JP2020107594A - 固体電解質シート、全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池、並びに、これらの製造方法 - Google Patents

固体電解質シート、全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池、並びに、これらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】全固体二次電池に組み込まれた際に、全固体二次電池の充放電を繰り返しても全固体二次電池の短絡発生を抑制できる固体電解質シート及び全固体二次電池用負極シートとこれらの製造方法、並びに、短絡発生が抑制された全固体二次電池及びその製造方法を提供する。【解決手段】無機固体電解質の粒子を含有し、空隙率が10%以下の固体電解質層と、無機固体電解質の粒子を含有し、空隙率が15%以上の易破壊層とを積層した固体電解質シート、この固体電解質シートにおける易破壊層の表面に負極活物質層を有する全固体二次電池用負極シート、上記固体電解質シートにおける固体電解質層の表面に正極活物質層を有する全固体二次電池、並びに、これらシート及び全固体二次電池の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解質シート、全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池、並びに、これらの製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、負極と正極との間に挟まれた電解質とを有し、両極間にリチウムイオンを往復移動させることにより充電と放電を可能とした蓄電池である。リチウムイオン二次電池には従来から、電解質として有機電解液が用いられてきた。しかし、有機電解液は液漏れを生じやすく、また、過充電、過放電により電池内部で短絡が生じるおそれもあり、信頼性と安全性の更なる向上が求められている。
このような状況下、有機電解液に代えて、不燃性の無機固体電解質を用いた全固体二次電池の開発が進められている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性若しくは信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。
リチウムイオン二次電池は、充電時には正極から負極へと電子が移動し、同時に正極を構成するリチウム酸化物等からリチウムイオンが放出され、このリチウムイオンは電解質を通って負極へと到達して負極に溜め込まれる。こうして負極に溜め込まれたリチウムイオンの一部は電子を取り込み金属リチウムとして析出する現象が生じる。この金属リチウムの析出物が充放電の繰り返しによりデンドライト状に成長してしまうと、やがて正極へと達し、内部短絡が生じて二次電池として機能しなくなる。したがって、全固体二次電池においても、金属リチウムからなるデンドライト(単に、デンドライトということがある。)の成長をブロックすることは、電池を長寿命化する上で重要である。
デンドライトによる内部短絡の問題に対処すべく、特許文献1には、集電極と、負極活物質と、複数の粒子の常温溶融塩電解質が含浸されている湿砂状電解質層と、無機固体電解質層とをこの順で有するリチウム電池用電極体を、負極として用いたリチウム電池が記載されている。
特開2016−58250号公報
一般に、全固体二次電池を急速充電するとデンドライトが速やかに発生し成長する。また、充放電により負極活物質層は体積変動(膨張及び収縮)を受ける。このようなデンドライトの急速な成長又は負極活物質層の体積変動により、固体電解質層は割れ、ヒビ若しくはピンホール等の欠陥が生じやすくなる。特に、後述する、負極集電体上に析出した金属を負極活物質層として機能させる形態の全固体二次電池においては、析出した負極活物質に隣接する固体電解質層は、負極活物質層の体積変動の影響が大きく、上記欠陥が早期に生じる。そのため、固体電解質層に上記欠陥が生じた全固体二次電池は速やかに内部短絡を起こす。このような固体電解質層の欠陥に起因する短絡発生については、従来の技術では十分に抑制できず、改善の余地があった。
本発明は、全固体二次電池に組み込まれた際に、全固体二次電池の充放電を繰り返しても、固体電解質層の欠陥発生を防止することにより全固体二次電池の短絡発生を抑制できる、固体電解質シート及び全固体二次電池用負極シート、並びに、これらの製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、短絡発生が抑制された全固体二次電池及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、負極集電体若しくは負極活物質層と固体電解質層との間に、この固体電解質層よりも高い空隙率を有する易破壊層を配置した固体電解質シートが、全固体二次電池に組み込まれた際に、この全固体二次電池を繰り返して充放電しても、更には短絡発生を加速する急速充放電を繰り返しても、固体電解質層の欠陥発生を抑制して、デンドライトの正極への到達、すなわち短絡発生を抑制できることを、見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>無機固体電解質の粒子を含有し、空隙率が10%以下の固体電解質層と、無機固体電解質の粒子を含有し、空隙率が15%以上の易破壊層とを積層した固体電解質シート。
<2>易破壊層に含有される無機固体電解質の粒子が、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質の粒子を含む<1>に記載の固体電解質シート。
<3>易破壊層が、導電性粒子を含有する<1>又は<2>に記載の固体電解質シート。
<4>固体電解質層と易破壊層との間にデンドライト貫通阻止層を有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体電解質シート。
<5>デンドライト貫通阻止層が、250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質の粒子の予備成形体をせん断処理又は加熱処理してなる、<4>に記載の固体電解質シート。
<6>易破壊層が、リチウムと合金形成可能な金属の粒子を含有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質シート。
<7>易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面に、リチウムと合金形成可能な金属の膜を有する<1>〜<6>のいずれか1つに記載の固体電解質シート。
<8>上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質シートにおける易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面に負極活物質層を有する全固体二次電池用負極シート。
<9>負極活物質層が、ケイ素又はケイ素元素を含有する合金を含む<6>に記載の全固体二次電池用負極シート。
<10>上記<8>又は<9>に記載の全固体二次電池用負極シートにおける固体電解質層の、易破壊層とは反対側の表面に正極活物質層を有する全固体二次電池。
<11>上記<6>又は<7>に記載の固体電解質シートにおける固体電解質層の、易破壊層とは反対側の表面に正極活物質層を有する全固体二次電池。
<12>正極活物質層が、負極活物質前駆体を含有する<10>又は<11>に記載の全固体二次電池。
<13>250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質の粒子を予備加圧成形し、得られた予備成形体の表面をせん断処理又は加熱して、空隙率が10%以下の固体電解質層の表層としてデンドライト貫通阻止層を形成する工程と、
空隙率が15%以上の易破壊層をデンドライト貫通阻止層に圧着積層する工程と、
を有する<4>又は<5>に記載の固体電解質シートの製造方法。
<14>易破壊層を、無機固体電解質の粒子を成形して得る<13>に記載の固体電解質シートの製造方法。
<15>易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面上に、リチウムと合金形成可能な金属の膜を設ける<13>又は<14>に記載の固体電解質シートの製造方法。
<16>上記<13>又は<14>に記載の固体電解質シートの製造方法で製造した固体電解質シートにおける易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面に負極活物質層を形成する全固体二次電池用負極シートの製造方法。
<17>上記<13>〜<15>のいずれか1つに記載の固体電解質シートの製造方法で製造した固体電解質シートにおける固体電解質層の、易破壊層とは反対側の表面に正極活物質層を形成する全固体二次電池の製造方法。
<18>上記<16>に記載の全固体二次電池用負極シートの製造方法で製造した全固体二次電池用負極シートの、負極活物質層とは反対側の表面に正極活物質層を形成する全固体二次電池の製造方法。
<19>正極活物質層を、正極活物質と負極活物質前駆体とを含有する正極用組成物を用いて形成する<17>又は<18>に記載の全固体二次電池の製造方法。
<20>正極活物質層の形成後に充電する<19>に記載の全固体二次電池の製造方法。
<21>充電した上記正極活物質層を加圧して圧縮する<20>に記載の全固体二次電池の製造方法。
<22>上記正極活物質層を加圧する前に放電する<21>に記載の全固体二次電池の製造方法。
本発明の固体電解質シート及び全固体二次電池用負極シートは、全固体二次電池に組み込まれた際に、全固体二次電池の充放電(とりわけ急速充放電)を繰り返しても、デンドライトの正極への到達を防止でき、全固体二次電池の短絡発生を抑制できる。本発明の全固体二次電池は、(急速)充放電を繰り返しても短絡が発生しにくい。
また、本発明の、固体電解質シートの製造方法、全固体二次電池用負極シートの製造方法及び全固体二次電池の製造方法は、上記優れた特性を示す、固体電解質シート、全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池を、それぞれ、製造できる。
図1は本発明の全固体二次電池の好ましい実施形態を模式化して示す縦断面図である。 図2は本発明の全固体二次電池の別の好ましい実施形態を模式化して示す縦断面図である。 実施例1で製造した全固体二次電池における易破壊層の、デンドライト貫通阻止層との界面を走査型電子顕微鏡で撮影した画像を示す図である。 実施例3で製造した全固体二次電池における固体電解質層の、易破壊層との界面を走査型電子顕微鏡で撮影した画像を示す図である。
本発明の説明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[全固体二次電池]
まず、本発明の、全固体二次電池、固体電解質シート及び全固体二次電池用負極シートについて、好ましい実施形態を挙げて、説明する。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間であって負極活物質層側から正極活物質層側に向かって配置された易破壊層及び固体電解質層とを有する。本発明の全固体二次電池は、好ましくは易破壊層と固体電解質層との間に、より好ましくは固体電解質層に隣接して、更に好ましくは固体電解質層及び易破壊層に隣接して、デンドライト貫通阻止層を有する。
本発明において、負極活物質層は、特に断らない限り、予め形成した負極活物質層(負極活物質層を予め形成する形態における負極活物質層)に加えて、充電により析出する金属の層(負極活物質層を予め形成しない形態における負極活物質層)を包含する。
本発明において、全固体二次電池を構成する各層は、特定の機能を奏する限り、単層構造であっても複層構造であってもよい。
本発明の全固体二次電池は、上記構成(正極活物質層及び負極活物質層の間に固体電解質層及び易破壊層)を有するものであれば、それ以外の構成は特に限定されない。本発明の全固体二次電池は、易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面に、リチウムと合金形成可能な金属の膜を有している態様も好ましい。その他の構成として、例えば全固体二次電池に関する公知の構成を採用できる。全固体二次電池は、充放電を繰り返しても、デンドライトの正極への到達を防止でき、短絡発生が抑制される。更に好ましくは、全固体電池に拘束力を加えることで、放電時に負極活物質量が減少しても、固体電界質層と負極活物質との接触が維持され、とりわけ負極活物質層として負極集電体上に析出した金属を機能させる形態においては充放電によるリチウムの失活量を低減できるため、充放電による電池容量の低下が抑えられ、優れたサイクル特性をも示す。
図1は、全固体二次電池の一実施形態について、電池を構成する各層の積層状態を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10Aは、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、易破壊層9、デンドライト貫通阻止層8、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に積層してなる構造を有しており、隣接する層同士は直に接触している。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、同時に正極活物質を構成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属がイオン化して、固体電解質層3、デンドライト貫通阻止層8及び易破壊層9を通過(伝導)して移動し、負極に蓄積される。例えばリチウムイオン二次電池であれば、負極にリチウムイオン(Li)が蓄積されることになる。
一方、放電時には、負極に蓄積された上記のアルカリ金属イオン若しくはアルカリ土類金属イオンが正極側に戻され、作動部位6に電子を供給することができる。図示した全固体二次電池の例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
また、本発明の全固体二次電池は、負極活物質層2を有さずに、易破壊層9と負極集電体1とが積層される形態(負極活物質層を予め形成しない形態)とすることも好ましい。この形態の全固体二次電池では、充電時に負極集電体に蓄積した、周期律表第一族に属する金属のイオン(アルカリ金属イオン)又は周期律表第二族に属する金属のイオン(アルカリ土類金属イオン)の一部が電子と結合し、金属として負極集電体上(易破壊層との界面、又は易破壊層中の空隙を含む。)に析出する現象を利用して、負極活物質層を形成する。すなわち、この形態の全固体二次電池は、負極集電体上に析出した金属を負極活物質層として機能させるものである。例えば金属リチウムは、負極活物質として汎用されている黒鉛に比べて10倍以上の理論容量を有するとされている。したがって、負極集電体上に金属リチウムを析出させて易破壊層を積層した形態とすることにより、負極集電体上に金属リチウムの層を形成することができ、高エネルギー密度の二次電池を実現することが可能になるとされる。また、負極活物質層を予め形成(積層)しない形態の電池は、厚みをより薄くできるために、高いエネルギー密度を示す。
この形態においては、図2に示されるように、易破壊層9の、固体電解質層3とは反対側、すなわち易破壊層9と負極集電体1との間に、リチウムと合金形成可能な金属の膜7を有する全固体二次電池10Bも好ましい。この全固体二次電池10Bは、(予め形成された)負極活物質層2を有さず、上記金属の膜7を有していること以外は、上記全固体二次電池10Aと同じである。全固体二次電池10Bは、充電によるリチウム金属の析出状態を効果的に制御することができ、短絡発生を更に効果的に抑制できる(短絡が発生するまでの時間を長期化(充放電サイクル数を伸ばすことが)できる。)。すなわち、充電によりリチウム金属が、固体電解質層との界面に一様に配置された金属膜を形成する金属と合金を経て析出するため、局所的なリチウム金属の析出を抑制できる。これにより、デンドライトの正極への到達を効果的に抑制できると考えられる。また、上記効果により、デンドライトの正極への到達を抑制する易破壊層の膜厚を薄くすることができるため、(肉厚の)易破壊層の形成による電池容量(放電容量)の低下を小さくできる。
このように、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池は、未充電の態様(負極活物質が析出していない態様)と、既充電の態様(負極活物質が析出している態様)との両態様を包含する。なお、本発明において、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池とは、あくまで電池製造における層形成工程において負極活物質層を形成しないことを意味し、上記の通り、負極活物質層は、充電により負極用集電体上に形成されるものである。
<固体電解質層>
固体電解質層3は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質の粒子(無機固体電解質粒子ともいう。)と、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分とを含有し、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含有しない。また、固体電解質層は、後述する、250℃以下で塑性変形する固体粒子を含有していてもよい。固体電解質層が含有する各成分については後述する。
この固体電解質層は、上記イオンの伝導性を示す一方、電子絶縁性を示すセパレータとして機能する層であって、従来の全固体二次電池が備える固体電解質層を特に制限されることなく適用できる。この固体電解質層は、上記無機固体電解質の粒子から形成され、粒子間に空隙を有しており、通常、この層の空隙率は10%以下に設定される。これにより、硬質で高強度の層になっている。固体電解質層の空隙率は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下であり、その下限は、実際的には0.1%以上であり、例えば1%以上が好ましい。固体電解質層の空隙率は、次の方法で測定できる。すなわち、固体電解質層の任意の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、得られたSEM写真を倍率3万倍で撮影し、視野3μm×2.5μm中の空隙領域の面積を求め、この面積を視野面積(7.5μm)で除した値(百分率)として算出する。
固体電解質層中における粒子間の空隙の大きさは、上記空隙率を満たす限り特に制限されないが、例えば、観測した空隙数に対して90%以上の割合の空隙が、0.3μm以上の長辺を有することが好ましく、2μm以下の長辺を有することが好ましい。空隙の大きさは、後述するデンドライト貫通阻止層における空隙の大きさと同様にして測定できる。
固体電解質層は、無機固体電解質を用いて通常の方法により形成された層であってもよいが、後述する本発明の固体電解質シートの製造方法により、後述するデンドライト貫通阻止層が表層として形成された固体電解質層であることが好ましい。
固体電解質層中の、無機固体電解質粒子、塑性変形を示す固体粒子及び他の成分の含有量は、後述する予備成形体の固形成分100質量%中の含有量(混合割合)と同じである。ただし、固体電解質層が塑性変形を示す固体粒子を含有しない場合、無機固体電解質粒子の固体電解質層中の含有量は100質量%以下に設定される。
<デンドライト貫通阻止層>
本発明の全固体二次電池に好ましく設けられるデンドライト貫通阻止層は、負極から成長してくるデンドライトの正極(活物質層)への到達(貫通)をブロック又は阻止する機能を有する層である。デンドライト貫通阻止層は、このような機能を奏するものであればよく、後述する無機固体電解質、適宜に、250℃以下で塑性変形する固体粒子(以下、塑性固体粒子という。)又は他の成分を含有し、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含有しない。
