JP2020093351A - 転削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】切削インサートを簡単に取り付けることができ、高速で回転しても取り付けた切削インサートが外れにくい転削工具を提供する。【解決手段】転削工具1は、工具本体2と、複数の切削インサート10と、を備えている。各々の切削インサート10は、屈曲部13と、屈曲部13から第1方向D1に延びる第1延伸部11と、第2方向D2に延びる第2延伸部12と、を有した略V字形に形成されている。工具本体2には、楔部材30とは反対側から切削インサート10を支持する支持面25が設けられている。支持面25は、第1延伸部11に面した第1支持面25Lと、第2延伸部12に面した第2支持面25Rと、で構成されている。第1支持面25L及び第2支持面25Rのいずれか一方は、回転軸Zの径方向Drに沿う直線上において、切削インサート10よりも遠心側に位置し、切削インサート10の脱落を防いでいる。【選択図】図2

Description

本発明は、切削インサート及び該切削インサートを備えた転削工具に関する。
締結ねじによって切削インサートを工具本体に固定すると、切削インサートの交換作業に手間がかかる。切削インサートを簡単に交換できるように、切削インサートをチップ座に向かって押圧する楔部材によって切削インサートを工具本体に固定する転削工具がある。一方、転削工具を高速で回転させたい場合がある。例えば、アルミニウム合金の切削加工において、切削速度を大きくすると、切削抵抗及び仕上げ面粗さが減少することが知られている。しかしながら、楔部材は切削インサートを拘束する力が締結ねじに比べて弱いため、楔部材によって切削インサートを固定する転削工具を高速で回転させると、遠心力で切削インサートが工具本体から外れてしまうおそれがある。
切削インサートの脱落を防ぐため、例えば、切刃チップが楔部材によってチップ着座面に押圧されて固定されるスローアウェイ式転削工具において、チップ着座面を切刃チップよりも工具本体の外方側まで延長し、該チップ着座面の先端に切刃チップと係合可能な凸部を設けることが提案されている(特許文献1参照)。
特開平9−76111号公報
転削工具が平面加工を行う正面フライスカッタの場合、遠心力で外れようとする切削インサートを押さえる爪を切削インサートよりも径方向において外側に設けることも選択肢になる。切削インサートが軸方向に切り込むため、切削インサートよりも径方向において外側まで工具本体を延長しても、工具本体が被削材に干渉しない。一方、転削工具が溝加工を行うサイドカッタや肩加工を行う肩削りカッタの場合、切削インサートが径方向に切り込む。工具本体が被削材に干渉してしまうため、爪を切削インサートよりも径方向において外側に設けることができない。
種々の転削工具に適用できる構成によって切削インサートの脱落を防ぐことが求められている。そこで、本発明は、切削インサートを簡単に取り付けることができ、取り付けた切削インサートが高速回転でも外れにくい転削工具を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る切削インサートは、工具本体の外周部に楔部材によって固定されて転削工具を構成する切削インサートである。切削インサートは、屈曲部と、該屈曲部から第1方向に延びる第1延伸部と、屈曲部から第1方向に交差する第2方向に延びる第2延伸部と、を有した略V字形の平板状に形成されている。切削インサートは、第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、第1面及び第2面を繋ぐ側面と、を有している。屈曲部において楔部材に面した側の側面には、楔部材に押圧される溝が第1面から第2面に亘って形成されている。
この態様によれば、楔部材によって固定されるため、切削インサートを簡単に交換できる。延在方向が異なる第1延伸部と第2延伸部とを備え、第1延伸部における側面の略半分か、第2延伸部における側面の略半分か、どちらかに対して工具本体からの反力が作用して遠心力と釣り合うため、高速で回転しても工具本体から外れにくい。
