JP2020125787A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents

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健太 川名
Kenta Kawana
健太 川名
季治 海老名
Sueji Ebina
季治 海老名
勇 八壽八
Isamu Yasuhachi
勇 八壽八
井上 純一
Junichi Inoue
純一 井上
将人 清水
Masahito Shimizu
将人 清水
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Abstract

【課題】エンストが発生するおそれがある場合において、エンストの発生を抑制しつつ発進応答性の向上を図ることができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供する。【解決手段】シフトレンジが前進走行レンジD、車速Vが判定速度Vth未満、ブレーキオン状態、トルクコンバータ14の作動油温Toilが判定温度Tth未満、エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが判定濃度Oth未満、且つエンジンオフ状態の期間TMoffが判定期間TMthを超過の場合、発進クラッチである第1クラッチC1の指令圧Pcmdが、タービン回転速度Ntが所定の要求タービン回転速度Nt_reqとなるように第1クラッチC1を半係合状態とする第4の油圧値Po4とされる発進クラッチのスリップ制御が実行される。【選択図】図7

Description

本発明は、走行レンジで停車状態にある車両の自動変速機の発進クラッチを半係合状態とするスリップ制御が実行される車両用動力伝達装置の制御装置に関する。
走行レンジにおいて車両がブレーキオン状態で停車している場合、そのブレーキオン状態が解除された場合の車両発進時の発進応答性を向上させるために自動変速機において車両発進時に接続される発進クラッチを予め完全係合状態とする制御が知られている。一方、走行レンジにおいて車両がブレーキオン状態で停車している場合、発進クラッチの作動油の指令圧を低下させて発進クラッチを半係合状態とする発進クラッチのスリップ制御が行われてエンジンにかかる負荷を軽減する動力伝達装置の制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。
特開2017−48879号公報
特許文献1に記載の動力伝達装置の制御装置は、エンジン・ストール(略してエンスト)が発生しやすい状況であるか否かの状況にかかわらず発進クラッチのスリップ制御が行われる。そのため、エンストが発生するおそれがない場合には、発進クラッチを予め完全係合状態とする制御が行われる場合に比較して、発進クラッチのスリップ制御が行われることで発進応答性が劣ってしまう。一方、トルクコンバータのロックアップクラッチが多板式であり、その作動油が低温であり、且つ、標高が高く車両の外気の酸素濃度が低い状態にあるようなエンストが発生しやすい状況である場合には、エンストの発生を抑制しつつ発進応答性の向上を図る必要がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンストが発生するおそれがある場合において、エンストの発生を抑制しつつ発進応答性の向上を図ることができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
本発明の要旨とするところは、多板式ロックアップクラッチを有するトルクコンバータ及び発進時に発進クラッチが係合される自動変速機を備えてエンジンの動力を伝達する車両用動力伝達装置の、制御装置において、(1)シフトレンジが走行レンジであり、(2)停車状態であり、(3)ブレーキオン状態であり、(4)前記トルクコンバータの作動油温が判定温度未満の状態であり、(5)前記エンジンが取り込む外気の酸素濃度が判定濃度未満の状態であり、且つ(6)前記エンジンの始動前におけるエンジンオフ状態の期間が判定期間を超過している場合、前記発進クラッチの指令圧を、(a)パック詰めのための第1の油圧値とした後に前記第1の油圧値よりも低い第2の油圧値とし、(b)前記第2の油圧値とした後にエンジン回転速度とタービン回転速度との回転速度差が判定回転速度以上になると前記第2の油圧値よりも低い第3の油圧値とし、(c)前記第3の油圧値とした後に前記タービン回転速度が所定の要求タービン回転速度となるように前記第3の油圧値よりも高い第4の油圧値とし、(d)前記第4の油圧値とした後に前記ブレーキオン状態が解除されると前記第4の油圧値よりも高い第5の油圧値とし、(e)前記第4の油圧値は前記発進クラッチを半係合状態とするものであり、前記第5の油圧値は前記発進クラッチを完全係合状態とするものであることにある。
本発明によれば、(1)シフトレンジが走行レンジであり、(2)停車状態であり、(3)ブレーキオン状態であり、(4)前記トルクコンバータの作動油温が判定温度未満の状態であり、(5)前記エンジンが取り込む外気の酸素濃度が判定濃度未満の状態であり、且つ(6)前記エンジンの始動前におけるエンジンオフ状態の期間が判定期間を超過している場合、前記発進クラッチの指令圧が、(a)パック詰めのための第1の油圧値とされた後に前記第1の油圧値よりも低い第2の油圧値とされ、(b)前記第2の油圧値とされた後にエンジン回転速度とタービン回転速度との回転速度差が判定回転速度以上になると前記第2の油圧値よりも低い第3の油圧値とされ、(c)前記第3の油圧値とされた後に前記タービン回転速度が所定の要求タービン回転速度となるように前記第3の油圧値よりも高い第4の油圧値とされ、(d)前記第4の油圧値とされた後に前記ブレーキオン状態が解除されると前記第4の油圧値よりも高い第5の油圧値とされ、(e)前記第4の油圧値は前記発進クラッチを半係合状態とするものであり、前記第5の油圧値は前記発進クラッチを完全係合状態とするものである。