デンドライト貫通阻止層は、公知の層(膜)を用いることができ、また適宜に作製することもできる。公知の層としては、後述する酸化物系無機固体電解質、例えばLiPON等で形成した層が挙げられる。本発明において、デンドライト貫通阻止層は、後述する本発明の固体電解質シートの製造方法により、250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質粒子の予備成形体をせん断処理又は加熱処理して得られる、固体電解質層の表面に形成された層を用いることが好ましい。本発明の固体電解質シートの製造方法により形成されるデンドライト貫通阻止層の詳細は未だ明らかではないが、無機固体電解質粒子と塑性固体粒子との混合状態で、後述する特定の処理が施されることにより、割れ及びヒビの発生を抑えて形成された層になっていると考えられる。このようなデンドライト貫通阻止層の状態若しくは特性としては、例えば、塑性固体粒子が塑性変形(塑性流動)して空隙のない状態(この塑性変形により無機固体電解質粒子の間隙を塑性固体粒子が充填する)等が挙げられる。
デンドライト貫通阻止層は、通常、硬質で緻密な層として形成され、粒子で形成される場合、デンドライト貫通阻止層の空隙率は、固体電解質層の空隙率と同等若しくは小さく設定される。デンドライト貫通阻止層の空隙率は、固体電解質層の空隙率と上記関係を満たしていれば特に制限されないが、例えば、3%以下が好ましく、0〜1%がより好ましい。空隙率が上記範囲にあると、デンドライトの貫通を阻止することができる。デンドライト貫通阻止層の空隙率は、固体電解質層の空隙率と同様にして測定できる。ただし、デンドライト貫通阻止層の厚みが1μm以下である場合、デンドライト貫通阻止層の任意の断面に代えて任意の表面を観察することにより、空隙率を算出することもできる。
デンドライト貫通阻止層中における粒子間の空隙の大きさは、上記空隙率を満たす限り特に制限されないが、例えば、観測した空隙数に対して90%以上の割合の空隙が、500nm以下の長辺を有することが好ましく、300nm以下の長辺を有することがより好ましい。下限は、特に制限されないが、実際的には10nm以上である。空隙の大きさは、デンドライト貫通阻止層を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、30000倍で撮影することにより、測定できる。
デンドライト貫通阻止層は、通常、薄層に形成され、その厚さは、特に限定されないが、例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましい。
デンドライト貫通阻止層中の、無機固体電解質粒子、塑性変形を示す固体粒子及び他の成分の含有量は、後述する予備成形体の固形成分100質量%中の含有量(混合割合)と同じである。
<易破壊層>
易破壊層は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質の粒子と、適宜に他の成分とを含有し、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含有しない。他の成分としては、特に制限されないが、後述する予備成形材料で説明する各成分、更には、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質粒子、カーボン等の導電性粒子、リチウムと合金形成可能な金属の粒子等が挙げられる。易破壊層は、無機固体電解質に加えて、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質粒子、導電性粒子及びリチウムと合金形成可能な金属の粒子の少なくとも1種を含有することが好ましく、少なくとも2種以上を含有することも好ましい。これら各成分は、それぞれ、1種でも2種以上でもよい。
表面に金属リチウムを有する無機固体電解質粒子において、易破壊層中では無機固体電解質粒子から金属リチウムが離脱(遊離)していてもよく、この場合、易破壊層は、無機固体電解質粒子と金属リチウムとを含有している(混合物)ということもできる。したがって、本発明において、特に断らない限り、無機固体電解質(粒子)というときは、表面に金属リチウムを有していない無機固体電解質(粒子)を意味するが、易破壊層中において、金属リチウムが共存(解離、遊離等)している場合は、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質(粒子)を含む意味で用いることもある。
固体電解質層が含有する各成分については後述する。
易破壊層は、上記無機固体電解質粒子から形成され、上記イオンを伝導する機能と、上記固体電解質層よりも容易に自己破壊する機能(体積変化等による応力を吸収若しくは緩和する機能)とを有する。本発明において、易破壊層が自己破壊するとは、急速充電若しくは充放電(金属の析出、金属のイオン化)による体積変化、又は、デンドライトの成長によって作用する応力によって、固体電解質層の破壊よりも優先的に、(一部に)割れ若しくはヒビ等の欠陥が生じて破壊されること(互いに結着している粒子が離間する現象)をいう。易破壊層の自己破壊性(自己破壊しやすい程度)は、例えば、後述する実施例における急速充放電条件において、固体電解質層よりも優先して欠陥が発生する程度の易破壊性とすることができる。
易破壊層は、また、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池においては、粒子間の空隙に、負極活物質層として機能しうるアルカリ金属イオン若しくはアルカリ土類金属イオンの析出物を収容する機能をも有する。
上記機能を奏する易破壊層は、一部が自己破壊しても、破壊箇所以外は無機固体電解質の粒子が結着している。また、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池においては、無機固体電解質の粒子間に析出した金属が粒界に沿って連結しうる。そのため、易破壊層は、一部が自己破壊しても、イオンを伝導する3次元の伝導パスが残存しており、イオンを伝導する機能は損なわれない(抵抗劣化しにくい)。しかも、易破壊層は、自身が破壊されることによって、自己破壊の要因となる上記応力、更には自己破壊を起こす割れ、ヒビ等の欠陥を隣接する層(デンドライト貫通阻止層又は固体電解質層)に伝播することを、防止できる。特に、負極活物質としてケイ素系材料又はケイ素元素を含有する合金を用いた全固体二次電池、及び負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池においては、上記体積変化等によって作用する応力が大きくなるが、易破壊層によりこの応力を効果的に吸収若しくは緩和して、隣接する層の破壊を防止できる。よって、本発明の全固体二次電池は、負極活物質層を予め形成する形態はもちろん、負極活物質層を予め形成しない形態であっても、固体電解質層に生じる欠陥(破壊)を防止でき、全固体二次電池の短絡を抑制できる。
とりわけ、デンドライト貫通阻止層を易破壊層と固体電解質層との間に有していると、デンドライト貫通阻止層の破壊も防止されるから、デンドライト貫通阻止層の機能(デンドライトの貫通阻止)を長期にわたって維持でき、短絡の発生を長期間抑制できる。
易破壊層が、金属リチウムを表面に有する無機固体電解質粒子を含有していると、上記の自己破壊性(易破壊性)を保持したまま、負極にリチウムをプレドープすることができ、全固体二次電池の初回充放電時の放電容量損失(Li損失)を補うことができる。また、易破壊層が、導電性粒子を含有していると、全固体二次電池を充放電しても減少しない3次元の電子伝導パスを形成でき、放電末期におけるデッドリチウム化を抑制して、充放電を繰り返しても放電容量を維持する特性(放電容量維持率)を改善することができる。易破壊層が、金属リチウムを表面に有する無機固体電解質と導電性粒子を含有していると、初回充放電時の放電容量損失(Li損失)を補うことができ、しかも放電容量維持率を向上させることができる。易破壊層が、リチウムと合金形成可能な金属の粒子を含有していると、後述するように、短絡が発生するまでの時間を長期化することができる。
易破壊層は、上記機能を発現する層であればよいが、本発明においては、無機固体電解質の粒子間に空隙を有しており、易破壊層中の空隙率を15%以上に設定されている。これにより、イオン伝導性を有しつつも、固体電解質層よりも軟質で低強度の(粒子間の結着力が弱い)層になっていて自己破壊しやすく、しかも小さな体積変化で粒子間の空隙に金属の析出を可能とする。本発明において、易破壊層の空隙率は、イオン伝導性、自己破壊性及び金属の析出をバランスよく兼ね備える点で、好ましくは15〜50%、より好ましくは20〜35%である。易破壊層が自己破壊した場合、破壊部分の空隙率は、未破壊部分の上記空隙率と同じであっても変動(減少若しくは増加)してもよい。
易破壊層の空隙率は、固体電解質層の空隙率と同様にして測定できる。
易破壊層中における粒子間の空隙の大きさは、上記空隙率を満たす限り特に制限されないが、例えば、観測した空隙数に対して90%以上の割合の空隙が、1μm以上の長辺を有することが好ましく、10μm以下の長辺を有することが好ましい。空隙の大きさは、デンドライト貫通阻止層における空隙の大きさと同様にして測定できる。
易破壊層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜100μmが好ましく、3〜80μmがより好ましい。
易破壊層中の、無機固体電解質粒子、他の成分等の含有量は、後述する易破壊層用組成物中の固形成分100質量%中の含有量(混合割合)と同じである。
<正極活物質層>
正極活物質層は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、正極活物質と、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分とを含有する。また、全固体二次電池の未充電状態においては、後述する負極活物質前駆体を含有していることが好ましい態様の1つである。無機固体電解質、正極活物質、負極活物質前駆体及び他の成分については後述する。
正極活物質層中の、正極活物質、無機固体電解質、負極活物質前駆体及び他の成分の含有量は、後述する正極用組成物における固形成分100質量%中の含有量と同じである。
正極活物質層に負極活物質前駆体を含有させると、全固体二次電池の製造時に活性の高い材料(例えばリチウム金属)を用いることなく、金属元素のイオンを補充(ドープ)することができ、電池容量の向上が期待できる。
負極活物質前駆体を含有する正極活物質層は、後述するSi負極(負極活物質としてケイ素材料又はケイ素含有合金)、又は後述する負極活物質層を予め形成しない形態に適用することが好ましい。負極活物質層として上述のSi負極(負極活物質としてケイ素材料又はケイ素含有合金)を採用する場合、ケイ素材料又はケイ素含有合金は不可逆容量が大きく、Si負極は、通常、初回の充電によるリチウム量の目減りが大きいという問題がある。また、負極活物質層を予め形成しない形態においても、Si負極と同様に初回の充電によるリチウム量の目減りが大きくなる。しかし、Si負極を備えた全固体二次電池及び負極活物質層を予め形成しない形態における全固体二次電池の正極活物質層を、負極活物質前駆体を含有する正極用組成物で形成することにより、上記リチウムを補充(ドープ)して(Si負極内若しくはSi粒子表面等の負極活物質層等にリチウム金属を析出させて)、上記特有の問題を抑制できる。また、正極活物質層に負極活物質前駆体を含有させると、充電時における負極集電体の、リチウム金属析出による膨張を、正極活物質層で発生した空隙がキャンセルして固体電解質層の破壊を防止できるため、デンドライトの正極への到達をより効果的に抑制できる。
特に炭酸塩は、酸化分解により、金属元素のイオンと炭酸イオンを発生して、消失する。発生した金属元素のイオンは負極活物質層の構成材料となり、炭酸イオンは炭酸ガスに変化して層外に放出される。そのため、炭酸塩は、分解物を含めて正極活物質層中に残存せず、炭酸塩の含有による電池特性の低下を避ける(エネルギー密度を向上させる)ことができる。
<負極活物質層>
負極活物質層は、負極活物質、所望により周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質、更には他の成分を含有する層、リチウム金属層等が採用される。無機固体電解質、負極活物質及び他の成分については後述する。
負極活物質層を構成しうるリチウム金属層とは、リチウム金属の層を意味し、具体的には、リチウム粉末を堆積又は成形してなる層、リチウム箔及びリチウム蒸着膜等を包含する。
負極活物質層中の、負極活物質、無機固体電解質及び他の成分の含有量は、後述する負極用組成物における固形成分100質量%中の含有量と同じである。
本発明においては、上述の利点を維持しつつも短絡の発生を効果的に防止できる点で、負極活物質層を予め形成しない形態が特に好ましい。
本発明において、負極活物質層は、充放電による負極の体積膨張及び体積収縮が小さい点で、炭素質材料を含む負極活物質層が好ましく、充放電による負極の体積膨張及び体積収縮を吸収でき、また固体電解質層の一方の表面(全固体二次電池において負極側に配置される表面)を保護できる点で、リチウム金属層、特にリチウム箔が好ましい。一方、電池容量の点では、負極活物質層を予め形成しない形態が好ましく、高い電池容量を達成できる上、短絡の発生を効果的に防止できる点では、Si負極が好ましい。負極活物質層がSi負極又は負極活物質層を予め形成しない形態において充電により金属イオンを補充する場合、Si負極及び上記形態の利点を活かしつつも、電池容量及びエネルギー密度の向上を図ることができる。
<負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さ>
負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に限定されない。各層の厚さは、それぞれ、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。負極活物質層を予め形成しない形態における負極活物質層の厚さは、充電により析出する金属量により変動するので、一義的に決定されない。全固体二次電池においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。負極活物質層としてリチウム金属層を採用する場合、このリチウム金属層の厚さは、負極活物質層の上記厚さにかかわらず、例えば、0.01〜100μmとすることができる。
<集電体>
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
<リチウムと合金形成可能な金属の膜>
リチウムと合金形成可能な金属の膜は、上記のように易破壊層と負極集電体の間に配置される。この金属の膜は、通常、負極集電体の表面(固体電解質層側に配置される表面)又は易破壊層の表面に設けて配置される。
リチウムと合金形成可能な金属の膜は、リチウムと合金形成可能な金属で形成された金属膜であれば特に制限されない。リチウムと合金形成可能な金属としては、後述する負極活物質で説明する、Sn、Al、In等に加えて、Zn、Bi、Mg等の各金属が挙げられる。中でも、Zn、Bi等が好ましい。
この金属膜の厚さは、特に制限されないが、300nm以下であることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましく、30〜50nmであることが更に好ましい。
負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池に上記金属の膜を組み込むと、充電によるリチウム金属の析出状態を効果的に制御することができ、短絡発生を更に効果的に抑制できる(短絡が発生するまでの時間を長期化(充放電サイクル数を伸ばすことが)できる。)。すなわち、充電によりリチウム金属が、固体電解質層との界面に一様に配置された金属膜を形成する金属と合金を形成して析出するため、局所的なリチウム金属の析出を抑制できる。これにより、デンドライトの正極への到達を効果的に抑制できると考えられる。また、デンドライトの正極への到達を抑制する易破壊層の膜厚を薄くできるため、易破壊層形成によるエネルギー密度の低下を小さくできる。
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層若しくは部材等を適宜介在若しくは配設してもよい。また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
<筐体>
本発明の全固体二次電池の製造方法により製造される全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池等の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることも好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金及びステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
[固体電解質シート]
本発明の固体電解質シートは、空隙率が10%以下の固体電解質層と空隙率が15%以上の易破壊層とを積層したシートであって、全固体二次電池の固体電解質層及び易破壊層として用いうるシート状成形体である。この固体電解質シートの易破壊層は、全固体二次電池が負極活物質層を予め形成しない形態である場合、負極活物質層を形成する層(金属リチウムを析出させる層ともいい、負極集電体を有する態様においては、この負極集電体に隣接する層)として好適に用いることもできる。この場合、固体電解質シートは、易破壊層上に、直接又は他の層を介して、リチウムと合金形成可能な金属の膜を有していることが好ましい。
また、この固体電解質シートは、後述する全固体二次電池用負極シートの製造に好適に用いることもできる。更に、全固体二次電池用正極シートの製造に用いることもできる。
本発明の固体電解質シートは、固体電解質層と易破壊層とが直接積層された形態と、他の層を介して積層された形態とを含む。他の層としては後述する無機固体電解質を含有する層であればよく、好ましくは上述のデンドライト貫通阻止層が挙げられる。すなわち、他の層を介して積層された形態としては、固体電解質層と、易破壊層と、固体電解質層及び易破壊層の間に上述のデンドライト貫通阻止層とを有する固体電解質層シートが好ましい。このシートにおいて、デンドライト貫通阻止層は、固体電解質層に隣接していることが好ましく、固体電解質層及び易破壊層に隣接していることがより好ましい。
本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質シートを用いて言うと、固体電解質シートにおける固体電解質層の、易破壊層とは反対側の表面に正極活物質層を有する構成である。
この固体電解質シートが備えている固体電解質層、デンドライト貫通阻止層及び易破壊層は、上記全固体二次電池において説明した対応する各層と同じであるので、説明を省略する。
本発明の固体電解質シートは、全固体二次電池の負極活物質層となる層を有さないが、固体電解質層の他に、基材、上述の、リチウムと合金形成可能な金属の膜、更には他の層等を有してもよい。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、上記集電体で説明した材料、有機材料及び無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン及びセルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス及びセラミック等が挙げられる。
他の層としては、例えば、保護層(剥離シート)、集電体、コート層、正極活物質層等が挙げられる。固体電解質シート、特に負極活物質層を予め形成しない形態に用いる固体電解質シート(例えば上記金属膜を有するもの)は、金属膜の、固体電解質層とは反対側に負極集電体を有していることが好ましい。
他の層として正極活物質層を有する場合、正極活物質層は、固体電解質層の易破壊層9とは反対側に設けられ、正極活物質層の、固体電解質層とは反対側に正極集電体を有することが好ましい。本発明において、固体電解質シートが正極活物質層を有する場合、全固体二次電池用正極シートということもできる。この全固体二次電池用正極シートが備えている正極活物質層及び固体電解質層は、上記全固体二次電池において説明した正極活物質層及び固体電解質層と同じであるので、説明を省略する。
本発明において、固体電解質シート、下記全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池用正極シートを合わせて、全固体二次電池用シートということができ、固体電解質シートは、全固体二次電池用正極シートを含む概念である。
