以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.画像形成装置の構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による画像形成装置1は、電子写真式のプリンタであり、媒体としての用紙100にカラーの画像を形成する(すなわち印刷する)ことができる。因みに画像形成装置1は、原稿を読み取るイメージスキャナ機能や電話回線を使用した通信機能等を有しておらず、プリンタ機能のみを有する単機能のSFP(Single Function Printer)となっている。
画像形成装置1は、略箱型に形成された筐体2の内部に種々の部品が配置されている。因みに以下では、図1における右端部分を画像形成装置1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。
画像形成装置1は、制御部3により全体を統括制御するようになっている。この制御部3は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有しており、所定のプログラムを読み出して実行することにより、様々な処理を実行する。また制御部3は、コンピュータ装置等の上位装置(図示せず)と無線又は有線により接続されており、この上位装置から印刷対象の画像を表す画像データが与えられると共に当該画像データの印刷が指示されると、用紙100の表面に印刷画像を形成する印刷処理を実行する。
筐体2の内部における上側には、前側から後側へ向かって、5個の画像形成ユニット10K、10C、10M、10Y、及び10CLが順に配置されている。画像形成ユニット10K、10C、10M、10Y、及び10CLは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びクリア(CL)の各色にそれぞれ対応しているものの、色のみが相違しており、何れも同様に構成されている。このうちクリア(CL)は、無色透明であり、他の色の上側に重ねて光沢感を持たせる場合等に使用される。説明の都合上、以下では画像形成ユニット10K、10C、10M、10Y、及び10CLをまとめて画像形成ユニット10とも呼ぶ。また以下では、画像形成ユニット10K、10C、10M及び10Yをカラー画像形成ユニットとも呼び、画像形成ユニット10CLをプレコート画像形成ユニットとも呼ぶ。
図2に示すように、画像形成ユニット10は、画像形成本体部11、トナーカートリッジ12及びプリントヘッド13により構成されている。因みに画像形成ユニット10及びこれを構成する各部品は、用紙100における左右方向の長さに応じて、左右方向に十分な長さを有している。このため多くの部品は、前後方向や上下方向の長さに対して左右方向の長さが比較的長くなっており、左右方向に沿って細長い形状に形成されている。
トナーカートリッジ12は、現像剤としてのトナーを収容しており、画像形成本体部11の上側に配置され、当該画像形成本体部11の上方に取り付けられている。このトナーカートリッジ12は、収容しているトナーを画像形成本体部11へ供給する。画像形成本体部11には、供給ローラ14、現像ローラ15、現像ブレード16、感光体ドラム17及び帯電ローラ18が組み込まれている。
供給ローラ14は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、その周側面に導電性ウレタンゴム発泡体等でなる弾性層が形成されている。現像ローラ15は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、その周側面に弾性を有する弾性層や導電性を有する表面層等が形成されている。現像ブレード16は、例えば所定厚さのステンレス鋼板でなり、僅かに弾性変形させた状態で、その一部を現像ローラ15の周側面に当接させている。感光体ドラム17は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、その周側面に薄膜状の電荷発生層及び電荷輸送層が順次形成され、帯電し得るようになっている。帯電ローラ18は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成され、その周側面に導電性の弾性体が被覆されており、この周側面を感光体ドラム17の周側面に当接させている。
この画像形成本体部11は、図示しないモータから駆動力が供給されることにより、供給ローラ14、現像ローラ15及び帯電ローラ18を矢印R1方向(図中の時計回り)へ回転させると共に、感光体ドラム17を矢印R2方向(図中の反時計回り)へ回転させる。さらに画像形成本体部11は、供給ローラ14、現像ローラ15、現像ブレード16及び帯電ローラ18にそれぞれ所定のバイアス電圧を印加することにより、それぞれ帯電させる。
供給ローラ14は、帯電により、画像形成本体部11内のトナーを周側面に付着させ、回転によりこのトナーを現像ローラ15の周側面に付着させる。現像ローラ15は、現像ブレード16によって周側面から余分なトナーが除去された後、この周側面を感光体ドラム17の周側面に当接させる。
一方、帯電ローラ18は、帯電した状態で感光体ドラム17と当接することにより、当該感光体ドラム17の周側面を一様に帯電させる。プリントヘッド13は、複数の発光素子チップが左右方向に沿って直線状に配置されており、制御部3(図1)から供給される画像データ信号に基づいた発光パターンで、所定の時間間隔毎に発光することにより、感光体ドラム17を露光する。これにより感光体ドラム17は、その上端近傍において周側面に静電潜像が形成される。
続いて感光体ドラム17は、矢印R2方向へ回転することにより、この静電潜像が形成された箇所を現像ローラ15と当接させる。これにより感光体ドラム17の周側面には、静電潜像に基づいてトナーが付着し、画像データに基づいたトナー画像が現像される。感光体ドラム17は、さらに矢印R2方向へ回転することにより、トナー画像を該感光体ドラム17の下端近傍に到達させる。
筐体2(図1)内における各画像形成ユニット10の下側には、中間転写部20が配置されている。中間転写部20には、駆動ローラ21、従動ローラ22、2次転写バックアップローラ23及び中間転写ベルト24、並びに5個の1次転写ローラ25が設けられている。このうち駆動ローラ21、従動ローラ22、2次転写バックアップローラ23及び1次転写ローラ25は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されている。
