JP2020097744A - 顔料微粒子、顔料分散体、感光性着色組成物及びカラーフィルター - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、これらの有機顔料を微細化させる検討が多く試みられている。
(1)X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Å以下であり、下記一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(2)X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Å以下であり、X線回折パターンにより算出される(1 5 −1)面方向の結晶子サイズが80Å以下であり、一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(3)X線回折パターンにより算出される(±1 ±1 ±1)の8個の結晶格子面面のうちX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズを、X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち、2θ=3〜10°における最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズで除して算出される結晶子サイズの比が、0.85〜1.25であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることを特徴とする、一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(4)X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが140Å以下であり、一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(5)X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが140Å以下であり、X線回折パターンにより算出される2θ=28.0°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが80Å以下であることを特徴とする、一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(6)平均一次粒子径が5〜40nmである上記(1)、(2)、(4)又は(5)に記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(7)X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズを、X線回折パターンにより算出される2θ=7.4°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズで除して算出される結晶子サイズの比が0.85〜1.25であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることを特徴とする、一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(8)X線回折パターンにより算出される2θ=3〜10°における最大ピークに対応する結晶格子面の面間隔の、80℃における値と230℃における値の変化率(下記特定式による)が3.0%以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
80℃における値と230℃における値の変化率=
{(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式]
(9)X線回折パターンにより算出される2θ=7.4°±0.3°に対応する結晶格子面の面間隔の、80℃における値と230℃における値の変化率(下記特定式による)が3.0%以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
80℃における値と230℃における値の変化率=
{(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式]
(11)一次粒子径の変動係数(CV値)が30未満であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(12)Feの含有量が35ppm以下であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかにに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(13)上記一般式(I)が、下記一般式(II)で示されることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(14)Rが臭素である下記式(III)で示されることを特徴とする上記(13)記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(16)有機顔料と有機溶媒とを少なくとも含有する顔料分散体であって、該有機顔料が、上記(1)〜(15)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子であることを特徴とする顔料分散体。
(17)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の顔料微粒子を少なくとも含有する感光性着色組成物。
(18)上記(17)に記載の感光性着色組成物を少なくとも含有するカラーフィルター。
(19)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の顔料微粒子を少なくとも含有するカラーフィルター。
(1)X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Å以下であり、下記一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(2)X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Å以下であり、X線回折パターンにより算出される(1 5 −1)面方向の結晶子サイズが80Å以下であり、一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(3)X線回折パターンにより算出される(±1 ±1 ±1)の8個の結晶格子面面のうちX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズを、X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち、2θ=3〜10°における最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズで除して算出される結晶子サイズの比が、0.85〜1.25であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることを特徴とする、一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(4)X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが140Å以下であり、一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(5)X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが140Å以下であり、X線回折パターンにより算出される2θ=28.0°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが80Å以下であることを特徴とする、一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(6)平均一次粒子径が5〜40nmである上記(1)、(2)、(4)又は(5)に記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(7)X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズを、X線回折パターンにより算出される2θ=7.4°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズで除して算出される結晶子サイズの比が0.85〜1.25であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることを特徴とする、一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(8)X線回折パターンにより算出される2θ=3〜10°における最大ピークに対応する結晶格子面の面間隔の、80℃における値と230℃における値の変化率(下記特定式による)が3.0%以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