[全固体二次電池用負極シート]
本発明の全固体二次電池用負極シートは、本発明の固体電解質シートにおける易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面に負極活物質層を備えており、好ましくは、負極活物質層の表面と易破壊層の表面とが接した状態に積層されている。すなわち、この全固体二次電池用負極シートは、固体電解質層と、易破壊層と、負極活物質層とを有し、好ましくは固体電解質層及び易破壊層の間にデンドライト貫通阻止層を有している。この全固体二次電池用負極シートは、全固体二次電池の負極活物質層、易破壊層及び固体電解質層、好ましくは負極活物質層、易破壊層、デンドライト貫通阻止層及び固体電解質層として用いうるシート状成形体である。
本発明の全固体二次電池は、本発明の全固体二次電池用負極シートを用いて言うと、全固体二次電池用負極シートにおける固体電解質層の、易破壊層若しくは負極活物質層とは反対側の表面に正極活物質層を有する構成である。
この固体電解質シートが備えている負極活物質層、易破壊層、デンドライト貫通阻止層及び固体電解質層は、上記全固体二次電池において説明した対応する各層と同じであるので、説明を省略する。
全固体二次電池用負極シートは、負極活物質層、易破壊層、デンドライト貫通阻止層及び固体電解質層の他に、基材(集電体)、他の層等を有してもよい。基材及び他の層としては上述の通りである。
[本発明の製造方法]
次に、本発明の全固体二次電池の製造方法を、本発明の固体電解質シートの製造方法及び本発明の全固体二次電池用負極シートの製造方法とともに、説明する。
全固体二次電池を製造するに際して、固体電解質シート、更には適宜に全固体二次電池用負極シート等を準備する。
<固体電解質シートの製造方法>
固体電解質層及び易破壊層を有し、デンドライト貫通阻止層を有さない固体電解質シートは、公知の方法又は後述するサブ工程A1−3により固体電解質層を作製し、例えば後述するサブ工程B1により易破壊層を作製し、これらを圧着積層することにより、得られる。固体電解質層を作製する方法は、上述の範囲の空隙率を満たす方法であればよい。圧着積層する方法としては、例えば、後述する本発明の全固体二次電池用負極シートの製造方法における、負極活物質を易破壊層に圧着積層する方法及び条件を適用できる。
一方、固体電解質層、デンドライト貫通阻止層及び易破壊層を有する固体電解質シートは、下記工程A及び工程Bを順に行う本発明の固体電解質シートの製造方法により、製造することができる。
本発明において、「工程を順に行う」とは、ある工程と他の工程とを行う時間的先後を意味するものであって、ある工程と他の工程との間に別の工程(休止工程を含む。)を行う態様も包含する。また、ある工程と他の工程とを順に行う態様には、時間、場所又は実施者を適宜に変更して行う態様も包含する。

工程A:250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質粒子を予備加圧成形し、得られた予備成形体の表面をせん断処理又は加熱して、空隙率が10%以下の固体電解質層の表層としてデンドライト貫通阻止層を形成する工程
工程B:空隙率が15%以上の易破壊層をデンドライト貫通阻止層に圧着積層する工程
(工程A:固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層を形成する工程)
工程Aは、せん断処理を行う形態と、加熱処理を行う形態との両形態からなり、いずれか一方の形態を実施する。

せん断処理を行う形態としては、下記サブ工程A1−1及びA1−2を、好ましくは更に下記サブ工程A1−2の後にサブ工程A1−3を、この順に、行う。
サブ工程A1−1:250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質粒子を予備成形する工程
サブ工程A1−2:上記予備成形する工程で得られた予備成形体の一方の表面をせん断処理する工程
サブ工程A1−3:せん断処理した予備成形体に垂直圧力を加えて本成形する工程

加熱処理を行う形態としては、下記サブ工程A2−1、A2−2及びA2−3を順に行う。
サブ工程A2−1:250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質粒子を、固体粒子のガラス転移温度未満の温度で予備加圧成形する工程
サブ工程A2−2:得られた予備成形体を、上記ガラス転移温度以上の温度に加熱する工程
サブ工程A2−3:加熱した予備成形体を、上記ガラス転移温度未満の温度で、上記工程Aの予備加圧成形よりも高い加圧力で本成形する工程
まず、工程Aとして、せん断処理を行う形態について説明する。
− サブ工程A1−1:予備加圧成形する工程 −
サブ工程A1−1を実施するに際して、250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質粒子を、予備成形材料として、準備する。この250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質粒子は、通常、250℃以下で塑性変形する固体粒子と無機固体電解質粒子との混合物を意味するが、無機固体電解質粒子が250℃以下で塑性変形する固体粒子にも相当する場合(例えば硫化物系無機固体電解質)、この無機固体電解質粒子と他の(250℃以下で塑性変形しない)無機固体電解質との混合物、更には250℃以下で塑性変形する1種若しくは2種以上の無機固体電解質粒子のみ(無機固体電解質粒子群)を用いることもできる。本発明においては、250℃以下で塑性変形する固体粒子及び無機固体電解質として硫化物系無機固体電解質を用いる態様が好ましい。予備成形材料に用いる塑性固体粒子及び無機固体電解質粒子は、それぞれ、1種若でも2種以上でもよい。
(1−1) 250℃以下で塑性変形する固体粒子
250℃以下で塑性変形する固体粒子(塑性固体粒子)は、250℃以下で塑性変形可能な特性若しくは物性を有する粒子であれば特に制限されない。このような粒子を用いると、後述するサブ工程A1−2により、予備成形体の表面を、デンドライトの成長をブロック可能で、しかも割れ及びヒビの発生を抑えた表面にすることができる。
塑性固体粒子としては、例えば、後述する硫化物系無機固体電解質、五酸化二リン、窒化ホウ素−硫黄混合物等が挙げられ、中でも、硫化物系無機固体電解質が好ましい。これらの塑性固体粒子は、適宜に合成してもよく市販品を用いることができる。例えば、窒化ホウ素−硫黄混合物の合成方法として次の方法が挙げられる。すなわち、長辺0.4μmの鱗片状の六方晶窒化ホウ素(hBN)と硫黄とを質量比1:2の割合に設定して乳鉢で混合した後、温度170℃、圧力130MPaの条件でホットプレスして膜体とし、得られた膜体を乳鉢ですりつぶして粉体とする。これにより、麟片状のhBN粒子の間に、熱溶融した硫黄が充填され、塑性変形性を示す固体粒子とすることができる。
塑性固体粒子が250℃以下で塑性変形可能な特性若しくは物性を有する粒子であるか否かは、以下のようにして、判断できる。すなわち、微小硬度試験機にて、バーコビッチ圧子を用いて最大押し込み加重100mN、負荷時間10秒、クリープ5秒、除加時間10秒で押し込み試験を行い、試験後に試料損傷が無く、押し込み試験の前後で得られた変位−荷重曲線から、クリープ後の圧入深さと、除荷後の圧入深さの差分がクリープ後圧入深さの10%以上であれば、塑性変形可能な特性を有すると判断する。測定温度は、上限を250℃とし、塑性変形が可能な温度で行う。具体的には、測定温度が250℃に到達するまでに上記差分が10%以上となれば、250℃以下で塑性変形する固体粒子とする。なお、押し込み加重は、試料全体の情報が得られるように、試験片として用いた、塑性固体粒子を成形した膜について、その膜厚の1/10程度となるように設定する。
塑性固体粒子は、ガラス転移温度を有することが好ましい。塑性固体粒子のガラス転移温度を超える温度でせん断処理をすることにより、予備成形体のせん断処理面に発生しうる割れ、ヒビ等の欠陥発生を効果的に防止できる。塑性固体粒子のガラス転移温度は、特に制限されないが、例えば、70〜250℃であることが好ましく、75〜200℃であることがより好ましい。ガラス転移温度の測定方法は、密封セル示差走査熱量計(SC−DSC)を用いて、塑性固体粒子約2mgを昇温速度10℃/分で測定し、発熱ピークから測定することができる。測定はステンレス鋼製の密閉容器を用いて容器内雰囲気を窒素ガス雰囲気とする。
本発明において、塑性固体粒子が複数のガラス転移温度を有する場合、温度条件としてガラス転移温度を基準とする工程においては、最も低温のガラス転移温度を基準とすることが好ましい。
塑性固体粒子において、塑性変形温度、ガラス転移温度は、下記の関係を有している。
塑性変形温度は、ガラス転移温度よりも低い温度であることが好ましく、複数のガラス転移温度が確認される場合、最も低温のガラス転移温度よりも低い温度であることが好ましいことが好ましい態様の1つである。
塑性固体粒子の粒子径(体積平均粒子径)は特に限定されないが、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。なお、塑性固体粒子の平均粒子径は後述する無機固体電解質粒子の平均粒子径と同様にして測定した値である。
本発明において、塑性固体粒子として無機固体電解質粒子を用いる場合、下記に示す無機固体電解質の中から塑性変形温度、好ましくはガラス転移温度が上記温度範囲にあるものを適宜に選択して用いる。
(1−2) 無機固体電解質粒子
予備成形材料に用いる無機固体電解質粒子は、下記の無機固体電解質の粒子である。
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF、LiFSI、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に制限されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
無機固体電解質は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有する。無機固体電解質は、この種の製品に適用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質としては、(i)硫化物系無機固体電解質、(ii)酸化物系無機固体電解質、(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質、及び、(iV)水素化物系固体電解質が挙げられ、高いイオン伝導度と粒子間界面接合の容易さの点、更には塑性固体粒子としても兼用できる点で、硫化物系無機固体電解質が好ましい。
本発明の全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池である場合、無機固体電解質はリチウムイオンのイオン伝導度を有することが好ましい。
(i) 硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
硫化物系無機固体電解質としては、例えば、下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性硫化物系無機固体電解質が挙げられる。

a1b1c1d1e1 式(I)

式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。d1は2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
各元素の組成比は、下記のように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合比を調整することにより制御できる。
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、P及びSを含有するLi−P−S系ガラス、又はLi、P及びSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(LiS)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS、SnS、GeS)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
Li−P−S系ガラス及びLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは60:40〜90:10、より好ましくは68:32〜78:22である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
具体的な硫化物系無機固体電解質の例として、原料の組み合わせ例を下記に示す。例えば、LiS−P、LiS−P−LiCl、LiS−P−HS、LiS−P−HS−LiCl、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SiS−LiCl、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。ただし、各原料の混合比は問わない。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法、溶液法及び溶融急冷法を挙げられる。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
(ii) 酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbbb mbnb(MbbはAl、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)、Lixcyccc zcnc(MccはC、S、Al、Si、Ga、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0<xc≦5を満たし、ycは0<yc≦1を満たし、zcは0<zc≦1を満たし、ncは0<nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3−2xe)ee xeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO−LiSO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質
ハロゲン化物系無機固体電解質は、ハロゲン原子を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
ハロゲン化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiCl、LiBr、LiI、ADVANCED MATERIALS,2018,30,1803075に記載のLiYBr、LiYCl等の化合物が挙げられる。中でも、LiYBr、LiYClを好ましい。
(iV)水素化物系無機固体電解質
水素化物系無機固体電解質は、水素原子を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
水素化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiBH、Li(BHI、3LiBH−LiCl等が挙げられる。
本発明の固体電解質シートの製造方法に用いる無機固体電解質は粒子である。一方、本発明の全固体二次電池用負極シートの製造方法及び正極活物質層の形成に用いる無機固体電解質は粒子であることが好ましい。無機固体電解質の粒子径(体積平均粒子径)は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、無機固体電解質粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調整する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJIS Z 8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
無機固体電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(1−3) 他の成分
予備成形材料は、固体電解質層に含有してもよい他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、バインダー、添加剤、後述する分散媒等が挙げられる。
バインダーとしては有機ポリマーが挙げられ、全固体二次電池の製造に用いられる公知の有機ポリマーを特に制限されることなく用いることができる。このような有機ポリマーとしては、例えば、含フッ素樹脂、炭化水素系熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。バインダーは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。予備成形材料がバインダーを含む場合、予備成形材料(固形成分)中のバインダーの含有量は、特に制限されないが、例えば、0.1〜10質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜5質量%が更に好ましい。
上記添加剤としては、例えば、増粘剤、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。
(1−4) 予備成形材料の調製
予備成形材料が2種以上の成分で調製される場合、各成分を混合して予備成形材料を調製する。例えば、予備成形材料は、塑性固体粒子と無機固体電解質粒子と、適宜に他の成分を混合して得られる。混合方法は、特に制限されず、ボールミル、ビーズミル、ディスクミル等の公知の混合機を用いた方法が挙げられる。また、混合条件も、特に制限されないが、混合雰囲気としては、後述する予備加圧成形での雰囲気と同じであり、好ましい雰囲気も同じである。
塑性固体粒子と無機固体電解質粒子との混合割合は、塑性固体粒子の塑性変形性、せん断処理条件、各工程での温度条件若しくは加圧条件、更には全固体二次電池の具体的な用途等に応じて、適宜の割合に設定される。例えば、無機固体電解質の、予備成形材料中の含有量は、特に制限されず、全固体二次電池に用いたときの界面抵抗の低減と低減された界面抵抗の維持を考慮したとき、固形成分100質量%において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。塑性固体粒子の、予備成形材料中の含有量は、特に制限されず、固形成分100質量%において、1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましい。予備成形材料中の、無機固体電解質粒子及び塑性固体粒子の合計含有量は、固形成分100質量%において、100質量%以下であり、80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。
本発明において、固形成分(固形分)とは、予備成形材料に、1mmHgの気圧及び窒素雰囲気下、130℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発若しくは蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
他の成分の、予備成形材料中の含有量は、特に制限されず、適宜設定される。
(1−5) 予備成形材料の予備加圧成形
サブ工程A1−1においては、準備(調製)した予備成形材料を、通常層状又は膜状に、予備成形する。
サブ工程A1−1における成形方法は、予備成形材料を所定の形状に成形できる方法であればよく、公知の各種成形方法を適用することができ、プレス成形(例えば油圧シリンダープレス機を用いたプレス成形)が好ましい。成形時の加圧力は、特に限定されないが、通常、50〜1500MPaの範囲に設定されることが好ましく、100〜300MPaの範囲に設定されることがより好ましい。サブ工程A1−1における加圧力としては、後述するサブ工程A1−3を行う場合、上記範囲内において、サブ工程A1−3の本成形での加圧力よりも低く設定されることが更に好ましい。予備成形(プレス)時間は、短時間(例えば数時間以内)でも、長時間(1日以上)でもよい。
予備成形の加圧と同時に成形材料を加熱してもよいが、本発明においては、非加熱で予備成形することが好ましく、例えば、10〜50℃の環境温度で予備成形することが好ましい。なお、成形材料を加熱する場合、塑性固体粒子が塑性変形しない条件に設定する。