駆動ローラ21は、画像形成ユニット10Kの前下側に配置されており、筐体2により回転可能に支持されている。この駆動ローラ21は、図示しないモータから駆動力が供給されると、矢印R1方向に回転する。従動ローラ22は、画像形成ユニット10CLの後下側に配置されており、筐体2により回転可能に支持されている。駆動ローラ21及び従動ローラ22は、それぞれの上端が、各画像形成ユニット10における感光体ドラム17の下端と同等若しくは僅かに下側に位置している。2次転写バックアップローラ23は、駆動ローラ21の後下側且つ従動ローラ22の前下側に配置されており、回転可能に支持されている。
中間転写ベルト24は、高抵抗のプラスチックフィルムにより、無端ベルトとして構成されており、駆動ローラ21、従動ローラ22及び2次転写バックアップローラ23の周囲を周回するように張架されている。さらに中間転写部20には、中間転写ベルト24のうち駆動ローラ21及び従動ローラ22の間に張架された部分の下側、すなわち5個の画像形成ユニット10それぞれの真下となる位置であり、中間転写ベルト24を挟んで各感光体ドラム17とそれぞれ対向する位置に、5個の1次転写ローラ25がそれぞれ配置されている。この1次転写ローラ25は、筐体2により回転可能に支持されると共に、所定のバイアス電圧が印加されるようになっている。
中間転写部20は、図示しないモータから供給される駆動力により駆動ローラ21を矢印R1方向へ回転させ、これにより中間転写ベルト24を矢印D1に沿った方向に走行させる。また各1次転写ローラ25は、所定のバイアス電圧が印加された状態で、矢印R1方向に回転する。これにより各画像形成ユニット10は、感光体ドラム17(図2)の周側面における下端近傍に到達させていたトナー画像を、中間転写ベルト24にそれぞれ転写し、且つ各色のトナー画像を順次重ねることができる。このとき中間転写ベルト24の表面には、上流側のクリア(CL)から順次、各色のトナー画像が重ねられることになる。中間転写部20は、この中間転写ベルト24を走行させることにより、画像形成ユニットから転写されたトナー画像を、2次転写バックアップローラ23の近傍に到達させる。
一方、筐体2内の最下部には、用紙100を収容する用紙カセット5が設けられている。用紙カセット5の前上方には、給紙部30が配置されている。給紙部30は、用紙カセット5の前上側に配置されたホッピングローラ31、用紙100を搬送路Wに沿って上方へ案内する搬送ガイド33、搬送路Wを挟んで互いに対向するレジストローラ35等により構成されている。
給紙部30は、制御部3の制御に基づいて各ローラを適宜回転させることにより、用紙カセット5に集積された状態で収容されている用紙100を1枚ずつ分離しながらピックアップし、搬送ガイド33により搬送路Wに沿って前上方へ進行させ、やがて後上方へ折り返してレジストローラ35に当接させる。レジストローラ35は、回転が適宜抑制されており、用紙100に摩擦力を作用させることにより、進行方向に対して該用紙100の側辺が傾斜する、いわゆる斜行を修正し、先頭及び末尾の端辺を左右に沿わせた状態としてから、後方へ送り出す。因みに画像形成装置1は、搬送路Wに沿って用紙100を搬送する際、印刷速度を40[ppm]とする場合に該用紙100の搬送速度を191.1[mm/s]としている。
レジストローラ35の後側には、中搬送部40が配置されている。中搬送部40は、搬送ガイド41によりほぼ前後方向に沿った搬送路Wを形成しており、その途中に搬送ローラ42及び2次転写部43が配置されている。搬送ローラ42は、制御部3の制御に基づいて回転することにより、所定のタイミングで用紙100を後方へ送り出す。
2次転写部43は、搬送路Wの上側に上述した中間転写部20の2次転写バックアップローラ23を配置し、該搬送路Wの下側に2次転写ローラ44を配置している。2次転写ローラ44は、2次転写バックアップローラ23と同様、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に構成されており、図示しない支持部材により回転可能に支持されると共に上方向に付勢されている。すなわち2次転写部43は、2次転写バックアップローラ23及び2次転写ローラ44により、搬送路W上で、中間転写ベルト24を上下から挟持(すなわちニップ)している。さらに2次転写ローラ44は、所定のバイアス電圧が印加されている。このため2次転写部43は、中間転写ベルト24上のトナー画像を用紙100に転写し、この用紙100を後方へ送り出すことができる。
これにより用紙100には、図3に示すように、表面にトナー画像101が転写された状態となる。このトナー画像101は、下側のカラートナー画像101Cと、上側のプレコートトナー画像101Pとが積層された構成となっている。このうちカラートナー画像101Cは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナーにより形成されたトナー画像となっている。プレコートトナー画像101Pは、クリア(CL)のトナーにより形成されたトナー画像となっている。
2次転写部43(図1)の後側には、定着部45が配置されている。定着部45は、搬送路Wを挟んで対向するように配置された加熱ローラ46及び加圧ローラ47により構成されている。加熱部としての加熱ローラ46は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、内部にヒータが設けられている。加圧部としての加圧ローラ47は、加熱ローラ46と同様の円筒状に形成されており、上側の表面を加熱ローラ46における下側の表面に押し付けている。ここで定着部45は、いわゆるニップ圧、すなわち加圧ローラ47から用紙100に加えられる圧力が、1.5[kg/cm2]以上3.5[kg/cm2]以下となるように調整されている。
この定着部45は、制御部3の制御に基づき、加熱ローラ46を所定の温度に加熱すると共に当該加熱ローラ46及び加圧ローラ47をそれぞれ所定方向へ回転させる。これにより定着部45は、2次転写部43から各色のトナー画像が重ねて転写された用紙100を受け取ると、これを加熱ローラ46及び加圧ローラ47により挟持し(すなわちニップし)、さらに熱及び圧力を加えることにより、該トナー画像を該用紙100に定着させて、後方へ送り出す。
定着部45の後側には、制御部3の制御に従って用紙100の搬送路を上側又は下側に切り替える切替ブレード48が配置されている。切替ブレード48の上側には、排出部50が設けられている。排出部50は、用紙100を搬送路Wに沿って上方へ案内する搬送ガイド51、及び搬送路Wを挟んで互いに対向する搬送ローラ52等により構成されている。
また切替ブレード48、定着部45及び中搬送部40の下側には、再搬送部55が配置されている。再搬送部55は、再搬送路Uを構成する搬送ガイド56や搬送ローラ57等を有している。再搬送路Uは、切替ブレード48の下側から下方へ向かい、やがて前方へ進行した後、給紙部30において搬送路Wに合流する。
