図1〜図6(B)は、本発明の実施の形態の第1例を示している。クラッチ装置1は、エンジンとトランスミッションとの間に配置されて、エンジンのクランクシャフトと、回転軸であるトランスミッションの入力軸2との間の動力の伝達状態を切り換える。クラッチ装置1は、フライホイール3と、クラッチディスク(摩擦板)4と、プレッシャプレート5と、ダイヤフラムばね6と、クラッチレリーズ装置7とを備える。
フライホイール3は、例えば鋳鉄などの金属製で、クランクシャフトの端部に、例えば複数本のボルトなどを用いて結合固定されており、クランクシャフトと同期して回転する。
クラッチディスク4は、図示は省略するが、径方向外側部分に、エンジントルクが入力される入力部(摩擦部)を有し、径方向内側部分に、入力軸2にトルクを伝達する出力部を有し、径方向中間部にダンパ部を有する。クラッチディスク4は、入力部を、フライホイール3に対し軸方向に対向させた状態で、出力部を、入力軸2にスプライン嵌合させている。
なお、軸方向とは、特に断わらない限り、入力軸2の軸方向をいう。また、軸方向片側とは、エンジンの側である、図1、図2、図3および図5(B)の左側、並びに、図6(A)および図6(B)の上側をいい、軸方向他側とは、トランスミッションの側である、図1、図2、図3および図5(B)の右側、並びに、図6(A)および図6(B)の下側をいう。
フライホイール3の径方向外側部分には、クラッチカバー8が支持固定され、該クラッチカバー8の内側には、クラッチディスク4をフライホイール3に向けて押圧するプレッシャプレート5、および、該プレッシャプレート5をクラッチディスク4に向けて押圧するダイヤフラムばね6が配置されている。
ダイヤフラムばね6は、クラッチカバー8に対して支持されている。なお、本例のクラッチ装置1は、プッシュ式のクラッチ装置であるため、ダイヤフラムばね6の中央部が軸方向片側に向けて押圧されると、プレッシャプレート5がクラッチディスク4から退避する方向(軸方向他側)に移動し、フライホイール3とクラッチディスク4との接続が断たれる構造を有する。
クラッチレリーズ装置7は、図示しないECU(制御装置)からの制御信号に基づいて、ダイヤフラムばね6に所定の押圧力を付与する。本例のクラッチレリーズ装置7は、電動モータ9と、ハウジング10と、ウォーム減速機11と、軸受ガイド12と、カム装置13と、レリーズ軸受14と、トルクセンサ15とを備える。
電動モータ9は、図示しない出力軸を、入力軸2に対しねじれの位置に配置している。
ハウジング10は、トランスミッションのフロントケース16に支持固定されるとともに、電動モータ9を支持固定する。ハウジング10は、ホイール収容部17と、ウォーム収容部18と、外径側案内筒部19と、段付円筒部20とを備える。
ホイール収容部17は、入力軸2の周囲に配置されている。本例では、ホイール収容部17は、それぞれが円輪板状で、軸方向に離隔して配置された1対の側板部21a、21bと、該1対の側板部21a、21bの径方向外側の端部同士を、周方向に関する一部分を除き、互いに接続する接続筒部22とを備える。なお、本例では、1対の側板部21a、21bのうち、軸方向片側の側板部21aの内径寸法は、軸方向他側の側板部21bの内径寸法よりも大きい。
ウォーム収容部18は、有底円筒状で、自身の中心軸を、入力軸2に対してねじれの位置に配置している。
外径側案内筒部19は、円筒状で、軸方向中間部に、軸方向片側の側板部21aの径方向内側の端部を連結している。換言すれば、軸方向片側の側板部21aは、外径側案内筒部19の軸方向中間部から径方向外方に突出している。外径側案内筒部19は、面取り部が形成された軸方向片側の端部を除いて、入力軸2の中心軸を中心とし、軸方向に関して内径寸法が変化しない円筒状の内周面を有する。
段付円筒部20は、軸方向片側に向かうほど外径寸法および内径寸法が段階的に小さくなる段付円筒状で、入力軸2の周囲に配置されている。段付円筒部20は、軸方向他側の側板部21bの径方向内側の端部から軸方向片側に向けて折れ曲がった大径筒部23と、該大径筒部23の軸方向片側の端部から径方向内方に折れ曲がった外径側接続部24と、該外径側接続部24の径方向内側の端部から軸方向片側に向けて折れ曲がった中径筒部25と、該中径筒部25の軸方向片側の端部から径方向内方に折れ曲がった内径側接続部26と、該内径側接続部26の径方向内側の端部から軸方向片側に向けて折れ曲がった小径筒部27とを備える。段付円筒部20のうちで、内径寸法が最も小さい小径筒部27の内径寸法は、入力軸2の外径寸法よりも大きい。すなわち、入力軸2は、段付円筒部20の内径側に挿通されている。
ウォーム減速機11は、ウォーム28と、ウォームホイール29とを備える。
