本発明のパネルは、優れた調光性能と、高い防犯性能とを有するものである(以下、「調光物品」、「調光製品」、「調光装置」、「調光デバイス」、「調光パネル」あるいは「防犯物品」、「防犯製品」、「防犯装置」、「防犯デバイス」、「防犯パネル」などと呼ぶ場合もある)。
本発明において、「調光性能」とは、例えば、太陽光の室外から室内への入射を抑制したり、あるいは太陽光の室外から室内への入射を抑制せずに許容するなど、パネルを通じて、光の量を調節することができる機能を意味する。
本発明において、「防犯性能」とは、優れた耐衝撃性を有し、なおかつ、窓ガラスなどの窓用部材(パネル)を、ドライバーなど鋭利な物を用いて静かにこじって割って開口すること(以下「こじ破り」と称する場合もある)や、バールなど堅い物を用いて窓ガラスなどの窓用部材(パネル)を割って開口すること(以下「打ち破り」と称する場合もある)によって、強盗犯や窃盗犯が屋内に侵入するなどの犯罪行為(侵入行為)を有意に防止できる機能を意味する。
また、強盗犯や窃盗犯は、上記の「こじ破り」の場合において、1分間以上、「打ち破り」の場合においては、5分間以上の時間を要すると、屋内への侵入をあきらめる傾向にあるため、本発明では、パネルの「こじ破り」に1分間以上、「打ち破り」に5分間以上の時間を要する場合、このようなパネルは優れた防犯性能を有すると判断する(CP(Crime Prevention)認定の試験・評価に準じる)。なお、このような「防犯性能」は、窓ガラスなどの窓用部材の破壊による飛散の防止を目的とした「飛散防止性能」とは、求められる機能およびそのレベルが全く異なるものであることに留意すべきである。
本発明のパネルは、例えば図1、図2に示す通り、一方の面に凸部を有する少なくとも1枚の賦型樹脂シートを含む調光部材10を少なくとも含んで成るものであって、さらに、かかる賦型樹脂シートの片方の面(好ましくは凸部を有していない面)に配置される粘着層20と、この粘着層20を介して、上記の賦型樹脂シートの片方の面に配置される透明な板部材30とを有し、かかる賦型樹脂シートの屈折率をAとし、粘着層の屈折率をBとするとき、この屈折率Aと屈折率Bとの差の絶対値(以下、「屈折率差絶対値」と呼ぶ場合もある)が0.2以下であることを特徴とする。
なお、本発明において、この屈折率差絶対値は、屈折率A−屈折率Bの絶対値であっても、屈折率B−屈折率Aの絶対値であってもよい。
本発明のパネルに含まれる調光部材は、例えば日本において、夏の太陽光の室内への入射を抑制し、かつ/または冬の太陽光の室内への入射を抑制せずに許容し得る調光性能を有するものである。
さらに、本発明のパネルは、上述の屈折率差絶対値が0.2以下、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.03以下であることによって、優れた調光性能を提供することができる。この屈折率差絶対値が、あまりにも大きい値であると、調光部材と粘着層との界面において、粘着層側から調光部材へと進む光が調光部材にて反射したり、屈折したりして、夏の太陽光の室内への入射が十分に抑制できなくなり、他方、冬の太陽光の室内への入射を抑制するようになる。この屈折率差絶対値を上記所定の範囲とするためには、後述する賦型樹脂シートや粘着層の各屈折率を必要に応じて適宜調整すればよい。なお、本発明において、このような屈折率差絶対値は、ゼロ(0)であってもよい。
賦型樹脂シートの屈折率としては、上記の屈折率差絶対値が上記の所定の範囲内となるのであれば特に限定されないが、1.30〜1.70であることが好ましい。賦型樹脂シートの屈折率は、JIS K7142に従って、例えばアッベ屈折計で測定することができる。
粘着層の屈折率としては、上記の屈折率差絶対値が上記の所定の範囲内となるのであれば特に限定されないが、1.20〜1.90であることが好ましい。粘着層の屈折率は、例えばMETRICON社製のプリズムカプラ2010/Mで測定することができる。
賦型樹脂シートおよび粘着層の屈折率の調整については、例えば、低屈折率成分であるシリカ粒子やフッ素樹脂を加えることによって、低屈折率にすることも可能であるし、例えば、高屈折率成分である金属微粒子や鉱物等を加えることによって、高屈折率にすることも可能である。
このように、本発明のパネルは、以下にて詳細に説明する賦型樹脂シートの構造によって、基本的な調光性能が得られものであり、さらに、上述の通り、賦型樹脂シートおよび粘着層の屈折率を調整することによって、さらに向上した調光性能を得ることができる。
また、本発明のパネルでは、以下にて詳細に説明する透明な板部材とともに、このような賦型樹脂シートを使用することによって、本発明のパネルは、窓用部材として、優れた防犯性能を有するものとなる。
以下、各部材について、さらに詳しく説明する。
<賦型樹脂シート>
本発明のパネルにおいて使用することのできる調光部材に含まれる賦型樹脂シート(又は賦形樹脂シート)は、一方の面に凸部を有する樹脂シートであって、例えば、樹脂を溶融押出成形、切削、プレス成形、射出成形またはキャスト重合したりすることによって得られる。賦型樹脂シートは、一方の面に好ましくは連続的に形成された複数の凸部を有する。かかる凸部を有していない面(すなわち凸部を有する面に対向する反対側の面)は、通常、平面であるが、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、凹凸を有する面(マット面)であってもよい。本発明の一実施形態において使用することのできる賦型樹脂シートの断面形状の模式図を図2に示す。
上記樹脂としては、溶融押出成形することのできる樹脂が好ましく、通常は、加熱されることにより溶融状態となる熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などが挙げられ、中でも、透明性や耐候性に優れることから、アクリル系樹脂が好ましい。なお、本発明において、賦型樹脂シートに含まれる樹脂に特に制限はない。
アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマーの単独重合体または2種以上の共重合体、かかるアクリル系モノマーとその他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
アクリル系樹脂としては、優れた硬度、耐候性、透明性などを有する点から、メタクリル樹脂を用いることが好ましい。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主体とする単量体を重合して得られる重合体であり、例えば、メタクリル酸エステルの単独重合体(ポリアルキルメタクリレートなど)、50重量%以上のメタクリル酸エステルと50重量%以下のメタクリル酸エステル以外の単量体との共重合体などが挙げられる。メタクリル樹脂が共重合体の場合、その配合量は、単量体総量に対して、好ましくはメタクリル酸エステルが70重量%以上、他の単量体が30重量%以下であり、より好ましくはメタクリル酸エステルが90重量%以上、他の単量体が10重量%以下である。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ノニル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチルなどの置換基を有していてもよいメタクリル酸アルキルが挙げられる。これらの中でも、炭素数が1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。このメタクリル酸エステルは、単独で用いてもよいし(単独重合体)、2種以上を併用してもよい(共重合体)。
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和ニトリル、エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸アミド、エチレン性不飽和酸、エチレン性不飽和スルホン酸エステル、エチレン性不飽和アルコールおよびそのエステル、エチレン性不飽和エーテル、エチレン性不飽和アミン、エチレン性不飽和シラン化合物、脂肪族共役ジエンなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸エステルが好ましい。メタクリル酸エステル以外の単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチルなどの置換基を有していてもよいアクリル酸アルキルが挙げられる。これらの中でも、炭素数が1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸メチルがより好ましい。
不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどが挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどが挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシエチルアクリルアミド、N−ブトキシエチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−n−プロピオキシメチルアクリルアミド、N−n−プロピオキシメチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
エチレン性不飽和酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸のようなエチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和スルホン酸などが挙げられる。エチレン性不飽和酸単量体は、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニアなどで中和されていてもよい。
エチレン性不飽和スルホン酸エステルとしては、例えば、ビニルスルホン酸アルキル、イソプレンスルホン酸アルキルなどが挙げられる。
エチレン性不飽和アルコールおよびそのエステルとしては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸アリル、カプロン酸メタリル、ラウリン酸アリル、安息香酸アリル、アルキルスルホン酸ビニル、アルキルスルホン酸アリル、アリールスルホン酸ビニルなどが挙げられる。
エチレン性不飽和エーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテルなどが挙げられる。
