塩を形成するテトラハロゲノ金(III)酸やこれらのアルカリ金属塩等が好ましい。
金化合物とデンドリマーの物質量比(金化合物/デンドリマー)は、デンドリマー中のnの値にもよるため一概に定められないが、5〜100の範囲が好ましい。
次いで、デンドリマーと金化合物の混合溶液に還元剤を添加する。
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等が用いられる。この場合、穏やかに還元するため、還元剤を水酸化ナトリウム等の水溶液に溶解させたアルカリ溶液を用いるのが好ましい。
還元剤と金化合物の物質量比(還元剤/金化合物)は、特に限定されないが、1〜20の範囲が好ましい。
還元反応におけるデンドリマーの濃度としては、通常0.01%以上、好ましくは0.05%以上であり、通常2%以下、好ましくは1%以下である。
さらに、還元剤と併せメソポーラス担体を添加することが望ましい。メソポーラス担体としては、グラファイト化メソポーラスカーボンやメソポーラスシリカ等が用いられる。メソポーラス担体の空孔の孔径としては、通常0.1nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上であり、通常1000nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは10nm以下である。
メソポーラス担体は、金化合物中における金の重量の3倍〜500倍、好ましくは30倍〜200倍がよい。
還元反応は加熱をしてもよいが、通常常温で行われる。
デンドリマーに固定化された金を含有するイオンの還元反応により、デンドリマー−金粒子複合体が生成する。またデンドリマー−金粒子複合体をメソポーラス担体に固定化した場合、デンドリマー−金粒子複合体の失活が抑制され、触媒の長寿命化が見込まれる。デンドリマー−金粒子複合体やメソポーラス担体固定化デンドリマー−金粒子複合体を単離することなく、これらを含む反応液を2−オキサゾリジノン類を製造する環化反応工程に用いる。
環化反応工程における金粒子の存在量(使用量)は、プロパルギルアミン類に対して、通常0.01mol%以上、好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは1mol%以上であり、通常500mol%以下、好ましくは50mol%以下、より好ましくは10mol%以下である。上記範囲内であると、2−オキサゾリジノン類が生成し易くなる。
環化反応工程は、下記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から下記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる工程であるが、一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類が目的生成物であり、製造目的に応じて適宜選択することができる。なお、一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類は、一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類に応じて選択される。
Figure 2020132602
(一般式(I)及び(II)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R2、及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。)
1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
1が炭化水素基である場合のR1の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
1が炭化水素基である場合のR1に含まれる官能基としては、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、イミノ基(−NH−)、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カルボキシル基(−COOH)、チオエーテル基(−S−)等が挙げられる。
1の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、シアノフェニル基、メトキシフェニル基、メチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基等のアリール基、ジフェニルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。フェニル基、シアノフェニル基、メトキシフェニル基、メチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基等のアリール基が好ましく、フェニル基、シアノフェニル基、メトキシフェニル基が特に好ましい。
2及びR3が炭化水素基である場合のR2及びR3の炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは6以下である。R2、及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。
2及びR3が炭化水素基である場合のR2及びR3に含まれる官能基としては、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、イミノ基(−NH−)、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カルボキシル基(−COOH)、チオエーテル基(−S−)等が挙げられる。
2及びR3としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、シアノフェニル基、メトキシフェニル基、メチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基等のアリール基、ジフェニルメチル基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。水素原子以外としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基やベンジル基等のアラルキル基が好ましく、メチル基、ベンジル基が特に好ましい。
4が炭化水素基である場合のR4の炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは6以下である。
4が炭化水素基である場合のR4に含まれる官能基としては、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、イミノ基(−NH−)、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カルボキシル基(−COOH)、チオエーテル基(−S−)等が挙げられる。
4としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、シアノフェニル基、メトキシフェニル基、メチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロフェニル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基等のアラルキル基が挙げられるが、メチル基、ベンジル基が特に好ましい。
