以下、本発明に係るオイルポンプ駆動装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、内燃機関であるエンジンと電動モータ(以降、それぞれ単に「エンジン」と「モータ」と称する。)とを併用した駆動装置を有するハイブリッド車両において、駆動関連装置に潤滑用のオイルを循環させるオイルポンプを駆動するためのオイルポンプ駆動装置である。
まず、本実施形態におけるオイルポンプ駆動装置の方向について定義する。本実施形態において、軸方向、径方向、周方向とは、オイルポンプ駆動装置が備える第1および第2ワンウェイクラッチに関する軸方向、径方向、周方向のことをいう。すなわち第1および第2ワンウェイクラッチの内輪または外輪の回転軸線に関する軸方向、径方向、周方向のことをいう。軸方向について、図1、2および3においては紙面右方側を軸方向一方側とし、紙面左方側を軸方向他方側とし、図4においては紙面手前側を軸方向一方側とし、紙面奥側を軸方向他方側とする。周方向について、図4において、紙面に向かって右に回転する方向を周方向一方側に向かう方向あるいは時計方向とし、紙面に向かって左に回転する方向を周方向他方側に向かう方向あるいは反時計方向とする。
図1は、本発明の実施形態の第1実施例に係るオイルポンプ駆動装置の減速構造のモデル図である。
図2は、本発明の実施形態の第2実施例に係るオイルポンプ駆動装置の減速構造のモデル図であり、変速機構を合わせ持つ減速構造を示している。
図3は、第1実施例に係るオイルポンプ駆動装置の軸方向に沿った断面図であり、オイルポンプ駆動装置によって駆動されるオイルポンプの断面の概略も合わせて示している。
図4は、図3のII−II矢視断面図であり、第1ワンウェイクラッチの部分における断面を示している。
本発明の実施形態の第1実施例に係るオイルポンプ駆動装置と第2実施例に係るオイルポンプ駆動装置とは略同様であり、モータから伝達される回転を減速してワンウェイクラッチに伝達するための減速構造がそれぞれ異なっている。
図1に示すように、第1実施例に係るオイルポンプ駆動装置1は、第1ワンウェイクラッチ21と第2ワンウェイクラッチ23とを備えている。第1ワンウェイクラッチ21は動力源であるモータMの駆動力をオイルポンプPに伝達するためのものであり、第2ワンウェイクラッチ23は動力源であるエンジンEの駆動力をオイルポンプPに伝達するためのものである。
第1実施例に係る減速構造は、図1に示すように、モータMと第1ワンウェイクラッチ21との間に、プラネタリギヤAを備えている。モータM側の回転伝達機構(図示省略)によって伝達されたモータMの回転は、プラネタリギヤAを介して減速されて第1ワンウェイクラッチ21に伝達される。減速されたモータMの回転は、第1ワンウェイクラッチ21を介してオイルポンプPのポンプ駆動軸7に伝達される。すなわち、オイルポンプPは、減速されたモータMの回転駆動力によって駆動される。
第2実施例に係るオイルポンプ駆動装置1は、第1実施例と同様の構成の第1ワンウェイクラッチ21と第2ワンウェイクラッチ23とを備えている。第2実施例に係る減速構造は、図2に示すように、モータMと第1ワンウェイクラッチ21との間に、プラネタリギヤAに加えて、変速クラッチBをさらに備えている。変速クラッチBとプラネタリギヤAとは同軸に設けられている。他の構成は第1実施例と同様である。
変速クラッチBは、モータM側の回転伝達機構(図示省略)とプラネタリギヤAとを接続する締結状態(以下、第1の締結状態という)と、プラネタリギヤAを介さずに、モータM側の前記回転伝達機構と第1ワンウェイクラッチ21とを接続する第2の締結状態とを切り替えることができる構成を有している。すなわち変速クラッチBが第1の締結状態においては、モータM側の回転伝達機構とプラネタリギヤAとが接続され、モータM側の回転伝達機構によって伝達されたモータMの回転はプラネタリギヤAにて減速され、当該減速された回転が第1ワンウェイクラッチ21を介してオイルポンプPのポンプ駆動軸7に伝達される。したがってオイルポンプPは、減速されたモータMの回転駆動力によって駆動される。
