JP2020120664A - チーズ様食品 - Google Patents

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浩義 上野
紀子 桑谷
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紀子 桑谷
明子 玉川
Akiko Tamagawa
明子 玉川
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Abstract

【課題】原料チーズ類の含有量が少ないか、または原料チーズ類を含まないチーズ様食品として、糸曳性が高いチーズ様食品を提供する。【解決手段】原料チーズ類の含有量が60質量%以下であるチーズ様食品であって、アセチル化酸変性澱粉、乳タンパク質、油脂、および溶融塩を含み、上記溶融塩が80質量%以上のクエン酸塩を含み、上記溶融塩が上記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上3質量%以下である、上記チーズ様食品。【選択図】なし

Description

本発明は、チーズ様食品に関する。
チーズは、乳などを凝固させた凝乳からホエイを部分的に排除し、必要に応じて熟成することで得られるナチュラルチーズと、ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化することで得られるプロセスチーズとに大別される。また、加熱用チーズとして、加熱により溶融し糸曳性が生じるチーズが市販されており、ピザやグラタンに用いられる。
近年、チーズの需要は増加傾向にある。特に、健康志向の高まりやコスト削減の観点から乳脂肪源である原料チーズの使用量の少ない、または原料チーズを使用しない、チーズに類似した食品(以下、チーズ様食品ともいう)を製造することが検討されている。例えば、特許文献1及び2には、乳由来タンパク質含量が0.1質量%以下であって、酸化澱粉等の澱粉と、油脂及び水を含むチーズ様加工食品が開示されている。また、特許文献3には、酸処理澱粉と、油脂を含有し、蛋白質含量が10重量%以下のチーズ様食品が開示されている。
特許第6190556号公報 特許第6222788号公報 国際公開第2013/147280号
上述のように様々なチーズ様食品が開発されているが、加熱溶融した際の伸びが良いモッツァレラチーズ様食品を得ることは、依然として困難であった。
本発明の課題は、原料チーズ類の含有量が少ないか、または原料チーズ類を含まないチーズ様食品として、加熱溶融した際の伸びが良い、すなわち、糸曳性が高いチーズ様食品を提供することである。
本発明者らは、上記課題の解決のため検討を重ね、乳タンパク質と、油脂とを含む組成に、さらにアセチル化澱粉としてアセチル化酸変性澱粉および所定の溶融塩を加えてチーズ様食品を製造することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のようなチーズ様食品を提供するものである。
[1]原料チーズ類の含有量が60質量%以下であるチーズ様食品であって、
アセチル化酸変性澱粉、乳タンパク質、油脂、および溶融塩を含み、
上記溶融塩が80質量%以上のクエン酸塩を含み、
上記溶融塩が上記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上3質量%以下である、
上記チーズ様食品。
[2]上記アセチル化酸変性澱粉が馬鈴薯澱粉由来であり、アセチル化度が1.0以上2.5以下である、[1]に記載のチーズ様食品。
[3]上記アセチル化酸変性澱粉の含有量が上記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上50質量%以下である、[1]または[2]に記載のチーズ様食品。
[4]上記溶融塩がリン酸水素ナトリウムを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[5]原料チーズ類の含有量が上記チーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満である、[1]〜[4]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[6]上記乳タンパク質としてレンネットカゼインを含む[5]に記載のチーズ様食品。
[7]上記レンネットカゼインの含有量が上記チーズ様食品の全質量に対して10質量%以上30質量%以下である、[6]に記載のチーズ様食品。
[8]上記レンネットカゼインの含有量が上記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上10質量%未満であり、
オクテニルコハク酸α化澱粉を上記チーズ様食品の全質量に対して0.5質量%以上2.0質量%以下含む、[6]に記載のチーズ様食品。
[9]上記油脂がココナッツオイル及びパーム油から選択される、[1]〜[8]のいずれかに記載のチーズ様食品。
本発明により、原料チーズ類の含有量が少ないか、または原料チーズ類を含まないチーズ様食品として、加熱溶融した際の伸びが良いチーズ様食品が提供される。本発明のチーズ様食品はモッツァレラチーズ、特に加熱用モッツァレラチーズの代替となる製品とすることができる。
実施例で使用したアセチル化酸変性澱粉のRVA粘度グラフを示す図である。 製造例β11−2の糸曳性を示す写真である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
<チーズ様食品>
本発明は、原料チーズ類の含有量が60質量%以下であるチーズ様食品にかかるものである。
本明細書において、チーズ様食品とは、チーズに似せた類似食品のことであり、イミテーションチーズ、アナログチーズ、チーズレプリカなどと称されることもある。チーズ様食品はチーズの代用品として使用することができる。