作動油温が低いと作動油の粘性が高く、エンジンオフ状態の期間が長いと多板式ロックアップクラッチの摩擦板間にある作動油が流れ落ちてしまうため、多板式ロックアップクラッチの摩擦板同士を引き剥がすのに必要な引き摺りトルクが大きくなる。エンジンが取り込む外気の酸素濃度が低い状態にあるとエンジンから出力されるエンジントルクが小さくなって駆動系負荷トルクに配分可能なエンジン余剰トルクが小さくなる。そのため、シフトレンジが走行レンジであり、停車状態であり、且つブレーキオン状態である場合において発進クラッチを完全係合状態とすると、トルクコンバータの伝達トルク容量の増大やそれに伴う多板式ロックアップクラッチの摩擦板同士を引き剥がすのに必要な引き摺りトルクの増大の影響を受けてエンストが発生するおそれがある。そのため、エンストが発生するおそれがある場合において、ブレーキオン状態が解除される前にタービン回転速度が所定の要求タービン回転速度となるように発進クラッチを半係合状態とするべく発進クラッチの作動油の指令圧が制御される。これにより、エンストが発生するおそれがある場合に、エンストの発生を抑制しつつブレーキオン状態が解除された場合の発進応答性の向上が図られる。
本発明の実施例に係る車両用動力伝達装置の電子制御装置が搭載された車両の概略構成図であると共に、電子制御装置における制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。 図1に示すトルクコンバータや自動変速機の一例を説明する骨子図である。 図2に示す自動変速機の変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する係合作動表である。 図2に示すトルクコンバータの断面図である。 シフトレンジが前進走行レンジであり、車両が停車状態にあり、且つ車両がブレーキオン状態にある場合におけるエンジンに対する負荷トルクの内訳を説明する図である。 図1に示す電子制御装置により発進クラッチのスリップ制御が実行されたときのタイムチャートの一例である。 図1に示す電子制御装置の制御作動を説明するフローチャートの一例である。
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係る車両用動力伝達装置の電子制御装置100が搭載された車両10の概略構成図であると共に、電子制御装置100における制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。車両10は、エンジン12、一対の駆動輪36、及びエンジン12と一対の駆動輪36との間の動力伝達経路に設けられた車両用動力伝達装置80(以下、「動力伝達装置80」と記す。)を備える。動力伝達装置80は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース24(図2参照)内に配設されたトルクコンバータ14、自動変速機16、出力軸30、差動歯車装置32、及び一対の車軸34を備える。動力伝達装置80において、エンジン12から出力される動力は、トルクコンバータ14、自動変速機16、出力軸30、差動歯車装置32、及び一対の車軸34等を順次介して一対の駆動輪36へ伝達される。なお、差動歯車装置32は、出力軸30から動力を受けて一対の駆動輪36に連結された一対の車軸34に適宜回転速度差を付与する周知のディファレンシャルギヤである。
電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。
電子制御装置100には、例えばシフト操作装置82に設けられたポジションセンサ86、油圧制御回路40に設けられた油温センサ42、酸素濃度センサ90、車速センサ92、アクセル操作量センサ94、ブレーキ操作量センサ96、及びイグニッションスイッチ98から、シフトレバー84の操作位置を表すシフト操作信号Psh、自動変速機16やトルクコンバータ14の作動油(潤滑油)の作動油温Toil[℃]を表す信号、車両10の周囲にある外気すなわちエンジン12が取り込む外気の酸素濃度Oden[vol%]を表す信号、車両10の車速V[km/h]を表す信号、運転者の加速要求量であるアクセル操作量Acc[%]を表す信号、運転者の減速要求量であるブレーキ操作量Brk[%]を表す信号、及びエンジン12のエンジン作動信号IGがそれぞれ入力される。
電子制御装置100からは、自動変速機16へ変速制御を指示したり、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ44の断接制御を指示したりする油圧制御指令信号Spが油圧制御回路40へ出力される。電子制御装置100からは、例えばブレーキ操作量Brkが不図示のブレーキペダルの踏込操作量を表す場合、ブレーキ操作量Brkの大きさに応じて車輪ブレーキ78に制動力を発生させる車輪ブレーキ制御信号Sbrkが車輪ブレーキ78に出力される。車輪ブレーキ78は、車両10を減速或いは停止させるための制動力を発生させる機能を有する周知の車輪ブレーキである。なお、車両10に制動力が働いている状態を「ブレーキオン状態」といい、車両10に制動力が働いていない状態を「ブレーキオフ状態」ということとする。
図2は、図1に示すトルクコンバータ14や自動変速機16の一例を説明する骨子図である。なお、トルクコンバータ14や自動変速機16等は、自動変速機16の入力回転部材であるタービン軸28の軸線RCに対して略対称的に構成されており、図2では軸線RCの下半分が省略されている。
エンジン12は、車両10の動力源であり、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であり、発生した動力をクランク軸12aに出力する。
