JP2020111800A - ステンレス鋼、ステンレス熱延鋼板及びステンレス熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

ステンレス鋼、ステンレス熱延鋼板及びステンレス熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強度及び耐食性が要求される用途に使用される場合において、優れた強度及び耐食性を有し、かつ加工性に優れ加工し易いステンレス鋼を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.001〜0.100%、Si:0.01〜5.00%、Mn:0.01〜2.00%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、Cr:9.0〜30.0%、Ni:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜1.00%、Al:0.010〜5.00%、N:0.001〜0.050%、B:0.0001〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、かつ上記Si量、Ti量及びAl量(質量%)が、2Al+Si−10Ti≧0を満たす化学成分を備え、圧延方向の断面組織の粒度番号が6.0以上9.0以下であることを特徴とするステンレス鋼を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、ステンレス鋼、ステンレス熱延鋼板及びステンレス熱延鋼板の製造方法に関する。
強度と耐食性の要求される用途としては、例えば、建材や一般家具家電用途、燃料電池、自動車排気系部品、その他自動車用部品等が挙げられる。自動車排気系部品の例としては、例えば、自動車マフラーやエキゾーストマニホールド、センターパイプや触媒コンバーター、EGRクーラー、フレキシブルパイプ、フランジ等が挙げられる。その他自動車用部品としては、例えば、モール、燃料給油管、電池部品(ケース、セル、パック、モジュール等)、締結部品(クランプ、Vバンド等)等が挙げられる。
近年、ステンレス鋼の高耐食化の要求はさらに高まっている。例えば、自動車排気系部品の腐食の主な原因は、排気ガスが溶解した結露水である排ガス凝縮水による排気系部品内部からの腐食である。最近はこの内部からの腐食に対する耐食性のみならず、雨水や泥水、海風等が原因の排気系部品外側の発銹に対する耐食性も要求される。
実際、納車時や点検時に車体下側から自動車を確認した際、排気系部品外側の発銹が確認されることがある。この発銹により、使用者からクレームを受ける事例が増えている。したがって、排気系部品外側の発銹に対する対策が必要となっている。
自動車排気系部品に使用されるステンレス鋼は、主に、比較的Cr含有量が低いフェライト系ステンレス鋼である。Cr含有量が低いフェライト系ステンレス鋼は、排気系部品外側の発銹に対する耐食性は高くない。しかし、耐食性を高めるために、Cr含有量が高いフェライト系ステンレス鋼を使用することはコストアップに繋がる。そのため、Crより安価な元素でステンレス鋼の耐食性を高めるニーズがある。
さらに自動車排気系部品は常に軽量化が求められている。そのため自動車排気系部品に使用されるステンレス鋼は軽量化のために薄肉化されていく傾向にある。
ここで既存部品に使用されているステンレス鋼を薄肉化するためには、その薄い板厚でも構造体の形状を担保するほどの強度や、薄い板厚でも前述の環境で腐食による板厚貫通が発生しない耐食性など様々な性能が求められる。さらに、この様々な性質を満たすために様々な合金元素を添加すると、鋼板の硬質化や伸びの低下が起こり実部品の形状に加工し難くなってしまう。
特許文献1には、質量%で、C:0.015%以下、Si:0.10〜0.25%、Mn:0.10〜0.30%、P:0.040%以下、S:0.020%以下、Al:0.001〜0.20%、N:0.015%以下、Cr:15.0〜20.0%、Ni:0.5%以下、Mo:1.0〜2.5%、V:0.2%以下、Ti:3×(C+N)〜0.25%、Nb:0.3〜1.0%を含有し、さらに前記C,Nは、C+N:0.020%以下の関係を満たし、さらに前記Si,Mnは、Si≦Mnの関係を満たし、残部Feおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼の板厚が1〜3mmであり、かつ、950℃での0.2%耐力が15MPa以上、常温での平均伸び値が30%以上、平均r値(平均ランクフォード値)が1.3以上であることを特徴とする、耐熱性および加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。この文献では、成分元素の最適化と製造プロセスの構築を行うことで耐熱性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供するとしているが、Al、Siの添加量が低い。また耐食性に関する記載がない。
特許文献2には、質量%にて、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Cr:10〜20%、Cu:0.52〜3%、Ti:0.01〜0.5%、B:0.0002〜0.0030%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均r値≧1.3であることを特徴とする耐熱性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。この文献では、Ti−Cu−B複合添加により析出物微細化を活用し、安価で耐熱性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供するとしているが、耐食性に関する記載がない。