本発明のチーズ様食品においては、原料チーズ類の含有量が、チーズ様食品の全質量に対し60質量%以下である。チーズ様食品は、原料チーズ類を含まないチーズ様食品、すなわち、原料としてチーズを配合せずに製造されるチーズ様食品であってもよい。
<アセチル化酸変性澱粉>
本発明のチーズ様食品はアセチル化酸変性澱粉を含む。
アセチル化澱粉は、アセチル基を有する澱粉である。アセチル化澱粉は、一般的には原料澱粉をアセチル化処理して得られる加工澱粉であればよい。アセチル化澱粉は食品衛生法施行規則第十二条別表第1に人の健康を損なうおそれのない添加物として指定された「指定添加物リスト」に酢酸デンプンとして記載されたものである。アセチル化澱粉は低分子化されたものであることが好ましい。低分子化の方法としては、酸処理(酸変性処理)のほか、デキストリン化処理、酵素処理等が挙げられる。このような澱粉としては、市販品を用いることができ、例えば、Lyckeby社製のLyckeby CheeseApp 30、Lyckeby CheeseApp 40、Lyckeby CheeseApp 60、Lyckeby CheeseApp 70、Lyckeby 11200等を挙げることができる。
アセチル化澱粉は、原料澱粉をアセチル化処理して製造してもよい。アセチル化処理は、アセチル化処理前の澱粉のスラリーに無水酢酸または酢酸を添加することを含む既知の方法を用いることにより行うことができる。無水酢酸または酢酸を添加する際は、必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液等を滴下することによりpHが適切な範囲内となるよう調整すればよい。
アセチル化酸変性澱粉は、原料澱粉にアセチル化処理および酸処理を行なって得られる加工澱粉である。
酸処理は、例えば、アセチル化澱粉を酸性水溶液に浸漬することにより行うことができる。酸性水溶液は塩酸水溶液または硫酸水溶液であることが好ましい。具体的には、アセチル化酸変性澱粉は、アセチル化澱粉を酸性水溶液に糊化温度以下で浸漬した後、中和、水洗、ろ過、乾燥などの工程を経て製造することができる。
または、原料澱粉に同様の酸処理を行い、その後アセチル化処理をすることでアセチル化酸処理澱粉を得ることができる。
なお、加工澱粉として広く用いられるものに酸化澱粉がある。これは次亜塩素酸ナトリウム等の「酸化剤」を用いて澱粉を酸化処理するもので、酸化処理によってカルボキシル基やカルボニル基が生成するものである。従って上述した、澱粉を酸性水溶液に浸漬する酸処理(酸変性)とは異なる加工方法である。
本発明で用いられるアセチル化酸変性澱粉の澱粉種(原料澱粉)としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ由来の澱粉等を使用することができる。なお、トウモロコシ由来の澱粉としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等が挙げられる。中でも、アセチル化酸変性澱粉は、タピオカ澱粉又は馬鈴薯澱粉であることが好ましく、馬鈴薯澱粉であることがより好ましい。すなわち、アセチル化酸変性澱粉は、アセチル化酸変性馬鈴薯澱粉であることが好ましい。
本発明のチーズ様食品に含まれるアセチル化酸変性澱粉は、アセチル化度が1.0%以上2.5%以下であることが好ましい。
澱粉のアセチル化度は、アセチル化処理時の無水酢酸または酢酸の添加量で調節することができる。
アセチル化澱粉(アセチル化酸変性澱粉)のアセチル化度は、税関法に従った方法で測定することができる。例えば、以下の手順で測定することができる。
[アセチル化度測定手順]
試薬
1)0.25N塩酸溶液(ファクターは0.1Nの水酸化ナトリウム溶液(指示薬フェノールフタレイン)を用いて求めておく)
2)0.45N水酸化ナトリウム溶液
3)フェノールフタレイン
操作
1)300mLトールビーカーにサンプル5g(絶乾状態相当)をとり、蒸留水100mLとフェノールフタレイン数滴を加える。
2)スターラーで撹拌しながら、水酸化ナトリウムでpH8.3に合わせる。
3)pH8.3に合わせたら、0.45N水酸化ナトリウム溶液を25mL加える。
4)30分間スターラーで撹拌する。
5)0.25N塩酸溶液で滴定する(終点pH8.3)。
ブランク
上記と同様の操作を蒸留水で行なう。
計算
以下の式1にしたがって、アセチル化度を求める。
アセチル化酸変性澱粉の酸変性度は、粘度を指標として比較することができる。粘度の数値が大きいほど酸変性度が低い。
本発明のチーズ様食品に含まれるアセチル化酸変性澱粉を固形分濃度が10質量%濃度のゲル状体とした場合、50℃におけるB型粘度は、5mPa・s以上であることが好ましく、20mPa・s以上であることがより好ましい。20mPa・s以上のアセチル化酸変性澱粉を利用することで糸曳性を有するチーズ様食品を得ることができる。更に、この粘度が600mPa・s〜700mPa・sに高めることで、優れた加熱溶融性と糸曳性とを有し、また乳化後の粘度も高くなりすぎないチーズ様食品を製造することができる。また、アセチル化酸変性澱粉の上記条件におけるB型粘度は、概ね1000mPa・s以下であることが好ましく、800mPa・s以下であることも好ましい。この範囲であれば乳化後の粘度を適切な範囲に低減させ、流送負荷を抑えることができるため流送時間を短縮でき、また流送エネルギーを低減することができるため製造効率を高めることができる。
なお、アセチル化酸変性澱粉の上記条件におけるB型粘度は、具体的には、以下の手順で測定する。まず、絶乾状態で20.0gとなる質量のアセチル化酸変性澱粉をトールビーカーに量りとり、蒸留水を加えて全量が200.0gになるようにする。次いで、トールビーカーを沸騰浴中に漬けながら撹拌棒で5分間撹拌し、糊化させ、5分おきに30秒間撹拌を行う作業を、沸騰水中に最初に漬けた時点を起点として25分間経過時まで行う。その後、沸騰浴から、トールビーカーを取り出し、蒸発した分の蒸留水を加えることで水分量を調整する。次いで、トールビーカーを水浴に入れ50℃になるまで冷却し、50℃における粘度をB型粘度計で測定する。
