JP2020090583A - 変性ポリビニルアルコール系樹脂およびその製造方法 - Google Patents

変性ポリビニルアルコール系樹脂およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガスバリア性と水溶性と生分解性、3つの性能を有する変性PVA系樹脂を提供する。【解決手段】構造単位(A)及び構造単位(B)を主鎖に有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であって、構造単位(A)は、特定の一般式で表される側鎖の水酸基に脂肪族ポリエステルがグラフトされた構造単位であり、構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であることを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂。【選択図】図1

Description

本発明は、変性ポリビニルアルコール系樹脂に関し、更に詳しくは、脂肪族ポリエステルがグラフトされた変性ポリビニルアルコール系樹脂およびその製造方法に関する。
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称することがある。)は、水酸基を有するため、水への親和性が高く、水溶性である。また、かかる水酸基の水素結合により、分子鎖間の結合力が強く、結晶性が高い樹脂である。
結晶性が高いため、ガスバリア性が高く、包装材等のバリア性が求められる用途として有用である一方、結晶性が高いために、柔軟性が低下し、ピンホール等が生じやすいという欠点があった。
そこで、柔軟性の向上を目的とし、PVA系樹脂に、ラクトン単量体を付加重合した、ラクトン変性PVA系樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。かかるラクトン変性PVA系樹脂は、融点が低く、溶融成形にも適している。
他にも、溶融成形に適したPVA系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂やオキシアルキレン基含有PVA系樹脂が提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
特開平08−151411号公報 特開2008−208347号公報 特開2015−117286号公報
しかしながら、従来のラクトン変性PVA系樹脂は、変性されていないPVA系樹脂を溶融混練し、ラクトン変性するため、ガスバリア性の高い、ケン化が高いPVA系樹脂を用いることが溶融成形性の点で困難であり、溶融成形が比較的容易なケン化度の低いPVA系樹脂を用いることとなり、ガスバリア性については満足いくものではなかった。
また、ケン化度が低いPVA系樹脂に、疎水基であるラクトン基で変性するため水溶性が劣るという問題があった。
そこで、溶融成形が比較的容易で、ガスバリア性にも優れ、水溶性にも優れる、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂が提案されている。しかしながら、かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂は、生分解性と溶融成形性については、まだまだ改善の余地があった。
そこで、本発明は、ガスバリア性と水溶性と生分解性、3つの性能を有する変性PVA系樹脂を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、特定の構造単位を有する変性PVA系樹脂が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、構造単位(A)及び構造単位(B)を主鎖に有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であって、
構造単位(A)は、下記一般式(1)で表れる構造単位であり、
構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であることを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂に関するものである。
(化学式(1)中、Xはヘテロ原子を有する有機鎖を表し、nは正の整数を表す。)
更に本発明は、上記の変性PVA系樹脂の製造方法をも提供するものである。
本発明の変性PVA系樹脂を用いて得られた溶融成形物は、柔軟性と生分解性に優れる。また、ガスバリア性も保持しているため、各種包装材として有用である。
本発明の変性PVA系樹脂のH−NMRチャート 本発明の変性PVA系樹脂の13C−NMRチャート
以下、本発明の発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施態様に限定されるものではない。
[変性PVA系樹脂]
本発明の変性PVA系樹脂は、構造単位(A)及び(B)を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であって、
構造単位(A)は、下記一般式(1)で表され、主鎖に結合し、
構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であることを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂である。
(化学式(1)中、Xはヘテロ原子を有する有機鎖を表し、nは正の整数を表す。)
まず、構造単位(A)について説明する。