エチレン性不飽和アミンとしては、例えば、ビニルジメチルアミン、ビニルジエチルアミン、ビニルジフェニルアミン、アリルジメチルアミン、メタリルジエチルアミンなどが挙げられる。
エチレン性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエチルシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルアリルクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどが挙げられる。
脂肪族共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,2−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖および側鎖共役ヘキサジエンなどが挙げられる。
これらのアクリル系樹脂の中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体(ポリメチルメタクリレート)、または50重量%以上99.9重量%以下のメタクリル酸メチルと0.1重量%以上50重量%以下の上述のメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が特に好ましい。
50重量%以上99.9重量%以下のメタクリル酸メチルと0.1重量%以上50重量%以下のメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体とは、メタクリル酸メチルと該(メタ)アクリル酸エステルとの合計量に対して、メタクリル酸メチルが50重量%以上99.9重量%以下の割合で含有され、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルが0.1重量%以上50重量%以下の割合で含有される単量体混合物を重合させて得られる共重合体である。この単量体混合物中に、メタクリル酸メチルが好ましくは70重量%以上99.9重量%以下の割合で含有され、より好ましくは90重量%以上99.9重量%以下の割合で含有される。
アクリル系樹脂は、上述の単量体を、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、注液重合法(キャスト重合法)などの重合方法により重合することによって得られる。重合は、例えば、光照射や重合開始剤を用いて行われ、アゾ系開始剤(例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など)、過酸化物系開始剤(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなど)、有機過酸化物とアミン類とを組み合わせたレドックス系開始剤などの重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、アクリル樹脂を構成する単量体100重量部に対して、通常0.01重量部以上1重量部以下、好ましくは0.01重量部以上0.5重量部以下の割合で用いられる。さらに、分子量制御のための連鎖移動剤(メチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタンのような直鎖または分岐したアルキルメルカプタン化合物など)、架橋剤などを添加してもよい。
賦型樹脂シートは、1種の樹脂を単独で用いて製造してもよいし、2種以上の樹脂を併用して製造してもよい。例えば、上記アクリル系樹脂を単独で用いてもよいし、上記アクリル系樹脂と他の樹脂とを併用してもよい。前記他の樹脂としては、前記アクリル系樹脂とは、単量体の組成が異なるアクリル系樹脂であってもよいし、ポリスチレン等のアクリル系樹脂とは、その樹脂種が異なる他の樹脂であってもよい。
また、アクリル系樹脂や、他の樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的に用いられる各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、光拡散剤、難燃剤、重合抑制剤、難燃助剤、補強剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤を添加する場合、その含有量は、樹脂に対して、0.005重量%以上30重量%以下程度が好ましい。
アクリル系樹脂には、ゴム粒子を添加してもよい。ゴム粒子を添加することによって、賦型樹脂シートの耐衝撃性や、耐引き裂き性、耐こじ破り性、耐打ち破り性などが向上する。ここで、ゴム粒子としては、例えば、アクリル系ゴム粒子、ブタジエン系ゴム粒子、スチレン−ブタジエン系ゴム粒子などを用いることができるが、中でも、耐衝撃性、耐候性、耐久性の点から、アクリル系ゴム粒子が好ましく用いられる。
例えば、アクリル系ゴム粒子は、ゴム成分としてアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を含有する粒子(弾性体粒子)であり、この弾性重合体のみからなる単層構造の粒子であってもよいし、この弾性重合体の層と、例えば、メタクリル酸エステルを主体とする重合体の層とを有する多層構造の粒子であってもよいが、例えばアクリル系樹脂からなる賦型樹脂シートの場合には、その表面硬度の点から、多層構造の粒子であることが好ましい。
また、この弾性重合体は、アクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸エステル50重量%以上と、これ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、アクリル酸エステルとしては、通常、アクリル酸のアルキルエステルが用いられる。
アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、アクリル酸アルキルが50重量%以上99.9重量%以下、メタクリル酸アルキルが0重量%以上49.9重量%以下、これら以外の単官能単量体が0重量%以上49.9重量%以下、及び多官能単量体を0.1重量%以上10重量%以下である(ただし、その合計は100重量%である)。
ここで、上記弾性重合体におけるアクリル酸アルキルとしては、例えば、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は、通常1〜8、好ましくは4〜8である。
また、上記弾性重合体におけるメタクリル酸アルキルとしては、例えば、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は、通常1〜8、好ましくは1〜4である。
上記弾性重合体におけるアクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキル以外の単官能単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化アルケニル;(メタ)アクリル酸;無水マレイン酸;N−置換マレイミドなどの分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する化合物(単官能単量体)が挙げられ、中でもスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体が好ましく用いられる。
上記弾性重合体における多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルなどの不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多塩基酸のアルケニルエステル;ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリアルケニル化合物などの分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物(多官能単量体)が挙げられ、中でも不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のアルケニルエステルが好ましく用いられる。
上記の弾性重合体におけるアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
アクリル系ゴム粒子として多層構造のものを使用する場合、その好適な例としては、上述したアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を有するもの、すなわち、上述したアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を内層とし、メタクリル酸エステルを主体とする重合体を外層とする、少なくとも2層構造のものを挙げることができる。ここで、外層の重合体の単量体成分であるメタクリル酸エステルとしては、通常、上述のメタクリル酸アルキルが用いられ得る。
また、外層の重合体は、内層の弾性重合体100重量部に対し、通常10重量部以上400重量部以下、好ましくは20重量部以上200重量部以下の割合で形成するのがよい。外層の重合体を、内層の弾性重合体100重量部に対して、10重量部以上とすることで、該弾性重合体の凝集が生じ難くなり、アクリル系樹脂からなる賦型樹脂シートの透明性が良好となる。
上記外層の重合体の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、メタクリル酸アルキルを50重量%以上100重量%以下、アクリル酸アルキルを0重量%以上50重量%以下、これら以外の単官能単量体を0重量%以上50重量%以下、及び多官能単量体を0重量%以上10重量%以下である(ただし、その合計は100重量%である)。
上記外層の重合体におけるメタクリル酸アルキルとしては、例えば、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は、通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
上記外層の重合体におけるアクリル酸アルキルとしては、例えば、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は、通常1〜8、好ましくは1〜4である。
上記外層の重合体におけるメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体としては、例えば、先に挙げた単官能単量体の例と同様であり、また、多官能単量体としては、例えば、先に挙げた多官能単量体の例と同様である。
なお、上記の外層の重合体におけるメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