80℃における値と230℃における値の変化率=
{(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式]
(9)X線回折パターンにより算出される2θ=7.4°±0.3°に対応する結晶格子面の面間隔の、80℃における値と230℃における値の変化率(下記特定式による)が3.0%以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
80℃における値と230℃における値の変化率=
{(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式]
(10)一次粒子径の標準偏差が7.0未満であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(11)一次粒子径の変動係数(CV値)が30未満であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(12)Feの含有量が35ppm以下であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかにに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(13)上記一般式(I)が、下記一般式(II)で示されることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(14)Rが臭素である下記式(III)で示されることを特徴とする上記(13)記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
(16)有機顔料と有機溶媒とを少なくとも含有する顔料分散体であって、該有機顔料が、上記(1)〜(15)のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子であることを特徴とする顔料分散体。
(17)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の顔料微粒子を少なくとも含有する感光性着色組成物。
(18)上記(17)に記載の感光性着色組成物を少なくとも含有するカラーフィルター。
(19)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の顔料微粒子を少なくとも含有するカラーフィルター。
本発明に係る顔料微粒子は、顔料種が下記一般式(I)で示されるジケトピロロピロール系顔料化合物を含む顔料の微粒子である。
例えば、ジケトピロロピロール系顔料化合物の基本的な製造方法として、出発物質としてニトリル化合物を用いるコハク酸エステル合成法について開示するUSP 4,415,685号公報、USP 4,579,949号公報及びこれらの対応特許に記載された方法により、出発物質の官能基の種類、数、位置を選択することにより、上記一般式(I)のX1及びX2の種類、数及び位置を選択することができる。
また、改良された各種の方法、例えば、特開昭58−210084号公報、特開平07−90189号公報、特開平08−48908号公報、WO2009/81930号パンフレット、EP1411092 B1公報、特開2012−211970号公報等に記載された方法により得られるものも挙げられる。
カラーインデックス(C.I.)搭載のものとしてはC.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73等があり、各種の市販品もある。
また、特に臭素化ジケトピロロピロールを用いて以下に説明する本発明の結晶子サイズや結晶子サイズの比を算出した場合に、最も高いコントラストを得ることができることが本発明者らにより判明した。
1.本発明の第1の形態
本発明の第1の形態においては、本発明に係る顔料微粒子は、X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面(以下「面α」とする)方向の結晶子サイズが140Å以下であり、かつ前述した一般式(I)で示される化合物を90%以上含有することを特徴とする。
一般式(I)で示される化合物の含有量は90%以上、95%以上がより好ましく、97%以上が更に好ましく、99%以上が最も好ましい。
本発明の第2の形態においては、本発明に係る顔料微粒子は、面α方向の結晶子サイズが140Å以下であり、かつX線回折パターンにより算出される(1 5 −1)面(以下「面β」とする)方向の結晶子サイズが80Å以下である前述した一般式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする。
より好ましくは面α方向の結晶子サイズが140Å以下かつ面β方向の結晶子サイズが80Å以下、さらに好ましくは面α方向の結晶子サイズが130Å以下かつ面β方向の結晶子サイズが75Å以下、特に好ましくは面α方向の結晶子サイズが120Å以下かつ面β方向の結晶子サイズが70Å以下である。最も好ましくは面α方向の結晶子サイズが100Å以下かつ面β方向の結晶子サイズが70Å以下である。
本発明の第3の形態においては、本発明に係る顔料微粒子は、面α方向の結晶子サイズを、X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち、2θ=3〜10°における最大ピークに対応する面(以下「面γ」とする)方向の結晶子サイズで除して算出される結晶子サイズの比が、0.85〜1.25であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることを特徴とする、前述した一般式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする。
上記の平均一次粒子径は、好ましくは5〜40nm、さらに好ましくは10〜30nm、最も好ましくは15〜25nmである。
さらに、結晶子サイズの比が0.85〜1.25かつ平均一次粒子径が5〜40nmであるものが好ましく、さらに結晶子サイズの比が0.90〜1.20かつ平均一次粒子径が10〜30nmであるものがより好ましく、結晶子サイズの比が0.95〜1.15かつ平均一次粒子径が15〜25nmであるものが最も好ましい。
さらに、結晶子サイズの比が0.85〜1.25かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることが好ましく、結晶子サイズの比が0.90〜1.15かつ平均一次粒子径が10〜30nmであることがより好ましく、結晶子サイズの比が0.95〜1.10かつ平均一次粒子径が15〜25nmであることが最も好ましい。
さらに、結晶子サイズの比が0.85〜1.25かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることが好ましく、結晶子サイズの比が0.90〜1.20かつ平均一次粒子径が10〜30nmであることがより好ましく、結晶子サイズの比が0.95〜1.15かつ平均一次粒子径が15〜25nmであることが最も好ましい。
本発明の第4の形態においては、本発明に係る顔料微粒子は、面α方向の結晶子サイズが140Å以下であり、かつ前述した式(III)で示される化合物(臭素化ジケトピロロピロール)を含有することを特徴とする。
好ましい式(III)で示される化合物の含有量は、本発明の第1の形態における一般式(I)で示される化合物の含有量と同様である。
3−1 結晶子サイズ
一般に、一次粒子を構成する結晶子と結晶子の間の界面(結晶粒界)では光散乱しやすく、結晶粒界が光散乱の主要因となることが知られている。したがって、顔料微粒子の光学特性の向上には、当該微粒子中の結晶粒界の面積を小さくし結晶粒界の影響を減らすことが考えられる。このため、結晶粒界を低減させる試みは各分野で行われている。結晶粒界の面積を小さくするには、結晶子サイズは大きいほうが良い。しかし、本発明者らの検討により、意外にも、以上説明した、より小さい結晶子サイズを有する本発明に係る顔料微粒子が、優れた光学特性を有することが判明した。以上の本発明に係る顔料微粒子の結晶子サイズにより優れた光学特性を発揮する機構は完全には明らかではないが、以下のように推測される。
特に、パラ位に置換基を有するジケトピロロピロール系顔料化合物(上述の一般式(II))の場合、杉綾模様構造を取り空間群がP21/nであり、メタ位に置換基を有するものやTert−ブチル−ジケトピロロピロールが擬レンガ塀のレンガ構造を取り空間群がP1(P1の上にバー(−)有)であるのに比べ、対称性が低く、異方性が高い。このため、面αの結晶子サイズにあっては140Å以下とし、面βの結晶子サイズにあっては80Å以下とすることにより、後述するように等方性を一層高め、優れた光学特性を得ることができる。下記数1に示すようにP1の上にはバー(−)が付される。
