JP2020094148A - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粒径が制御され、ハンドリング性の優れたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。【解決手段】本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法は、前段重合工程と、前記前段重合工程後に、前記反応混合物に相分離剤及び有機極性溶媒を添加する添加工程と、前記添加工程後に、重合反応を継続する後段重合工程と、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
ポリアリーレンスルフィド(以下、「PAS」と略記する場合がある)の製造において、重合工程の途中で溶媒を添加することが知られている。例えば、特許文献1には、重合後期に極性有機溶媒を添加することにより、スケールの生成および反応器へのスケール付着が防止できることが開示されている。
また、特許文献2には、第1段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドを非プロトン性有機溶媒中に溶解させた溶液中に、非プロトン性有機溶媒を添加して、第2段階の重合をするポリアリーレンスルフィドの製造方法が開示されている。また、該製造方法によって、高粘度で成形性に優れたポリアリーレンスルフィドを特別な重合助剤、反応器を必要とせず、安価に提供することができることが開示されている。
特開平1−306425号公報 特開平9−278887号公報
しかしながら、上述のような従来技術では、濃度の高い原料を使用した場合、製造されたポリアリーレンスルフィドの粒径が大きくなり、ハンドリング性が悪いという問題がある。
よって、本発明の課題は、粒径が制御され、ハンドリング性の優れたポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法は、有機極性溶媒中で、硫黄源及びジハロ芳香族化合物を含有する混合物を加熱して重合反応を開始させ、プレポリマーを含有する反応混合物を生成する前段重合工程と、
前記前段重合工程後に、前記反応混合物に相分離剤及び有機極性溶媒を添加する添加工程と、
前記添加工程後に、重合反応を継続する後段重合工程と、を含む、
ポリアリーレンスルフィドの製造方法である。
本発明の一態様によれば、粒径が制御され、ハンドリング性の優れたポリアリーレンスルフィドを製造することができる。
本発明の一態様に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法は、有機極性溶媒中で、硫黄源及びジハロ芳香族化合物を含有する混合物を加熱して重合反応を開始させ、プレポリマーを含有する反応混合物を生成する前段重合工程と、
前記前段重合工程後に、前記反応混合物に相分離剤及び有機極性溶媒を添加する添加工程と、
前記添加工程後に、重合反応を継続する後段重合工程と、を含む、
ポリアリーレンスルフィドの製造方法である。
〔使用化合物〕
本実施形態におけるポリアリーレンスルフィドの製造方法の説明に先立って、本実施形態におけるポリアリーレンスルフィドの製造方法において使用する化合物等について説明する。
(1.硫黄源)
本実施形態では、PAS製造の硫黄源として、硫化水素、アルカリ金属硫化物若しくはアルカリ金属水硫化物又はこれらの混合物を使用する。
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれらの2種以上の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、工業的に安価に入手可能であって、かつ、取り扱いが容易であることなどの観点から、アルカリ金属硫化物としては硫化ナトリウムが好ましい。
アルカリ金属水硫化物としては、例えば、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で、水硫化ナトリウムおよび水硫化リチウムが好ましい。
(2.ジハロ芳香族化合物)
PAS製造の原料として使用されるジハロ芳香族化合物は、芳香環に直接結合した2個のハロゲン原子を有するジハロゲン化芳香族化合物である。ジハロ芳香族化合物の具体例としては、例えば、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド及びジハロジフェニルケトンが挙げられる。これらのジハロ芳香族化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ここで、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択され、好ましくは塩素である。1つのジハロ芳香族化合物における2つのハロゲン原子は、互いに同じでも異なっていてもよい。
(3.有機極性溶媒)
PAS製造の原料として使用される有機極性溶媒として、有機アミド溶媒;有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒;環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒が挙げられる。