予備成形中の雰囲気としては、特に限定されず、大気下、乾燥空気下(露点−20℃以下)及び不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)などいずれでもよい。無機固体電解質は水分と反応するため、予備成形中の雰囲気は、乾燥空気下又は不活性ガス中が好ましい。
この工程において、予備成形材料を支持する上記基材又は集電体を用いることもできる。
このようにして、サブ工程A1−1を実施することにより、塑性固体粒子を含む無機固体電解質粒子の予備成形体が得られる。サブ工程A1−1により得られる予備成形体の空隙率は、特に制限されないが、後述するサブ工程A1−3を実施しない場合、10%以下に設定されることが好ましい。一方、後述するサブ工程A1−3を実施する場合、最終的に得られる固体電解質層の空隙率が10%以下となるように、予備成形体の空隙率を適宜に設定できる。空隙率は後述する工程Bにより調整してもよい。
(1−6) サブ工程A1−2:せん断処理する工程
次いで、得られた予備成形体の一方の表面(塑性固体粒子が存在する)をせん断処理する。
本発明において、塑性固体粒子が存在する表面をせん断処理するとは、予備成形体の表面にせん断力を作用させて、この表面を、デンドライトの成長をブロック可能で、しかも割れ及びヒビが生じにくい表面(表層)に、調製する処理をいう。せん断処理は、塑性固体粒子が存在する表面を上記表面に調製する点で、単に、酸化物系無機固体電解質の焼結体(塑性固体粒子が存在しない)の表面を平滑にする研磨処理とは異なる。
せん断処理において、予備成形体の表面に作用させるせん断力は、予備成形体の表面(単位面積当たり)に作用した(伝達された)最小せん断エネルギーで表すことができるが、塑性固体粒子の塑性変形性、塑性固体粒子の混合割合(更には表面に存在する割合)等に応じて適宜に設定され、一義的に決定されるものではない。せん断処理として後述する表面ブラッシング方法を採用する場合、単位面積当たりの最小せん断エネルギーは、ブラシ回転数×処理時間×摩擦力で、定義される。単位面積当たりの最小せん断エネルギーの一例を挙げると、100(gf/mm)・mm(1000Pa・m)以上に設定することができる。ブラシの回転数、処理時間及び摩擦力も適宜に設定され、例えば、ブラシの回転数としては、100〜15000rpmが挙げられ、処理時間としては、0.01〜30分が挙げられる。より具体的には、例えば、後述する実施例で適用した条件が挙げられる。
せん断処理する方法は、予備成形体の表面を上記特定の表面に調製できる限り特に制限されず、例えば、(塑性固体粒子よりも硬質の金属ブラシを用いた)表面ブラッシング方法、金属ブレードで表面をこする方法等が挙げられ、生産性、生産コストの点で、表面ブラッシング方法が好ましい。
予備成形体の表面にせん断力を作用させる方向等も、表面に平行な方向であれば特に制限されず、一方向に沿う方向でもよく、複数方向に沿う方向、周方向に沿う方向、又はこれらを組み合わせた方向等が挙げられる。
せん断処理する際の雰囲気は、上記予備成形での雰囲気と同じであり、好ましい雰囲気も同じである。
サブ工程A1−2においては、塑性固体粒子のガラス転移温度を超える温度に予備成形体を加熱して、すなわち、予備成形体の温度を塑性固体粒子のガラス転移温度を超える温度に設定して、行うことが好ましい。このような加熱下でせん断処理することの利点は上記の通りである。サブ工程A1−2において予備成形体に好ましく設定される上記温度は、塑性固体粒子のガラス転移温度(Tg)に対して5℃以上高い温度(Tg+5℃以上の温度)であることが好ましく、ガラス転移温度に対して10〜150℃高い温度であることがより好ましい。加熱温度の上限は、特に制限されないが、例えば250℃とすることができる。加熱温度は、塑性変形粒子を効果的に塑性変形させる点で、塑性固体粒子が塑性変形する温度以上であることが好ましい。
このようにしてサブ工程A1−2を実施することにより、せん断処理された表面(デンドライト貫通阻止層)を有する予備成形体が得られる。好ましくは上記条件でサブ工程A1−2を実施することにより、このデンドライト貫通阻止層の空隙率は、後述するサブ工程A1−3を実施しない場合、予備成形体の空隙率と同等又は小さく設定されることが好ましい。一方、後述するサブ工程A1−3を実施する場合、最終的に得られる固体電解質層の空隙率と同等又は小さくなるように適宜に設定できる。空隙率は後述する工程Bにより調整してもよい。
(7) サブ工程A1−3:本成形する工程
サブ工程A1−3は、サブ工程A1−2で得られた予備成形体に垂直圧力を加えて本成形する工程である。サブ工程A1−3により、サブ工程A1−2で形成されたデンドライト貫通阻止面に割れ、ヒビ等の欠陥を発生させることなく、固体電解質層を形成できる。
本成形する方法は、予備成形体に垂直圧力を加えて成形する方法であればよく、例えば、予備成形法として挙げたプレス成形が好ましい。この本成形工程(とりわけプレス成形)は、非加熱で高い加圧力に設定すること以外は、サブ工程A1−1の予備成形法(プレス成形)と同じ成形法を採用することができる。本成形工程における温度条件は、予備成形体の非加熱状態での温度であればよく、例えば、0〜50℃の環境温度に設定することができる。本成形工程における加圧力は、予備成形工程での加圧力よりも高く設定されることが好ましく、通常、100〜1000MPaの範囲に設定されることがより好ましく、150〜600MPaの範囲に設定されることが更に好ましい。予備成形工程での加圧力と本成形工程における加圧力との圧力差は、特に制限されないが、例えば、10〜1000MPaが好ましく、100〜400MPaがより好ましい。加圧方向は、予備成形体の被加圧面に対して垂直方向であって(垂直圧力)、通常、工程Aにおける加圧方向と同じである。好ましくは上記条件でサブ工程A1−3を実施することにより、固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層の空隙率をそれぞれ上述の範囲に設定することが好ましい。空隙率は後述する工程Bにより調整してもよい。
このようにして、サブ工程A1−1及びサブ工程A1−2、好ましくはサブ工程A1−3をこの順に実施することにより、表層としてデンドライト貫通阻止層が形成された固体電解質層を有する固体電解質シートが得られる。この固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層は、全固体二次電池の固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層と同じである。
次に、工程Aとして、加熱処理を行う形態(工程A2)について説明する。
(2−1) サブ工程A2−1:予備加圧成形する工程
サブ工程A2−1を実施するに際して、サブ工程A1−1と同様にして、予備成形材料を準備又は調製する。
加熱処理を行う形態においては、上記塑性固体粒子のガラス転移温度を基準に、予備成形材料について、サブ工程A2−1の予備加圧成形、サブ工程A2−2の加熱及びサブ工程A2−3の本成形をこの順で行うことにより、予備成形体に、割れ、ヒビ等の欠陥発生を効果的に防止したデンドライト貫通阻止面を形成することができる。
サブ工程A2−1における予備加圧成形は、温度条件以外は、上記サブ工程A−1の予備加圧成形と同じである。すなわち、サブ工程A2−1においては、準備(調製)した予備成形材料を、塑性固体粒子のガラス転移温度未満の温度で、通常層状又は膜状に、予備加圧成形する。このときの温度条件は、塑性固体粒子のガラス転移温度未満の温度であればよく、例えば、0〜100℃に設定できるが、本発明においては、非加熱で予備加圧成形することが好ましく、例えば、10〜50℃の環境温度で予備加圧成形することが好ましい。
このようにして、サブ工程A2−1を実施することにより、塑性固体粒子を含む無機固体電解質粒子の予備成形体が得られる。サブ工程A2−1により得られる予備成形体の空隙率は、サブ工程A1−1により得られる予備成形体の空隙率と同じである。
(2−2) サブ工程A2−2:加熱する工程
次いで、得られた予備成形体を、塑性固体粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱する(加熱処理という。)。これにより、例えば塑性固体粒子が塑性変形(組成流動)して、サブ工程A2−3の本成形時に固体電解質層に割れ及びヒビが生じにくい表面を形成できる。サブ工程A2−2における加熱温度は、塑性固体粒子のガラス転移温度以上であればよいが、このガラス転移温度を超える温度が好ましく、ガラス転移温度(Tg)に対して5℃以上高い温度(Tg+5℃以上の温度)であることがより好ましく、ガラス転移温度に対して10〜150℃高い温度であることが更に好ましい。加熱温度の上限は、特に制限されないが、例えば250℃とすることができる。加熱温度は、塑性変形粒子を効果的に塑性変形させる点で、塑性固体粒子が塑性変形する温度以上であることが好ましい。加熱時間は、予備成形体にデンドライト貫通阻止面を形成できる時間であればよく、塑性固体粒子の塑性変形性、塑性固体粒子の混合割合、上記加熱温度等に応じて適宜に設定され、一義的に決定されるものではない。加熱時間は、例えば0.1〜120分に設定することができる。
サブ工程A2−2においては、上述の加熱処理のみでもよいが、上記温度に加熱した状態で、予備成形体の(塑性固体粒子が存在する)表面、通常、一方の表面をせん断処理すること(加熱せん断処理という。)が好ましい。サブ工程A2−2において、予備成形体の表面をせん断処理するとは、予備成形体の表面にせん断力を熱に加えて作用させて、この表面を、デンドライトの成長をブロック可能で、しかも割れ及びヒビが生じにくい表面に、調製する処理をいう。サブ工程A2−2において、加熱せん断処理することにより、加熱処理及びせん断処理による効果がより一層高められ、予備成形体の表面を、デンドライトの成長を効果的にブロック可能で、しかも割れ及びヒビが生じにくい表層に、調製することができる。加熱下で行うせん断処理は、塑性固体粒子が存在する表面を上記表層に調製する点で、単に、酸化物系無機固体電解質の焼結体(塑性固体粒子が存在しない)の表面を平滑にする研磨処理とは異なる。
加熱せん断処理は、加熱下で行うこと以外は、上記サブ工程A1−2のせん断処理する工程と同じである。
このようにしてサブ工程A2−2を実施することにより、加熱処理、好ましくは加熱せん断処理された表面(デンドライト貫通阻止面)を有する予備成形体が得られる。好ましくは上記条件でサブ工程A2−2を実施することにより、このデンドライト貫通阻止層の空隙率は、最終的に得られる固体電解質層の空隙率と同等又は小さく設定される。ただし、後述する工程Bにより空隙率を固体電解質層と同等又は小さくなるように調整する場合は、デンドライト貫通阻止層の空隙率は固体電解質層よりも大きくてもよい。
(2−3) サブ工程A2−3:本成形する工程
サブ工程A2−3は、サブ工程A2−2で得られた予備成形体を、上記塑性固体粒子のガラス転移温度未満の温度においてサブ工程A2−1の予備加圧成形よりも高い加圧力の条件で、本成形する工程である。サブ工程A2−3により、サブ工程A2−2で形成されたデンドライト貫通阻止層に割れ、ヒビ等の欠陥を発生させることなく、固体電解質層を形成できる。
本成形する方法は、予備成形体に垂直圧力を加えて成形する方法であればよく、例えば、予備成形法として挙げたプレス成形が好ましい。この本成形工程(とりわけプレス成形)は、加圧力をサブ工程A2−1の予備成形法よりも高く設定すること以外は、サブ工程A2−1の予備成形法(プレス成形)と同じ成形法を採用することができる。
本成形工程における温度条件は、塑性固体粒子のガラス転移温度未満の温度であればよく、サブ工程A2−1の温度条件を採用できるが、サブ工程A2−1の温度条件と同一条件に設定する必要はない。
本成形工程における加圧力は、予備成形工程での加圧力よりも高く設定されることが好ましく、通常、100〜1000MPaの範囲に設定されることがより好ましく、150〜600MPaの範囲に設定されることが更に好ましい。予備成形工程での加圧力と本成形工程における加圧力との圧力差は、特に制限されないが、例えば、10〜1000MPaが好ましく、100〜400MPaがより好ましい。加圧方向は、予備成形体の被加圧面に対して垂直方向であって(垂直圧力)、通常、サブ工程A2−1における加圧方向と同じである。好ましくは上記条件でサブ工程A2−3を実施することにより、固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層の空隙率をそれぞれ上述の範囲に設定できる。
このようにして、サブ工程A2−1、サブ工程A2−2及びサブ工程A2−3をこの順に実施することにより、表層として、割れ、ヒビ等の欠陥発生を効果的に防止したデンドライト貫通阻止層が形成された固体電解質層を有する固体電解質シートが得られる。この固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層は、全固体二次電池の固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層と同じである。
(工程B:易破壊層をデンドライト貫通阻止層に圧着積層する工程)
本発明の固体電解質シートの製造方法においては、次いで、工程Bを実施する。
− 易破壊層を作製するサブ工程B1 −
工程Bを実施するに際して、空隙率が15%以上の易破壊層を作製する。
易破壊層を形成する無機固体電解質は、上述の、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質の粒子であってもよく、この粒子からなる成形体として用いてもよい。無機固体電解質は、上述の予備成形体で挙げた他の成分、分散媒と混合され、易破壊層用組成物として用いることもできる。易破壊層用組成物は、無機固体電解質に加えて、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質の粒子、導電性粒子及びリチウムと合金形成可能な金属の粒子の少なくとも1種を含有することが好ましく、少なくとも2種以上を含有することも好ましい。無機固体電解質、他の成分、分散媒等は、全固体二次電池に用いられるものを特に制限されることなく用いることができ、例えば予備成形材料で説明した成分を上記含有量で用いることができる。これら各成分は、それぞれ、1種でも2種以上でもよい。
−−表面に金属リチウムを有する無機固体電解質(粒子)−−
表面に金属リチウムを有する無機固体電解質の粒子(リチウム付着固体電解質粒子ともいう。)は、無機固体電解質粒子の表面に金属リチウムが物理的若しくは化学的に付着(吸着)若しくは結合している態様(例えば無機固体電解質粒子を被覆している態様)、更に金属リチウムが無機固体電解質粒子から離脱(遊離)している態様(無機固体電解質粒子と金属リチウムとの混合物となる態様)を包含する。
このリチウム付着固体電解質粒子を形成する無機固体電解質は、上記工程Aで説明した無機固体電解質と同義であり、同種であっても異種であってもよい。
リチウム付着固体電解質粒子の製造方法は、特に制限されず、例えば、無機固体電解質と金属リチウムを通常の方法で混合する方法、後述する実施例で行う方法が挙げられる。
リチウム付着固体電解質粒子における金属リチウムの付着量(無機固体電解質粒子に対する金属リチウムの質量比)は、特に制限されず、求められる電池性能(放電容量維持率)に応じて適宜に決定される。例えば、無機固体電解質粒子100質量部に対して5〜100質量部とすることができる。
−−導電性粒子−−
導電性粒子とは、導電性の粒子であればよく、全固体二次電池の電極に一般的に用いられる導電助剤の粒子を特に制限されることなく用いることができる。導電性粒子は、リチウムとの合金を形成しない点で、下記の、リチウムと合金形成可能な金属の粒子とは異なる。導電性粒子として機能する導電助剤としては、例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維等が挙げられ、更にポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子等も挙げられる。
導電性粒子は、粒子状であり、導電助剤の粒子が好ましい。導電性粒子の平均粒径は、特に制限されないが、0.05〜10μmが好ましくは、0.1〜5μmがより好ましい。導電性粒子の平均粒径は、無機固体電解質の平均粒径と同様の方法で測定した値とする。
易破壊層用組成物は導電性粒子を1種含有していても2種以上を含有していてもよい。
−−リチウムと合金形成可能な金属の粒子−−
リチウムと合金形成可能な金属の粒子は、リチウムと合金形成可能な金属(導電性リチウム合金前駆体)で形成された金属粒子であれば特に制限されない。リチウムと合金形成可能な金属としては、上述の、リチウムと合金形成可能な金属の膜を形成するリチウムと合金形成可能な金属と同義であり、好ましいものも同じである。
この金属粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。平均粒子径は、上述の無機固体電解質粒子の平均粒子径と同様にして測定した値である。
易破壊層用組成物は金属粒子を1種含有していても、2種以上を含有していてもよい。
上記金属粒子を易破壊層に含有させた固体電解質含有シートを、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池に組み込むと、充電によるリチウム金属の析出状態を効果的に制御することができ、短絡発生を更に効果的に抑制できる。すなわち、充電によりリチウム金属が、易破壊層に分散している金属粒子との合金(導電性リチウム合金)を形成して析出するため、局所的なリチウム金属の析出を抑制できる。これにより、デンドライトの正極への到達を効果的に抑制できると考えられる。また、デンドライトの正極への到達を抑制する易破壊層の膜厚を薄くできるため、易破壊層形成による電池容量(放電容量)の低下を小さくできる。
易破壊層用組成物中の、無機固体電解質の粒子の含有量は、特に制限されず、固形成分100質量%において、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましい。易破壊層用組成物が導電性粒子を含有する場合、易破壊層用組成物中の導電性粒子の含有量は、求められる電池性能(放電容量維持率)に応じて適宜に決定され、固形成分100質量%において、例えば、0〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。易破壊層用組成物がリチウム付着固体電解質粒子を含有する場合、易破壊層用組成物中のリチウム付着固体電解質粒子の含有量は、求められる電池性能(初回充放電時の放電容量)、無機固体電解質粒子の上記被覆量等に応じて適宜に決定され、固形成分100質量%において、例えば、1〜100質量%とすることができる。また、易破壊層用組成物がリチウムと合金形成可能な金属の粒子を含有する場合、易破壊層用組成物中のリチウムと合金形成可能な金属の粒子の含有量は、特に制限されず、固形成分100質量%において、例えば、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。他の成分については、適宜の含有量に設定される。
−−易破壊層の形成−−
この易破壊層用組成物は、予備成形材料の調製と同様にして調製できる。ただし、易破壊層用組成物がリチウム付着固体電解質粒子を含有する場合は、金属リチウムと分散媒との反応を避けるため乾式で混合、調製することが好ましい。
易破壊層(成形体)は、上記易破壊層用組成物を加圧成形して、又は易破壊層用組成物(スラリー)を塗布乾燥した塗布成形体を加圧成形して、作製できる。易破壊層用組成物及び塗布成形体を加圧成形する方法は、サブ工程A1−1の予備加圧成形と同じ方法を適用できるが、加圧力としては、空隙が15%以上あり、イオン伝導性が確保でき、かつシート状態が保てる程度の加圧力に設定することが好ましく、例えば10〜60MPaが挙げられる。
易破壊層用組成物(スラリー)の塗布成形体は、公知の塗布方法により、易破壊層用組成物(スラリー)を塗布し、次いで乾燥することにより、作製できる。塗布方法としては、例えば、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布等が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、30〜300℃が好ましく、60〜250℃がより好ましい。
このようにして、空隙率が上述の範囲に設定された易破壊層を作製できる。
