以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
第1実施形態の逆止弁装置およびこれを備える蒸発燃料供給システムについて、図1〜図4を参照しながら説明する。
エンジンの吸気系1に導入された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジンに供給される燃焼用燃料と混合されて、エンジンのシリンダ内で燃焼される。エンジンの吸気系1は、エンジンの吸気マニホールド20にスロットルバルブ21を介して吸気管10の一端側が接続され、さらに吸気管10の途中にフィルタ13、過給機12、インタークーラ11等が設けられることにより構成されている。蒸発燃料パージ系2は、燃料タンク80、キャニスタ70が、配管81、配管71を介して吸気マニホールド20に接続されて形成されている。
フィルタ13は、吸気管10の最上流部に設けられ、吸気中の塵や埃等を捕捉する。過給機12は、吸気の充填効率を高めるための吸気用圧縮機で構成され、フィルタ13よりも下流側である吸気マニホールド20側に設けられている。過給機12は、エンジンの排気エネルギーによって作動されるタービンに連動するコンプレッサを備える。過給機12のコンプレッサは、フィルタ13を通過した吸気を加圧して吸気マニホールド20に供給する。
インタークーラ11は、冷却用の熱交換器である。インタークーラ11は、過給機12の下流側に設けられる。インタークーラ11では、過給機12によって加圧された吸気と外気との間で熱交換が行われて吸気が冷却される。スロットルバルブ21は、アクセルペダルと連動して吸気マニホールド20の入口部における開度を調節して、吸気マニホールド20内に流入される吸気量を調節する吸気量調節弁である。吸気は、フィルタ13、過給機12、インタークーラ11、スロットルバルブ21を順に通過して吸気マニホールド20内に流入し、インジェクタ等から噴射される燃焼用燃料と所定の空燃比となるように混合されてシリンダ内で燃焼される。
燃料タンク80は、ガソリン等の燃料を貯留する容器である。燃料タンク80は、配管81によってキャニスタ70の流入部70aに接続されている。キャニスタ70は、内部に活性炭等の吸着材が封入された容器であり、燃料タンク80内で発生する蒸発燃料を、配管81を介して流入部70aから取り入れ、吸着材に一時的に吸着する。キャニスタ70には、外部の新鮮な空気を吸入するための吸入部70bが設けられている。キャニスタ70が吸入部70bを備えることにより、キャニスタ70内には大気圧が作用する。キャニスタ70は、吸入された新鮮な空気によって吸着材に吸着した蒸発燃料を容易に脱離することができる。
キャニスタ70には、吸着材から脱離された蒸発燃料が流出される流出部70cが設けられている。流出部70cには配管71の一端側が接続されている。配管71の他端側は、吸気管10に接続されている。配管71においてキャニスタ70と吸気管10との間には、上流側から順にバルブ装置4、逆止弁装置3が設置されている。配管71内の上流側通路は、バルブ装置4に対して燃料が流入する燃料流入通路とも称する。配管71内の下流側通路は、逆止弁装置3から吸気管10に向けて燃料が流出する燃料流出通路とも称する。
バルブ装置4は、蒸発燃料供給用通路、具体的には配管71の上流側通路である燃料流入通路を開閉する開閉手段であり、キャニスタ70からの蒸発燃料をエンジンへ供給することを許可および阻止できる。以下、蒸発燃料供給用通路は、蒸発燃料通路と称する。バルブ装置4は、例えば、弁体、電磁コイルおよびスプリングを備えた電磁弁装置によって構成される。バルブ装置4は、制御装置によって開度が制御される。バルブ装置4は、電磁コイルに通電されたときに発生する電磁力とスプリングの付勢力とのバランスに応じて、蒸発燃料通路を開閉する。
バルブ装置4は、通常は蒸発燃料通路を閉じた状態を維持し、制御装置によって電磁コイルに通電が行われると、電磁力がスプリングの弾性力に打ち勝って、蒸発燃料通路を開いた状態にする。また、制御装置は、通電のオン時間とオフ時間とによって形成される1周期の時間に対するオン時間の比率、すなわちデューティ比を制御して電磁コイルに通電を行う。バルブ装置4は、デューティコントロールバルブともいう。この通電制御により、蒸発燃料通路を流通する蒸発燃料の流量が調節される。
逆止弁装置3は、キャニスタ70から吸気管10に至る蒸発燃料通路であって、バルブ装置4と吸気管10または吸気マニホールド20との間の通路に設けられた、流体の流れを一方向に制限可能な逆弁装置である。逆止弁装置3は、蒸発燃料通路において、燃料流入通路から燃料流出通路への蒸発燃料の本来の流通を許容し、燃料流出通路から燃料流入通路への蒸発燃料の逆流を阻止する。逆止弁装置3は、蒸発燃料の本来の流通に伴って流路を開き、蒸発燃料の逆流に伴って流路を閉じる樹脂製またはゴム製の弁体32を備える。
車両の走行時に過給機12が作動していない場合、つまり通常パージ時には、制御装置によってバルブ装置4が開かれると、ピストンの吸入作用によって発生する吸気マニホールド20内の負圧とキャニスタ70にかかる大気圧との差が生じる。この圧力差によって、キャニスタ70内に吸着された蒸気燃料は、燃料流入通路、バルブ装置4、逆止弁装置3を流れ、吸気マニホールド20内に吸引される。
吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジンに供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジンのシリンダ内で燃焼される。また、エンジンのシリンダ内においては、燃焼用燃料と吸気との混合割合である空燃比が予め定めた所定の空燃比となるように制御される。制御装置は、バルブ装置4の開閉時間をデューティ制御することで、蒸発燃料をパージしても、所定の空燃比が維持されるように蒸発燃料のパージ量を調節する。
車両の走行時に過給機12が作動している場合、つまり過給パージ時には、吸気マニホールド20内は加圧された吸気によって正圧となる。このため、バルブ装置4を通過してエンジンに蒸発燃料量を供給することができなくなる。さらに、この正圧時には、蒸発燃料が逆流して蒸発燃料が大気中に放出されることがある。この逆流を防止するために逆止弁装置3が設けられている。
逆止弁装置3の構成について図2を参照して説明する。図2は、閉弁時の逆止弁装置3を示した断面図である。逆止弁装置3は、蒸発燃料通路を形成する配管に連結されている。逆止弁装置3は、上流側に設けられる上流側部材31と、上流側部材31に結合されている下流側部材33と、上流側部材31に支持されている弁体32とを備えている。上流側部材31はバルブ装置4側の配管71に接続される管状部311を備えている。上流側部材31は流体が内部を流通する通路形成部材の一つである。管状部311の内部には、流入通路311aが形成されている。下流側部材33は吸気管10側の配管71に接続される管状部338を備えている。下流側部材33は流体が内部を流通する通路形成部材の一つである。管状部338の内部には、流出通路338aが形成されている。