トルクコンバータ14は、周知の流体式動力伝達装置である。トルクコンバータ14のポンプ翼車14pは、エンジン12のクランク軸12aに連結されている。トルクコンバータ14のタービン翼車14tは、出力側部材に相当するタービン軸28を介して自動変速機16に連結されている。ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間には、その係合によりポンプ翼車14p及びタービン翼車14tを一体回転させるように構成された多板式ロックアップクラッチ44(以下、「ロックアップクラッチ44」と記す。)が設けられている。動力伝達装置80には、ポンプ翼車14pに動力伝達可能に連結された機械式のオイルポンプ26が備えられている。オイルポンプ26は、エンジン12によって回転駆動されることにより、自動変速機16を変速制御するための元圧を供給したり、ロックアップクラッチ44を係合するための作動油を供給したり、動力伝達装置80の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の油圧を発生する。トルクコンバータ14の詳細な構造については後述する。
自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置18とラビニヨ型に構成されているシングルピニオン型の第2遊星歯車装置20及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置22とを同じ軸線RCまわりに回転可能に有するとともに、一方向クラッチF1を備える。自動変速機16は、複数の油圧式摩擦係合装置(第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2)が選択的に係合状態又は解放状態されることによりギヤ比(変速比)が異なる複数のギヤ段(変速段)が形成される遊星歯車式多段変速機である。
車両10では、シフト操作装置82(図1参照)が運転席の近傍に配設されている。シフト操作装置82のシフトレバー84は、複数のシフト操作位置、例えば操作位置「P」、操作位置「R」、操作位置「N」、及び操作位置「D」の4つの操作位置のいずれかが運転者の手動操作により選択されるようになっている。シフトレバー84で選択されるシフト操作位置が切り替えられると、前述のシフト操作信号Psh及び油圧制御指令信号Spを介して油圧制御回路40内の油圧制御弁が制御される等により、自動変速機16のシフトレンジが切り替えられる。
操作位置「P」が選択されると、自動変速機16のシフトレンジが駐車レンジPに切り替えられて、自動変速機16内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)となり且つメカニカルパーキング機構によって機械的に自動変速機16の出力軸30の回転が阻止される。操作位置「R」が選択されると、自動変速機16のシフトレンジが後進走行レンジRに切り替えられ、自動変速機16の出力軸30の回転方向が逆回転となる。操作位置「N」が選択されると、自動変速機16のシフトレンジがニュートラルレンジNに切り替えられ、自動変速機16内の動力伝達が遮断される。操作位置「D」が選択されると、自動変速機16のシフトレンジが前進走行レンジDに切り替えられ、自動変速機16の全ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御が実行される。
図3は、図2に示す自動変速機16の変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する係合作動表である。図3において、「○」は係合状態、「空欄」は解放状態をそれぞれ表している。自動変速機16のシフトレンジが駐車レンジP、後進走行レンジR、及びニュートラルレンジNの場合には、それぞれ図3の係合作動表に示すように油圧式摩擦係合装置の係合状態と解放状態とが制御される。自動変速機16のシフトレンジが前進走行レンジDの場合には、図3の係合作動表に示すように運転者のアクセル操作量Accや車速V等に応じて前進8段の各ギヤ段のうちの一が成立させられるように油圧式摩擦係合装置の係合状態と解放状態とが制御される。図3の「1st」−「8th」は自動変速機16の前進ギヤ段としての第1速変速段−第8速変速段を意味する。なお、車両10の発進時に自動変速機16において係合されるクラッチを「発進クラッチ」ということとする。自動変速機16のシフトレンジが前進走行レンジDの場合、第1速変速段「1st」で係合される第1クラッチC1が「発進クラッチ」に該当する。
図4は、図2に示すトルクコンバータ14の断面図である。トルクコンバータ14は、相互に溶接されたフロントカバー52及びリヤカバー54と、ポンプ翼車14pと、タービン翼車14tと、多板式ロックアップクラッチ44と、を備える。ポンプ翼車14pは、リヤカバー54の内側に固定された複数のポンプ羽根を有し、エンジン12のクランク軸12aと動力伝達可能に連結され、軸線RCまわりに回転するように配設されている。タービン翼車14tは、リヤカバー54に対向し、タービン軸28に動力伝達可能に連結されている。多板式ロックアップクラッチ44は、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間を直結可能としている。
多板式ロックアップクラッチ44は、第1環状部材56と、複数枚(本実施例では3枚)の環状の第1摩擦板58と、第2環状部材62と、複数枚(本実施例では2枚)の環状の第2摩擦板64と、環状の押圧部材68と、環状の固定部材70と、リターンスプリング72と、を備える。第1環状部材56は、ポンプ翼車14pと一体的に連結されたフロントカバー52に溶接によって固定されている。複数の第1摩擦板58は、第1環状部材56の外周に形成された外周スプライン歯56aに軸線RCまわりに相対回転不能且つ軸線RC方向へ移動可能に係合されている。第2環状部材62は、トルクコンバータ14内に設けられたダンパ装置60を介してタービン翼車14t及び自動変速機16に動力伝達可能に連結されている。複数枚の第2摩擦板64は、第2環状部材62の内周に形成された内周スプライン歯62aに軸線RCまわりに相対回転不能且つ軸線RC方向へ移動可能に係合されている。複数の第1摩擦板58と複数の第2摩擦板64とは、軸線RC方向において交互に配置されている。
押圧部材68は、フロントカバー52の内周部52aに固定されタービン軸28のフロントカバー52側の端部を軸線RCまわりに回転可能に支持するハブ部材66に、軸線RC方向へ移動可能に支持され、フロントカバー52に対向している。固定部材70は、ハブ部材66に位置固定で支持され、押圧部材68のフロントカバー52側とは反対側に押圧部材68に対向するように配設されている。リターンスプリング72は、軸線RC方向において押圧部材68を固定部材70側に付勢する、すなわち押圧部材68を軸線RC方向において第1摩擦板58及び第2摩擦板64から離間させる方向に付勢する。