上記態様において、第1延伸部及び第2延伸部のうちの楔部材に押圧される側とは反対側の側面には、第1面と第2面とを結ぶ厚み方向において、板厚中心に向かうに従い突出する凸条が形成されていてもよいし、板厚中心に向かうに従い没入する凹条が形成されていてもよい。
この態様によれば、第1方向及び第2方向に沿って延びる凸条又は凹条として形成された側面と工具本体とが噛み合うため、被削材を加工するとき、切削インサートが振動しづらくなる。厚み方向において、板厚中心よりも第1面側の斜面と第2面側の斜面とに側面が分割されるため、遠心力と釣り合う反力が作用する面の数が増える。複数の面で反力を受けるため、高速で回転しても取り付けた切削インサートが外れにくい。
上記態様において、溝は、第1面に向かうに従い深くなる第1傾斜面及び第2面に向かうに従い深くなる第2傾斜面の少なくとも一方を含んでいる、
この態様によれば、溝の縁が面取りされて傾斜面が形成されている。切削インサートと楔部材とは、溝の縁において線接触するのではなく、傾斜面において面接触する。切削インサートと楔部材との接触面積が大きくなるため、楔部材が切削インサートを拘束する力が安定する。また、板厚中心ではなく、縁に近い傾斜面において楔部材が当接すると、切削インサートが斜め上方から工具本体に向かって押圧されるため、切削インサートが工具本体から外れにくくなる。
上記態様において、第1傾斜面及び第2傾斜面は、曲率半径が一定の凹円柱面に形成されていてもよい。
この態様によれば、傾斜面の断面が円弧であるため、傾斜面の向きと楔部材の向きとが僅かにずれても、締結ボルトを締め付けているうちに切削インサートが回転して傾斜面の向きと楔部材の向きとを一致させることができる。傾斜面は、高さによって曲率半径が変化する凹円錐面ではなく、いずれの高さでも曲率半径が変化しない凹円柱面であるため、楔部材のいずれの高さにおいても切削インサートと楔部材とを安定して面接触させることができる。
本発明の一実施形態に係る転削工具は、工作機械の主軸に固定されて回転軸を中心に回転する工具本体と、複数の切削インサートと、を備えている。各々の切削インサートは、工具本体の外周部に楔部材によって固定されている。切削インサートは、屈曲部と、該屈曲部から第1方向に延びる第1延伸部と、屈曲部から第1方向に交差する第2方向に延びる第2延伸部と、を有した略V字形の平板状に形成されている。切削インサートは、第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、第1面及び第2面を繋ぐ側面と、を有している。屈曲部において楔部材に面した側の側面には、楔部材に押圧される溝が第1面から第2面に亘って形成されている。第1延伸部及び第2延伸部における側面は、楔部材に臨む側とは反対側に位置した被支持面を含んでいる。工具本体には、被支持面を支持する支持面が設けられている。第1延伸部及び第2延伸部のいずれか一方に面した支持面の略半分は、回転軸の径方向に沿う直線上において、被支持面よりも遠心側に位置している。
この態様によれば、楔部材によって固定された切削インサートを簡単に交換できる。第1延伸部に面した支持面の略半分か、第2延伸部に面した支持面の略半分か、どちらかが径方向において、切削インサートよりも外側に位置している。そのため、高速で回転しても取り付けた切削インサートが外れにくい。
上記態様において、楔部材を工具本体に締め付ける締結ボルトのねじ部は、工作機械の主軸に向かって延びていてもよい。
この態様によれば、締結ボルトを締めると、支持面の略半分の面であって遠心力の反力を作用させる当該面に向かって切削インサートが押し付けられる。切削インサートと当該面とに隙間が生じないため、切削インサートに確実に反力を作用させることができる。従来のように、締結ボルトのねじ部が径方向に延びている場合、締結ボルトを締めると切削インサートが回転軸に向かって押し付けられる。回転軸とは反対側から切削インサートに対向する当該面と切削インサートとに隙間が生じるおそれがあった。また、この態様によれば、締結ねじを抜去する方向は、遠心力が作用する径方向と一致しない。楔部材が緩みにくくなるため、より確実に切削インサートの脱落を防ぐことができる。
上記態様において、転削工具は、切削インサートが径方向に切り込むサイドカッタ又は肩削りカッタであってもよい。