また、多層構造のアクリル系ゴム粒子の好適な例として、上記2層構造の内層である上述したアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の層の内側に、さらにメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を有するもの、すなわち、このメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を最内層とし、上述したアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の層を中間層とし、先のメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を最外層とする、少なくとも3層構造のものを挙げることもできる。ここで、最内層の重合体の単量体成分であるメタクリル酸エステルとしては、通常、上述のメタクリル酸アルキルが用いられる。また、最内層の重合体は、中間層の弾性重合体100重量部に対し、通常10重量部以上400重量部以下、好ましくは20重量部以上200重量部以下の割合で形成するのがよい。
上記最内層の重合体の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、メタクリル酸アルキルが70重量%以上100重量%以下、アクリル酸アルキルが0重量%以上30重量%以下、これ以外の単官能単量体を0重量%以上30重量%以下、及び多官能単量体を0重量%以上10重量%以下である(ただし、その合計は100重量%である)。
上記最内層の重合体におけるメタクリル酸アルキルとしては、例えば、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は、通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
また、上記最内層の重合体におけるアクリル酸アルキルとしては、例えば、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は、通常1〜8、好ましくは1〜4である。
上記最内層の重合体におけるメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体としては、例えば、先に挙げた単官能単量体の例と同様であり、また、多官能単量体の例としては、先に挙げた多官能単量体の例と同様である。
なお、上記の最内層の重合体におけるメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体及び多官能単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
アクリル系ゴム粒子は、先に述べたアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、調製することができる。その際、先に述べた如く、上記弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を形成する場合は、この外層の重合体の単量体成分を、上記弾性重合体の存在下に、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記弾性重合体にグラフトさせればよい。
また、先に述べた如く、上記弾性重合体の層の内側に、さらにメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を形成する場合には、まず、この最内層の重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させ、次いで、得られる重合体の存在下で、上記弾性重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記最内層の重合体にグラフトさせ、さらに、得られる弾性重合体の存在下で、上記最外層の重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記弾性重合体にグラフトさせればよい。なお、各層の重合を、それぞれ2段以上で行う場合、いずれも、各段の単量体組成ではなく、全体としての単量体組成が上述の所定の範囲内にあればよい。
アクリル系ゴム粒子の粒径については、該ゴム粒子中のアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の層の平均粒子径が、0.01μm以上0.4μm以下であるのが好ましく、0.05μm以上0.3μm以下であるのがより好ましく、0.07μm以上0.25μm以下であるのがさらに好ましい。この弾性重合体の層の平均粒子径が0.4μmより大きいと、アクリル系樹脂からなる樹脂シートの透明性が低下して、その透過率の低下につながるため、好ましくない。また、この弾性重合体の層の平均粒子径が0.01μmより小さいと、樹脂シートの表面硬度が低下して、傷が付き易くなるため好ましくない。
なお、上記平均粒子径は、アクリル系ゴム粒子を、別途にメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において、酸化ルテニウムによる上記弾性重合体の層の染色を施し、電子顕微鏡で観察して、染色された部分の直径から求めることができる。
すなわち、アクリル系ゴム粒子を、別途にメタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで染色すると、母相のメタクリル樹脂は染色されず、また、例えば、上記弾性重合体の層の外側にメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層が存在する場合は、この外層の重合体も染色されず、上記弾性重合体の層のみが染色されるので、このようにして染色された、電子顕微鏡でほぼ円形状に観察される部分の直径から、粒子径を求めることができる。また、上記弾性重合体の層の内側に、さらにメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層が存在する場合には、この内層の重合体も染色されず、その外側の上記弾性重合体の層が染色された状態でその断面が観察されることになるが、この場合には、外側、すなわち上記弾性重合体の層の外径で考えればよい。
アクリル系樹脂に対するゴム粒子の配合割合は、通常、アクリル系樹脂の総重量を基準として、45重量%以下、好ましくは10重量%以上45重量%以下、より好ましくは12重量%以上30重量%以下、より好ましくは15重量%以上30重量%以下である。ゴム粒子の配合割合が、上記の範囲内であると、耐衝撃性が向上するので、優れた防犯性能を得ることができる。特に、賦型樹脂シートの厚みが薄い場合であっても、例えば200μm程度の厚みであっても、優れた耐衝撃性を与えることができる。また、耐衝撃性に加えて透明性もより向上することから、アクリル系樹脂に対するゴム粒子の配合割合は、さらにより好ましくは15重量%以上28重量%以下である。
なお、本発明において、ゴム粒子を配合することのできる樹脂は、上記のアクリル系樹脂に限定されるものではない。その場合、ゴム粒子の配合割合は、賦型樹脂シートに含まれる樹脂の総重量を基準として、45重量%以下、好ましくは10重量%以上45重量%以下、より好ましくは12重量%以上30重量%以下、より好ましくは15重量%以上30重量%以下であり、このような範囲内であると、賦型樹脂シートに優れた耐衝撃性を与えることができる。また、耐衝撃性に加えて透明性もより向上することから、ゴム粒子の配合割合として、さらにより好ましくは15重量%以上28重量%以下である。
(賦型樹脂シートの凸部)
賦型樹脂シートの一方の面に形成される凸部は、例えば、北半球の日本において夏の太陽光の室内への入射を抑制し、かつ/または冬の太陽光の室内への入射を抑制せずに許容し得るという調光性能をもたらすという観点から、その断面形状は略三角形であることが好ましい。
特に、賦型樹脂シートに形成される凸部は、賦型樹脂シートの長手方向(又は賦型樹脂シートの製造の流れ方向)の対向する端辺間を幅方向(すなわち長手方向を垂直に横切る方向)に直線状に延びる突条の部分であって、その長手方向に沿って切断したときの断面の形状が略三角形であるものが好ましい。
本発明において、「略三角形」とは、三角形の各角部が鋭端もしくは鋭角であっても、ある程度の曲率を持つ円弧状の形状であってもよいことを意味し、必ずしも厳密な三角形を意味するものではない。
例えば図2および3に示す賦型樹脂シート1の断面における各凸部は、その断面形状が三角形であり、その各角部は鋭端(または鋭角)であるが、本発明では、これに限定されず、この断面形状の三角形において、その各角部は、ある程度の曲率を有する丸みを帯びた円弧状の形状であってもよい。
調光部材を直立して使用する場合、この凸部(より具体的にはその断面が略三角形の突条部)は、長手方向(上下方向)と直交する幅方向(左右方向)に延在していることが好ましい。
なお、図2、3に示す実施形態では、賦型樹脂シート1の凸部に加えて、その谷部も鋭端(又は鋭角)であるが、この谷部についても、曲率を持つ円弧状の形状であってもよい。
また、本発明では、凸部と凸部の間の谷部に平面領域を有していてもよく、好ましくは凸部(より具体的にはその断面が略三角形の突条部)に平行して配置される帯状の平面領域を幅方向に有していてもよい。
前記の断面が略三角形の凸部では、夏の太陽光の室内への入射を抑制し、かつ/または冬の太陽光の室内への入射を抑制せずにその入射を許容し得る調光性能を得るという観点から、三角形の底辺(すなわち三角形の底部の両端を結ぶ直線)において形成される2つの底角2は、その一方の底角2a(以下、「第一底角2a」と呼ぶ場合もある)が0°を超え90°未満であり、他方の底角2b(以下、「第二底角2b」と呼ぶ場合もある)が0°を超え90°以下であることが好ましく、第一底角2aが1°以上40°以下であり、第二底角2bが30°以上90°以下であることがより好ましい。
第一底角2aは、後述する技術的事項を考慮して適宜設定され得るものであり、1°以上40°以下であることがより好ましい。
なお、かかる調光部材は、外観に(例えば、凸部を有する面とは反対側の面から見ると)スジが視認され得ることがあるが、このスジの視認を抑制するという観点から、第二底角2bは、90°であることが特に好ましい。
図2に示す通り、凸部の高さ(H)は、それぞれ独立して、1μm以上1cm以下であることが好ましく、5μm以上1cm以下であることがより好ましい。凸部の高さ(H)が、1μm未満であると、賦型樹脂シートの製造時に樹脂シート表面に凸部を賦型し難くなる恐れがあり、1cmを超えると、調光部材の全体の厚みが厚くなりすぎて、それ自体が重たくなる恐れがある。