逆止弁装置3は、上流側部材31に設けられたフランジ部314と下流側部材33に設けられたフランジ部337とがレーザ溶着や超音波溶着等によって結合されている構成により、外部へ蒸発燃料が漏れ出ないレベルのシール性を有している。上流側部材31は、バルブ装置4からの蒸発燃料が流れる上流側通路を形成する部材である。上流側部材31は、管状部311とフランジ部314とを一体に連結する筒状部313を備えている。筒状部313には、上流端部に通路壁312が設けられ、下流端開口の全周から放射状に広がるフランジ部314が設けられている。筒状部313は、下流側部材33の下流側ポート331と弁体32の弁部322とを内蔵している。筒状部313の内部は、弁体32の開弁時に、蒸発燃料が上流側部材31から下流側部材33へ流下する蒸発燃料通路の一部を構成する。
下流側部材33は、上流側部材31の内部を流れてきた蒸発燃料をさらに下流側の通路に導く下流側通路を形成する部材である。下流側部材33は、フランジ部337よりも弁体32側に突出する下流側ポート331を備えている。下流側ポート331は、弁体32よりも蒸発燃料の下流に位置する下流側通路336と、下流側通路336に連通する複数の分岐通路334とを形成している。下流側通路336は、燃料流出通路の一部をなす通路であり、または燃料流出通路に繋がる通路である。下流側通路336は弁体32が開弁状態であるときに、複数の分岐通路334を通過してきた蒸発燃料が合流する通路を構成する。
複数の分岐通路334は、下流側ポート331において下流側通路336の周囲に等間隔で周方向に並んでそれぞれが放射状に延びる通路である。分岐通路334は、分岐通路334と同じ個数の仕切り壁335によって隣の通路に対して区切られている。図2のように、分岐通路334における管軸方向についての下流端334aの位置とフランジ部337において管軸に対して交差する下流側端面337aとに関する管軸方向の間隔X2は、フランジ部337の管軸方向の厚さ寸法X1よりも大きくなるように設定されている。換言すれば、分岐通路334は、下流端334aがフランジ部337において管軸に対して交差する上流側端面よりも弁体32側に位置するように設けられている通路である。管軸は管状部311における中心軸に相当する。
下流側ポート331には、弁体32に面する端面に下流側通路336に繋がる開口部333が形成されている。開口部333および下流側通路336は、弁体32の軸方向や、管状部311や管状部338の管軸方向に並ぶように設けられている。開口部333の上流側開口端から放射状に延びる開口周囲面332は、弁体32における傘状の弁部322に対向している。開口周囲面332は、下流側ポート331において管軸方向に直交する端面であり、弁座315および弁部322に対向する面である。また、下流側ポート331の外周面は、開口周囲面332に対して直交する端面でもよいし、交差する端面であってもよい。
上流側部材31には、筒状部313の筒軸に対して交差する通路壁312が設けられている。通路壁312には、貫通穴によって形成されている複数の流体通路312aが設けられている。流体通路312aは、流入通路311aと分岐通路334とを連通する通路である。流体通路312aは、径方向について、管状部311の内周面よりも管軸側または通路壁312の中心軸側に位置するように設けられている。図2に示すように、環状に並べられた複数の流体通路312aが内接する内接円の直径D3は、管状部311の内周面の内径D1に対して十分に小さく設定されている。さらに環状に並べられた複数の流体通路312aが外接する外接円の直径D2は、管状部311の内周面の内径D1に対して同等、または小さく設定されている。換言すれば、すべての流体通路312aは、管状部311の内周面よりも管軸側または通路壁312の中心軸側の径方向位置において通路壁312を貫通する通路である。このような構成により、管状部311の内部を管軸方向に見た場合に、流体通路312aはその全体が見えるように通路壁312を貫通している。
通路壁312には、下流側の面に弁座315が設けられている。通路壁312は、弁体32の弁軸部321を支持している。弁軸部321は通路壁312を貫通している。複数の流体通路312aは、通路壁312に支持されている弁軸部321の周囲に円を描くように等間隔に並んで設けられている。弁座315は、複数の流体通路312aに対して環状の径外側に位置する通路壁312の表面に相当する。
逆止弁装置3は、複数個の流体通路312aの周囲の少なくとも径外側に環状に設定される弁座315に対して接近、離反するように、その中心軸線に沿うように往復直線運動を行う弁体32を備える。逆止弁装置3の弁体32は、弁軸部321の上流端部に設けられたストッパ部323と、弁軸部321の弁部322側または下流側の端部に設けられる大径軸部とを備えている。弁軸部321は、通路壁312に固定される軸部であり、往復直線運動の際に変位しないように支持されている。
ストッパ部323は、弁部322とは反対側または上流側の端部に設けられて弁軸部321よりも外径が大きい大径部である。したがって、弁体32は、弁軸部321、弁部322、ストッパ部323および大径軸部が一体となるように形成されるゴム製のバルブである。ストッパ部323、大径軸部は、例えば、弁軸部321よりも外側に突出した外形を有する環状凸部である。弁体32は、ストッパ部323と燃料流出通路側の大径軸部とで通路壁312を挟持して弁軸部321が通路壁312に支持される構成により、通路壁312に取り付けられている。この取り付け状態では、弁体32は、弁部322が蒸発燃料による流体圧力に応じて、弾性変形することになる。
弁体32は所定の材料を金型に投入して固めることによって成形することができる。例えば弁体32は、各種のゴムを含むエラストマーで構成することができる。弁体32は、シリコーン系の合成樹脂のうちゴム状であるシリコーンゴムやフッ素ゴムまたはフロロシリコンゴムで構成することが好ましい。これは、弁体32には低温、高温の双方において耐久性が要求されるからである。
弁部322は、大径軸部と一体である根元部から外周縁まで径外側に延びる円盤形状をなす。弁部322は、図2に図示する閉弁時または無負荷状態では根元部から外周縁にかけて、弁座315側に接近するような断面湾曲形状に形成されている。弁部322は、外周縁に近づくほど先細りする先細り形状であってもよい。弁部322の外周縁は、流体通路312aよりも径外側に位置する弁座315の一部に対して線接触する。弁部322の外周縁は、全周において弁座315に接触する。さらに弁部322の外周縁は、弁座315に接触したときに力を与える面積を小さく集中させるために、先端が細く鋭く形成されている構成でもよい。
弁部322は、弁部322に作用する流体圧力の向きに応じて、弁部322の中ほどが弁座315側に変位するように弾性変形したり、外周縁が弁座315から浮き上がるように弾性変形したりする。図2に示すように、弁部322は、無負荷状態または弁部322の下流側面側の圧力、すなわち逆流方向に作用する圧力が低い低圧時において弾性変形しないか少し変形する程度であるが、外周縁が弁座315に接触しているため、弁部322は線接触する。
弁部322の外周縁が全周において弁座315に接触する状態から、吸気マニホールド20側からキャニスタ70側へ向けて逆流が発生すると、弁部322の下流側面が押されて弁座315側に変位するように弾性変形する。この弾性変形により、弁部322の外周縁がさらに弁座315を強く押すため、外周縁と弁座315との線接触によるシール力が無負荷状態よりもさらに強くなる。したがって、弁部322に低圧力が作用するときには、外周縁と弁座315との線接触によって、流体通路312aを通じた流体通過を確実に遮断し、低圧時の漏れを抑制できる。