特許文献3には、C:0.015質量%以下,Si:0.5質量%以下,Cr:11.0〜25.0質量%,N:0.020質量%以下,Ti:0.05〜0.50質量%,Nb:0.10〜0.50質量%,B:0.0100質量%以下を含むフェライト系ステンレス鋼であって、一軸引張りで加工したときの破断伸びが30%以上,ランクフォード値(r値)のrmin値が1.3以上であることを特徴とする加工性及び耐食性に優れたディーゼル微粒子除去装置構成部品用フェライト系ステンレス鋼板が開示されている。この文献では、成分組成を細かく調整し、かつ引張り特性を限定しているので、厳しい条件の成形加工が可能で、長期にわたって耐食性を保持でき、しかも耐衝撃性にも優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供できるとしているが、強度に関して記載されていない。
特許文献4には、質量%で、C:0.001〜0.015%、N:0.002〜0.02%、C+N:0.003〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:13〜20%、Al:1.5〜2.5%未満、Cu:0.5%以下、Ti:3×(C+N)〜20×(C+N)%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、ミクロ組織において結晶粒度番号が7〜10であり、圧延方向に対して、0°、45°、90°方向の伸びの最小値Elmin[%]、及び、r値の最小値rminが、それぞれ、Elmin≧25%、及び、rmin≧1.0を満足することを特徴とする加工性、耐酸化性に優れたAl含有耐熱フェライト系ステンレス鋼板が開示されている。この文献では、Al含有フェライト系ステンレス鋼の加工性と耐酸化性について詳細な検討を行い、成分及び製造プロセスを最適化しているが、Al、Siの添加量が低く、且つ耐食性に関する記述がない。
特許文献5には、mass%で、C:0.015%以下、Si:0.4〜1.0%、Mn:1.0%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Cr:12%以上16%未満、N:0.015%以下、Nb:0.3〜0.65%、Ti:0.15%以下、Mo:0.1%以下、W:0.1%以下、Cu:1.0〜2.5%、Al:0.2〜1.0%を含有し、かつSi≧Alを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐熱性と加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼が開示されている。この文献では、Nb,CuおよびAlを上記適正範囲に制御することによって、MoやWを添加しなくても、SUS444と同等以上の耐熱性(熱疲労特性、耐酸化性)を得ているが、Al、Siの添加量が低く、Cuが多量に添加されている。また耐食性に関する記述がない。
特許文献6には、質量%で、C:0.020%以下、Si:3.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Cr:10〜25%、N:0.020%以下、Nb:0.005〜0.15%、Al:0.20〜3.0%、Ti:5×(C%+N%)〜0.5%、Mo:0.1%以下、W:0.1%以下、Cu:0.55〜2.0%、B:0.0002〜0.0050%、Ni:0.05〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼が開示されている。この文献では、適量のNiを含有することで耐酸化性を改善できること、適量のAlを含有することで高温疲労特性が向上することを見出しているが、Cuが多量に添加されている。また耐食性に関する記述がない。
特許文献7には、質量%で、C:0.020%以下、Si:3.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0%以上16.0%未満、N:0.020%以下、Al:1.4〜4.0%、Ti:0.15%超0.5%以下、Ni:0.05〜0.5%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Al%/Cr%≧0.14を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼が開示されている。この文献では、Al、Ti、CrおよびNiの最適な含有量範囲を見出し、熱疲労特性と耐酸化性を向上させているが、耐食性に関する記述がない。またNiが添加されており高コストとなっている。
特許文献8には、mass%で、C:0.020%以下、Si:0.1超〜3.0%、Mn:2.0%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、Al:0.05〜6.0%、N:0.020%以下、Cr:12〜30%、Cu:0.4〜4.0%、Nb:0.02〜1.0%、Ti:0.01〜1.0%、Mo:0.1〜6.0%、Co:0.01〜3.0%、Ni:0.02〜1.0%、かつ、Si+Al≧0.50を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼が開示されている。この文献では、Nb、Mo、Cuを複合添加することによって幅広い温度域で高温強度・熱疲労特性を向上させ、さらにAlを添加することによって優れた耐酸化性・高温強度を示すことを見出しているが、CuやMo、Co、Niを多量に添加している。また耐食性に関する記述がない。