隣接する凸部の頂点間の距離(または谷部と谷部との間の距離)であるピッチ間隔(P)は、10μm以上10cm以下であることが好ましく、50μm以上10cm以下であることがより好ましい。ピッチ間隔(P)が、10μm未満であると、賦型樹脂シートの製造時に樹脂シート表面に凸部を賦型し難くなる恐れがあり、図2に示すように第一底角2aが所定の角度に設定された賦型樹脂シートでは、ピッチ間隔(P)が10cmを超えると、凸部の高さ(H)が高くなりすぎて、調光部材の厚みが厚くなりすぎる恐れがある。
凸部において、高さ(H)とピッチ間隔(P)とをそれぞれ所定の範囲とすることで、賦型樹脂シートへの凸部の形成が容易となって、賦型樹脂シートを簡便に製造することが可能となり、且つ、調光部材の厚みが厚くなりすぎることが抑制され得る。この賦型樹脂シートを少なくとも1枚、好ましくは2枚含んで成る調光部材は、その構成部材である賦型樹脂シートの製造が簡便であり、且つ、その厚みが抑制され得ることから、例えば夏の太陽光の室内への入射を抑制し、かつ/または冬の太陽光の室内への入射を抑制せずに許容し得る調光性能に加えて、以下にて詳細に説明する粘着層および透明な板部材とともに窓用部材などとして用いることが容易となる。
賦型樹脂シートの厚みは、例えば150μm以上、好ましくは200μm以上650μm以下、より好ましくは200μm以上500μm以下である。賦型樹脂シートの厚みが上記の範囲内であると、耐衝撃性や、耐こじ破り性、耐打ち破り性などの性能が向上し、優れた防犯性能を提供することができる。また、賦型樹脂シートの厚みが、650μmを超えると、大型の賦型樹脂シートの製造が難しくなる場合もあり、防犯性能を有する大型のパネルを提供することが困難になる恐れがある。また、耐衝撃性に加えて透明性もより向上することから、賦型樹脂シートの厚みは、200μm以上500μm未満であることがさらにより好ましい。
本発明において、賦型樹脂シートの厚みとは、賦型樹脂シートの凸部を有していない面(凸部を有する面とは反対側の面)から、凸部の底部までの距離を意味し、例えば図2および3において、Lで示される距離である。
本発明において用いられ得る賦型樹脂シートは、目視で観察した場合に透明であることが好ましい。本発明において、賦型樹脂シートが透明であるとは、賦型樹脂シート1の厚みを3mmとしたときに、JIS K7361−1に準拠して測定される賦型樹脂シートの全光線透過率が、80%以上、好ましくは90%以上であること、あるいはJIS K7136に準拠して測定される上記賦型樹脂シートのヘーズが、10%以下、好ましくは5%以下であることを意味する。
<賦型樹脂シートの製造方法>
賦型樹脂シートを製造する方法としては、例えば、上述した樹脂を原料樹脂として、一方の面に所定の凸部を有する賦型樹脂シートを製造することのできる方法であれば特に限定されず、例えば、平板を切削する方法、溶融押出成形法、プレス成形法、射出成形法、キャスト重合法などが挙げられる。これらの中でも、溶融押出成形法、プレス成形法、射出成形法、キャスト重合法が好ましく、溶融押出成形法、プレス成形法がより好ましい。
(溶融押出成形法)
溶融押出成形法による賦型樹脂シートの製造方法は、例えば、原料樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出してシート状に押し出すシート状物の押し出し工程と、該シート状物を、例えば、第一押圧ロールと第二押圧ロール(又は賦型ロール)との間で挟み込む第一押圧工程(又は賦型工程)と、該シート状物を第二押圧ロールに密着させたまま搬送する搬送工程と、搬送された該シート状物を第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間で挟み込む第二押圧工程(又は賦型工程)とを含む。この製造方法によれば、賦型樹脂シートを成形する過程で、樹脂シートの一方の面に凸部が形成され得るので、樹脂シートの一方の面に凸部を形成するための別途の二次加工工程が不要であり、簡便に連続して賦型樹脂シートが得られる。
(プレス成形法)
プレス成形法による賦型樹脂シートの製造方法は、例えば、原料樹脂からなるシートまたはペレットを可塑化溶融し、これを金型間でプレスして、冷却する。これによって、成形品として賦型樹脂シートが得られ得る。
(射出成形法)
射出成形法による賦型樹脂シートの製造方法は、例えば、型締ユニットと射出ユニットからなる射出成形機および所望する賦型樹脂シートの形状に成形する金型を用いて、加熱溶融させた原料樹脂を金型内に射出し、冷却、固化させる。これによって、射出成形体として賦型樹脂シートが得られ得る。
(キャスト重合法)
キャスト重合法による賦型樹脂シートの製造方法は、例えば、重合物(原料樹脂単量体)をセルに注入して重合させるセルキャスト法、対向配置された一対のエンドレスベルトを用いる連続キャスト法などが挙げられる。セルキャスト法に用いられるセルは、例えば、2枚のガラス板と軟質塩化ビニールチューブなどのシール材から構成され、そのセルの間隔は所望の厚さの賦型樹脂シートが得られように適宜調整され得る。賦型樹脂シートの製造方法としては、キャスト重合などの塊状重合のほかにも、例えば、懸濁重合、乳化重合、分散重合等が挙げられる。これらの中でも、良好な外観となる点や、例えば大きなサイズの板状の重合物の生産性の点から、キャスト重合法などの塊状重合が好ましい。
以下、賦型樹脂シートの製造方法および製造装置について、例えば図4を参照しながら、より詳細に説明する。
<賦型樹脂シートの製造装置>
賦型樹脂シートの製造方法において使用する製造装置は、例えば、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出してシート状物を得るダイと、複数の押圧ロールと、上記シート状物をこの押圧ロールの間に挟み込むことによりシート状物の表面に凸部を形成する賦型ロールとを備えたものである。例えば図4は、本発明のパネルの一実施形態において用いることのできる賦型樹脂シートの製造方法において使用され得る製造装置の概略模式図である。図4に示す装置は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出してシート状物を得るダイ4と、押圧ロール5とを備える。押圧ロール5は、例えばシート状物を押圧するための第一押圧ロール5aと、第二押圧ロール5bと、第三押圧ロール5cとからなり、例えば第二押圧ロール5bの表面には転写型6を備え、上記シート状物を、第一押圧ロール5aおよび/または第三押圧ロール5cと、転写型6を備えた第二押圧ロール(又は賦型ロール)5bとの間に挟み込むことにより、所望の表面形状を賦型した賦型樹脂シート1を得ることができる。
なお、上記押圧ロール5の他に、任意のロールを設けてもよい。このようなロールはシート状物に接するものであり、たとえば、シート状物を第一押圧ロールに搬送するためのガイドロール(タッチロール)や、シート状物を第二押圧ロールに密着させておくためのタッチロールなどを挙げることができる。
本発明の賦型樹脂シートの製造方法は、例えば、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出してシート状に押し出すシート状物の押し出し工程と、シート状物を第一押圧ロールと第二押圧ロールとの間で挟み込む第一押圧工程と、第二押圧ロールに密着させたままシート状物を搬送する搬送工程と、搬送された前記シート状物を前記第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間で挟み込む第二押圧工程とを含む。この製造方法によれば、樹脂シートを成形する過程で、樹脂シート表面に凸形状が付与されるので、樹脂シート表面に凸形状を付与するための別途の二次加工工程が不要であり、簡便に賦型樹脂シートが得られる。
(シート状物の押し出し工程)
シート状物の押し出し工程は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出してシート状物を製造する。
本発明の製造方法に用いられる樹脂としては、上記賦型樹脂シートにて例示した熱可塑性樹脂を用いることができ、中でも、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。
上記樹脂には、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、光拡散剤などの添加剤が添加されていてもよい。
上記樹脂を加熱溶融状態で連続的に押し出すダイとしては、通常の押出成形法に用いられるのと同様の金属製のTダイなどが用いられる。ダイから樹脂を加熱溶融状態で押し出すには、通常の押出成形法と同様に、押出機が用いられる。押出機は一軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよい。樹脂は押出機内で加熱され、溶融された状態でダイに送られ、押し出され得る。ダイから押し出された樹脂は、連続的にシート状物となって押し出され得る。
上記シート状物は、単層でもよいし2層以上の多層であってもよい。シート状物が単層の場合は、ダイから樹脂を加熱溶融状態で押し出す際にダイに1種の樹脂を供給して押し出しをすればよく、2層以上の多層の場合は、2種以上の樹脂をダイに供給し、積層した状態で共押出をしてもよい。なお、2種以上の樹脂を積層した状態で共押出をする場合には、たとえば、公知の2種3層分配型フィードブロックなどを用い、これを経由してダイに樹脂を供給すればよい。
(第一押圧工程)
上記シート状物の押し出し工程で得られたシート状物は、例えば、第一押圧工程(又は賦型工程)により、図4に示すように、第一押圧ロール5aと第二押圧ロール5bとの間で同時に挟み込まれ得る。この第一押圧工程において、シート状物は、第二押圧ロール5bの表面に備えられた転写型6で賦型され得る。なお、本発明においては、転写型を備えた第二押圧ロール5bを賦型ロールともいう。上記賦型ロール表面に備えられた転写型は、シート状物の表面に押し当てられ、その表面形状を逆型としてシート状物に、上記の凸部を賦型するものである。第一押圧ロールと、第二押圧ロールとして、通常はステンレス鋼、鉄鋼などの金属で構成された金属製ロールが用いられ、その直径は通常100mm以上500mm以下である。これらの第一および第二押圧ロールとして金属製ロールを用いる場合、その表面は、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。
(搬送工程)