例えば、通常パージ時にピストンの吸入作用によって吸気マニホールド20内に負圧が生じると、弁部322の下流側面に作用する圧力よりも上流側面に作用する圧力が大きくなる。この場合、弁部322は全体的に弁座315から離れるように容易に弾性変形するため、弁部322の外周縁が浮き上がって弁座315から離れるようになる。この弁体32の動作により流体通路312aが開放されて流入通路311aと流出通路338aとが連通することで、弁体32は流体通路312aを通じた流体通過を許容する。そして、キャニスタ70内に吸着された蒸気燃料は、バルブ装置4を通過して流入通路311aから流体通路312aに流入し、弁座315と弁部322の外周縁との隙間を通過して、燃料流出通路を経て吸気マニホールド20内に吸引される。吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、エンジンに供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジンのシリンダ内で燃焼されることになる。
このように蒸発燃料がエンジンへ供給されるときには、弁部322よりも下流に位置する下流側通路336は、弁部322よりも上流側に位置する流体通路312aに対して負圧になり、流体通路312aと下流側通路336との圧力差が大きくなる。このとき、流体通路312aと下流側通路336との圧力差が大きいため、この圧力差に伴う外力が弁部322に作用して弁部322が弾性変形して、下流側ポート331における開口周囲面332に接近するようになる。
一方、車両の走行時に過給機12が作動する過給時には、吸気マニホールド20内は加圧された吸気によって正圧となるため、弁部322の下流側面に作用する圧力が上流側面に作用する圧力よりもかなり大きくなる。この場合、弁部322は全体的に弁座315側に変位するように弾性変形する。特に弁部322における流体通路312aに対向する部位が流体通路312aの内周縁に近づくように大きく変形する。つまり、弁部322は、流体通路312aに蓋をするように、根元部分と弁部322の外周縁との間の部分が逆流方向に凹むように大きく変形する。
以上のように、非過給時に、蒸発燃料がバルブ装置4から吸気マニホールド20に向けて流れる供給方向の流れが生じると、弁部322の上流側面に作用する流体圧力によって、弁部322が弾性変形して供給方向に変位して、流体通路312aが開放される。これにより、蒸発燃料は、流体通路312aを通過して燃料流出通路、吸気マニホールド20へと流れる。
一方、過給時には、吸気マニホールド20に高い正圧がかかるため、逆止弁装置3には供給方向とは反対向きに流体の圧力が大きくかかる。このため、蒸発燃料がバルブ装置4に向けて逆流する状況になるが、これを逆止弁装置3が防止する。すなわち、正圧によって弁部322の下流側面に流体圧力が作用して、弁部322が逆流方向に弾性変形する。これにより、弁部322が弁座315に密着して流体通路312aを介した流体流通を遮断する。蒸発燃料は、逆止弁装置3を越えてバルブ装置4側に流入せず、過給時の大気中への蒸発燃料の放出を回避できる。
次に、上流側部材31と下流側部材33について樹脂成形する場合の金型構造について図3、図4を参照して説明する。図3に示すように、上流側部材31を樹脂成形するための金型装置は、第1型51、第2型52、第3型53および第4型54を少なくとも備えている。第1型51、第2型52、第3型53および第4型54を組み合わせることより、キャビティ、ゲート、ランナを形成することができる。図3は、キャビティに樹脂が充填された状態を断面で示しており、図3においてゲートおよびランナは省略されている。
第1型51は、少なくとも管状部311の内周面と通路壁312の上流側部分とを成形し、流入通路311aを埋めるように設置されている型である。第2型52は、少なくとも筒状部313の内周面と通路壁312の下流側部分とを成形し、筒状部313の内部空間と流体通路312aとを埋めるように設置されている型である。第3型53は、少なくとも管状部311の外周面の一部と筒状部313の外周面の一部とを成形する。第4型54は、少なくとも管状部311の外周面の残部と筒状部313の外周面の残部とを成形する。第3型53は、管状部311よりも上流において第1型51に組み合わされ、筒状部313よりも下流において第2型52に組み合わされ、上流側部材31の外側において周方向に第4型54に組み合わされている。第4型54は、管状部311よりも上流において第1型51に組み合わされ、筒状部313よりも下流において第2型52に組み合わされ、上流側部材31の外側において周方向に第3型53に組み合わされている。
上流側部材31の素材である樹脂は、溶融された状態で射出成形機からスプルーに供給され、さらにランナを通じてゲートからキャビティに充填される。金型装置に溶融樹脂を注入しているときには、キャビティにおいてゲートとは反対側からガスを逃がすようにキャビティ内のガス抜きを行う。
金型装置の内部で溶融樹脂を固化させて形成した樹脂成形品は、一体化された、上流側部材31とゲート部とランナ部とスプルー部とを備えている。金型装置から樹脂成形品を取り出す型開きを行う。型開きは、図3に示すように、第1型51を管軸に沿って矢印方向に引き出し、第2型52を第1型51とは反対方向に引き出し、第3型53を径外側に矢印方向に引き出し、第4型54を第3型53とは異なる方向、例えば反対方向に引き出すことにより行われる。このとき、流体通路312aを形成している第2型52の部分と第1型51の部分とが、管状部311の内周面よりも管軸側の径方向位置において、型合わせされている構成であるので、第1型51と第2型52のそれぞれをスムーズに引き出すことができる。金型装置が備えるこのような構成により、型を開く方向のみによって離型できるので、流体通路312aを形成するために第1型51と第2型52の他にスライドコア等の分割型を用いる必要がなく、型数を抑えることができる。
このような型開きによって金型から取り出した樹脂成形品について、例えばレーザ照射装置から出力されるレーザによりゲート部を切断する。これにより、樹脂成形品から上流側部材31だけを取り出すことができる。
図4に示すように、下流側部材33を樹脂成形するための金型装置は、第1型55、第2型56、第3型57および第4型58を少なくとも備えている。第1型55、第2型56、第3型57および第4型58を組み合わせることより、キャビティ、ゲート、ランナを形成することができる。図4は、キャビティに樹脂が充填された状態を断面で示しており、図4においてゲートおよびランナは省略されている。