本発明のチーズ様食品に含まれるアセチル化酸変性澱粉は、ラピッドビスコアナライザー(RVA)にて昇温速度1.5℃/minで測定したときの糊化ピーク温度が80℃以下であることが好ましい。
アセチル化度が1.0%以上であり、かつRVA糊化ピーク温度が80℃以下であるアセチル化酸変性澱粉を用いることにより、チーズ様食品の乳化後粘度を低減させ、乳化後粘度安定性を高めることができる。
ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)としては、例えば、ニューポートサイエンティフィック(NEWPORT SCIENTIFIC)社製のRVA4500を用いることができる。RVAにて昇温速度1.5℃/minで測定したときの糊化ピーク温度が80℃以下であるとは、具体的には、絶乾固形分濃度15質量%のアセチル化澱粉のスラリー(例えば、絶乾状態で4.5gとなる質量のアセチル化澱粉をRVA測定用アルミカップに量りとり、蒸留水を加えて全量が30.0gとなるようにする)について、30℃で測定を開始し、測定開始時〜測定開始より10秒までの回転数を960rpm、測定開始より10秒後〜測定終了までの回転数を160rpmとし、30℃〜40℃までの昇温速度10℃/minで昇温を開始し、40℃〜95℃までの温度範囲の昇温速度を1.5℃/minで測定したときの糊化ピーク温度が80℃以下であればよい。この糊化ピーク温度は78℃以下が好ましく、70℃以下がさらに好ましい。この糊化ピーク温度の下限は特に限定されないが、60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。
本発明のチーズ様食品に含まれるアセチル化酸変性澱粉は、熱可逆性を有する澱粉であることが好ましい。ここで、熱可逆性とは、加熱することで糊化させ、その後に低温条件下でゲル化状態とした後に、再度加熱した場合に、ゲル化する前の状態である糊化の状態に戻る性質をいう。具体的には、再度加熱することで得られる糊化液の50℃におけるB型粘度が、ゲル化する前の状態の糊化液の粘度と同程度の粘度に戻る性質をいう。通常、一度ゲル化した糊化液は、再び糊化液となることはない(熱不可逆である)。
本発明のチーズ様食品に含まれるアセチル化酸変性澱粉としては、アセチル化度が1.0%以上2.5%以下であり、かつラピッドビスコアナライザー(RVA)にて昇温速度1.5℃/minで測定したときの糊化ピーク温度が80℃以下であるアセチル化酸変性馬鈴薯澱粉が特に好ましい。
本発明のチーズ様食品におけるアセチル化酸変性澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、アセチル化酸変性澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく30質量%以下であることが特に好ましい。アセチル化酸変性澱粉の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の食感を高めることができる。
[乳タンパク質]
乳タンパク質とは、乳由来のタンパク質であり、乳成分が含まれていれば、乳タンパク質も含まれていることになる。このため、乳タンパク質には、原料チーズ類由来の乳タンパク質も含まれる。
(原料チーズ類)
原料チーズ類とは、チーズ様食品の原料として添加されるチーズである。ここで、チーズは、乳(牛乳、羊乳、山羊乳など)を凝固させた凝乳からホエイを部分的に排除し、必要に応じて熟成することで得られるナチュラルチーズ、またはナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化することで得られるプロセスチーズである。原料チーズ類は、ナチュラルチーズまたはプロセスチーズのいずれであってもよいが、ナチュラルチーズであることが好ましい。また、原料チーズ類の形態は特に限定されるものではなく、ブロック状、シート状、シュレッド状、パウダー状、クリーム状など、いずれの形態であってもよい。ナチュラルチーズとしては、軟質チーズ(例えば、モッツァレラ、マスカルポーネなどの非熟成タイプ、カマンベールなどの熟成タイプ)、半硬質チーズ(例えば、ゴルゴンゾーラ、ゴーダなどの熟成タイプ)、硬質チーズ(例えば、エメンタール、チェダーなどの熟成タイプ)、超硬質チーズ(例えば、パルミジャーノ・レッジャーノなどの熟成タイプ)等が挙げられる。プロセスチーズとしては、上述した1種以上のナチュラルチーズを加熱溶融して乳化したものが挙げられる。これらの原料チーズ類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本発明のチーズ様食品においては、原料チーズ類の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、60質量%以下であり、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。原料チーズ類の含有量を上記上限値以下とすることにより、チーズ様食品における原料コストを低減することができる。さらに、原料チーズ類の含有量を上記上限値以下とすることにより、乳脂肪の含有量を抑えることができ、低カロリーのチーズ様食品を得ることもできる。
本発明のチーズ様食品は原料チーズ類に加えて、さらに原料チーズ類由来の乳タンパク質以外の乳タンパク質を含んでいてもよい。