一方、変速クラッチBが第2の締結状態においては、モータM側の回転伝達機構と第1ワンウェイクラッチ21とは、プラネタリギヤAを介さずに接続される。すなわち変速クラッチBが第2の締結状態においては、モータM側の回転伝達機構によって伝達されたモータMの回転は減速されずに等速で第1ワンウェイクラッチ21に伝達され、当該等速の回転が第1ワンウェイクラッチ21を介してオイルポンプPのポンプ駆動軸7に伝達される。このように第2実施例に係るオイルポンプ駆動装置1の減速構造は、変速クラッチBがモータMの回転速度に応じてモータMの回転をプラネタリギヤAを介して減速してオイルポンプPへ伝達し、減速の必要がない場合は減速されずに等速でオイルポンプPへ伝達する切替機構を構成している。すなわち第2実施例に係るオイルポンプ駆動装置1の減速構造は、モータM側の回転伝達機構によって伝達されたモータMの回転を、変速クラッチBを介して、減速と等速とを切り替えてオイルポンプPへ伝達することができる。
以下に、第1実施例に係るオイルポンプ駆動装置1について具体的な構成を説明する。
図3に示すように、本実施形態の第1実施例に係るオイルポンプ駆動装置1は、オイルポンプ2の軸方向他方側に隣接して設けられている。具体的には、オイルポンプ2はポンプボディ3とポンプカバー4とからなるポンプケース5と、ポンプロータ6と、ポンプ駆動軸7とを備えており、オイルポンプ駆動装置1は、オイルポンプ2のポンプ駆動軸7上に、オイルポンプ2の軸方向他方側に隣接して設けられている。
オイルポンプ2のポンプボディ3は、図示しない車体側構造物に固定されている。ポンプボディ3は、軸方向一方側に向かって凹み、軸方向他方側に向かって開口するポンプ室形成用凹部8を備えている。ポンプ室形成用凹部8の軸方向から見た断面形状は、円形である。ポンプ室形成用凹部8の底部の中央部には、軸方向一方側に向かって凹んだ凹部9が形成されている。凹部9には、ポンプ駆動軸7の軸方向一方側端部が回転可能に配置されている。
ポンプカバー4は、所定の軸方向厚さを有し径方向に延在する本体部10と、本体部10の軸方向他方側端面から軸方向他方側に向けて突出する円柱状の突出部11とを備えている。また、ポンプカバー4には、突出部11と本体部10とを軸方向に貫通する1つの貫通孔12が形成されている。したがって突出部11は円筒になっている。貫通孔12にはポンプ駆動軸7が回転可能に挿通されている。ポンプ駆動軸7は、貫通孔12に挿通されて、ポンプカバー4に回転可能に支持されている。このように、ポンプ駆動軸7は、ポンプカバー4によって軸方向の広い領域で径方向に支持されている。ポンプ駆動軸7の軸方向他方側端部は、車体側構造物である壁状の支持部15に形成された軸方向凹部16に回転可能に配置されている。
ポンプカバー4は、本体部10の軸方向一方側の端面がポンプボディ3のポンプ室形成用凹部8の軸方向他方側の開口を覆って該開口を閉じる状態でポンプボディ3に固定されている。ポンプカバー4の本体部10の軸方向一方側端面とポンプボディ3のポンプ室形成用凹部8とにより、ポンプロータ6が収容されるポンプ室13が形成されている。
ポンプロータ6は、図示しないインナロータと図示しないアウタロータとから構成されている。インナロータはポンプ駆動軸7の軸方向一方側の部分と連結され、インナロータとポンプ駆動軸7とは一体に回転する。インナロータがポンプ室13で回転することにより、ポンプ室13の図示しない吸入口よりポンプ室の内部へオイルが吸入され、ポンプ室13の吐出口14からポンプ室13の外部へオイルが吐出される。このように、オイルポンプ2は、ポンプ駆動軸7の回転により駆動する。すなわちポンプ駆動軸7は、オイルポンプ2を駆動するための軸である。
本実施例に係るオイルポンプ駆動装置1は、ポンプ駆動軸7を駆動するための装置である。オイルポンプ駆動装置1は、オイルポンプ2のポンプ駆動軸7上に、オイルポンプ2の軸方向他方側に配置された2つのワンウェイクラッチを備えている。2つのワンウェイクラッチは、ポンプ駆動軸7と同軸上に軸方向に並べて配置され、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって、第1ワンウェイクラッチ21と第2ワンウェイクラッチ23の順に配置されている。
本実施例においては、第1ワンウェイクラッチ21は動力源であるモータの駆動力をオイルポンプ2に伝達するためのものであり、第2ワンウェイクラッチ23は動力源であるエンジンの駆動力をオイルポンプ2に伝達するためのものである。第1ワンウェイクラッチ21および第2ワンウェイクラッチ23は、それぞれの内輪が一体化された共通内輪25を備えている。共通内輪25は後述するようにポンプ駆動軸7に固定されており、オイルポンプ駆動装置1はエンジンの駆動力とモータの駆動力とを選択的にポンプ駆動軸7に伝達する構成になっている。なお、以下の説明においては、第1ワンウェイクラッチ21および第2ワンウェイクラッチ23の共通内輪を単に「内輪25」という。また、以下の説明においては、第2ワンウェイクラッチ23の構成のうち、第1ワンウェイクラッチ21と同様の構成については、図4を援用して説明する。