なお、結晶子サイズの下限は特に制限されないが、あまりに小さいと一次粒子も必要以上に小さくなり一次粒子の比表面積が増大する。一次粒子の比表面積が増大することで粒子表面エネルギーが大きくなり顔料微粒子の分散媒への分散が難しくなる。具体的には分散時に顔料微粒子が凝集してしまったり、顔料微粒子を分散媒に分散させた顔料分散体の粘度が高くまた経時変化により増粘やゲル化を引き起こす可能性が高くなる。分散安定化を図るために顔料分散体により多くの分散剤を含有する場合には、得られるカラーフィルターに含まれる着色成分が少なくなり、カラーフィルター特性に必要のない分散剤成分が増えるため、色特性の低下やカラーフィルター作製における工程性の不具合を起こしてしまう可能性が高い。また、結晶子サイズをあまりに小さくすることは技術的にも困難な上に、反面、それほど小さくしなくても十分な性能向上を得られることが本発明者らの検討により判明した。このため、上記上限値以下まで結晶子サイズを小さくすれば十分である。
面αと面γの結晶子サイズの比を本発明の範囲内、例えば0.85〜1.25の範囲とすることで、高コントラストで高輝度なカラーフィルターを得ることが可能となる。結晶子サイズの比がカラーフィルターの光学特性に及ぼす機構は完全には明らかでないものの、次のように推測される。
特に本発明で結晶子サイズと結晶子サイズの比を特定した各結晶格子面は、(±1 ±1 ±1)面(面α)と、X線回折パターンにより算出される2θ=3〜10°における最大ピークに対応する面 (面γ)であるが、これらの面が等方性の指標として有用であることが本発明者らの検討により明らかとなったものであり、画期的なものであると言える。
前述のように、X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ)を、結晶構造の格子面に対応させることにより、結晶子サイズの測定が可能である。
ジケトピロロピロール系顔料においては、C.I.ピグメントレッド254の結晶構造は文献(Acta.Cryst.B49,1056(1993))にてX線結晶構造解析で分析されており、顔料種がC.I.ピグメントレッド254の場合には、これを用いて結晶子サイズの測定が可能である。また、臭素化ジケトピロロピロールのX線回折パターンは図4に示すようにC.I.ピグメントレッド254のものと比較してX線回折強度は異なるものの、ピーク位置は同様の場所に現れることより、臭素化ジケトピロロピロールはC.I.ピグメントレッド254と類似の結晶構造、結晶構造の格子面を取ると仮定して解析を行うことができる。
その他のジケトピロロピロール系顔料の場合も同様に、X線回折パターンにより結晶構造の解析を行い、X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ)を、結晶構造の格子面に対応させる。
(1)試料のCuKα線を用いた粉末X線回折測定をブラッグ角(2θ)が5.3°から60°の範囲で行う。
(2)(1)で得られたX線回折パターンから、バックグラウンドを除去した回折パターンを求める。バックグラウンドの除去方法は、上記測定パターンのブラッグ角(2θ)=5.3°付近及び6.5°付近、10°付近、60°付近のすそをそれぞれ直線で結んでバックグラウンドとし、このバックグラウンドで表されるX線回折強度の値を(1)で得られたX線回折強度の値から除去したパターンを求める操作とする。
(3)(2)で得たバックグラウンドを除去したX線回折パターンから、一般式(II)に示される化合物にあっては、(0 2 0)面の特徴的な回折ピークであるブラッグ角(2θ)=7.4°±0.3°付近の回折ピーク及び(1 1 1)面の特徴的な回折ピークであるブラッグ角(2θ)=24.5°±0.3°付近の回折ピーク、(1 5 −1)面の特徴的な回折ピークであるブラッグ角(2θ)=28.0°±0.3°付近の回折ピークそれぞれに対し、半値幅及び回折ピークのブラッグ角(2θ)を求める。半値幅の算出は、上記測定範囲に存在する3つの回折ピークそれぞれを市販のデータ解析ソフトを用いてピーク分離を行うことにより算出可能となる。例えば、後述する実施例においては、パナリティカル社製データ解析ソフト HighScorePlus Ver.3.0e(3.0.5)を用い、ピーク形状をPseudo Voigt関数としてフィッティングを行い算出される半値幅の値を用いた。
(4)(3)で算出した回折ピーク半値幅及び下記シェラーの式により結晶子サイズを算出する。
D=Kλ/(B×cosA)
B=Bobs−b
ここで、
D:結晶子サイズ(Å)
Bobs:(3)で算出した半値幅(rad)
b:X線回折装置角度分解能補正係数であり、標準シリコン結晶測定時の半値幅(rad)。下記装置構成及び測定条件で標準シリコン結晶を測定し、b=0.087とする。
A:回折ピークブラッグ角2θ(rad)
K:シェラー定数(K=0.90と定義する)
λ:X線波長(Å)(CuKα線であるため、λ=1.54)
X線回折装置:パナリティカル社製 多目的X線回折装置X‘Pert Powder
ゴニオメーター: パナリティカル社製 高精度試料水平型ゴニオメーター
サンプリング幅:0.0131°
ステップ時間:0.335秒
発散スリット:プログラム式発散スリット
入射側散乱スリット:なし
入射側ソーラースリット:0.04°
入射側マスク:10mm
受光側散乱スリット:8mm
受光側ソーラースリット:0.04°
管球:Cu
管電圧:45kV
管電流:40mA
前述の方法で求めた各面の結晶子サイズから、(1 1 1)面の結晶子サイズを(0 2 0)面の結晶子サイズで除することにより(1 1 1)面と(0 2 0)面との結晶子サイズの比を算出する。
本発明に係るジケトピロロピロール系顔料微粒子は、加熱前後のX線回折パターンにより算出される2θ=3〜10°における最大ピークに対応する結晶格子面の面間隔の、80℃における値と230℃における値の変化率(下記特定式による)が3.0%以下であることが好ましい。2.0%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。
80℃における値と230℃における値の変化率=
{(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式]
これに対し、本発明に係る顔料微粒子は、当該面間隔の変化率を3.0%以下とすることにより、加熱による色特性の悪化を抑制でき、より品質の高いカラーフィルターを得ることができる。
また、加熱による当該面間隔の変化率が大きいということは、結晶構造が安定していないということであり、加熱により結晶構造が変化し、隣接する分子の電子軌道の相互作用により色相のずれを生じることも推測される。
結晶子サイズがまちまちの大きさであったり結晶子のアスペクト比が大きいと、結晶構造中に歪みを持ったり、結晶子の隣接部位に不安定なアモルファス構造を多く含むと考えられ、加熱により結晶構造が変化し、隣接する分子の電子軌道の相互作用により色相のずれにつながると推測される。また、不安定なアモルファス構造が加熱により結晶化し異物を発生させることも考えられる。これに対し、本発明の顔料微粒子は結晶子が小さく球形に近いことから、結晶構造の歪みが小さく緻密で安定であり、加熱による結晶構造の変化が抑えられ、面間隔の変化率が小さくなると推測される。
(1)前述の〔結晶子サイズの測定〕と同様に、ブラッグ角(2θ)が5.3°から50°の範囲でCuKα線を用いた加熱による粉末X線回折測定を行う。
具体的には、はじめに25℃にてX線回折パターンを測定し、その後80℃に昇温して該温度を10分間保持してから80℃におけるX線回折パターンを測定する。さらに230℃に昇温して該温度を10分間保持してから230℃におけるX線回折パターンを測定する。
(2)(1)で得られたX線回折パターンから、バックグラウンドを除去した回折パターンを求める。バックグラウンドの除去方法は、上記測定パターンのブラッグ角(2θ)=5.3°付近及び6.5°付近、10°付近、37.5°付近のすそをそれぞれ直線で結んでバックグラウンドとし、このバックグラウンドで表されるX線回折強度の値を(1)で得られたX線回折強度の値から除去したパターンを求める操作とする。
(3)(2)で得たバックグラウンドを除去したX線回折パターンから、パナリティカル社製データ解析ソフト HighScorePlus Ver.3.0e(3.0.5)を用い、ピーク形状をPseudo Voigt関数としてフィッティングを行い、下記ブラッグの式により(0 2 0)面の特徴的な回折ピークであるブラッグ角(2θ)=7.4°±0.3°付近の回折ピークの面間隔を算出する。
2dsinA=nλ
ここで、
d:面間隔(Å)
A:回折ピークブラッグ角2θ(rad)
λ:X線波長(Å)(CuKα線であるため、λ=1.54)
n:整数
(4) (3)で得られた80℃及び230℃における(0 2 0)面の面間隔の結果より、下記の特定式よりこれらの温度変化による面間隔の変化率を算出する。