有機アミド溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド等のN,N−ジアルキルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド等のN,N−ジアルキルアセトアミド;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−ε−カプロラクタム、N−プロピル−ε−カロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」とも称する。)、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン又はN−シクロアルキルピロリドン;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N,N’−ジエチルイミダゾリジノン、N,N’−ジプロピルイミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド等が挙げられる。本発明において、重合溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、ヘキサメチレンスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等のスルホン;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシドが挙げられる。
環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、1−メチル−1−オキソホスホラン等が挙げられる。
これらの有機極性溶媒の中でも、有機アミド溶媒が好ましく、N−アルキルピロリドン化合物、N−シクロアルキルピロリドン化合物、N−アルキルカプロラクタム化合物及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物がより好ましく、NMP、N−メチル−ε−カプロラクタムおよび1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンがさらに好ましく、NMPが特に好ましい。
(4.相分離剤)
本明細書において、相分離剤とは、それ自身でまたは少量の水の共存下に、有機極性溶媒に溶解し、PASの有機極性溶媒に対する溶解性を低下させる作用を有する化合物である。相分離剤それ自体は、PASの溶媒ではない化合物である。
相分離剤としては、PASの相分離剤として公知の化合物を用いることができる。相分離剤には、後述する重合助剤として使用される化合物も含まれるが、本明細書における相分離剤とは、相分離重合反応で相分離剤として機能し得る量比で用いられる化合物を意味する。相分離剤は、大きく分けて、水および水以外の相分離剤がある。水以外の相分離剤の具体例としては、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩およびハロゲン化リチウムなどのアルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類ならびにパラフィン系炭化水素類などが挙げられる。有機カルボン酸金属塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウムおよびp−トルイル酸カリウムなどのアルカリ金属カルボン酸塩が好ましい。これらの相分離剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの相分離剤の中でも、コストが安価で、後処理が容易であるという観点から、水、または水とアルカリ金属カルボン酸塩などの有機カルボン酸金属塩との組み合わせが、特に好ましい。
(5.アルカリ金属水酸化物)
硫黄源にアルカリ金属水硫化物又は硫化水素を含む場合、アルカリ金属水酸化物を併用する。また、硫黄源としてアルカリ金属水硫化物のみを使用する場合にも、後述するように、脱水工程においてアルカリ金属水酸化物を添加する場合がある。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、工業的に安価に入手可能なことから、水酸化ナトリウムが好ましい。
ジハロ芳香族化合物としては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼンまたはこれらの2種以上の混合物が好適に使用される。
(6.重合助剤)
また、本実施形態においては、必要に応じて得られるポリマーの分子量を増大させる作用を有する重合助剤を用いることができる。
このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩等が挙げられる。なかでも有機カルボン酸塩が好ましく用いられる。より具体的には、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウムおよびp−トルイル酸ナトリウム等が挙げられる。有機カルボン酸塩は1種または2種以上を同時に用いることができる。なかでも酢酸リチウムおよび/または酢酸ナトリウムが好ましく用いられ、安価で入手しやすいことから酢酸ナトリウムがより好ましく用いられる。
〔ポリアリーレンスルフィドの製造方法〕
次に、ポリアリーレンスルフィドの製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態における製造方法では、前段重合工程の前工程として、脱水工程および仕込み工程を含み、後段重合工程の後工程として、冷却工程および後処理工程を含んでいてもよい。
<脱水工程>
脱水工程は、重合反応に用いる原料に含まれる水分の少なくとも一部を除去する工程である。硫黄源は、水和水(結晶水)などの水分を含んでいることが多い。また、硫黄源及びアルカリ金属水酸化物を好ましい形態である水性混合物として使用する場合には、媒体として水を含有している。硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合反応は、重合反応系内に存在する水分量によって影響を受ける。そこで、本実施形態では、重合工程前に脱水工程を配置して、重合反応系内の水分量を調節している。
本実施形態では、脱水工程において、有機極性溶媒と、アルカリ金属水酸化物を含み得る硫黄源とを含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から、水分を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する。なお、ここでの有機極性溶媒は、脱水工程における媒体として用いるものである。しかしながら重合反応での媒体と同じ有機極性溶媒であることから、脱水工程で使用する有機極性溶媒は、重合工程で使用する有機極性溶媒と同一のものであることが好ましい。なかでも、工業的に入手が容易であることからNMPがより好ましい。
脱水は、有機極性溶媒も含め、脱水に供する原料を反応槽内に投入した後、これらを含有する混合物を加熱する方法により行われる。加熱の条件としては、例えば300℃以下、好ましくは100〜250℃の温度範囲内で、例えば15分間から24時間、好ましくは30分間〜10時間であり得る。
投入する有機極性溶媒の量は、投入時の硫黄源1モル当たり100〜1000g、好ましくは、150〜750g、より好ましくは200〜500gである。
硫黄源が、アルカリ金属硫化物以外の硫黄源を含む場合、アルカリ金属水酸化物を添加する。添加量は、硫黄源をアルカリ金属硫化物に転化するのに必要な量である。すなわち、硫黄源がアルカリ金属水硫化物のみを含む場合、アルカリ金属水硫化物に対して等モルのアルカリ金属水酸化物を添加する。
そのうえで、投入時の硫黄源1モル当たりの投入時のアルカリ金属水酸化物のモル量は、0.75〜1.1モルに調整することが好ましい。ここで、アルカリ金属硫化物を硫黄源として使用している場合は、これと等モルのアルカリ金属水酸化物が含まれているものとして計算する。すなわち、アルカリ金属水酸化物/硫黄源として1超過で条件を設定する場合は、設定値に対して不足している分のアルカリ金属水酸化物を加えて調節し、1未満の条件で設定する場合は、設定値に対して超過している分と等モルのアルカリ金属水硫化物を添加して調整する。例えば、アルカリ金属水酸化物/硫黄源として1.075で条件を設定する場合に、硫黄源としてアルカリ金属硫化物のみを使用する際は、既に1の量のアルカリ金属水酸化物が含まれているとするので、0.075の量のアルカリ金属水酸化物を添加することになる。
脱水工程では、加熱により水および有機極性溶媒の一部が系外に留出する。したがって、留出物には、水と有機極性溶媒とが含まれる。有機極性溶媒の系外への排出を抑制するために、留出物の一部は系内に環流してもよい。しかしながら混合物中の水分量を調節するために、水を含む留出物の少なくとも一部は系外に排出する。
脱水工程では、硫黄源に起因する硫化水素が揮散する場合がある。この場合、水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出するのに伴い、揮散した硫化水素も系外に排出されることになる。系外に排出された硫化水素を回収し、系内に戻してもよい。
脱水工程では、水和水、水媒体および副生水などの水分を所望の範囲内になるまで脱水する。脱水工程で水分量が少なくなり過ぎた場合は、次に述べる仕込み工程で水を添加して所望の水分量に調節することができる。また、揮散した硫黄源が多い場合は、仕込み工程で硫黄源を補填してもよい。
<仕込み工程>
仕込み工程は、脱水工程後に系内に残存する混合物を用いて、所望量の有機極性溶媒、硫黄源、必要に応じたアルカリ金属水酸化物、水分およびジハロ芳香族化合物を含有する混合物(以下、「仕込み混合物」という)を調製する工程である。調製した仕込み混合物を用いて、その後の重合反応が行われる。