本発明のチーズ様食品は原料チーズ類を含まないことも好ましい。原料チーズ類を含まないことにより、さらにチーズ様食品における原料コストを低減し、低カロリーのチーズ様食品を得ることもできる。原料チーズ類を含まないチーズ様食品は、乳タンパク質として、原料チーズ類由来の乳タンパク質以外の乳タンパク質を含むことが好ましい。
原料チーズ類由来の乳タンパク質以外の乳タンパク質としては、例えば、脱脂粉乳やスキムミルク、ホエーパウダーなどに含まれている乳タンパク質を挙げることができる。また、原料チーズ類を含まないチーズ様食品では、乳タンパク質として、MPC(乳タンパク質濃縮物)、マイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)、及びレンネットカゼインから選択される少なくとも1種が用いられることが好ましい。
原料チーズ類由来の乳タンパク質以外の乳タンパク質としては、レンネットカゼインが用いられることがより好ましい。
MPCやマイセラカゼインは、乳由来のタンパク質濃縮物であり、タンパク質を高濃度で含有するものである。MPC(乳タンパク質濃縮物)やマイセラカゼインは、膜処理により乳タンパク質を濃縮することで得られるものである。なお、MPCは、カゼインとホエイの含有質量比が8:2(カゼイン:ホエイ)のものであり、マイセラカゼインは、カゼインとホエイの含有質量比が9:1(カゼイン:ホエイ)のものである。MPCやマイセラカゼインは、膜処理のみで濃縮精製されているタンパク質であるため、変性が抑制されており、水分散性に優れている。このため、MPCやマイセラカゼインをチーズ様食品に用いた際には、他の原料に速やかに溶解するため、滑らかな食感を達成することができる。
原料チーズ類を含まないチーズ様食品では、乳タンパク質として、MPC(乳タンパク質濃縮物)及びマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)から選択される少なくとも1種を含むことにより、チーズ様食品の舌触りを良くすることができ、これにより、風味や食感を向上させることができる。
MPC(乳タンパク質濃縮物)及びマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、Pienas LT社製のMPC85、MicCC85等を挙げることができる。
原料チーズ類を含まないチーズ様食品において、乳タンパク質としてMPC(乳タンパク質濃縮物)またはマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)を用いるとき、それらの含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましい。また、MPC(乳タンパク質濃縮物)またはマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の風味や食感をより高めることができる。
レンネットカゼインは、乳原料に含まれるカゼインをレンネット酵素により凝固した乳タンパク質である。レンネットカゼインは、チーズ様食品の乳化機能を高める働きをする。このため、レンネットカゼインを含むチーズ様食品は優れた食感を発現することに加えて、優れた糸曳性も発揮することができる。
原料チーズ類を含まないチーズ様食品において、乳タンパク質としてレンネットカゼインを用いるとき、レンネットカゼインの含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。レンネットカゼインの含有量を1質量%以上とすることにより、チーズ様食品の風味や食感をより高めることに加え、チーズ様食品の糸曳性をより高めることができる。また、レンネットカゼインの含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。レンネットカゼインの配合量を30質量%以下とすることにより、製造工程における乳化後粘度を適切な範囲に低減させることができ、製造効率よく製造することができる。
チーズ様食品の全質量に対して、レンネットカゼインが1質量%以上10質量%未満、特に1質量%以上9質量%以下であるチーズ様食品は、後述するオクテニルコハク酸α化澱粉等の乳化剤を含むことが好ましい。
[油脂]
本発明のチーズ様食品は油脂を含む。ここで、油脂は食用油脂であり、食用油脂としては、動物性油脂や植物性油脂、加工油脂が挙げられる。中でも、油脂は植物性油脂であることが好ましい。本発明においては、原料チーズ類の含有量を低減するか、もしくは、原料チーズ類を含まないものであるため、動物性油脂の含有量を低減することができる。また、油脂として植物性油脂を用いることにより、動物性油脂の含有量を極力減らすことができる。
油脂の上昇融点は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。また、油脂の上昇融点は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。上昇融点が上限温度以下の油脂を用いることで加熱時の溶融性を有するチーズ様食品が得られ、上昇融点が下限温度以上の油脂を用いることでシュレッド適性を有するチーズ様食品が得られる。
油脂としては、例えば、ココナッツオイル、パーム油、バターオイル、菜種油、オリーブオイル、ゴマ油、ショートニング等を挙げることができる。中でも、油脂は、ココナッツオイル、パーム油及びバターオイルから選択される少なくとも1種であることが好ましいが、ココナッツオイル及びパーム油から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
油脂の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、油脂の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。油脂の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の食感と糸曳き性をより高めることができる。