特許文献9には、質量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:0.05%以上、3.0%以下、Mn:0.05%以上、2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Cr:12.0%以上、25.0%以下、Ni:0.01%以上、2.0%以下、Al:0.25%超、6.0%以下、V:0.01%以上、0.20%以下、B:0.0002%以上、0.0050%以下を含有し、質量%にて更に、Nb:1.0%以下、Ti:0.40%以下の1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0、Nb+Ti≧0.05及びt+0.42logAl―0.54≧0を満たす組成及び板厚を有するステンレス鋼板の表面に、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを有することを特徴とする耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板が開示されている。この文献では、Nb又はTiが一定量以上含まれる条件下において、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成し、結果としてスケールが薄くなっていることが、耐浸炭性及び耐酸化性を改善し、更に、長期使用においてこのスケールを維持するためにはある程度の板厚を確保することも必要であることを見出しているが、Niが添加されており高コストとなっている。また耐食性に関する記述がない。
特許第4312653号公報 特許第5546911号公報 特開2005−171338号公報 特開2004−307918号公報 特開2012−102397号公報 特開2013−100595号公報 国際公開第2014/050016号 特開2015−96648号公報 特開2016−204709号公報
従来の技術では、強度及び耐食性が要求される用途に使用されるステンレス鋼において、これらの特性を同時に満足することは難しかった。
本発明は、強度及び耐食性が要求される用途に使用される場合において、優れた強度及び耐食性を有し、かつ加工性に優れ加工し易いステンレス鋼を提供することを課題とする。
また、本発明は、優れた強度及び耐食性を有し、かつ加工性に優れたステンレス鋼を得るのに好適なステンレス熱延鋼板及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前述の課題を解決すべく、種々のCr含有量かつ種々の元素を含有した鋼板を作製し、耐食性向上効果が広く知られているCr、Ni、Mo、Cu以外の元素でステンレス鋼の耐食性を向上できないか検討した。その結果、特にAl、Siが耐食性を向上させることを知見した。特に2Al+Si−10Ti≧0を満たすことで耐食性及び強度が大きく改善することを見出した。さらに製造工程を最適化することで熱延鋼板の組織を最適化し製造可能な鋼となり、さらに耐食性と強度を向上させたまま、結晶粒度や硬さを改善し伸びやr値の改善に繋がり、適用可能分野を大幅に拡大できることを知見した。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C:0.001〜0.100%、
Si:0.01〜5.00%、
Mn:0.01〜2.00%、
P:0.050%以下、
S:0.0100%以下、
Cr:9.0〜30.0%、
Ni:0.01〜0.50%、
Ti:0.01〜1.00%、
Al:0.010〜5.00%、
N:0.001〜0.050%、
B:0.0001〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、かつ上記Si量、Ti量及びAl量(質量%)が、2Al+Si−10Ti≧0を満たす化学成分を備え、圧延方向の断面組織の粒度番号が6.0以上9.0以下であることを特徴とするステンレス鋼。
[2] さらに質量%で、
Mo:0.01〜3.00%、
Sn:0.01〜3.00%、
Cu:0.01〜3.00%、
Nb:0.001〜1.000%、
W:0.001〜1.000%、
V:0.001〜1.000%、
Sb:0.001〜0.100%、
Co:0.001〜0.500%、
Ca:0.0001〜0.0050%、
Mg:0.0001〜0.0050%、
Zr:0.0001〜0.0300%、
Ga:0.0001〜0.0100%、
Ta:0.001〜0.050%、
REM:0.001〜0.100%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載のステンレス鋼。
[3] ビッカース硬さHV1が160以上200以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のステンレス鋼。
[4] 0.2%耐力が250MPa以上、引張強度が400MPa以上であることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載のステンレス鋼。
[5] 全伸びが27%以上、平均r値が1.0以上であることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載のステンレス鋼。
[6] 上記[1]または[2]に記載の化学成分を有し、
板厚が2.0〜6.0mmであり、
材料温度25℃でのシャルピー衝撃値が10J/cm以上であることを特徴とするステンレス熱延鋼板。