この態様によれば、爪を切削インサートよりも径方向において外側に設ける必要がない。切削インサートよりも径方向において外側に工具本体を延長できないサイドカッタや肩削りカッタであっても好適に用いることができる。
本発明によれば、切削インサートを簡単に取り付けることができ、高速で回転しても取り付けた切削インサートが外れにくい転削工具を提供することができる。
図1は、本発明の第1実施形態の転削工具の一例を示す斜視図である。 図2は、工作機械の主軸側とは反対側から見た転削工具を示す平面図である。 図3は、図2に示された切削インサートを示す斜視図である。 図4は、図2中のIV−IV線に沿う断面図である。 図5は、図4に示された被支持面の変形例を示す断面図である。 図6は、図1に示された楔部材を示す斜視図である。 図7は、図2中のVII−VII線に沿う断面図である。 図8は、本発明の第2実施形態の転削工具の一例を示す斜視図である。 図9は、工作機械の主軸側とは反対側から見た工具本体を示す平面図である。 図10は、図9に示された切削インサートを示す斜視図である。 図11は、本発明の各実施形態と対比のために示す比較例の転削工具の平面図である。
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。本発明の各実施形態の転削工具1は、切削インサート10が略V字形に屈曲しており、工具本体2の支持面25から遠心力と釣り合う反力が作用する被支持面15を有している点が特徴の一つである。以下、図1から図11を参照して各構成について詳しく説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の転削工具1の一例を示す斜視図である。図示した例では、転削工具1は、肩削りカッタ又はサイドカッタとして構成されている。なお、転削工具1は、正面フライスカッタであってもよい。図1に示すように、転削工具1は、工具本体2と、複数の切削インサート10と、を備え、工作機械の主軸に固定されて回転軸Zを中心に回転するように構成されている。以下の説明において、転削工具1の回転軸Zを基準にして、径方向Dr、軸方向Dz及び周方向Dθを定義する。
工具本体2は、例えば、円盤形に形成されたカッタ部4と、カッタ部4と工作機械の主軸とを接続する軸部3と、を備えている。軸部3とカッタ部4とは、一体構造物として構成されていてもよいし、分割可能に構成されていてもよい。図示した例では、転削工具1が正回転(工作機械の主軸側から見て時計回り)するとカッタ部4に取り付けられた切削インサート10が被削材を削るように構成されている。図示しないが、転削工具1が逆回転(工作機械の主軸側から見て反時計回り)すると被削材を削るように構成してもよい。
図2は、工作機械の主軸側とは反対側から見た転削工具1を示す平面図である。図2に示すように、工具本体2の外周部5は、カッタ部4の外周縁4E及びその近傍を含む部分であり、各々の切削インサート10が着座するチップ座20が複数設けられている。図示した例では、複数のチップ座20が、転削工具1の回転軸Zの周方向Dθにおいて等間隔に八つ並べられている。各々のチップ座20には、切削インサート10をチップ座20に固定する楔部材30が付設されている。チップ座20及び楔部材30については、後で詳しく説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る切削インサート10を示す斜視図である。図3に示すように、切削インサート10は、第1面(上面)10Aと、第1面10Aとは反対側の第2面(下面)10Bと、第1面10A及び第2面10Bを繋ぐ側面10Cと、を有した平板状に形成されている。
切削インサート10は、略V字形に形成されており、屈曲部13と、屈曲部13から第1方向D1に延びる第1延伸部11と、屈曲部13から第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる第2延伸部12と、を有している。屈曲部13において楔部材30に面した側の側面10Cには、楔部材30に押圧される溝(被押圧面)18が第1面10Aから第2面10Bに亘って形成されている。切削インサート10は、V字形の平板に円弧状の溝18が形成された略V字形に形成されている。溝18については、図6及び図7を参照して後で詳しく説明する。