なお、本明細書において、仕込み混合物中の硫黄源の量について言及する場合には、「仕込み硫黄源」と表現する。これは、脱水工程中の揮散により、脱水工程において投入した硫黄源の量と、仕込み混合物中の硫黄源の量とが異なり得るため、これらを区別するためである。すなわち、本実施形態において、仕込み硫黄源の量は、仕込み工程で補填する場合を除き、脱水工程で投入した硫黄源のモル量から、脱水工程で揮散した硫化水素のモル量を引くことによって算出することができる。また、脱水工程で投入した硫黄源が、硫化水素、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物から選択される2以上の化合物の混合物である場合には、これらの総モル量を硫黄源のモル量として扱う。
仕込み混合物のジハロ芳香族化合物は、仕込み硫黄源1モル当り0.9〜1.5モルとすることが好ましく、0.92〜1.10モルとすることがより好ましく、0.92〜1.05モルとすることがさらに好ましくい。
好適な反応条件にするためには、水分量の調整が重要である。前段重合工程において、水分としての共存水分量が少なすぎると、生成ポリマーの分解反応など好ましくない反応が起こり易くなる。一方、共存水分量が多すぎると、重合反応速度が著しく遅くなったり、分解反応が生じたりする。以上の観点から、仕込み混合物中の水分量は、仕込み硫黄源1モル当たり、0.5〜2.4モルに調整することが好ましく、0.8〜2.0モルに調整することがより好ましく、1.0〜1.8モルに調整することがさらに好ましい。この場合、水分の量は、脱水工程でのアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物との反応によるアルカリ金属硫化物の生成に伴って生じ得る水分、脱水工程でのアルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物からの硫化水素の揮散に伴って消費する水分を考慮して調整する必要がある。
したがって、仕込み混合物の好ましい一態様は、ジハロ芳香族化合物が、仕込み硫黄源1モル当り0.92〜1.05モル含まれており、水分量が、仕込み硫黄源1モル当り1.0〜1.8モルに調整されているものである。
また、仕込み混合物中のアルカリ金属水酸化物は、仕込み硫黄源1モル当たり好ましくは0.95〜1.075モルであり、より好ましくは0.98〜1.070モルであり、さらに好ましくは0.99〜1.065モルであり、特に好ましくは1.0〜1.06モルである。この場合、アルカリ金属水酸化物の量は、脱水工程で投入したアルカリ金属水酸化物、脱水工程で揮散する硫化水素の生成に伴って生成するアルカリ金属水酸化物および仕込み工程で添加するアルカリ金属水酸化物の合計量である。アルカリ金属硫化物を硫黄源として使用している場合は、これと等モルのアルカリ金属水酸化物が含まれるものとして計算する。設定値に対してアルカリ金属水酸化物が不足している場合には、設定値に対して不足している分のアルカリ金属水酸化物を加えて調節し、アルカリ金属水酸化物の量が設定値を超えている場合は、設定値に対して超過している分と等モルのアルカリ金属水硫化物を添加して調整する。仕込み硫黄源に対するアルカリ金属水酸化物のモル比を上述の範囲に調整することにより、有機極性溶媒の変質を抑え、重合時の異常反応の発生を防ぐことができる。さらに、生成する分岐型PASの収率の低下および品質の低下の招来を抑えることができる。
仕込み混合物中の有機極性溶媒の量は、仕込み硫黄源1モル当たり100〜1000g、好ましくは、150〜750g、より好ましくは200〜500gである。
仕込み混合物における各成分の量比(モル比)の調整は、脱水工程で得られた混合物中に、必要な成分を添加することにより行う。ジハロ芳香族化合物は、仕込み工程で混合物中に添加する。脱水工程で得られた混合物中のアルカリ金属水酸化物および水の量などが少ない場合には、仕込み工程でこれらの成分を追加する。脱水工程で有機極性溶媒の留出量が多すぎる場合は、仕込み工程で有機極性溶媒を追加する。また、仕込み硫黄源を調整するために仕込み工程で硫黄源を追加させてもよい。したがって、仕込み工程では、ジハロ芳香族化合物に加えて、必要に応じて、硫黄源、有機極性溶媒、水およびアルカリ金属水酸化物を添加してもよい。
<前段重合工程>
前段重合工程では、有機極性溶媒中で、硫黄源及びジハロ芳香族化合物を含有する混合物を加熱して重合反応を開始させ、プレポリマーを含有する反応混合物を生成する。
前段重合工程における温度は、副反応の抑制の観点から、170〜280℃であることが好ましく、170〜260℃であることがより好ましく、170〜240℃であることが特に好ましい。また、前段重合工程における反応時間は、好ましくは2〜10時間であり、より好ましくは2〜8時間であり、さらに好ましくは2〜6時間程度である。
(ジハロ芳香族化合物の転化率)
前段重合工程で得られる反応混合物について、ジハロ芳香族化合物の転化率が好ましくは50〜98モル%、より好ましくは65〜96モル%、さらに好ましくは70〜95モル%のプレポリマーを含有することが好ましい。ジハロ芳香族化合物の転化率が上述の範囲内であると、プレポリマーの分子量が高くなり、高分子量化しやすいという効果を奏する。
