JP2020097301A - 自走機械の走行装置 - Google Patents

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啓 森田
菅野 直紀
Naoki Sugano
直紀 菅野
康輔 柳橋
Kosuke Yanagibashi
康輔 柳橋
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Abstract

【課題】固定ハウジングと回転ハウジングとの間の隙間に入り込んだ土砂等の異物を隙間から排出する排出性能を向上させることができる自走機械の走行装置を提供する。【解決手段】走行装置の外側リング部22は、凹部34を挟んで互いに周方向に間隔をおいて配置される複数のシール部31,32を有し、複数のシール部31,32は、内側リング部12の外周面に対して径方向に隙間をあけて対向する第1内面を有する第1シール部31と、内側リング部12の外周面に対して径方向に隙間をあけて対向する第2内面を有する第2シール部32と、を含み、第2シール部32は拡大部321を有し、拡大部321における第2内面と内側リング部12の外周面との径方向の隙間は、第1シール部31の第1内面と内側リング部12の外周面との径方向の隙間よりも大きい。【選択図】図6

Description

本発明は、例えば建設機械などの自走機械の走行装置に関する。
従来、走行装置を備える建設機械などの自走機械が知られている。当該走行装置は、フレームと、前記フレームに回転可能に支持されるホイールと、前記フレームに固定される固定ハウジングと、前記ホイールに固定され、前記固定ハウジングに対して軸方向に並ぶ回転ハウジングと、を備える。回転ハウジングは、固定ハウジングに対して相対回転するので、固定ハウジングに対して隙間をあけて配置される。前記固定ハウジングと前記回転ハウジングとの前記隙間における径方向内側の開口部にはフローティングシールが配置される。フローティングシールは、前記ハウジング内に収容されたオイルの漏れを防止する機能と、前記隙間における径方向内側の前記開口部から前記隙間内に異物が入り込むのを防止する機能とを有する。
上記のような走行装置が土砂や泥水などを多く含む地面(例えば建設現場の地面)を走行する場合には、土砂等の異物が前記隙間における径方向外側の開口部から前記隙間内に入り込む。前記隙間に入り込んだ異物が前記隙間に沿って径方向内側に移動してフローティングシールに到達すると、フローティングシールのシール性能が低下することがある。したがって、通常、前記隙間は、異物が径方向内側に移動しにくいようなラビリンス構造を有する。ラビリンス構造では、前記固定ハウジングと前記回転ハウジングとの前記隙間は、断面視において、径方向に直線状に設けられるのではなく、折れ線状に設けられる。これにより、前記隙間における径方向外側の開口部から前記隙間に入り込んだ異物が径方向内側に移動しにくくなりフローティングシールに到達しにくくなる。
しかし、前記隙間に入り込んだ異物を前記隙間から排出する排出性能が低い場合には、前記隙間内の異物が径方向内側に次第に押し込まれてフローティングシールに到達することがあるので、前記排出性能を向上させる必要がある。
例えば、特許文献1は、回転部側のラビリンス壁が固定部側に向かって拡開する円環状の傾斜面を有するラビリンスシールを開示している。当該特許文献1は、回転部の回転によって侵入した土砂に遠心力が作用すると、土砂は傾斜面に沿って外側に移動するので、侵入した土砂を外部に排出しやすくなり、土砂の排出性が向上し、土砂の侵入防止効果を向上させることを開示している。
特許文献2は、走行用減速機のハウジングを開示している。当該ハウジングの固定側ハウジングは、ハウジング本体の下半部のうち下部ないし走行方向の一端部に亘る領域に複数配置された異物排出用の開口部(スリット)と、を備える。特許文献2は、スリットに対して、例えば履帯により他端部側すなわち前端部側下方から運ばれてくる小石などの硬質の異物の入り込み、および、上方に位置する履帯から落下してくる泥や硬質の異物の入り込みを、別途の防護部材などを用いることなくスリットの配置のみで抑制でき、したがって、簡易な構成でラビリンス通路への異物の侵入を抑制できるとともに、ラビリンス通路に侵入した異物をスリットによって容易に排出できることを開示する。
特開2000−346205号公報 特開2017−215002号公報
ところで、走行装置を備えた自走機械を用いた実際の作業では回転ハウジングの回転速度が低い場合もあり、かかる場合には、特許文献1のラビリンスシールでは、遠心力により異物を排出する効果が十分に得られない。具体的には、例えば建設機械では、回転ハウジングの回転速度は数十rpm程度と小さい。また、土砂や泥水などの粘性は土砂の成分や含水比などに応じて変化し、土砂等の粘度が高い場合には、遠心力により異物を排出する効果が十分に得られない。
また、特許文献2のようにハウジングに異物排出用の複数の開口部(スリット)を単に設けるだけでは、前記開口部からの異物の排出性能の向上効果は限定的であり、さらなる排出性能の向上が望まれる。
本発明は、固定ハウジングと回転ハウジングとの間の隙間に入り込んだ土砂等の異物を前記隙間から排出する排出性能を向上させることができる自走機械の走行装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、回転ハウジング及び固定ハウジングの一方のハウジングに内側リング部を設け、他方のハウジングに前記内側リング部の周りを囲む外側リング部を設けることにより、回転ハウジングと固定ハウジングとの隙間が断面視で折れ線状となるラビリンス構造を採用し、さらに、前記外側リング部において凹部(開口部)を形成し、当該凹部を挟んで互いに周方向に間隔をおいて配置される複数のシール部を設けるという構成を採用することにより、異物の排出性能を向上させる試みを行った。そして、本発明者らは、当該試みを行うに際して、特に、前記内側リング部の外周面と前記複数のシール部の内面との径方向の隙間の大きさに着目した。当該隙間の大きさは、当該隙間に入り込んだ土砂等の異物の動きやすさ(異物の撹拌されやすさ)との関連性が高く、また、シール部が内側リング部の外周面に付着した異物を掻き取るスクレーパー機能との関連性も高い。したがって、前記複数のシール部において、当該複数のシール部における前記隙間の大きさを同一にするのではなく、前記隙間を相対的に小さくすることにより主としてスクレーパー機能が付与された第1シール部と、相対的に前記隙間の大きな部分を有し、主として前記隙間において異物の動きやすさ(異物の撹拌されやすさ)を高める機能が付与された第2シール部とを混在させることにより、異物の排出性能を向上させることが可能になる。