80℃における値と230℃における値の変化率={(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式]
測定条件の詳細は、前述の〔結晶子サイズの測定〕と同様である。
なお、以上の方法と同一の結果が得られる方法であれば、他の方法を採用しても差し支えない。
本発明の第3の形態におけるジケトピロロピロール系顔料微粒子は、一次粒子径が5〜40nmである。また本発明の第1,2,4の形態におけるジケトピロロピロール系顔料微粒子においても、一次粒子径が5〜40nmであることが好ましい。いずれの場合も、その一次粒子径が10〜30nmであることがより好ましく、15〜25nmであることが特に好ましい。
また、上記一次粒子径の標準偏差が7.0未満であることが好ましく、6.0未満であることがより好ましく、4.0未満であることが特に好ましい。
更に上記一次粒子径の変動係数(CV値:以下「CV値」とする)が30未満であることが好ましく、28未満であることがより好ましく、25未満であることが特に好ましい。
上記上限値を超える一次粒子径を持つジケトピロロピロール系顔料微粒子の場合、コントラストの低下を招くことがあり、カラーフィルター用途として求められる性能を満たすことができないことがある。上記下限値未満の一次粒子径を持つジケトピロロピロール系顔料微粒子の場合、分散媒への当該顔料微粒子の分散が難しくなり、分散処理時に顔料分散体への分散剤やバインダー樹脂、顔料誘導体等の化合物の添加量が非常に多くなるため、当該顔料分散体のカラーフィルターへの適用が困難となりやすい。
上記一次粒子径の標準偏差が上記上限値を超える場合、大きさや形状が不揃いな一次粒子が多数存在することにより、顔料分散体のコントラストの低下を招きやすい。
上記一次粒子径のCV値が上記上限を超える場合、大きさや形状が不揃いな一次粒子が多数存在することにより、顔料分散体のコントラストの低下を招きやすい。
本発明に係る顔料微粒子を10重量部、分散剤として「BYKLPN6919」(ビックケミー社製)を固形分量にて5重量部、分散助剤としてC.I.ピグメントレッド254のスルホン化誘導体1重量部、分散媒となる有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70重量部をペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で撹拌混合して6時間分散処理し、顔料分散体を得た。この顔料分散体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで50倍から200倍に希釈し、その希釈液を超音波ホモジナイザー(株式会社エスエヌディ社製、超音波洗浄機US−105)で5分間処理した後、粒子像の観察を行った。この観察には、S−5200形電界放出形走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて加速電圧20kVの観察倍率100万倍で行い、観察画像から明瞭に識別できる粒子100個に対してその長径をSEM用画像解析ソフトウェア(OLYMPUS社製Scandium)を用い測定し、一次粒子径及びその標準偏差、ならびにCV値を算出した。
本発明の第1の形態に係る顔料微粒子は、一般式(I)で示される化合物を90%以上含有する。このように一般式(I)で示される化合物を高濃度で含むことにより、着色力や輝度を高く保つことができる。
顔料微粒子の結晶を小さくするためには、例えば粒子成長を抑制する成分(例えば、特許文献5に記載されているような顔料誘導体など)を添加することが考えられるが、このような成分を添加すると着色力や輝度を高く保つことが難しくなる。これに対し、本発明の第1の形態に係る顔料微粒子は、顔料誘導体等の成分以外の、一般式(I)で示される化合物自体の含有量を90%以上と高く保つことにより、着色力や輝度を高く保つことができるのである。
また、本発明の第2の形態、第3の形態に係る顔料微粒子においても、着色力や輝度を高く保つためには、一般式(I)で示される化合物の含有量を90%以上とすることができ、またそうすることが望ましい。
本発明の第4の形態に係る顔料微粒子においても、式(III)で示される臭素化ジケトピロロピロールの含有量を90%以上とすることができ、またそうすることが望ましい。
本発明に係る顔料微粒子の溶媒抽出液について、LC−MS分析やNMR分析を行い、含有成分を同定し、さらに定量分析する。
より具体的には、テトラヒドロフラン(以下、「THF」とする)などの有機溶剤に当該顔料微粒子を溶解させ、LC−MSで液体クロマトグラフィー分離し分子量分析を行う。また、不溶物を固体直接導入プローブで分子量分析する。これらは、分子の全体および部分の分子量情報を元に各成分を同定する手法である。さらに、当該顔料微粒子の成分である一般式(I)、一般式(II)、式(III)に示されるジケトピロロピロール系顔料化合物や同定成分の標品と比較して定量分析することができる。
また、重ジメチルスルホキシドや重硫酸に当該顔料微粒子を溶解させ、NMR測定で各成分を同定し、NMRスペクトルの面積比から定量することができる。
以上説明した本発明に係る顔料微粒子は、優れた光学特性を有する。具体的には、色度x=0.6500の硬化膜とした際のコントラストが7,000以上、より好ましくは8,000以上、さらには10,000以上とすることもできる。また、色度x=0.6500とするための膜厚を2.80μm以下、特に2.70μm以下、さらには2.60μm以下とすることもできる。さらに、色度x=0.6500かつy=0.3230において、輝度が18.00以上、さらには19.00以上となり極めて光学特性に優れたカラーフィルターを得ることができる。硬化膜の作製については後述する。
また、結晶界面が及ぼす光散乱等の影響が抑えられていることが寄与していると推測される(結晶粒界の光学的影響)。
さらに、当該結晶子のサイズ及び結晶子サイズの比が、一次粒子のサイズ及び形状を小さくかつ等方性にすることにより、一次粒子が硬化膜中で良好な状態で存在することに寄与していると推測される(一次粒子の硬化膜中の状態の影響)。
これらの複数の要素が、相乗効果で本発明の優れた効果を達成していることが推測され、従来技術からは到底達成が困難なものである。
硬化膜や感光性着色組成物の溶媒抽出液について、LC−MS分析やNMR分析を行い、含有成分を同定し、さらに定量分析する。
より具体的には、THFなどの有機溶剤に硬化膜や感光性着色組成物を溶解させ、LC−MSで液体クロマトグラフィー分離し分子量分析を行う。また、不溶物を固体直接導入プローブで分子量分析する。さらに、当該硬化膜や感光性着色組成物の成分である一般式(I)、一般式(II)、式(III)に示されるジケトピロロピロール系顔料化合物や同定成分の標品と比較して定量分析することができる。
また、重ジメチルスルホキシドや重硫酸に硬化膜や感光性着色組成物を溶解させ、NMR測定で各成分を同定し、NMRスペクトルの面積比から定量することができる。
本発明に係るジケトピロロピロール系顔料微粒子の製造方法は特に限定されないが、所謂ソルトミリング法や、所謂再沈法、或いはソルトミリング法と再沈法を組み合わせた有機顔料の微細化方法など、前述した各種の従来技術を用いて製造することができる。
再沈法の中でも、有機顔料を良溶媒に溶解した溶液(以下、「顔料溶解液」ともいう)と、その良溶媒に相溶する有機顔料の貧溶媒(以下、「貧溶媒」とも言う)とを連続的に反応場に供給し、両者を混合して析出させた顔料微粒子を液中より取り出すことによって連続的に顔料析出反応を行う、連続式の反応装置により製造を行うことが望ましい。
特に、顔料溶解液と貧溶媒との混合が、接近・離反可能な相対的に回転する処理用面間で連続して行われる方式の反応装置(以下、「流体処理装置」ともいう)を用いて当該混合が行われることが最も好適である。当該反応装置は、接近・離反可能な状態で相対的に回転する処理用面の間に形成され、処理用面によって強制された薄膜流体という特殊な環境下にて顔料溶解液と貧溶媒との混合と顔料微粒子の析出をなすものであり、従来のマイクロリアクターや他の混合攪拌装置とは一線を画すものである。また、顔料溶解液と貧溶媒とは、接近・離反可能な状態で相対的に回転する処理用面間の微小間隔にて混合されるもので、実質的に重力の影響を排除できるものであり、さらに、当該反応装置を用いた顔料微粒子の析出は、乱流条件ではなく、層流条件下においてなされることが好まししいものである。
まず、ソルトミリング法のように顔料を機械的に粉砕する方法による場合、結晶子サイズを例えば面α方向の結晶子サイズにあっては140Å以下、面β方向の結晶子サイズにあっては80Å以下の範囲まで小さくするには非常に大きな力をかける必要がある。また粉砕と同時に結晶成長が起こるので、反応が平衡になる状態を作り出さなければならず、制御が難しく、生産性も悪い。再沈法の場合は、いったん顔料を溶解させるので、粒子サイズの制御はより容易である。しかし、再沈法の場合でも結晶子サイズまでの制御は容易ではない。反応を継続していくと結晶子が次第に成長するため、これを防がなければならない。そこで、反応場における顔料溶解液と貧溶媒との接触を速やかに行い小さな結晶子サイズの粒子を大量に生成させることが重要だと考えられる。このため、反応場での拡散係数が重要となる。そこで、顔料溶解液と貧溶媒とを連続的に反応場に供給して生成した顔料微粒子を連続的に回収する連続式の反応装置によることが望ましいと考えられる。特に、顔料溶解液と貧溶媒との混合が、接近・離反可能な相対的に回転する処理用面間で連続して行われる方式の反応装置を用いれば、反応場での拡散係数が大きくなることで、結晶の核が大量に生成し、微細な結晶子の顔料微粒子を効率良く得ることができると考えられる。