環化反応工程は、金粒子の存在下、プロパルギルアミン類と二酸化炭素から2−オキサゾリジノン類を生成させるものであれば、具体的な実験操作、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。実験操作の一例として、不活性ガスで満たされた反応容器に金粒子、プロパルギルアミン類、必要に応じ反応溶媒を投入し、反応容器内の温度を所定の反応温度に昇温した後、反応容器内に二酸化炭素を充填して圧力を設定し、撹拌しながら所定の反応時間反応させる方法が挙げられる。なお、二酸化炭素は、室温〜反応温度・常圧で気体であるため、気液反応として行われる。
デンドリマー−金粒子複合体を触媒として用いる場合、この調製時における反応容器内の不活性ガスを二酸化炭素に置換する、あるいは不活性ガスで満たされた反応容器内に二酸化炭素を気相として投入することにより、気液反応として行われる。前者の一例として、回分式反応容器でデンドリマー−金粒子複合体を調製した場合を以下に示す。このものを調製後、反応容器の減圧、二酸化炭素の充填を繰り返し、反応容器内を二酸化炭素雰囲気下とする。次いで、反応容器にプロパルギルアミン類を投入し、反応容器内の温度を所定の反応温度に昇温し、必要に応じ反応容器内に二酸化炭素をさらに充填して圧力を設定し、撹拌しながら所定の反応時間反応させる。
環化反応工程では、二酸化炭素が反応によって消費されるため、反応の進行とともに圧力が低下することになる。従って、反応容器内に絶えず二酸化炭素を供給して圧力を保持する態様、或いは予め十分な二酸化炭素を充填する態様のどちらであってもよい。
なお、反応容器は、反応圧力を高く設定することができるため、耐圧性の金属製反応容器(オートクレーブ)の使用が望ましい。また、気相には二酸化炭素のほかに、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス等が共存していてもよい。
反応温度は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは110℃以下である。上記範囲内であると、2−オキサゾリジノン類が生成し易くなる。
反応圧力は、前述のように二酸化炭素が反応によって消費され、反応の進行とともに圧力が低下することになるため、初期圧(反応温度に到達した時点の反応系の圧力)として表現すると、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下、特に好ましくは2MPa以下であり、下限は反応スケールや反応容器の体積にもよるが、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa、特に好ましくは0.1MPa以上である。また窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを含有する場合、二酸化炭素の初期分圧も、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは2MPa以下であり、下限は反応スケールや反応容器の体積にもよるが、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上である。なお、「二酸化炭素の分圧」は、反応系の全圧力に二酸化炭素のモル分率を乗じた値と考えることができる。
反応時間は、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは3時間以上であり、通常72時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは30時間以下である。
反応終了後、反応液を取り出し、固相担体やメソポーラス担体が共存する場合はこれらを濾別した後、反応溶液をジクロロメタン等の有機溶媒で抽出し、この1H NMR測定より、2−オキサゾリジノン類が生成したことが確認される。
また目的物を単離する場合、反応終了後、固相担体やメソポーラス担体が共存するならばこれを濾別し、反応溶液をジクロロメタン等の有機溶媒で抽出する。有機層を乾燥させた後、濃縮し、残渣のカラムクロマトグラフィーにより目的物が得られ、1H NMR測定より2−オキサゾリジノン類が生成したことが確認される。
カラムクロマトグラフィーの溶離液としては、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル系溶媒、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、またはメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの混合溶媒が使用されるが、単独でもよい。溶離液はハロゲン系溶媒でもよく、制限されない。
本発明により、固相担体−金粒子複合体やデンドリマー−金粒子複合体などの金粒子存在下で、プロパルギルアミン類と二酸化炭素から、医農薬中間体として有用な2−オキサゾリジノン類が製造される、2−オキサゾリジノン類の新規な製造方法が提供された。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1〜6)固相担体−金粒子複合体を用いた2−オキサゾリジノン類の製造における固相担体の検討
(実施例6の実験操作)アルゴン雰囲気下、下式に記載のプロパルギルアミン類(IV)(0.2mmol)、トルエン(1mL)、ハイドロタルサイト−金粒子複合体(53.7mg、0.002mol;1mol%[Au])をそれぞれ反応容器(オートクレーブ)に投入し密閉した後、100℃に加熱し(ゲージ圧0.04MPa)、二酸化炭素ガスを1.0MPa充填し(ゲージ圧1.04MPa)、反応液を撹拌しながら20時間反応させた。
反応終了後、ハイドロタルサイト−金粒子複合体を濾別し、ジクロロメタンで洗浄した。得られたジクロロメタン溶液に内部標準として2−(ベンジルオキシ)ナフタレンを加え溶解させた後、一部取り出し減圧下で溶媒留去し、1H NMRより生成物2−オキサゾリジノン類(V)の構造を特定し、収率を算出した。
各種固相担体−金粒子複合体を用い反応を行ったところ、トルエン中ハイドロタルサイト−金粒子複合体を用いた場合、最も良好な収率で2−オキサゾリジノン類(V)が製造された。
Figure 2020132602
Figure 2020132602
(実施例7〜12)ハイドロタルサイト−金粒子複合体を用いた2−オキサゾリジノン類の製造における反応条件の検討
ハイドロタルサイト−金粒子複合体を用い(2mol%[Au])、実施例6の実験操作に倣い2−オキサゾリジノン類(V)を製造した。
CO2圧2.0MPa、トルエン溶媒、反応温度110℃、反応時間30hで、最も良好な収率で2−オキサゾリジノン類(V)が製造された。
Figure 2020132602
実施例10で製造した2−オキサゾリジノン類(V)の単離精製
ハイドロタルサイトー金粒子複合体を濾別後のジクロロメタン溶液を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル)により精製し、生成物2−オキサゾリジノン類(V)を単離した(収率82%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ/ppm 7.40−7.30(m,3H),7.29−7.26(m,2H),4.74(td,1H,J=3.1,2.6Hz),4.47(s,2H),4.24(td,1H,J=3.1,2.2Hz),4.02(dd,2H,J=2.4,2.4Hz).