図3および図4に示すように、第1ワンウェイクラッチ21は、内輪25に対して径方向外方に離間し、内輪25と同軸に且つ内輪25に対して相対回転可能に配置された外輪21aと、内輪25と外輪21aとの間に周方向に所定間隔で介装された複数(本実施例においては5つ)のローラ21bと、ローラ21bを内輪25と外輪21aとを結合する方向に付勢するコイル状またはアコーデオン状のスプリング21cと、内輪25と外輪21aとの径方向間隔を保持するための複数(本実施例においては5つ)のブロックベアリング21dと、を備えている。ローラ21bは内輪25と外輪21aとを結合し、内輪25と外輪21aとの間でトルクの伝達をするためのトルク伝達部材である。
第2ワンウェイクラッチ23は、内輪25に対して径方向外方に離間し、内輪25と同軸に且つ相対回転可能に配置された外輪23aを備えている。このように、第1ワンウェイクラッチ21と第2ワンウェイクラッチ23とは、それぞれ独立した外輪21a、23aを備えている。内輪25と第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aとの径方向間隔は、内輪25と第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aとの径方向間隔と同じ大きさに形成されており、内輪25と第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aとの間には、第1ワンウェイクラッチ21と同様の構成のトルク伝達部材およびブロックベアリングが備えられている。すなわち第2ワンウェイクラッチ23は、図3および図4に示すように、周方向に所定間隔で介装された複数(本実施例においては5つ)のローラ23bと、ローラ23bを内輪25と外輪23aとを結合する方向に付勢するコイル状またはアコーデオン状のスプリング23cと、内輪25と外輪23aとの径方向間隔を保持するための複数(本実施例においては5つ)のブロックベアリング23dと、を備えている。
本実施例においては、第1ワンウェイクラッチ21の5つのローラ21bと第2ワンウェイクラッチ23の5つのローラ23bとは、内輪25に対してそれぞれ同じ周方向位置に配置されている。言い換えると、第1ワンウェイクラッチ21の5つのローラ21bと第2ワンウェイクラッチ23の5つのローラ23bとは1対1に対応し、これら対応する2つのローラ21bおよび23bが軸方向に沿って並んで配置されている。同様に、第1ワンウェイクラッチ21の5つのブロックベアリング21dと第2ワンウェイクラッチ23の5つのブロックベアリング23dとは1対1に対応し、これら対応する2つのブロックベアリング21dおよび23dが軸方向に沿って並んで配置されている。
内輪25は、軸方向に所定の長さを有する円筒状の本体部27と、本体部27の軸方向他方側端部の内周面から径方向内方に突出して形成された連結部29とから構成されている。連結部29の内径部にはスプライン31が形成されている。内輪25は、連結部29のスプライン31がポンプ駆動軸7の外周面に形成されたスプライン32に嵌合されることにより、ポンプ駆動軸7に固定されている。この構成により、内輪25とポンプ駆動軸7とは一体に回転する。
内輪25の本体部27は、軸方向から見てポンプカバー4の突出部11よりも径方向外方側に配置され、径方向から見てポンプカバー4の突出部11と径方向に重なる部分を有するように配置されている。すなわち内輪25の本体部27は、ポンプ駆動軸7およびポンプカバー4の突出部11と径方向に重なって配置される部分を有している。内輪25の本体部27の軸方向一方側端面は、ポンプカバー4の本体部10の軸方向他方側端面と隙間を介して軸方向に対向している。内輪25の連結部29の軸方向一方側の面は、ポンプカバー4の突出部11の軸方向他方側端面と隙間を介して軸方向に対向している。また、内輪25の本体部27の内周面は、ポンプカバー4の突出部11の外周面に対して摺動して回転する。すなわち内輪25は、ポンプカバー4の突出部11に回転可能に支持されている。