ジハロ芳香族化合物の転化率は、反応混合物中に残存するジハロ芳香族化合物の量をガスクロマトグラフィにより求め、その残存量とジハロ芳香族化合物の仕込み量と硫黄源の仕込み量とに基づいて算出することができる。具体的には、ジハロ芳香族化合物を「DHA」で表すと、ジハロ芳香族化合物を硫黄源に対してモル比で過剰に添加した場合は、下記式1:
転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕 (1)
により転化率を算出することができる。上記以外の場合には、下記式2:
転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕 (2)
により転化率を算出することができる。なお、上記式(1)における「DHA過剰量」は、硫黄源に対するジハロ芳香族化合物の過剰分である。よって、上記式(1)における〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕は、実質的に仕込み硫黄源の量(モル)に等しい。
<添加工程>
添加工程では、前段重合工程後に、前記反応混合物に相分離剤及び有機極性溶媒を添加する。
相分離剤として水を用いる場合には、反応混合物中に存在する水分との合計で、仕込み硫黄源1モル当たり2モル超過10モル以下となるように添加することが好ましく、高分子量化および重合時間の短縮の観点から2.3〜7モルとなるように添加することがより好ましく、2.5〜5モルとなるように添加することがさらに好ましい。
相分離剤として水と水以外の相分離剤との混合物を用いる場合には、水は、反応混合物中に存在する水分との合計で、仕込み硫黄源1モル当たり0.01〜7モルとなる量であることが好ましく、0.1〜6モルとなる量であることがより好ましく、1〜4モルとなる量であることがさらに好ましい。一方、水以外の相分離剤の量は、仕込み硫黄源1モル当たり0.01〜3モルであることが好ましく、0.02〜2モルであることがより好ましく、0.03〜1モルであることがさらに好ましい。
本実施形態においては、前段重合工程で得られた反応混合物に相分離剤を添加する際、反応混合物中のアルカリ金属水酸化物の合計量が仕込み硫黄源1モル当たり1.00〜1.09モルとなるように、アルカリ金属水酸化物を添加する。硫黄源としてアルカリ金属硫化物を使用している場合には、これと等モルのアルカリ金属水酸化物が既に含まれるものとして計算する。アルカリ金属水酸化物の量が設定値を下回っている場合には、設定値に対して不足している分のアルカリ金属水酸化物を加えて調節し、アルカリ金属水酸化物の量が設定値を超えている場合は、設定値に対して超過している分と等モルのアルカリ金属水硫化物を添加して調整する。アルカリ金属水酸化物を添加することにより、この後の重合反応を安定的に進めることができる。
添加工程において、反応混合物に有機極性溶媒を添加することによって、前段重合工程で生じた不純物が有機極性溶媒に溶融し、製造されるPAS中に不純物が取り込まれるのを防ぐことができる。
また、添加工程において、反応混合物に相分離剤も添加することによって、添加した有機極性溶媒中にPASが溶け難くなる。したがって、PASの濃度が高い相(以下、PAS相と略記する)とPASの濃度が薄い相(以下、有機極性溶媒相と略記する)に分離する。そして、添加した有機極性溶媒によって、有機極性溶媒相が多い。その結果、不純物は有機極性溶媒相で溶解し、不純物量が減ったPAS相で重合が促進され、高分子量のPASを高収率で製造することができる。
さらに、相分離剤だけなく、有機極性溶媒を添加することで、有機極性溶媒相が多くなり、相分離後のスラリー中のPAS相割合が低くなる。そして、造粒時には、PAS相の液滴の分散性が高くなり、ハンドリング性に優れたPASを得ることができる。
したがって、添加工程において、反応混合物に相分離剤および有機極性溶媒を添加することによって、溶融粘度が高く、すなわち分子量が高いPASを得ることができる。さらに、粒子径が制御され、ハンドリング性に優れたPASを得ることができる。相分離剤のみでは、実施例に示す通り、製造されるPASの溶融粘度および収率が低い。また、有機極性溶媒のみでは、製造されるPASの収率が低い。
(有機極性溶媒の量)
前段重合工程の有機極性溶媒を100質量部としたときに、添加工程の有機極性溶媒の添加量が5質量部未満であることが好ましく、4.95質量部未満であることがより好ましく、4.9質量部未満であることがさらに好ましい。添加工程の有機極性溶媒の添加量が上記範囲内であると、副生物が少なく、高収率であるかつハンドリング性に優れたPASという効果を奏する。
相分離剤と有機極性溶媒を添加するタイミングは、同じであっても異なっていてもよい。また、添加するタイミングが異なる場合、添加する順番は相分離剤が先であってもよく、有機極性溶媒が先であってもよい。
<後段重合工程>
後段重合工程では、添加工程後に、重合反応を継続する。後段重合工程は、以下の第1重合工程、第2重合工程及び第3重合工程を含むことが好ましい。後段重合工程が3段階重合であることにより、得られるPASの粒子径を小さくすることができるという効果を奏する。以下、各工程について説明する。