提供される本発明の自走機械の走行装置は、フレームと、前記フレームに回転可能に支持されるホイールと、前記フレームに固定される固定ハウジングと、前記ホイールに固定されて当該ホイールの軸線の周りに回転可能であり、前記固定ハウジングに対して前記軸線の軸方向に間隔をおいて並ぶ回転ハウジングと、を備える。前記固定ハウジング及び前記回転ハウジングの一方は、第1本体部と、前記第1本体部から前記軸方向に環状に突出する内側リング部と、を有する。当該内側リング部は、周方向に連続する外周面を有する。前記固定ハウジング及び前記回転ハウジングの他方は、前記第1本体部及び前記内側リング部に対して前記軸方向に隙間をあけて対向する第2本体部と、前記第2本体部から前記第1本体部に向かって前記軸方向に環状に突出して前記内側リング部の周囲を囲む外側リング部と、を有する。当該外側リング部は内周面を有し、当該内周面は、前記内側リング部の前記外周面に対して前記径方向に隙間をあけて対向するとともに前記周方向に連続する。前記外側リング部は、複数のシール部を有する。当該複数のシール部は、前記軸方向のうちの前記第1本体部から離れる方向に凹む凹部を挟んで互いに周方向に間隔をおいて配置される。前記複数のシール部は、前記第2本体部から前記第1本体部に向かって延びている。前記複数のシール部は、第1シール部と、第2シール部と、を含む。前記第1シール部は、前記内側リング部の前記外周面に対して前記径方向に隙間をあけて対向する第1内面を有し、前記第2シール部は、前記内側リング部の前記外周面に対して前記径方向に隙間をあけて対向する第2内面を有する。前記第2シール部は拡大部を有し、当該拡大部における前記第2内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間は、前記第1シール部の前記第1内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間よりも大きい。
本発明の走行装置では、前記第2シール部の前記拡大部における第2内面と内側リング部の外周面との間の前記隙間においては、当該隙間に入り込んだ異物は動きやすく撹拌されやすい。すなわち、当該隙間において異物は、前記拡大部における第2内面や内側リング部の外周面に張り付きにくくなる。そして、当該拡大部に対応する領域において撹拌されて一時的に滞留した当該異物は、相対的に前記隙間の小さい第1シール部に対応する領域に到達すると、第1シール部の第1内面と側面との角部によって掻き取られる。掻き取られた前記異物は、第1シール部に対して周方向の隣に設けられた凹部を通じて前記隙間の外に排出される。これにより、固定ハウジングと回転ハウジングとの間の隙間に入り込んだ土砂等の異物を前記隙間から排出する排出性能を向上させることができる。
なお、前記外側リング部と前記内側リング部との隙間において、前記異物の動きやすい領域を増やすという目的だけを達成するためには、外側リング部において、前記複数のシール部が全て前記第1シール部により構成され、かつ、前記凹部を設ける領域を増やせばよい。しかし、外側リングにおいて、単に凹部を設ける領域を増やすだけでは、外側リング部全体に対して占める割合が増大した凹部から前記隙間内に新たに入り込む異物の量も増加する。これに対して、本発明では、外側リング部において、凹部の占有領域を単に増大させるのではなく、主としてスクレーパー機能が付与された第1シール部と、主として前記隙間において異物の動きやすさを高める機能が付与された第2シール部であって外側リング部の第2本体部から内側リング部の第1本体部に向かって延びる第2シール部と、の組み合わせを採用し、当該第2シール部には、前記凹部に比べて前記隙間内に新たに異物が入り込むことを抑制するシール機能(侵入抑制機能)も持たせている。これにより、前記隙間内に新たに異物が入り込むのを抑制しつつ異物の排出性能を向上させることが可能になる。
前記走行装置において、前記第2本体部及び前記外側リング部は、前記固定ハウジングに設けられ、前記フレームは、前後方向に延びるクローラフレームであり、前記ホイールは、前記クローラフレームの前記前後方向の一端部に回転可能に支持されるドライブタンブラであり、前記走行装置は、前記クローラフレームの前記前後方向の他端部に回転可能に支持されるホイールであるアイドラと、前記ドライブタンブラと前記アイドラに無端状に支持されて周回移動可能なクローラと、をさらに備え、前記ドライブタンブラのうち、前記軸線を含む水平面よりも下方の領域で且つ前記クローラが当該ドライブタンブラに接する領域を下部接触領域と定義する場合において、前記複数のシール部は、前記外側リング部のうち前記下部接触領域に対応する領域以外の領域のみに設けられていることが、好ましい。
この態様では、前記走行装置がクローラ式の走行装置である場合において、前記複数のシール部が前記下部接触領域に対応する領域以外の領域にのみ設けられているので、固定ハウジングと回転ハウジングとの間の隙間に前記異物が入り込むのを抑制する効果をより高めることができる。具体的には次の通りである。上記のようなクローラ式の走行装置が土砂や泥水などを多く含む地面を走行する場合、特にクローラの下部には前記土砂や泥水が付着しやすい。クローラの下部に付着した土砂等の異物がクローラの周回移動に伴ってクローラの下部とドライブタンブラとが接触する下部接触領域付近に到達すると、前記外側リング部のうち前記下部接触領域に対応する領域とクローラとの間にも前記土砂等の異物が運ばれてくる。そして、当該異物は、外側リング部の当該領域とクローラとに挟まれて加圧される。したがって、外側リング部の当該領域に上述した複数のシール部が設けられている場合には、シール部間の凹部を通じて前記異物が前記隙間に入り込みやすくなることがある。そこで、本態様では、前記複数のシール部が前記下部接触領域に対応する領域以外の領域にのみ設けられており、これにより、シール部間の凹部を通じて前記隙間に前記異物が入り込むのを抑制する効果をより高めることができる。
前記走行装置において、前記ドライブタンブラのうち、前記軸線を含む水平面よりも上方の領域で且つ前記クローラが当該ドライブタンブラに接する領域を上部接触領域と定義する場合において、前記複数のシール部は、前記外側リング部のうち前記下部接触領域及び前記上部接触領域に対応する領域以外の領域のみに設けられていることが、より好ましい。
この態様において、前記上部接触領域は前記下部接触領域に比べて上方に位置しているので、クローラの下部に付着した土砂等の異物がクローラの周回移動に伴って上部接触領域に到達する可能性は、下部接触領域に比べると低くなる。ただし、土砂等の異物の粘性によっては当該異物が前記上部接触領域に到達する場合もあり、かかる場合には、前記外側リング部のうち前記上部接触領域に対応する領域とクローラとの間にも前記異物が運ばれてくる。そして、当該異物は、外側リング部の当該領域とクローラとに挟まれて加圧される。したがって、外側リング部の当該領域に上述した複数のシール部が設けられている場合には、シール部間の凹部を通じて前記異物が前記隙間に入り込みやすくなることがある。そこで、本態様では、前記複数のシール部が前記下部接触領域及び前記上部接触領域に対応する領域以外の領域にのみ設けられており、これにより、土砂等の粘度が高い場合であっても、シール部間の凹部を通じて前記隙間に前記異物が入り込むのを効果的に抑制することができる。