第1型55は、少なくとも下流側ポート331の内周面を成形し、下流側通路336を埋めるように設置されている型である。第2型56は、少なくとも下流側ポート331の内周面における下流側部分と管状部338の内周面とを成形し、下流側通路336の下流側部分と流出通路338aとを埋めるように設置されている型である。第3型57は、少なくとも仕切り壁335とフランジ部337の一部と管状部338の外周面の一部とを成形する。第4型58は、少なくとも仕切り壁335とフランジ部337の残部と管状部338の外周面の残部とを成形する。第3型57は、フランジ部337よりも上流において第1型55に組み合わされ、管状部338よりも下流において第2型56に組み合わされ、下流側部材33の外側において周方向に第4型58に組み合わされている。第4型58は、フランジ部337よりも上流において第1型55に組み合わされ、管状部338よりも下流において第2型56に組み合わされ、下流側部材33の外側において周方向に第3型57に組み合わされている。
下流側部材33の素材である樹脂は、溶融された状態で射出成形機からスプルーに供給され、さらにランナを通じてゲートからキャビティに充填される。金型装置に溶融樹脂を注入しているときには、前述した上流側部材31の場合と同様にキャビティ内のガス抜きを行う。
次に金型装置から樹脂成形品を取り出す型開きを行う。型開きは、図4に示すように、第1型55を管軸に沿って矢印方向に引き出し、第2型56を第1型55とは反対方向に引き出し、第3型57を径外側に矢印方向に引き出し、第4型58を第3型57とは異なる方向、例えば反対方向に引き出すことにより行われる。このとき分岐通路334の下流端334aがフランジ部337における上流側端面よりも弁体32側に位置する構成であるので、第3型57と第4型58を引き出すことにより、分岐通路334を形成することができる。金型装置が備えるこのような構成により、型を開く方向のみによって離型できるため、分岐通路334を形成するために他にスライドコア等の分割型を用いる必要がなく、型数を抑えることができる。このような型開きによって金型から取り出した樹脂成形品について、例えばレーザ照射装置から出力されるレーザによりゲート部を切断することにより、樹脂成形品から下流側部材33だけを取り出すことができる。
次に、第1実施形態の逆止弁装置3がもたらす作用効果について説明する。逆止弁装置3は、通路形成部材と、通路形成部材内に管状部311の管軸に交差するように設けられて流体通路312aと弁座315とを有する通路壁312と、流体による圧力の向きに応じて流体通路312aの流体通過を遮断、許容する弁体32とを備える。流体通路312aは管状部311の内周面よりも管状部311の管軸寄りの径方向位置において通路壁312を管軸に沿う方向に貫通している通路である。
この逆止弁装置3によれば、管状部311の内周面に対してアンダーカット形状にならないように流体通路312aを形成することができる。図3に示すように、管状部311の開口端から管軸方向に引き出し可能な型と、反対側である筒状部313の開口端から管軸方向に引き出し可能な型とを組み合わせる構成により、通路形成部材の内周面、通路壁312および流体通路312aを成形できる。したがって、逆止弁装置3によれば、型数の抑制、成形工程の低減をもたらし、成形コストの低減が図れる逆止弁装置を提供できる。
通路形成部材は、上流側に設けられて管状部311を有する上流側部材31と、上流側部材31とは別個の部材であって上流側部材31に結合されている下流側部材33とを備える。下流側部材33は、上流側部材31に結合されているフランジ部337と、少なくとも外周側の開口部と内周側の開口部とを有して流体通路312aに連通する分岐通路334とを備える。分岐通路334は、分岐通路334における管軸に沿う方向についての下流端334aがフランジ部337において管軸に対して交差する上流側端面よりも上流側に位置するように設けられている通路である。
この構成によれば、下流側部材33においても、アンダーカット形状にならない分岐通路334を形成することができる。図4に示すように、径外方向に引き出し可能な第3型57と径外方向に引き出し可能な第3型57とを周方向に組み合わせる構成により、フランジ部337を含む下流側部材33の外周面および分岐通路334を成形できる。したがって、下流側部材33の成形において型数の抑制、成形工程の低減をもたらし、成形コストの低減が図れる逆止弁装置3を提供できる。
弁体32は、通路壁312を貫通して通路壁312に支持されている弁軸部321を備える。流体通路312aは、通路壁312において弁軸部321を囲むように複数個並んでいる。この構成によれば、管状部311の内周面に対してアンダーカット形状にならない複数個の流体通路312aを弁軸部321の周囲に有する逆止弁装置3において成形コストの低減を図ることができる。
蒸発燃料供給システムは、燃料タンク80と、キャニスタ70と、キャニスタ70から脱離された蒸発燃料と燃焼用燃料とを混合して燃焼するエンジンの吸気マニホールド20とを備える。蒸発燃料供給システムは、さらにキャニスタからの蒸発燃料をエンジンへ供給することを許可および阻止可能なバルブ装置4と、逆止弁装置3と、吸気管10に設けられる過給機12およびインタークーラ11とを備える。
これによれば、前述したように逆止弁装置3の製造において型数の抑制、成形工程の低減が図れるため、逆止弁装置3の成形コストを低減できる。したがって、製造コストを抑えた蒸発燃料供給システムを提供できる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、逆止弁装置103について図5および図6を参照して説明する。図5、図6において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。逆止弁装置103は、第1実施形態の蒸発燃料供給システムに適用することができる。
逆止弁装置103は、第1実施形態の逆止弁装置3に対して上流側部材131が相違している。図5に示すように、逆止弁装置103は、上流側に設けられる上流側部材131と、上流側部材131とを結合されている下流側部材33と、上流側部材131に支持されている弁体32とを備えている。上流側部材131はバルブ装置4側の配管71に接続される管状部1311を備えている。上流側部材131は流体が内部を流通する通路形成部材の一つである。管状部1311の内部には、流入通路1311aが形成されている。
上流側部材131は、管状部1311と筒状部313とを一体に連結する中継筒状部316を備えている。中継筒状部316は、内径が管状部1311よりも大きく筒状部313よりも小さく形成されている。中継筒状部316には、下流端部に通路壁312が設けられ、上流端部に流入口316aが設けられている。中継筒状部316の内側には、複数の流体通路312aと流入口316aとストッパ部323とが設けられている。
流入口316aは、筒軸方向の所定幅を有し、管状部1311の内周面に沿うように一周する環状の開口をなしている。筒軸は筒状部313の中心軸である。筒状部313の筒軸は、管状部1311の管軸や中継筒状部316の筒軸に対して同軸である。流入口316aにおける筒軸方向の所定幅は、管状部1311において筒軸に対して交差する上流側端面から、通路壁312において筒軸に対して交差する下流側端面までの管軸方向長さに相当する。流入口316aは、複数の流体通路312aの上流端部に位置する流体の流入開口である。流入口316aは、中継筒状部316の内側において筒軸に向けて開口する環状開口面によって形成された開口面積を有し、流体通路312aと流入通路1311aとを連通している。流入口316aの開口面積は、すべての流体通路312aに係る合計横断面積よりも大きく設定されている。流体通路312aの横断面積は、流体通路312aを筒軸に対して直交する断面で切断した場合の断面積である。