ウォーム28は、軸方向中間部外周面に、ねじ状のウォーム歯30を有し、ハウジング10のウォーム収容部18の内側に、電動モータ9により回転駆動可能に支持されている。本例では、ウォーム28は、図示しない歯車伝達機構を介して、電動モータ9により回転駆動される。すなわち、本例では、ウォーム28は、電動モータ9の出力軸に対して平行に配置され、該出力軸に支持固定された駆動側歯車と、ウォーム28の基端部に配置された従動側歯車とを噛合させている。このため、ウォーム28と電動モータ9とは、ウォームホイール29の径方向に関して重畳して配置されている。ただし、電動モータの出力軸とウォームとを、継手を介してトルクの伝達を可能に接続することにより、電動モータの出力軸とウォームとを同軸に配置することもできる。
ウォームホイール29は、外周面に、ウォーム歯30と噛合するホイール歯31を有し、ハウジング10のホイール収容部17の内側で、入力軸2の周囲に該入力軸2に対する相対回転を自在に支持されている。本例のウォームホイール29は、金属製または合成樹脂製で円環状のハブ(芯金)32と、合成樹脂製のギヤ部33とを備える。
ハブ32は、ホイール側円筒部34と、該ホイール側円筒部34の軸方向他側部分から径方向内方に突出した円輪状のホイール側フランジ部35とを備える。本例では、ハブ32を、ラジアル玉軸受である支持軸受36により、後述するカム装置13の第1カム37のカム側円筒部38を介して、ハウジング10の大径筒部23に対し回転自在に支持している。すなわち、支持軸受36の内輪39を、大径筒部23に外嵌固定し、ハブ32のホイール側フランジ部35を、支持軸受36の外輪40に、カム側円筒部38を介して外嵌固定している。本例では、ハブ32を支持軸受36により、大径筒部23の周囲に回転自在に支持した状態において、ホイール側円筒部34の軸方向片側部分の内周面が、ハウジング10の外径側案内筒部19の軸方向他側部分の外周面に近接対向している。換言すれば、ホイール側円筒部34の軸方向片側部分と、ハウジング10の外径側案内筒部19の軸方向他側部分とを径方向に重畳させている。なお、支持軸受36の幅方向(軸方向)中央位置は、ウォーム減速機11のウォーム28の中心軸よりも、軸方向に関して他側に位置している。
ギヤ部33は、外周面に、ホイール歯31を有する。ギヤ部33は、ハブ32のホイール側円筒部34の外周面に、合成樹脂を射出成形することにより形成され、ホイール側円筒部34に対し、該ホイール側円筒部34と一体的に回転するように結合固定されている。なお、ハブ32に対するギヤ部33の回転方向の保持力を高めるために、例えば、ホイール側円筒部34の外周面に、周方向に関する凹凸部を形成し、ギヤ部33を射出成形により形成する際に、凹凸部のうちの凹部に、ギヤ部33を構成する合成樹脂の一部を送り込んで、ハブ32とギヤ部33とを回転方向に関して凹凸係合させることもできる。
軸受ガイド12は、段付円筒状で、ハウジング10の外径側案内筒部19と段付円筒部20との間に、軸方向の変位を可能に配置されている。軸受ガイド12は、軸方向片側のガイド側小径筒部41と、軸方向他側のガイド側大径筒部42と、ガイド側小径筒部41の軸方向他側の端部とガイド側大径筒部42の軸方向片側の端部とを接続する、円輪状のガイド側接続部43とを備える。
ガイド側小径筒部41は、ハウジング10の段付円筒部20の小径筒部27に、軸方向の変位を可能に外嵌されている。このために、ガイド側小径筒部41は、軸方向他側部分に、全周にわたって径方向内方に突出した内向凸部44を有し、該内向凸部44の内周面に、径方向外方に凹んだ凹溝45を有する。そして、ガイド側小径筒部41を、小径筒部27に緩く(内向凸部44の内周面と、小径筒部27の外周面との間に隙間を介在させた状態で)外嵌するとともに、凹溝45に装着(係止)したOリング46を、凹溝45の底面と小径筒部27の外周面との間で弾性的に挟持している。
ガイド側大径筒部42は、ハウジング10の外径側案内筒部19に、軸方向の変位を可能に内嵌されている。このために、ガイド側大径筒部42は、軸方向他側部分に、全周にわたって径方向外方に突出した外向凸部47を有し、該外向凸部47の外周面に、径方向内方に凹んだ凹溝48を有する。そして、ガイド側大径筒部42を、外径側案内筒部19に緩く(外向凸部47の外周面と、外径側案内筒部19の内周面との間に隙間を介在させた状態で)内嵌するとともに、凹溝48に装着(係止)したOリング49を、凹溝48の底面と外径側案内筒部19の内周面との間で弾性的に挟持している。
上述のように、本例のクラッチレリーズ装置7では、ガイド側小径筒部41の凹溝45の底面と小径筒部27の外周面との間にOリング46を弾性的に挟持するとともに、ガイド側大径筒部42の凹溝48の底面と外径側案内筒部19の内周面との間にOリング49を弾性的に挟持している。これにより、軸受ガイド12を、ハウジング10の外径側案内筒部19と段付円筒部20との間に、軸方向の変位を可能に配置するとともに、ウォーム減速機11およびカム装置13が配置された空間内の充填したグリースの漏洩を防止している。
カム装置13は、ウォームホイール29と、軸受ガイド12のガイド側接続部43との間に配置され、ウォームホイール29の回転に基づいて、軸方向寸法を拡縮させるものである。カム装置13は、第1カム37と、第2カム50と、複数個(図示の例では3個)の転動体51と、保持器67を備える。