前記走行装置において、前記複数のシール部は、前記外側リング部のうち前記軸線を含む水平面よりも上方の領域のみに設けられていることがさらに好ましい。
外側リング部のうち前記軸線を含む水平面よりも上方の領域に土砂等の異物が到達する可能性は、外側リング部のうち前記軸線を含む水平面よりも下方の領域に比べると低い。そこで、本態様では、前記複数のシール部が前記外側リング部のうち前記軸線を含む水平面よりも上方の領域のみに設けられており、これにより、シール部間の凹部を通じて前記隙間に前記異物が入り込むのを抑制する効果をさらに高めることができる。
前記走行装置において、前記拡大部は、前記第2シール部のうち当該第2シール部の先端部を含む部位に設けられていることが好ましい。
この態様において、第2シール部のうち先端部の周りには必ず前記凹部が存在する。このような第2シール部の先端部を含む部位に前記拡大部が設けられることにより、当該拡大部において撹拌された前記異物は、回転ハウジングの回転に伴って当該拡大部の周りに位置する前記凹部に効率よく導かれ、当該凹部において押圧力から解放された後、第1シール部の第1内面と側面との角部によって掻き取られる。このことは、異物が第1シール部によって掻き取られる効率を高め、前記隙間に入り込んだ土砂等の異物を前記隙間から排出する排出性能をより向上させる。
前記走行装置において、前記第2シール部は、前記第2シール部のうち当該第2シール部の基端部を含む部位に設けられた縮小部をさらに有し、前記縮小部における前記第2内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間は、前記拡大部における前記第2内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間よりも小さくてもよい。
この態様では、第2シール部の基端部を含む部位に設けられた前記縮小部は異物の侵入を抑制するシール機能(侵入抑制機能)を有する。すなわち、本態様では、第2シール部の先端部を含む部位に前記拡大部が設けられる一方で、第2シール部の基端部を含む部位に前記縮小部が設けられているので、当該拡大部によって前記排出性能をより向上させながら、前記基端部を含む部位に設けられた前記縮小部が当該縮小部よりもさらに径方向内側の前記隙間に前記異物が侵入することを抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、自走機械の走行装置において、固定ハウジングと回転ハウジングとの間の隙間に入り込んだ土砂等の異物を前記隙間から排出する排出性能を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る走行装置が搭載される自走機械の例である建設機械を示す側面図である。 前記走行装置における回転ハウジング及び固定ハウジングの配置を示す正面図である。 前記固定ハウジングを示す側面図である。 図3のIV−IV線における断面図である。 前記回転ハウジングの本体部及び内側リング部と、前記固定ハウジングの本体部及び外側リング部とを示す図であり、図2のV−V線における断面図である。 前記回転ハウジングの本体部及び内側リング部と、前記固定ハウジングの本体部及び外側リング部とを示す斜視図である。 図6のVII−VII線における断面図である。 図6のVIII−VIII線における断面図である。 図6のIX−IX線における断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[自走機械の全体構造]
図1は、本発明の実施形態に係る走行装置が搭載される自走機械の例である建設機械を示す側面図である。なお、図面に示される「上」、「下」、「前」、「後」の方向は、本発明の実施形態に係る走行装置を説明するために便宜上示すものであり、自走機械の移動方向や使用態様などを限定するものではない。
図1に示す建設機械は油圧ショベルである。当該油圧ショベルは、下部走行体101と、その上に旋回可能に搭載される上部旋回体102と、当該上部旋回体102に搭載される作業装置106と、を備える。前記上部旋回体102は、前記下部走行体101に連結される旋回フレーム102aと、当該旋回フレーム102a上に搭載されるキャブ107と、を有する。前記作業装置106は、前記旋回フレーム102aの前端部(図1に示される例では右側前端部)に起伏可能に連結されるブーム103と、当該ブーム103の先端部に回動可能に連結されるアーム104と、当該アーム104の先端部に回動可能に連結されるバケット105と、を含む。
[下部走行体]
図1に示すように、下部走行体101は、クローラ式であり、左右一対の走行装置101Aと、上部旋回体102が取り付けられる旋回ベアリング101Bと、一対の走行装置101Aを連結する図略のアクスルと、旋回ベアリング101Bを支持する図略のカーボディと、を備える。一対の走行装置101Aは、複数の構成部材の配置が左右逆向きである以外は同様の構造を有する。各走行装置101Aは、前後方向にそれぞれ延びる形状を有する。
図2は、前記走行装置101Aにおける回転ハウジング及び固定ハウジングの配置を示す正面図である。図1及び図2に示すように、各走行装置101Aは、クローラフレーム90と、一対のホイール91,92と、クローラ93と、油圧式の走行モータ5と、減速機構6と、回転ハウジング1と、固定ハウジング2と、を備える。
クローラ93は、多数のシューが連結されて構成されている。クローラ93は、前記一対のホイール91,92の間に架け渡されることにより一対のホイール91,92に無端状(輪状)に支持されて周回移動可能に構成された部材である。本実施形態では、ホイール91は、ドライブタンブラ91(スプロケット91)によって構成され、ホイール92は、アイドラ92によって構成されている。
クローラフレーム90は、前後方向に延びる形状を有する。クローラフレーム90は、前後方向に延びる本体部90Aと、当該本体部90Aの一端(図1では後端)に接続され、クローラフレーム90の一端部(図1では後端部)を構成するタンブラブラケット90Bと、前記本体部90Aの他端(図1では前端)に接続され、クローラフレーム90の他端部(図1では前端部)を構成するブラケット90Cと、を有する。
クローラフレーム90のタンブラブラケット90Bは、固定ハウジング2及び回転ハウジング1を介してドライブタンブラ91を回転可能に支持する。また、タンブラブラケット90Bは、前記走行モータ5を支持する。クローラフレーム90の前記ブラケット90Cは、前記アイドラ92を回転可能に支持する。
前記減速機構6は、回転ハウジング1及び固定ハウジング2に収容されている。減速機構6、回転ハウジング1及び固定ハウジング2は、走行減速機を構成する。当該走行減速機は、走行モータ5の回転力を減速してドライブタンブラ91に伝える。ドライブタンブラ91は、前記走行減速機により減速された回転力によって回転してクローラ93を駆動するホイールである。アイドラ92は、ドライブタンブラ91に対して前後方向の反対側においてクローラ93を案内するホイールである。