制御部3は、用紙100を排出する場合、切替ブレード48により用紙100の搬送経路を上側の排出部50側に切り替える。排出部50は、切替ブレード48から受け取った用紙100を上方へ搬送し、排出口53から排紙トレイ2Tへ排出する。また制御部3は、用紙100を給紙部30に戻す場合、切替ブレード48により用紙100の搬送経路を下側の再搬送部55側に切り替える。再搬送部55は、切替ブレード48から受け取った用紙100を再搬送路Uに搬送し、やがて給紙部30に到達させて該用紙100を搬送路Wに沿って再び搬送させる。これにより画像形成装置1では、いわゆる両面印刷を行うことができる。
[1−2.トナーの構成]
次に、カラートナー及びクリアトナー(以下これをプレコートトナーとも呼ぶ)の構成について、それぞれ説明する。
カラートナーは、例えばスチレン−アクリル共重合樹脂とワックスとを混合し、着色剤として顔料を添加し、乳化重合法で凝集させることによってトナー粒子を作成し、トナー粒子に外添剤を加え、ミキサーで混合することによって形成される。この場合、顔料の種類により、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンのトナーが形成される。このように、カラートナーは、顔料が添加されているため、用紙100に定着されてカラートナー画像101C(図3)となった場合に、その顔料の色を呈する。
プレコートトナーとしてのクリアトナーは、例えばポリエステル系樹脂とワックスとを混合し、顔料を添加すること無く、乳化重合法で凝集させることによってトナー粒子を作成し、トナー粒子に外添剤を加え、ミキサーで混合することによって形成される。このようにクリアトナーは、顔料が添加されないため、用紙100に定着されてプレコートトナー画像101P(図3)となった場合に、無色透明となる。なお用紙100では、カラートナー画像101Cにプレコートトナー画像101Pを重ねて形成した場合であっても、画像の品位を低下させることは無い。
このクリアトナーは、負の極性に帯電させられる負帯電性の非磁性一成分トナーである。また、上述した外添剤としては、例えば平均粒径が10[nm]以上且つ20[nm]以下の小粒径の疎水性シリカ微粉末や、平均粒径が100[nm]の負帯電性の大粒径疎水性シリカ微粉末、或いは平均粒径が約150[nm]の正の極性に帯電させられる正帯電性の大粒径のメラミン樹脂微粉末等が使用される。
またクリアトナーは、例えば、高分子化合物のうちいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。具体的には、高分子化合物は、たとえば、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂及びスチレン−ブタジエン系樹脂などである。
ポリエステル系樹脂は、ポリエステル及びその誘導体を含む総称である。すなわち、「ポリエステル系樹脂」のうちの「系」は、ポリエステルだけで無く誘導体も含まれることを意味している。この「系」の定義は、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂及びスチレン−ブタジエン系樹脂などに関しても同様である。
ポリエステル系樹脂の結晶状態は、特に限定されない。このため、ポリエステル系樹脂は、結晶性ポリエステルでも良いし、非晶質ポリエステルでも良いし、双方でも良い。このポリエステル系樹脂は、例えば1種類又は2種類以上のアルコールと1種類又は2種類以上のカルボン酸との反応物(縮重合体)である。
アルコールの種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のアルコール及びその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のアルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、ソルビドール及びグリセリンなどである。
カルボン酸の種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のカルボン酸及びその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンジカルボン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸及びドデセニル無水コハク酸などである。
[1−3.箔転写装置の構成及び箔転写処理]
次に、箔転写装置70について、図4を参照しながら説明する。この箔転写装置70は、箔押機とも呼ばれており、画像形成装置1によりトナー画像101が形成された用紙100(図3)に対し、プレコートトナー画像101Pが形成されている部分に箔を転写及び定着させる箔転写処理を行うようになっている。
箔転写装置70は、直方体状の筐体71の外部における前側(図の右側)に給紙トレイ72が設けられ、後側(図の左側)に排紙トレイ73が設けられている。また箔転写装置70は、筐体71の内部に箔媒体供給ローラ75、ガイドローラ76、しわ防止ローラ77、搬送ローラ78、定着部80、搬送ローラ83、ガイドローラ84及び箔媒体巻取ローラ85が設けられている。このうちガイドローラ76、しわ防止ローラ77、搬送ローラ78、定着部80、搬送ローラ83及びガイドローラ84は、何れも筐体71内の下寄りを前方から後方へ向かう搬送路W2に沿って配置されている。
給紙トレイ72は、上面が概ね平坦に形成されており、画像形成装置1によりトナー画像が印刷された用紙100、すなわちこれから箔が転写される用紙100が載置される。排紙トレイ73は、上面が概ね平坦に形成されており、箔が転写された用紙100が載置される。
箔媒体供給ローラ75は、長尺の箔媒体200が予め巻回された箔媒体リールが装着されるようになっており、該箔媒体リールから引き出された箔媒体200を下方へ送り出す。箔媒体200は、図5に模式的な側面図を示すように、基材層201に箔層202が積層された構成となっている。基材層201は、十分な強度を有する材料により、十分に薄いフィルム状に形成されている。
さらに箔層202は、接着層203、アルミ層204、着色層205及び離型層206といった4種類の層が積層されている。接着層203は、接着性を有する材料でなり、箔層202に接着性を持たせている。アルミ層204は、アルミニウムを含有しており、光の反射率を高めている。着色層205は、箔層202を発色させるための着色剤を含有している。離型層206は、剥離性を有する材料を含有しており、基材層201に箔層202を積層させた状態に維持すると共に、比較的大きな力が加えられた場合に、該箔層202を該基材層201から容易に剥離させる。