図5に示すように、環状に並べられた複数の流体通路312aが内接する内接円の直径D3は、管状部1311の内周面の内径D4に対して十分に小さく設定されている。さらに環状に並べられた複数の流体通路312aが外接する外接円の直径D2は、管状部1311の内周面の内径D4に対して大きく設定されている。
次に、上流側部材131について樹脂成形する場合の金型構造について図6を参照して説明する。図6に示すように、上流側部材131を樹脂成形するための金型装置は、第1型151、第2型152、第3型153および第4型154を少なくとも備えている。第1型151、第2型152、第3型153および第4型154を組み合わせることより、キャビティ、ゲート、ランナを形成することができる。図6は、キャビティに樹脂が充填された状態を断面で示しており、図6においてゲートおよびランナは省略されている。
第1型151は、少なくとも管状部1311の内周面と通路壁312の上流側部分とを成形し、流入通路1311aを埋めるように設置されている型である。第2型152は、少なくとも筒状部313の内周面と通路壁312の下流側部分と中継筒状部316の内周面とを成形し、筒状部313の内部空間と流体通路312aとを埋めるように設置されている型である。第3型153は、少なくとも管状部1311の外周面の一部と中継筒状部316の外周面の一部と筒状部313の外周面の一部とを成形する。第4型154は、少なくとも管状部1311の外周面の残部と中継筒状部316の外周面の残部と筒状部313の外周面の残部とを成形する。第3型153は、管状部1311よりも上流において第1型151に組み合わされ、筒状部313よりも下流において第2型152に組み合わされ、上流側部材131の外側において周方向に第4型154に組み合わされている。第4型154は、管状部1311よりも上流において第1型151に組み合わされ、筒状部313よりも下流において第2型152に組み合わされ、上流側部材131の外側において周方向に第3型153に組み合わされている。
上流側部材131の素材である樹脂は、溶融された状態で射出成形機からスプルーに供給され、さらにランナを通じてゲートからキャビティに充填される。金型装置に溶融樹脂を注入しているときには、第1実施形態と同様にキャビティ内のガス抜きを行う。
金型装置の内部で溶融樹脂を固化させて形成した樹脂成形品は、一体化された、上流側部材131とゲート部とランナ部とスプルー部とを備えている。金型装置から樹脂成形品を取り出す型開きは、図6に示すように行われる。型開きは、第1型151を管軸に沿って矢印方向に引き出し、第2型152を第1型151とは反対方向に引き出し、第3型153を径外側に矢印方向に引き出し、第4型154を第3型153とは異なる方向、例えば反対方向に引き出すことにより行われる。このとき流入口316aと流体通路312aとを形成している第2型152の部分と第1型151の部分とが、管状部1311の内周面よりも管軸側の径方向位置で型合わせされている構成であるので、第1型151と第2型152をスムーズに引き出すことができる。
金型装置が備えるこのような構成により、型を開く方向のみによって離型できるので、流体通路312aを形成するために第1型151と第2型152の他にスライドコア等の分割型を用いる必要がなく、型数を抑えることができる。このような型開きによって金型から取り出した樹脂成形品について、第1実施形態と同様にレーザによりゲート部を切断する。これにより、樹脂成形品から上流側部材131だけを取り出すことができる。
第2実施形態の逆止弁装置103は、通路形成部材と、通路形成部材の内部において筒状部313の筒軸に交差する通路壁312と、流体による圧力の向きに応じて流体通路312aにおける流体の通過を遮断、許容する弁体32とを有する。通路形成部材は、配管に接続可能な管状部1311と管状部1311よりも内径が大きい筒状部313とを有する。通路壁312は流体通路312aと弁座315とを有する。流体通路312aは、管状部1311の内周面よりも外側であって筒状部313の内周面よりも筒状部313の筒軸寄りの径方向位置において、通路壁312を筒軸に沿うように貫通している通路である。
これによれば、筒状部313の内周面に対してアンダーカット形状にならない流体通路312aを形成することができる。図6に示すように、筒状部313の開口端から筒軸方向に引き出し可能な型と管状部1311の開口端から管軸方向に引き出し可能な型とを組み合わせる構成を採用することにより、通路形成部材の内周面、通路壁312および流体通路312aを成形できる。したがって、逆止弁装置103によれば、成形コストの低減を図ることができる。
流体通路312aは、上流に位置する管状部1311側の端部において管状部1311の内周面に対して同等の径方向位置に、筒軸に向けた環状開口面をなすように設けられた流入口316aに連通している。流入口316aの開口面積は、流体通路312aに係る合計横断面積よりも大きく設定されている。この構成によれば、上流側に位置する流入口316aの開口面積の方が下流側の流体通路312aの合計横断面積より大きいため、開弁時の流量が上流側の流路抵抗によって低下してしまうことを回避できる。したがって、弁体32による流体通路312aの開度度合いに応じて流量が可変するため、流量範囲を大きくできる逆止弁装置103を提供できる。
(第3実施形態)
第3実施形態では、逆止弁装置203について図7および図8を参照して説明する。図7、図8において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。以下、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明する。逆止弁装置203は、第1実施形態の蒸発燃料供給システムに適用することができる。
逆止弁装置203は、第1実施形態の逆止弁装置3に対して上流側部材231と下流側部材133とが相違している。図7に示すように、逆止弁装置203は、上流側に設けられる上流側部材231と、上流側部材231とを結合されている下流側部材133と、上流側部材231に支持されている弁体32とを備えている。
図7は、閉弁時の逆止弁装置203を示した断面図である。逆止弁装置203は、蒸発燃料通路を形成する配管に連結されている。上流側部材231はバルブ装置4側の配管71に接続される管状部2311を備えている。上流側部材231は流体が内部を流通する通路形成部材の一つである。管状部2311の内部には、流入通路2311aが形成されている。下流側部材133は吸気管10側の配管71に接続される管状部338を備えている。下流側部材133は流体が内部を流通する通路形成部材の一つである。
逆止弁装置203は、第1実施形態と同様にフランジ部314とフランジ部337とがレーザ溶着や超音波溶着等によって結合されている構成により、外部へ蒸発燃料が漏れ出ないレベルのシール性を有している。筒状部313は、管状部2311とフランジ部314とを一体に連結している。筒状部313には、上流端部に通路壁2312が設けられ、下流端開口の全周から放射状に広がるフランジ部314が設けられている。筒状部313は、下流側部材133の下流側ポート1331と弁体132とを内蔵している。筒状部313の内部は、弁体132の開弁時に、蒸発燃料が上流側部材231から下流側部材133へ流下する蒸発燃料通路の一部を構成する。