[溶融塩]
本発明のチーズ様食品は、溶融塩を含む。本明細書において、溶融塩とは、カゼイン等の乳タンパク質を溶融させるための塩であり、カゼイン等の乳タンパク質の分散性を高めることができる。本発明のチーズ様食品に含まれる溶融塩は、80質量%以上のクエン酸塩を含む。クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸カリウムを挙げることができ、クエン酸ナトリウムが好ましい。80質量%以上のクエン酸塩を含む溶融塩としては、例えば、チーズ溶融剤CH−4(オルガノフードテック株式会社製)を使用することができる。
チーズ溶融剤CH−4の典型的な成分質量比は以下のとおりである。
クエン酸ナトリウム 89.3%
クエン酸 1.7%
リン酸水素ナトリウム 9.0%
本発明のチーズ様食品の溶融塩の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上3質量%以下である。本発明のチーズ様食品はアセチル化酸変性澱粉とともにクエン酸塩を含む溶融塩を1質量%以上3質量%以下含むことにより優れた糸曳性を有する。本発明のチーズ様食品の溶融塩の含有量は、1質量%以上1.3質量%以下であることが好ましい。この範囲で特に保存後にもチーズらしい弾力感があり、冷めても伸びがよく柔らかいチーズ様食品を得ることができる。
溶融塩としては、このほかにリン酸塩(例えば、ポリリン酸ナトリウム)が知られている。しかし、糸曳性の観点から、クエン酸を含む溶融塩が好ましい。
[乳化剤]
チーズ様食品は、乳化剤を含んでいてもよい。特に、原料チーズ類を含まないチーズ様食品は乳化剤を含むことが好ましい。加熱溶融性がより良好となるからである。上述のように、乳タンパク質として添加されるレンネットカゼインも、チーズ様食品の乳化機能を高める機能を有する。レンネットカゼインが含まれていないチーズ様食品、またはレンネットカゼインの含有量が少ないチーズ様食品は、その他の乳化剤を含んでいることが好ましい。その他の乳化剤としては、例えばオクテニルコハク酸α化澱粉が挙げられる。
オクテニルコハク酸α化澱粉のオクテニルコハク酸含量はオクテニルコハク酸α化澱粉の質量に対して1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%であればよい。オクテニルコハク酸基の含量は、食品添加物法第11条1項(H20.10.1厚生労働省告示485号)に準拠した測定方法で測定することができる。オクテニルコハク酸α化澱粉は、馬鈴薯澱粉の加工澱粉であることが好ましい。また、10質量%で水に溶解したときの粘度が液温50℃のとき300〜700mPa・s、好ましくは400〜500mPa・sであるものを使用することができる。オクテニルコハク酸α化澱粉としては市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、トレコメックス12−02(王子コーンスターチ社製)を用いることができる。
本発明のチーズ様食品において、オクテニルコハク酸α化澱粉の含有量はチーズ様食品の全質量に対して0.5質量%以上2.0質量%以下である。0.5質量%以上とすることにより、水分と油脂とを適度に乳化させることができる。また、2.0質量%以下とすることでチーズ様食品に適度な粘度安定性と加熱溶融性を与えることができる。
[水分]
チーズ様食品は、水分を含んでいることが好ましい。チーズ様食品が含み得る水分としては、例えば、水、豆乳、牛乳等を挙げることができる。なお、チーズ様食品中における水分は、添加される水等に由来する水分のみでなく、澱粉、原料チーズ類、乳タンパク質及び任意成分に含まれる水分にも由来する。水分の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、油脂の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
[その他の澱粉]
チーズ様食品は、アセチル化酸変性澱粉以外の澱粉を含んでいてもよい。例えば、ヒドロキシプロピル化澱粉の添加により、チーズ様食品の冷蔵・冷凍耐性や糸曳性を高めることもできる。ヒドロキシプロピル化澱粉としては、市販品を用いることができ、例えば、いかるが100、ミクロリス52、ファインテックスS−1、ひこぼし300等を用いることができる。
[任意成分]
本発明のチーズ様食品は、上述した成分以外に他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、通常のチーズが含み得るものを挙げることができる。
任意成分としては、例えば、食塩、砂糖、乳化剤、風味付けパウダー、調味料、酸味料、甘味料、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、保存料、香料、機能性素材等を挙げることができる。中でも、本発明のチーズ様食品は、食塩、酸味料、調味料及び着色料から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
風味付けパウダーとしては、例えば、果実風味パウダー、ココアパウダー、抹茶パウダー、カレーパウダーなどを挙げることができる。調味料としては、例えば、香辛料、ハーブ、コンソメ、ココナッツミルク等を挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。甘味料としては、例えば、糖類、糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等を挙げることができる。香料としては、例えば、バニラエッセンス、バター風香料等を挙げることができる。機能性素材としては、例えば、セラミド、アマニ、ポリフェノール、キシリトール、または難消化性デキストリン等を挙げることができる。