固定ハウジング2は、クローラフレーム90のタンブラブラケット90Bに対して固定されている。固定ハウジング2は、タンブラブラケット90Bに対して直接固定されていてもよく、タンブラブラケット90Bに対して別の部材を介して固定されていてもよい。前記回転ハウジング1は、前記ドライブタンブラ91に固定されて当該ドライブタンブラ91の軸線ALの周りに回転可能である。当該回転ハウジング1は、前記固定ハウジング2に対して軸線ALの軸方向に間隔をおいて並ぶ。回転ハウジング1は、図略のベアリングを介して固定ハウジング2に対して回転可能に支持されている。
走行モータ5の図略の駆動軸は、前記減速機構6を介して回転ハウジング1に連結されている。これにより、走行モータ5の駆動軸の回転により回転ハウジング1が回転する。
回転ハウジング1は、ボルト螺合用の穴部11Aを有し、ドライブタンブラ91は、前記穴部11Aに対応する位置にボルト螺合用の穴部を有する。図2に示すようにこれらの穴部にボルトBが螺合されることにより、回転ハウジング1がドライブタンブラ91に固定される。
ドライブタンブラ91は、走行モータ5の回転駆動力をクローラ93に伝動させるものであり、その外周部には、クローラ93に噛み合うように複数の歯部が形成されている。したがって、走行モータ5の駆動軸の回転により回転ハウジング1及びドライブタンブラ91が回転し、これにより、クローラ93が周回移動する。
[ラビリンス構造]
図5は、前記回転ハウジング1と、前記固定ハウジング2とを示す図であり、図2のV−V線における断面図である。図5は、前記軸線ALを含む平面で回転ハウジング1及び固定ハウジング2を切断したときの断面を示している。具体的には、図5は、後述する外側リング部22のうち円弧状壁部35の部分において回転ハウジング1及び固定ハウジング2を切断したときの断面を示している。
前記走行装置101Aにおいて、回転ハウジング1は、固定ハウジング2に対して相対回転するので、図5に示すように固定ハウジング2に対して隙間4をあけて配置されている。
回転ハウジング1と固定ハウジング2との前記隙間4における径方向外側の開口部4aは、これらのハウジングの外に開口している。このため、当該開口部4aから土砂等の異物が前記隙間4内に入り込むことがある。したがって、本実施形態では、回転ハウジング1と固定ハウジング2は、前記隙間4に入り込んだ異物が径方向内側に移動しにくいようなラビリンス構造を有する。当該ラビリンス構造において、前記隙間4は、図5に示す断面視において、径方向に直線状に設けられるのではなく、折れ線状に設けられている。これにより、前記隙間4における径方向外側の開口部4aから前記隙間4に入り込んだ異物がフローティングシール3に到達しにくくなる。
前記固定ハウジング2と前記回転ハウジング1との前記隙間4における径方向内側の開口部4bにはフローティングシール3が配置される。フローティングシール3は、前記隙間4における径方向内側の開口部4bを塞ぐように当該開口部4bに沿って配置される環状の部材である。フローティングシール3は、前記ハウジング内に収容されたオイルの漏れを防止する機能と、前記隙間4における径方向内側の前記開口部4bから前記隙間4内に異物が入り込むのを防止する機能とを有する。
前記フローティングシール3は、一対の環状のシールリング3Aと、一対のOリング3Bとを有する。一方のシールリング3Aは一方のOリング3Bを回転ハウジング1の内周面に圧接させ、他方のシールリング3Aは他方のOリング3Bを固定ハウジング2の内周面に圧接させる。一対のシールリング3Aは、互いに摺動自在に密着しており、回転ハウジング1が回転すると、当該回転ハウジング1に取り付けられているシールリング3Aが固定ハウジング2に取り付けられているシールリング3Aに対して密着しながら回転する。
図2及び図5に示すように、回転ハウジング1は、減速機構6を収容する収容部9と、固定ハウジング2との境界部分に位置する回転シール壁10とを有する。前記収容部9は、例えば筒形状を有し、前記軸方向の両端部のうち固定ハウジング2とは反対側の一端部が塞がれている。回転シール壁10は、前記収容部9における前記軸方向の他端部に連結されている。
回転シール壁10は、回転シール壁本体部11(第1本体部)と、内側リング部12とを有する。
回転シール壁本体部11は、前記軸線ALを中心とする環形状を有する。本実施形態では、回転シール壁本体部11の外周部には、上述した穴部11Aが設けられており、回転シール壁本体部11の内周部には、上述したベアリングが取り付けられている。
図5に示すように、内側リング部12は、回転シール壁本体部11から前記軸方向に環状に突出している。具体的には、内側リング部12は、回転シール壁本体部11のうち径方向の内側の部位から前記軸方向に突出している。内側リング部12は、前記軸方向に延びる筒形状を有する。
図2及び図5に示すように、固定ハウジング2は、走行モータ5を取り付ける取付部8と、回転ハウジング1との境界部分に位置する固定シール壁20とを有する。
図3は、前記固定ハウジング2を示す側面図であり、図4は、図3のIV−IV線における断面図である。図2〜図5に示すように、固定ハウジング2の固定シール壁20は、筒形状を有する。固定シール壁20は、固定シール壁本体部21(第2本体部)と、外側リング部22とを有する。固定シール壁本体部21は、前記軸線ALを中心とする環形状(筒形状)を有する。固定シール壁本体部21は、回転シール壁本体部11及び内側リング部12に対して前記軸方向に隙間をあけて対向する位置に設けられている。
図5に示すように、外側リング部22は、固定シール壁本体部21から回転シール壁本体部11に向かって前記軸方向に環状に突出している。具体的には、外側リング部22は、固定シール壁本体部21のうち前記内側リング部12に対して前記軸方向に対向する部位よりも径方向の外側の部位から前記軸方向に突出している。外側リング部22は、前記軸方向に延びる筒形状を有する。外側リング部22は、前記内側リング部12の周囲を囲んでいる。
本実施形態では、図5に示す断面図において、前記ラビリンス構造における前記隙間4は、前記隙間4における径方向外側の開口部4aから径方向内側に延びる外側隙間41と、当該外側隙間41における径方向内側の端部から前記軸線ALの軸方向に延びる中間隙間43と、当該中間隙間43の端部(外側隙間41に接続された端部とは反対側の端部)から前記隙間4における径方向内側の開口部4bまで径方向内側に延びる内側隙間42と、を含む。内側隙間42は、外側隙間41に対して前記軸方向にずれた位置に設けられている。なお、外側隙間41及び内側隙間42は、径方向に対して傾斜する方向に延びていてもよく、中間隙間43は、前記軸方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