ガイドローラ76及びしわ防止ローラ77(図4)は、画像形成装置1における搬送ローラ42と同様に構成されており、上方の箔媒体供給ローラ75から送られてきた箔媒体200を後方へ送り出す。搬送ローラ78は、前側の給紙トレイ72から用紙100が搬送されてきた場合、図6(A)に示すように用紙100を箔媒体200の下側に重ねた状態として、搬送路W2に沿って後方へ送り出す。このとき箔媒体200は、箔層202を下側に位置させ、用紙100上のプレコートトナー画像101Pと対向させた姿勢となっている。因みに箔転写装置70では、箔転写処理を行う速度を10[ppm]とする場合に用紙100の搬送速度を47.8[mm/s]としている。
定着部80(図4)は、上側の加熱ローラ81及び下側の加圧ローラ82により構成されている。加熱ローラ81及び加圧ローラ82は、画像形成装置1(図1)の定着部45における加熱ローラ46及び加圧ローラ47とそれぞれ同様に構成されており、用紙100及び箔媒体200に熱及び圧力を加える。これにより用紙100では、プレコートトナー画像101Pが溶融して箔層202の接着層203(図5)と接着する。
搬送ローラ83は、搬送ローラ78と同様に構成されており、用紙100及び箔媒体200を搬送路W2に沿って後方へ搬送する。ガイドローラ84は、箔媒体200を上方へ折り返すことにより用紙100から該箔媒体200を引き剥がす。
このとき用紙100では、図6(B)に示すように、箔媒体200の箔層202のうちプレコートトナー画像101Pと結着した部分のみが残って転写された状態となり、他の部分が基材層201と共に剥がされる。この用紙100は、さらに後方へ搬送されて排紙トレイ73上に載置される。またガイドローラ84により折り返された箔媒体200は、上方の箔媒体巻取ローラ85により巻き取られる。
ところで、転写前の段階における箔媒体200の表面、すなわち箔層202における接着層203(図5)の表面は、製造上の制約等により、実際には表面が完全な平坦では無く、ある程度の凹凸を有している。また、転写前の段階におけるプレコートトナー画像101Pの表面も、必ずしも完全な平坦では無く、ある程度の凹凸を有している。
このため用紙100では、定着部80よりも上流側において単に該用紙100に箔媒体200が重ねられた状態において、プレコートトナー画像101Pの表面と箔層202の表面とが互いに噛み合わない凹凸形状を対向させ、僅かな面積で当接させているに過ぎず、十分な接着力が得られない。
その後、用紙100は、定着部80により加熱及び加圧されてプレコートトナー画像101Pが溶融される(すなわち軟化する)と、図7(A)に示すように、箔層202の表面に合わせた形状に変形し、十分に大きい面積で当接した後、そのまま冷却されて固まる。これにより用紙100では、プレコートトナー画像101Pに対して箔層202が十分に大きい力で接着する。このため用紙100では、その後にガイドローラ84(図4)において箔媒体200が引き剥がされる際に、プレコートトナー画像101Pに箔層202を接着させた状態を維持できる。
一方、仮に定着部80において加熱が不十分であった場合、プレコートトナー画像101Pが十分に溶融されない(軟化されない)ため、図7(B)に示すように、該プレコートトナー画像101Pが箔層202の表面に合った形状に変形できない。この場合、用紙100では、プレコートトナー画像101Pに対して箔層202が一部の箇所において比較的小さい力で接着する。このため用紙100では、その後にガイドローラ84(図4)において箔媒体200が引き剥がされる際に、プレコートトナー画像101Pに箔層202を結着させた状態を維持できず、プレコートトナー画像101Pから該箔層202が引き剥がされ、転写できない恐れがある。
[1−4.評価試験]
次に、特性が異なる8種類のプレコートトナーPA、PB、PC、PD、PD2、PE、PF及びPGを作成し、それぞれを用いて画像形成装置1により用紙100にトナー画像を印刷した上で、箔転写装置70により箔転写処理を行い、得られた結果を評価する評価試験を行った。
[1−4−1.プレコートトナーの作成及び特性の測定]
プレコートトナーPAは、以下の要領で作成した。まず、無機分散剤を分散させた水性媒体を得る工程として、純水32678重量部に工業用リン酸三ナトリウム十二水和物1111重量部を混合し、液温60[℃]で溶解させた後、pH調整用の希硝酸を添加する。そこへ純水4357重量部に工業用塩化カルシウム無水物536重量部を溶解させた塩化カルシウム水溶液を投入し、ラインミル(プライミクス株式会社製)にて3566[rpm]で液温60[℃]に保ちながら34分間高速撹拌させ、懸濁安定剤(分散剤)を含む水相を調整する。
一方、酢酸エチル7060重量部を液温50[℃]に加熱撹拌し、パラフィンワックス(以下これをワックスWAと呼ぶ)143重量部、蛍光増白剤3.72重量部を順次加える。その後、ポリエステル樹脂RAを1760重量部投入し、固形物が無くなるまで撹拌して油相を調整する。
ここで、液相を55[℃]に保った水相に油相を投入し、1000[rpm]にて5分間撹拌することによって懸濁させ、粒子を形成した。その後、減圧蒸留にて酢酸エチルを除去した。さらに、生成したトナーを含むスラリー溶液に対して洗浄、解砕、乾燥、分級の工程を経て、トナー母粒子を生成した。
次に、外添工程として、生成したトナー母粒子500重量部をヘンシェルミキサー(日本コークス社製)に入れ、トナー母粒子に対して、核としてチタニアが85%、外殻としてシリカが15%からなる複合微粒子1.0重量部、シリカを3.5重量部含む外添剤を外添してプレコートトナーPAを得た。
さらに、このプレコートトナーPAの溶融温度Tm(軟化点とも呼び、またT1/2とも表記する)を計測した。具体的には、フローテスターとして島津製作所のCFT−500Dを用い、ペレット状にした1[g]の試料(すなわちプレコートトナーPA)を加重:10[kg]とし、ダイ穴径:1[mm]とした状態で、開始温度を50[℃]として昇温速度を3[℃/分]としながら加熱した。この計測では、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量をプロットしたグラフ(図示せず)を作成し、トナーの半量が流出した温度を溶融温度Tm(すなわちT1/2)とした。この結果、プレコートトナーPAの溶融温度Tm1は81.4[℃]であった。
また、このプレコートトナーPAのガラス転移温度Tgを計測した。具体的には、示差走査熱量計として日立ハイテクサイエンス社製のDSC6220を用い、0.01〜0.02[g]の試料(すなわちプレコートトナーPA)をアルミパンに計量し、専用治具を用いて密閉した後に測定した。