本発明のチーズ様食品中における任意成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることさらに好ましい。
[チーズ様食品の特性]
本発明のチーズ様食品はアセチル化澱粉(アセチル化酸変性澱粉)を含むことにより、原料チーズ類の添加量が少ないか、もしくは添加されていなくとも、チーズにより近い食感を呈することができる。チーズにより近い食感は、舌触りで判断でき、より滑らかであり、ざらつき感が少ない場合において、チーズにより近い食感であると言える。また、本発明のチーズ様食品は、上述のようにアセチル化酸変性澱粉とともにクエン酸塩を含む溶融塩を1質量%以上3質量%以下含むことにより優れた糸曳性を有する。さらに、特定の態様において優れた加熱溶融性を有しており、加熱により容易に溶融し、溶融後も滑らかな舌触りを発現し得る。したがって、本発明のチーズ様食品は加熱用の製品に適したチーズ様食品として提供することができる。さらに、本発明のチーズ様食品においては、原料チーズ類の添加量が少ないか、もしくは添加されていないため、チーズ様食品における原料コストを低減することができる。また、原料チーズ類の添加量を抑制することにより、乳脂肪の含有量を抑えることができ、動物性脂肪の摂取を控えたい消費者などのニーズに応えることもできる。
また、アセチル化澱粉(アセチル化酸変性澱粉)を含む本発明のチーズ様食品は、優れたシュレッド適性を有し、ブロック状に製造されたチーズ様食品をシュレッドして(切断するかまたは削って)、シュレッドタイプのチーズ様食品とする場合に適した性質を有する。すなわち、アセチル化澱粉を含むチーズ様食品では後述するようなシュレッド時の温度(低温時:5℃〜10℃)の保形性が向上している。具体的には、チーズ様食品を短冊状にカット(切断)でき、かつ、カットされたチーズ様食品同士が付着せずに存在できる場合に、チーズ様食品は優れたシュレッド適性を有していると判定できる。
現在市販されている一般的な、シュレッドタイプのチーズは、ブロック状のチーズをシュレッドすることで形成されている。このため、従来、シュレッドタイプのチーズを形成する場合、ブロック状のチーズを意図した形状にカットできるよう、チーズの保形性を高めるべく、セルロースといった保形剤(増粘安定剤)等の添加剤が添加されていた。なお、本明細書における保形剤には、澱粉を除く保形剤や増粘安定剤が含まれ、チーズやチーズ様食品に用いられている代表的な保形剤としてセルロースが挙げられる。ここで、セルロースなどを含む保形剤はアレルギー反応を引き起こす場合があり、問題となる場合がある。しかし、アセチル化澱粉を使用することにより、セルロースといった保形剤を添加せずともチーズ様食品の保形性を高めることができる。これにより、チーズ様食品は優れたシュレッド適性を発揮することができる。具体的には、チーズ様食品において、保形剤の含有量はチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満であることが好ましい。保形剤の含有量が上記範囲内であれば、保形剤は実質的に含まれていないと言える。なお、保形剤としては、例えばセルロースを挙げることができ、セルロースの含有量がチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満であることがより好ましい。
[チーズ様食品の形態]
チーズ様食品の形態は特に限定されるものではないが、例えば、シュレッドタイプチーズ様食品、ブロックチーズ様食品、クリームチーズ様食品、スプレッドチーズ様食品、モッツァレラチーズ様食品、チーズソース様食品、粉チーズ様食品等を挙げることができる。本発明のチーズ様食品は、モッツァレラチーズ様食品とすることが好ましく、特に加熱溶融した際の伸びがよいため、加熱用のモッツァレラチーズ様食品とすることが好ましい。
[チーズ様食品の製造方法]
チーズ様食品は、慣用の方法を用いて製造することができる。例えば、アセチル化酸変性澱粉と、乳タンパク質と、油脂と、溶融塩と、必要に応じて水分等とを加熱混合する工程と、加熱混合物を冷却する工程とを含むことが好ましい。
各成分は全て同時に混合してもよく、一部を混合撹拌してから他の成分を加えてさらに撹拌してもよい。例えば、乳タンパク質、溶融塩、および水を先に混合し、その後、残りの成分を加えてさらに混合、撹拌してもよい。
加熱混合する工程では、加熱温度は、60〜100℃であることが好ましい。また、加熱混合の間、必要により脱気を行ってもよい。加熱混合物を冷却する工程では、加熱混合物は、例えば、1〜10℃に冷却される。なお、冷却時間は1時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましい。
加熱混合する工程では、原料混合物を撹拌することが好ましい。この際の撹拌条件は、緩やかな条件であることが好ましい。
例えば、300〜2000rpmの回転数で撹拌を行うことが好ましく、500〜1000rpmの回転数で撹拌を行うことがより好ましい。これにより、より口当たりがよく、風味や食感に優れたチーズ様食品が得られる。
また、加熱混合する工程(乳化工程)での撹拌力は、系内を均一に撹拌できる範囲内で、できるだけ弱いことが乳化後の粘度・加熱溶融性の観点から好ましい。
撹拌力は、撹拌レイノルズ数を指標とすることができる。撹拌レイノルズ数は撹拌羽根の半径の2乗と回転数の積に比例することが知られている。すなわち、撹拌羽根の直径をd(m)、回転数をn(m/s)とした場合、式2のようになる。
レイノルズ数(Re)∝(d2×n)÷動粘度−−−−−(式2)
(動粘度=粘度÷密度)
したがって、チーズの原料配合が略同一であるなど、乳化時の粘度とチーズ原料の密度が略同一である場合においては、撹拌羽根の直径の2乗と回転数の積にレイノルズ数が比例するため、撹拌羽根の直径の2乗と回転数の積を回転力の指標とすることができる。