上記のような隙間4を構成する外側隙間41、中間隙間43及び内側隙間42は、回転シール壁10の複数の面と、固定シール壁20の複数の面とによって画定されている。具体的には次の通りである。
図5に示すように、回転シール壁10は、外側環状側面S11と、内側環状側面S12と、外周面S13とを有する。固定シール壁20は、外側環状側面S21と、内側環状側面S22と、内周面S23とを有する。
回転シール壁10の外側環状側面S11は、内側リング部12よりも径方向外側に位置する面であって、回転シール壁本体部11の側面S11によって構成され、軸線ALを中心として周方向に環状に連続する形状を有する。
回転シール壁10の内側環状側面S12は、前記外側環状側面S11よりも径方向内側に位置する面であって、内側リング部12の先端面S12によって構成され、軸線ALを中心として周方向に環状に連続する形状を有する。
回転シール壁10の外周面S13は、外側環状側面S11における径方向内側の端縁(内周縁)と、内側環状側面S12における径方向外側の端縁(外周縁)との間に位置してこれらの端縁同士を接続する面であって、内側リング部12の外周面S13によって構成され、周方向に環状に連続する形状を有する。
固定シール壁20の外側環状側面S21は、回転シール壁10の外側環状側面S11に対して前記軸方向に対向する位置に設けられた面であって、外側リング部22の先端面S21によって構成され、軸線ALを中心として周方向に環状に連続する形状を有する。外側リング部22の先端面S21(外側環状側面S21)は、前記回転シール壁本体部11の側面S11(外側環状側面S11)に対して前記軸方向に寸法G1の隙間4をあけて対向している。
固定シール壁20の内側環状側面S22は、前記外側環状側面S21よりも径方向内側に位置し、回転シール壁10の内側環状側面S12に対して前記軸方向に対向する位置に設けられた面であって、固定シール壁本体部21の側面S22によって構成され、軸線ALを中心として周方向に環状に連続する形状を有する。固定シール壁本体部21の側面S22(内側環状側面S22)は、回転シール壁10の内側リング部12の先端面S12(内側環状側面S12)に対して前記軸方向に寸法G2の隙間4をあけて対向している。
固定シール壁20の内周面S23は、外側環状側面S21における径方向内側の端縁(内周縁)と、内側環状側面S22における径方向外側の端縁(外周縁)との間に位置してこれらの端縁同士を接続する面であって、外側リング部22の内周面S23によって構成され、周方向に環状に連続する形状を有する。外側リング部22の内周面S23は、前記内側リング部12の外周面S13に対して径方向に寸法G3の隙間4をあけて対向している。
回転シール壁10の外側環状側面S11及び内側環状側面S12は、軸線ALの軸方向の一方の方向D1(第1方向D1)に向く面であり、固定シール壁20の外側環状側面S21及び内側環状側面S22は、軸線ALの軸方向の他方の方向D2(第2方向D2)に向く面である。回転シール壁10の外周面S13は、径方向外側に向く面であり、固定シール壁20の内周面S23は、径方向内側に向く面である。
したがって、隙間4の外側隙間41は、前記回転シール壁本体部11の側面S11(外側環状側面S11)と外側リング部22の先端面S21(外側環状側面S21)とによって画定され、中間隙間43は、前記内側リング部12の外周面S13と外側リング部22の内周面S23とによって画定され、内側隙間42は、回転シール壁10の内側リング部12の先端面S12(内側環状側面S12)と固定シール壁本体部21の側面S22(内側環状側面S22)とによって画定される。
[シール部及び凹部の構造]
図6は、前記回転ハウジング1の内側リング部12と前記固定ハウジング2の外側リング部22とを示す斜視図である。図6では、外側リング部22の特徴をわかりやすく図示するために、回転ハウジング1の回転シール壁本体部11の一部(径方向外側の部分)の図示を省略している。図7は、図6のVII−VII線における断面図であり、図8は、図6のVIII−VIII線における断面図であり、図9は、図6のIX−IX線における断面図である。図7〜図9の断面図は、前記軸線ALを含む平面で回転ハウジング1及び固定ハウジング2を切断したときの断面を示している。
図2及び図3に示すように、外側リング部22は、円弧状壁部35と、複数のシール部とを有する。前記複数のシール部は、複数の第1シール部31と、複数の第2シール部32とにより構成されている。また、外側リング部22は、複数の凹部34を有する。図8に示すように、各凹部34は、外側リング部22のうち、前記軸方向のうち前記回転シール壁本体部11から離れる方向(本実施形態では、第1方向D1)に凹む部分である。前記複数のシール部は、凹部34を挟んで周方向に間隔をおいて配置される。各シール部は、固定シール壁本体部21から回転シール壁本体部11に向かって延びる形状を有する。
図3に示すように、本実施形態では、円弧状壁部35は、外側リング部22のうちの1/4以上を占めるように軸線ALを中心として周方向に円弧状に延びる部分であり、好ましくは外側リング部22のうちの半分以上を占めるように軸線ALを中心として周方向に円弧状に延びる部分である。本実施形態では、円弧状壁部35の中間部分には、凹部34が設けられていないが、円弧状壁部35の中間部分に凹部34が設けられていてもよい。
本実施形態では、円弧状壁部35は、外側リング部22のうち、以下に説明する下部接触領域R1に対応する領域R11(図3参照)に設けられた部分である。具体的には次の通りである。
図1に示すように、前記ドライブタンブラ91のうち、前記軸線ALを含む水平面Hよりも下方の領域で且つ前記クローラ93が当該ドライブタンブラ91に接する領域を下部接触領域R1と定義し、前記ドライブタンブラ91のうち、前記軸線ALを含む水平面Hよりも上方の領域で且つ前記クローラ93が当該ドライブタンブラ91に接する領域を上部接触領域R2と定義する。
本実施形態では、図3に示すように、前記円弧状壁部35は、外側リング部22のうち前記下部接触領域R1に対応する領域R11に設けられており、好ましくは下部接触領域R1に対応する領域R11と上部接触領域R2に対応する領域R21とに設けられている。
また、本実施形態では、前記第1シール部31、第2シール部32及び凹部34は、外側リング部22のうち前記下部接触領域R1に対応する領域R11以外の領域のみに設けられている。また、前記第1シール部31、第2シール部32及び凹部34は、外側リング部22のうち前記下部接触領域R1に対応する領域R11及び前記上部接触領域R2に対応する領域R21以外の領域のみに設けられているのが好ましい。さらに、前記第1シール部31、第2シール部32及び凹部34は、外側リング部22のうち、前記下部接触領域R1及び前記上部接触領域R2に対応する領域R11,R21以外の領域で且つ前記軸線ALを含む水平面Hよりも上方の領域のみに設けられているのがより好ましい。