(実施例13〜17)ハイドロタルサイト―金粒子複合体を用いた各種2−オキサゾリジノン類の製造
実施例10の実験操作に倣い、CO2圧2.0MPa、トルエン溶媒、反応時間30h、表3に示される各反応温度で、各種2−オキサゾリジノン類(II)を製造した。
Figure 2020132602
(実施例18、19)デンドリマー−金粒子複合体を使用した2−オキサゾリジノン類の製造における反応溶媒の検討
アルゴン雰囲気下、以下の構造式
Figure 2020132602
で表されるポリ(アミドアミン)デンドリマー(VI)の10wt%メタノール溶液22mgを減圧下で溶媒留去し、水を2.1mL加え溶解させ、室温で攪拌しながら0.005Mテトラクロロ金(III)酸水溶液0.6mLをゆっくり加えた(HAuCl4/デンドリマー(VI)=20(物質量比))。1時間攪拌後0.3M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた0.1M水素化ホウ素ナトリウム水溶液0.3mLを室温でゆっくり加え(VI)−金粒子複合体を調製した。グラファイト化メソポーラスカーボン(GMC)を添加する実験ではGMC59mgを、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えた直後に添加した(GMC/Au=100(w/w))。
30分間攪拌後、トルエンを1.5mL加えた後(実施例19のみ)、反応容器の減圧、二酸化炭素の充填を3回繰り返し、反応容器内を二酸化炭素雰囲気下(CO2 0.1MPa)とするとともに二酸化炭素を封入したバルーンを取り付けた。反応溶液を40℃に加熱し、実施例13と同じプロパルギルアミン類(IV)(0.3mmol)を加え、溶液を撹拌しながら3時間反応させた。
反応終了後、グラファイト化メソポーラスカーボンを添加した実験では、グラファイト化メソポーラスカーボンを濾別し、メタノールとジクロロメタンで洗浄した。濾液をジクロロメタンで4回抽出し、ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾別後、ジクロロメタン層に内部標準として2−(ベンジルオキシ)ナフタレンを加え溶解させた後、一部取り出し減圧下で溶媒留去し、1H NMRより生成物2−オキサゾリジノン類(V)の構造を特定し、収率を算出した。水溶媒中より、水−トルエン混合溶媒中で2−オキサゾリジノン類を製造することにより、収率は向上した。
Figure 2020132602
(実施例20〜22)デンドリマー−金粒子複合体を使用した2−オキサゾリジノン類の製造における反応温度の検討
実施例19の実験操作に倣い、トルエンを1.5mL加えた後、反応容器内を二酸化炭素雰囲気下(CO20.1MPa)として、反応溶液を室温で、または40℃、60℃にそれぞれ加熱し、実施例13と同じプロパルギルアミン類(IV)(0.3mmol)を加え、溶液を撹拌しながら3時間反応させて、2−オキサゾリジノン類(V)を製造した。40℃で良好な収率で2−オキサゾリジノン類(V)が得られた。
Figure 2020132602
(実施例23〜25)デンドリマー−金粒子複合体の調製におけるHAuCl4/デンドリマー(VI)(物質量比)の検討
実施例19の実験操作(HAuCl4/デンドリマー(VI)=20(物質量比))に基づきデンドリマー(VI)の量を調整し、反応温度40℃、反応時間15分で2−オキサゾリジノン類(V)を製造した。HAuCl4/デンドリマー(VI)=20(物質量比)の条件のもとで、最も良好な収率で2−オキサゾリジノン類(V)が得られた。
Figure 2020132602
上記No.1、2は比較例であり、比較例における反応時間はいずれも3時間。比較例1のデンドリマー(VI)の量と、比較例2のテトラクロロ金(III)酸の量は、それぞれNo.24に倣う。
(実施例26〜29)デンドリマー−金粒子複合体の使用におけるメソポーラス担体(グラファイト化メソポーラスカーボン(GMC))の添加量の検討
実施例19の実験操作(GMC/Au=100(w/w))に基づきGMCの量を調整し、反応温度40℃、反応時間15分で2−オキサゾリジノン類(V)を製造した。GMC/Au=50(w/w)の条件のもとで、最も良好な収率で2−オキサゾリジノン類(V)が得られた。
Figure 2020132602
(実施例a〜d)反応時間の検討
実施例28の実験操作に倣い、GMC/Au=50(w/w)、反応温度40℃、反応時間を15分間(実施例a)、30分間(実施例b)、3時間(実施例c)、10時間(実施例d)で2−オキサゾリジノン類(V)を製造し、それぞれの反応時間における収率を算出した。反応時間と収率の関係を表したグラフを図2に示す。反応時間30分で、99%の収率で2−オキサゾリジノン類(V)が得られた(実施例aは実施例28と同じ)。
(実施例30,31)四級アンモニウム塩骨格を有するデンドリマー−金粒子複合体を使用した2−オキサゾリジノン類の製造
アルゴン雰囲気下、以下の構造式
Figure 2020132602
で表されるポリ(アミドアミン)デンドリマー(VII)の1mM水溶液0.15mLを加えた後、水を1.95mL加え、室温で攪拌しながら0.005Mテトラクロロ金(III)酸水溶液0.6mLをゆっくり加えた。1時間攪拌後0.3M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた0.1M水素化ホウ素ナトリウム水溶液0.3mLを室温でゆっくり加えた直後にGMC30mgを添加し、(VII)−金粒子複合体を調製した。