前述した切削インサート10は、第1面10Aが、第1方向D1に延在する第1辺101及び第3辺103と、第2方向D2に延在する第4辺104及び第6辺106と、第1辺101及び第3辺103を繋ぐ第2辺102と、第4辺104及び第6辺106を繋ぐ第5辺105と、を有し、第1辺101と第2辺102とがなす内角が180°よりも大きい凹六角形に形成されていると言い換えてもよい。
第2面10Bは、第1面10Aと同様に凹六角形に形成されている。第2面10Bは、第1辺101に対向する第7辺107と、第2辺102に対向する第8辺108(図10参照)と、第3辺103に対向する第9辺109と、第4辺104に対向する第10辺110(図10参照)と、第5辺105に対向する第11辺111(図4参照)と、第6辺106に対向する第12辺(図10参照)と、を有している。溝18は、第1辺101及び第2辺102が共有する頂点と、第7辺107及び第8辺108が共有する頂点と、を除去するように第1面10A及び第2面10Bに亘って形成されている。
第1及び第2延伸部11,12における側面10Cは、前述の溝18に隣接した先行面14と、先行面14とは反対側の被支持面15と、を有している。先行面14には、第1延伸部11に位置した第1先行面14Lと、第2延伸部12に位置した第2先行面14Rと、が含まれる。同様に、被支持面15には、第1延伸部11に位置した第1被支持面15Lと、第2延伸部12に位置した第2被支持面15Rと、が含まれる。
工具本体2に取り付けられた状態において、先行面14は、回転軸Zの周りを公転する切削インサート10の進行方向において前側に位置し、楔部材30に臨む面である。被支持面15は、切削インサート10の進行方向において後側に位置し、後述する工具本体2の支持面25に支持される面である。第1実施形態では、略V字形を構成する一対の延伸部11,12において、他方の延伸部(例えば、第2延伸部12)は、一方の延伸部(例えば、第1延伸部11)に対して、先行面14側に屈曲している。
第1及び第2延伸部11,12は屈曲部13から見て鏡面対称に形成されており、第1延伸部11と第2延伸部12と位置を入れ替えて二箇所の切れ刃17L,17Rを使用できる。図示した例では、切削インサート10が径方向Drに切り込むサイドカッタ用又は肩削りカッタ用であり、第1先行面14Lと第1延伸部11の端面16Lとが交差する稜線が切れ刃17Lとして構成され、第2先行面14Rと第2延伸部12の端面16Rとが交差する稜線が切れ刃17Rとして構成されている。このとき、第1及び第2先行面14L,14Rはすくい面として構成され、端面16L,16Rは逃げ面として構成されている。
図4は、図2中のIV−IV線に沿う断面図である。図4に示すように、被支持面15には、第1面10Aと第2面10Bとを結ぶ切削インサート10の厚み方向D3において、板厚中心Mに向かうに従い突出する凸条が形成されている。板厚中心Mは、第1及び第2面10A,10Bの双方から等距離に位置している。厚み方向D3は、例えば、転削工具1の回転軸Zの軸方向Dzに平行である(図1参照)。
図示した例では、厚み方向D3において、第1被支持面15Lが、上り坂151,152と、頂面153と、に三分割されている。上り坂151は、第1面10Aから板厚中心Mに向かうに従い高くなるように傾斜している。上り坂152は、第2面10Bから板厚中心Mに向かうに従い高くなるように傾斜している。頂面153は、厚み方向D3に延在し、上り坂151,152の間を繋いでいる。
図5は、図4に示された被支持面15の変形例を示す断面図である。図5に示すように、被支持面15には、厚み方向D3において、板厚中心Mに向かうに従い没入する凹条が形成されていてもよい。図示した例では、第1被支持面15Lが、下り坂151,152と、底面153と、に三分割されている。下り坂151は、第1面10Aから板厚中心Mに向かうに従い深くなるように傾斜している。下り坂152は、第2面10Bから板厚中心Mに向かうに従い深くなるように傾斜している。底面153は、厚み方向D3に延在し、下り坂151,152の間を繋いでいる。