[7] 上記[1]または[2]に記載の化学成分を備えた鋼片を、板厚が2.0〜6.0mmになるまで圧延する際の、32mmまで圧延した際の温度を900℃以上とし、最終圧延温度を800℃以上とすることを特徴とする[6]に記載のステンレス熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐食性及び強度が要求される用途に使用される場合において、優れた耐食性及び強度を有するステンレス鋼を提供することができる。また、本発明のステンレス鋼は、加工性にも優れたものになる。
また、本発明は、優れた強度及び耐食性を有し、かつ加工性に優れたステンレス鋼を得るのに好適なステンレス熱延鋼板及びその製造方法を提供できる。
耐食性及び強度が要求される用途としては建材や一般家具家電用途、燃料電池、自動車排気系部品、その他自動車用部品などがある。自動車排気系部品の例としては、自動車マフラーやエキゾーストマニホールド、センターパイプや触媒コンバーター、EGRクーラー、フレキシブルパイプ、フランジ、管端増肉パイプなどがある。その他自動車用部品としてはモール、燃料給油管、電池部品(ケース、セル、パック、モジュール等)、締結部品(クランプ、Vバンド等)などがある。本発明のステンレス鋼は、これらの用途に好適に用いることができる。
図1は、本発明例A5、A36及び比較例B8のレイティングナンバを示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明者らは耐食性及び強度の向上のために、種々の濃度のCr含有量やAl、Si含有量の鋼を作製した。そして耐食性に及ぼすAl及びSi濃度の影響を調べた。その結果、母材のAl及びSi含有量を増加させることで耐食性が大幅に向上することを見出した。特に2Al+Si−10Ti≧0を満たすことで耐食性が大幅に改善することを見出した。また強度に及ぼすAl及びSi濃度の影響を調べたところ、Al及びSi濃度の増加により強度が増加することを見出した。その結果を表1に示す。ここで耐食性試験であるJASO−CCT試験の判定基準は、JIS G 0595に準拠する方法でレイティングナンバを判定し、「3」及び「6」を境界値とした。レイティングナンバが7〜9の鋼種は表1中に符号「◎」で、レイティングナンバが4〜6の鋼種は表1中に符号「○」で、レイティングナンバが0〜3の鋼種は表1中に符号「×」で示した。
表1より、本発明鋼種は耐食性・強度ともに優れていることがわかる。図1に、表1中に記載の、Al含有量の異なる3鋼種の試験結果を示す。Al含有量の高い鋼種ほどレイティングナンバが高くなることがわかる。
JASO−CCT試験後の鋼板表面を観察したところ、Al、Si濃度が高い鋼種は孔食があまり成長しておらず、孔食進展速度が遅いことがわかった。これより母材中のAl及びSiは孔食の成長を抑制することがわかった。特にAlは発生初期の孔食内部でイオンとして溶け出し表面に吸着することで孔食成長の抑制及び再不動態化を促進していると考えられる。Siは孔食内部で酸化物を形成し、孔食成長の抑制及び再不動態化を促進していると考えられる。
またAl、Si濃度が高い鋼種は強度が非常に高いことがわかる。Al、Siはともに固溶強化により鋼の強度を増加させる。特にSiの固溶強化能は非常に高く、鋼の強度増加に大きく寄与する。
以下に、本実施形態で規定される鋼の化学組成について、さらに詳しく説明する。なお、%は質量%を意味する。
C:0.001〜0.100%
Cは、耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。そのため、Cの含有量の上限を0.100%以下とする。しかしながら、C量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、C量の下限を0.001%以上とする。C量の好ましい範囲は、0.002〜0.010%である。
Si:0.01〜5.00%
Siは、本実施形態における重要な元素である。Siは、表面に濃縮して腐食発生を抑制するのみならず、母材の腐食速度も低減する非常に有益な元素である。そのため、Siの含有量の下限を0.01%以上とする。ただし、Siの過度な含有は鋼の伸び減少を引き起こし、加工性を低下させるため、Siの含有量の上限を5.00%以下とする。Si量の好ましい範囲は、0.30〜3.00%、より好ましい範囲は0.70〜1.20%である。
Mn:0.01〜2.00%
Mnは、脱酸元素として有用であるが、過剰量のMnを含有させると、耐食性を劣化させる。そのため、Mn量を0.01〜2.00%とする。Mn量の好ましい範囲は、0.05〜1.00%、より好ましい範囲は0.02〜0.50%である。
P:0.050%以下
Pは、加工性・溶接性・耐食性を劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため、P量を0.050%以下とする。P量の好ましい範囲は、0.030%以下である。Pは少ないほど好ましいが、P量を過度に低下させると精錬コストが上昇するため、P量の下限は0.0001%以上としてもよい。
S:0.0100%以下
Sは、耐食性を劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため、S量を0.0100%以下とする。S量の好ましい範囲は、0.0070%以下である。Sは少ないほど好ましいが、S量を過度に低下させると精錬コストが上昇するため、S量の下限は0.00001%以上としてもよい。
Cr:9.0〜30.0%
Crは、塩害環境での耐食性を確保するために、9.0%以上の含有が必要である。Crの含有量を増加させるほど、耐食性は向上するが、加工性、製造性を低下させる。そのため、Cr量の上限を30.0%以下とする。Cr量の好ましい範囲は、9.5〜25.0%、より好ましい範囲は10.0〜15.0%である。
Ni:0.01〜0.50%