トルクコンバータ14には、フロントカバー52及びリヤカバー54内にトルクコンバータ油室48aが設けられている。トルクコンバータ油室48aは、オイルポンプ26から出力された作動油が作動油供給ポート50aから供給され、作動油供給ポート50aから供給された作動油が作動油流出ポート50bから流出する。トルクコンバータ油室48a内には、前述の多板式ロックアップクラッチ44と、制御油室48bと、フロント側油室48cと、リヤ側油室48dと、が設けられている。
制御油室48bには、ロックアップクラッチ44を係合させるため(すなわち、ロックアップクラッチ44の第1摩擦板58及び第2摩擦板64を押圧する押圧部材68をフロントカバー52側へ付勢するため)のロックアップオン圧Pluon[MPa]が供給される。フロント側油室48cには、ロックアップクラッチ44を解放させるため(すなわち、押圧部材68をフロントカバー52側とは反対側へ付勢するため)のトルクコンバータイン圧Ptcin[MPa]が供給される。リヤ側油室48dには、フロント側油室48cと連通し、フロント側油室48cから供給されて満たされた作動油が作動油流出ポート50bから流出されるように、トルクコンバータアウト圧Ptcout[MPa]が供給される。なお、制御油室48bは、押圧部材68と固定部材70との間に形成された油密な空間である。フロント側油室48cは、押圧部材68とフロントカバー52との間に形成された空間である。リヤ側油室48dは、トルクコンバータ油室48aにおいて制御油室48b及びフロント側油室48cを除く空間である。なお、本実施例では、トルクコンバータ14に供給される作動油、自動変速機16の油圧式摩擦係合装置(第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2)の係合状態と解放状態とを制御する作動油、及び自動変速機16の各部に供給される潤滑油は、いずれもATF(automatic transmission fluid)であり、共通するオイルポンプ26から供給される。
トルクコンバータ14では、例えば制御油室48bに供給される油圧であるロックアップオン圧Pluonとフロント側油室48cの油圧であるトルクコンバータイン圧Ptcinとのロックアップ差圧ΔPlu[MPa](=Pluon−Ptcin)が正の値にされると、押圧部材68が付勢されて図4の一点鎖線に示すようにフロントカバー52側に移動させられる。ロックアップ差圧ΔPluが最大値とされると、ロックアップクラッチ44が完全係合状態(ロックアップオン状態)となり、押圧部材68が第1摩擦板58及び第2摩擦板64を押圧して第1環状部材56に連結されたポンプ翼車14pと第2環状部材62に連結されたタービン翼車14tとが一体回転する。すなわち、トルクコンバータ14では、ロックアップクラッチ44が完全係合状態になると、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとが直結される。
トルクコンバータ14では、例えばロックアップ差圧ΔPluが負の値にされると、押圧部材68が図4の実線に示すように第1摩擦板58から離間した位置に移動させられる。ロックアップ差圧ΔPluが負の値にされると、ロックアップクラッチ44が解放状態(ロックアップオフ状態)となり、第1環状部材56に連結されたポンプ翼車14pと第2環状部材62に連結されたタービン翼車14tとが相対回転する。すなわち、トルクコンバータ14では、ロックアップクラッチ44が解放状態になると、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの直結が解放される。
トルクコンバータ14では、例えばロックアップ差圧ΔPluが零以上に制御されてロックアップクラッチ44が滑りを伴った半係合状態(ロックアップスリップ状態)となり得る。
ロックアップ差圧ΔPluが電子制御装置100により制御されることで、ロックアップクラッチ44が解放状態、半係合状態、完全係合状態のうちいずれかの作動状態に切り替えられる。
ところで、ロックアップクラッチ44が完全係合状態から解放状態へ切り替えられる場合、ロックアップ差圧ΔPluが負の値にされることやリターンスプリング72による付勢力により、押圧部材68が軸線RC方向において第1摩擦板58及び第2摩擦板64から離間する方向に移動する。しかし、押圧部材68が軸線RC方向において第1摩擦板58及び第2摩擦板64から離間しただけでは、第1摩擦板58及び第2摩擦板64の摩擦板同士が直ちに離間するわけではない。第1摩擦板58にフロントカバー52を介して連結されたエンジン12と第2摩擦板64に連結された自動変速機16の入力回転部材であるタービン軸28との間の回転速度差(相対回転速度差)によって第1摩擦板58及び第2摩擦板64の摩擦板同士が離間する。この離間の際には、第1摩擦板58及び第2摩擦板64の一方が他方に引き摺られるため、引き摺りトルクが発生する。例えば、シフトレンジが前進走行レンジDであり、車両10が停車状態にあり、且つ車両10が前述のブレーキオン状態にあって第1速変速段「1st」が成立させられている場合、第1摩擦板58及び第2摩擦板64の摩擦板同士が離間する際には、上記引き摺りトルクはエンジン12に対する負荷となる。
図5は、シフトレンジが前進走行レンジDであり、車両10が停車状態にあり、且つ車両10がブレーキオン状態にある場合におけるエンジン12に対する負荷トルクの内訳を説明する図である。図5(a)は、第1クラッチC1が完全係合状態にある場合が示され、図5(b)は、第1クラッチC1が半係合状態にある場合が示されている。エンジン12から出力されたエンジントルクTE[Nm]からエアコン等の補機用などの非駆動系負荷トルクを差し引いたものがエンジン余剰トルクTE_mgnである。駆動系負荷トルクがこのエンジン余剰トルクTE_mgnを超過した場合にはエンストが発生する。駆動系負荷トルクがこのエンジン余剰トルクTE_mgn以下の場合にはエンストが発生しない。