− 易破壊層をデンドライト貫通阻止層に圧着積層するサブ工程B2 −
工程Bにおいては、次いで、作製した易破壊層をデンドライト貫通阻止層に圧着積層する。易破壊層を圧着積層する方法は、特に限定されないが、例えば、易破壊層をデンドライト貫通阻止層上に載置(配置)した後に、プレスする方法が挙げられる。この圧着積層する方法及び条件は、両層を圧着積層できる限り特に制限されず、例えば、後述する本発明の全固体二次電池用負極シートの製造方法における、負極活物質を易破壊層に圧着積層する方法及び条件を適用できる。
工程Bにおいては、作製した易破壊層に代えて無機固体電解質の粒子等をデンドライト貫通阻止層上に配置して圧着積層することにより、易破壊層の形成と圧着積層とを一度に行うこともできる。このときの圧着積層の方法及び条件は、上記工程B1における、無機固体電解質の粒子からなる成形体(易破壊層)の作製方法及び条件を採用できる。
このようにして、工程A及び工程Bを順に行って、本発明の固体電解質シートを製造できる。製造した固体電解質層シートは、基材等を有していてもよく、シート体としての製品として独立していること以外は、本発明の全固体二次電池における、固体電解質層と易破壊層と好ましくはデンドライト貫通阻止層とからなる積層体と同じ構成を有する。
− 金属膜を形成する工程 −
固体電解質シートが上述の金属膜を有する場合、易破壊層上に金属膜を設ける(配置する)工程を行う。金属膜の形成方法は、特に制限されず、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。形成方法の条件は、特に制限されず、金属種、厚さ等に応じて、適宜の条件が選択される。せん断処理された表面上に金属膜を設ける方法としては、特に制限されないが、せん断処理した表面上で上記形成方法により形成する方法、上記形成方法により予め作製した金属膜を易破壊層に積層(載置)する方法、更には上記形成方法により予め作製した金属膜をせん断処理した表面に転写(圧着積層)する方法が挙げられる。予め作製した金属膜を易破壊層に圧着又は転写(圧着積層)する方法及び条件としては、例えば、後述する、負極活物質を易破壊層に圧着積層する方法及び条件を選択できる。
固体電解質シートが集電体等を有する場合、集電体を設ける方法としては、特に制限されず、後述する、負極活物質を易破壊層に圧着積層する方法及び条件を選択できる。
このようにして、工程A及び工程Bを実施する製造方法により、積層された固体電解質層及び易破壊層、好ましくは更に金属膜を有する固体電解質シートが得られる。この固体電解質層、易破壊層及び金属膜は全固体二次電池の固体電解質層、易破壊層及び金属膜と同じである。
<全固体二次電池用負極シートの製造方法>
全固体二次電池用負極シートの製造方法は、全固体二次電池の負極の形態に応じて、実施される。すなわち、負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池を製造する場合(電池製造における層形成工程において負極活物質層を形成する場合)、全固体二次電池用負極シートを製造する。一方、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造する場合(電池製造における層形成工程において負極活物質層を形成しない場合)、全固体二次電池用負極シートを製造する必要はない。
本発明の全固体二次電池用負極シートの製造方法は、本発明の固体電解質シートの製造方法により得られた固体電解質シートにおける易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面に負極活物質を圧着積層する工程を行う。これにより、易破壊層の特定の表面上に負極活物質層を形成することができる。
負極活物質を圧着積層する方法は、特に限定されないが、例えば、負極活物質を易破壊層の上記表面に載置(配置)した後に、プレスする方法が挙げられる。
用いる負極活物質は、下記負極活物質の粒子でもよく、この粒子からなる成形体として用いてもよい。なお、負極活物質からなる成形体としては、負極活物質の粒子を公知の方法(負極活物質を含有するスラリーを塗布乾燥する方法、負極活物質の粒子をプレス成形する方法)により、例えば上記易破壊層の作成方法と同様(ただし、予備加圧成形条件を適用)にして、作製できる。負極活物質は、無機固体電解質、好ましくはリチウム塩、導電助剤、更に予備成形体で挙げた他の成分、分散媒と混合された負極用組成物として用いることもできる。無機固体電解質、リチウム塩、導電助剤、分散媒、結着剤(バインダーポリマー)等は、全固体二次電池に用いられるものを特に制限されることなく用いることができる。例えば、無機固体電解質及び導電助剤としては、上記工程Aで説明した無機固体電解質、及び工程Bに用いる導電性微粒子で説明した導電助剤が挙げられる。
本発明においては、負極活物質として上述したリチウム金属層(リチウム箔、リチウム蒸着膜等)を用いることが好ましい。このリチウム金属層は負極集電体との積層体として用いることもできる。また、本発明においては、負極活物質層として後述するSi負極を用いることも好ましい。
− 負極活物質 −
本発明に用いる負極活物質は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な物質である。負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、金属若しくは半金属元素の酸化物(複合酸化物を含む。)、リチウム単体、リチウム合金、又は、リチウムと合金化(リチウムとの合金を形成)可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、信頼性の点では、炭素質材料、半金属元素の酸化物、金属複合酸化物又はリチウム単体が好ましい。全固体二次電池の大容量化が可能となる点では、リチウムと合金化可能な負極活物質が好ましい。
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂若しくはフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。更に、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー並びに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素質材料(ハードカーボンともいう。)と黒鉛系炭素質材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載される面間隔又は密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料でなくてもよく、特開平5−90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
炭素質材料としては、ハードカーボン又は黒鉛が好ましく用いられ、黒鉛がより好ましく用いられる。
負極活物質として適用される金属若しくは半金属元素の酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な酸化物であれば特に制限されず、金属元素の酸化物(金属酸化物)、金属元素の複合酸化物若しくは金属元素と半金属元素との複合酸化物(纏めて金属複合酸化物という。)、半金属元素の酸化物(半金属酸化物)が挙げられる。これらの酸化物としては、非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく挙げられる。本発明において、半金属元素とは、金属元素と非半金属元素との中間の性質を示す元素をいい、通常、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルの6元素を含み、更にはセレン、ポロニウム及びアスタチンの3元素を含む。また、非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°〜70°に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°〜40°に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物又は上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素(例えば、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBi)から選択される1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる(複合)酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、GeO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Sb、Bi、Bi、GeS、PbS、PbS、Sb又はSbが好ましく挙げられる。
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵及び/又は放出できる炭素質材料、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金化可能な負極活物質が好適に挙げられる。
金属若しくは半金属元素の酸化物、とりわけ金属(複合)酸化物及び上記カルコゲナイドは、構成成分として、チタン及びリチウムの少なくとも一方を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。リチウムを含有する金属複合酸化物(リチウム複合金属酸化物)としては、例えば、酸化リチウムと上記金属(複合)酸化物若しくは上記カルコゲナイドとの複合酸化物、より具体的には、LiSnOが挙げられる。
負極活物質、例えば金属酸化物は、チタン原子を含有すること(チタン酸化物)も好ましく挙げられる。具体的には、LiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
負極活物質としてのリチウム合金としては、二次電池の負極活物質として通常用いられる合金であれば特に制限されず、例えば、リチウムアルミニウム合金が挙げられる。
リチウムと合金形成可能な負極活物質は、二次電池の負極活物質として通常用いられるものであれば特に制限されない。このような活物質は、充放電による膨張収縮が大きくなる。このような活物質として、ケイ素原子若しくはスズ原子を有する負極活物質、Al及びIn等の各金属が挙げられ、より高い電池容量を可能とするケイ素原子を有する負極活物質(ケイ素原子含有活物質)が好ましく、ケイ素原子の含有量が全構成原子の50mol%以上のケイ素原子含有活物質がより好ましい。
一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(ケイ素原子含有活物質を含有するSi負極、スズ原子を有する活物質を含有するSn負極等)は、炭素負極(黒鉛及びアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
ケイ素原子含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、ランタン等を含むケイ素含有合金(例えば、LaSi、VSi、La−Si、Gd−Si、Ni−Si)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi/Si)、他にも、SnSiO、SnSiS等のケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、全固体二次電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な負極活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
スズ原子を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO、SnS、SnS、更には上記ケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOを挙げることもできる。
本発明においては、上述の負極活物質を特に制限されることなく用いることができるが、負極活物質が、上記ケイ素材料又はケイ素含有合金(ケイ素元素を含有する合金)が好ましく、ケイ素(Si)又はケイ素含有合金を含むことが、電池容量の点で、好ましい。ケイ素元素を含有する合金としては、例えば、LaSi、VSi、La−Si、Gd−Si、Ni−Siが挙げられる。
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の粒子径(体積平均粒子径)は、0.1〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、通常の粉砕機若しくは分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミル、篩等が好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機等を用いることができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の平均粒子径は、上述の無機固体電解質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
本発明において、焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質の、負極用組成物中における含有量は、特に限定されず、固形成分100質量%において、100質量%以下であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、20〜80質量%であることが更に好ましい。
負極用組成物が無機固体電解質を含有する場合、負極用組成物中における無機固体電解質と負極活物質との合計含有量として、固形成分100質量%において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。上限としては、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることが特に好ましい。
他の成分の、負極用組成物中の含有量は、特に制限されず、適宜設定され、例えば予備成形材料で説明した上記含有量とすることができる。
本発明において、負極活物質層を二次電池の充電により形成する場合、上記負極活物質に代えて、全固体二次電池内に発生する周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンを用いることができる。このイオンを電子と結合させて金属として析出させることで、負極活物質層を形成できる。
− 圧着積層 −
負極活物質(負極用組成物)は、易破壊層の一方の表面に載置して圧着積層される。これにより、負極(負極活物質層)にデンドライトが析出しても易破壊層、更にはデンドライト貫通阻止層によって正極まで到達する成長をブロックできる。
圧着積層する際の圧力は、負極活物質を圧着積層可能な圧力であればよく、例えば、1MPa以上に設定することができ、1〜60MPaが好ましく、5〜30MPaがより好ましい。圧着積層は加熱下で行ってもよいが、本発明においては、非加熱下で行うことが好ましく、例えば、0〜50℃の環境温度で圧着積層することが好ましい。圧着積層を行う雰囲気は、上記サブ工程A1−1の予備加圧成形中の雰囲気と同様である。
このようにして上記圧着積層する工程B2を実施することにより、固体電解質層と、易破壊層と、この易破壊層の表面上に積層された負極活物質層とを備えた全固体二次電池用負極シートを作製できる。
<本発明の全固体二次電池の製造方法>
本発明の全固体二次電池の製造方法においては、製造する全固体二次電池の負極の形態に応じて、異なる工程を経て全固体二次電池を製造する。すなわち、負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池を製造する場合、上述の、全固体二次電池用負極シートの製造を経て、全固体二次電池を製造する。一方、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造する場合、上述の、固体電解質層シートを用いて全固体二次電池を製造する。
<負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池の製造方法>
負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池を製造する場合、本発明の全固体二次電池用負極シートの製造方法で得られた全固体二次電池用負極シートの、負極活物質層とは反対側の表面に正極活物質層を形成する。
正極活物質層の形成する正極活物質は、下記正極活物質の粒子でもよく、この粒子からなる成形体として用いてもよい。なお、この成形体は、負極活物質からなる成形体と同様にして作製できる。正極活物質は、無機固体電解質、更には、リチウム塩、導電助剤、予備成形体で挙げた他の成分、分散媒と混合された正極用組成物として用いることもできる。この正極用組成物は後述する負極活物質前駆体を含有していてもよい。無機固体電解質、リチウム塩、導電助剤、分散媒等は、全固体二次電池に用いられるものを特に制限されることなく用いることができる。例えば、無機固体電解質及び導電助剤としては、上記工程Aで説明した無機固体電解質、及び工程Bに用いる導電性微粒子で説明した導電助剤が挙げられる。
− 正極活物質 −
本発明に用いる正極活物質は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な物質である。正極活物質としては、金属酸化物(好ましくは遷移金属酸化物)が好ましい。
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、又は、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn及びLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO及びLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類並びにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩及びLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO及びLiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。例えば、0.1〜50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の平均粒子径は、上述の無機固体電解質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
上記正極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質の、正極用組成物中における含有量は、特に限定されず、固形成分100質量%において、10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、50〜85質量が更に好ましく、55〜80質量%が特に好ましい。
正極用組成物が無機固体電解質を含有する場合、正極用組成物中における無機固体電解質と正極活物質との合計含有量として、固形成分100質量%において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。上限としては、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることが特に好ましい。
他の成分の、正極用組成物中の含有量は、特に制限されず、適宜設定され、例えば予備成形材料で説明した上記含有量とすることができる。
− 正極活物質層の形成 −
正極活物質層を形成する方法は、特に制限されず、通常の方法を適用できる。例えば、下記正極活物質を負極活物質層とは反対側の表面に載置する方法、下記正極活物質を層状に成形した成形体(シート)を負極活物質層とは反対側の表面に載置(貼付)する方法、負極活物質層とは反対側の表面に下記正極活物質を含有する正極用組成物を塗布乾燥する方法等が挙げられる。正極活物質を載置した後に圧着積層することもでき、圧着積層方法としては負極活物質層における圧着積層方法が挙げられる。正極用組成物を塗布乾燥する方法は、公知の塗布方法により塗布した正極用組成物を適宜設定した温度に加熱する方法が挙げられる。