換言すると、凸条として形成された第1被支持面15Lは、第5辺105と第11辺111とを結んだ仮想面よりも外側に突出し、凹条として形成された第1被支持面15Lは、第5辺105と第11辺111とを結んだ仮想面よりも内側に没入している。図示しないが同様に、凸条として形成された第2被支持面15Rは、第4辺104と第10辺110とを結んだ仮想面よりも外側に突出し、凹条として形成された第2被支持面15Rは、第4辺104と第10辺110とを結んだ仮想面よりも内側に没入している。
図6は、楔部材30の一例を示す斜視図である。楔部材30は、楔部材30を貫通する締結ボルトを締めたり緩めたりすると、締結ボルト31のねじ部に沿って楔部材30が昇降するように構成されている。楔部材30は、切削インサート10に面した部位に押圧部32が設けられている。
押圧部32は、締結ボルト31の頭部側からねじ先側へ向かうに従い締結ボルト31との距離が小さくなる楔形に形成されている。図示した例では、押圧部32は、締結ボルト31の頭部側からねじ先側に亘って曲率半径が一定の円柱面に形成されている。押圧部32の円柱面は、締結ボルト31のねじ部に対して傾斜している。切削インサート10の溝18は、押圧部32に倣う形状すなわち凹円柱面に形成されている。
図7は、図2中のVII−VII線に沿う断面図である。図示した例では、溝18が、第1傾斜面181と、第2傾斜面182と、峠183と、を含んでいる。第1傾斜面181は、第1面10Aに向かうに従い深くなるように傾斜した凹円柱面に形成されている。第2傾斜面182は、第2面10Bに向かうに従い深くなるように傾斜した凹円柱面に形成されている。峠183は、厚み方向D3に貫通する凹円柱面に形成され、第1及び第2傾斜面181,182の間を繋いでいる。切れ刃17L,17Rのいずれか一方しか使用しない場合、第1及び第2傾斜面181,182のいずれか一方を省略してもよい。
図11は、本発明の各実施形態と対比のために示す比較例の転削工具201の平面図である。従来の転削工具201は、図11に示すように、楔部材230を工具本体202に締め付ける締結ボルト231のねじ部が、転削工具201の回転軸Zの径方向Drに略平行に延びていた。これに対し、本発明の第1実施形態では、図7に示すように、楔部材30を工具本体2に締め付ける締結ボルト31のねじ部が、工具本体2が取り付けられる工作機械の主軸に向かって延びている。
換言すると、締結ボルト31のねじ部が、回転軸Zに略平行に延びている。より詳しくは、締結ボルト31のねじ部が、軸方向Dzに概ね平行であって、ねじ先へ向かうに従い径方向Drの内側に僅かに傾斜した方向に延びている。軸方向Dzに対する締結ボルト31のねじ部の傾きは、例えば30°以下である。
再び図2を参照して説明する。図2に示すように、各々のチップ座20は、切削インサート10の下面(例えば、第2面10B)を支持する着座面(底面)21と、着座面21から起立して切削インサート10の側面10Cに対向する壁面22と、を有したポケット状に形成されている。
転削工具1は、サイドカッタ又は肩削りカッタとして構成されている。図示した例では、チップ座20に着座した状態で、第2延伸部12が、第1延伸部11よりも径方向Drにおいて外側に位置し、第2延伸部12の先端に設けられた切れ刃17Rが、工具本体2のカッタ部4の外周縁4Eよりも径方向Drにおいて外側に突出している。なお、第1延伸部11が、第2延伸部12よりも径方向Drにおいて外側に位置するように表裏を入れ替えてもよい。その場合、第1延伸部11の先端に設けられた切れ刃17Lが、工具本体2のカッタ部4の外周縁4Eよりも径方向Drにおいて外側に突出する。
壁面22は、切削インサート10の被支持面15を支持する支持面25を含んでいる。支持面25は、第1支持面25L(図2中に太線で示す)と、第2支持面25R(図9中に太線で示す)と、に概ね二分される。第1支持面25Lは、第1被支持面15Lに当接して該第1被支持面15Lを支持している。第2支持面25Rは、第2被支持面15Rに当接して該第2被支持面15Rを支持している。
回転軸Zの周りを公転する切削インサート10の進行方向に沿って見たとき、第1支持面25Lは、支持面25の概ね左半分に区画され、第1延伸部11に面している。第2支持面25Rは、支持面25の概ね右半分に区画され、第2延伸部12に面している。第1及び第2支持面25L,25Rは、それぞれ支持面25の略半分の一例である。