まず、ジケトピロロピロール系顔料原体(以下、「顔料原体」ともいう)を、良溶媒に溶解する。顔料原体とは、以下に説明する微細化処理前の顔料をいう。ジケトピロロピロール系顔料原体としては、特に限定はされないが、公知の市販顔料を用いることも可能であるし、前述したジケトピロロピロール系顔料の製造方法についての各種の従来技術に開示されている方法で作製された顔料を用いることも可能である。
これら以外にも、塩化テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムや三臭化テトラ-N-ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウムなども用いることができる。
洗浄に用いる溶媒は、先述したジケトピロロピロール系顔料原体を溶解するための良溶媒として列挙した溶媒より選んで使用できる。また、洗浄処理の際には、先述した回転する撹拌翼を有する撹拌機を使用することが好ましい。洗浄の終点は、特に限定されないが、洗浄液のpH、不純物のイオンや有機物の分析を用いて決定することが可能である。また、洗浄後の顔料微粒子は、洗浄完了時点では、洗浄に用いた溶媒を含む状態であるため、乾燥または溶媒置換の処理を行う必要がある。
〔製造装置の一例〕
図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本願発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この実施の形態において、第2ホルダ21が装置に固定されており、同じく装置に固定された回転駆動機構の回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。
流体圧付与機構pにより加圧された第1の流体は、第1導入部d1から、両処理用部10、20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10、20の外側に通り抜けようとする。
これらの処理用面1、2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の流体が供給され、第1の流体と合流し、両流体が混合した際の上記顔料溶解液と上記貧溶媒との析出反応によって、顔料微粒子が析出し、この顔料微粒子を含む流体が、両処理用面1、2から、両処理用部10、20の外側に排出される。
なお、離反力としては、流体の流体圧や粘性の他、処理用部の回転による遠心力、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合の弾性力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が、処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも下流側(この例では外側)の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。
具体的には、図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の先端から、半径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。これによって、層流条件下にて複数の流体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが可能となる。
本発明の結晶子サイズ及び一次粒子径が制御された顔料微粒子を容易に得るには、開口部d20の形状は、処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状とするのが、より好ましい。両流体が速やかに接触し、処理用面間の反応場における両流体の濃度分布が抑えられ、混合状態がより均一となるため、析出反応の進行度合いがより均一となり、得られる顔料微粒子も結晶子サイズ及び一次粒子径が一層均一になるものと推測される。
本発明においては、以上説明した本発明に係るジケトピロロピロール系顔料微粒子を、分散媒である有機溶媒に投入し、分散処理することで顔料分散体を得ることができる。有機溶媒は、通常はエステル系有機溶媒が好ましい。ここで用いられるエステル系有機溶媒は特に限定されないが、沸点が好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは130℃以上の高沸点有機溶媒であることが好ましい。このような高沸点有機溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)等が挙げられる。
上記エステル系有機溶媒の中では、有機顔料の分散性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:120℃)がより好ましい。上記のエステル系有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記顔料分散体に少なくともモノマーと光重合開始剤とを混合し、感光性着色組成物を得ることができる。
モノマーとしては、特に限定されないが、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート及びN−ビニルピロリドンのような単官能モノマーのほか、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジアクリレートのような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートのような3官能モノマー、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートのようなその他の多官能モノマーなどが挙げられる。これらの光重合性モノマーは、2種類以上使用することも可能である。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ケタール類、キノン類、トリアジン類、イミダゾール類、オキシムエステル類、ホスフィン類、ボレート類、カルバゾール類、チタノセン類、ポリハロゲン類等が挙げられる。例えば4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4、5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N、N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2、6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンが好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いる事ができる。
アルカリ可溶性樹脂としては、ネガ型レジストに一般的に用いられるものを用いることができ、アルカリ水溶液に可溶性を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、γ−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレート等の中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示することができ、上記のコポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等も例示できる。これらのアルカリ可溶性樹脂は前述の顔料分散体を得る際に添加しておくことも可能である。
以上説明した、本発明に係る顔料微粒子を含有する感光性着色組成物を基板上に塗布、光硬化、現像を行い、塗膜を得ることによりカラーフィルターを製造することができる。以下、本工程をプリベイク工程という。基板上への当該感光性着色組成物の塗布は、ガラス基板やシリコン基板上にロールコーター、スリットコーター、スプレー、バーコーター、アプリケーター、スピンコーター、ディップコーター、インクジェット、スクリーン印刷で塗布することが好ましい。塗布後には、有機溶媒を乾燥させ、塗膜の平滑性やハンドリングの観点から加熱することが好ましい。加熱温度は50〜140℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。加熱時間は0.5〜60分間が好ましく、1〜10分間がより好ましい。