(第1重合工程)
第1重合工程では、添加工程後に所定の第1の温度(T)で保持して重合反応を継続する。
は、240℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、255℃以上がさらに好ましい。また、290℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、270℃以下がさらに好ましい。なお本明細書において「所定の第Xの温度に保持」とは、所定の第Xの温度としてT℃を設定した場合、温度をT℃±3℃の範囲内に維持して保持することを指す。
上記温度範囲で第1重合工程を行うと、相分離剤存在下で高温に制御されるため、反応系は液−液相分離状態となり、相分離状態で重合反応を行うことができる。
所定の第1の温度での保持時間は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましい。保持時間の上限は総重合時間の短縮化の点で、300分以下が好ましく、240分以下がより好ましい。所定の第1の温度で10分間以上保持して重合を行うことにより、より短時間で高分子量化することができる。
(第2重合工程)
第2重合工程では、第1重合工程後に、所定の第2の温度(T)で保持して重合反応を継続する。
は、粒子状PASを得る観点から、好ましくは235℃以上であり、より好ましくは237℃以上である。また、PASの粒子径の肥大防止の観点から245℃以下であることが好ましく、243℃以下がより好ましい。
上記温度範囲で第2重合工程を行うと、第1重合工程に引き続き、高温を維持することにより、相分離状態が維持された状態で重合反応が継続される。また、本重合工程で粒子化させる。重合途中でPASを粒子状化することで、粒子径の小さいPASを形成できる。
第1重合工程の重合温度(T)および第2重合工程の重合温度(T)の関係は、重合時間の短縮の観点から、T−Tは5℃より高いことが好ましく、T−Tは15℃より高いことがより好ましく、20℃より高いことがさらに好ましい。また、PASの分解抑制の観点から、T−Tは好ましくは55℃未満であり、より好ましくは40℃未満であり、さらに好ましくは30℃未満である。
所定の第2の温度での保持時間は、重合時間の短縮の観点から、2時間未満であることが好ましく、1時間以下がより好ましく、0.5時間以下であることさらに好ましい。また、粒子を形成させるために下限は0.1時間以上であることが好ましい。
(第3重合工程)
第3重合工程では、第2重合工程後に、所定の第3の温度(T)で重合反応を継続する。
第3重合工程の重合温度である所定の第3の温度(T)は、重合時間の短縮の観点から、240℃以上であることが好ましく、242℃以上であることがより好ましく、244℃以上であることがさらに好ましい。また、PASの粒子径の肥大化抑制の観点から、250℃以下であることが好ましく、248℃以下であることがより好ましく、246℃以下であることがさらに好ましい。250℃を超えると、第2重合工程で形成されたPAS粒子が再融解し、PAS粒子が肥大化する可能性がある。
上記の温度範囲で第3重合工程を行うと、後段重合工程の重合時間をより短縮することができる。
第1重合工程の重合温度(T)および第3重合工程の重合温度(T)の関係は、T>Tであることが好ましい。これにより、粒子が溶融せず、粒子形状を維持することができる。ここで、重合時間の短縮の観点から、T−Tは好ましくは5℃より高く、より好ましくは10℃より高く、さらに好ましくは15℃よい高い。また、PASの分解帽子の観点から、T−Tは好ましくは50℃未満であり、より好ましくは25℃未満であり、さらに好ましくは20℃未満である。
また、第2重合工程の重合温度(T)および第3重合工程の重合温度(T)の関係は、T>Tであることが好ましい。
(T、T、及びT
本実施形態に係るPASの製造方法において、T、T、及びTの関係が、T>T>Tであることが好ましい。T>T>Tであることにより、より短時間で粒子径の小さい高分子量PASを得ることができる。T>Tは粒子径の小さいPASを形成し、T>T>Tによって、粒子径を維持しまま重合反応を促進させることが可能となり、重合時間の短縮となる。
所定の第3の温度での保持時間は、総重合時間の短縮化の観点から、20時間未満であることが好ましく、15時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることがさらに好ましい。また、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、5時間であることがさらに好ましい。
(第1重合工程、第2重合工程、および第3重合工程の合計重合時間)
第1重合工程での重合時間、第2重合工程の重合時間および第3重合工程の重合時間との合計は、総重合時間の短縮化の観点から、30時間以下であることが好ましく、25時間以下がより好ましく、20時間以下がさらに好ましい。
〔ポリアリーレンスルフィドの物性〕