本発明の各実施形態は、略V字形に形成された切削インサート10の第1及び第2延伸部11,12が、それぞれ異なる第1及び第2方向D1,D2に延在しているため、支持面25の略半分すなわち第1及び第2支持面25L,25Rのいずれか一方は、径方向Drに沿う直線上おいて、第1被支持面15Lよりも遠心側(外側)に位置することになる。図示した例では、第1及び第2方向D1,D2が径方向Drに交差している。なお、第1及び第2方向D1,D2のいずれか一方が径方向Drに平行であってもよい。その場合、第1及び第2方向D1,D2のいずれか他方が径方向Drに交差する。
図示した例では、一対の支持面25L,25Rのうちの径方向Drにおいて遠心側に位置した他方の支持面(例えば、第2支持面25R)は、一対の被支持面15L,15Rのうちの径方向Drにおいて遠心側に位置した他方の被支持面(例えば、第2被支持面15R)よりも径方向Drに沿う直線上においてさらに遠心側に位置し、遠心力で外れようとする切削インサート10を押さえている。
換言すると、径方向Drに沿う断面において、切削インサート10及び工具本体2は、第2被支持面15Rと第2支持面25Rとが互いに接しており、切削インサート10が求心側(内側)に位置し、工具本体2が遠心側(外側)に位置している。なお、径方向Drにおいて内側に位置した一方の支持面(例えば、第1支持面25L)が、遠心力で外れようとする切削インサート10を押さえるように構成してもよい。
図11に示された比較例のように、楔部材230とは反対側から切削インサート210に当接して該切削インサート210を支持する支持面225が平坦である場合、転削工具201を高速で回転させたとき、遠心力で切削インサート210が転削工具201の回転軸Zの径方向Drに外れてしまうおそれがあった。
以上のように構成された第1実施形態の転削工具1は、図2に示すように、切削インサート10が略V字形に屈曲しており、工具本体2の支持面25から遠心力と釣り合う反力が作用する被支持面15を有している。切削インサート10の第2被支持面15Rに対して工具本体2の第2支持面25Rからの反力が作用して遠心力と釣り合うため、転削工具1が高速で回転しても切削インサート10が工具本体2から外れにくい。
図4及び図5に示すように、被支持面15は、第1及び第2方向D1,D2に沿って延びる凸条又は凹条として形成されている。前述したように、支持面25は、被支持面15を転写した凹条又は凸条として形成されている。被支持面15と支持面25とが互いに噛み合うため、転削工具1が被削材を加工するとき、切削インサート10が振動しづらい。
切削インサート10の第1及び第2被支持面15L,15Rは、それぞれ三分割されている。被支持面15を凸条又は凹条として形成すると、被支持面15がいくつかの斜面に分割されて遠心力と釣り合う反力が作用する面の数が増える。複数の面で反力を受けるため、転削工具1が高速で回転しても取り付けた切削インサート10が外れにくい。
図7に示すように、切削インサート10が楔部材30によって固定されるため、切削インサート10を簡単に交換できる。溝18の縁は、面取りされて第1及び第2傾斜面181,182が形成されている。切削インサート10と楔部材30とは、溝18の縁において線接触するのではなく、第1又は第2傾斜面181,182において面接触する。切削インサート10と楔部材30との接触面積が大きくなるため、楔部材30が切削インサート10を拘束する力が安定する。
板厚中心Mに近い峠183ではなく、溝18の縁に近い第1又は第2傾斜面181,182において楔部材30が当接すると、切削インサート10が斜め上方から工具本体2のチップ座20に向かって押圧されるため、切削インサート10が工具本体2から外れにくくなる。
図6に示すように、第1及び第2傾斜面181,182は、曲率半径が一定の凹円柱面に形成されている。第1及び第2傾斜面181,182の断面が円弧であるため、第1又は第2傾斜面181,182の向きと楔部材30の向きとが僅かにずれても、締結ボルト31を締め付けているうちに切削インサート10が回転して第1又は第2傾斜面181,182の向きと楔部材30の向きとを一致させることができる。