ここで、均一撹拌を得るために撹拌力を強めなければならない場合、ナチュラルチーズの含有量を低減させ、油脂量を増加させることで乳化後粘度を適切な範囲に低減させ、加熱溶融性を維持することができる。
加熱混合する工程の前には、原料混合物のpHを調整する工程を設けてもよい。原料混合物のpHは4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。また、原料混合物のpHは8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
加熱混合物を冷却する工程の後には、チーズ様食品を所望の製品形態に合わせた形状に加工する工程を設けてもよい。例えば、チーズ様食品を所望の形状となるようにカットしたり、シュレッドしたりする工程を設けることができる。チーズ様食品のカットやシュレッドは、上記の冷却する工程の後、例えばブロック状に成形し、冷蔵庫でエージングした後に行なうことが好ましい。
以下に製造例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の製造例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<加工澱粉の製造>
馬鈴薯澱粉をBD41%濃度となるよう水に分散し、スラリーの温度を50℃±2℃となるよう調整した。なお、BD41%濃度とは絶乾状態の澱粉の濃度が41質量%であることを意味する。したがって、別途少量の馬鈴薯澱粉について加熱乾燥を行い、その前後の質量から水分量を算出したうえで、この水分量を考慮してBD41%濃度のスラリーを用意した。
このスラリーに無水酢酸を添加して既知の方法でアセチル化処理を行った。その後、塩酸を添加して既知の方法で酸変性処理を行った。添加する無水酢酸と塩酸の量を変えてアセチル化度1.4のアセチル化酸変性澱粉およびアセチル化度1.0のアセチル化酸変性澱粉を製造した。アセチル化度は、税関法に従った上述の方法で測定した。また、以下の手順で評価したB型粘度は、それぞれ、680mPa・s、30mPa・s、RVA糊化ピーク温度は、66.2℃、78.3℃であった。
1)B型粘度(酸変性度)
絶乾状態で20.0gとなる量の試料をトールビーカーに量りとり、蒸留水を加えて全量が200.0gになるようにする。次いで、トールビーカーを沸騰浴中に漬けながら撹拌棒で5分間撹拌し、糊化させ、5分おきに30秒間撹拌を行う作業を、沸騰水中に最初に漬けた時点を起点として25分間経過時まで行う。その後、沸騰浴から、トールビーカーを取り出し、蒸発した分の蒸留水を加えることで水分量を調整する。次いで、トールビーカーを水浴に入れ50℃になるまで冷却し、50℃における粘度をB型粘度計で測定する。
得られた粘度の数値が大きいほど酸変性度が低いことを示す。
2)RVA糊化ピーク温度
ニューポートサイエンティフィック(NEWPORT SCIENTIFIC)社製のRVA4500を用いて測定した。絶乾状態で4.5gとなる質量の澱粉をRVA測定用アルミカップに量りとり、蒸留水を加えて全量を30.0gとした(スラリー濃度15質量%)。これを用いて、30℃で測定を開始し、測定開始時〜測定開始より10秒までの回転数を960rpm、測定開始より10秒後〜測定終了までの回転数を160rpmとし、30℃〜40℃までの昇温速度10℃/minで昇温を開始し、40℃〜95℃までの温度範囲の昇温速度を1.5℃/minとして測定したときの糊化ピーク温度をRVA糊化ピーク温度とした。図1にアセチル化度1.4のアセチル化酸変性澱粉のRVA粘度グラフを示す。
<チーズ様食品の製造>
表1〜3に記載のとおり、成分やその配合量が異なる各種チーズ様食品を製造した。いずれの製造例でも、アセチル化酸変性澱粉としては、上記で製造した加工澱粉のいずれかを用い、乳タンパク質としてはレンネットカゼインを用いた。製造手順は、成分を全て混合する手順(「製造例(全)」)、または、レンネットカゼイン、溶融塩、および水を先に混合し、残りの材料を後から添加する手順(「製造例(別)」)のいずれかを用いた。
なお、pHは表に示すpHとなるよう乳酸添加量で調整した。また、表1〜3中、チーズ溶融剤 CH−4の成分質量比は上述のとおりである。
製造例(全)
1.表1に示すレンネットカゼインと溶融塩を混合したものと他の材料(水、油脂等)をステファン混合器に入れる。
2.乳酸添加量は予めpH6.0〜6.4になる分量を試験しておく。
3.加温せずに1500rpmで1分間混合する。(β10−2とβ12 は1分半混合した)
4.74℃まで加温しながら750rpmで撹拌する。
5.74℃に到達後、表に示す達温後保持時間撹拌を続け、保持時間経過時に撹拌を止める。
6.速やかに容器に移して入れて冷蔵する。
製造例(別)
1.レンネットカゼイン、溶融塩、水をステファン混合器に入れる。
2.加温せずに表1に示す回転数で表1に示す時間混合する。
3.外壁についた材料をヘラで落とし、7分間静置する。
4.残りの材料全てステファン混合器に入れ、加温せずに表1に示す回転数で1分間混合する。
5.74℃まで加温しながら750rpmで混合する。
6.74℃に到達後、表に示す達温後保持時間撹拌を続け、保持時間経過時に撹拌を止める。
7.速やかに容器に移して入れて冷蔵する。
<チーズ様食品の評価>
得られたチーズ様食品について、以下の方法で評価した。結果は各表に示す。
[糸曳性評価]
カップに20gのチーズを取り、500W電子レンジで30秒加熱し、フォークでかき混ぜながらすくい上げて伸びる長さを定規を用いてcm単位で測定した。図2に製造例β11−2の糸曳性評価の写真を示す。
[加熱溶融性]
