JP2020128614A - 炭素繊維束およびその製造方法 - Google Patents
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(A) Ac≧121−17Fc/dtex
(B) Ac≧90。
(a) 耐炎化繊維束の単繊維断面の中心側と円周側に観察される断面二重構造のうち、円周側の面積の単繊維断面積に占める割合である外層比率As(%)がAs≧90を満たす。
(b)耐炎化初期温度Ti(℃)とアクリレート系モノマー(X)単位の質量組成比Za(%)が、Ti×Za≧1000の関係を満たす。
(c)耐炎化温度が200〜300℃の範囲内である。
真円度が0.91以上であれば耐擦過性が良くなるため、単繊維破断が起きにくく毛羽が発生しにくくなり、結果的に炭素化工程の工程通過性に優れる。真円度は高いほど好ましい。真円度は、繊維束を樹脂包埋し、繊維軸に垂直な面を湿式研磨することで露出した断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析から繊維断面積および周長を算出することで求められる。かかる繊維の真円度を制御するためには、炭素繊維束の形状は炭素繊維前駆体繊維束の凝固条件と延伸条件によって決定されるため、凝固浴の組成および温度、さらに延伸浴の温度と延伸倍率を制御することで達成できる。
(A) Ac≧121−17Fc/dtex
を満たし、好ましくは上式における切片が123、さらに好ましくは切片が125である。上式を満たしていれば、太繊度かつ断面二重構造が抑制されており、単繊維の耐荷重およびプロセス性に優れる。上式は耐炎化工程における断面二重構造を抑制することで制御され、主に耐炎化温度やポリアクリロニトリル系共重合体の酸素透過成分の共重合量などにより制御される。
(B) Ac≧90%
を満たし、好ましくは93%以上であり、より好ましくは95〜98%である。断面二重構造の外層比率が90%以上であれば、単繊維の耐荷重が増すことで破断しにくくなり工程通過性に優れ、外層比率が高いほど望ましい。ただし、外層比率が98%以下の場合は単繊維強度の低下が起こらず、耐荷重を高くすることができる。断面二重構造の外層比率は炭素繊維束を樹脂包埋し、繊維軸に垂直な面を湿式研磨することで露出した断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析から繊維断面積および断面二重構造のうち円周側の構造の面積を算出することで求められる。かかる断面二重構造の外層比率を制御するためには、耐炎化工程の処理時間と処理温度、もしくはポリアクリロニトリル系重合体の共重合成分を変更することで制御できる。
Ti×Za≧1000。
長さ2cmに切断した耐炎化繊維もしくは炭素繊維をエポキシ樹脂(主剤:BUEHLER社製EPO−KWICK RESIN、硬化剤:EPO−KWICK HARDENER)に包埋し、繊維軸に垂直な断面を湿式研磨処理した後、顕微鏡(ライカマイクロシステムズ社製工業用正立顕微鏡DM2700M)を用いて観察して写真を撮影した。撮影した写真は画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いて解析した。条件によっては外層と内層が一定の範囲にグラデーションを形成したり、外層と内層の境界に中間的な層が形成されリング状に観察されたりする場合があるが、これらの境界部分と外層とが形成するグラデーションの外側端を二重構造の境界と定めた。単繊維30本について画像解析を行った。外層厚みは周から断面の中心方向に計測した周から外層と内層の境界までの距離として算出した。外層比率は耐炎化繊維や炭素繊維の平均断面積a0と内層部分の平均面積a1を求めた後、下記式にしたがって算出した。
外層比率(%)=(1−a1)÷a0×100
<真円度の算出方法>
長さ2cmに切断した炭素繊維前駆体繊維束をエポキシ樹脂(主剤:BUEHLER社製EPO−KWICK RESIN、硬化剤:EPO−KWICK HARDENER)に包埋し、繊維軸に垂直な断面を湿式研磨処理した後、顕微鏡(ライカマイクロシステムズ社製工業用正立顕微鏡DM2700M)を用いて観察して写真を撮影した。撮影した写真は画像処理ソフトウェア(ImageJ)を用いて解析した。繊維断面の面積と周長を計測し、以下の式から真円度を算出した。
S:繊維断面積
L:繊維断面の周長。
フィラメント数3000の炭素繊維束に、炭素繊維単繊維あたりの平均荷重が7gf(69mN)となるように重りをとりつけ、その後、炭素繊維束の毛羽を目視で観察し、品位を評価した。品位は良好なものを○、プロセス上許容できる範囲であるものを△、劣るものを×とした。
アクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルを93.5:1.0:5.5の質量比で混合した単量体混合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒とした溶液重合法により重合し、ポリアクリロニトリル系共重合体溶液を得、紡糸溶液とした。得られた紡糸溶液を孔数3000の口金を用いて一旦空気中に吐出し、空間を通過させた後、DMSOの水溶液からなる凝固浴に導く乾湿式紡糸法により凝固させ、凝固糸とした。得られた凝固糸を水洗した後、温水浴中で2倍に延伸し、シリコーン系油剤を付与し、表面温度が180℃のホットドラムで加熱処理を行った。その後、加圧水蒸気中で5倍に延伸して単繊維繊度3.3dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た。この炭素繊維前駆体繊維束を、熱風循環式オーブンを用いて250℃の空気中で熱処理し、耐炎化繊維束を得た。得られた耐炎化繊維束をエポキシ樹脂に樹脂包埋し、耐炎化繊維束の繊維軸方向に垂直な面を湿式研磨し、断面を光学顕微鏡で観察し、外層比率を算出した。得られた耐炎化繊維束を温度300〜800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化することで炭素繊維束を得た。炭素繊維束の毛羽数を数え、品位を評価した。
実施例1で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得、230℃の空気中で熱処理した以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が90.0:1.0:9.0である単量体組成物とした以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例4で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は実施例4と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例4の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例4と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例6で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は実施例6と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸ノルマルブチルの質量比が92.0:1.0:7.0である単量体組成物とした以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が97.1:1.0:1.9である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