ここで、示差走査熱量計による吸熱特性の測定条件、すなわち示差走査熱量計の温度プログラミングパターンは、以下の要領とした。まずアルミパンに密封後の試料を20[℃]で10分間に渡って放置してから、10[℃/分]の昇温速度で200[℃]まで加熱し、200[℃]のまま5分間に渡って現像剤を放置した。次に、該試料を90[℃/分]の降温速度で0[℃]まで冷却し、さらに0[℃]のまま5分間に渡って放置した。
そのうえで、計測された吸熱特性を表すグラフ(図示せず)において、昇温時における吸熱の最高ピーク温度以下となるベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点温度を、ガラス転移温度Tgとした。この結果、プレコートトナーPAのガラス転移温度Tgは53[℃]であった。
プレコートトナーPBは、プレコートトナーPAの作成工程におけるポリエステル樹脂RAをポリエステル樹脂RBに変更して作成した。このプレコートトナーPBは、プレコートトナーPAと同様の手法により計測したところ、溶融温度Tm1が88.0[℃]であり、ガラス転移温度Tgが59[℃]であった。
プレコートトナーPCは、プレコートトナーPAの作成工程におけるポリエステル樹脂RAをポリエステル樹脂RCに変更して作成した。このプレコートトナーPCは、プレコートトナーPAと同様の手法により計測したところ、溶融温度Tm1が91.7[℃]であり、ガラス転移温度Tgが60[℃]であった。
プレコートトナーPDは、プレコートトナーPAの作成工程におけるポリエステル樹脂RAをポリエステル樹脂RDに変更して作成した。このプレコートトナーPDは、プレコートトナーPAと同様の手法により計測したところ、溶融温度Tm1が96.5[℃]であり、ガラス転移温度Tgが67[℃]であった。
プレコートトナーPD2は、プレコートトナーPDと同様、プレコートトナーPAの作成工程におけるポリエステル樹脂RAをポリエステル樹脂RDに変更して作成した。このプレコートトナーPD2は、プレコートトナーPAと同様の手法により計測したところ、溶融温度Tm1が97.7[℃]であり、ガラス転移温度Tgが68[℃]であった。因みに、プレコートトナーPD及びPD2の間で溶融温度Tm1及びガラス転移温度Tgが僅かに相違するのは、製造誤差によるものと推測される。
プレコートトナーPEは、プレコートトナーPAの作成工程におけるポリエステル樹脂RAをポリエステル樹脂REに変更して作成した。このプレコートトナーPEは、プレコートトナーPAと同様の手法により計測したところ、溶融温度Tm1が105.6[℃]であり、ガラス転移温度Tgが65[℃]であった。
プレコートトナーPFは、プレコートトナーPAの作成工程におけるポリエステル樹脂RAをポリエステル樹脂RFに変更して作成した。このプレコートトナーPFは、プレコートトナーPAと同様の手法により計測したところ、溶融温度Tm1が112.6[℃]であり、ガラス転移温度Tgが72[℃]であった。
プレコートトナーPGは、プレコートトナーPAの作成工程におけるポリエステル樹脂RAをポリエステル樹脂RDに変更し、且つワックスWAをワックスWBに変更して作成した。このプレコートトナーPGは、プレコートトナーPAと同様の手法により計測したところ、溶融温度Tm1が92.5[℃]であり、ガラス転移温度Tgが60[℃]であった。
[1−4−2.プレコートトナーの評価及び選定]
次に、作成した8種類のプレコートトナーを用いて、画像形成装置1(図1)により用紙100にトナー画像を形成する印刷処理(すなわち画像形成処理)を行った上で、箔転写装置70(図4)によりこの用紙100に対して箔転写処理を行った。この印刷処理では、図8に示すような評価用印刷パターンを用紙100に印刷した。評価用印刷パターンには、各色のカラートナーを露出させた領域と、これらの上にプレコートトナー(すなわちクリアトナー)を重ねた領域とをそれぞれ設けた。
この評価用印刷パターンでは、上側に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各領域と、それぞれにプレコートトナー(すなわちクリアトナー、図の斜線部分でありPCと表記)を重ねた領域とが配置されている。各色のO.D.(Optical Density:光学濃度)値は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の値が1.40であり、ブラック(K)の値が1.50であった。また、各トナーの単位面積当たりの付着量は、0.4〜0.5[mg/cm2]であった。さらにプレコートトナーの単位面積当たりの付着量は、0.4〜0.5[mg/cm2]であった。このほか、評価用印刷パターンでは、下側に、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)並びにこれらの混合(RGB)による各色の領域と、それぞれにプレコートトナーを重ねた領域とが配置されている。
なお、画像形成装置1(図1)の印刷処理では、定着部45における定着温度を150[℃]とした。また、箔転写装置70(図4)の箔転写処理では、定着部80における定着温度を130[℃]とした。
そのうえで、各プレコートトナーに関して、画像形成装置1におけるブレードフィルミングの発生に関する評価と、箔転写装置70での箔転写処理により得られた印刷結果、すなわち箔転写性に関する評価とをそれぞれ行った。
このうちブレードフィルミングとは、画像形成装置1の画像形成ユニット10(図2)において、プレコートトナー(すなわちクリアトナー)が、現像ローラ15及び現像ブレード16の間における摩擦等により加熱されて溶融し、該現像ブレード16に付着(固着)してしまう現象である。このブレードフィルミングは、多くの場合、現像ブレード16の主走査方向(すなわち左右方向)に関する一部分、若しくは複数の離散した部分に形成される。
画像形成ユニット10では、現像ブレード16にブレードフィルミングが発生した場合、該現像ブレード16により現像ローラ15の周側面に付着している余分なトナーを除去する際に、固着したトナーにより、該現像ローラ15の周側面に本来残すべきトナーまで除去してしまう。この場合、画像形成ユニット10では、感光体ドラム17に形成される静電潜像に対して、現像ローラ15の周側面においてトナーが除去されてしまった部分から該トナーを付着させることができない。
このため、感光体ドラム17の周側面に形成されるトナー画像は、周方向に沿ってトナーが付着していない部分が発生する。これにより、用紙100に転写されるトナー画像では、現像ブレード16においてブレードフィルミングが発生した部分に相当する箇所において、該用紙100の搬送方向に沿ってトナーが筋状に欠落した状態となる。以下、トナー画像においてトナーが筋状に欠落した部分を縦筋と呼ぶ。