本実施形態に係るPASの製造方法によって、高い溶融粘度のPASを得ることができる。本明細書における溶融粘度は、温度310℃および剪断速度1216sec−1で測定した溶融粘度である。本実施形態に係るPASの製造方法によって得られるPASの溶融粘度は、好ましくは150Pa・s以上であり、より好ましくは160Pa・s以上であり、さらに好ましくは180Pa・s以上である。リニア型PASの溶融粘度が高いと、靭性等が優れるという効果を奏する。溶融粘度は例えば、乾燥ポリマー約20gを用いてキャピログラフを使用して、所定の温度および剪断速度条件で測定することができる。
本発明に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法で得られるPASの平均粒子径は、ハンドリング性の観点から好ましくは200μm以上、より好ましくは400〜1500μm、さらに好ましくは500〜1000μm、粒子径が肥大化していないことで、ハンドリング性がよくなる。また、粒子径が肥大化しないことにより、装置の洗浄が容易になり、配管の閉塞を抑制することができる。さらに、PASの粒子径の肥大化が抑制されるため、硫黄源及びジハロ芳香族化合物等の原料の濃度が高くても、ハンドリング性の優れたPASを得ることができる。
[まとめ]
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法は、
有機極性溶媒中で、硫黄源及びジハロ芳香族化合物を含有する混合物を加熱して重合反応を開始させ、プレポリマーを含有する反応混合物を生成する前段重合工程と、
前記前段重合工程後に、前記反応混合物に相分離剤及び有機極性溶媒を添加する添加工程と、
前記添加工程後に、重合反応を継続する後段重合工程と、を含む。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記前段重合工程の有機極性溶媒を100質量部としたときに、前記添加工程の有機極性溶媒の添加量が5質量部未満であることが好ましい。
また、本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、
前記後段重合工程は、
前記添加工程後に240℃以上、290℃以下の所定の第1の温度(T)で10分以上保持して重合反応を継続する第1重合工程と、
前記第1重合工程後に、235℃以上、245℃以下の所定の第2の温度(T)で2時間未満保持して重合反応を継続する第2重合工程と、
前記第2重合工程後に、240℃以上、250℃未満の所定の第3の温度(T)で重合反応を継続する第3重合工程と、を含み、
前記T、T、及びTの関係が、T>T>Tであることが好ましい。
また、本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記ポリアリーレンスルフィドにおける、温度310℃および剪断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が150Pa・s以上であることが好ましい。
また、本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記前段重合工程では、前記ジハロ芳香族化合物の転化率が50〜98モル%となるまで重合を行うことが好ましい。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
〔測定方法〕
(1)平均粒子径
粒状PASの平均粒子径は、使用篩として、篩目開き2,800μm(7メッシュ(目数/インチ))、篩目開き1,410μm(12メッシュ(目数/インチ))、篩目開き1,000μm(16メッシュ(目数/インチ))、篩目開き710μm(24メッシュ(目数/インチ))、篩目開き500μm(32メッシュ(目数/インチ))、篩目開き250μm(60メッシュ(目数/インチ))、篩目開き150μm(100メッシュ(目数/インチ))、篩目開き105μm(145メッシュ(目数/インチ))、篩目開き75μm(200メッシュ(目数/インチ))、篩目開き38μm(400メッシュ(目数/インチ))の篩を用いた篩分法により測定し、各篩の篩上物の質量から、累積質量が50%質量となる時の平均粒径を算出した。
(2)溶融粘度
粒状PASの溶融粘度は、キャピラリーとして1.0mmφ、長さ10.0mmのノズルを装着した(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1C(登録商標)により測定した。設定温度を310℃とした。ポリマー試料を装置内に導入し、5分間保持した後、剪断速度1,200sec−1で溶融粘度を測定した。
〔実施例1〕PASの製造
(脱水工程)
20Lのオートクレーブに、6,000gのNMP、1,911gの水流化ナトリウム水溶液(NaSH:純度62.29質量%)、及び1,082gの水酸化ナトリウム(NaOH:純度73.18質量%)を仕込んだ。該オートクレーブ内を窒素ガスで置換後、約2時間かけて、攪拌機により回転数250rpmで攪拌しながら、徐々に200℃まで昇温させた。そして、936gの水(HO)、794gのNMP、及び0.4molの硫化水素(HS)を留出させた。
(前段重合工程)