第1カム37は、ウォームホイール29に対して支持固定され、軸方向片側面に、周方向に関する凹凸部である第1カム面52を有する。第1カム面52は、第1カム凹部53と、入力軸2の中心軸に直交する平坦面部54とを、交互に複数ずつ(図示の例では3つずつ)配置してなる。
第1カム凹部53のそれぞれは、円周方向他方側の端部に配置された底部55と、円周方向一方側の端部に配置された第1ストッパ部56と、底部55と第1ストッパ部56とを接続する第1傾斜面部57とを備える。底部55は、カム装置13の軸方向寸法を最も短くした状態で転動体51が接触する。これに対し、第1ストッパ部56は、第1カム凹部53のうちで、軸方向に関して最も片側に位置しており、カム装置13の軸方向寸法を最も長くした状態で転動体51が接触する。本例では、第1ストッパ部56は、径方向から見た形状が単一円弧形の曲面としている。ただし、第1ストッパ部56を、傾斜面と曲面とを組み合わせたり、複数の曲面を組み合わせてなる複合曲面とすることもできる。第1傾斜面部57は、円周方向に関して一方から他方に向かう(図6(A)および図6(B)の左方から右方に向かう)ほど軸方向他側に向かう方向に傾斜しており、傾斜角度は一定である。特に本例では、入力軸2の中心軸に直交する仮想平面に対する第1ストッパ部56の(円周方向一方側の端縁の)傾斜角度θsを、同じく第1傾斜面部57の傾斜角度θcよりも大きくしている(θs>θc)。なお、第1カム凹部53のそれぞれは、第1ストッパ部56の円周方向他方側の端縁と、第1カム凹部53の円周方向他方側に隣接する平坦面部54とを接続し、円周方向一方側を向いた第1段差面79をさらに備える。
第1カム37は、軸方向片側面に第1カム面52を有するカム本体58と、該カム本体58の軸方向他側面の径方向外側部分から軸方向他方に突出したカム側円筒部38と、カム本体58の軸方向他側の端部外周面から径方向外方に突出した円輪状のカム側フランジ部59とを備える。カム本体58の軸方向他側面と、カム側フランジ部59の軸方向他側面とは、入力軸2の中心軸に直交する同一の平面上に存在している。本例では、カム本体58の軸方向他側面を、支持軸受36の外輪40の軸方向片側面に突き当てるとともに、カム側フランジ部59の軸方向他側面を、ウォームホイール29のハブ32のうちのホイール側フランジ部35の軸方向片側面に突き当てた状態で、カム側円筒部38を、外輪40の外周面とホイール側フランジ部35の内周面との間に挟持している。このような構成により、第1カム37は、ウォームホイール29に対し支持固定されている。
なお、ハウジングの外径側案内筒部および軸受ガイドの大径側筒部を配置するスペースを確保できれば、駆動側カムを、カム側フランジ部を省略して、カム本体と、該カム本体の軸方向他側面の径方向中間部から軸方向他方に突出したカム側円筒部とから構成することもできる。この場合、カム本体の軸方向他側面の径方向内側部分を、支持軸受の外輪の軸方向片側面に突き当てるとともに、カム本体の軸方向他側面の径方向外側部分を、ウォームホイールのハブのうちのホイール側フランジ部の軸方向片側面に突き当てる。
本例では、第1カム37をウォームホイール29に支持固定した状態で、底部55が、ウォームホイール29のギヤ部33の軸方向片側の端面33aと軸方向他側の端面33bとの間に位置している。より具体的には、本例では、第1カム面52のうち、第1傾斜面部57の周方向中央位置が、ウォームホイール29のギヤ部33の軸方向片側の端面33aよりも軸方向他側に位置し、平坦面部54が、ウォームホイール29のギヤ部33の軸方向片側の端面33aよりも軸方向片側に位置している。換言すれば、本例では、第1カム面52のうちの軸方向他側部分が、ウォームホイール29の外周面に配置されたホイール歯31と径方向に重畳している。ただし、第1カム面52全体を、ウォームホイール29の外周面に配置されたホイール歯31と径方向に重畳させることもできる。要するに、ウォームホイール29の軸方向片側面の径方向内側部分に、ウォームホイール29の軸方向片側面と内周面とに開口する、断面矩形の切り欠き部60を全周にわたって設け、該切り欠き部60の内径側に、第1カム面52の少なくとも一部が配置されるようにしている。
第2カム50は、第1カム37の第1カム面52と軸方向に対向する軸方向他側面に、周方向に関する凹凸部である第2カム面61を有し、軸方向片側面を、軸受ガイド12のガイド側接続部43の軸方向他側面の径方向外側部分に突き当てている。第2カム面61は、第2カム凹部62と、入力軸2の中心軸に直交する平坦面部63とを、交互に複数ずつ(図示の例では3つずつ)配置してなる。