第1クラッチC1が完全係合状態にある図5(a)では、駆動系負荷トルクには、オイルポンプ26(O/P26)を駆動するために必要な負荷トルク、タービン回転速度Nt[rpm]が零の場合におけるトルクコンバータ14の伝達トルク容量の増加に伴う負荷トルク、及びロックアップクラッチ44の引き摺りトルクがある。後述するように作動油温Toil、酸素濃度Oden、及びエンジンオフ状態の期間TMoff[min]が所定の条件になると、駆動系負荷トルクがエンジン余剰トルクTE_mgnを超過してしまいエンストが発生する。一方、第1クラッチC1が半係合状態にある図5(b)では、自動変速機16を介して駆動輪36に連結されたタービン回転速度Ntが零よりも大きいため、トルクコンバータ14の伝達トルク容量が図5(a)の場合よりも減るとともにそれに応じてロックアップクラッチ44の引き摺りトルクも減少する。つまり、第1クラッチC1が半係合状態にある図5(b)では、図5(a)の場合に比較して、駆動系負荷トルクが減少させられる。そのため、作動油温Toil、酸素濃度Oden、及びエンジンオフ状態の期間TMoffが図5(a)と同様の条件であっても、図5(b)の場合の方が図5(a)の場合よりも駆動系負荷トルクが減少し、駆動系負荷トルクがエンジン余剰トルクTE_mgn以下となってエンストが発生しなくなる。
図1に戻り、電子制御装置100における制御機能の要部を説明する。なお、電子制御装置100は、本発明における「制御装置」に相当する。
電子制御装置100は、シフトレンジ判定部100a、停車判定部100b、ブレーキ状態判定部100c、油温判定部100d、酸素濃度判定部100e、エンジンオフ判定部100f、及び油圧制御部100gを機能的に備える。
シフトレンジ判定部100aは、シフトレンジが前進走行レンジDであるか否かを判定する。シフトレンジ判定部100aは、シフトレンジが前進走行レンジDではないと判定すると、シフトレンジが前進走行レンジDであるか否かの判定を繰り返す。シフトレンジが前進走行レンジDではないとシフトレンジ判定部100aにより判定されている間は、前述の図3に示した係合作動表に基づいて自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置(第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2)の断接状態が制御される。
停車判定部100bは、停車状態であるか否か、すなわち車両10が停車状態にあるか否かを判定する。例えば、車速Vが判定車速Vth[km/h](零近傍の零よりも少し大きい値)よりも小さいことにより車両10が停車状態にあると判定される。本発明の目的は、車両10の発進前のエンストの発生の抑制と発進応答性の向上を図るものであるため、発進前の状態すなわち停車状態であるか否かを停車判定部100bにより判定するものである。
ブレーキ状態判定部100cは、ブレーキオン状態であるか否か、すなわち車両10がブレーキオン状態にあるか否かを判定する。例えば、ブレーキペダルのブレーキ操作量Brkが判定操作量Bth以上であってブレーキペダルが踏み込み操作されている状態にある場合には、車両10がブレーキオン状態にあると判定される。車両10がブレーキオン状態にあると駆動輪36が停止しており、駆動輪36に連結された自動変速機16の出力軸30には制動力が働く。そのため、自動変速機16の第1クラッチC1が完全係合状態とされると、出力軸30に制動力が働いている場合の方が出力軸30に制動力が働いていない場合に比較して、出力軸30の制動力がエンジン12に伝達されてエンジン12の負荷トルクが大きくなってエンストが発生しやすくなる。
油温判定部100dは、トルクコンバータ14の作動油温Toilが判定温度Tth[℃]よりも低いか否かを判定する。作動油温Toilが低いほど作動油(潤滑油)の粘性が高い。作動油の粘性が高いと、ロックアップクラッチ44の第1摩擦板58及び第2摩擦板64の摩擦板同士を引き剥がすのに必要な引き摺りトルクが大きくなってエンストが発生しやすくなる。
酸素濃度判定部100eは、エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが判定濃度Oth[vol%]未満の状態にあるか否かを判定する。エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが低いほど、エンジン12が出力するエンジントルクTEが小さくなりやすくエンジン余剰トルクTE_mgnが小さくなるため、エンストが発生しやすくなる。
エンジンオフ判定部100fは、エンジン12の始動前におけるエンジンオフ状態の期間TMoffが判定期間TMth[min]を超過しているか否かを判定する。エンジンオフ状態とは、エンジン12が動作していない状態、すなわちエンジン回転速度Neが零の状態である。例えば、エンジン12のエンジン作動信号IGがオン状態とされた時刻(エンジン12の始動時刻)から遡ってそのエンジン始動時刻前にエンジン作動信号IGがオフ状態とされた時刻(エンジン12の停止時刻)までの期間が、エンジンオフ状態の期間TMoffとして算出される。例えば、エンジン12の停止のときにその停止時刻が記憶され、エンジン12の始動のときにエンジン12の始動時刻からエンジン12の停止時刻を減算することでエンジンオフ状態の期間TMoffが算出される。エンジンオフ状態の期間TMoffが長いほど、ロックアップクラッチ44の第1摩擦板58及び第2摩擦板64の摩擦板同士の間に存在していた潤滑油(作動油)が重力により下方へ流れ落ちてしまう。そのため、ロックアップクラッチ44の第1摩擦板58及び第2摩擦板64の摩擦板同士を引き剥がすのに必要な引き摺りトルクが大きくなってエンストが発生しやすくなる。