Niは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。ただし、多量の含有は合金コスト増加に繋がるため、Ni量の上限を0.50%以下とする。Ni量の好ましい範囲は、0.03〜0.30%である。更に好ましくは0.10%以上である。
Ti:0.01〜1.00%
Tiは、ステンレス鋼の鋭敏化を防止するために、0.01%以上含有する必要がある。含有量が0.01%未満の場合は鋭敏化により耐食性が劣化する。ただし、多量の含有は合金コスト増加や靭性の低下、鋼中介在物増加による耐食性低下、製造性低下に繋がるため、Ti量の上限を1.00%以下とする。Ti量の好ましい範囲は、0.03〜0.50%、より好ましい範囲は0.10〜0.25%である。
Al:0.010〜5.00%
Alは、本実施形態における重要な元素である。Alは、表面に濃縮して腐食発生を抑制するのみならず、母材の腐食速度も低減する非常に有益な元素である。そのため、Alの含有量の下限を0.010%以上とする。ただし、Alの過度な含有は材料の伸び減少を引き起こし、加工性を低下させるため、Alの含有量の上限を5.00%以下とする。Al量の好ましい範囲は、0.050〜3.00%、より好ましい範囲は0.800〜2.50%である。
N:0.001〜0.050%
Nは、耐孔食性に有用な元素であるが、耐粒界腐食性、加工性を低下させる。そのため、Nの含有量を低く抑える必要がある。そのため、N量の上限を0.050%以下とする。しかしながら、N量を過度に低めることは精練コストを上昇させるため、N量の下限を0.001%以上とする。N量の好ましい範囲は、0.002〜0.020%である。
B:0.0001〜0.0050%
Bは、2次加工性を向上させるのに有用な元素であり、0.0050%以下含有することができる。B量の下限を、安定した効果が得られる0.0001%以上とする。B量の好ましい範囲は、0.0003〜0.0030%である。更に好ましくは0.0005%以上である。
2Al+Si−10Ti≧0
本実施形態のステンレス鋼は、上記の化学成分の含有量を満たすとともに、上記Si量、Ti量及びAl量(質量%)が、2Al+Si−10Ti≧0を満たす必要がある。(2Al+Si−10Ti)が0以上になることで、耐食性が大幅に向上する。
以上が、本実施形態のステンレス鋼の基本となる化学組成であるが、本実施形態では、更に、次のような元素を必要に応じて含有させることができる。
Mo、Sn、Cu、Nb、W、V、Sb、Co、Ca、Mg、Zr、Ga、Ta、REMは、目的に応じて、これらの1種または2種以上が含有されていてもよい。これらの元素の下限は、0%以上、好ましくは0%超である。
Mo:0.01〜3.00%
Moは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。しかし、過剰の含有は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップに繋がる。そのため、Mo量の上限を3.00%以下とする。Mo量の好ましい範囲は、0.05〜1.00%である。
Sn:0.01〜3.00%
Snは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。しかし、過剰の含有はコスト増加に繋がる。そのため、Sn量の上限を3.00%以下とする。Sn量の好ましい範囲は、0.005〜1.00%である。
Cu:0.01〜3.00%
Cuは、耐食性を向上させるため、0.01%以上含有することができる。しかし、過剰の含有はコスト増加に繋がる。そのため、Cu量の上限を3.00%以下とする。Cu量の好ましい範囲は0.02〜1.00%、より望ましい範囲は0.05〜0.09%である。
Nb:0.001〜1.000%
Nbは、高温強度の向上や溶接部の耐粒界腐食性の向上に有用であるが、過剰の含有は、加工性や製造性を低下させる。そのため、Nb量を0.001〜1.000%とする。Nb量の好ましい範囲は、0.005〜0.500%である。
W:0.001〜1.000%
Wは、耐食性を向上させるため、1.000%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、W量の下限を0.001%以上とする。W量の好ましい範囲は、0.005〜0.800%である。
V:0.001〜1.000%
Vは、耐食性を向上させるため、1.000%以下含有することができる。安定した効果を得ためには、V量の下限を0.001%以上とする。V量の好ましい範囲は、0.005〜0.500%である。
Sb:0.001〜0.100%
Sbは、耐全面腐食性を向上させるため、0.100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Sb量の下限を0.001%以上とする。Sb量の好ましい範囲は、0.010〜0.080%である。
Co:0.001〜0.500%
Coは、二次加工性と靭性を向上させるために、0.500%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Co量の下限を0.001%以上とする。Co量の好ましい範囲は、0.010〜0.300%である。
Ca:0.0001〜0.0050%
Caは、脱硫のために含有されるが、過剰に含有すると、水溶性の介在物CaSが生成して耐食性を低下させる。そのため、0.0001〜0.0050%の範囲でCaを含有することができる。Ca量の好ましい範囲は、0.0005〜0.0030%である。
Mg:0.0001〜0.0050%