第2カム凹部62のそれぞれは、円周方向一方側の端部に配置された底部64と、円周方向他方側の端部に配置された第2ストッパ部65と、底部64と第2ストッパ部65とを接続する第2傾斜面部66とを備える。底部64は、カム装置13の軸方向寸法を最も短くした状態で転動体51が接触する。これに対し、第2ストッパ部65は、第2カム凹部62のうちで、軸方向に関して最も他側に位置しており、カム装置13の軸方向寸法を最も長くした状態で転動体51が接触する。本例では、第2ストッパ部65は、径方向から見た形状が単一円弧形の曲面としている。ただし、第2ストッパ部65を、傾斜面と曲面とを組み合わせたり、複数の曲面を組み合わせてなる複合曲面とすることもできる。第2傾斜面部66は、円周方向に関して他方から一方に向かう(図6(A)および図6(B)の右方から左方に向かう)ほど軸方向片側に向かう方向に傾斜しており、傾斜角度は一定である。特に本例では、入力軸2の中心軸に直交する仮想平面に対する第2ストッパ部65の(円周方向他方側の端縁の)傾斜角度θsを、同じく第2傾斜面部66の傾斜角度θcよりも大きくしている(θs>θc)。なお、第2カム凹部62のそれぞれは、第2ストッパ部65の円周方向一方側の端縁と、第2カム凹部62の円周方向一方側に隣接する平坦面部63とを接続し、円周方向他方側を向いた第2段差面80をさらに備える。
転動体51は、円柱状のローラであって、第1カム凹部53と第2カム凹部62との間に、それぞれの中心軸を放射方向に向けるようにして、保持器67により保持された状態で配置されている。
レリーズ軸受14は、外周面に内輪軌道を有する内輪68と、内周面に外輪軌道を有する外輪69と、外輪軌道と内輪軌道との間に保持器70により保持された状態で転動自在に設けられた複数個の玉71とを備えた、玉軸受である。図示の例では、内輪軌道として深溝型のものを、外輪軌道としてアンギュラ型のものを、それぞれ使用している。このため、レリーズ軸受14は、ラジアル荷重に加えて、スラスト荷重(外輪69に加わる図1、図2および図3の右向きのスラスト荷重)を支承可能である。このようなレリーズ軸受14のうち、内輪68は、軸受ガイド12のガイド側小径筒部41に外嵌固定されている。このため、内輪68(レリーズ軸受14全体)は、ハウジング10の小径筒部27に対し、相対回転不能に、かつ、軸方向に関する相対変位を可能に支持されている。これに対し、外輪69は、円輪状の押圧板72を介して、ダイヤフラムばね6の中央部に接触している。このため、外輪69は、ダイヤフラムばね6と一体的に回転する。
トルクセンサ15は、入力軸2に入力された実トルクを測定するためのもので、全体が円環状に構成され、入力軸2の周囲に配置されている。具体的には、本例では、トルクセンサ15は、ハウジング10の中径筒部25の内周面に内嵌するとともに、軸方向他側面を、ハウジング10の大径筒部23の内周面に圧入されたカラー73により抑え付けることにより、入力軸2の周囲に支持されている。また、トルクセンサ15は、その検出部を、入力軸2の被検出部である外周面に近接対向させている。本例では、トルクセンサ15は、ブリッジ回路を構成する複数のコイル層を備えた磁歪式のトルクセンサであり、入力軸2により伝達しているトルクの大きさおよび方向を、入力軸2に生じる逆磁歪効果を利用して測定する。このため、入力軸2は、被検出部を含む一部または全部が、磁歪特性を有する材料により造られている。
ただし、トルクセンサ15としては、磁歪式のものに限らず、例えば2点間のねじれ位相のずれを検出する位相差式などの各種方式のものを採用できる。位相差式のトルクセンサを利用する場合には、入力軸2のうち軸方向に離隔した2個所位置に1対のエンコーダを取り付け、かつ、それぞれの検出部をエンコーダの被検出部に対向させるように1対のトルクセンサをハウジング10などに取り付ける。そして、1対のトルクセンサの出力信号の位相差に基づいて入力軸2に入力されるトルクの大きさおよび方向を検出する。また、トルクセンサ15の取付位置に関しても、中径筒部25の内周面に限定されず、例えば段付円筒部20の大径筒部23やその他の部分に対して取り付けることもできる。
また、本例のクラッチレリーズ装置7は、第2カム50を軸方向他側に向けて弾性的に付勢する付勢ばね74をさらに備える。このために、第2カム50を、カム装置13の内径側に配置したガイド筒75の円筒部76の軸方向片側の端部に、圧入や溶接により相対回転不能に外嵌固定している。また、ガイド筒75の円筒部76の軸方向他側の端部から径方向内方に突出した内向フランジ部77の内周面に形成された雌スプライン部を、ハウジング10の中径筒部25の外周面に形成された雄スプライン部に対し、スプライン係合させている。そして、軸受ガイド12のガイド側接続部43の軸方向他側面と、ガイド筒75の内向フランジ部77の軸方向片側面である段部78との間に、付勢ばね74を弾性的に挟持している。
本例では、付勢ばね74により、第2カム50を軸方向他側に向けて弾性的に付勢することにより、第1カム凹部53と転動体51と第2カム凹部62との間にがたつき(位相ずれ)が生じることを防止できて、カム装置13の機能を保証することができる。また、レリーズ軸受14を、ダイヤフラムばね6に対して常に押し付けることができるため、レリーズ軸受14およびクラッチレリーズ装置7に、衝撃荷重が入力されることを防止することもできる。なお、付勢ばね74による付勢力の大きさは、好ましくは、ダイヤフラムばね6を変形(または移動)させない程度とする。また、本例では、付勢ばね74を、カム装置13の径方向内側に配置しているため、付勢ばね74を設けた場合にも、クラッチレリーズ装置7の軸方向全長が大きくなることを防止できる。