下流側部材133は、上流側部材231の内部を流れてきた蒸発燃料をさらに下流側の通路に導く下流側通路を形成する部材である。下流側部材133は、フランジ部337よりも上流側に突出する下流側ポート1331を備えている。下流側ポート1331は、弁部1322よりも蒸発燃料の下流に位置する下流側通路336と、下流側通路336に連通する複数の分岐通路1334とを形成している。下流側通路336は、弁体32が開弁状態であるときに、複数の分岐通路1334を通過してきた蒸発燃料が合流する通路を構成する。
複数の分岐通路1334は、下流側ポート1331において下流側通路336の周囲に等間隔で周方向に並んでそれぞれが放射状に延びる通路である。周方向に並ぶ分岐通路1334は、下流側ポート1331に設けられた仕切り壁によって隣の通路に対して区切られている。図7のように、分岐通路1334における管軸方向についての下流端1334aの位置とフランジ部337において管軸に対して交差する下流側端面337aとに関する管軸方向の間隔X2は、フランジ部337の厚さ寸法X1よりも大きくなるように設定されている。換言すれば、分岐通路1334は、下流端1334aがフランジ部337において管軸に対して交差する上流側端面よりも上流側部材231寄りに位置するように設けられている通路である。
下流側ポート1331には、上流側端部に、弁体132の弁軸部1321を支持する弁支持部1331aが設けられている。弁支持部1331aは、弁軸部1321が貫通されており、大径軸部に接触し弁部1322の下流側面に面する盤状部である。
上流側部材231には、管軸に対して交差する通路壁2312が設けられている。通路壁2312には、貫通穴によって形成されている流体通路2312aが設けられている。流体通路2312aは、流入通路2311aと分岐通路1334とを連通する通路である。流体通路2312aは、径方向について、管状部2311の内周面よりも管軸側または通路壁2312の中心軸側に位置するように設けられている。図7に示すように、流体通路2312aの直径D6は、管状部2311の内周面の内径D5に対して同等、または小さく設定されている。このような構成により、管状部2311の内部を管軸方向に見た場合に、流体通路2312aはその全体が見えるように通路壁2312を貫通している。通路壁2312には、下流側の面に弁座315が設けられている。弁座315は、流体通路2312aに対して径外側に位置する通路壁2312の表面に相当する。
逆止弁装置203は、流体通路2312aの周囲に環状に設定される弁座315に対して接近、離反するように、その中心軸線に沿うように往復直線運動を行う弁体132を備える。弁体132は、弁軸部1321に設けられたストッパ部1323を備えている。弁軸部1321は、下流側ポート1331に固定される軸部であり、往復直線運動の際に変位しないように支持されている。
ストッパ部1323は、弁部1322とは反対側または下流側に設けられて弁軸部1321よりも外径が大きい大径部である。したがって、弁体132は、弁軸部1321、弁部1322、ストッパ部1323および大径軸部が一体となるように形成されるゴム製のバルブである。弁体132は、ストッパ部1323と大径軸部とで弁支持部1331aを挟持して弁軸部1321が下流側ポート1331に支持される構成により、下流側ポート1331に取り付けられている。この取り付け状態では、弁体132は、弁部1322が蒸発燃料による流体圧力に応じて、弾性変形することになる。
弁体132は第1実施形態の弁体32と同様の材質によって形成されている。弁部1322は、図7に図示する閉弁時または無負荷状態では根元部から外周縁にかけて、弁座315側に反り返って接近するような断面湾曲形状に形成されている。弁部1322の外周縁は、流体通路2312aよりも径外側に位置する弁座315の一部に対して線接触する。弁部1322の外周縁は、全周において弁座315に接触する。
弁部1322は、弁部322に作用する流体圧力の向きに応じて、弁部1322の中ほどが弁座315側に変位するように弾性変形したり、外周縁が弁座315から浮き上がるように弾性変形したりする。図7に示すように、弁部1322は、無負荷状態または弁部1322の下流側面に作用する圧力、すなわち逆流方向に作用する圧力が低い低圧時において弾性変形しないか少し変形する程度であるが、外周縁が弁座315に接触しているため、弁部1322は線接触する。
弁部1322の外周縁が全周において弁座315に接触する状態から、吸気マニホールド20側からキャニスタ70側へ向けて逆流が発生すると、弁部1322の下流側面が押されて弁座315側に変位するように弾性変形する。この弾性変形により、弁部1322の外周縁がさらに弁座315を強く押すため、外周縁と弁座315との線接触によるシール力が無負荷状態よりもさらに強くなる。したがって、弁部1322の下流側面の側に低圧力が作用するときには、外周縁と弁座315との線接触によって、流体通路2312aを通じた流体通過を確実に遮断し、低圧時の漏れを抑制できる。
例えば、通常パージ時にピストンの吸入作用によって吸気マニホールド20内に負圧が生じると、弁部1322の下流側面に作用する圧力よりも上流側面に作用する圧力が大きくなる。この場合、弁部1322は全体的に弁座315から離れるように容易に弾性変形するため、弁部1322の外周縁が浮き上がって弁座315から離れるようになる。この弁体132の動作により流体通路2312aが開放されて流入通路2311aと流出通路338aとが連通することで、弁体132は流体通路2312aを通じた流体通過を許容する。そして、キャニスタ70内に吸着された蒸気燃料は、バルブ装置4を通過して流入通路2311aから流体通路2312aに流入し、弁座315と弁部1322の外周縁との隙間を通過して、燃料流出通路を経て吸気マニホールド20内に吸引される。
このように蒸発燃料がエンジンへ供給されるときには、弁部1322よりも下流に位置する下流側通路336は、弁部1322よりも上流側に位置する流体通路2312aに対して負圧になり、流体通路2312aと下流側通路336との圧力差が大きくなる。このとき、流体通路2312aと下流側通路336との圧力差が大きいため、この圧力差に伴う外力が弁部1322に作用して弁部1322が弾性変形して、下流側ポート1331における弁支持部1331aに接近するようになる。
一方、車両の走行時に過給機12が作動する過給時には、吸気マニホールド20内は加圧された吸気によって正圧となるため、弁部1322の下流側面に作用する圧力が上流側面に作用する圧力よりもかなり大きくなる。この場合、弁部1322は全体的に弁座315側に変位するように弾性変形する。特に弁部1322における流体通路2312aに対向する部位が流体通路2312aの内周縁に近づくように大きく変形する。つまり、弁部1322は、流体通路2312aに蓋をするように、根元部分と弁部1322の外周縁との間の部分が逆流方向に凹むように大きく変形する。
以上のように、非過給時に、蒸発燃料がバルブ装置4から吸気マニホールド20に向けて流れる供給方向の流れが生じると、弁部1322の上流側面に作用する流体圧力によって、弁部1322が弾性変形して供給方向に変位して、流体通路2312aが開放される。これにより、蒸発燃料は、流体通路2312aを通過して燃料流出通路、吸気マニホールド20へと流れる。