30分間攪拌後、反応容器の減圧、二酸化炭素の充填を3回繰り返し、反応容器内を二酸化炭素雰囲気下(CO20.1MPa)とするとともに二酸化炭素を封入したバルーンを取り付けた。反応溶液を40℃に加熱し、実施例13と同じプロパルギルアミン類(IV)(0.3mmol)を加え、溶液を撹拌しながら15分または3時間反応させた。
反応終了後、GMCを濾別し、メタノールとジクロロメタンで洗浄した。濾液をジクロロメタンで4回抽出し、ジクロロメタン層を硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾別後、ジクロロメタン層に内部標準として2−(ベンジルオキシ)ナフタレンを加え溶解させた後、一部取り出し減圧下で溶媒留去し、1H NMRより生成物2−オキサゾリジノン類(V)の構造を特定し、収率を算出した。
Figure 2020132602
(実施例32〜35)デンドリマー−金粒子複合体を使用した各種2−オキサゾリジノン類の製造
実施例28の実験操作に倣い、トルエンを1.5mL加えた後、反応容器内を二酸化炭素雰囲気下(CO20.1MPa)として、下記表9に示すそれぞれのプロパルギルアミン類(I)(0.3mmol)を加え、反応溶液を40℃で撹拌しながら、表9に示される各反応時間で反応させて、それぞれの2−オキサゾリジノン類(II)を製造した。
Figure 2020132602
Figure 2020132602

Claims (9)

  1. 固相担体−金粒子複合体の存在下、下記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から、下記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる環化反応工程により、2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
    Figure 2020132602
    (一般式(I)及び(II)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R2、及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。)
  2. 金粒子の存在下、上記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から、上記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる環化反応工程により、2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
  3. 前記固相担体が、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)等の無機層状化合物、炭素、及びアルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、酸化鉄(Fe23)等の金属酸化物から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
  4. 下記一般式(III)で表されるポリ(アミドアミン)デンドリマーと、金化合物と還元剤より調製されるデンドリマー−金粒子複合体の存在下、上記一般式(I)で表されるプロパルギルアミン類と二酸化炭素から上記一般式(II)で表される2−オキサゾリジノン類を生成させる環化反応工程により、2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
    Figure 2020132602
    (一般式(III)中、mは2以上10以下の整数、nは1以上10以下の整数を表す。Xはアミノ基、ヒドロキシ基、又はQを表す。Q中、Z-はハロゲン化物イオンを表す。)
  5. 前記環化反応工程が、さらにメソポーラス担体の存在下で行われる、請求項4に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
  6. 前記メソポーラス担体が、3−10nmの空孔を有するメソポーラス担体である、請求項5に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
  7. 前記メソポーラス担体がグラファイト化メソポーラスカーボンである、請求項5または6に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
  8. 前記環化反応工程が、メソポーラス担体の非存在下で行われる、請求項4に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。
  9. 前記一般式(III)中のmは2、nは4、およびXはアミノ基である、請求項4に記載の2−オキサゾリジノン類を製造する方法。

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