なお、本例では、付勢ばね74として、波形に湾曲した帯状の金属素材を、らせん状に巻き回してなる、コイルドウェーブスプリングを使用している。したがって、付勢ばね74の軸方向寸法を抑えつつ、該付勢ばね74の弾力を十分確保することができる。
本例のクラッチ装置1の動きについて説明する。
まず、クラッチ装置1を、接続状態から切断状態に切り換える際には、電動モータ9の出力軸を回転駆動することにより、ウォーム減速機11のウォーム28を介して、ウォームホイール29を所定方向に回転させる。これにより、図6(A)→図6(B)に示すように、カム装置13の第1カム37を、第2カム50に対して所定方向(図6(A)および図6(B)の右方向)に相対回転させ、転動体51を、第1カム凹部53および第2カム凹部62のうちで、軸方向に関する高さの高い側に向けてそれぞれ転動させる。これにより、第2カム50を、軸方向に関して第1カム37から離れる方向(軸方向片側)に並進移動させる。本例では、第1カム凹部53の第1傾斜面部57および第2カム凹部62の第2傾斜面部66の傾斜角度をそれぞれ一定としているため、第1カム37に対する第2カム50の軸方向に関する相対変位量(並進量)が、第1カム37に対する第2カム50の相対回転量に比例する。このようにして、第2カム50を軸方向片側に向けて並進移動させることにより、軸受ガイド12およびレリーズ軸受14を介して、押圧板72により、ダイヤフラムばね6の中央部を軸方向片側に向けて押圧する。この結果、プレッシャプレート5がクラッチディスク4から退避する方向に移動し、フライホイール3とクラッチディスク4との接続が断たれる。
これに対し、クラッチ装置1を、切断状態から接続状態に切り換える際には、電動モータ9の出力軸を、クラッチ装置1を切断状態に切り換える際とは逆方向に回転駆動することにより、ウォームホイール29を所定方向とは逆方向(図6(A)および図6(B)の左方向)に回転させる。これにより、図6(B)→図6(A)に示すように、第1カム37を、第2カム50に対して所定方向と逆方向(図6(A)および図6(B)の右方向)に相対回転させ、転動体51を、第1カム凹部53および第2カム凹部62のうちで、軸方向に関する高さの低い側に向けてそれぞれ転動させる。これにより、第2カム50を、軸方向に関して第1カム37に近づく方向(軸方向他側)に並進移動させる。このようにして、第2カム50を軸方向他側に向けて並進移動させることで、押圧板72により、ダイヤフラムばね6の中央部を軸方向片側に向けて押圧する押圧力を減少させる。この押圧力がダイヤフラムばね6の発揮する弾力よりも小さくなると、この弾力に基づいて、軸受ガイド12、レリーズ軸受14および押圧板72が軸方向他側に移動する(押し戻される)とともに、プレッシャプレート5がクラッチディスク4に押し付けられ、フライホイール3とクラッチディスク4とが接続される。
本例のクラッチ装置1では、上述のような電動式のクラッチレリーズ装置7を使用しているため、クラッチ制御の自動化を図れるだけでなく、装置全体の軽量化および小型化を図るとともに、油漏れを防止することができる。
すなわち、本例のクラッチレリーズ装置7は、電気的に作動する電動モータ9によりカム装置13を駆動することで、レリーズ軸受14を軸方向に並進移動させ、ダイヤフラムばね6を軸方向に押圧し、クラッチ装置1の断接状態を切り換えることができる。要するに、電気的にクラッチ装置1の断接制御を行えるため、クラッチ装置1の断接制御の自動化を図ることができる。このため、イージードライブ化を図れるとともに、コースティング走行を積極的に採用することによる低燃費化(燃費向上)を実現することもできる。さらに、本例のクラッチレリーズ装置7によれば、特開2008−101643号公報および特開2010−91043号公報に記載された構造で必要であった、オイルリザーバ、複雑な油圧配管、および、シリンダ(レリーズシリンダ、コンセントリックスレーブシリンダ)などの油圧関連部品を不要にできるとともに、レリーズフォークを不要にできる。したがって、クラッチレリーズ装置7全体の軽量化および小型化を図れる。しかも、本例では、クラッチ装置1の断接制御(係脱制御)を、電気的に行え、油を使用しなくて済むため、油漏れの問題が生じることも防止できる。
また、本例のクラッチレリーズ装置7では、電動モータ9の回転トルクを、歯車伝達機構およびウォーム減速機11により増大してから、第1カム37に伝達するようにしている。このため、電動モータ9として、出力トルクが小さく、かつ、小型のものを使用することができて、この面からも、クラッチレリーズ装置7全体としての小型化および軽量化を図れる。さらに、電動モータ9の設置方向に関する自由度を高めることもできて、設置スペースの小型化(省スペース化)を図ることもできる。