内輪25の本体部27の外周面には、図4に示すように、径方向内方に窪んだ凹部33が複数形成されている。本実施例においては、5つの凹部33が周方向に所定間隔で形成されている。凹部33は本体部27の外周面の軸方向全長に亘って形成されている。凹部33には第1ワンウェイクラッチ21のローラ21bおよび第2ワンウェイクラッチ23のローラ23bが配置されている。凹部33の底面は、第1ワンウェイクラッチ21のローラ21bおよび第2ワンウェイクラッチ23のローラ23bが係合するカム面35を構成している。カム面35は、凹部33の周方向一方端から周方向他方端へ向かうに従い外輪21aの内周面および外輪23aの内周面との径方向間隔が大きくなる方向に傾斜した傾斜面である。
第1ワンウェイクラッチ21のローラ21bと第2ワンウェイクラッチ23のローラ23bとは、上述したように軸方向に並んで配置されているので、カム面35は、第1ワンウェイクラッチ21のローラ21bが係合する部分と第2ワンウェイクラッチ23のローラ23bが係合する部分とが軸方向に並んで形成されている。
ローラ21bは円柱状の部材である。ローラ21bは、ローラ21b自体の軸方向が外輪21aおよび内輪25の軸方向と平行となる向きに凹部33に配置されている。ローラ21aは、凹部33のカム面35を摺動または転動する。ローラ23bもローラ21bと同様の構成である。
ブロックベアリング21dは、径方向上下端部から径方向中央部に向かって周方向寸法が徐々に小さくなり、周方向両側の面の中央部がくびれている。ブロックベアリング21dは、周方向に所定間隔で複数(本実施例においては5つ)配置されており、外輪21aと内輪25との径方向間隔を保ち、外輪21aと内輪25とを同心に保持している。ブロックベアリング23dもブロックベアリング21dと同様の構成である。
内輪25と外輪21aおよび外輪23aとの間には、ローラ21b、ローラ23b、ブロックベアリング21dおよびブロックベアリング23dを保持するための保持器37が配置されている。保持器37は、図3および図4に示すように、第1ワンウェイクラッチ21のローラ21bの軸方向一方側に配置された第1環状部39と、第2ワンウェイクラッチ23のローラ23bの軸方向他方側に配置された第2環状部41と、第1環状部39と第2環状部41とを軸方向に連結する複数の第1柱部43と複数の第2柱部45とによって構成されている。第1柱部43と第2柱部45とは、周方向一方側から周方向他方側に向かってこの順番で1組をなし、且つ交互に保持器37の全周に亘って複数組(本実施例においては5組)が設けてある。
図3に示すように、保持器37の第1環状部39の内径側縁部には、径方向内方に突出するフランジ47が形成され、フランジ47の軸方向他方側の面は、内輪25の軸方向一方側の端面に接触している。保持器37の第2環状部41の内径側縁部には、径方向内方に突出するフランジ49が形成され、フランジ49の軸方向一方側の面は、内輪25の軸方向他方側の端面に接触している。このような構成により、保持器37は軸方向の移動が規制されている。
図4に示すように、保持器37の第1柱部43の内周部には、径方向内方へ突出し、軸方向に延在する突出部51が形成されている。突出部51は内輪25の外周面に形成された軸方向溝53に係合している。この係合により、保持器37は内輪25との相対回転が規制され、内輪25と一体に回転する。
図4に示すように、保持器37の第1柱部43の周方向他方側の面は、ブロックベアリング21d、23dの周方向一方側の面のくぼみ形状に対応した曲面に形成され、ブロックベアリング21d、23dの周方向一方側の全面と接触している。保持器37の第2柱部45の周方向一方側の面は、ブロックベアリング21d、23dの周方向他方側の面のくぼみ形状に対応した曲面に形成され、ブロックベアリング21d、23dの周方向他方側の全面と接触している。この構成により、ブロックベアリング21d、23dは第1柱部43と第2柱部45とによって周方向移動が規制されると共に、径方向外方へのがたつきも抑制されている。
保持器37の第1柱部43の周方向一方側の面と第2柱部45の周方向他方側の面とは所定の間隔を介して周方向に対向している。第1柱部43の周方向一方側の面と第2柱部45の周方向他方側の面とによって形成される空間55内に1つのローラ21bおよび1つのローラ23bが配置されている。第1柱部43の周方向一方側の面には、軸方向一方側の部分に凹部57が形成され、軸方向他方側の部分に凹部57と同様の構成の凹部58が形成されている。凹部57にはローラ21bをカム面35との係合方向すなわち周方向一方側に付勢するためのスプリング21cが配置され、凹部58にはローラ23bをカム面35との係合方向すなわち周方向一方側に付勢するためのスプリング23cが配置されている。