光硬化は、塗膜に紫外線を照射して、塗膜を硬化させる。光硬化は続く現像でガラス基板上にパターンを残すために行い、現像で除去する部分には紫外線を防ぐフォトマスクを載せて硬化させないことが好ましい。光硬化は、紫外線照射量が10〜100mJ/cm2まで行うことが好ましい。現像は、光硬化後の硬化塗膜をアルカリ水溶液中に浸漬した後、水でリンスして未硬化部分を除去する。用いるアルカリ水溶液としては、アルカリ剤の濃度が0.001〜10重量%が好ましく、0.01〜1重量%が好ましい。また、現像に用いるアルカリ剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液が好ましい。
塗膜の膜厚については、所望する色度を得られるように調整する。なぜなら、色度は膜厚にも依存するためである。
1.ジケトピロロピロール系顔料化合物のアルカリ金属塩の生成
還流管を付けたステンレス製反応容器に、窒素雰囲気下、モレキュラシーブで脱水したtert−アミルアルコール200部、及びナトリウム−tert−アミルアルコキシド140部を加え、攪拌しながら100℃に加熱し、アルコラート溶液を調製した。つぎに、ガラス製フラスコに、コハク酸ジイソプロピル88部、4−ブロモベンゾニトリル153.6部を加え、攪拌しながら90℃に加熱して溶解させ、これらの混合物の溶液を調製した。この混合物の加熱溶液を、100℃に加熱した上記アルコラート溶液中に、激しく攪拌しながら、2時間かけて一定の速度でゆっくり滴下した。滴下終了後、90℃にて2時間、加熱攪拌を継続し、ジケトピロロピロール系顔料化合物のアルカリ金属塩溶液を得た。
さらに、ガラス製ジャケット付き反応容器に、メタノール600部、水600部、及び酢酸114部を加え、−10℃に冷却した。この冷却した混合物を、高速攪拌ディスパーサーを用いて、直径8cmのシェアディスクを4000rpmで回転させながら、この中に、75℃まで冷却した先に得られたジケトピロロピロール系顔料化合物のアルカリ金属塩溶液を、少量ずつ添加した。この際、メタノール、酢酸、及び水からなる混合物の温度が常に−5℃以下の温度を保つように、冷却しながら、かつ、75℃のジケトピロロピロール系顔料化合物のアルカリ金属塩溶液の添加する速度を調整しながら、およそ120分にわたって少量ずつ添加した。当該アルカリ金属塩溶液添加後、赤色の結晶が析出し、赤色の懸濁液が得られた。
続いて、得られた赤色の懸濁液を5℃にて限外濾過装置で濾別し赤色ペーストを得た。このペーストを25℃の水3500部にて再分散して、洗浄し、限外濾過装置で濾別する操作を3回行った。得られたジケトピロロピロール系顔料化合物の水ペーストを、60℃にて72時間乾燥させ、粉砕することにより、顔料原体となる式(III)に示す臭素化ジケトピロロピロール(以下、「臭素化DPP」と記載)(後述のSTEM観察による一次粒子径が40〜60nmのもの)を150.8部得た。
顔料微粒子化
(顔料溶解液の調製)
表2中の基材となる溶媒として原料1のDMSO 60wt%に原料2のTMAH aq. 28wt%、臭素化DPP 9wt%、原料4のEG 3wt%を添加し、高速回転式乳化分散機(エム・テクニック株式会社製、製品名:クレアミックス、以下、「クレアミックス」)を用いて撹拌して臭素化DPPを溶解させた。処方及び調製条件を他の実施例、及び比較例と合わせて表2に示す。
貧溶媒として、表3中の原料1の水道水 70wt%に原料2のクエン酸 20wt%及び原料4のEG 10wt%を投入し、クレアミックスを用いて混合することで、貧溶媒を調製した。処方及び調製条件を他の実施例、及び比較例と合わせて表3に示す。
対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間にできる薄膜流体中で、均一に拡散・攪拌・混合する反応装置を用いて、調製済みの顔料溶解液と貧溶媒とを混合し、薄膜流体中で連続的に析出反応を行った。具体的には、図1に示す装置の中央(第1導入部d1)から第1流体として貧溶媒を送液し、第2導入部d2から顔料溶解液を第2流体として処理用面1、2間に導入した。第1流体と第2流体を薄膜流体中で混合し、顔料溶解液中に溶解していた顔料微粒子を析出させ、顔料微粒子分散液を処理用面1、2より吐出させた。第1流体及び第2流体の供給圧力、送液流量及び送液温度、及び処理用部10の回転数(以下、回転数と記載)、背圧力、吐出液の温度を、顔料微粒子作製条件として他の実施例、及び比較例と合わせて表4に示す。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を当該装置導入直前(より詳しくは、処理用面1、2間に導入される直前)にて測定したものであり、吐出液の温度は、処理用面1、2より吐出させた直後の顔料微粒子分散液の温度を測定したものである。また、第2導入部d2の開口部d20として、図2(B)に点線で示すように、処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状のものを用いた。
(a)処理用面1,2より吐出された顔料微粒子分散液中より顔料微粒子のみを分取するために、顔料微粒子を緩く凝集させ、濾紙を用いて減圧濾過(−0.1 MPaG)にて顔料微粒子を濾集した。
得られた顔料微粒子の乾燥粉体について、多目的X線回折装置X‘Pert Powder(パナリティカル社製)にてX線回折測定を行い、データ解析ソフト HighScorePlus Ver.3.0e(3.0.5)(パナリティカル社製)を用いて解析を行った。
さらにICP定量分析を行い、顔料微粒子に含まれるFe量の測定を行った。
得られた顔料微粒子の乾燥粉体を10重量部、分散剤として「BYKLPN6919」(ビックケミー社製)を固形分量にて5重量部、分散助剤としてC.I.ピグメントレッド254(以下、「R254」)のスルホン化誘導体1重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)70重量部をペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で撹拌混合して6時間分散処理し、臭素化DPPの顔料分散体を得た。得られた顔料分散体の粘度を測定した。また得られた顔料分散体をPGMEAで希釈し、STEM観察用の分散液とした。得られたSTEM観察用の分散液をグリッドに滴下し、STEM観察を行った。
臭素化DPPの顔料分散体およびR177の顔料分散体に関して、以下の作製方法で各々の感光性着色組成物を作製した。
顔料分散体50重量部、アクリル樹脂(綜研化学(株)製「ZAH−110」)6重量部、重合性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4重量部、光重合開始剤として2−メチル−1−(4-メチルチオフェニル) −2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製「IRGACURE 907」)1重量部、溶剤としてPGMEA100重量部を均一になるように撹拌混合した後、1.0μmのフィルターで濾過して感光性着色組成物を得た。
硬化膜については、以下の2種類について作製を行った。
臭素化DPPの感光性着色組成物を使用して、ポストベイク工程時に色度x=0.6500となるように色度を調整した硬化膜を作製し、粗大粒子、コントラスト、膜厚および耐熱性について評価を行った。
臭素化DPPおよびR177の感光性着色組成物を使用して、ポストベイク工程時に色度x=0.6500、y=0.3230となるように色度を調整した硬化膜を作製し、輝度について評価を行った。
上記で得た感光性着色組成物をガラス基板上にスピンコーターで塗布した後、80℃、3分で乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜にフォトマスクを載せ、紫外線ファイバースポット照射装置を用いて100mJ/cm2の紫外線を照射した。さらにアルカリ性水溶液(0.04wt%の水酸化カリウム水溶液)中で振動させ、次いで純水にてリンスして未硬化部分を除去した。なお、指定色度を挟むようにスピンコーターの回転数を変更して3点の塗膜を作製し、一次相関法により指定色度の評価項目を算出できるようにした。
未硬化部分を除去した塗膜を乾燥機内で80℃、30分間予備加熱処理した後、230℃、30分間本加熱処理して硬化膜を得た。
表2に記載の顔料溶解液の処方、表3に記載の貧溶媒の処方、並びに表4に記載の顔料微粒子作製条件に変更した以外は実施例1と同様に行い、硬化膜を得た。
表3に記載の貧溶媒の処方に変更した以外は実施例1と同様に行い、硬化膜を得た。
表4に記載の顔料微粒子作製条件に変更した以外は実施例1と同様に行い、硬化膜を得た。
表2に記載の顔料溶解液の処方に変更した以外は実施例1と同様に行い、硬化膜を得た。
表2に記載の顔料溶解液の処方、並びに表3に記載の貧溶媒の処方に変更した以外は、実施例2と同様に行い、硬化膜を得た。
顔料微粒子化を行わない比較例として、実施例1〜6で顔料原体として用いた臭素化DPPを、顔料微粒子化を行わずに実施例1と同様の方法にて顔料分散体を調製し、以降も同様にして硬化膜を得た。