以下、第1シール部31、第2シール部32及び凹部34の構成について具体的に説明する。なお、上述したように、図5は、外側リング部22のうち円弧状壁部35の部分において回転ハウジング1及び固定ハウジング2を切断したときの断面を示している。したがって、円弧状壁部35の特徴は、図5を参照して外側リング部22について上述した通りである。
図2及び図3に示すように、本実施形態では、複数の第1シール部31と複数の第2シール部32は、凹部34を挟んで第1シール部31と第2シール部32が周方向に交互に並ぶように配置されている。なお、複数の第1シール部31と複数の第2シール部32の配列は、本実施形態の配列に限られない。例えば、凹部34を挟んで2つの第1シール部31が並んでいてもよく、凹部34を挟んで2つの第2シール部32が並んでいてもよい。ただし、固定ハウジング2と回転ハウジング1との間の隙間4に入り込んだ土砂等の異物を前記隙間4から排出する排出性能を向上させるという観点では、凹部34を挟んで第1シール部31と第2シール部32が周方向に交互に並ぶように配置されているのが好ましい。また、複数の第1シール部31の個数と第2シール部32の個数とは同じであるのが好ましいが、異なっていてもよい。
図7に示すように、各第1シール部31は、内側リング部12の外周面S13に対して径方向に隙間をあけて対向する第1内面S23を有する。前記第1内面S23は、外側リング部22の内周面S23の一部を構成している。本実施形態では、図5及び図7に示す断面、すなわち、前記軸線ALを含む平面で回転ハウジング1及び固定ハウジング2を切断したときの断面において、図7に示す第1シール部31の断面形状は、図5に示す円弧状壁部35の断面形状と同様である。ただし、第1シール部31の断面形状は、円弧状壁部35の断面形状と異なっていてもよい。
図7に示すように、第1シール部31は、図5に示す円弧状壁部35と同様に、固定シール壁本体部21から軸方向の第2方向D1に突出長さL1だけ突出し、第1シール部31の先端面S21と回転シール壁本体部11の外側環状側面S11との間に間隔G1が設けられている。
図9に示すように、各第2シール部32は、内側リング部12の外周面S13に対して径方向に隙間をあけて対向する第2内面を有する。前記第2内面は、接続面S233を介して接続される先端側内面S231と基端側内面S232とを含む。基端側内面S232は、外側リング部22の内周面S23の一部を構成している。
各第2シール部32は、拡大部321と、縮小部322とを有する。前記拡大部321は、第2シール部32のうち当該第2シール部32の先端部32Aを含む部位に設けられている。前記縮小部322は、第2シール部32のうち当該第2シール部32の基端部32Bを含む部位に設けられている。各第2シール部32において、拡大部321は、第2シール部32の周方向の全体に設けられ、縮小部322は、第2シール部32の周方向の全体に設けられている。
図9に示すように、当該拡大部321における第2内面S231と内側リング部12の外周面S13との径方向の前記隙間4の寸法G5は、第1シール部31の前記第1内面S23と内側リング部12の外周面S13との径方向の前記隙間の寸法G3(図7参照)よりも大きい。
前記縮小部322における第2内面S232と内側リング部12の外周面S13との径方向の前記隙間4の寸法G3は、前記拡大部321における第2内面S231と内側リング部12の外周面S13との径方向の前記隙間4の寸法G5よりも小さい。本実施形態では、前記縮小部322における第2内面S232と外周面S13との前記隙間4の寸法G3は、第1シール部31の第1内面S23と外周面S13との前記隙間の寸法G3と同じであるが、異なっていてもよい。
図9に示すように、第2シール部32において、固定シール壁本体部21の側面S22から拡大部321の先端面S21(第2シール部32の先端面S21)までの突出長さL1は、第1シール部31の前記突出長さL1と同じであるが、異なっていてもよい。第2シール部32において、固定シール壁本体部21から縮小部322の先端面S233(接続面S233)までの突出長さL2は、前記突出長さL1よりも小さいが、固定シール壁本体部21の側面S22と回転シール壁10の内側リング部12の先端面S12との間の隙間4の寸法G2よりも大きい。これにより、縮小部322よりもさらに径方向内側にある内側隙間42に対して、縮小部322が径方向外側からカバーすることができる。
上記のような第2シール部32が設けられた領域においては、第1シール部31が設けられた領域に比べて、内側リング部12の外周面S13との間の空間が拡大されている。当該空間は、図9に示す断面図において、縮小部322の先端面S233と回転シール壁本体部11の側面S11との間の軸方向の寸法G4と、前記拡大部321における第2内面S231と内側リング部12の外周面S13との径方向の前記隙間4の寸法G5とを有する空間である。
図8に示すように、各凹部34は、外側リング部22のうち、第1シール部31及び第2シール部32に比べて、第1方向D1に凹む部分である。凹部34において、固定シール壁本体部21の側面S22から凹部34の端面S21(第1方向D2に向く面)までの突出長さL3は、第1シール部31の前記突出長さL1よりも小さく、第2シール部32の拡大部321における前記突出長さL1よりも小さい。また、本実施形態では、凹部34において、固定シール壁本体部21の側面S22から凹部34の端面S21までの突出長さL3は、第2シール部32の前記縮小部322における前記突出長さL2よりも小さい。ただし、凹部34における前記突出長さL3は、第2シール部32の前記縮小部322における前記突出長さL2と同じであってもよく、大きくてもよい。
また、凹部34における前記突出長さL3は、固定シール壁本体部21の側面S22と回転シール壁10の内側リング部12の先端面S12との間の隙間4の寸法G2よりも大きい。これにより、凹部34よりもさらに径方向内側にある内側隙間42に対して、縮小部322が径方向外側からカバーすることができる。
また、外側リング部22の内周面S23は、全周にわたって内側リング部12の前記外周面S13に対して前記径方向に隙間をあけて対向するとともに前記周方向に連続している。これにより、当該内周面S23よりもさらに径方向内側にある内側隙間42に対して、縮小部322が径方向外側からカバーすることができる。
以上説明した本実施形態に係る走行装置101Aでは、前記複数のシール部において、当該複数のシール部における前記隙間4の大きさを同一にするのではなく、前記隙間4を相対的に小さくすることにより主としてスクレーパー機能が付与された第1シール部31と、相対的に前記隙間4の大きな拡大部321を有し、主として前記隙間4において異物の動きやすさを高める機能が付与された第2シール部32とを組み合わせた構成を採用することにより、異物の排出性能が効果的に向上する。具体的には、次の通りである。