シフトレンジが前進走行レンジDであるとシフトレンジ判定部100aにより判定され、車両10が停車状態にあると停車判定部100bにより判定され、車両10がブレーキオン状態にあるとブレーキ状態判定部100cにより判定され、トルクコンバータ14の作動油温Toilが判定温度Tth未満であると油温判定部100dにより判定され、エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが判定濃度Oth未満の状態にあると酸素濃度判定部100eにより判定され、且つエンジン12の始動前におけるエンジンオフ状態の期間TMoffが判定期間TMthを超過しているとエンジンオフ判定部100fにより判定された場合、油圧制御部100gは、第1クラッチC1のスリップ制御(以下、「発進クラッチのスリップ制御」と記す。)を実行する。発進クラッチのスリップ制御の内容は、図6のタイムチャートで詳述する。油圧制御部100gは、発進クラッチのスリップ制御を実行しない場合には、第1クラッチC1を完全係合状態とする制御を実行する。
なお、上述の判定操作量Bth、判定温度Tth、判定濃度Oth、判定期間TMthは、車両10においてエンストが発生するおそれがある範囲を判定する閾値として予め実験的に或いは設計的に求められる。
図6は、図1に示す電子制御装置100により発進クラッチのスリップ制御が実行されたときのタイムチャートの一例である。図6の横軸は、時間T[s]である。
時刻t0以前の車両10の状態は、シフトレンジがニュートラルレンジNであり、ブレーキオン状態であり、アクセルオフ状態であって、車両10が停車状態である。アクセルオフ状態とは、運転者から加速要求がされていない状態(例えばアクセル操作量Accが閾値Ath未満であって不図示のアクセルペダルが踏み込み操作されていない状態)をいう。第1クラッチC1の断接状態を制御する作動油に対する指令圧Pcmd[MPa]は零とされており自動変速機16の第1クラッチC1は解放状態とされている。エンジン12におけるエンジン回転速度Ne[rpm]は所定のアイドリング回転速度Nidl[rpm](アイドリング状態においてエンジン12が安定して回転できる最低限に抑制された回転速度)で運転され、一対の駆動輪36に連結された出力軸30における出力軸回転速度Nout[rpm]は零である。自動変速機16の第1クラッチC1が解放状態とされているため、トルクコンバータ14のタービン軸28はエンジン12により回転させられる。そのため、タービン翼車14tに連結されたタービン軸28の回転速度を表すタービン回転速度Ntは、エンジン回転速度Ne(すなわちアイドリング回転速度Nidl)と略同じである。
時刻t0においてシフトレンジがニュートラルレンジNから前進走行レンジDに切り替えられると、時刻t1において発進クラッチのスリップ制御が開始される。時刻t0から時刻t1までの間の期間は、発進クラッチのスリップ制御の実行開始までのタイムラグである。時刻t1において、指令圧Pcmdが一旦第1の油圧値Po1まで増圧されて第1クラッチC1のパック詰めが開始される。
時刻t2において、指令圧Pcmdは第1の油圧値Po1よりも低い第2の油圧値Po2に減圧される。指令圧Pcmdが第1の油圧値Po1及び第2の油圧値Po2とされることで第1クラッチC1は解放状態から半係合状態に遷移し、タービン軸28が半係合状態の第1クラッチC1により自動変速機16を介して停車状態の一対の駆動輪36に連結される。この連結によりタービン回転速度Ntはエンジン回転速度Ne(すなわち所定のアイドリング回転速度Nidl)から次第に低下していく。すなわち、エンジン回転速度Neとタービン回転速度Ntとの回転速度差ΔN[rpm](=Ne−Nt)が次第に大きくなっていく。
時刻t3において、回転速度差ΔNが判定回転速度差ΔNth[rpm]以上になる。この時刻t3において、指令圧Pcmdは一旦第2の油圧値Po2よりも低い第3の油圧値Po3、例えば零とされる。これにより、第1クラッチC1の作動油の実圧Pact[MPa]が素早く低下させられ、タービン回転速度Ntが低下しすぎることが防止される。
時刻t4において、指令圧Pcmdは第3の油圧値Po3よりも高い第4の油圧値Po4に増圧される。第4の油圧値Po4は、タービン回転速度Ntが要求タービン回転速度Nt_req[rpm]になるように制御する油圧値である。要求タービン回転速度Nt_reqは、タービン軸28が停止しないように、すなわちエンジン12が停止しないように予め設計的に或いは実験的に設定された回転速度である。具体的には、前進走行レンジDでブレーキペダルが踏み込まれて車両10が停車しており且つエンジン12がアイドリング状態にある場合において、要求タービン回転速度Nt_reqは、例えばアイドリング状態でのエンジン回転速度Neよりも少し低い回転速度に設定される。第1クラッチC1が半係合状態とされることでタービン回転速度Ntが要求タービン回転速度Nt_reqになるように第4の油圧値Po4がフィードバック制御される。言い換えれば、第4の油圧値Po4がフィードバック制御されることで第1クラッチC1が半係合状態とされ、これによりタービン回転速度Ntが要求タービン回転速度Nt_reqになる。
時刻t5において、車両10の状態がブレーキオン状態からブレーキオフ状態(すなわち、ブレーキオン状態が解除された状態)へ切り替えられる。時刻t5において、指令圧Pcmdは第4の油圧値Po4よりも高い第5の油圧値Po5に増圧される。第5の油圧値Po5は、第1クラッチC1を完全係合状態とする油圧値である。これにより、第1クラッチC1が半係合状態から完全係合状態へ遷移し、エンジン12と一対の駆動輪36とがトルクコンバータ14及び自動変速機16を介して連結された、所謂ガレージ制御の状態となる。タービン軸28が完全係合状態の第1クラッチC1により自動変速機16を介して一対の駆動輪36に連結されるため、タービン回転速度Ntは一旦下降する。その後、このガレージ制御の状態で車両10はクリープによってゆっくり発進を開始するため、タービン回転速度Ntは上昇に転じる。
時刻t6において、車両10の状態がアクセルオフ状態からアクセルオン状態へ切り替えられる。アクセルオン状態とは、運転者から加速要求がされている状態(例えばアクセル操作量Accが閾値Ath以上であってアクセルペダルが踏み込み操作されている状態)をいう。これにより、エンジン回転速度Neはアクセル操作量Accに応じて上昇する。エンジン回転速度Neの上昇に応じて、出力軸回転速度Nout及びタービン回転速度Ntも上昇する。その後、出力軸回転速度Noutが上昇すると、すなわち車速Vが高くなると、アクセル操作量Acc及び車速Vに基づいて自動変速機16の変速比(=タービン回転速度Nt/出力軸回転速度Nout)が小さくされ、それに応じてエンジン回転速度Neは下降させられる。