比較例2として、粉砕を用いて作製した顔料微粒子の色特性及び一次粒子径とその変化について記載する。粉砕法での顔料微粒子の作製工程は、ソルトミリング法の文献として公知の特開2013−82905号に倣って以下のように行った。
クレアミックスを用いて1700rpmで攪拌させた実施例2で調製した貧溶媒5L中にビュレットを用いて実施例2で調製した顔料溶解液350mLを35mL/min.の速度で添加し、顔料微粒子分散液を得た。顔料微粒子分散液中より顔料微粒子のみを分取するために、顔料微粒子を緩く凝集させ、濾紙を用いて減圧濾過(−0.1 MPaG)にて顔料微粒子を濾集し、濾集した顔料微粒子のウェットケーキを実施例1と同様に洗浄・乾燥した。その後、実施例1と同様の方法にて顔料分散体を調製し、以降も同様にして硬化膜を得た。
前述した〔結晶子サイズの測定〕により、結晶子サイズの測定を行い、さらに結晶子サイズの比を算出した。また、前述の〔結晶格子面の面間隔変化率〕により、面間隔変化率を算出した。
これらの結果を表5に示す。
なお、臭素化DPPのX線回折パターンは図4に示すようにR254のものと比較してX線回折強度は異なるものの、ピーク位置は同様の場所に現れることより、臭素化DPPはR254と同じ結晶構造、結晶構造の格子面を取ると仮定して解析を行った。
前述のように、R254の結晶構造は文献(Acta.Cryst.B49,1056(1993))にてX線結晶構造解析で分析されており、結晶構造はCIFデータ形式で公開されている。この結晶構造CIFデータを使えば、計算ソフトMercuryでブラッグ角(2θ)を結晶構造の格子面に対応させることができる。
これらの結果及び顔料分散体の粘度を表5に示す。また、得られた硬化膜について、光学顕微鏡で500倍にて観察した際に目視で確認できる粗大粒子数及び色評価結果(コントラスト、輝度、膜厚、及び耐熱性)を表5に示す。表5に示す色評価の値は、輝度についてはx=0.6500、y=0.3230となるように調整し、コントラスト、膜厚、耐熱性についてはx=0.6500となるように調整された硬化膜に対して測定を行ったものである。
(1 1 1)面と(0 2 0)面との結晶子サイズの比が0.85〜1.25の範囲であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmである実施例1〜6は、この範囲外の結晶子サイズの比及び平均一次粒子径を有する比較例1〜3と比較してコントラスト、輝度が高い結果となった。このことは平均一次粒子径が小さく、結晶子のアスペクト比が小さいことで、一次粒子内で結晶子が異方性の少ない並び方をしやすくなり、一次粒子が光学的に均一となり、コントラストと輝度が向上したと考える。また、球状に近い結晶子から構成される一次粒子もアスペクト比が小さく、硬化膜中で配向しにくくなり、硬化膜の異方性が減少したこともコントラストと輝度の向上に寄与したと考えられる。さらに、一次粒子のアスペクト比が小さいことで、一次粒子から形成される顔料微粒子の比表面積が小さく、粒子表面エネルギーが小さいため、粒子同士の凝集が抑制できており、従来技術では粘度が高く、経時による増粘やゲル化を引き起こす可能性のある微細な顔料であるにも関わらず本発明の臭素化DPP顔料分散体は分散安定性を担保できている。
結晶格子の(0 2 0)面の80℃と230℃における面間隔の変化率が3.0%以下である実施例1〜6は、当該面間隔の変化率が3.0%を超える比較例1〜3と比較して耐熱性が高い結果となった。このことから、実施例に示した加熱による面間隔の変化率が小さい臭素化DPPは特定の結晶子サイズ又は特定の結晶子サイズの比を有するため、結晶構造中の結晶粒界が小さく抑制され、結晶子が緻密に集合した安定な結晶構造となっており、加熱によるコントラスト低下を緩和できたものと考えられる。
上記のことから、臭素化DPPの諸物性を制御することでコントラストや輝度、耐熱性といったカラーフィルターに要求される特性を高いレベルで満たす臭素化DPP顔料微粒子を得ることが可能なことがわかる。
顔料微粒子化
(顔料溶解液の調製)
表6中の基材となる溶媒として原料1のDMSO 65.5wt%に原料2のBTMA soln. 22.5wt%、原料3の市販の顔料原体のR254(前記のSTEM観察による一次粒子径が100〜120nmのもの)12wt%を添加し、クレアミックスを用いて撹拌してR254を溶解させた。処方及び調製条件を他の実施例、及び比較例と合わせて表6に示す。
貧溶媒として、表7中の原料1の水道水 40wt%に原料2の酢酸 20wt%および原料3のMeOH 40wt%を投入し、クレアミックスを用いて混合することで、貧溶媒を調製した処方及び調製条件を他の実施例、及び比較例と合わせて表7に示す。
対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間にできる薄膜流体中で、均一に拡散・攪拌・混合する反応装置を用いて、調製済みの顔料溶解液と貧溶媒とを混合し、薄膜流体中で連続的に析出反応を行った。具体的には、図1に示す装置の中央(第1導入部d1)から第1流体として貧溶媒を送液し、第2導入部d2から顔料溶解液を第2流体として処理用面1、2間に導入した。第1流体と第2流体を薄膜流体中で混合し、顔料溶解液中に溶解していた顔料微粒子を析出させ、顔料微粒子分散液を処理用面1、2より吐出させた。第1流体及び第2流体の供給圧力、送液流量及び送液温度、及び処理用部10の回転数(以下、回転数と記載)、背圧力、吐出液の温度を、顔料微粒子作製条件として他の実施例、及び比較例と合わせて表8に示す。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を当該装置導入直前(より詳しくは、処理用面1、2間に導入される直前)にて測定したものであり、吐出液の温度は、処理用面1、2より吐出させた直後の顔料微粒子分散液の温度を測定したものである。また、第2導入部d2の開口部d20として、図2(B)に点線で示すように、処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状のものを用いた。
(a)処理用面1,2より吐出された顔料微粒子分散液中より顔料微粒子のみを分取するために、顔料微粒子を緩く凝集させ、濾紙を用いて減圧濾過(−0.1 MPaG)にて顔料微粒子を濾集した。
得られた顔料微粒子の乾燥粉体について、多目的X線回折装置X‘Pert Powder(パナリティカル社製)にてX線回折測定を行い、データ解析ソフト HighScorePlus Ver.3.0e(3.0.5)(パナリティカル社製)を用いて解析を行った。さらにICP定量分析を行い、顔料微粒子に含まれるFe量の測定を行った。
得られた顔料微粒子の乾燥粉体を10重量部、分散剤として「BYKLPN6919」(ビックケミー社製)を固形分量にて5重量部、分散助剤としてC.I.ピグメントレッド254のスルホン化誘導体1重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)70重量部をペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で撹拌混合して6時間分散処理し、R254の顔料分散体を得た。また得られた顔料分散体をPGMEAで希釈し、STEM観察用の分散液を得た。得られたSTEM観察用の分散液をグリッドに滴下し、STEM観察を行った。
また、色度を調整するために、先述と同様の調製方法にてR177の顔料分散体の調製を行った。
R254の顔料分散体およびR177の顔料分散体に関して、以下の作製方法で各々の感光性着色組成物を作製した。
顔料分散体50重量部、アクリル樹脂(綜研化学(株)製「ZAH−110」)6重量部、重合性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4重量部、光重合開始剤として2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル) −2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製「IRGACURE 907」)1重量部、溶剤としてPGMEA100重量部を均一になるように撹拌混合した後、1.0μmのフィルターで濾過して感光性着色組成物を得た。
硬化膜については、以下の2種類について作製を行った。
R254の感光性着色組成物を使用して、ポストベイク工程時に色度x=0.6500となるように色度を調整した硬化膜を作製し、粗大粒子、コントラスト、膜厚および耐熱性について評価を行った。
R254およびR177の感光性着色組成物を使用して、ポストベイク工程時に色度x=0.6500、y=0.3230となるように色度を調整した硬化膜を作製し、輝度について評価を行った。
上記で得た感光性着色組成物をガラス基板上にスピンコーターで塗布した後、80℃、3分で乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜にフォトマスクを載せ、紫外線ファイバースポット照射装置を用いて100mJ/cm2の紫外線を照射した。さらにアルカリ性水溶液(0.04wt%の水酸化カリウム水溶液)中で振動させ、次いで純水にてリンスして未硬化部分を除去した。なお、指定色度を挟むようにスピンコーターの回転数を変更して3点の塗膜を作製し、一次相関法により指定色度の評価項目を算出できるようにした。