一方、過給時には、吸気マニホールド20に高い正圧がかかるため、逆止弁装置203には供給方向とは反対向きに流体の圧力が大きくかかる。このため、蒸発燃料がバルブ装置4に向けて逆流する状況になるが、これを逆止弁装置203が防止する。すなわち、正圧によって弁部1322の下流側面に流体圧力が作用して、弁部1322が逆流方向に弾性変形する。これにより、弁部1322が弁座315に密着して流体通路2312aを介した流体流通を遮断する。蒸発燃料は、逆止弁装置203を越えてバルブ装置4側に流入せず、過給時の大気中への蒸発燃料の放出を回避できる。
次に、上流側部材231と下流側部材133について樹脂成形する場合の金型構造について説明する。下流側部材133について樹脂成形する場合の金型構造は、第1実施形態と同様である。図8に示すように、上流側部材231を樹脂成形するための金型装置は、第1型251、第2型252、第3型253および第4型254を少なくとも備えている。第1型251、第2型252、第3型253および第4型254を組み合わせることより、キャビティ、ゲート、ランナを形成することができる。図8は、キャビティに樹脂が充填された状態を断面で示しており、図8においてゲートおよびランナは省略されている。
第1型251は、少なくとも管状部2311の内周面と通路壁2312の上流側部分とを成形し、流入通路2311aを埋めるように設置されている型である。第2型252は、少なくとも筒状部313の内周面と通路壁2312の下流側部分とを成形し、筒状部313の内部空間と流体通路2312aとを埋めるように設置されている型である。第3型253は、少なくとも管状部2311の外周面の一部と筒状部313の外周面の一部とを成形する。第4型254は、少なくとも管状部2311の外周面の残部と筒状部313の外周面の残部とを成形する。第3型253は、管状部2311よりも上流において第1型251に組み合わされ、筒状部313よりも下流において第2型252に組み合わされ、上流側部材231の外側において周方向に第4型254に組み合わされている。第4型254は、管状部2311よりも上流において第1型251に組み合わされ、筒状部313よりも下流において第2型252に組み合わされ、上流側部材231の外側において周方向に第3型253に組み合わされている。
上流側部材231の素材である樹脂は、溶融された状態で射出成形機からスプルーに供給され、さらにランナを通じてゲートからキャビティに充填される。型装置に溶融樹脂を注入しているときには、第1実施形態と同様にゲートとは反対側からガスを逃がすようにキャビティ内のガス抜きを行う。
金型装置の内部で溶融樹脂を固化させて形成した樹脂成形品は、一体化された、上流側部材231とゲート部とランナ部とスプルー部とを備えている。金型装置から樹脂成形品を取り出す型開きは、図8に示すように行われる。型開きは、第1型251を管軸に沿って矢印方向に引き出し、第2型252を第1型251とは反対方向に引き出し、第3型253を径外側に矢印方向に引き出し、第4型254を第3型253とは異なる方向、例えば反対方向に引き出すことにより行われる。流体通路2312aを形成している第2型252の部分と第1型251の部分とが管状部2311の内周面よりも管軸側の径方向位置において型合わせされている構成であるので、第1型251と第2型252のそれぞれをスムーズに引き出すことができる。金型装置が備えるこのような構成により、型を開く方向のみによって離型できるので、流体通路2312aを形成するために第1型251と第2型252の他にスライドコア等の分割型を用いる必要がなく、型数を抑えることができる。
逆止弁装置203は、通路形成部材内に管状部2311の管軸に交差するように設けられて流体通路2312aと弁座315とを有する通路壁2312と、流体による圧力の向きに応じて流体通路2312aの流体通過を遮断、許容する弁体132とを備える。流体通路2312aは、管状部2311の内周面よりも管状部2311の管軸寄りの径方向位置において通路壁2312を管軸に沿う方向に貫通している通路である。
この逆止弁装置203によれば、管状部2311の内周面に対してアンダーカット形状にならないように流体通路2312aを形成することができる。図7に示すように、管状部2311の開口端から管軸方向に引き出し可能な型と、反対側である筒状部313の開口端から管軸方向に引き出し可能な型とを組み合わせる構成により、通路形成部材の内周面、通路壁2312および流体通路2312aを成形できる。したがって、逆止弁装置203によれば、型数の抑制、成形工程の低減をもたらし、成形コストの低減が図れる逆止弁装置を提供できる。
通路形成部材は、上流側に設けられて管状部2311を有する上流側部材231と、上流側部材231とは別個の部材であって上流側部材231に結合されている下流側部材133とを備える。下流側部材133は、上流側部材231に結合されているフランジ部337と、少なくとも外周側の開口部と内周側の開口部とを有して流体通路2312aに連通する分岐通路1334とを備える。分岐通路1334は、分岐通路1334における管軸に沿う方向についての下流端1334aがフランジ部337において管軸に対して交差する上流側端面よりも上流側に位置するように設けられている通路である。
この構成によれば、下流側部材133においても、アンダーカット形状にならない分岐通路1334を形成することができる。金型装置において、径外方向に引き出し可能な型と径外方向に引き出し可能な型とを周方向に組み合わせる構成により、フランジ部337を含む下流側部材133の外周面および分岐通路1334を成形できる。したがって、下流側部材133の成形において型数の抑制、成形工程の低減をもたらし、成形コストの低減が図れる逆止弁装置203を提供できる。
弁体132は、下流側部材133に支持されている弁軸部1321と、下流側部材133から上流側部材231に向けた流体圧力が作用した場合に弁座315に着座する弁部1322とを備える。流体通路2312aは、弁座315の内側において通路壁2312を貫通している通路である。この構成によれば、管状部2311の内周面に対してアンダーカット形状にならない流体通路2312aを弁座315の内側に有して、逆止弁装置203において成形コストの低減を図ることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、逆止弁装置303について図9〜図11を参照して説明する。各図において、前述の実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、前述の実施形態と同様である。逆止弁装置303は、第1実施形態の蒸発燃料供給システムに適用することができる。
逆止弁装置303は、第2実施形態の逆止弁装置103に対して下流側部材233が相違している。図9に示すように、逆止弁装置303は、上流側に設けられる上流側部材131と、上流側部材131とを結合されている下流側部材233と、上流側部材131に支持されている弁体32とを備えている。図9は、閉弁時の逆止弁装置303を示した断面図である。逆止弁装置303は、蒸発燃料通路を形成する配管に連結されている。