第1及び第2傾斜面181,182は、高さによって曲率半径が変化する凹円錐面ではなく、いずれの高さでも曲率半径が変化しない凹円柱面であるため、締結ボルト31のねじ部に沿って昇降する楔部材30のいずれの高さにおいても切削インサート10と楔部材30とを安定して面接触させることができる。
図11に示された比較例のように、締結ボルト231のねじ部が径方向Drに延びている場合、締結ボルト231を締めると切削インサート210が回転軸Zに向かって押し付けられる。略V字形の切削インサート10を採用して、回転軸Zとは反対側から切削インサート210に対向する面を設けても、当該面と切削インサート10とに隙間が生じるおそれがあった。
これに対し、本発明の第1実施形態では、図7に示すように、楔部材30を工具本体2に締め付ける締結ボルト31のねじ部が、工作機械の主軸に向かって延びている。締結ボルト31を締めると、支持面25の略半分の面であって遠心力の反力を作用させる当該面(例えば、第2支持面25R)に向かって切削インサート10が押し付けられる。切削インサート10と当該面とに隙間が生じないため、切削インサート10に確実に反力を作用させることができる。しかも、締結ボルト31を抜去する方向は、遠心力が作用する径方向Drと一致しない。楔部材30が緩みにくくなるため、より確実に切削インサート10の脱落を防ぐことができる。
[第2実施形態]
続いて、図8乃至図10を参照して本発明の第2実施形態の転削工具1について説明する。第2実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。図8は、本発明の第2実施形態の転削工具1の一例を示す斜視図である。図8に示すように、第2実施形態は、切削インサート10が第1実施形態とは逆向きに屈曲した略V字形(逆V字形)に形成されている点が第1実施形態と異なる。ただし、切削インサート10の第1延伸部11の延在方向が第1方向D1になり、第2延伸部12の延在方向が第2方向D2になる点は、第1及び第2実施形態に共通している。
図9は、工作機械の主軸側とは反対側から見た第2実施形態の転削工具1を示す平面図である。図示した例では、第1方向D1が径方向Drに交差している。一対の支持面25L,25Rのうちの径方向Drにおいて求心側(内側)に位置した一方の支持面(例えば、第1支持面25L)は、一対の被支持面15L,15Rのうちの径方向Drにおいて求心側に位置した一方の被支持面(例えば、第1被支持面15L)よりも径方向Drに沿う直線上において遠心側に位置し、遠心力で外れようとする切削インサート10を押さえている。
なお、第2延伸部12が第1延伸部11よりも径方向Drにおいて遠心側に位置した状態で、第2方向D2が径方向Drに交差してもよいし、第1及び第2方向D1,D2の双方が径方向Drに交差してもよい。その場合、一対の支持面25L,25Rのうちの径方向Drにおいて遠心側に位置した他方の支持面(例えば、第2支持面25R)が、一対の被支持面15L,15Rのうちの径方向Drにおいて遠心側に位置した他方の被支持面(例えば、第2被支持面15R)よりも径方向Drに沿う直線上においてさらに遠心側に位置し、遠心力で外れようとする切削インサート10を押さえるように構成してもよい。
図10は、第2実施形態に係る切削インサート10を示す斜視図である。切削インサート10に着目すると、略V字形を構成する一対の延伸部11,12において、他方の延伸部(例えば、第2延伸部12)は、一方の延伸部(例えば、第1延伸部11)に対して、楔部材30に臨む先行面14とは反対側の被支持面15側に屈曲している。
図示した例では、被支持面15を凸条(図4参照)として形成しているが、被支持面15を凹条(図5参照)として形成してもよい。第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、切削インサート10を簡単に取り付けることができ、高速で回転しても取り付けた切削インサート10が外れにくい転削工具1を提供できる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