10mm各のダイス状にカットしたチーズ様食品をアルミホイルの上に置き、800ワットのタイガー社製オーブントースター KTG−0800で3分間加熱し、加熱後すぐにチーズの高さを測定し、加熱溶融性の評価を以下の評価基準で行った。
A:カットしたチーズ様食品が溶融し、溶解前10mmの高さが2mm以下になる。
B:カットしたチーズ様食品が溶融し、溶解前10mmの高さが5mm以下になる。
C:カットしたチーズ様食品が少し溶融するが、溶解前10mmの高さが5mmよりも高い。
D:カットしたチーズ様食品が溶融せず、元の形状を留めており、溶解前10mmの高さが8mmよりも高い。
[シュレッド適性]
冷蔵後、幅11.0±0.5cm×長さ15±0.5cm×高さ3.5±0.5cmのブロック状にチーズを切り出し、パール金属社製 ベジクラ にんじんしりしり・大根千切り器C−288を使用し、短冊状にカットした。得られたシュレッドタイプチーズ様食品について、後述する評価方法で評価した。
短冊状にカットできるか否か、及び、カット後の性状について、以下の評価基準で評価した。
A:チーズブロックが硬くしっかりしていて、シュレッドしやすい。
B:シュレッドするのに十分な硬さがあり、ブロックのほぼ全量シュレッド可能。
C:シュレッド後のチーズが短冊状になり、互いに付着しない。ブロックの2/3以上シュレッドが可能。
D:シュレッド後のチーズが短冊状にはなるが、互いに付着して団子状になってしまう。また、チーズが非常に柔らかく、シュレッドの途中でブロックが型崩れするため、シュレッドできる量がブロックの半分以下である。
E:チーズがクリームチーズ状でべたつき感があり、シュレッド後のチーズが型崩れして短冊状にならない。
表1で示すように、アセチル化酸変性澱粉を入れない製造例β13−1〜13−4は、チーズ溶融剤の添加量を調整したり、加熱前撹拌条件設定において撹拌回転数を1500rpmから750rpmに調整しても、糸曳性は13cm程度と低く、また、出来上がったチーズはべたつきがあったり、柔らかすぎたりしてシュレッド適性に問題があった。これに対し、アセチル化酸変性馬鈴薯澱粉を添加することでシュレッド適性・糸曳性とも改善される傾向を示した。アセチル化酸変性馬鈴薯澱粉を添加したβ14−0〜β14−4は、いずれも糸曳性が良好で、シュレッド適性も良好であった。
アセチル化酸変性馬鈴薯澱粉の添加量が少ないβ14−3、β14−4においては、製造後4日目と比較して製造後14日目にシュレッド適性が改善する傾向が認められ、製造後14日目においてはアセチル化酸変性馬鈴薯澱粉の添加量が12質量%と多いβ14−1〜14−2とほぼ同等の優れたシュレッド適性が得られた。
工程簡略化および製造効率向上の観点から全原料を最初に投入し、撹拌、加温、および乳化を行った製造例(製造例β4、8、10−1〜2、11、12)においては74℃達温後保持時間の変更と溶融塩の添加量を検討している。この範囲において、いずれも良好な糸曳性・シュレッド適性を得ているが、特に、チーズ製造後14日において、チーズ溶融剤添加量が1.0質量%〜1.3質量%の範囲においては、いわゆるモッツァレラチーズらしい弾力感のある糸曳性が得られ、
更に、多少冷めても柔かく、また多少冷めても糸曳性が損なわれにくいという特徴があった。
表2からわかるように、溶融塩がポリリン酸塩である例よりも溶融塩がチーズ溶融剤CH−4である例で、より良好な加熱溶融性および糸曳性を得ることができる。
表3で示すように、表1、表2の例よりもレンネットカゼインの含有量が少ない例においても、アセチル化酸変性澱粉を配合することでシュレッド適性・加熱溶融時の糸曳性を改善することができた。また、表3に示す乳化作用を有するレンネットカゼインが少ない例(6質量%または9質量%)では、オクテニルコハク酸を使用することで必要十分な乳化作用を得て、チーズ様食品を製造することができた。

Claims (9)

  1. 原料チーズ類の含有量が60質量%以下であるチーズ様食品であって、
    アセチル化酸変性澱粉、乳タンパク質、油脂、および溶融塩を含み、
    前記溶融塩が80質量%以上のクエン酸塩を含み、
    前記溶融塩が前記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上3質量%以下である、
    前記チーズ様食品。
  2. 前記アセチル化酸変性澱粉が馬鈴薯澱粉由来であり、アセチル化度が1.0以上2.5以下である、請求項1に記載のチーズ様食品。
  3. 前記アセチル化酸変性澱粉の含有量が前記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上50質量%以下である、請求項1または2に記載のチーズ様食品。
  4. 前記溶融塩がリン酸水素ナトリウムを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
  5. 原料チーズ類の含有量が前記チーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
  6. 前記乳タンパク質としてレンネットカゼインを含む請求項5に記載のチーズ様食品。
  7. 前記レンネットカゼインの含有量が前記チーズ様食品の全質量に対して10質量%以上30質量%以下である、請求項6に記載のチーズ様食品。
  8. 前記レンネットカゼインの含有量が前記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上10質量%未満であり、
    オクテニルコハク酸α化澱粉を前記チーズ様食品の全質量に対して0.5質量%以上2.0質量%以下含む、請求項6に記載のチーズ様食品。
  9. 前記油脂がココナッツオイル及びパーム油から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
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