こうして、負極活物質層、易破壊層、固体電解質層及び正極活物質層からなる積層体が得られる。なお、固体電解質シートとして上述の全固体二次電池用正極シートを用いる場合は、上述の負極活物質層を形成することにより、上記4層からなる積層体が得られる。
特に負極活物質層として上述のSi負極を採用する場合、正極活物質層は、下記<負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池の製造方法>において説明する、正極活物質と負極活物質前駆体とを含有する正極用組成物を用いて形成することが好ましい。ケイ素材料又はケイ素含有合金は不可逆容量が大きく、通常、初回の充電による容量(可動リチウムイオン量)の目減りが大きいという問題がある。しかし、Si負極を備えた全固体二次電池の正極活物質層を、負極活物質前駆体を含有する正極用組成物で形成することにより、目減りした金属イオンを補充(ドープ)して(Si負極内に金属イオンを吸蔵させて)、Si負極に特有の上記問題を抑制できる。
また、正極活物質層に負極活物質前駆体を含有させると、充電時における金属イオン吸蔵による膨張、若しくは金属析出による膨張を、正極活物質層で負極活物質前駆体の分解反応で発生した空隙によりキャンセルできるため、固体電解質層の破壊を防止でき、デンドライトの正極への到達をより効果的に抑制できる。しかも、後述するように空隙を圧潰する好ましい形態では、エネルギー密度の向上も可能となる。
負極活物質前駆体を含有する正極用組成物及び正極活物質層の形成方法は後述する。
この形態の全固体二次電池の製造方法において、正極活物質と負極活物質前駆体とを含有する正極用組成物を用いて正極活物質層を形成する場合は、充電した正極活物質層を加圧して圧縮することが好ましい。この加圧圧縮により、充電後の正極活物質層に形成された空隙が圧潰され(押潰され)、正極活物質層が薄層化(緻密化)する。その結果、全固体二次電池の全厚(体積)が減少して、エネルギー密度が向上する。
正極活物質層を充電する工程及び加圧する工程の詳細は、下記<負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池の製造方法>において説明する。
次いで、所望により、得られた積層体全体を積層方向に拘束加圧して、全固体二次電池を製造することができる。このときの拘束加圧圧力は、特に限定されないが、0.05MPa以上が好ましく、1MPaがより好ましい。上限としては、例えば、10MPa未満が好ましく、8MPa以下がより好ましい。
こうして製造した積層体に適宜の部材を設けて、負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池を製造できる。
<負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池の製造方法>
− 正極活物質層を形成する工程 −
負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造する場合、本発明の固体電解質シートの製造方法により得られた固体電解質シートの、易破壊層とは反対側の表面に、正極活物質層を形成する。
負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池の製造方法において、正極活物質層を形成する方法は、上述の負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池の製造方法における、正極活物質層を形成する方法と同じである。
この形態において、正極活物質層を形成する正極用組成物は、上記正極活物質と負極活物質前駆体とを含有することも好ましい形態の1つである。この正極用組成物においては、好ましくは無機固体電解質、更には、リチウム塩、導電助剤、上記他の成分、分散媒等を含有していてもよい。
負極活物質前駆体は、後述する充電する工程により、正極活物質層中において、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属元素のイオン(金属イオン)を発生(放出)させる化合物である。発生する金属イオンが全固体二次電池の充電により負極集電体等に到達して負極活物質層をプレドープする。全固体二次電池が負極活物質層を予め形成しない形態である場合、金属イオンが負極集電体に到達して電子と結合することにより金属として析出して、負極活物質層をプレドープする。
負極活物質前駆体は、このような特性若しくは機能を有するものであれば特に制限されず、上記金属元素を含む化合物が挙げられるが、全固体二次電池の材料として用いられる支持電解質としてのリチウム塩とは、初回充電時にリチウムイオンを放出して分解し、次回充電時にはリチウムイオン放出に寄与しない点で、異なる。
負極活物質前駆体は、上記金属元素を含む無機化合物が好ましく、上記金属イオンと陰イオンとを発生させる無機塩がより好ましく、上記金属元素(アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属)の炭酸塩、酸化物又は水酸化物が更に好ましく、炭酸塩から選択される化合物が特に好ましい。無機塩は、特に制限されないが、分解により、常温常圧、好ましくは充電環境において気体を発生させるものが好ましい。例えば、炭酸塩は、酸化分解により、金属元素のイオンと炭酸イオンを発生する。発生した金属元素のイオンは負極活物質層の構成材料となり、炭酸イオンは炭酸ガスに変化して正極活物質層中から外部に放出され(消失)する。そのため、炭酸塩は、分解物を含めて正極活物質層中に残存せず、炭酸塩の含有による電池特性(エネルギー密度)の低下を避けることができる。
全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池である場合、負極活物質前駆体を形成する金属元素はリチウムが好ましい。
負極活物質前駆体としては、上記金属元素の、炭酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩(例えばシュウ酸塩)等が挙げられ、より具体的には、リチウム塩として、例えば、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、シュウ化リチウム、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、硫化リチウム、リン化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、シュウ酸リチウム、ギ酸リチウム、酢酸リチウム等が挙げられ、炭酸リチウム、酸化リチウム又は水酸化リチウムが好ましく、空気中での安全に取り扱うことができる(吸湿性が低い)点で、炭酸リチウムがより好ましい。
正極用組成物は、負極活物質前駆体を1種含有していても、2種以上を含有していてもよい。
負極活物質前駆体の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。平均粒子径は、上述の無機固体電解質粒子の平均粒子径と同様にして測定した値である。
負極活物質前駆体の、正極用組成物中の含有量は、補充する金属元素のイオン量等により変動するので、一義的に決定されないが、例えば、固形成分100質量%において、0〜50質量%以下であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、7〜20質量%であることが更に好ましい。
正極用組成物が負極活物質前駆体を含有する場合、正極用組成物中の、正極活物質と負極活物質前駆体との合計含有量は、負極活物質前駆体を含有しない正極用組成物中の、正極活物質と同じ上記含有量に設定することができ、好ましくは70〜90質量%である。
負極活物質前駆体を用いると、全固体二次電池の製造時に活性の高い材料(例えばLi金属)を用いることなく、金属元素のイオンを補充(ドープ)することができ、電池容量の向上が期待できる。負極活物質層を予め形成しない形態においては、Si負極と同様に初回の充電によるリチウム量の目減りが大きくなるが、負極活物質前駆体を用いることにより、リチウムの補充が可能になる。
特に炭酸塩は、酸化分解により、金属元素のイオンと炭酸イオンを発生して、消失する。発生した金属元素のイオンは負極活物質層の構成材料となり、炭酸イオンは炭酸ガスに変化して層外に放出される。そのため、炭酸塩は、分解物を含めて正極活物質層中に残存せず、炭酸塩の含有による電池特性の低下を避ける(エネルギー密度を向上させる)ことができる。しかも、炭酸塩の分解反応により生じた空隙を圧潰する好ましい形態では、エネルギー密度の更なる向上も可能となる。
本製造方法においては、固体電解質シートにおける易破壊層の、固体電解質層とは反対側の表面又は金属膜上に負極集電体を積層してもよい。このときの積層方法及び条件は、特に制限されないが、例えば、上述の<全固体二次電池用負極シートの製造方法>における「圧着積層」の方法及び条件を適用できる。
上述のようにして、正極活物質層及び固体電解質層、更には金属膜、負極集電体等からなる積層体(全固体二次電池前駆体)を製造できる。
なお、固体電解質シートとして上述の全固体二次電池用正極シートを用いる場合は、この全固体二次電池用正極シートをそのまま、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池の製造方法に用いることができる。
− 積層体を充電する工程 −
本製造方法においては、正極活物質層、固体電解質層、易破壊層、更に金属膜、負極集電体等からなる積層体を(適宜の部材を設けた後に)充電する。この充電は、積層体全体を積層方向に拘束加圧した状態で行うこともできる。この充電により、負極用集電体の表面上にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を析出させて、負極活物質層を形成する(負極活物質層が形成された全固体二次電池を製造する)ことができる。特に、負極活物質前駆体を含有する正極用組成物で正極活物質層を形成すると、上述のように、充電により負極活物質を補充することができる。
積層体を充電する方法は、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。充電条件は、正極活物質層中の負極活物質前駆体を酸化分解可能な条件であればよく、例えば下記条件が挙げられる。
電流:0.05〜1mA/cm
電圧:4.2〜4.5V
充電時間:1〜20時間
温度:25〜60℃
負極活物質前駆体を用いる場合、充電する工程は、負極活物質前駆体の陰イオン(から発生する化合物)を積層体の外部に放出するため、積層体を密閉して行うのではなく、開放下で行うことが好ましい。このときの雰囲気は、予備成形中の雰囲気と同様である。
上記充電する工程において、充電は1回行ってもよく、複数回行ってもよい。
上記充電は、全固体二次電池を製造後又は使用前に好ましく行われる初期化によって、行うこともできる。
充電する工程は、積層体全体を積層方向に拘束加圧した状態で行うこともできる。積層体全体を拘束する際の拘束加圧圧力は、上述の、<負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池の製造方法>における拘束加圧圧力と同じ範囲に設定できる。拘束加圧圧力が上記範囲内にあると、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が負極用集電体上に良好に析出し、かつ放電時に溶解しやすくなって電池性能に優れたもの(放電劣化しにくいもの)となる。また、デンドライトによる短絡を効果的に防止できる。
この充電する工程により、正極活物質層中の負極活物質前駆体は、酸化分解されて、金属イオンと陰イオンとを発生させる。発生した金属イオンは負極活物質層又はその近傍まで移動して、負極活物質層をドープする。一方、陰イオンは、正極活物質層中に留まることもあるが、好ましくは気体に変化して積層体の外部に放出される。このように、本発明の製造方法においては、金属リチウム等を用いることなく、安全かつ簡潔にプレドープすることができる。
こうして、充電が完了すると、負極活物質層が形成される。負極活物質前駆体を用いる場合、正極活物質層中には、酸化分解された負極活物質前駆体に由来する空隙が生じる。充電後の正極活物質層における空隙率(負極活物質前駆体に由来する空隙を含む全空隙の空隙率)は、正極活物質の種類若しくは粒径、正極活物質層の形成条件、負極活物質前駆体の種類、粒径若しくは含有量等によって変動するので、一義的に決定されないが、例えば、5〜30%とすることができ、15〜25%であることが好ましい。
− 積層体を放電する工程 −
本製造方法においては、上述のようにして充電した積層体について、正極活物質層を加圧する前に、放電することもできる。
この放電(初期充電)の方法としては、特に制限されず、例えば、上記正極活物質層を充電する工程で説明した方法を適用できる。放電条件としては、特に制限されないが、例えば、下記条件が挙げられる。
電流:0.05〜1mA/cm
電圧:2.5〜3.0V
充電時間:1〜20時間
温度:25〜60℃
上記放電する工程において、放電は1回行ってもよく、複数回行ってもよい。
上記放電は、全固体二次電池を製造後又は使用前に好ましく行われる初期化によって、行うこともできる。
この放電する工程により、負極活物質層又はその近傍から金属イオンが発生して、正極活物質層に到達する。負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池では、放電する工程により、充電する工程の実施により析出した金属がイオン化して正極活物質層に移動する(負極活物質層が減容若しくは消失する)。負極活物質前駆体を用いて製造した全固体二次電池においては、正極活物質層に到達した金属イオンは負極活物質前駆体に由来する空隙を完全に埋めることはなく、正極活物質層は後述する加圧する工程において圧潰される空隙を有している(残存している)。このときの放電後の正極活物質層の空隙率は、特に制限されない。
− 正極活物質層を加圧する工程 −
本発明の全固体二次電池の製造方法において、正極活物質と負極活物質前駆体とを含有する正極用組成物を用いて形成した正極活物質層を、加圧して圧縮することが好ましい。この加圧圧縮により、全固体二次電池の全厚(体積)が減少して、エネルギー密度が向上する。
加圧する工程は、上記積層体を放電する工程を行わずに(充電する工程に次いで)行ってもよく、積層体を放電する工程に次いで行ってもよい。加圧する工程は、充電する工程の後であって放電する工程の前に行うことが好ましい。
正極活物質層を加圧する工程は、少なくとも正極活物質層を圧縮できればよいが、充電後の正極活物質層を圧縮することを考慮すると、全固体二次電池前駆体としての上記積層体を加圧することにより正極活物質層を圧縮することが好ましい。
正極活物質層を加圧圧縮する方法は、特に制限されず、公知の各種加圧方法を適用することができ、プレス加圧(例えば油圧シリンダープレス機を用いたプレス加圧)が好ましい。本工程における圧力は、正極活物質層の空隙を圧潰できる圧力であれば特に限定されず、上記充電する工程における加圧拘束よりも高いことが好ましい。圧力は、正極活物質の種類若しくは含有量、空隙量等、更には充放電状態等に応じて適宜に決定される。例えば、10〜1000MPaの範囲に設定されることが好ましい。充電後(未放電)に加圧する場合、圧力の下限としては、40MPa以上がより好ましく、50MPa以上が更に好ましく、60MPa以上が特に好ましく、上限は、易破壊層の空隙率を15%未満に低下させず、易破壊層の破壊を誘発させない圧力とする。例えば、1000MPa以下がより好ましく、750MPa以下が更に好ましい。放電後に加圧する場合、圧力の下限としては、10MPa以上がより好ましく、15MPa以上が更に好ましく、20MPa以上が特に好ましく、上限は、易破壊層の空隙率を15%未満に低下させず、易破壊層の破壊を誘発させない圧力とする。例えば、100MPa以下がより好ましく、60MPa以下が更に好ましく、30MPa以下が特に好ましい。プレス時間は、特に制限されず、短時間(例えば数時間以内)でも、長時間(1日以上)でもよい。
正極活物質層の加圧圧縮と同時に加熱してもよいが、本発明においては、非加熱で加圧圧縮することが好ましく、例えば、10〜50℃の環境温度で加圧圧縮することが好ましい。加圧圧縮中の雰囲気としては、特に限定されず、固体電解質組成物の混合雰囲気が挙げられる。
加圧する工程は、少なくとも正極活物質層、通常全固体二次電池前駆体に、電圧を印加しない(充放電しない)で行うことが好ましい。本発明において、電圧を印加しないとは、正極活物質層等に電圧をまったく印加しない態様に加えて、初期放電の終止電圧に相当する2.5〜3.0Vの電圧を印加する態様を包含する。
正極活物質層の圧縮は、圧縮後の正極活物質層の空隙率が充電後(放電する工程を行う場合は放電後)の正極活物質層の空隙率よりも小さくなるまで、行う。この圧縮は、理想的には、負極活物質前駆体に由来する空隙が完全に圧潰するまで(充電前の正極活物質層の空隙率に到達するまで)行うが、現実的には、充電前の正極活物質層の空隙率の近傍まで行う。例えば、充電前の正極活物質層の空隙率よりも1.5%、好ましくは1%、より好ましくは0.5%高い空隙率まで圧縮する。
この加圧する工程は、正極活物質層を圧縮(空隙を圧潰)する点で、全固体二次電池の使用時に好ましく適用する加圧拘束とは異なる。
上述のようにして、加圧する工程を実施して、初期充電、更には初期放電された全固体二次電池が製造される。
次いで、適宜に、得られた積層体又は全固体二次電池の全体を積層方向に拘束加圧して、全固体二次電池を製造することができる。このときの拘束加圧圧力は、特に限定されず、上述の、<負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池の製造方法>における拘束加圧圧力と同じ範囲に設定できる。
こうして製造した積層体に必要な部材を設けて、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造できる。
<全固体二次電池の初期化>
上述の各全固体二次電池の製造方法により製造された各全固体二次電池は、好ましくは製造後又は使用前に初期化を行う。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
初期化の方法及び条件としては、特に制限されず、例えば、上述の積層体を充電する工程及び積層体を放電する工程における方法及び条件が挙げられる。
なお、上記各全固体二次電池の製造方法において、全固体二次電池を拘束加圧した場合、製造後に拘束加圧を解除してもよいが、使用中も拘束加圧されていることが放電劣化を防止できる点で好ましい。
本発明の全固体二次電池の製造方法により、全固体二次電池の構成層を固体粒子で形成しても、また全固体二次電池の(急速)充放電を繰り返しても、固体電解質層に欠陥が発生しにくく、短絡発生が抑制された全固体二次電池を製造できる。本発明の全固体二次電池においては、上述のように、充放電等による応力によって、優先的に易破壊層が自己破壊する。また、易破壊層の、配置の決まった無機固体電解質粒子の表面に沿って金属が析出するので、そのデンドライトの析出状態を制御し易く、集電体面内に均一に析出させることができる。そのため、易破壊層でのデンドライトの成長抑制が可能となって、短絡を防止できる。特にデンドライト貫通阻止層を備えていると、易破壊層中を成長してきたデンドライトが貫通して固体電解質層、更には正極活物質層に到達することを阻止でき、長期にわたって短絡を防止できる。
このような短絡発生は、負極活物質層としてグラファイトからなる層及びリチウム金属層を採用しても、抑制できる。とりわけ、負極活物質層として析出させたアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属からなる層を採用した全固体二次電池は、更に高い充放電サイクル特性を示し、短絡発生を抑制するという信頼性を大きく向上させることができる。この全固体二次電池が優れたサイクル特性を示す理由は未だ明らかではないが、易破壊層には十分な空隙があり、この空隙中に金属が析出するので、充放電を繰り返しても易破壊層全体の体積変化が小さく、電池内の応力変化を少なくできるためと考えられる。また、易破壊層を形成する粒子間(空隙)に析出した金属が存在するため、充放電を繰り返しても、3次元の電子伝導パスが維持され、デッドリチウム化(析出した金属が孤立化)しにくいためと、考えられる。