搬送工程は、シート状物を第二押圧ロールに密着した状態で、第二押圧ロールの回転に従って搬送する工程である。
シート状物は、上記第一押圧工程および搬送工程において、押圧ロールに接することによる冷却や、外気との接触による冷却によって、ダイから押し出された加熱溶融状態よりも温度が低下する。このように加熱溶融状態よりも温度が低下した状態で、シート状物は搬送され、次の第二押圧工程(又は賦型工程)に供される。なお、各押圧ロールは、温度調節機能を備え、所望の温度に調節可能であることが望ましい。
(第二押圧工程)
第二押圧工程では、上記搬送されたシート状物は、例えば、図4に示されるように、第二押圧ロール5bと第三押圧ロール5cとの間に挟み込まれて押圧され得る。この第二押圧工程において、シート状物は、穏やかに冷却されて搬送される。
上記シート状物は、この第二押圧工程において、第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間で再度押圧され、第二押圧ロールから剥離し、第三押圧ロールに密着し、次に、第三押圧ロールの回転に従って搬送され得る。その際、シート状物の表面温度が高く、第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間で押圧せずとも、シート状物が十分に第三押圧ロールに密着する場合は、第二押圧ロールと第三押圧ロールとの間の間隔は、シート状物の厚さよりも若干大きく開いていてもよい。上記第三押圧ロールの回転に従って搬送されたシート状物は、第三押圧ロールから剥離して、賦型樹脂シートが得られる。第三押圧ロールのために、賦型樹脂シートが緩やかに冷却され、第三押圧ロールとの接触時間も安定して確保できるため、転写型6に付与した形状を安定して転写させることが可能となる。
上記転写型6は、賦型ロール表面に設けられた複数の凹部からなり、凹部の形状は、得られる賦型樹脂シート表面の凸部の断面形状の逆型であることが好ましく、該凸部の断面形状が例えば三角形である場合には、この三角形の形状に対応するV型の溝であることが好ましい。
賦型ロールの隣接する凹部の頂点間の距離をピッチ間隔(P)とし、賦型ロール表面円周上から凹部の頂点までの距離を溝深さ(H)とするとき、ピッチ間隔(P)と溝深さ(H)は、所望する賦型樹脂シートにおける凸部の高さ(H)とピッチ間隔(P)に対応して設定すればよく、ピッチ間隔(P)は、10μm以上10cm以下であることが好ましく、溝深さ(H)は、1μm以上1cm以下であることが好ましい。
上記転写型の作製方法としては、上記ステンレス鋼、鉄鋼などからなる賦型ロールの表面に、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施した後に、そのメッキ面に対してダイヤモンドバイトや金属砥石等を用いた除去加工や、レーザー加工や、またはケミカルエッチングを行い、その形状を加工することが挙げられるが、これらの手法に特に限定されるものではない。
また、賦型ロールの表面は、上記転写型を形成した後に、たとえば表面形状の精度を損なわないレベルで、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施してもよい。
上記第一押圧工程において賦型ロールの表面形状(転写型)をシート状物に賦型することにより、目的の賦型樹脂シートを製造することができる。得られた賦型樹脂シートは通常、さらに冷却された後、シート状に切断され、調光部材として用いられ得る。
なお、この製造方法では、第二押圧ロールではなく、第一押圧ロールを賦型ロールにして、ダイから押し出されたシート状物を、かかる賦型ロールと第二押圧ロールとで挟み込んで賦型してもよいし、第三押圧ロールを賦型ロールにして、ダイから押し出されたシート状物を、かかる賦型ロールと第二押圧ロールとで挟み込んで賦型してもよい。
<調光部材>
本発明において、調光部材は、上記の賦型樹脂シートを少なくとも1枚、好ましくは2枚含んで成るものである。
ここで、例示として、賦型樹脂シートが1枚だけ配置されてなる調光部材の模式図を図2に示し、2枚の賦型樹脂シートが配置されてなる調光部材の模式図を図3に示す。
調光部材において、例えば2枚の賦型樹脂シートを使用する場合、かかる調光部材としては、2枚の賦型樹脂シートの凸部が互いに対応するように対向して配置され、かかる2枚の賦型樹脂シートの間に空気層が存在し得るように構成されることが好ましい(図3参照)。
図3に示す調光部材において、空気層8は、互いに対応する形状の凸部を有する一対の賦型樹脂シート1A及び1Bの、賦型面(すなわち凸部を有する面)同士間の空隙を意味し、例えば図示するように、右下がり斜面9aと水平面9bとが、繰り返し配置されてなる。なお、本実施形態では、一対の賦型樹脂シート1A及び1Bは、空気層8を介して配置されてなるが、本発明における調光部材はこれに限定されず、一対の賦型樹脂シート1A及び1Bは、その一部または全面が接着剤により貼合されていてもよい。すなわち、本発明のパネルにおいて使用することのできる調光部材において、空気層は、接着剤で充填されていていてもよく、賦型樹脂シートの間に接着剤層が形成されていてもよい。かかる一対の賦型樹脂シートを接着剤により貼合する場合、接着剤の充填は、2枚の賦型樹脂シートを固定することができるのであれば、凸部を有する面の全部であってもよいし、周縁部であってもよいし、一部であってもよい。
なお、本発明において使用することのできる接着剤としては、賦型樹脂シート同士を接合することができて光を透過することができるものであれば特に制限はない。例えば、以下にて詳しく説明する接着剤を使用することができる。また、本発明では、以下にて詳細に説明する粘着層を形成することのできる粘着剤をかかる接着剤として使用してもよい。従って、本発明において「接着剤層」とは、接着剤から構成され得る接着性のみを有するものに限定されず、以下に記載の粘着剤から形成され得る層をも包含して意味するものであり、接着性および/または粘着性を有するものとして理解される。
一対の賦型樹脂シートを、賦型面が対向するように、好ましくはその凸部を互いに対応させて対向するように配置するとき、対向する凸部は互いに点対称の関係であることが好ましい。例えば、凸部の断面形状が三角形である場合、対向する三角形が、この三角形の斜辺の中点を対称の中心として、点対称の関係であることが好ましい。これにより、空気層は一定間隔を保持することができる。一対の賦型樹脂シートを、対向する凸部が点対称の関係となるように配置する場合、すなわち、一対の賦型樹脂シートを、一方の賦型樹脂シートの凸部と他方の賦型樹脂シートの谷部(すなわち凸部に対応する凹部)とが重ね合わされている関係となるように配置する場合、一対の賦型樹脂シートは、その一部または全部が上述の接着剤等により貼合されていてもよい。
例えば、図3に示す実施形態において、一対の賦型樹脂シート1A、1Bをその凸部を互いに対応させて対向して配置されてなる調光部材は、一方の表面に面Xを有し、他方の表面に面Yを有し、面Xと面Yとが互いに平行となっていることが好ましい。
樹脂の屈折率は、例えば、アクリル系樹脂であれば、屈折率は約1.5である。
図示する実施形態において、調光部材は、面Xに対して角度2aを有する面9aと、面Xおよび面Yに対して角度2bを有する面9b(角度2bによっては、図示する通り、水平面となる)とを有し、一定の厚みを有する空気層8を有している。空気層8の角2a(すなわち、賦型樹脂シートの凸部の断面の三角形の第一底角2a)については、以下にて詳細に述べる技術的事項を考慮して設定することができる。
ここでは、調光部材を構成する賦型樹脂シート1A、1Bの樹脂が、ともに屈折率1.5の樹脂である場合を例に説明する。
一般に、屈折率が大きい媒体(樹脂)から小さい媒体(空気)へと光が進む場合、図5の右側に示すように、入射角が小さいときには、両者の界面で屈折が生じる。本例の場合、樹脂の屈折率は1.5であり、空気の屈折率は1.0であるので、屈折角は入射角よりも大きくなる。そして、入射角が大きくなるに従って、その屈折角も大きくなる。入射角がある角度になると、図5の中央に示すように、屈折角が90°になり、樹脂から空気側へと光が進まない状態となる。なお、このときの入射角は、臨界角と称されており、ここではθmで表す。入射角がさらに大きくなると、図5の左側に示すように、光は樹脂と空気との界面で全て反射され、全反射と称される状態となる。
本例の場合、臨界角θmと、空気の屈折率及び樹脂の屈折率との間には、次のような関係がある。
sinθm=(空気の屈折率)/(樹脂の屈折率)=1/1.5
上記の式に従って、このときの臨界角は、θm=41.8゜となる。
ここで、例えば図2に示すように、賦型樹脂シートを1枚だけ含む調光部材の場合、賦型樹脂シートの凸部を有していない面に後述する粘着層を設けて、本発明のパネルで使用することのできる調光部材とすることができる。そして、この粘着層付き調光部材を、かかる粘着層が透明な板部材と接するように、さらに好ましくは、底角2aが上側、底角2bが下側となるように、透明な板部材に貼付すると、透明な板部材から粘着層に小さい入射角(光と、粘着層面に対する垂線とのなす角)で光が入射すると、光は透明な板部材と粘着層との界面で屈折した後、粘着層中を進み、さらに、粘着層と賦型樹脂シート1Aとの界面で屈折した後、賦型樹脂シート1A中を進む。次いで、賦型樹脂シート1A中を進んだ光は、賦型樹脂シート1Aと室内(すなわち室内の大気層)との界面で屈折して、室内側へと入射することができる。
また、図3に示す調光部材の面Xに後述する粘着層を設けて、かかる粘着層が透明な板部材と接するように、さらに好ましくは、底角2aが上側、底角2bが下側となるように、透明な板部材に貼合すると、透明な板部材から粘着層に小さい入射角(光と、粘着層面に対する垂線とのなす角)で光が入射すると、光は透明な板部材と粘着層との界面で屈折した後、粘着層中を進み、さらに、粘着層と賦型樹脂シート1Aとの界面で屈折した後、賦型樹脂シート1A中を進む。次いで、賦型樹脂シート1A中を進んだ光は、賦型樹脂シート1Aと空気層8との界面で屈折した後、空気層8を進み、さらに、空気層8と賦型樹脂シート1Bとの界面で屈折した後、賦型樹脂シート1B中を進み、さらに、面Yと室内(すなわち室内の大気層)との界面で屈折して、室内側へと入射することができる。
ここで、図示する態様において、第二底角2bは好ましくは90°であるので、室外側または室内側から調光部材を見たとき、いずれの場合においても、外観にはスジが視認され難くなる。
さらに、調光部材が賦型樹脂シートを1枚だけ含むものであって、透明な板部材から粘着層に大きい入射角で光が入射する場合、光は透明な板部材と粘着層との界面で屈折した後、粘着層中を進み、さらに、粘着層と賦型樹脂シート1Aとの界面で屈折した後、賦型樹脂シート1A中を進む。次いで、賦型樹脂シート1A中を進んだ光は、賦型樹脂シート1Aと室内の大気層との界面で全反射して、室内側への進入が抑制され得る。