ブレードフィルミングに関する評価では、画像形成装置1において印刷処理を行い、用紙100に印刷されたトナー画像101(図3)において、プレコートトナー画像101Pにおける縦筋の有無及びその発生頻度に応じて、3段階の評価を行い、記号「◎」、「○」又は「×」により表すものとした。記号「◎」は、評価用印刷パターンを10回印刷した場合に、縦筋が発生しなかったため、高い評価であったことを表す。記号「○」は、評価用印刷パターンを10回印刷した場合に、縦筋が1〜2回発生したため、中程度の評価であったことを表す。記号「×」は、評価用印刷パターンを10回印刷した場合に、縦筋が3回以上発生したため、低い評価であったことを表す。
なお、ブレードフィルミングに関する評価では、プレコートトナー画像101Pに縦筋が発生した場合、画像形成装置1の画像形成ユニット10を分解し、現像ブレード16にトナーが固着していることを目視にて確認した。
箔転写処理に関する評価では、用紙100におけるプレコートトナー画像101Pが形成された部分に対する箔層202(図6)の転写の程度に応じて、3段階の評価を行い、記号「◎」、「○」又は「×」により表すものとした。記号「◎」は、プレコートトナー画像101Pのうち面積比で100[%]の部分、すなわち全部分において、箔層202が転写されており、高い評価であったことを表す。記号「○」は、プレコートトナー画像101Pのうち面積比で95[%]以上100[%]未満の部分において、箔層202が転写されており、中程度の評価であったことを表す。記号「×」は、プレコートトナー画像101Pのうち面積比で95[%]未満の部分において、箔層202が転写されており、低い評価であったことを表す。
ここで、各プレコートトナーについて、作成に用いたポリエステル樹脂の種類及びワックスの種類、ガラス転移温度Tg及び溶融温度Tm、並びにブレードフィルミング及び箔転写性の評価をまとめると、図9に示す表のようになった。なお、プレコートトナーPAに関しては、ブレードフィルミングの評価が低く、用紙100上においてプレコートトナー画像101Pがすでに一部欠落した状態であったため、箔転写性に関する評価は省略した。
この図9から、ブレードフィルミングに関して、高い評価が得られたのはプレコートトナーPC、PD、PD2、PE、PF及びPGであり、中程度の評価が得られたのはプレコートトナーPBであった。ここで溶融温度Tm1に着目すると、ブレードフィルミングに関しては、プレコートトナーの溶融温度Tm1が高い方が良い結果が得られている。具体的には、プレコートトナーの溶融温度Tm1が88.0[℃]以上であれば、ブレードフィルミングが発生しにくくなり、さらに溶融温度Tm1が91.7[℃]以上であれば、ブレードフィルミングが発生しなくなる。
このような結果になったのは、溶融温度Tm1が高いほど、画像形成ユニット10(図2)の現像ブレード16近傍においてプレコートトナーが溶融しにくくなり、固着も発生し難くなるためと推測される。
また図9から、箔転写性に関して、高い評価が得られたのはプレコートトナーPB、PC及びPGであり、中程度の評価が得られたのはプレコートトナーPD、PD2及びPEであった。ここで溶融温度Tm1に着目すると、箔転写性に関しては、プレコートトナーの溶融温度Tm1が低い方が良い結果が得られている。具体的には、プレコートトナーの溶融温度Tm1が105.6[℃]以下であれば、箔転写性が比較的良好となり、さらに溶融温度Tm1が92.5[℃]以下であれば、箔転写性が極めて良好となっている。
このような結果になったのは、箔転写装置70の定着部80における定着温度が130[℃]といったやや低い温度と関係がある。すなわち、溶融温度Tm1が比較的低いプレコートトナーでは、定着部80において十分に軟化でき、凹凸を有する箔層202に対して十分に結着でき(図7(B))、反対に溶融温度Tm1が比較的高いプレコートトナーでは、定着部80において十分に軟化できず、凹凸を有する箔層202に対して十分に結着できない(図7(C))、と推測される。
次に、ブレードフィルミング及び箔転写性それぞれに関する評価結果を基に、プレコートトナーに関する総合的な評価を行い、記号「◎」、「○」又は「×」により表すものとした。記号「◎」は、ブレードフィルミング及び箔転写性の評価結果において、双方とも記号「◎」であった場合であり、総合的に特に高い評価であったことを表す。記号「○」は、ブレードフィルミング及び箔転写性の評価結果において、何れか一方が「◎」であり他方が「○」であった場合であり、総合的に十分に高い評価であったことを表す。記号「×」は、これら以外の場合を表す。
総合評価が「◎」又は「○」となったのは、プレコートトナーPB、PC、PD、PD2、PE及びPGであり、溶融温度Tm1が88.0[℃]以上105.6[℃]以下となる場合であった。そこで本実施の形態では、画像形成装置1において、溶融温度Tm1が88.0[℃]以上105.6[℃]以下であるプレコートトナー(クリアトナー)を選定して用いるようにした。これらのプレコートトナーでは、ガラス転移温度Tgが59[℃]以上68[℃]以下であった。
さらに、総合評価が「◎」となったのは、プレコートトナーPC及びPGであり、溶融温度Tm1が91.7[℃]以上92.5[℃]以下となる場合であった。これらのプレコートトナーでは、ガラス転移温度Tgが59[℃]以上60[℃]以下であった。
ここで、プレコートトナーのガラス転移温度Tgは、画像形成装置1の定着部45(図1)における定着性に影響を及ぼすと考えられる。すなわち、プレコートトナーのガラス転移温度Tgが68[℃]よりも高い場合、画像形成装置1では、定着部45における定着温度において、プレコートトナーが均一に広がらず、良好な印刷結果が得られない恐れがある。
またプレコートトナーのガラス転移温度Tgが59[℃]未満である場合、画像形成装置1では、定着部45における定着温度において、プレコートトナーが過剰に軟化し、2次転写部43において該プレコートトナーが転写されていなかった部分にまで広がってしまう恐れがある。この場合、箔転写装置70により箔転写処理が行われた際に、箔層202を転写すべきで無い箇所に該箔層202が転写される恐れがある。
そこで画像形成装置1では、ガラス転移温度Tgが59[℃]以上68[℃]以下であるプレコートトナーを採用した。これにより画像形成装置1では、定着部45において該プレコートトナーを適度に溶融させて良好に定着させることができる。
[1−5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による画像形成装置1では、溶融温度Tm1が88.0[℃]以上105.6[℃]以下であるプレコートトナーを用い、定着部45における定着温度を150[℃]として、用紙100にトナー画像101を印刷する(図3)。その後、箔転写装置70は、定着部80における定着温度を130[℃]として、この用紙100に対して箔転写処理を行うことにより、トナー画像101のうちプレコートトナー画像101Pが形成された全ての部分に箔層202を転写及び定着させる(図6)。