本実施形態では、前記第2シール部32の前記拡大部321における第2内面S231と内側リング部12の外周面S13との間の前記隙間4においては、当該隙間4に入り込んだ異物は動きやすく撹拌されやすい。すなわち、当該隙間4において異物は、前記拡大部321における第2内面S231や内側リング部12の外周面S13に張り付きにくくなる。そして、当該拡大部321に対応する領域において撹拌されて一時的に滞留した当該異物は、相対的に前記隙間4の小さい第1シール部31に対応する領域に到達すると、第1シール部31の第1内面S23とその側面との角部によって掻き取られる。掻き取られた前記異物は、第1シール部31に対して周方向の隣に設けられた凹部34を通じて前記隙間4の外に排出される。これにより、固定ハウジング2と回転ハウジング1との間の隙間4に入り込んだ土砂等の異物を前記隙間4から排出する排出性能を向上させることができる。これにより、フローティングシール3の劣化を抑制し、良好なシール性能を維持することができる。
本実施形態では、拡大部321と縮小部322とが段差(図9の接続面S233)を介して設けられている。このような段差を介した構造の場合、拡大部321に対応する空間、すなわち、拡大部321の内面S231と内側リング部12の外周面S13との間の空間を大きく確保することができる。当該拡大部321に侵入した異物は、当該拡大部321において一時的に滞留するとともに、回転ハウジング2の回転力によって撹拌される。このことは、ハウジングの表面に付着した異物を剥ぎ取る効果を生じさせる。また、拡大部321に滞留している異物は、回転ハウジング1の回転に伴って、周方向の隣の凹部34に到達し、さらにその隣の段差のない第1シール部31に対応する領域に到達する。これにより、異物は、第1シール部31の側面に衝突し、凹部34から効率よく排出される。
本実施形態では、外側リング部22において、凹部34の占有領域を単に増大させるのではなく、主としてスクレーパー機能が付与された第1シール部31と、主として前記隙間4において異物の動きやすさを高める機能が付与された第2シール部32であって外側リング部22の固定シール壁本体部21から内側リング部12の回転シール壁本体部11に向かって延びる第2シール部32と、の組み合わせを採用し、当該第2シール部32には、前記凹部34に比べて前記隙間4内に新たに異物が入り込むことを抑制するシール機能も持たせている。これにより、前記隙間4内に新たに異物が入り込むのを抑制しつつ異物の排出性能を向上させることが可能になる。
また、本実施形態では、前記複数のシール部31,32及び凹部34が前記下部接触領域R1に対応する領域R11以外の領域にのみ設けられているので、固定ハウジング2と回転ハウジング1との間の隙間4に前記異物が入り込むのを抑制する効果をより高めることができる。前記下部接触領域R1では、前記隙間4の開口部4aの周辺に土砂等の異物が滞留していることが多い。そのため、外側リング部22のうち、前記下部接触領域R1に対応する領域R11には、シール部31,32及び凹部34が設けられないことが好ましい。
また、本実施形態では、前記拡大部321は、前記第2シール部32のうち当該第2シール部32の先端部32Aを含む部位に設けられている。第2シール部32のうち先端部32Aの周りには必ず前記凹部34が存在する(図6参照)。このような第2シール部32の先端部32Aを含む部位に前記拡大部321が設けられることにより、当該拡大部321において撹拌された前記異物は、回転ハウジング1の回転に伴って当該拡大部321の周りに位置する前記凹部34に効率よく導かれ、当該凹部34において押圧力からさらに解放された後、第1シール部31の第1内面S23と側面との角部31E(図6参照)によって掻き取られる。このことは、異物が第1シール部31によって掻き取られる効率を高め、前記隙間4に入り込んだ土砂等の異物を前記隙間4から排出する排出性能をより向上させる。
また、本実施形態では、前記第2シール部32は、前記第2シール部32のうち当該第2シール部32の基端部32Bを含む部位に設けられた縮小部322をさらに有し、前記縮小部322における前記第2内面S233と前記外周面S13との前記径方向の前記隙間4の寸法G3は、前記拡大部321における前記第2内面S231と前記外周面S13との前記径方向の前記隙間4の寸法G5よりも小さい。この態様では、第2シール部32の基端部32Bを含む部位に設けられた前記縮小部322は異物の侵入を抑制するシール機能(侵入抑制機能)を有する。すなわち、本実施形態では、第2シール部32の先端部32Aを含む部位に前記拡大部321が設けられる一方で、第2シール部32の基端部32Bを含む部位に前記縮小部322が設けられているので、当該拡大部321によって前記排出性能をより向上させながら、前記基端部32Bを含む部位に設けられた前記縮小部322が当該縮小部322よりもさらに径方向内側の前記隙間4(図9に示す内側隙間42)に前記異物が侵入することを抑制することができる。
なお、固定ハウジング2における下部に対応する領域では、前記隙間4はできるだけ狭い方が好ましく、これにより、土砂等の異物の隙間4への侵入量が低減する。また、前記隙間4を狭くすることにより、隙間4の異物が侵入した場合でも、当該異物が隙間4を通過する際の通過抵抗が大きくなる。このことは、異物が隙間4内に押し込まれるときの圧力が隙間4内で減衰し、隙間4内に発生する圧力(土砂圧)を低減できる。これにより、フローティングシール3に対して作用する土砂圧を低下させ、シール性の低下を抑制できる。その結果、フローティングシール3の耐久性の低下を抑制でき、良好なシール性を維持できる。
[変形例]
なお、本発明は以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
(A)走行装置の適用例について
本発明に係る走行装置が適用される建設機械は油圧ショベルに限らない。本発明は、クローラを備える走行装置を搭載する種々の建設機械、例えばクレーン、ホイールローダ、ブルドーザ、グレーダなどに適用されることが可能である。また、本発明に係る走行装置は、前記建設機械以外の自走機械にも広く適用されることが可能である。また、本発明に係る走行装置は、クローラ式の走行装置以外の走行装置であってもよい。
(B)凹部、第1シール部及び第2シール部が設けられるハウジングについて
凹部34、第1シール部31及び第2シール部32が設けられるハウジングは、前記実施形態のように固定ハウジング2に限られず、回転ハウジング1であってもよい。
(C)凹部、第1シール部及び第2シール部が設けられる領域について
凹部34、第1シール部31及び第2シール部32は、固定ハウジング2又は回転ハウジング1の環状の外側リング部において少なくとも一部の領域に設けられていればよく、例えば、外側リング部の下部に設けられていてもよく、外側リング部の全周にわたって設けられていてもよい。すなわち、クローラ3の周回移動によって土砂等の異物が前記隙間4に押し込まれるような領域でなければ、凹部34、第1シール部31及び第2シール部32は、種々の領域に配置可能である。
なお、本発明は、外側リング部のうち、前記下部接触領域R1に対応する領域R11及び前記上部接触領域R2に対応する領域R21に凹部34、第1シール部31及び第2シール部32を設けることを排除するものではない。