なお、本例のクラッチレリーズ装置7では、ウォーム減速機11として、不可逆性(セルフロック機能)を有するものを使用するとともに、電動モータ9として、出力軸を両方向に回転可能なものを使用する。これにより、クラッチ切断状態や半クラッチ状態を、電動モータ9に通電することなく、保持できるようにしている。ただし、本発明のクラッチレリーズ装置を実施する場合、ウォーム減速機として、可逆性を有するものを使用するとともに、電動モータとして、出力軸を一方向にのみ回転可能なものを使用することもできる。
さらに、本例では、第1カム凹部53の円周方向一方側の端部に、第1傾斜面部57の傾斜角度θcよりも大きな傾斜角度θsを有する第1ストッパ部56を配置するとともに、第2カム凹部62の円周方向他方側の端部に、第2傾斜面部66の傾斜角度θcよりも大きな傾斜角度θsを有する第2ストッパ部65を配置している。このため、転動体51が、第1カム凹部53から平坦面部54に乗り上げて、円周方向に隣接する第1カム凹部53の底部55に脱落したり、第2カム凹部62から平坦面部63に乗り上げて、円周方向に隣接する第2カム凹部62の底部64に脱落したりすることを防止できる。したがって、クラッチ装置1の断接状態が突然切り換わる、具体的には、切断状態から接続状態に突然切り換わることを防止でき、エンジンが停止するのを防止することができる。
本例では、クラッチ装置1の切断状態で、ダイヤフラムばね6からクラッチレリーズ装置7に作用するスラスト荷重(レリーズ荷重)が最小となった場合であって、かつ、電動モータ9がストールトルク(電動モータ9が瞬間的に発揮することができる最大トルク)を出力した場合にも、転動体51が、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65を乗り越えることがないように、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65の傾斜角度θsを規制している。第1ストッパ部56および第2ストッパ部65の傾斜角度θsの具体的な設定方法について、図7および図8を参照しつつ説明する。
図7の横軸は、ダイヤフラムばね6に生じるたわみ量の大きさを示しており、図7の縦軸は、荷重の大きさを表している。また、図7中に、破線αは、ダイヤフラムばね6単品を、自由状態からたわませた際に発生する荷重(ダイヤフラム荷重)の変化を示している。これに対し、図7中の実線βは、クラッチディスク4が新品の状態で、レリーズ軸受14をクラッチ接続位置Xaからクラッチ切断位置Xbに向けて軸方向に並進移動させた(ダイヤフラムばね6のたわみ量を増大させた)際に生じる、レリーズ荷重の変化を示している。また、図4中の鎖線γは、クラッチディスク4が使用限度まで摩耗した状態で、レリーズ軸受14をクラッチ接続位置Xcからクラッチ切断位置Xdに向けて軸方向に並進移動させた(ダイヤフラムばね6のたわみ量を増大させた)際に生じる、レリーズ荷重の変化を示している。また、図8には、自由状態でのダイヤフラムばね6を破線で示しており、クラッチディスク4が新品の状態でのダイヤフラムばね6を実線で示しており、クラッチディスク4が使用限度まで摩耗した状態でのダイヤフラムばね6を鎖線で示している。
図7から分かるように、クラッチ装置1の切断状態におけるレリーズ荷重は、クラッチディスク4の摩耗量にかかわらず、ダイヤフラムばね6のたわみ量が所定量(図7の例では23mm程度)に達するまでは一旦減少し、その後増大する。
ここで、駆動側カムへの入力トルクをTとし、カム面の1回転当たり軸方向移動距離をLとすると、カム装置が発生する軸力は、次の(1)式で表される。
F=2πT/L ・・・(1)
距離Lは、カム面の半径をrとし、カム面の中心軸に対する傾斜角度をφとすると、次の(2)式で表される。
L=2πr・tanφ ・・・(2)
(1)式に(2)式を代入すると、次の(3)式が得られる。
F=T/(r・tanφ) ・・・(3)
本例のカム装置13では、図7中にZで示すように、クラッチ装置1の切断状態でのレリーズ荷重が最小となった場合に、仮に、電動モータ9がストールトルクを出力した場合でも、転動体51が、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65を乗り越えることがないように、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65の傾斜角度θsを規制している。すなわち、電動モータ9がストールトルクを出力した場合に、歯車伝達機構およびウォーム減速機11により増幅され第1カム37に入力されるトルクをTmaxとし、クラッチ装置1の切断状態でのレリーズ荷重の最小値をFminとした場合に、次の(4)式の関係を満たすようにしている。
Fmin>Tmax/(rs・tanθs) ・・・(4)