すなわち箔転写装置70は、従来のように定着部80の温度を150[℃]に設定しプレコートトナーを使用していた場合と比較して、定着温度を130[℃]に低下させた状態で、ブレードフィルミングを発生させること無く、且つ十分に高い箔転写性を確保しながら、箔転写処理を行うことができる。
これにより箔転写装置70では、従来と比較して、消費電力を低減することができる。また箔転写装置70では、従来と比較して、定着部80においてプレコートトナーの溶融に要する時間や、箔転写処理後に常温に冷却するまでに要する時間も短縮できるため、箔転写処理を高速化でき、所要時間を短縮できる。
特にプレコートトナーでは、ブレードフィルミングの発生防止の観点から溶融温度Tm1が高い方が良く、その一方で箔転写性を高めるために該溶融温度Tm1が低い方が良い、という相反する要求が存在する。そこで本実施の形態では、プレコートトナーの構成材料であるポリエステル樹脂の種類を様々に変更しながら印刷処理や箔転写処理を繰り返し行い、それぞれについて評価を行うことで、双方の要求を満たすような溶融温度Tm1の範囲を見いだした。これにより箔転写装置70では、ブレードフィルミングの発生防止及び良好な箔転写性の確保を両立させながら、定着温度を従来よりも低減させることが可能となった。
また画像形成装置1は、プレコートトナーとして無色のクリアトナーを用いるようにした。これにより画像形成装置1は、仮に画像形成ユニット10CLにおいて各ローラ等の帯電不足による印字不良(いわゆるトナーかぶり)や、過帯電による印字不良(トナーによる汚れ)が発生したとしても、トナーが無色であるため、カラートナーによる画像に与える悪影響を最小限に抑えることができる。
他の観点から見れば、本実施の形態では、画像形成装置1の構成、特に画像形成ユニット10の構成や定着部45の構成等を従来から何ら変更すること無く、プレコートトナー(すなわちクリアトナー)の構成、すなわち材料や製造方法等を変更するだけで良いため、実施に必要な費用を極めて低廉に抑えることができる。また本実施の形態では、箔転写装置70においても、定着部80の定着温度を従来の150[℃]から130[℃]に変更するだけで良く、他の部分を変更する必要が無いため、装置の構造等を変更する必要が無く、費用を低廉に抑えることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による画像形成装置1は、溶融温度Tm1が88.0[℃]以上105.6[℃]以下であるプレコートトナーを用いて用紙100にプレコートトナー画像101Pを含むトナー画像101を印刷する。これにより、画像形成装置1においてブレードフィルミングの発生を回避できる。また、箔転写装置70において、定着部80の定着温度を130[℃]としてこの用紙100に対し箔転写処理を行うことにより、プレコートトナー画像101Pの全部分に対し箔層202を転写及び定着させること、すなわち良好な箔転写性を得ることができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態による画像形成装置1及び箔転写装置70を用いながら、第1の実施の形態とは異なる評価試験を行った。
具体的には、特性が異なる9種類のカラートナーCA、CB、CC、CD、CE、CF、CG、CH及びCIを作成し、それぞれの溶融温度Tm2を計測した。そのうえで、この9種類のカラートナーと、第1の実施の形態における8種類のプレコートトナーとを、総当たり的に組み合わせて用いて、画像形成装置1(図1)により用紙100にトナー画像を印刷し、箔転写装置70(図4)により箔転写処理を行い、得られた結果を評価する評価試験を行った。
カラートナーCAは、溶融温度Tm2が97.7[℃]であった。カラートナーCBは、溶融温度Tm2が105.6[℃]であった。カラートナーCCは、溶融温度Tm2が108.3[℃]であった。カラートナーCDは、溶融温度Tm2が114.5[℃]であった。カラートナーCEは、溶融温度Tm2が114.8[℃]であった。カラートナーCFは、溶融温度Tm2が115.9[℃]であった。カラートナーCGは、溶融温度Tm2が117.3[℃]であった。カラートナーCHは、溶融温度Tm2が127.8[℃]であった。カラートナーCIは、溶融温度Tm2が134.8[℃]であった。
そのうえで、各プレコートトナー及び各カラートナーの組合せに関して、第1の実施の形態と同様に、画像形成装置1におけるブレードフィルミングの発生に関する評価と、箔転写装置70での箔転写処理における箔転写性に関する評価とを、それぞれ行った。
ここで、カラートナーの溶融温度Tm2とプレコートトナーの溶融温度Tm1との差分(以下これを溶融温度差と呼ぶ)について検討する。この溶融温度差が小さすぎる場合、箔転写装置70の定着部80(図4)では、プレコートトナーのみを溶融させるべきところ、カラートナーも溶融してしまい、箔層202が該カラートナーにも付着してしまう恐れがある。また溶融温度差が大きすぎる場合、箔転写装置70の定着部80では、箔層202がプレコートトナー画像101Pに対して十分に接着できない恐れがある。このため箔転写装置70における箔転写処理では、溶融温度差が適切な範囲に収まっていることが望ましい。
そこで、各カラートナーを縦方向に並べると共に各プレコートトナーを横方向に並べ、カラートナーの溶融温度Tm2からプレコートトナーの溶融温度Tm1を減算した溶融温度差ΔTmの値と、箔転写性の評価とをまとめると、図10に示す表のようになった。なお、プレコートトナーPA及びPBに関しては、ブレードフィルミングの評価が低く、用紙100上においてプレコートトナー画像101Pが既に一部欠落した状態であったため、箔転写性に関する評価を省略した。なお図10では、各プレコートトナーの名称と並べてそれぞれの溶融温度Tm1の値を表記すると共に、各カラートナーの名称と並べてそれぞれの溶融温度Tm2の値を表記している。
図10において、箔転写性の評価が「◎」又は「○」であったのは、図中に破線で囲んだ範囲AR1であり、溶融温度差ΔTmが8.9[℃]以上25.6[℃]以下となった。さらに図10において、箔転写性の評価が「◎」であったのは、図中の太線で囲んだ範囲AR2であり、溶融温度差ΔTmが13.1[℃]以上25.6[℃]以下となった。
そこで本実施の形態では、画像形成装置1において、プレコートトナー(クリアトナー)の溶融温度Tm1が88.0[℃]以上105.6[℃]以下であり、且つ溶融温度差ΔTmが8.9[℃]以上25.6[℃]以下となるような、プレコートトナー及びカラートナーをそれぞれ選定して用いるようにした。