上述の通り、全固体二次電池が金属リチウムを表面に有する無機固体電解質粒子を含有する易破壊層を備えていると、初回充放電時の放電容量損失(Li損失)を補うことができる。更に、全固体二次電池が導電性粒子を含有する易破壊層を備えていると、充放電を繰り返しても高い放電容量維持率を示す。
また、易破壊層上に金属膜を設けると、上述のように、デンドライトの正極への到達をより効果的に抑制できる。更に、易破壊層に上記金属粒子を含有させると、局所的なリチウム金属の析出を抑制して、デンドライトの正極への到達を効果的に抑制できると考えられる。また、負極活物質前駆体を含有する正極用組成物を用いて正極活物質層を形成すると、上述のように、リチウムを補充することができ、不可逆容量が大きなケイ素材料又はケイ素含有合金からなるSi負極を用いても、また負極活物質層を予め形成しない形態においても、十分な電池特性を付与することができるうえ、デンドライトの正極への到達をより効果的に抑制できる。この正極活物質層を充電後に加圧圧縮する場合には、上述のように、Si負極又は負極活物質層を予め形成しない形態であっても、負極活物質前駆体の分解により形成する空隙を圧潰して正極活物質層自体の薄層化が可能となり、十分な電池特性を維持しつつも、(体積)エネルギー密度の更なる向上が可能となる。
本発明の全固体二次電池の製造方法は、易破壊層を形成するため、更にはデンドライト貫通阻止層が固体電解質層の表層として形成するため、易破壊層、固体電解質層、負極活物質層及び正極活物質層以外にデンドライト貫通阻止層を設けなくても、全固体二次電池の層厚を薄く形成できる。そのため、電池容量の低減を回避できる。また、通常の成形法で易破壊層を形成でき、更にはせん断処理又は加熱処理によりデンドライト貫通阻止層を形成できるため、真空が必要な気相法、高温焼結に比べて、工程が簡易でプロセスコストを低減できる。更に、易破壊層の成形、せん断処理及び加熱処理は、気相法、高温焼結に比べて、低温で物理的なプロセスであるため、固体電解質層に有機バインダー、有機多孔性基材等が含まれていても、適用できる。特に塑性固体粒子として硫化物系無機固体電解質を用いる好ましい形態である場合、固体電解質層をイオン伝導性の高い硫化物系無機固体電解質で形成できるため、低い界面抵抗を実現できる。
[全固体二次電池の用途]
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
以下に、実施例に基づき本発明について更に詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<合成例1:硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラスの合成>
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.HamGa,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235及びA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。なお、LiS及びPの混合比は、モル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)6.20gを得た。イオン伝導度は0.28mS/cmであった。Li−P−S系ガラスの上記測定方法による粒子径は1μmであり、上記測定方法におけるガラス転移温度(DSC測定で得られる発熱ピークの温度)は100℃であった。このLi−P−S系ガラスは、上述の、微小硬度試験機による押し込み試験において測定温度が250℃に到達するまでに圧入深さの差分が10%以上であったことから、250℃以下で塑性変形を示す固体粒子であることを確認した。この無機固体電解質が塑性変形した(最低)温度は−20℃であった。
実施例1
本例では、せん断処理法(工程A1)により形成したデンドライト貫通阻止層を有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
<固体電解質シートの製造>
(工程A)
合成した硫化物系無機固体電解質(塑性固体粒子にも相当する。)100mgを、マコール(登録商標)製の内径10mmのシリンダ中に入れて、アルゴンガス雰囲気下、25℃で、加圧力を180MPaに設定して、1分間プレス(予備加熱成形)した(サブ工程A1−1)。このようにして、硫化物系無機固体電解質からなる予備成形体を得た。
次いで、得られた予備成形体の一方の表面(0.78mm)を、200℃に加熱した状態で、ステンレス鋼製の金属ブラシを用いて、ブラッシング処理(せん断処理)した(サブ工程A1−2)。金属ブラシの回転数は10,000rpm、処理時間1分以上とした。せん断力は、成形体表面に垂直に配置した金属ブラシを面内方向に移動させて作用させた。こうして、表層としてデンドライト貫通阻止層を有する予備成形体を得た。
次いで、この予備成形体を、アルゴンガス雰囲気下、常温(25℃)で、加圧力を550MPaに設定して、1分間、プレス(本成形)した(サブ工程A1−3)。
こうして、せん断処理により表層として形成されたデンドライト貫通阻止層を有する固体電解質層(膜厚600μm)を備えたシートを得た。得られたシートにおける固体電解質層及びデンドライト貫通阻止層の空隙率(上記測定方法)はそれぞれ7%及び1%であり、粒子間の空隙の大きさはそれぞれ長径方向で0.5μm及び0.2μmであった。また、デンドライト貫通阻止層は厚さ約10μm以下の、割断で剥がすことができる薄層であった。
(工程B)
まず、易破壊層を形成した。すなわち、合成例1で合成した無機固体電解質100mgに、0.7mgのスチレンブタジエンゴムを添加し、更にヘプタン200mgを添加して、スラリー状の易破壊層用組成物を調製した。この易破壊層用組成物を、銅箔上に、10mg/直径10mmの目付量で湿式塗布し、100℃で乾燥した。易破壊層用組成物の乾燥物に、ステンレス鋼箔をかぶせて24MPaの加圧力で1分間プレスした後に、ステンレス鋼箔をカールして剥離し、易破壊層を形成した(サブ工程B1)。この易破壊層の空隙率(上記測定方法)は20%であり、粒子間の空隙の大きさは1μmであった。
次いで、作製した易破壊層から直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状易破壊層を、工程Aで作製したシート(直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状シート)のデンドライト貫通阻止層上に積層して、アルゴンガス雰囲気下、25℃で、加圧力を24MPaに設定して、1分間圧着した(サブ工程B2)。
こうして、易破壊層(膜厚70μm)、デンドライト貫通阻止層及び固体電解質層からなる固体電解質シートを製造した。
<全固体二次電池の製造>
まず、得られた固体電解質シートにおける易破壊層の、デンドライト貫通阻止層とは反対側の表面に、厚さ8μmの銅箔からなる負極集電体(直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状集電体)を積層して、アルゴンガス雰囲気下、25℃で、加圧力を24MPaに設定して、1分間圧着した。
次いで、正極集電体と正極活物質層とからなる正極シートを作製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成例1で合成したLi−P−S系ガラス2.0gと、スチレンブタジエンゴム(商品コード182907、アルドリッチ社製)0.1gと、分散媒としてオクタン22gとを投入した。その後に、この容器をフリッチュ社製遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃で、回転数300rpmで2時間攪拌した。その後、正極活物質LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム)7.9gを容器に投入し、再びこの容器を遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続けた。このようにして、正極用組成物を得た。
次に、集電体となる厚み20μmのアルミニウム箔状に、上記で得られた正極用組成物(直径10mmの円面積に対する正極活物質の目付量は11mg)をベーカー式アプリケーターにより塗布し、80℃2時間加熱して、正極用組成物を乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、所定の密度になるように乾燥させた正極層用組成物を加熱(120℃)しながら加圧(600MPa、1分)した。このようにして、膜厚110μmの正極活物質層を有する正極シートを作製した。
次いで、作製した正極シートから直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状シートの正極活物質層を、負極集電体を設けた固体電解質層シートにおける固体電解質層の、デンドライト貫通阻止層とは反対側の表面に、リチウムイオン電池用電解液をPEOに混合させた液を塗布することにより、貼り付けた。こうして、負極集電体と、易破壊層と、デンドライト貫通阻止層と、固体電解質層と、正極活物質層と、正極集電体とからなる積層体を得た。
得られた積層体全体を積層方向に8MPaの拘束圧で拘束して、図1に示す層構成(ただし、負極活物質層は有さない。)の全固体二次電池を製造した。
実施例2
本例では、負極活物質層としてリチウム箔を用いて、負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池を製造した。
厚さ8μmの銅箔からなる負極集電体と厚さ20μmの金属リチウム箔とを貼り合わせてなる積層シートを準備した。この積層シート(直径10mmの円盤状に打ち抜いたシート)の金属リチウム箔が実施例1で製造した固体電解質シートにおける易破壊層の、デンドライト貫通阻止層とは反対側の表面に接するように、固体電解質シートに積層シートを積層して、アルゴンガス雰囲気下、25℃で、加圧力を24MPaに設定して、1分間圧着した。こうして、固体電解質層とデンドライト貫通阻止層と易破壊層と負極活物質層と負極集電体とをこの順で備えた全固体二次電池用負極シートを作製した。この全固体二次電池用負極シートにおける固体電解質層の、デンドライト貫通阻止層とは反対側の表面に、実施例1で作製した正極シートから打ち抜いた円盤状シートの正極活物質層を、実施例1と同様にして、貼り付けて、正極集電体と正極活物質層と固体電解質層とデンドライト貫通阻止層と易破壊層と負極活物質層と負極集電体とからなる積層体を得た。
得られた積層体全体を積層方向に8MPaの拘束圧で拘束して、図1に示す層構成を有する全固体二次電池を製造した。
実施例3
本例では、デンドライト貫通阻止層を有さない、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例1の固体電解質シートの製造において、サブ工程A1−1及びサブ工程A1−2を行わないこと(デンドライト貫通阻止層を形成しない)以外は、実施例1の固体電解質シートの製造と同様にして、固体電解質層を備えた固体電解質シートを製造した。この固体電解質シートにおける固体電解質層の空隙率(上記測定方法)は7%であった。
次いで、実施例1と同様にして、固体電解質層の一方の表面に易破壊層(空隙率20%)を圧着積層して、易破壊層及び固体電解質層からなる固体電解質シートを製造した。
更に、実施例1と同様にして、固体電解質シートの固体電解質層の表面に正極シートを、易破壊層の表面に負極集電体を積層して、負極集電体と、易破壊層と、固体電解質層と、正極活物質層と、正極集電体とからなる積層体を得た。この積層体を用いて全固体二次電池を製造した。
実施例4
デンドライト貫通阻止層と、導電性粒子を含有する易破壊層とを有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例1の全固体二次電池の製造方法において、上記(工程B)において下記易破壊層用組成物を用いたこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造方法と同様にして、全固体二次電池を製造した。
− 易破壊層用組成物の調製 −
上記合成例1で合成した無機固体電解質100mgに、0.7mgのスチレンブタジエンゴムと、2.0mgのアセチレンブラックの粒子(導電性粒子、平均粒径0.1μm)を添加し、更にヘプタン200mgを添加して、スラリー状の易破壊層用組成物を調製した。
実施例5
デンドライト貫通阻止層と、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質の粒子を含有する易破壊層とを有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例1の全固体二次電池の製造方法において、下記(工程B)を行ったこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造方法と同様にして、全固体二次電池を製造した。
(工程B)
まず、金属リチウムが表面に付着した無機固体電解質の粒子を作製した。
実施例1で作製した正極シートから直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状シートを内径10mmのマコール管に入れ、合成例1で合成した無機固体電解質100mgをその上に投入し、更に銅箔を入れて、24MPaでプレスして仮電池を構成した。この仮電池に0.09mA/cmの電流密度で充電を行い、固体電解質層内に金属リチウムのデンドライトを発生させた。この後、仮電池を分解し、円盤状シートと銅箔を取り除き、固体電解質層を乳鉢で粉砕することで、金属リチウムが表面に付着した無機固体電界質の粒子を得た(平均粒径1μm、リチウム付着量10mg)。
次いで、合成例1で合成した無機固体電解質50mgに、上記の金属リチウムが表面に付着した固体電界質粒子50mgを添加し、乳鉢で乾式混合して、易破壊層用組成物を調製した。この易破壊層用組成物を、銅箔上に、10mg/直径10mmの目付量で乾式塗布し、ステンレス鋼箔をかぶせて24MPaの加圧力で1分間プレスした後に、ステンレス鋼箔を剥離して、易破壊層を形成した(サブ工程B1)。この易破壊層の空隙率(上記測定方法)は18%であった。
次いで、作製した易破壊層から直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状易破壊層を、工程Aで作製したシート(直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状シート)のデンドライト貫通阻止層上に積層して、アルゴンガス雰囲気下、25℃で、加圧力を24MPaに設定して、1分間圧着した(サブ工程B2)。
こうして、易破壊層、デンドライト貫通阻止層、固体電解質層からなる固体電解質シートを製造した。
実施例6
デンドライト貫通阻止層と、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質の粒子及び導電性粒子を含有する易破壊層とを有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例1の全固体二次電池の製造方法において、下記(工程B)を行ったこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造方法と同様にして、全固体二次電池を製造した。
(工程B)
まず、実施例5と同様にして、金属リチウムが表面に付着した無機固体電解質の粒子を作製した。
次いで、合成例1で合成した無機固体電解質50mgに、上記の金属リチウムが表面に付着した固体電界質粒子50mgと、アセチレンブラックの粒子(導電性粒子、平均粒径0.1μm)2mgを添加し、乳鉢で乾式混合して、易破壊層用組成物を調製した。この易破壊層用組成物を、銅箔上に、10mg/直径10mmの目付量で乾式塗布し、ステンレス鋼箔をかぶせて24MPaの加圧力で1分間プレスした後に、ステンレス鋼箔を剥離して、易破壊層を形成した(サブ工程B1)。この易破壊層の空隙率(上記測定方法)は18%であった。
次いで、作製した易破壊層から直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状易破壊層を、工程Aで作製したシート(直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状シート)のデンドライト貫通阻止層上に積層して、アルゴンガス雰囲気下、25℃で、加圧力を24MPaに設定して、1分間圧着した(サブ工程B2)。
こうして、易破壊層、デンドライト貫通阻止層、固体電解質層からなる固体電解質シートを製造した。
実施例7
本例では、負極活物質層としてSi粉末を用いて、負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池を製造した。
実施例2の全固体二次電池の製造方法において、銅箔と金属リチウム箔との積層シートに代えて下記方法により作製した積層シートを用いた(易破壊層の表面に下記積層シートのSi負極活物質層を積層)こと以外は、実施例2の全固体二次電池の製造方法と同様にして、全固体二次電池を製造した。
<積層シートの作製>
− 負極用組成物の調製 −
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成例1で合成したLi−P−S系ガラス9.0g、バインダーとして変性ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)(4500−20(商品名)、アルケマ社製)の粒子1.3g、分散媒としてジイソブチルケトン12gを添加した後、この容器を遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続けた。
更にSi粉末(Silicon Powder、上記測定方法による平均粒径1〜5μm、Alfa Aesar社製)9.0g及び導電助剤としてアセチレンブラック0.9gを加え、更にジイソブチルケトン5gを添加した後、この容器を遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数150rpmで5分攪拌を続けた。こうして負極用組成物を調製した。
− 負極活物質層の成膜 −
調製した負極用組成物を、厚さ8μmの銅箔上に、2mg/直径10mmの目付量で湿式塗布し、100℃で乾燥し、180MPaで仮プレスして、Si負極活物質層を形成した。
こうして、銅箔とSi負極活物質層(厚さ30μm)との積層シートを作製した。
実施例8
本例では、デンドライト貫通阻止層とリチウムと合金形成可能な金属の膜とを有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例1の全固体二次電池の製造において、実施例1の工程Bに代えて下記工程Bを行ったこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造と同様にして、負極集電体と、リチウムと合金形成可能な金属の膜(Zn膜)と、易破壊層と、デンドライト貫通阻止層と、固体電解質層と、正極活物質層と、正極集電体とをこの順で積層した構造を有する全固体二次電池を製造した。この全固体二次電池は、易破壊層上にZn膜を有する固体電解質シートを含んでいる。
(工程B)
まず、易破壊層を形成した。すなわち、合成例1で合成した無機固体電解質100mgに、0.7mgのスチレンブタジエンゴムを添加し、更にヘプタン200mgを添加して、スラリー状の易破壊層用組成物を調製した。また、厚さ8μmの銅箔の表面に、スパッタリングによって膜厚50nmのZn膜を形成した。
次いで、調製した上記易破壊層用組成物を、銅箔に形成したZn膜上に、3mg/直径10mmの目付量で湿式塗布し、100℃で乾燥した。易破壊層用組成物の乾燥物に、ステンレス鋼箔をかぶせて24MPaの加圧力で1分間プレスした後に、ステンレス鋼箔をカールして剥離し、易破壊層(膜厚70μm)を形成した(サブ工程B1)。この易破壊層の空隙率(上記測定方法)は20%であった。
次いで、作製した易破壊層から直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状易破壊層を、工程Aで作製したシート(直径10mmの円盤状に打ち抜いた円盤状シート)のデンドライト貫通阻止層上に積層して、アルゴンガス雰囲気下、25℃で、加圧力を24MPaに設定して、1分間圧着した(サブ工程B2)。