(D)ラビリンス構造について
前記ラビリンス構造における隙間4(通路)の折れ曲がりの回数、方向などは前記実施形態に限定されない。
(E)固定ハウジング及び回転ハウジングについて
固定ハウジング2は、フレーム(例えばクローラフレーム90)に対して、直接固定されていてもよく、別の部材を介して固定されていてもよい。また、回転ハウジング1は、ホイール(例えばドライブタンブラ91)に対して、直接固定されていてもよく、別の部材を介して固定されていてもよい。
(F)拡大部及び縮小部が設けられる部位について
各第2シール部32において、前記拡大部321は第2シール部32の先端部32Aを含む部位ではなく、当該先端部32A以外の部位に設けられていてもよい。
また、前記実施形態では、拡大部321は、各第2シール部32における周方向の一端から他端まで設けられ、縮小部322は、各第2シール部32における周方向の一端から他端まで設けられていたが、これに限られない。例えば、拡大部321は、各第2シール部32における周方向の一端から周方向の途中の部位まで設けられていてもよく、縮小部322は、各第2シール部32における周方向の一端から周方向の途中の部位まで設けられていてもよい。
(G)外側リング部の第2シール部における内周面について
前記実施形態では、外側リング部22の第2シール部32における内周面S23は、接続面S233を介して(段差を介して)接続される先端側内面S231と基端側内面S232とにより構成されていたが、これに限られない。当該第2シール部32における内周面S23は、例えば、第2シール部32の先端部32Aから基端部32Bに向かうにつれて内側リング部12の外周面S13に近づくような傾斜面によって構成され、当該傾斜面に対応する領域の全部又は一部が前記拡大部321を構成していてもよい。
1 回転ハウジング
2 固定ハウジング
4 隙間
11 回転シール壁本体部(第1本体部の一例)
12 内側リング部
21 固定シール壁本体部(第2本体部の一例)
22 外側リング部
31 外側リング部の第1シール部
32 外側リング部の第2シール部
32A 第2シール部の先端部
32B 第2シール部の基端部
321 第2シール部の拡大部
322 第2シール部の縮小部
34 外側リング部の凹部
90 クローラフレーム
90B タンブラブラケット
91 ドライブタンブラ(ホイールの一例)
92 アイドラ(ホイールの一例)
93 クローラ
101A 走行装置
AL 軸線
D1 軸方向の一方の方向(第1方向)
D2 軸方向の他方の方向(第2方向)
R1 下部接触領域
R2 上部接触領域
R11 外側リング部のうち、下部接触領域に対応する領域
R21 外側リング部のうち、上部接触領域に対応する領域
S13 内側リング部の外周面
S23 外側リング部の内周面

Claims (6)

  1. 自走機械の走行装置であって、
    フレームと、
    前記フレームに回転可能に支持されるホイールと、
    前記フレームに固定される固定ハウジングと、
    前記ホイールに固定されて当該ホイールの軸線の周りに回転可能であり、前記固定ハウジングに対して前記軸線の軸方向に間隔をおいて並ぶ回転ハウジングと、を備え、
    前記固定ハウジング及び前記回転ハウジングの一方は、第1本体部と、前記第1本体部から前記軸方向に環状に突出するリング部であって、周方向に連続する外周面を有する内側リング部と、を有し、
    前記固定ハウジング及び前記回転ハウジングの他方は、前記第1本体部及び前記内側リング部に対して前記軸方向に隙間をあけて対向する第2本体部と、前記第2本体部から前記第1本体部に向かって前記軸方向に環状に突出して前記内側リング部の周囲を囲むリング部であって、前記内側リング部の前記外周面に対して前記径方向に隙間をあけて対向するとともに前記周方向に連続する内周面を有する外側リング部と、を有し、
    前記外側リング部は、前記軸方向のうちの前記第1本体部から離れる方向に凹む凹部を挟んで互いに周方向に間隔をおいて配置されるとともに前記第2本体部から前記第1本体部に向かって延びる複数のシール部を有し、
    前記複数のシール部は、前記内側リング部の前記外周面に対して前記径方向に隙間をあけて対向する第1内面を有する第1シール部と、前記内側リング部の前記外周面に対して前記径方向に隙間をあけて対向する第2内面を有する第2シール部と、を含み、
    前記第2シール部は拡大部を有し、当該拡大部における前記第2内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間は、前記第1シール部の前記第1内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間よりも大きい、走行装置。
  2. 前記第2本体部及び前記外側リング部は、前記固定ハウジングに設けられ、
    前記フレームは、前後方向に延びるクローラフレームであり、
    前記ホイールは、前記クローラフレームの前記前後方向の一端部に回転可能に支持されるドライブタンブラであり、
    前記走行装置は、前記クローラフレームの前記前後方向の他端部に回転可能に支持されるホイールであるアイドラと、前記ドライブタンブラと前記アイドラに無端状に支持されて周回移動可能なクローラと、をさらに備え、
    前記ドライブタンブラのうち、前記軸線を含む水平面よりも下方の領域で且つ前記クローラが当該ドライブタンブラに接する領域を下部接触領域と定義する場合において、
    前記複数のシール部は、前記外側リング部のうち前記下部接触領域に対応する領域以外の領域のみに設けられている、請求項1に記載の走行装置。
  3. 前記ドライブタンブラのうち、前記軸線を含む水平面よりも上方の領域で且つ前記クローラが当該ドライブタンブラに接する領域を上部接触領域と定義する場合において、
    前記複数のシール部は、前記外側リング部のうち前記下部接触領域及び前記上部接触領域に対応する領域以外の領域のみに設けられている、請求項2に記載の走行装置。
  4. 前記複数のシール部は、前記外側リング部のうち前記軸線を含む水平面よりも上方の領域のみに設けられている、請求項2又は3に記載の走行装置。
  5. 前記拡大部は、前記第2シール部のうち当該第2シール部の先端部を含む部位に設けられている、請求項1〜4の何れか1項に記載の走行装置。
  6. 前記第2シール部は、前記第2シール部のうち当該第2シール部の基端部を含む部位に設けられた縮小部をさらに有し、
    前記縮小部における前記第2内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間は、前記拡大部における前記第2内面と前記外周面との前記径方向の前記隙間よりも小さい、請求項5に記載の走行装置。
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