これにより箔転写装置70では、箔転写処理を行う際に、定着部80においてカラートナーを溶融させること無く、プレコートトナーを適度に溶融させることができるので、箔層202を該プレコートトナーの箇所にのみ良好に転写させ、高い箔転写性を実現できる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、画像形成装置1において、溶融温度Tm1が88.0[℃]以上105.6[℃]以下であるプレコートトナーを用いて印刷処理を行う場合について述べた(図9)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば溶融温度Tm1が88.0[℃]以上92.5[℃]以下であるプレコートトナーを用いて印刷処理を行っても良い(図9)。これにより、極めて良好な箔転写性を確実に得ることができる。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第2の実施の形態においては、画像形成装置1において、溶融温度差ΔTmが8.9[℃]以上25.6[℃]以下であるプレコートトナー及びカラートナーを用いて印刷処理を行う場合について述べた(図10)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば溶融温度差ΔTmが13.1[℃]以上25.6[℃]以下であるプレコートトナー及びカラートナーを用いて印刷処理を行っても良い。これにより、極めて良好な箔転写性を確実に得ることができる。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ガラス転移温度Tgが59[℃]以上68[℃]以下であるプレコートトナーを用いて印刷処理を行う場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばガラス転移温度Tgが59[℃]以上60[℃]以下であるプレコートトナーを用いて印刷処理を行っても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、画像形成装置1の定着部45(図1)における定着温度を150[℃]とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば定着部45の定着温度を140[℃]以上160[℃]以下の任意の値としても良い。この場合も、第1の実施の形態と同様に、用紙100に対しトナー画像101を良好に定着させることができる(図3)。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、箔転写装置70の定着部80(図4)における定着温度を130[℃]とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば定着部80の定着温度を120[℃]以上140[℃]以下の任意の値としても良い。この場合も、第1の実施の形態と同様に、用紙100におけるプレコートトナー画像101Pが形成された箇所にのみ、箔層202を良好に転写させることができる(図6)。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、プレコートトナーとしてクリアトナーを用いる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、他の種々の色のトナーをプレコートトナーとして用いても良い。この場合、溶融温度Tm1等に関する条件を満たすようなトナーであれば良い。第2の実施の形態についても同様であり、この場合はさらに溶融温度差ΔTmに関する条件を満たすようなトナーであれば良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、プレコートトナーとしてポリエステル樹脂を含有するトナーを用いる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂等、他の種々の樹脂を含有するトナーをプレコートトナーとして用いても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、画像形成装置1の定着部45において加圧ローラ47から用紙100に加えられる圧力を1.5[kg/cm2]以上3.5[kg/cm2]以下とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば1.5[kg/cm2]以下の圧力や、3.5[kg/cm2]よりも大きい圧力を用紙100に加えるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、画像形成装置1をいわゆる2次転写方式(又は中間転写方式)、すなわち画像形成ユニット10の感光体ドラム17から各色のトナー画像を中間転写ベルト24に順次転写し、2次転写部43において該中間転写ベルト24から用紙100にトナー画像を転写する構成とする場合について述べた(図1)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば画像形成装置1をいわゆる直接転写方式、すなわち画像形成ユニット10の感光体ドラム17から用紙100にトナー画像を直接転写する構成としても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、画像形成装置1に5個の画像形成ユニット10を設ける場合について述べた(図1)。しかしながら本発明はこれに限らず、4個以下又は6個以上の画像形成ユニット10を画像形成装置1に設けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、本発明を単機能のプリンタである画像形成装置1に適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば複写機やファクシミリ装置の機能を有するMFP(Multi Function Peripheral)等、他の種々の機能を有する画像形成装置に適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、プレコート画像形成ユニットとしての画像形成ユニット10CLと、カラー画像形成ユニットとしての画像形成ユニット10C、10M、10Y及び10Kと、転写部としての2次転写部43とによって画像形成装置としての画像形成装置1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるプレコート画像形成ユニットと、カラー画像形成ユニットと、転写部とによって画像形成装置を構成しても良い。