こうして、Zn膜、易破壊層、デンドライト貫通阻止層、固体電解質層からなる固体電解質シートを製造した。
実施例9
デンドライト貫通阻止層と、リチウムと合金形成可能な金属の粒子を含有する易破壊層とを有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例1の全固体二次電池の製造方法において、上記(工程B)に下記易破壊層用組成物を用いて3mg/直径10mmの目付量で銅箔上に湿式塗布したこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造方法と同様にして、全固体二次電池を製造した。
− 易破壊層用組成物の調製 −
上記合成例1で合成した無機固体電解質100mgに、0.7mgのスチレンブタジエンゴムと、2.0mgの金属亜鉛の粒子(導電性リチウム合金前駆体の粒子、平均粒子径0.1μm)を添加し、更にヘプタン200mgを添加して、スラリー状の易破壊層用組成物を調製した。
実施例10
本例では、デンドライト貫通阻止層と、負極活物質前駆体を含有する正極活物質層とを有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例1の全固体二次電池の製造において、下記の正極用組成物を用いた(正極シートの作製は実施例1と同じである)こと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造と同様にして、負極活物質前駆体を含有する正極活物質層を備えた全固体二次電池を製造した。
− 正極用組成物の調製 −
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成例1で合成したLi−P−S系ガラス2.0gと、スチレンブタジエンゴム(商品コード182907、アルドリッチ社製)0.1gと、分散媒としてオクタン22gとを投入した。その後に、この容器をフリッチュ社製遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃で、回転数300rpmで2時間攪拌した。その後、正極活物質LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム)7.11gと、負極活物質前駆体としてLiCO(炭酸リチウム、平均粒子径1μm)0.79gを容器に投入し、再びこの容器を遊星ボールミルP−7にセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間混合を続けた。このようにして、負極活物質前駆体を含有する正極用組成物を得た。
実施例11
本例では、実施例10で製造した積層体を用いて加圧圧縮された正極活物質層を有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例10で製造した積層体(積層方向に8MPaで拘束した全固体二次電池)を、電流0.09mA/cm、電圧4.25V、充電時間20時間及び温度25℃の条件で、初期充電した。この初期充電により、炭酸リチウムから発生したリチウムイオンが易破壊層内の空隙に金属リチウムとして析出し、炭酸ガスが積層体外に放出された。初期充電後の正極活物質層を観測したところ、初期充電前の正極活物質層に対して空隙率(上記測定方法による)が7%増大していた。
次いで、電流0.09mA/cm、終止電圧2.5V、充電時間18時間及び温度25℃の条件で、初期放電した。
− 加圧する工程 −
初期放電後、積層体の拘束を外して、正極集電体と負極集電体との間に24MPaの圧力をかけて、初期充電後の全固体二次電池を積層方向に加圧して、正極活物質層を圧縮した。この圧縮は、ヒートプレス機を用いて、室温下(25℃)で、円盤状積層体に電圧を印加(充電及び放電)せずに、1時間かけて、行った。
この正極活物質層を観察したところ、初期充電前の正極活物質層に対して空隙率が4%増加した状態(初期充電前の正極活物質層における空隙率3%分の空隙を圧潰した状態)に圧縮(薄層化)されていた。易破壊層の空隙率は加圧前後で不変であった。
こうして充放電及び圧縮して得られた積層体全体を積層方向に8MPaの拘束圧で拘束して、加圧圧縮された正極活物質層を有する全固体二次電池を製造した。
実施例12
本例では、実施例10で製造した積層体を用いて加圧圧縮された正極活物質層を有する、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
実施例10で製造した積層体(積層方向に8MPaで拘束した全固体二次電池)を、電流0.09mA/cm、電圧4.25V、充電時間20時間及び温度25℃の条件で、初期充電した。この初期充電により、炭酸リチウムから発生したリチウムイオンが易破壊層内の空隙に金属リチウムとして析出し、炭酸ガスが積層体外に放出された。初期充電後の正極活物質層を観測したところ、初期充電前の正極活物質層に対して空隙率(上記測定方法による)が7%増大していた。
− 加圧する工程 −
初期充電後、積層体の拘束を外して、正極集電体と負極集電体との間に40MPaの圧力をかけて、初期充電後の全固体二次電池を積層方向に加圧して、正極活物質層を圧縮した。この圧縮は、ヒートプレス機を用いて、室温下(25℃)で、円盤状積層体に電圧を印加(充電及び放電)せずに、1時間かけて、行った。
この正極活物質層を観察したところ、初期充電前の正極活物質層に対して空隙率が3%増加した状態(初期充電前の正極活物質層における空隙率4%分の空隙を圧潰した状態)に圧縮(薄層化)されていた。易破壊層の空隙率は18%であった。
こうして充電及び圧縮して得られた積層体全体を積層方向に8MPaの拘束圧で拘束して、加圧圧縮された正極活物質層を有する全固体二次電池を製造した。
比較例1
本例では、易破壊層を有さない、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
すなわち、実施例1において、固体電解質シートの製造における工程Bを行わず、デンドライト貫通阻止層の表面に負極集電体を積層したこと以外は、実施例1と同様にして、全固体二次電池を製造した。
比較例2
本例では、易破壊層及びデンドライト貫通阻止層を有さない、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池を製造した。
すなわち、実施例1において、サブ工程A1−1及びサブ工程A1−2を行わずにサブ工程A1−3を行って固体電解質層を形成し、かつ工程Bを行わず、固体電解質層の一方の表面に負極集電体を積層したこと以外は、実施例1と同様にして、全固体二次電池を製造した。
比較例3
本例では、負極活物質層としてSi粉末を用いて、易破壊層を有さない、負極活物質層を予め形成する形態の全固体二次電池を製造した。
すなわち、実施例7の全固体二次電池の製造方法において、易破壊層を形成せず(工程Bを行わず)、デンドライト貫通阻止層の表面にSi負極活物質層を積層したこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造方法と同様にして、全固体二次電池を製造した。
<初期化>
実施例1〜10及び比較例1〜3で作製した各全固体二次電池について、0.09mA/cmで1サイクル充放電して、初期化した。
この初期化(初期充電)により、実施例10の全固体二次電池は、炭酸リチウムから発生したリチウムイオンが易破壊層内の空隙に金属リチウムとして析出し、炭酸ガスが電池外に放出された。初期充電後の正極活物質層を観測したところ、初期充電前の正極活物質層に対して空隙率(上記測定方法による)が7%増大していた。
なお、実施例12で作製した全固体二次電池は、0.09mA/cm、終止電圧2.5V、充電時間18時間及び温度25℃の条件で、初期放電して、初期化した。
<評価:充放電サイクル特性試験>
上記で作製した各全固体二次電池を用いて、下記条件により(急速)充放電を行い、充放電サイクル特性試験(過酷促進条件)を実施した。
(条件)
電流密度2.2mA/cmで4.25Vまで充電し、電流密度2.2mA/cmで2.5Vまで放電する充放電サイクルを1サイクルとして、50若しくは100サイクル繰り返して行った。
内部短絡が生じた場合は充電が完了しないため、50時間で充電を終了させ、放電させた。内部短絡の有無は、充電時の急激な電圧降下の有無により判断した。
充放電サイクル特性は、1サイクル毎に下記式から充放電効率を求めて評価した。なお、比較例2の全固体二次電池は1サイクルで短絡が発生したので、1サイクル後の充放電効率により評価した。
充放電効率=放電容量/充電容量
充放電サイクル特性試験の結果を下記に示す。

実施例1:10サイクルの充放電効率は全て99%で安定していた。放電容量維持率(1サイクル後の放電容量に対するnサイクル(nは2〜50若しくは2〜100の整数である。)後の放電容量の割合(百分率))は、10サイクル後97%であった。50サイクル後も、充放電効率は90%を維持していたが、放電容量維持率は30%であった。
実施例2:50サイクルまでの充放電効率は全て90〜99%であった。放電容量維持率は50サイクル後も90%を維持していた。
実施例3:2〜5サイクルの充放電効率は全て60〜80%であった。
実施例4:10サイクルの充放電効率は全て99%で安定していた。10サイクル後の放電容量維持率は98%であった。50サイクル後も、充放電効率は92%を維持し、放電容量維持率は50%であった。初期化サイクルにおける放電容量は実施例1と同じであった。
実施例5:10サイクルの充放電効率は全て99%で安定していた。10サイクル後の放電容量維持率は98%であった。50サイクル後も、充放電効率は94%を維持し、放電容量維持率は60%であった。初期化サイクルにおける放電容量は、実施例1より7%向上した。
実施例6:10サイクルの充放電効率は全て99%で安定していた。10サイクル後の放電容量維持率は98%であった。50サイクル後も、充放電効率は94%を維持し、放電容量維持率は65%であった。初期化サイクルにおける放電容量は実施例より8%向上した。
実施例7:100サイクルの充放電効率は90〜99%であった。放電容量維持率は100サイクル後も50%を維持していた。
実施例8:易破壊層用組成物の目付量を3mg/直径10mmとしても、Zn膜を有する本実施例は、目付量10mg/直径10mmの易破壊層用組成物で易破壊層を形成した実施例1と、同等の電池特性を示した。
実施例9:金属亜鉛の粒子を含有する易破壊層用組成物を用いた本実施例は、易破壊層用組成物の目付量を3mg/直径10mmとしても、目付量10mg/直径10mmの、導電性粒子(AB)を含有する易破壊層用組成物で易破壊層を形成した実施例4と、同等の電池特性を示した。
実施例10:15サイクルの充放電効率が全て99%で安定していた。また、正極活物質NCAを7.9g用いた実施例1(正極活物質の目付量同一)と、同等の初期放電容量を示した。
実施例11:15サイクルの充放電効率が全て99%で安定していた。また、正極活物質NCAを7.9g用いた実施例1(正極活物質の目付量同一)と、同等の初期放電容量を示したうえ、正極活物質層の薄層化により電池体積が減少して体積エネルギー密度が向上したことを確認した。
実施例12:15サイクルの充放電効率が全て99%で安定していた。また、正極活物質NCAを7.9g用いた実施例1(正極活物質の目付量同一)と、同等の初期放電容量を示したうえ、正極活物質層の薄層化により電池体積が更に減少して体積エネルギー密度が更に向上したことを確認した。
比較例1:10サイクルの充放電効率は20〜97%(具体的には、1サイクルで97%、10サイクルで20%)であった。10サイクル後の放電容量維持率は25%であった。
比較例2:1サイクルの充放電効率は35%であった。
比較例3:100サイクルまでの充放電効率は全て80〜90%であった。100サイクル後の放電容量維持率は20%であった。
実施例1及び実施例3で製造した全固体二次電池について上記充放電サイクル特性試験を行った後、この電池を分解して、易破壊層と固体電解質層とを剥離した。実施例1における易破壊層の剥離面及び実施例3における固体電解質層の剥離面を、それぞれ、下記条件で走査型電子顕微鏡により観察した。得られた画像を、それぞれ、図3及び図4に示した。
図3には、易破壊層に発生した割れと、この割れ中を成長してきたデンドライト11(図3中、黒色で円弧状に示される部分)が確認できる。しかし、図4に示す固体電解質層の剥離面には割れもヒビも確認できない。これは、実施例3においても、実施例1と同様に、易破壊層に割れ等が発生し、又はデンドライトが成長すると考えられるが、急速充放電時に易破壊層に作用した応力が易破壊層で緩和され、固体電解質層を破壊させるほどには、伝播していないため、と考えられる。
− SEM観察条件 −
装 置 : 日立製 TM3030Plus
観察条件設定 : 分析
観察モード : 合成
倍 率 : 180倍
上記充放電サイクル特性試験及びSEM観察の結果から明らかなように、易破壊層を有さない全固体二次電池は、急速充電に起因する固体電解質層の欠陥による内部短絡の発生を効果的に抑制できるものではなかった。更に、負極活物質層を予め形成しない形態の場合の放電容量維持特性にも劣るものであった。
これに対して、易破壊層を有する全固体二次電池(実施例1〜12)、更にデンドライト貫通阻止層を有する全固体二次電池(実施例1、2及び4〜12)は、いずれも、高い、充放電効率のサイクル特性を示すことから、急速充電に起因する固体電解質層の欠陥による内部短絡の発生を効果的に抑制できる。更に、負極活物質層を予め形成しない形態の全固体二次電池は、通常、デッドリチウム化によって放電容量のサイクル維持が困難であるが、易破壊層に加えてデンドライト貫通阻止層を有する全固体二次電池(実施例1、2及び4〜12は、短絡の発生を長期にわたって抑制できうえ、放電容量のサイクル維持にも優れる。とりわけ負極活物質層として析出した金属リチウムの層とデンドライト貫通阻止層とを組み合わせた実施例1、4〜6及び8〜12の全固体二次電池は、10サイクル全ての充放電効率が99%で安定しており、負極活物質層としてリチウム箔を採用した実施例2の全固体二次電池は、デッドリチウムの影響を低減できるので、放電容量のサイクル維持に優れている。更に、工程Bにおいて加熱せん断処理を適用すると、内部短絡の発生をより効果的に抑制できるので、高い充放電サイクル特性を安定して、しかも長期にわたって示す(高い信頼性を示す)ことが分かる。
また、金属リチウムを表面に有する無機固体電解質粒子を含有する易破壊層を備えた実施例5及び6の全固体二次電池は、初期化サイクル(初回充放電時)の放電容量が高いことがわかる。導電性粒子を含有する易破壊層を備えた実施例4及び6の全固体二次電池は高い放電容量維持率を示している。更に、負極活物質としてSi粉末を用いて負極活物質層を形成した実施例7は、易破壊層を備えていることにより、内部短絡の発生防止に加えて、充放電によるSi粉末の体積膨張収縮に起因するSi負極層と固体電界質層の界面剥離が抑止され、高い放電容量維持率を示す。
負極集電体(銅箔)と易破壊層との間にZn膜を有する実施例8の全固体二次電池、及び、易破壊層に金属亜鉛の粒子を含有させた実施例9の全固体二次電池は、短絡が発生するまでの時間を長期化することができ、また易破壊層用組成物の目付量を低減(易破壊層を薄肉化)することもできる。更に、負極活物質前駆体を含有する正極活物質層を備えた実施例10の全固体二次電池は、短絡発生を抑制できるうえ、電池容量の低減を防止してエネルギー密度の向上が期待できる。更に、負極活物質前駆体を含有する正極活物質層を初期化後又は初期充電後に加圧圧縮した実施例11及び12の全固体二次電池は、実施例1と同等の放電容量を示し、実施例10の全固体二次電池と比較して、体積エネルギー密度が更に向上している。特に実施例12は体積エネルギー密度の向上幅が大きい。また、両実施例とも、15サイクルの充放電効率が全て99%で安定しており、短絡の発生を抑制できることが分かる。
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
7 リチウムと合金形成可能な金属の膜
8 デンドライト貫通阻止層
9 易破壊層
10A、10B 全固体二次電池
11 デンドライト

Claims (22)

  1. 無機固体電解質の粒子を含有し、空隙率が10%以下の固体電解質層と、無機固体電解質の粒子を含有し、空隙率が15%以上の易破壊層とを積層した固体電解質シート。
  2. 前記、易破壊層に含有される無機固体電解質の粒子が、表面に金属リチウムを有する無機固体電解質の粒子を含む請求項1に記載の固体電解質シート。
  3. 前記易破壊層が、導電性粒子を含有する請求項1又は2に記載の固体電解質シート。
  4. 前記固体電解質層と前記易破壊層との間にデンドライト貫通阻止層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質シート。
  5. 前記デンドライト貫通阻止層が、250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質の粒子の予備成形体をせん断処理又は加熱処理してなる、請求項4に記載の固体電解質シート。
  6. 前記易破壊層が、リチウムと合金形成可能な金属の粒子を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質シート。
  7. 前記易破壊層の、前記固体電解質層とは反対側の表面に、リチウムと合金形成可能な金属の膜を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質シート。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質シートにおける前記易破壊層の、前記固体電解質層とは反対側の表面に負極活物質層を有する全固体二次電池用負極シート。
  9. 前記負極活物質層が、ケイ素又はケイ素元素を含有する合金を含む請求項8に記載の全固体二次電池用負極シート。
  10. 請求項8又は9に記載の全固体二次電池用負極シートにおける前記固体電解質層の、前記易破壊層とは反対側の表面に正極活物質層を有する全固体二次電池。
  11. 請求項6又は7に記載の固体電解質シートにおける固体電解質層の、前記易破壊層とは反対側の表面に正極活物質層を有する全固体二次電池。
  12. 前記正極活物質層が、負極活物質前駆体を含有する請求項10又は11に記載の全固体二次電池。
  13. 250℃以下で塑性変形する固体粒子を含む無機固体電解質の粒子を予備加圧成形し、得られた予備成形体の表面をせん断処理又は加熱して、空隙率が10%以下の固体電解質層の表層としてデンドライト貫通阻止層を形成する工程と、
    空隙率が15%以上の易破壊層を前記デンドライト貫通阻止層に圧着積層する工程と、を有する請求項4又は5に記載の固体電解質シートの製造方法。
  14. 前記易破壊層を、無機固体電解質の粒子を成形して得る請求項13に記載の固体電解質シートの製造方法。
  15. 前記易破壊層の、前記固体電解質層とは反対側の表面上に、リチウムと合金形成可能な金属の膜を設ける請求項13又は14に記載の固体電解質シートの製造方法。
  16. 請求項13又は14に記載の固体電解質シートの製造方法で製造した固体電解質シートにおける前記易破壊層の、前記固体電解質層とは反対側の表面に負極活物質層を形成する全固体二次電池用負極シートの製造方法。
  17. 請求項13〜15のいずれか1項に記載の固体電解質シートの製造方法で製造した固体電解質シートにおける前記固体電解質層の、前記易破壊層とは反対側の表面に正極活物質層を形成する全固体二次電池の製造方法。
  18. 請求項16に記載の全固体二次電池用負極シートの製造方法で製造した全固体二次電池用負極シートの、前記負極活物質層とは反対側の表面に正極活物質層を形成する全固体二次電池の製造方法。
  19. 前記正極活物質層を、正極活物質と負極活物質前駆体とを含有する正極用組成物を用いて形成する請求項17又は18に記載の全固体二次電池の製造方法。
  20. 前記正極活物質層の形成後に充電する請求項19に記載の全固体二次電池の製造方法。
  21. 充電した前記正極活物質層を加圧して圧縮する請求項20に記載の全固体二次電池の製造方法。
  22. 前記正極活物質層を加圧する前に放電する請求項21に記載の全固体二次電池の製造方法。
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