また、調光部材が、例えば図3に示すように、一対の賦型樹脂シートが配置されてなるものであって、透明な板部材から粘着層に大きい入射角で光が入射する場合、光は面Xで屈折した後、賦型樹脂シート1A中を進み、賦型樹脂シート1Aと空気層8の界面で全反射して、光は空気層8および賦型樹脂シート1Bへと入射することができず、室内側への光の進入が抑制され得る。
なお、本発明において、光が全反射によって室内の大気層に入射されなくなるときの室外側から面Xへの入射角を特定角と呼ぶ。
特定角は、傾斜角2aに応じて変化し得る。例えば、調光部材を構成する賦型樹脂シート1A及び1Bの樹脂として、屈折率1.5の樹脂を用いる場合、傾斜角2aが5°のとき、特定角は63.9°であり、傾斜角2aが10°のとき、特定角は52.2°であり、傾斜角2aが20°のとき、特定角は33.9°である。
例えば、傾斜角2aを7°にすると、賦型樹脂シートの屈折率が1.5の場合、特定角は約60°になる。従って、60°よりも大きな角度、例えば、粘着層に垂直な方向からの角度70°で上方から入射した光は、粘着層に入射する際に屈折し、室内の大気層との界面または空気層8には45°の角度で入射し得る。この角度は賦型樹脂シート1Aと室内の大気層との界面、または空気層8との界面の臨界角(θm=41.8゜)より大きいため、全反射が起こり、光はこの界面で反射され得る。この反射された光は、賦型樹脂シート1A内で反射され、室内の大気層または空気層8あるいは賦型樹脂シート1Bへと入射することはできない。
これに対して、特定角60°よりも小さい角度で入射した光については、室内の大気層または空気層8に対して、賦型樹脂シート1Aと室内の大気層との界面または空気層8との界面において、臨界角よりも小さい角度で光が賦型樹脂シート1Aから室内の大気層または空気層8へと入射し得るので、光の全反射は起こらず、各界面にて屈折し得る。
また、空気層8が存在する場合、空気層8から賦型樹脂シート1Bに入るときに逆の屈折が起こり得るので、この空気層8の幅が小さければ、ほとんど空気層8の影響を受けずに通常のガラスと同様に透過することができる。このため、空気層8の厚みは2mm以下であることが望ましい。空気層8の厚みの下限値は空気層8の役割が発揮できる観点から0.01mm程度である。空気層8の厚みが上記の範囲内であると、室内から室外を見たときに外の景色が通常のガラスと同じように見える。また、屈折率の大きな樹脂を使用すると、空気層8の傾斜角はより小さくすることができる。
例えば図2、図3に示す実施形態において、調光部材を構成する賦型樹脂シート1A、1Bの樹脂の屈折率がそれぞれ1.5であり、空気層8の傾斜角2a(賦型樹脂シートの凸部の断面の三角形の第一底角2a)が7°である調光部材の賦型樹脂シートの凸部を有していない面(例えば面X)に粘着層を設けて、以下にて詳細に説明する透明な板部材と接合してパネルを形成し、この調光部材が図2、図3に示すように立てた状態となるように、例えば、東京で南を向いた窓ガラスの代替として用いることができる。このとき、太陽の高度が高く、室外側から賦型樹脂シートの凸部を有していない面(例えば面X)への入射角が60°よりも大きいとき、例えば4月から9月の間では、太陽光の室内側への入射を抑制することができ、太陽の高度が低く、室外側から賦型樹脂シートの凸部を有していない面(例えば面X)への入射角が60°よりも小さいとき、例えば10月から3月の間は、太陽光の室内側への入射は抑制されず、その入射を許容することができる。
なお、本明細書において、夏とは太陽の高度の高い4月から9月を意味し、冬とは太陽の高度の低い10月から3月を意味する。なお、この定義は、北半球においてあてはまるものであり、南半球では逆となり、夏とは太陽の高度の高い10月から3月を意味し、冬とは太陽の高度の低い4月から9月を意味する。
例えば、東京以外の場所(ただし北半球)において、夏に太陽光の室内側への入射を抑制し、冬に太陽光の室内側への入射を抑制せずに許容し得るようにするためには、太陽の高度が緯度に依存するので、本発明のパネルを設置する場所の緯度に応じて、傾斜角2aを適宜設定すればよく、東京よりも緯度が大きい場所では、傾斜角2aを7°よりも大きくすればよく、東京よりも緯度が小さい場所では、傾斜角2aを7°よりも小さくすればよい。なお、傾斜角2aを設定するためには、賦型樹脂シートの凸部の断面の三角形の第一底角2aを設定すればよい。
また、太陽の高度が高く入射角が特定角よりも高いときは室内側への太陽光の入射は抑制され得るものの、特定角よりも下方から入射する光については、通常のガラスを透過するのと同様に透過するために外の景色は通常のガラス窓と同様に見ることができる。
本発明のパネルは、その外周部(すなわち縁部)、特に調光部材が、枠部材などにより囲われていてもよい。外周部が枠部材で囲われていることで、調光部材を支持することによって本発明は取り扱いやすくなり、また、調光部材が一対の賦型樹脂シートからなるときには、これら賦型樹脂シート間の空気層または接着剤層の厚みを一定に保ち易くなる。
なお、本発明において使用することのできる枠部材の寸法および形状ならびに材料に特に制限はない。
本発明のパネルは、通常、調光部材が立てられた状態、すなわち垂直の姿勢で用いられ得るが、この際、調光部材の下端面に対向するように太陽光発電パネルを設置することが好ましい。ここで、本発明のパネルにおいて使用する調光部材に入射する入射角の大きな太陽光は、上述の通り、調光部材の凸部で反射して、調光部材の下方向で集光しやすく、かかる調光部材の下端面と対向して配置した太陽光発電パネルによって、効率よく発電を行うことができる。本発明のパネルにおいて使用する調光部材と太陽光発電パネルとは接していることが好ましく、以下にて詳しく説明する粘着層により接合されていてもよい(本発明において、このような「粘着層」は、「接合層」または「結合層」と呼ばれる場合もある)。
ここで、調光部材が1枚の賦型樹脂シートだけを含むものであるときは、その凸部を有する面が室内側となるように、調光部材を用いることが好ましい。例えば図2に示す本発明で使用することのできる調光部材を室内側に配置する場合、調光部材の賦型樹脂シートの凸部を有していない面に粘着層を設ける。あるいは、本発明で使用することのできる調光部材を室外側に配置する場合、調光部材の賦型樹脂シートの凸部を有する面に粘着層を設ける。
また、調光部材が図3に示すように2枚の賦型樹脂シートを含む場合、調光部材の面Xに粘着層を設けても、あるいは調光部材の面Yに粘着層を設けてもよい。
なお、本発明のパネルを構成する調光部材に含まれる賦型樹脂シートは、上述のものに限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば一方の面に幅方向に不連続な凸部が形成された賦型樹脂シートを使用してもよい。
<粘着層>
本発明のパネルにおける粘着層は、上述の調光部材を、以下にて詳しく説明する透明な板部材に貼付することができ、上記の屈折率差絶対値を達成することができるものであればよい。かかる粘着層を形成することのできる材料は、特に限定されないが、前述の通り、屈折率が1.20〜1.90の粘着層を形成できる材料が好ましく、例えば、感圧式の粘着剤、活性エネルギー線硬化型の粘着剤、熱硬化型の粘着剤等の粘着剤が挙げられる。また、粘着層を形成することのできる材料として、活性エネルギー線硬化型の接着剤、熱硬化型の接着剤等の接着剤などを使用してもよい。
従って、本発明において「粘着層」とは、粘着剤から形成され得る層だけでなく、接着剤から形成され得る層をも包含して意味するものであり、粘着性および/または接着性を有するものとして理解される。
粘着層の厚みとしては、例えば1μm以上10mm以下であり、好ましくは5μm〜1mmであり、より好ましくは10μm〜500μmであり、さらにより好ましくは10μm〜150μmである。粘着層の厚みが上記の範囲内であると、耐衝撃性、耐こじ破り性、耐打ち破り性などの性能が向上し、優れた防犯性能を提供することができる。
感圧式の粘着剤としては、従来公知のものを採用することができ、例えば、アクリル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(アクリル系粘着剤)、ゴム系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ゴム系粘着剤)、ウレタン系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ウレタン系粘着剤)、シリコーン系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(シリコーン系粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ポリビニルエーテル系粘着剤)などが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤であるアクリル系粘着剤が好ましい。
感圧式の粘着剤は、被着体(例えば、ガラス板、樹脂板等)の表面に接触させ、次いで加圧することで該表面に貼付され得、また、被着体に十分な強度があればほとんど痕跡を残すことなく剥離することができる粘弾性体である。
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとして重合してなる樹脂を基材樹脂とするものが挙げられる。かかる基材樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいし、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを共重合させたものを用いてもよい。さらに、これらの基材樹脂には、極性モノマーが共重合されていてもよい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を有するモノマーなどが挙げられる。
これらのアクリル系粘着剤は、単独でも勿論使用可能であるが、通常は架橋剤が併用され得る。架橋剤としては、2価または多価の金属塩であって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形戒するもの、ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオール化合物であって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものなどが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が、有機架橋剤として広く使用されている。