第2ワンウェイクラッチ23と支持部15との間には、スラストワッシャ61が配置されている。スラストワッシャ61は、固定用ピン62によって支持部15に対する相対回転が規制された状態で支持部15に固定されている。スラストワッシャ61は、内径側部分が内輪25の軸方向他方側端面と接触し、外径側部分が外輪23aの軸方向他方側端面と接触している。すなわちスラストワッシャ61は、内輪25および第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aのスラスト軸受である。
第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aと第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aとの間には、スラストワッシャ63が配置されている。スラストワッシャ63は、固定用ピン64によって第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aの軸方向一方側端面に固定されている。第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aは、スラストワッシャ63の軸方向一方側の面に対して摺動して回転する。
図示しないモータの出力軸の回転は、図示しないギヤ機構を介して、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aを駆動する環状の第1駆動部材65に伝達される。本実施例においては、第1駆動部材65の回転は、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aの外径側に設けられた減速機構を介して第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aに伝達される。すなわち、第1駆動部材65に伝達されたモータの出力軸の回転は、減速されて第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aに伝達される。減速機構の構成は後述する。
第1ワンウェイクラッチ21は、外輪21aが内輪25に対して図4において時計方向へ回転すると、ローラ21bが内輪25のカム面35と外輪21aの内周面とに係合し、外輪21aと内輪25とが結合して一体に回転し、外輪21aから内輪25へ回転が伝達される。一方、外輪21aが内輪25に対して図4において反時計方向へ相対回転すると、ローラ21bは内輪25のカム面35に係合せず、外輪21aは内輪25に対して空転する。この状態においては、外輪21aから内輪25へ回転は伝達されない。
図示しないエンジンの出力軸の回転は、図示しないギヤ機構を介して、第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aを駆動する環状の第2駆動部材67に伝達される。第2駆動部材67の外周部にはギヤ68が形成されている。第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aの外周部には、第2駆動部材67のギヤ68と噛み合うギヤ69が形成されている。したがって、第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aは第2駆動部材67と逆回転する。第2駆動部材67の回転は、第2駆動部材67のギヤ68と噛み合うギヤ69を介して第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aに伝達される。
第2ワンウェイクラッチ23は、外輪23aが内輪25に対して図4において時計方向へ回転すると、ローラ23bが内輪25のカム面35と外輪23aの内周面とに係合し、外輪23aと内輪25とが結合して一体に回転し、外輪23aから内輪25へ回転が伝達される。一方、外輪23aが内輪25に対して図4において反時計方向へ相対回転すると、ローラ23bは内輪25のカム面35に係合せず、外輪23aは内輪25に対して空転する。この状態においては、外輪23aから内輪25へ回転は伝達されない。
次に、第1ワンウェイクラッチ21の減速機構について説明する。