Mgは、組織を微細化し、加工性、靭性の向上にも有用である。そのため、0.0050%以下の範囲でMgを含有することができる。安定した効果を得るためには、Mg量の下限を0.0001%以上とする。Mg量の好ましい範囲は、0.0005〜0.0030%である。
Zr:0.0001〜0.0300%
Zrは、耐食性を向上させるために、0.0300%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Zr量の下限を0.0001%以上とする。Zr量の好ましい範囲は、0.0010〜0.0100%である。
Ga:0.0001〜0.0100%
Gaは、耐食性と耐水素脆化性を向上させるために、0.0100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Ga量の下限を0.0001%以上とする。Ga量の好ましい範囲は、0.0005〜0.0050%である。
Ta:0.001〜0.050%
Taは、耐食性を向上させるために、0.050%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、Ta量の下限を0.001%以上とする。Ta量の好ましい範囲は、0.005〜0.030%である。
REM:0.001〜0.100%
REMは、脱酸効果等を有するので、精練で有用な元素であるため、0.100%以下含有することができる。安定した効果を得るためには、REM量の下限を0.001%以上とする。REM量の好ましい範囲は、0.003〜0.050%である。
ここで、REM(希土類元素)は、一般的な定義に従い、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。REMは、これら希土類元素から選択される1種以上であり、REMの量とは、希土類元素の合計量である。
本実施形態のステンレス鋼は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物(不可避的不純物を含む)からなるが、以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。
また、ステンレス鋼の製造では、スクラップ原料を使用することが多い。このため、ステンレス鋼には、種々の不純物元素が不可避的に混入する。不純物元素の含有量を一義的に定めることは困難である。したがって、本発明における不純物とは、本発明の作用効果を阻害しない量で含有される元素を意味する。
また、本実施形態のステンレス鋼の圧延方向の断面組織の粒度番号(JIS G 0551に準拠して測定)は6.0以上9.0以下である。これにより、適用可能分野を大幅に拡大することが出来る。
また、本実施形態のステンレス鋼のビッカース硬さ(JIS Z 2244に準拠して測定)HV1は160以上200以下であることが好ましい。これにより適用可能分野を大幅に拡大することが出来る。
また、本実施形態のステンレス鋼は、0.2%耐力が250MPa以上、引張強度が400MPa以上であることが好ましい。これにより、本実施形態のステンレス鋼を構造部材に適用する際に、構造部材の薄肉軽量化を図ることができるようになる。
また、本実施形態のステンレス鋼は、全伸びが27%以上、平均r値が1.0以上であることが好ましい。これにより、自動車部品等のような複雑な形状を持つ部品に加工する際にも、割れや破断がなく加工することができるようになる。
また、本実施形態のステンレス鋼からなる熱延鋼板は、材料温度25℃でのシャルピー衝撃値が10J/cm以上である。より望ましくは15J/cm以上、さらに望ましくは20J/cm以上である。シャルピー衝撃値は、板厚が4.0mmでの値とすることが好ましい。これにより、高い靱性を必要とする用途に本実施形態のステンレス鋼を好適に用いることができる。なお、シャルピー衝撃値を板厚が4.0mmでの値とすることとしているが、本発明のステンレス鋼からなる熱延板の板厚を4.0mmに限定するものではない。本発明のステンレス鋼からなる熱延板の板厚は、2.0〜6.0mmの範囲であってもよい。
シャルピー衝撃試験は、本実施形態のステンレス鋼からなる鋼板からシャルピー試験片を採取し、材料温度25℃の条件でJIS Z 2242に準拠してシャルピー試験を行い、試験n数3の平均値をシャルピー衝撃値とする。
また、0.2%耐力、引張強度及び全伸びは、本実施形態のステンレス鋼からなる鋼板からJIS Z 2241の附属書Bに記載の13B号の引張試験片を作製し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行うことにより測定する。
更に、r値(ランクフォード値)の測定は以下のように行う。本実施形態のステンレス鋼からなる鋼板からJIS Z 2241の附属書Bに記載の13B号の引張試験片を作製し、試験片の寸法や標点距離などを測定しておき、その後、引張試験によって14.4%の歪を付与した後の試験片寸法や標点距離などを測定し、両測定結果からr値を算出する。
本実施形態のステンレス鋼の製造方法では、基本的にはステンレス鋼からなる鋼板を製造する一般的な方法が適用される。例えば、転炉または電気炉で上記の化学組成を有する溶鋼とし、AOD炉やVOD炉等で精錬される。その後、連続鋳造法または造塊法で鋼片とし、次いで、熱間圧延−熱延板の焼鈍−酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗の工程を経て、本実施形態のステンレス鋼が製造される。必要に応じて、熱延板の焼鈍を省略してもよいし、冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗を繰り返し行ってもよい。各工程の間に表面研削を行ってもよい。