ゴム系粘着剤としては、例えば、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)などのスチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム、イソプロピレンゴムなどを基材樹脂とするものなどが挙げられる。かかる基材樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ウレタン系粘着剤としては、例えば、少なくともポリオールを含む活性水素成分と、ポリイソシアネート系架橋剤とを、3級アミン系化合物、有機金属化合物等の触媒を用いて反応させて得られるポリウレタン系樹脂を基材樹脂とするものが挙げられる。また、ポリウレタン系樹脂を、さらにポリイソシアネート系架橋剤と反応させて得られる二液硬化型ウレタン系粘着剤も好ましく用いられる。ポリオールとポリイソシアネート系架橋剤との組み合わせにおいては、架橋密度のコントロールがしやすいために、該ポリウレタン系樹脂を含んでなる粘着剤の粘着力の調節が容易である。また、架橋密度の経時変化も少ないために、粘着力の経時変化も少ない。
シリコーン系粘着剤としては、シリコーンガムとシリコーンレジンとの重合物により構成されるものなどを使用することができ、白金触媒硬化型のものであってもよいし、過酸化物硬化系のものであってもよい。
ポリビニルエーテル系粘着剤としては、ポリエチルビニルエーテル、ポリプロピルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリ−2−エチルヘキシルビニルエーテル等を基材樹脂として使用することができる。
ここで、粘着層を形成することのできる上述の粘着剤には、上記の基材樹脂や架橋剤のほかに、必要に応じて、粘着剤の粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調整するために、例えば天然物や合成物である樹脂類、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、染料、顔料、消泡剤、腐食剤、光重合開始剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。さらに、微粒子を含有させて光散乱性を示す粘着層とすることもできる。また、上述の粘着剤から形成され得る粘着層には、酸化防止剤や紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
活性エネルギー線硬化型の粘着剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有して被着体に密着し、活性エネルギー線の照射により硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤などである。活性エネルギー線硬化型の粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。活性エネルギー線硬化型の粘着剤は、一般にはアクリル系粘着剤と、活性エネルギー線重合性化合物とを主成分とする。通常は、さらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤を配合することもできる。
熱硬化型の粘着剤は、加熱により硬化する性質を有しており、加熱前にも粘着性を有して被着体に密着して、加熱により硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤などである。熱硬化型の粘着剤は、一般にはアクリル系粘着剤と、熱重合性化合物とを主成分とする。通常はさらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、熱重合開始剤を配合することもできる。
活性エネルギー線硬化型の接着剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、有機溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型の接着剤が好ましい。(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、エポキシ系接着剤、オキセタン系接着剤、エポキシ/オキセタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤などの光ラジカル重合反応を利用する接着剤や、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの光カチオン重合反応を利用する接着剤などが挙げられる。
熱硬化型の接着剤は、加熱により硬化する性質を有している。熱硬化型接着剤としては、有機溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型の接着剤が好ましい。熱硬化型の接着剤としては、常温以上で硬化する接着剤が含まれ、具体的には、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ナイロン系接着剤、変性オレフィン系接着剤などが挙げられる。
また、他の接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤などが挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。
粘着層は、上述の粘着剤成分および/または接着剤成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を1種以上含有していてもよい。他の成分としては、例えば、他のポリマー成分、軟化剤、老化防止剤、硬化剤、可塑剤、充填剤、熱重合開始剤、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤(顔料や染料など)、溶剤(有機溶剤)、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)などが挙げられる。なお、熱重合開始剤や光重合開始剤は、基材樹脂を形成するための材料に含まれ得る。
調光部材の一方の面に粘着層を形成する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、調光部材の一方の面に粘着層を形成する材料を塗布する方法;調光部材の一方の面に、粘着層を形成する材料をシート状にした粘着シートや、任意のシートを基材として、該シートの両方の面に粘着層を形成する材料を塗布してなる粘着シートを、貼合する方法などが挙げられる。 粘着剤や粘着シートは市販品を用いてもよく、市販品の粘着剤や粘着シートとしては、新タック化成株式会社製のNSS、リンテック株式会社製のP−3132等が挙げられる。
水系接着剤から粘着層を形成する方法としては、調光部材の一方の面に水系接着剤を塗布し、次いで、乾燥等により該水系接着剤から水分を低減する、好ましくは除去する方法などが挙げられる。また、水系接着剤を塗布する方法としては、上述の粘着層を形成する材料を塗布する方法と同じ方法などが挙げられる。
水系接着剤から粘着層を形成する方法において、乾燥温度は、10℃〜90℃が好ましい。10℃未満であると粘着層と被着体とが剥離しやすくなる傾向がある。90℃以上であると熱によって水系接着剤が劣化する恐れがある。乾燥時間は、10〜1000秒が好ましい。
粘着層を形成する調光部材の一方の面には、粘着層を形成する材料や粘着シートとの密着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に調光部材の処理面を浸漬する方法等が挙げられる。
<板部材>
本発明のパネルにおいて使用することのできる板部材は、透明な板状(又はパネル状)の形状を有するものであり、無色透明であっても、有色透明であってもよい。
本発明において、板部材が「透明」であるとは、板部材の厚みを3mmとしたときに、JIS K7361−1に準拠して測定される板部材の全光線透過率が、80%以上、好ましくは90%以上であること、あるいはJIS K7136に準拠して測定される上記板部材のヘーズが、10%以下、好ましくは5%以下であることを意味する。
板部材を構成する材料としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス板、樹脂板などを使用することができる。
ガラス板としては、例えばソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどのガラスから作製されるガラス板が挙げられる。
樹脂板としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂から作製される樹脂板が挙げられる。なかでも、耐衝撃性、透明性などの観点から、PMMA系樹脂、PC系樹脂を使用することが好ましい。特に耐衝撃性を有する樹脂板は、パネルに高い防犯性能を付与することができる。
また、上記の樹脂板は、多層構造であってもよく、多層構造の樹脂板としては、例えば、PMMA系樹脂板とPC系樹脂板とを含む二層構造の樹脂板を使用することができる。
本発明において使用することのできる板部材の厚みに特に制限はなく、例えば0.1mm以上20mm以下、好ましくは0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。板部材の厚みが上記の範囲内であると、高い耐衝撃性、ひいては高い防犯性能を提供することができる。
本発明において使用することのできる板部材の寸法に特に制限はなく、長手方向の寸法は、例えば1mm以上10000mm以下、好ましくは10mm以上5000mm以下、より好ましくは50mm以上4000mm以下である。また、幅方向の寸法(すなわち長手方向に対して垂直方向の寸法)は、例えば1mm以上10000mm以下、好ましくは10mm以上5000mm以下、より好ましくは50mm以上4000mm以下である。
また、このような透明な板部材の屈折率は、例えば1.40以上1.70以下、好ましくは1.45以上1.60以下、より好ましくは1.48以上1.59以下である。
本発明において、板部材の全面に上記の調光部材が粘着層を介して配置されていてもよく、板部材の一部に上記の調光部材が粘着層を介して配置されていてもよいが、調光性能および防犯性能の観点から、板部材の全面に上記の調光部材が粘着層を介して配置されていることが好ましい。