上述した時刻t1から時刻t5までのブレーキオフ状態の期間に行われる、タービン回転速度Ntが要求タービン回転速度Nt_reqとなるように第1クラッチC1を半係合状態とする制御が、発進クラッチのスリップ制御である。なお、車両10の発進時に自動変速機16において係合されるブレーキである第2ブレーキB2は、図示していないが発進クラッチのスリップ制御の実行中、完全係合状態となるように制御される。この発進クラッチのスリップ制御が行われている時刻t1から時刻t5までの期間においては、発進クラッチのスリップ制御が行われていない時刻t5以降の期間に比較して、自動変速機16に供給される潤滑油の供給油圧Plo[MPa]が高くされる。これにより、発進クラッチのスリップ制御中は、自動変速機16へ供給される潤滑油の流量が増加させられ、第1クラッチC1の負荷が低減されることでエンジン12に対する自動変速機16の負荷が軽減されてエンストの発生が抑制される。
なお、本実施例では、発進クラッチのスリップ制御によって半係合状態とされる第1クラッチC1の負荷を考慮して、発進クラッチのスリップ制御における半係合状態とされる期間(例えば、半係合状態とされる時刻t3から時刻t5までの期間)に上限が設けられている。具体的には、スリップ制御の期間が設定された上限期間を超えると、発進クラッチのスリップ制御が解除されて第1クラッチC1が解放状態とされる。これにより、第1クラッチC1に過大な負荷がかかることを回避しつつ、発進応答性の向上とエンストの発生の抑制とが図られる。
図7は、図1に示す電子制御装置100の制御作動を説明するフローチャートの一例である。図7のフローチャートは、例えばエンジン12が始動された時にスタートされる。
シフトレンジ判定部100aに対応するステップS10において、シフトレンジが前進走行レンジDであるか否かが判定される。ステップS10の判定が肯定される場合は、ステップS20が実行される。ステップS10の判定が否定される場合は、ステップS10が再度実行される。
停車判定部100bに対応するステップS20において、車両10が停車状態にあるか否かが判定される。ステップS20の判定が肯定される場合は、ステップS30が実行される。ステップS20の判定が否定される場合は、ステップS80が実行される。
ブレーキ状態判定部100cに対応するステップS30において、車両10がブレーキオン状態にあるか否かが判定される。ステップS30の判定が肯定される場合は、ステップS40が実行される。ステップS30の判定が否定される場合は、ステップS80が実行される。
油温判定部100dに対応するステップS40において、トルクコンバータ14の作動油温Toilが判定温度Tthよりも低いか否かが判定される。ステップS40の判定が肯定される場合は、ステップS50が実行される。ステップS40の判定が否定される場合は、ステップS80が実行される。
酸素濃度判定部100eに対応するステップS50において、エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが判定濃度Oth未満の状態にあるか否かが判定される。ステップS50の判定が肯定される場合は、ステップS60が実行される。ステップS50の判定が否定される場合は、ステップS80が実行される。
エンジンオフ判定部100fに対応するステップS60において、エンジン12の始動前におけるエンジンオフ状態の期間TMoffが判定期間TMthを超過しているか否かが判定される。ステップS60の判定が肯定される場合は、ステップS70が実行される。ステップS60の判定が否定される場合は、ステップS80が実行される。
油圧制御部100gに対応するステップS70において、第1クラッチC1に対して発進クラッチのスリップ制御が実行される。そして終了となる。
油圧制御部100gに対応するステップS80において、第1クラッチC1に対して発進クラッチのスリップ制御が実行されない。発進クラッチのスリップ制御の替わりに、第1クラッチC1を完全係合状態とする制御が実行される。
本実施例によれば、シフトレンジが前進走行レンジDであり、停車状態であり、ブレーキオン状態であり、トルクコンバータ14の作動油温Toilが判定温度Tth未満であり、エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが判定濃度Oth未満の状態であり、且つエンジン12の始動前におけるエンジンオフ状態の期間TMoffが判定期間TMthを超過している場合、発進クラッチである第1クラッチC1の指令圧Pcmdが、パック詰めのための第1の油圧値Po1とされた後に第1の油圧値Po1よりも低い第2の油圧値Po2とされ、第2の油圧値Po2とされた後にエンジン回転速度Neとタービン回転速度Ntとの回転速度差ΔNが判定回転速度差ΔNth以上になると第2の油圧値Po2よりも低い第3の油圧値Po3とされ、第3の油圧値Po3とされた後にタービン回転速度Ntが所定の要求タービン回転速度Nt_reqとなるように第3の油圧値Po3よりも高い第4の油圧値Po4とされ、第4の油圧値Po4とされた後にブレーキオン状態が解除されると第4の油圧値Po4よりも高い第5の油圧値Po5とされ、第4の油圧値Po4は第1クラッチC1を半係合状態とするものであり、第5の油圧値Po5は第1クラッチC1を完全係合状態とするものである。