未硬化部分を除去した塗膜を乾燥機内で80℃、30分間予備加熱処理した後、230℃、30分間本加熱処理して硬化膜を得た。
表6に記載の顔料溶解液の処方、表7に記載の貧溶媒の処方、並びに表8に記載の顔料微粒子作製条件に変更した以外は実施例7と同様に行い、硬化膜を得た。
表6に記載の顔料溶解液の処方並びに表8に記載の顔料微粒子作製条件に変更した以外は実施例8と同様に行い、硬化膜を得た。
顔料微粒子化を行わない比較例として、実施例7〜9で顔料原体として用いたR254を、顔料微粒子化を行わず、実施例7と同様の方法にて顔料分散体を調製し、以降も同様にして硬化膜を得た。
表7に記載の貧溶媒の処方並びに表8に記載の顔料微粒子作製条件に変更した以外は実施例9と同様に行い、硬化膜を得た。なお、貧溶媒として水道水のみを用いたので、クレアミックスを用いて貧溶媒の調製を行わなかった。
クレアミックスを用いて1700rpmで攪拌させた実施例8で調製した貧溶媒1.1L中にビュレットを用いて実施例8で調製した顔料溶解液350mLを35mL/min.の速度で添加し、顔料微粒子分散液を得た。顔料微粒子分散液中より顔料微粒子のみを分取するために、顔料微粒子を緩く凝集させ、濾紙を用いて減圧濾過(−0.1 MPaG)にて顔料微粒子を濾集し、濾集した顔料微粒子のウェットケーキを実施例7と同様に洗浄・乾燥した。その後、実施例7と同様の方法にて顔料分散体を調製し、以降も同様にして硬化膜を得た。
(1 1 1)面と(0 2 0)面との結晶子サイズの比が0.85〜1.25の範囲であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmである実施例7〜9は、この範囲外の結晶子サイズの比及び平均一次粒子径を有する比較例4〜6と比較してコントラスト、輝度が高い結果となった。このことは平均一次粒子径が小さく、結晶子のアスペクト比が小さいことで、一次粒子内で結晶子が異方性の少ない並び方をしやすくなり、一次粒子が光学的に均一となり、コントラストと輝度が向上したと考える。また、球状に近い結晶子から構成される一次粒子もアスペクト比が小さく、硬化膜中で配向しにくくなり、硬化膜の異方性が減少したこともコントラストと輝度の向上に寄与したと考えられる。さらに、一次粒子のアスペクト比が小さいことで、一次粒子から形成される顔料微粒子の比表面積が小さく、粒子表面エネルギーが小さいため、粒子同士の凝集が抑制できており、従来技術では粘度が高く、経時による増粘やゲル化を引き起こす可能性のある微細な顔料であるにも関わらず本発明のR254顔料分散体は分散安定性を担保できている。
結晶格子の(0 2 0)面の80℃と230℃における面間隔の変化率が3.0%以下である実施例7〜9は、当該面間隔の変化率が3.0%を超える比較例5、6と比較して耐熱性が高い結果となった。このことから、実施例に示した加熱による面間隔の変化率が小さいR254は特定の結晶子サイズ又は特定の結晶子サイズの比を有するため、結晶構造中の結晶粒界が小さく抑制され、結晶子が緻密に集合した安定な結晶構造となっており、加熱によるコントラスト低下を緩和できたものと考えられる。
以上により、ジケトピロロピロール系顔料微粒子の諸物性を制御することでコントラストや輝度、耐熱性といったカラーフィルターに要求される特性を高いレベルで満たす赤色顔料微粒子を得ることが可能であることがわかる。
Claims (19)
- X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Å以下であり、下記一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Å以下であり、X線回折パターンにより算出される(1 5 −1)面方向の結晶子サイズが80Å以下であり、下記一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- X線回折パターンにより算出される(±1 ±1 ±1)の8個の結晶格子面のうちX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズを、該X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち、2θ=3〜10°における最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズで除して算出される結晶子サイズの比が、0.85〜1.25であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることを特徴とする、下記一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが140Å以下であり、下記一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが140Å以下であり、X線回折パターンにより算出される2θ=28.0°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズが80Å以下であることを特徴とする、下記一般式(I)で示される化合物を90%以上含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- 平均一次粒子径が5〜40nmである請求項1、2、4又は5に記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- X線回折パターンにより算出される2θ=24.5°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズを、X線回折パターンにより算出される2θ=7.4°±0.3°に対応する結晶格子面の結晶子サイズで除して算出される結晶子サイズの比が0.85〜1.25であり、かつ平均一次粒子径が5〜40nmであることを特徴とする、下記一般式(I)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- X線回折パターンにより算出される2θ=3〜10°における最大ピークに対応する結晶格子面の面間隔の、80℃における値と230℃における値の変化率(下記特定式による)が3.0%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
80℃における値と230℃における値の変化率=
{(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式] - X線回折パターンにより算出される2θ=7.4°±0.3°に対応する結晶格子面の面間隔の、80℃における値と230℃における値の変化率(下記特定式による)が3.0%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
80℃における値と230℃における値の変化率=
{(230℃における面間隔)/(80℃における面間隔)×100}−100(%)[特定式] - 一次粒子径の標準偏差が7.0未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- 一次粒子径の変動係数(CV値)が30未満であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- Feの含有量が35ppm以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- 上記一般式(I)が、下記一般式(II)で示されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- Rが臭素である下記式(III)で示されることを特徴とする請求項13記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち(±1 ±1 ±1)の8個の面の中でX線回折パターンにおける最大ピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Å以下であり、下記式(III)で示される化合物を含有するジケトピロロピロール系顔料微粒子。
- 有機顔料と有機溶媒とを少なくとも含有する顔料分散体であって、該有機顔料が、請求項1〜15のいずれかに記載のジケトピロロピロール系顔料微粒子であることを特徴とする顔料分散体。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の顔料微粒子を少なくとも含有する感光性着色組成物。
- 請求項17に記載の感光性着色組成物を少なくとも含有するカラーフィルター。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の顔料微粒子を少なくとも含有するカラーフィルター。
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