脱水工程後、3,154gのpDCB、2,752gのNMP、136gの水、および8.5gのNaOH(純度97%、固体)を重合容器に投入した。このとき、NMP/S(硫黄源1mol当たりのNMPの供給量)は382g/mol、pDCB/S(硫黄源1mol当たりのpDCBの供給量)は1.030mol/molであった。投入後、重合容器を250rpmで攪拌しながら220℃で1時間重合させた後、230℃に昇温し、1.5時間重合を継続した。
(添加工程)
前段重合工程終了後、375gのNMP、536.7gの水、48.1gのNaOH(純度97%)を上記重合容器に圧入した。圧入後のNMP/Sは400g/molであった。添加工程におけるNMPの添加量は、前段重合工程のNMPの添加量に対して、4.71質量%(375/(6000−794+2752)×100)だった。また、添加工程後の水の量は、NMP1kg当たり7.3モルであった。
(後段重合工程)
添加工程後、攪拌翼の攪拌回転数を400rpmとし、260℃で3時間重合した(第1重合)。次に、1時間かけて240℃まで昇温させて1時間重合した(第2重合)。さらに、15分で245℃まで昇温させて5.5時間重合反応を継続し、PASを得た(第3重合)。
〔比較例1〕
添加工程において、NMPを添加せず、添加する水の量を488gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、PASを得た。
〔比較例2〕
実施例1で得られたNMPと同等の溶融粘度になるように、前段重合工程におけるpDCBの投入量を変更した以外は、比較例1と同様に行い、PASを得た。すなわち、pDCB/有効Sのモノマー比[mol/mol]を1.030から1.027になるように、pDCBの投入量を調整した。
〔比較例3〕
添加工程において、375gのNMP、48.1gのNaOH(純度97%)、48.1gの水を上記重合容器に圧入した以外は実施例1と同様に行い、PASを得た。
なお、ここで添加される水は、純度97%のNaOHを圧入するために水溶液化に必要な最低限の量であり、若干量であるため、相分離剤としての機能は有していない。
各実施例及び比較例で得られたPASの評価結果を表1に示す。
Figure 2020094148
<結果>
表1に示すように、実施例1のPASと、添加工程で有機極性溶媒を添加しなかった比較例1のPASとを比較すると、実施例1で得られたPASの溶融粘度は比較例1のPASよりも高く、収率も高かった。また、実施例1と比較例2のPASを比較すると、実施例1で得られたPASの粒子径は、比較例2のPASと比べて約40%小さく、ハンドリング性に優れていることが分かった。また、実施例1のPASと、添加工程で相分離剤を添加しなかった比較例3のPASを比較すると、実施例1で得られたPASの溶融粘度は比較例3のPASよりも著しく高かった。

Claims (5)

  1. ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
    有機極性溶媒中で、硫黄源及びジハロ芳香族化合物を含有する混合物を加熱して重合反応を開始させ、プレポリマーを含有する反応混合物を生成する前段重合工程と、
    前記前段重合工程後に、前記反応混合物に相分離剤及び有機極性溶媒を添加する添加工程と、
    前記添加工程後に、重合反応を継続する後段重合工程と、を含む、
    ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 前記前段重合工程の有機極性溶媒を100質量部としたときに、前記添加工程の有機極性溶媒の添加量が5質量部未満である、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記後段重合工程は、
    前記添加工程後に240℃以上、290℃以下の所定の第1の温度(T)で10分以上保持して重合反応を継続する第1重合工程と、
    前記第1重合工程後に、235℃以上、245℃以下の所定の第2の温度(T)で2時間未満保持して重合反応を継続する第2重合工程と、
    前記第2重合工程後に、240℃以上、250℃未満の所定の第3の温度(T)で重合反応を継続する第3重合工程と、を含み、
    前記T、T、及びTの関係が、T>T>Tである、請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記ポリアリーレンスルフィドにおける、温度310℃および剪断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が150Pa・s以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記前段重合工程では、前記ジハロ芳香族化合物の転化率が50〜98モル%となるまで重合を行う、請求項1〜4の何れか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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