なお、(4)式中のrsは、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65の半径(第1カム37および第2カム50の中心軸と、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65の径方向中央位置との距離)を表している。
(4)式を変形すると、次の(5)式が得られる。
tanθs>Tmax/(rs・Fmin) ・・・(5)
(5)式をさらに変形すると、次の(6)式が得られる。
θs>tan−1{Tmax/(rs・Fmin)} ・・・(6)
本例では、(6)式の関係を満たすように、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65の傾斜角度θsを規制している。
本例のように、エンジンとトランスミッションとの間に組み込んだクラッチ装置1のクラッチレリーズ装置7では、例えば、第1カム凹部53の第1傾斜面部57および第2カム凹部62の第2傾斜面部66の傾斜角度θcを、1度以上89度以下とし、第1ストッパ部56および第2ストッパ部65の傾斜角度θsを、1度以上89度以下とする。
また、本例のカム装置13によれば、第1カム37を第2カム50に対して、繰り返し往復回転させることにより、転動体51の第1カム凹部53の底部55からの乗り上げ量と、第2カム凹部62の底部64からの乗り上げ量とにずれが生じた場合でも、このずれを修正(解消)することができる。すなわち、例えば、転動体51が第1ストッパ部56に接触した状態では、転動体51は、第1カム凹部53を円周方向他方側に向けて乗り上げるのが阻止されるのに対し、第2カム凹部62を円周方向一方側に向けて滑るようにして乗り上げる。一方、転動体51が第2ストッパ部65に接触した状態では、転動体51は、第2カム凹部62を円周方向一方側に向けて乗り上げるのが阻止されるのに対し、第1カム凹部53を円周方向他方側に向けて滑るようにして乗り上げる。このようにして、転動体51の第1カム凹部53の底部55からの乗り上げ量と、第2カム凹部62の底部64からの乗り上げ量とのずれを修正することができる。
また、本例のクラッチレリーズ装置7では、ウォームホイール29のハブ32を、ホイール側円筒部34と、該ホイール側円筒部34の軸方向他側部分から径方向内方に突出したホイール側フランジ部35とからなるものとしている。これにより、カム本体58の軸方向片側面に形成された第1カム面52の底部55を、ウォームホイール29のギヤ部33の軸方向片側の端面33aよりも軸方向他側に位置させている。さらに、これに合わせて、ハウジング10のうち、軸受ガイド12のガイド側大径筒部42を軸方向に関する相対変位を可能に内嵌する外径側案内筒部19の軸方向他側部分を、ウォームホイール29のホイール側円筒部34の軸方向片側部分と径方向に重畳させている。
したがって、本例では、クラッチレリーズ装置7全体としての軸方向寸法の増大を抑えつつ、ウォームホイール29のホイール歯31の軸方向に関する幅寸法を確保するとともに、第1カム37に対する第2カム50の軸方向に関するストローク(第1カム37に対して第2カム50が軸方向に相対変位可能な量)を十分に確保することができる。このため、クラッチ装置1を、エンジンルーム内のトランスミッションとエンジンとの間部分のように、設置スペースの軸方向寸法が限られる部分に配置した場合であっても、ホイール歯31の幅寸法を確保できるので、ウォーム28とウォームホイール29との間で大きなトルクを伝達することができ、かつ、カム装置13の軸方向寸法の拡縮量を十分確保することができて、クラッチ締結力を十分大きくすることができる。
また、本例のクラッチレリーズ装置7は、入力軸2に入力された実トルクを検出可能なトルクセンサ15を備える。このため、クラッチ装置1の断接制御を高い精度で行うことができる。この理由について、以下で説明する。
電動モータを備えるクラッチレリーズ装置において、クラッチ装置の断接制御を行う場合、レリーズ軸受の軸方向位置(ストローク)を把握するために、レリーズ軸受の軸方向位置を直接測定するための位置センサや、レリーズ軸受の軸方向位置を電動モータの回転数から推定するための回転センサを、別途設けることが考えられる。
しかしながら、クラッチ装置のダイヤフラムばねの荷重とたわみ量との関係には、ヒステリシスが存在するため、ダイヤフラムばねのたわみ量に影響するレリーズ軸受の軸方向位置と、トランスミッションの入力軸に入力される実トルクとの間には、図9に示すような関係がある。このため、レリーズ軸受の軸方向位置に関する情報をクラッチ装置の断接制御に利用した場合、クラッチ装置の断接制御を精度良く実行することが難しい場合がある。つまり、クラッチ装置を、クラッチ接続状態と、半クラッチ状態と、クラッチ切断状態との間で適切に切り替えることが難しい場合がある。さらに、回転センサを利用する場合には、電動モータの体格が大きくなり、電動モータをミッションケース内に収めることが難しい場合がある。