第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aは、内径側の円筒部71と、円筒部71と一体形成され、円筒部71の外周面から径方向外方に延在する環状のフランジ部72とを有している。フランジ部72は円筒部71の軸方向中央部に形成されている。フランジ部72の軸方向一方側の面と、フランジ部72よりも軸方向一方側に延びる円筒部71の第1部分73の外周面とは、径方向から見て略直角をなしている。フランジ部72よりも軸方向他方側に延びる円筒部71の第2部分74は、円筒部71の第1部分73よりも大きな外径寸法を有している。円筒部71の第2部分74の軸方向他方側端面は、スラストワッシャ63と接触し摺動する。内輪25に対して外輪21aが空転する際、円筒部71の内周面はブロックベアリング21dの外周面上を摺動し、ローラ21bは円筒部71の内周面に対して転動または摺動する。
外輪21aのフランジ部72の軸方向一方側の面には、複数のピニオンギヤ75が周方向所定間隔で配置されている。これらのピニオンギヤ75は、外輪25aの外径側に互いに噛み合わないように配置されている。各ピニオンギヤ75は、外輪21aのフランジ部72の軸方向一方側の面に対して垂直に突出して固定された軸部材76に回転可能に取り付けられている。すなわちピニオンギヤ75は、外輪21aのフランジ部72に対して、軸部材76を中心に回転可能に取り付けられている。本実施例においては、図4に示すように、8つの軸部材76が設けられ、8つのピニオンギヤ75が配置されている。8つのピニオンギヤ75の軸部材76を結ぶ仮想円Cの中心は、外輪21aの回転軸線と同軸である。
8つのピニオンギヤ75の軸部材を結ぶ仮想円Cの内径側には、8つのピニオンギヤ75と外輪21aの外径側で噛み合う1つの外歯歯車78が配置されている。外歯歯車78は外輪21aと同軸上に配置されている。外歯歯車78は、外周部にピニオンギヤ75と噛み合うギヤ79が形成された円筒部80と、円筒部80の軸方向一方側端部から径方向内方に延在する環状の内向きフランジ部81とから構成されている。外歯歯車78は、ポンプケース5との相対回転が規制された状態、すなわち自転が規制された状態でポンプケース5に固定されている。具体的には、オイルポンプ2のポンプカバー4の軸方向他方側の面には、軸方向一方側に向かって窪んだ環状の凹部82が形成され、外歯歯車78は、径方向内向きフランジ部81が固定用ピン83によって凹部82の内部に固定されることにより、ポンプカバー4に固定されている。
外歯歯車78の円筒部80の軸方向他方側端面は、外輪21aの径方向外向きフランジ部72の軸方向一方側の面と隙間を介して軸方向に対向している。外歯歯車78の円筒部80の内周面は、外輪21aの円筒部71の第1部分73の外周面と隙間を介して径方向に対向している。外歯歯車78の内向きフランジ部81の軸方向他方側の面は、外輪21aの円筒部71の軸方向一方側端面と軸方向に対向している。外歯歯車78の内向きフランジ部81と外輪21aの円筒部71の軸方向一方側端面との間には、スラストワッシャ84が介装されている。スラストワッシャ84は、図示しない固定部材によって外歯歯車78の内向きフランジ部81に固定されている。
なお、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aおよび第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aは、ポンプカバー4に固定された外歯歯車78と支持部15との間に、スラストワッシャ84とスラストワッシャ63とスラストワッシャ61とを介して軸方向に支持されている。
外輪21aのフランジ部72の径方向外方、すなわち8つのピニオンギヤ75の軸部材76を結ぶ仮想円Cの外径側には、8つのピニオンギヤ75と噛み合う1つの内歯歯車85が配置されている。内歯歯車85は外輪21aと同軸上に配置されている。内歯歯車85は軸方向に延在する円筒状に形成され、内周部の軸方向一方側端部にピニオンギヤ75と噛み合うギヤ86が形成されている。内歯歯車85の内周部の軸方向中央部は、内周部の軸方向一方側端部よりも内径寸法が大きく形成され、軸方向一方側端部とは段部87を介して連続している。段部87には、外輪21aのフランジ部72の軸方向一方側の面の外縁部が係合している。内歯歯車85の内周部の軸方向中央部は、外輪21aのフランジ部72の外周面と隙間を介して径方向に対向している。あるいは、内歯歯車85の内周部の軸方向中央部は、外輪21aのフランジ部72の外周面に対して滑らかに摺動する構成としても良い。