1…転削工具、2…工具本体、3…軸部、4…カッタ部、4E…外周縁、5…外周部、10…切削インサート、10A…第1面、10B…第2面、10C…側面、11…第1延伸部、12…第2延伸部、13…屈曲部、14…先行面(楔部材に臨む側の側面の一例)、14L…第1先行面、14R…第2先行面、15…被支持面(楔部材に臨む側とは反対側の側面の一例)、15L…第1被支持面、15R…第2被支持面、16L,16R…端面、17L,17R…切れ刃、18…溝、20…チップ座、21…着座面、22…壁面、25…支持面、25L…第1支持面(略半分の一例)、25R…第2支持面(略半分の他の一例)、30…楔部材、31…締結ボルト、32…押圧部、101…第1辺、102…第2辺、103…第3辺、104…第4辺、105…第5辺、106…第6辺、107…第7辺、108…第8辺、109…第9辺、110…第10辺、111…第11辺、112…第12辺、151,152…上り坂又は下り坂、153…頂面又は底面、181…第1傾斜面、182…第2傾斜面、183…峠、201…比較例の転削工具、202…比較例の工具本体、210…比較例の切削インサート、225…比較例の支持面、230…比較例の楔部材、231…比較例の締結ボルト、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…厚み方向、Dr…径方向、Dz…軸方向、Dθ…周方向、M…板厚中心、Z…回転軸。

Claims (7)

  1. 工具本体の外周部に楔部材によって固定されて転削工具を構成する切削インサートであって、
    屈曲部と、該屈曲部から第1方向に延びる第1延伸部と、前記屈曲部から前記第1方向に交差する第2方向に延びる第2延伸部と、を有した略V字形の平板状に形成され、第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、前記第1面及び前記第2面を繋ぐ側面と、を有し、
    前記屈曲部において前記楔部材に面した側の前記側面には、前記楔部材に押圧される溝が前記第1面から前記第2面に亘って形成されている、切削インサート。
  2. 前記第1延伸部及び前記第2延伸部において前記楔部材に押圧される側とは反対側の前記側面には、前記第1面と前記第2面とを結ぶ厚み方向において、板厚中心に向かうに従い突出又は没入する凸条又は凹条が形成されている、請求項1に記載の切削インサート。
  3. 前記溝は、前記第1面に向かうに従い深くなる第1傾斜面及び前記第2面に向かうに従い深くなる第2傾斜面の少なくとも一方を含んでいる、請求項1又は2に記載の切削インサート。
  4. 前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面は、曲率半径が一定の凹円柱面に形成されている、請求項3に記載の切削インサート。
  5. 工作機械の主軸に固定され、回転軸を中心に回転する工具本体と、
    前記工具本体の外周部に楔部材によって固定された複数の切削インサートと、を備え、
    各々の前記切削インサートは、屈曲部と、該屈曲部から第1方向に延びる第1延伸部と、前記屈曲部から前記第1方向に交差する第2方向に延びる第2延伸部と、を有した略V字形の平板状に形成され、第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、前記第1面及び前記第2面を繋ぐ側面と、を有し、
    前記屈曲部において前記楔部材に面した側の前記側面には、前記楔部材に押圧される溝が前記第1面から前記第2面に亘って形成され、
    前記第1延伸部及び前記第2延伸部における前記側面は、前記楔部材に臨む側とは反対側に位置した被支持面を含み、
    前記工具本体には、前記被支持面を支持する支持面が設けられ、
    前記第1延伸部及び前記第2延伸部のいずれか一方に面した前記支持面の略半分は、前記回転軸の径方向に沿う直線上において、前記被支持面よりも遠心側に位置している、転削工具。
  6. 前記楔部材を前記工具本体に締め付ける締結ボルトのねじ部は、前記工作機械の主軸に向かって延びている、請求項5に記載の転削工具。
  7. 前記転削工具は、前記切削インサートが前記径方向に切り込むサイドカッタ又は肩削りカッタである、請求項5又は6に記載の転削工具。
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