作動油温Toilが低いと作動油の粘性が高く、エンジンオフ状態の期間TMoffが長いとロックアップクラッチ44の摩擦板間にある作動油が流れ落ちてしまうため、ロックアップクラッチ44の摩擦板同士を引き剥がすのに必要な引き摺りトルクが大きくなる。エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが低い状態にあるとエンジン12から出力されるエンジントルクTEが小さくなって駆動系負荷トルクに配分可能なエンジン余剰トルクTE_mgnが小さくなる。そのため、シフトレンジが前進走行レンジDであり、車両10が停車状態にあり、且つ車両10がブレーキオン状態にある場合において発進クラッチである第1クラッチC1を完全係合状態とすると、トルクコンバータ14の伝達トルク容量の増大やそれに伴うロックアップクラッチ44の摩擦板同士を引き剥がすのに必要な引き摺りトルクの増大の影響を受けてエンストが発生するおそれがある。そのため、エンストが発生するおそれがある場合において、ブレーキオン状態が解除される前にタービン回転速度Ntが所定の要求タービン回転速度Nt_reqとなるように第1クラッチC1を半係合状態とするべく第1クラッチC1の作動油の指令圧Pcmdが制御される。これにより、エンストが発生するおそれがある場合に、エンストの発生を抑制しつつブレーキオン状態が解除された場合の発進応答性の向上が図られる。
本実施例によれば、発進クラッチのスリップ制御が行われている時刻t1から時刻t5までの期間においては、発進クラッチのスリップ制御が行われていない時刻t5以降の期間に比較して、自動変速機16に供給される潤滑油の供給油圧Ploが高くされる。これにより、発進クラッチのスリップ制御中は、自動変速機16へ供給される潤滑油の流量が増加させられ、第1クラッチC1の負荷が低減されることでエンジン12に対する自動変速機16の負荷が軽減されてエンストの発生が抑制される。
本実施例によれば、発進クラッチのスリップ制御によって半係合状態とされる第1クラッチC1の負荷を考慮して、発進クラッチのスリップ制御における半係合状態とされる期間に上限が設けられている。これにより、第1クラッチC1に過大な負荷がかかることを回避しつつ、発進応答性の向上とエンストの発生の抑制とが図られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例では、シフトレンジが前進走行レンジDであって発進クラッチが第1クラッチC1の場合であったが、これに限らない。例えば、シフトレンジが後進走行レンジRであって前述の図3に示すように発進クラッチが第3クラッチC3の場合にも本発明は適用可能である。すなわち、シフトレンジが前進走行レンジDや後進走行レンジRのように自動変速機16の前進ギヤ段又は後進ギヤ段が用いられて変速制御が行われる走行レンジであれば、そのレンジにおける発進クラッチに対して本発明が適用可能である。
前述の実施例では、発進クラッチのスリップ制御の実行はトルクコンバータ14の作動油温Toilが判定温度Tth未満の場合であったが、これに限らない。例えば、トルクコンバータ14の作動油温Toilが低いとトルクコンバータ14及び自動変速機16を収容するケース24の温度も低いため、ケース24の温度が判定温度Tthに応じた所定の判定温度未満である場合に発進クラッチのスリップ制御が実行されても良い。つまり、作動油温Toilの判定が直接的であるか間接的であるかにかかわらず、トルクコンバータ14の作動油温Toilが判定温度Tth未満の状態にある場合に、発進クラッチのスリップ制御が実行されれば良い。
前述の実施例では、発進クラッチのスリップ制御の実行はエンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが判定濃度Oth未満の場合であったが、これに限らない。例えば、車両10の位置する標高H[m]が高くなると外気の酸素濃度Odenが低くなるため、標高Hが所定の判定高度Hth[m]を超過している場合に発進クラッチのスリップ制御が実行されても良い。つまり、外気の酸素濃度Odenの判定が直接的であるか間接的であるかにかかわらず、エンジン12が取り込む外気の酸素濃度Odenが判定濃度Oth未満の状態にある場合に、発進クラッチのスリップ制御が実行されれば良い。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
12:エンジン
14:トルクコンバータ
16:自動変速機
44:多板式ロックアップクラッチ
78:車輪ブレーキ
80:車両用動力伝達装置
100:電子制御装置(制御装置)
C1:第1クラッチ(発進クラッチ)
D:前進走行レンジ(走行レンジ)
Ne:エンジン回転速度
Nt:タービン回転速度
Nt_req:要求タービン回転速度
Oden:酸素濃度
Oth:判定濃度
Pcmd:指令圧
Po1:第1の油圧値
Po2:第2の油圧値
Po3:第3の油圧値
Po4:第4の油圧値
Po5:第5の油圧値
TMoff:エンジンオフ状態の期間
TMth:判定期間
Toil:作動油温
Tth:判定温度
V:車速
Vth:判定車速
ΔN:回転速度差
ΔNth:判定回転速度差

Claims (1)

  1. 多板式ロックアップクラッチを有するトルクコンバータ及び発進時に発進クラッチが係合される自動変速機を備えてエンジンの動力を伝達する車両用動力伝達装置の、制御装置において、
    シフトレンジが走行レンジであり、停車状態であり、ブレーキオン状態であり、前記トルクコンバータの作動油温が判定温度未満の状態であり、前記エンジンが取り込む外気の酸素濃度が判定濃度未満の状態であり、且つ前記エンジンの始動前におけるエンジンオフ状態の期間が判定期間を超過している場合、
    前記発進クラッチの指令圧を、パック詰めのための第1の油圧値とした後に前記第1の油圧値よりも低い第2の油圧値とし、前記第2の油圧値とした後にエンジン回転速度とタービン回転速度との回転速度差が判定回転速度以上になると前記第2の油圧値よりも低い第3の油圧値とし、前記第3の油圧値とした後に前記タービン回転速度が所定の要求タービン回転速度となるように前記第3の油圧値よりも高い第4の油圧値とし、前記第4の油圧値とした後に前記ブレーキオン状態が解除されると前記第4の油圧値よりも高い第5の油圧値とし、前記第4の油圧値は前記発進クラッチを半係合状態とするものであり、前記第5の油圧値は前記発進クラッチを完全係合状態とするものである
    ことを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。
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