内歯歯車85の内周部の軸方向他方側部分には、2つの周方向溝88、89が軸方向に隣接して形成されている。軸方向一方側の周方向溝88にはスラストワッシャ90が取り付けられている。軸方向他方側の周方向溝89には止め輪91が取り付けられ、これによりスラストワッシャ90の軸方向他方側への移動が規制されている。スラストワッシャ90の軸方向一方側の面は、外輪21aのフランジ部72の軸方向他方側の面と軸方向に対向し、該フランジ部72の軸方向他方側の面に対して接触し、滑らかに摺動する。内歯歯車85は、内周側の段部87が外輪21aのフランジ部72の軸方向一方側の面の外縁部に係合し、スラストワッシャ90が外輪21aのフランジ部72の軸方向他方側の面に接触していることにより、軸方向の移動が規制されている。
内歯歯車85の外周部にはギヤ92が形成されている。内歯歯車85の外周部のギヤ92は、モータの出力軸の回転が伝達される第1駆動部材65の外周部のギヤ93と噛み合っている。したがって内歯歯車85は第1駆動部材65と逆回転する。
モータの出力軸の回転が伝達される内歯歯車85と、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aのフランジ部72に配置され、内歯歯車85と噛み合う複数のピニオンギヤ75と、ポンプカバー4に固定され、複数のピニオンギヤ75と噛み合う外歯歯車78とで、第1ワンウェイクラッチ21の減速機構が構成されている。内歯歯車85と、フランジ部72を有する外輪21aと、複数のピニオンギヤ75と、外歯歯車78とは、図1におけるプラネタリギヤA(図1参照)を構成している。すなわち内歯歯車85とピニオンギヤ75と外輪21aと外歯歯車78とは、それぞれプラネタリギヤAのリングギヤとピニオンギヤとプラネタリキャリアとサンギヤを構成している。
次に、第1ワンウェイクラッチ21の減速機構の作動、および本実施例のオイルポンプ駆動装置1の作動について説明する。
図示しないモータの出力軸の回転が第1ワンウェイクラッチ21を駆動する第1駆動部材65に伝達され、第1駆動部材65が図4において反時計方向へ回転すると、第1ワンウェイクラッチ21の内歯歯車85が時計方向へ回転する。このように、第1駆動部材65に伝達されたモータの出力軸の回転は、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aに設けられた減速機構に伝達される。内歯歯車85が時計方向へ回転すると、内歯歯車85の内周部のギヤ86と噛み合う複数のピニオンギヤ75に回転が伝達される。ピニオンギヤ75は、ポンプカバー4に自転が規制された状態で固定された外歯歯車78にも噛み合っているため、内歯歯車85の回転が伝達された複数のピニオンギヤ75は、それぞれが軸部材76を中心に時計方向に回転すると共に、内歯歯車85のギヤ86および外歯歯車78のギヤ79と噛み合いながら時計方向に移動する。このように複数のピニオンギヤ75が時計方向に自転しつつ時計方向に移動することにより、外輪21aのフランジ部72が時計方向に回転する。すなわち第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aが時計方向に回転する。
ここで、プラネタリギヤAを構成する第1ワンウェイクラッチ21の減速機構は、内歯歯車85が入力要素で、外歯歯車78が固定要素で、外輪21aが出力要素である。したがって、内歯歯車85に入力されたモータの回転は、ピニオンギヤ75および外歯歯車78を介して、減速されて外輪21aに伝達される。このように本実施例によれば、第1駆動部材65にモータの高回転が伝達されても、モータの回転は第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aには減速されて伝達される。
なお、第1駆動部材65に伝達されたモータの回転をどの程度減速して第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aに伝達するかについては、モータおよびオイルポンプ2の性能、さらに第1ワンウェイクラッチ21のトルク容量等を総合的に考慮して設計される。
第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aが時計方向に回転すると、ローラ21bが内輪25のカム面35と外輪21aの内周面とに係合し、外輪21aと内輪25とが結合して一体に回転し、外輪21aから内輪25へ回転が伝達される。そして内輪25が回転することによりポンプ駆動軸7が回転し、オイルポンプ2が駆動する。