比較例1で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
比較例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度3.3dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は比較例3と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300〜800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
比較例3で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例3と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
比較例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は比較例1と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300〜800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
比較例5で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例5と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300〜800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
実施例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
比較例7で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例7と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例1の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が90.0:1.0:9.0である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
比較例10で得た炭素繊維前駆体繊維束を230℃の空気中で熱処理した以外は比較例10と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸ノルマルブチルの質量比が96.6:1.0:2.4である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得、220℃の空気中で熱処理を行った以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束および炭素繊維束を得た。
比較例12の紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度4.4dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得た以外は比較例12と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300〜800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸の質量比が99.0:1.0である単量体組成物とし、紡糸溶液の吐出量を変更して単繊維繊度2.2dtexの炭素繊維前駆体繊維束を得、230℃の空気中で熱処理を行った以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束を得た。耐炎化繊維束を温度300〜800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化を行ったところ、繊維束が切れ、炭素繊維束は得られなかった。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が93.5:1.0:5.5である単量体組成物として得られた紡糸溶液を孔数3000の口金を用いてDMSOの水溶液からなる凝固浴中に吐出する湿式紡糸法により凝固させ、凝固糸とした以外は実施例1と同様にし、耐炎化繊維束を得た。得られた耐炎化繊維束を温度300〜800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化し、その後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で炭素化することで炭素繊維束を得た。炭素繊維束の毛羽数を数え、品位を評価した。
実施例1でポリアクリロニトリル系共重合体の原料をアクリロニトリル、イタコン酸、アクリレート系モノマーとしてアクリル酸エチルの質量比が93.5:1.0:5.5である単量体組成物とした以外は実施例1と同様にし、炭素繊維前駆体繊維束を得た。得られた炭素繊維前駆体繊維束を310℃の空気中で熱処理を行ったところ、繊維束が断糸し、耐炎化繊維束は得られなかった。
Claims (4)
- 単繊維繊度Fcが1.5〜4.0dtexであり、単繊維の繊維軸に垂直な方向の断面の形状が真円度0.91〜1.00であり、単繊維断面の中心側と円周側に観察される断面二重構造のうち、円周側の面積の単繊維断面積に占める割合である外層比率Ac(%)と単繊維繊度Fc(dtex)が次の条件(A)と条件(B)を満たす炭素繊維束。
(A) Ac≧121−17Fc/dtex
(B) Ac≧90 - 炭素繊維束の単繊維断面の断面二重構造のうち、円周側の部分の中心方向への厚みである外層厚みが4.0〜6.7μmである請求項1に記載の炭素繊維束。
- アクリロニトリル単位90.0〜97.0質量%と構造式CH2=CHCOOCnH2n+1(構造式中、n=2〜4であり、アルキル鎖は直鎖である。)で表されるアクリレート系モノマー(X)単位3.0〜10.0質量%を含むポリアクリロニトリル系重合体を用いて、単繊維繊度が2.3〜6.0dtexであり、単繊維の繊維軸に垂直な方向の断面の形状が真円度0.91〜1.00である炭素繊維前駆体繊維束を得た後に、該炭素繊維前駆体繊維束を次の条件(a)から条件(c)を満たしながら酸化性雰囲気中で処理する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた耐炎化繊維束を最高温度500〜1200℃の不活性雰囲気中において予備炭素化する予備炭素化工程と、該予備炭素化工程で得られた予備炭素化繊維束を1200〜3000℃の不活性雰囲気中において炭素化する炭素化工程を含む炭素繊維束の製造方法。
(a) 耐炎化繊維束の単繊維断面の中心側と円周側に観察される断面二重構造のうち、円周側の面積の単繊維断面積に占める割合である外層比率As(%)がAs≧90を満たす。
(b) 耐炎化初期温度Ti(℃)とアクリレート系モノマー(X)単位の質量組成比Za(%)が、Ti×Za≧1000の関係を満たす。
(c) 耐炎化温度が200〜300℃の範囲内である。 - 耐炎化繊維束の単繊維断面の断面二重構造のうち、円周側の部分の中心方向への厚みである外層厚みが5.3〜8.9μmである請求項3に記載の炭素繊維束の製造方法。
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