ただし、本発明の最も重要な点である耐食性と強度特性を満たすためにはAl、Si含有量を高くする必要があり、これらの元素の添加により製造時の靭性が低下する懸念がある。そのため製造条件、特に熱延条件に留意して熱延板の靭性を高める必要がある。具体的には、材料温度25℃で、板厚4.0mmでのシャルピー衝撃値が10J/cm以上にする必要がある。ここで4.0mmというのは熱延板の板厚を想定している。なお、シャルピー衝撃値を板厚が4.0mmでの値とすることとしているが、熱延板の板厚を4.0mmに限定するものではない。
熱延板の靭性を高めるためには熱延の諸条件に留意する必要がある。まず熱延前のスラブ加熱温度は、結晶粒径や破壊起点となるTiNを粗大化させないために1100〜1250℃と低いほうが望ましい。より望ましくは1100〜1200℃である。熱間圧延工程では、複数パスの粗圧延が施され、複数スタンドからなる仕上圧延が一方向に施される。粗圧延終了温度を高くし仕上げ圧延までの時間を取ることで、粗圧延後の鋼板の再結晶を促進することが重要である。32mmまでの粗圧延の終了温度は900℃以上、より望ましくは950℃以上の範囲が適している。粗圧延から仕上圧延までの時間は5s以上、より望ましくは10s以上が適している。熱延板の板厚は2.0〜6.0mmの範囲とし、薄いほうが望ましい。より望ましくは2.0〜5.0mmの範囲である。熱延板の歪を低下させるため熱延終了温度は800℃以上と高くし、歪を回復させることが望ましい。より望ましくは850℃以上である。また熱延板の巻取り温度は低温のほうが望ましい。具体的には500℃以下、より望ましくは450℃以下である。これら諸条件に留意することで硬さが低下し結晶粒径が細かく、かつ靭性の高い熱延板を製造することができる。これにより最終製品の伸びやr値が向上し、各構造体等に加工しやすい鋼となる。なお、スラブ加熱温度は加熱炉出側におけるスラブの表面温度であり、熱延終了温度は熱間圧延の最終圧延ロールを通過直後の鋼板の表面温度である。
本実施形態のステンレス鋼及びその製造方法を説明したが、本実施形態のステンレス鋼は、熱延鋼板に限らず、冷延鋼板であってもよく、鋼棒線材であってもよく、厚鋼板であってもよい。
実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
表1に示す組成の鋼を溶製してスラブを鋳造し、スラブの加熱温度を1100〜1250℃の範囲として、32mmまで粗圧延を行い、粗圧延終了温度を測温した。その後10s保持した後、板厚4mmまで仕上圧延を施し、終了温度を測温した。なお、スラブ加熱温度は加熱炉出側におけるスラブの表面温度とし、熱延終了温度は熱間圧延の最終圧延ロールを通過直後の鋼板の表面温度とした。次いで、ショット・酸洗を施した。ここで製造した熱延板からシャルピー試験片を採取した。その後、板厚1.2mmまで冷間圧延を施し、920℃で1分間焼鈍を行い、次いで酸洗を施した。
(耐食性)
作製した鋼板から、幅が75mm、長さが150mmである試験片を切り出し、JASO−CCT試験用試験片とした。JASO−CCT試験は、JASO M 610−92に準拠して12cy行った。
JASO−CCT試験の判定基準として、JIS G 0595に準拠する方法でレイティングナンバを判定し、「3」及び「6」を境界値とした。レイティングナンバが7〜9の鋼種は表1中に符号「◎」で、レイティングナンバが4〜6の鋼種は表1中に符号「○」で、レイティングナンバが0〜3の鋼種は表1中に符号「×」で示した。◎または○を合格とした。
(粒度番号)
作製した鋼板から長さが30mm、幅が20mmである試験片を切り出し、圧延方向の断面組織が観察できるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨とエッチングを施した。その後JIS G 0551に準拠し、圧延方向の断面組織の粒度番号を測定した。測定は板厚中心部から試験n数5で行い、その平均値を採用した。粒度番号は6.0以上9.0以下が本発明範囲内である。
(ビッカース硬さ)
粒度番号を測定した試料を用い、JIS Z 2244に準拠してビッカース硬さHV1を測定した。測定は板厚中心部から試験n数5で行い、その平均値を採用した。ビッカース硬さHV1は160以上200以下が本発明範囲内である。
(強度及び全伸び)
また、作製した鋼板からJIS Z 2241の附属書Bに記載の13B号の引張試験片を作製し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。判定基準として、強度に関しては、0.2%耐力が250MPa以上、引張強度が400MPa以上を共に満たす鋼種を表1に符号「○」、どちらか一方または両方を満たさない鋼種を表1に符号「×」で示した。○を合格とした。全伸びに関しては、判定基準として、全伸びが27%以上の鋼種を表1に符号「○」、全伸びが27%未満の鋼種を表1に符号「×」で示し、「○」のものが加工性に優れると判断した。
(r値)
r値測定は以下のように行った。作製した鋼板からJIS Z 2241の附属書Bに記載の13B号の引張試験片を作製し、試験片の寸法や標点距離などを測定した。その後引張試験によって14.4%の歪を付与した後の試験片寸法や標点距離などを測定し、両測定結果からr値を算出した。判定基準として、平均r値が1.0以上の鋼種を表1に符号「○」、平均r値が1.0未満の鋼種を表1に符号「×」で示した。
(熱延板の靱性)
シャルピー衝撃試験は以下のように行った。熱延板から採取したシャルピー試験片を用い、材料温度25℃の条件でJIS Z 2242に準拠してシャルピー試験を行った。試験n数3の平均値が10J/cm以上の鋼種を表1に符号「○」、平均値が10J/cm未満の鋼種を表1に符号「×」で示した。○を合格とした。