一方、図示しないエンジンの出力軸の回転が第2ワンウェイクラッチ23を駆動する第2駆動部材67に伝達され、第2駆動部材67が図4において反時計方向へ回転すると、第2駆動部材67と第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aとは逆回転し、第2駆動部材67の回転が第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aに伝達される。第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aが時計方向に回転すると、ローラ23bが内輪25のカム面35と外輪23aの内周面とに係合し、外輪23aと内輪25とが結合して一体に回転し、外輪23aから内輪25へ回転が伝達される。そして内輪25が回転することによりポンプ駆動軸7が回転し、オイルポンプ2が駆動する。
本実施例のポンプ駆動装置1は、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aに伝達される減速されたモータの回転と、第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aに伝達されるエンジンの回転とを選択的に内輪25に伝達し、これによりオイルポンプ2を常時駆動している。ポンプ駆動装置1は、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aと第2ワンウェイクラッチ23の外輪23aとが同時に回転する状態にあっては、外輪21aと外輪23aのうち、速い方の回転を内輪に伝達する。このとき、外輪21aと外輪23aのうち回転が遅い方は、内輪25に対して反時計方向に相対回転し、内輪25に対して空転状態である。
オイルポンプ2が駆動すると、ポンプ室13の吐出口14から吐出された潤滑用のオイルは、ポンプカバー4の内部およびポンプ駆動軸7の内部に設けられた油路94、95、96に供給され、これらの油路94、95、96を経由して第1ワンウェイクラッチ21および第2ワンウェイクラッチ23の潤滑部、さらに図示しない他の駆動関連装置に供給される。
次に本実施例に係るオイルポンプ駆動装置1の効果について説明する。
本実施例に係るオイルポンプ駆動装置1は、上述したような構成の減速機構を備えることにより、第1ワンウェイクラッチ2・BR>Pの外輪21aには、モータの回転が減速されて伝達される。したがって、車両の駆動装置として高回転モータを適用しても、オイルポンプ2に高回転負荷が掛かってしまうことがない。その結果、高回転モータを適用してもオイルポンプ2の焼き付き等を防止することができる。
また、本実施例に係るオイルポンプ駆動装置1は、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aの外径側に減速機構が設けられている。したがって、本実施例によれば、モータとオイルポンプ駆動装置1との間に減速機構を設けるスペースを別途確保する必要がない。したがって従来のオイルポンプ駆動装置と比較して設置スペースの増大を招くことなく、高回転モータに対応するオイルポンプ駆動装置1を実現することができる。
また、オイルポンプ駆動装置1は、第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aの外径側に減速機構が設けられているので、減速機構は第1ワンウェイクラッチ21の外輪21aと略同じ軸方向位置に配置されている。その結果、第1ワンウェイクラッチ21の軸方向寸法、更には、オイルポンプ駆動装置1の軸方向寸法の増大を抑制することができる。
なお、本実施例に係るオイルポンプ駆動装置1は、上記実施形態に限定されず、変形が可能である。例えば、第1ワンウェイクラッチ21および第2ワンウェイクラッチ23の一方または両方のトルク伝達部材を、ローラに代えてスプラグとすることもできる。また、トルク伝達部材の数も適宜調節が可能である。
また、本実施例に係るオイルポンプ駆動装置1によって駆動されるオイルポンプの形式は限定されず、例えば内接歯車ポンプ、外接歯車ポンプ、ベーンポンプ等に用いることができる。
なお、第2実施例に係るオイルポンプ駆動装置は、上述したように、第1実施例の減速機構すなわちプラネタリギヤAと同軸上に、変速クラッチBを備えている(図2参照)。また、プラネタリギヤAに使用されるピニオンギヤの数は仕様設定により限定されるものではない。変速クラッチBは、第1実施例のプラネタリギヤAと同様に、第1ワンウェイクラッチの外径側に設けられている。他の構成は第1実施例に係るオイルポンプ駆動装置と同様であるので、詳細な説明は省略する。