なお、活性エネルギー線硬化型の粘着剤を使用する場合、このような粘着剤を介して、上記の調光部材を被着体に貼付する方法としては、このような粘着剤を介して調光部材を被着体と接触させ、次いで、活性エネルギー線を照射して粘着剤を硬化させる方法などが挙げられる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
以下に本発明の実施例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アクリル系樹脂(スミペックスEX(屈折率1.490)、住友化学株式会社製)を、スクリュー径65mmの押出機に供給して210〜260℃で溶融混練し、マルチブロックおよびTダイを経由してTダイ温度260℃でシート状に押出して連続樹脂シートを製造した。この押出された連続樹脂シートを、表面にクロムメッキを施した鏡面冷却ロールである第一押圧ロールと表面に転写型を備えた第二押圧ロールとで挟持(押圧)して、各押圧ロールの回転により順次搬送しながら連続樹脂シートの表面に転写型を転写させた。その後、この連続樹脂シートを第二押圧ロールに密着させた状態で搬送して、次いで第二押圧ロールと表面にクロムメッキを施した鏡面ロールである第三押圧ロールとで挟持(押圧)して、各押圧ロールの回転により順次搬送して、その後、引き取りロールで引き取り、一方の面に凸部を有し、屈折率が1.490である賦型樹脂シートを得た(厚みL:200μm)。
凸部の形状
第一底角2a:7°
第二底角2b:90°
ピッチ間隔(P):250μm
高さ(H):31μm
得られた賦型樹脂シートの凸部を有していない面に、感圧式のアクリル系粘着剤(NSS(屈折率1.470)、新タック化成株式会社)をハンドロールにより塗布し、硬化後の厚みが100μmとなるように粘着層を形成した。
粘着層の上側にガラス板(ソーダ石灰ガラス、100mm×100mm×3mm(厚み)、全光線透過率:90%、屈折率:1.51)を配置して、本発明の「パネル1」を作製した。
(実施例2)
実施例1と同様にして、一方の面に凸部を有し、屈折率が1.490である賦型樹脂シートを得た。得られた賦型樹脂シートの凸部を有していない面に、感圧式のアクリル系粘着剤(P−3132(屈折率1.466)、リンテック株式会社)をハンドロールにより塗布し、硬化後の厚みが10μmとなるように粘着層を形成して、本発明の「パネル2」を作製した。
(比較例1)
実施例1と同様にして、一方の面に凸部を有し、屈折率が1.490である賦型樹脂シートを得た。得られた賦型樹脂シートには粘着層を設けず、この賦型樹脂シートを、その凸部を有する面が外側となるようにして、賦型樹脂シートの周縁部をセロテープ(登録商標)(NT−24、ニチバン株式会社)でガラス板(ソーダ石灰ガラス、100mm×100mm×3mm(厚み)、全光線透過率:90%、屈折率:1.51)に固定することによって、「比較パネル1」を作製した。
なお、この比較パネル1において、調光部材とガラス板との間には空気層が存在しており、かかる空気層を、実施例1〜2における粘着層に相当するものとみなして、かかる空気層の屈折率(1.000)を屈折率Bとした。
[調光性能評価]
入射角30°、70°での各調光性能について評価した。疑似太陽光ソーラーシミュレーターにより、入射角0°、+30°、+70°でサンプルを透過する光量(透過光量)を測定し、入射角0°での透過光量に対する、入射角30°での透過光量の比(光透過率)および入射角70°での透過光量の比(光透過率)をそれぞれ算出した(入射角30°での透過光量/入射角0°での透過光量、および入射角70°での透過光量/入射角0°での透過光量)。結果を以下の表1に示す。
ここで、各サンプルの透過光量(%)とは、サンプルがない状態で測定して得られる光量を透過光量100%として、その光量に対する、サンプルありの状態で測定して得られる光量の比を算出して得られる値である。
このように、比較例1では、粘着層がなく、屈折率差が0.490であるために、入射角70°において、透過光量および光透過率が実施例1〜2と比べて高いことがわかった。この結果は、比較例1において、入射角70°では光が十分に抑制されていないことを示す。
また、比較例1のように粘着層を使用しない場合、単に調光部材をガラス板に配置しただけでは、それらの間に存在する空気層によって、所望の調光効果が得られないこともわかった。
対して、本発明の実施例1、2では、入射角70°において、光透過率が比較例1と比べて約1/2となり、優れた調光性能(光の抑制効果)をもたらすことがわかった。また、このような効果は、屈折率差絶対値が0.2以下であることにも起因し得る。
(実施例3〜7)
アクリル系樹脂(スミペックスMH、住友化学株式会社製)に対して、ゴム粒子(最内層が、メタクリル酸メチルを主成分とし、さらにメタクリル酸アリルを用いて重合された硬質の重合体からなり、中間層が、アクリル酸ブチルを主成分とし、さらにスチレンおよびメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性体からなり、最外層が、メタクリル酸メチルを主成分とし、さらにアクリル酸エチルを用いて重合された硬質の重合体からなる三層構造の弾性体粒子であって、中間層の平均粒径が240nmであるゴム粒子)を、以下の表2に記載の割合で配合した。
得られた樹脂を、スクリュー径65mmの押出機に供給して210〜260℃で溶融混練し、マルチブロックおよびTダイを経由してTダイ温度260℃でシート状に押出して連続樹脂シートを製造した。この押出された連続樹脂シートを表面にクロムメッキを施した鏡面冷却ロールである第一押圧ロールと表面に転写型を備えた第二押圧ロールとで挟持(押圧)して、各押圧ロールの回転により順次搬送しながら連続樹脂シートの表面に転写型を転写させた。その後、この連続樹脂シートを第二押圧ロールに密着させた状態で搬送して、次いで第二押圧ロールと表面にクロムメッキを施した鏡面ロールである第三押圧ロールとで挟持(押圧)して、各押圧ロールの回転により順次搬送して、その後、引き取りロールで引き取り、一方の面に凸部を有し、屈折率が1.490である賦型樹脂シートを得た。
凸部の形状
第一底角2a:7°
第二底角2b:90°
ピッチ間隔(P):250μm
高さ(H):31μm
得られた各賦型樹脂シート(屈折率1.490)の凸部を有していない面に、感圧式のアクリル系粘着剤(NSS(屈折率1.470)、新タック化成株式会社)をハンドロールにより塗布し、硬化後の厚みが100μmとなるように粘着層を形成した。
粘着層の上側にガラス板(ソーダ石灰ガラス、100mm×100mm×3mm(厚み)、全光線透過率:90%、屈折率:1.51)を配置して、本発明の「パネル3〜7」を作製した。
なお、各パネルにおいて、賦型樹脂シートと粘着層との間の屈折率の差は、いずれも0.020であった。
(比較例2)
実施例3〜7で製造した賦型樹脂シートと同様に作製した賦型樹脂シート(ゴム粒子配合量0%、厚み200μm、屈折率1.490)およびガラス板(ソーダ石灰ガラス、100mm×100mm×3mm(厚み)、全光線透過率:90%、屈折率:1.51)を用いて、粘着剤を使用することなく、比較例1と同様にして、「比較パネル2」を作製した。
なお、この比較パネル2において、調光部材とガラス板との間には空気層が存在しており、かかる空気層を、実施例3〜7における粘着層に相当するものとみなして、かかる空気層の屈折率(1.000)を屈折率Bとした。
[防犯性能の評価]
防犯性能の評価として、以下の基準に従って、「耐衝撃性」、「耐こじ破り性」、「耐打ち破り性」を評価した。
<耐衝撃性の評価>
本発明の実施例1〜7および比較例1〜2で得られたパネルのサンプル(100mm×100mm)について、ガラス板を上側(落球側)とし、賦型樹脂シートを下側として、重量35.8gで直径20mmφの金属球を、ガラス板の表面からの高さを10cmずつ増加させながら試験片に落下させた。そして、以下の評価基準に基づいて、耐衝撃性を評価した。結果を以下の表2に示す。
耐衝撃性の評価基準
A:高さ50cmから金属球を落としても、試験片に亀裂は生じなかった。
B:高さ10cmから金属球を落としても、試験片に亀裂は生じなかったが、高さ50cmから金属球を落とした際、亀裂が生じた。
C:高さ10cmから金属球を落とした際、亀裂が生じた。
なお、表2に示す「ヘイズ」は、使用した賦型樹脂シートを2枚、凸部と凹部を重ねるようにした状態で、別途にヘイズメーターHM150(村上色彩研究所製)にて、JIS K 7136に準拠する方法で測定した。
また、表2に示す「調光性」は、上述の調光性能試験に準じて、入射角30°での透過光量と入射角70°での透過光量との差が55%以上であるものを調光性が良好(good)であるとして「G」で示し、55%未満であるものを調光性が不良(no good)であるとして「NG」で示す。
表2に示す通り、比較例1および2のパネルは、高さ10cmから金属球を落とした場合であっても、パネルに亀裂が生じ、耐衝撃性に劣ることがわかった。また、調光性も十分でないことがわかった。
対して、本発明の実施例1〜7のパネルでは、優れた調光性とともに、優れた耐衝撃性を有することがわかった。このような優れた効果は、ゴム粒子を規定の範囲の量で賦型樹脂シートに配合することによって得られるものであると考えられ、その厚みが200μm程度であっても、優れた耐衝撃性を得ることができる。
<耐こじ破り性の評価>
本発明の実施例1〜7および比較例1および2で得られたパネルのサンプルを窓枠に設置し、以下の評価基準に基づいてパネルの「耐こじ破り性」を評価した。結果を以下の表3に示す。
耐こじ破り性の評価基準
G:ドライバーを用いてパネルを「こじ破る」のに要する時間が1分間以上である
NG:ドライバーを用いてパネルを「こじ破る」のに要する時間が1分間未満である
<耐打ち破り性の評価>
本発明の実施例1〜7および比較例1および2で得られたパネルのサンプルを窓枠に設置し、以下の評価基準に基づいてパネルの「耐打ち破り性」を評価した。結果を以下の表3に示す。
耐打ち破り性の評価基準
G(good):バールを用いてパネルを「打ち破る」のに要する時間が5分間以上である
NG(no good):バールを用いてパネルを「打ち破る」のに要する時間が5分間未満である
上記の表に示す通り、本発明の実施例1〜7のパネルは、優れた耐こじ破り性および耐打ち破り性を有し、優れた防犯性能を有する。
対して、比較例1および2のパネルは、全く防犯性能を有していないことがわかった。
なお、上記の防犯性能の評価試験において、実施例1〜7および比較例1および2のパネルについては、170.8cm×76.5cmの調光部材を、170.8cm×76.5cmのガラス板に貼付したものをサンプルとした。