表1に結果を示す。表1に示すように、本発明例の場合、レイティングナンバが4〜9となり、◎または○の評価となることがわかった。◎の評価となる鋼種は、Ti含有量が0.25%以下のものであった。これはTi系介在物が腐食起点となりうるため、Ti含有量の低い鋼種ほど腐食起点が少なくなり、さらにJASO−CCT試験後の外観が改善するためである。一方、本発明から鋼成分が外れる場合、レイティングナンバが0〜3となり、×の評価となることがわかった。
本発明例は、耐食性、強度及び靱性が優れており、粒度番号及びビッカース硬さHV1が発明範囲内であった。また、伸び及びr値も良好であった。
一方、比較例B1〜B14は、成分範囲外または2Al+Si−10Ti≧0の範囲外となるため、耐食性または全伸びのいずれかを満足しなかった。また、ビッカース硬さHV1、強度または靱性のいずれかが満足しない場合もあった。以下、比較例B1〜B14について詳細に説明する。
比較例B1は、C量が過剰であり、耐食性が低下し、全伸びも低下した。
比較例B2は、Si量が少なく、鋼表面でのSi濃縮量が少なくなって耐食性が低下し、また、強度も低下した。
比較例B3は、Si量が過剰であり、全伸び(加工性)が低下した。また、熱延板のシャルピー衝撃値も低下した。
比較例B4は、Mn量が過剰であり、耐食性が低下した。
比較例B5は、P量が過剰であり、耐食性が低下した。
比較例B6は、S量が過剰であり、耐食性が低下した。
比較例B7は、Cr量が過剰であり、全伸び(加工性)が低下した。また、熱延板のシャルピー衝撃値も低下した。
比較例B8は、Ti量が0%であり、耐食性が低下した。
比較例B9は、Al量が少なく、鋼表面でのAl濃縮量が少なくなって耐食性が低下した。
比較例B10は、Al量が過剰であり、全伸び(加工性)が低下した。また、熱延板のシャルピー衝撃値も低下した。
比較例B11は、N量が過剰であり、耐食性が低下した。
比較例B12〜B14は、2Al+Si−10Ti≧0を満足せず、耐食性が低下した。
また、粗圧延終了温度が範囲外であるB15〜B20は、冷延鋼板の粒度番号が範囲外となった。また、全伸び(加工性)及びr値も低下した。更に、熱延板のシャルピー衝撃値も低下した。
また、熱延終了温度範囲外である比較例B21〜B26は、熱延板のシャルピー衝撃値が低下した。このため、比較例B21〜B26は、冷延鋼板を製造できなかった。よって、冷延鋼板についての評価項目は評価しなかった。表1に、未評価項目を「−」で示した。このように、化学成分が発明範囲であっても、シャルピー衝撃値が発明範囲から外れる熱延鋼板は、本発明のステンレス鋼の素材として好ましくなかった。
Figure 2020111800
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Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.001〜0.100%、
    Si:0.01〜5.00%、
    Mn:0.01〜2.00%、
    P:0.050%以下、
    S:0.0100%以下、
    Cr:9.0〜30.0%、
    Ni:0.01〜0.50%、
    Ti:0.01〜1.00%、
    Al:0.010〜5.00%、
    N:0.001〜0.050%、
    B:0.0001〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、かつ上記Si量、Ti量及びAl量(質量%)が、2Al+Si−10Ti≧0を満たす化学成分を備え、圧延方向の断面組織の粒度番号が6.0以上9.0以下であることを特徴とするステンレス鋼。
  2. さらに質量%で、
    Mo:0.01〜3.00%、
    Sn:0.01〜3.00%、
    Cu:0.01〜3.00%、
    Nb:0.001〜1.000%、
    W:0.001〜1.000%、
    V:0.001〜1.000%、
    Sb:0.001〜0.100%、
    Co:0.001〜0.500%、
    Ca:0.0001〜0.0050%、
    Mg:0.0001〜0.0050%、
    Zr:0.0001〜0.0300%、
    Ga:0.0001〜0.0100%、
    Ta:0.001〜0.050%、
    REM:0.001〜0.100%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼。
  3. ビッカース硬さHV1が160以上200以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステンレス鋼。
  4. 0.2%耐力が250MPa以上、引張強度が400MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のステンレス鋼。
  5. 全伸びが27%以上、平均r値が1.0以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のステンレス鋼。
  6. 請求項1または請求項2に記載の化学成分を有し、
    板厚が2.0〜6.0mmであり、
    材料温度25℃でのシャルピー衝撃値が10J/cm以上であることを特徴とするステンレス熱延鋼板。
  7. 請求項1または請求項2に記載の化学成分を備えた鋼片を、板厚が2.0〜6.0mmになるまで圧延する際の、32mmまで圧延した際の温度を900℃以上とし、最終圧延温度を800℃以上とすることを特徴とする請求項6に記載のステンレス熱延鋼板の製造方法。
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