逆止弁装置303は、第1実施形態と同様にフランジ部314とフランジ部337とがレーザ溶着や超音波溶着等によって結合されている構成により、外部へ蒸発燃料が漏れ出ないレベルのシール性を有している。下流側部材233は、上流側部材131の内部を流れてきた蒸発燃料をさらに下流側の通路に導く下流側通路を形成する通路形成部材の一つである。下流側部材233は、フランジ部337よりも上流側に突出する下流側ポート2331を備えている。下流側ポート2331は、弁部322よりも蒸発燃料の下流に位置する下流側通路336と、下流側通路336に連通する複数の分岐通路334とを形成している。下流側通路336は、弁体32が開弁状態であるときに、複数の分岐通路334を通過してきた蒸発燃料が合流する通路を構成する。
図10に示すように、複数の分岐通路334は、下流側ポート2331において下流側通路336の周囲に等間隔で周方向に並んでそれぞれが放射状に延びる通路である。周方向に並ぶ分岐通路334は、下流側ポート2331に設けられた仕切り壁339によって隣の通路に対して区切られている。下流側ポート2331は、下流側通路336の周囲に円周方向に交互に並ぶ分岐通路334と仕切り壁399とを有している。複数の仕切り壁399は、周方向に間隔をあけて円環状に並んでいる。複数の分岐通路334は、複数の仕切り壁399によって形成されている円環状の外周側から内周側に向けて延びる通路である。下流側通路336は、複数の仕切り壁399によって形成されている円環状の内側空間から下流に向けて管軸方向に延びる通路である。逆止弁装置303が備える弁体は、第2実施形態の弁体32と同様の構成である。
次に、下流側部材233について樹脂成形する場合の金型構造について図11を参照して説明する。上流側部材131について樹脂成形する場合の金型構造は、第2実施形態と同様である。図11に示すように、下流側部材233を樹脂成形するための金型装置は、第1型155、第2型156、第3型157および第4型158を少なくとも備えている。第1型155、第2型156、第3型157および第4型158を組み合わせることより、キャビティ、ゲート、ランナを形成することができる。図11は、キャビティに樹脂が充填された状態を断面で示しており、図11においてゲートおよびランナは省略されている。
第1型155は、少なくとも下流側ポート2331の仕切り壁399を成形し、分岐通路334と下流側通路336とを埋めるように設置されている型である。第2型156は、少なくとも下流側ポート2331の内周面における下流側部分と管状部338の内周面とを成形し、下流側通路336の下流側部分と流出通路338aとを埋めるように設置されている型である。第3型157は、少なくともフランジ部337の一部と管状部338の外周面の一部とを成形する。第4型158は、少なくともフランジ部337の残部と管状部338の外周面の残部とを成形する。第3型157は、フランジ部337よりも上流において第1型155に組み合わされ、管状部338よりも下流において第2型156に組み合わされ、下流側部材233の外側において周方向に第4型158に組み合わされている。第4型158は、フランジ部337よりも上流において第1型155に組み合わされ、管状部338よりも下流において第2型156に組み合わされ、下流側部材233の外側において周方向に第3型157に組み合わされている。
下流側部材233の素材である樹脂は、溶融された状態で射出成形機からスプルーに供給され、さらにランナを通じてゲートからキャビティに充填される。金型装置に溶融樹脂を注入しているときには、前述した下流側部材33の場合と同様にキャビティ内のガス抜きを行う。
金型装置から樹脂成形品を取り出す型開きは、図11に示すように行われる。型開きは、第1型155を管軸に沿って矢印方向に引き出し、第2型156を第1型155とは反対方向に引き出し、第3型157を径外側に矢印方向に引き出し、第4型158を第3型157とは異なる方向、例えば反対方向に引き出すことにより行われる。
このとき第1型155を管軸方向に引き出すことにより、分岐通路334を形成できる。このように型を開く方向のみによって離型できるため、分岐通路334を形成するために他にスライドコア等の分割型を用いる必要がなく、型数を抑えることができる。このような型開きによって金型から取り出した樹脂成形品について、例えばレーザ照射装置から出力されるレーザによりゲート部を切断することにより、樹脂成形品から下流側部材233だけを取り出すことができる。
(第5実施形態)
第5実施形態では、逆止弁装置403について図12を参照して説明する。図12において、第1実施形態、第3実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第5実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、前述の実施形態と同様であり、以下、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明する。逆止弁装置403は、第1実施形態の蒸発燃料供給システムに適用することができる。
図12は、閉弁時の逆止弁装置403を示した断面図である。図12に示すように、逆止弁装置403は、第3実施形態の逆止弁装置203に対して、弁体132の弁軸部1321における上流側端部に対して軸方向に対向する変位規制部4312を備える点が相違している。変位規制部4312は、例えば、弁座315よりも通路壁2312の中心軸側において周方向に並ぶ複数の突部である。複数の突部よりも通路壁2312の中心軸側と周方向に隣接する突部間とには、流体通路2312aの下流側部分をなす突部間通路4312bが設けられている。突部間通路4312bは流体通路2312aの上流側部分と分岐通路1334とを連通する通路である。
変位規制部4312は、通路壁2312の中心軸側に向けて突出する複数の径内方向突部と、各径内方向突部から下流へ突出する下流側突部4312aとを有する。下流側突部4312aは、通路壁2312よりも弁体132側に突出している。下流側突部4312aは、弁軸部1321における上流側端部に対して軸方向に対向している。図12に示すように、弁部1322が弁座315に着座している状態において、下流側突部4312aと弁軸部1321における上流側端部とは離間する位置関係にある。この構成によれば、弁軸部1321が図12に示す位置よりも弁支持部1331aに対して上流側に大きく変位すると、下流側突部4312aと弁軸部1321とが接触することにより、弁体132の軸方向変位を規制することができる。変位規制部4312は、弁体132の抜け止め防止部としての機能を有する。
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
前述の実施形態において上流側部材31の外周面や下流側部材33の外周面等を形成する型の個数は、第3型および第4型の2個に限定するものではない。各部材の外周面等は3個以上の型を組み合わせて形成される構成でもよい。
この明細書に開示の目的を達成可能な逆止弁装置は、前述の実施形態だけに限定されず、前述の各実施形態において示した金型装置の構成は一つの例にすぎない。各型の形状、型の個数、型合わせ位置などは、前述の実施形態に限定されるものではない。