さらに、クラッチ装置1の断接制御を自動で行う車両では、ECU(Electronic Control Unit)により、アクセルペダルの踏み込み量や車速情報などから車両の走行状態や運転者の操作状況を判定し、予め設定したクラッチ締結特性をもとに、レリーズ軸受の軸方向位置を制御し、エンジンの出力制御やエンスト防止制御を行うことが考えられる。ただし、図9に示したように、レリーズ軸受の軸方向位置からトルクを一義的に求められないため、トルクの推定値にある程度のマージンを加えた値を利用して、エンジンの出力制御やエンスト防止制御を行う必要がある。このため、エンジンの出力制御やエンスト防止制御に関して、十分に精度の高い制御を行うことが難しくなる。
これに対し、本例のクラッチ装置1では、図示しないECUにより、トルクセンサ15によって検出した入力軸2の実トルクに基づき、クラッチ装置1の断接状態を目標とする状態に調節すべく、電動モータ9の出力軸を回転駆動する。これにより、レリーズ軸受14の軸方向に関する変位量を調節し、クラッチ装置1を、クラッチ接続状態と、半クラッチ状態と、クラッチ切断状態との間で相互に切り替えるようにしている。したがって、本例のクラッチ装置1によれば、レリーズ軸受14の軸方向位置に基づきクラッチ装置1を制御する場合に比べて、クラッチ装置1の断接制御を精度良く行うことができる。また、本例では、レリーズ軸受14の軸方向位置を検出するための位置センサや回転センサを不要にすることもできるため、コスト低減を図れるとともに、クラッチレリーズ装置7の装置全体の小型化および軽量化を図ることもできる。さらに、ECUは、実トルク情報からクラッチ装置1の半クラッチ位置を学習することもできる。
また、ECUは、トルクセンサ15により検出した実トルク情報に基づいて、エンジンの出力制御を行う。具体的には、ECUは、車両の速度を検出する車速センサの出力信号、および、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサの出力信号などに、トルクセンサ15により検出した実トルク情報を加えて、エンジンを制御する。つまり、ECUは、入力軸2に入力されているトルクの大きさを考慮して、エンジンが備える燃料噴射装置およびスロットルバルブなどを制御し、燃料の噴射量および噴射のタイミング、並びに、気筒内に供給する空気量を調整する。例えば、ECUは、入力軸に入力されているトルクが十分に小さい場合に、燃料の噴射量を少なく抑える。このように、本例では、入力軸2に入力される実トルク情報を利用して、エンジンの出力制御を行うため、トルクの推定値にマージンを加えた値を利用して制御する場合に比べて、精度の高い制御を行うことができる。したがって、エンジンの燃費を十分に向上させることができる。
しかも、ECUは、上述したクラッチ装置1の断接制御(レリーズ軸受14のストローク制御)とエンジンの出力制御とを協調して行い、エンスト防止制御を行う。つまり、ECUは、クラッチ装置1の断接制御とエンジンの出力制御とを、共通の実トルク情報を利用して制御することで、エンジンの回転数とクラッチ装置1の断接状態とを関連付けて制御し、急激なトルク変動が生じないようにして、エンストの防止を図る。したがって、エンスト防止制御に関しても、精度の高い制御を行うことができる。
なお、本例のクラッチ装置1を搭載した車両によれば、所定の条件を満たした場合に車輪に自動的に制動力を付与する自動ブレーキ制御を実行した場合に、前記車両を早期に停止させることができる。すなわち、前記車両は、車速センサの出力信号や、前記車両の周囲の状況を検知するためのレーダやカメラなどの障害物検出センサの出力信号に基づいて、前記車両が障害物に衝突する可能性があると判定した場合には、運転者によるブレーキペダルの操作がなくても、ECUによる制御信号に基づき、図示しないブレーキアクチュエータを作動させて、駆動輪を含む車輪に自動的に制動力を付与する自動ブレーキ制御を行う。特に本例のクラッチ装置1を搭載した車両では、このような自動ブレーキ制御とクラッチ装置1の断接制御とを協調して行う。具体的には、ECUは、緊急ブレーキ時又はパニックブレーキ時など、自動ブレーキ制御を実行する際に、レリーズ軸受14のストローク制御を同時に行い、クラッチ装置1をクラッチ切断状態に切り替える。これにより、エンジンの駆動力が駆動輪に伝達されるのを防止できるため、前記車両を早期に停止させることが可能になる。
本例では、本発明のクラッチレリーズ装置を、プッシュ式のクラッチ装置に組み込んだ場合について説明したが、本発明のクラッチレリーズ装置は、レリーズ軸受を、ダイヤフラムばねを押圧する力が大きくなる方向に移動させることで、クラッチを接続し、反対に押圧する力が小さくなる方向に移動させることで、クラッチの接続を断つ、プル式のクラッチ装置に組み込むこともできる。また、本例では、本発明のクラッチレリーズ装置を組み込んだクラッチ装置を、エンジンとトランスミッションの間に組み込んだ構造について説明したが、例えば、トランスミッションと駆動輪との間に組み込むこともできる。
また、本発明のカム装置は、クラッチレリーズ装置に限らず、各種機械装置に組み込んで使用することができる。