化学式(1)において、Xはヘテロ原子を有する有機鎖を表す。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられる。これらのうち工業的観点からは、ヘテロ原子は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が好ましく、特には酸素原子が好ましい。
更に、Xは製造上の観点から、カルボニル基を起点として置換基を有していてもよい炭化水素鎖を有し、繰り返し末端に置換基を有していてもよいヘテロ原子を有する有機鎖であることが好ましい。また、Xはカルボニル基を起点として、少なくとも繰り返し末端にヘテロ原子を有していれば、他にヘテロ原子を有していてもよい。
上記置換基を有していてもよい炭化水素鎖をRx、繰り返し末端に有する置換基を有していてもよいヘテロ原子をZとした場合、化学式(1)は下記化学式(2)で表される。
(化学式(2)中、Rxは置換基を有していてもよい炭化水素鎖を表し、Zは置換基を有していてもよいヘテロ原子を表し、nは正の整数を表す。)
化学式(2)において、Zが酸素原子の場合、繰り返し単位としては−CO−Rx−O−が挙げられ、Zが窒素原子の場合、繰り返し単位としては−CO−Rx−NH−、−CO−Rx−NR−が挙げられ、Zが硫黄原子の場合、繰り返し単位としては−CO−Rx−S−が挙げられる。なお、炭化水素及びヘテロ原子が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基やエチル基等のアルキル基や芳香環等のアリール基、アセチル基等のアシル基等が挙げられる。すなわち、前記−Rx−NR−におけるRはメチル基やエチル基等のアルキル基や芳香環等のアリール基、アセチル基等のアシル基を表す。
これらの中でも、ガスバリア性を向上させるという観点から、繰り返し単位としては、−CO−Rx−O−、−CO−Rx−NH−又は−CO−Rx−S−が好ましく、特にはZが酸素原子であることが好ましく、具体的には、繰り返し単位が−CO−Rx−O−の場合、化学式(1)は下記化学式(3)で表される。
(化学式(3)中、Rxは置換基を有していてもよい炭化水素鎖を表し、nは正の整数を表す。)
化学式(2)及び(3)における炭化水素鎖Rxは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖であることが好ましい。炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖としては、例えば、メチレン基(−CH−)、メチン基(−CHR−)、水素原子を持たない4級炭素(−CR−)、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、フェニレン基等が挙げられる。前記メチン基、4級炭素におけるR、R、Rはメチル基やエチル基等のアルキル基や芳香環等のアリール基を表す。中でも、炭化水素鎖として、炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖であることがより好ましく、炭素数3〜7の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖が更に好ましい。これらの中でも、樹脂の保存安定性や加工安定性を向上させるという観点から、直鎖炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数2〜8の直鎖アルキル鎖が更に好ましく、炭素数3〜7の直鎖アルキル鎖が特に好ましい。
化学式(1)〜(3)において、nは正の整数を表す。nは1〜10の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましい。nが1〜10であると変性基の導入によるバリア性の低下を抑えることができる。
なお、化学式(1)〜(3)において、nが2以上の場合、複数のXは同一であっても異なっていてもよいが、バリア性の観点から同一であることが好ましい。
本発明の変性PVA系樹脂中における、前記化学式(1)〜(3)中のnの平均値(すなわち、グラフト鎖の平均鎖長と称することがある。)は、それぞれ1〜10の範囲であることが好ましく、1〜8の範囲がより好ましく、1〜5の範囲が更に好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい。nの平均値が大きくなりすぎると、ガスバリア性が低下する傾向になるため、10以下であることが好ましい。
本発明の変性PVA系樹脂中の構造単位(A)の含有量としては、通常は0.1〜30モル%であり、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは5〜15モル%である。かかる変性率は、PVA樹脂構造単位のうち、化学式(1)〜(3)のいずれかで表される構造単位の構造がグラフトされた割合を意味する。変性PVA系樹脂中の変性率が低すぎると、柔軟性が低下する傾向があり、一方で、変性PVA系樹脂中の変性率が高すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
なお、本発明の変性PVA系樹脂中の変性率は、核磁気共鳴分光による測定結果から算出することができる。
化学式(1)〜(3)で表される構造単位は、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)や赤外分光光度法、質量分析法等の一般的な有機化学的手法により特定することができる。
本発明の変性PVA系樹脂における化学式(1)〜(3)中のグラフト鎖の平均鎖長は、核磁気共鳴分光による測定結果から算出することができる。
次に構造単位(B)について説明する。
構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であって、例えば、側鎖に1,2-ジオール構造単位やヒドロキシメチル基を有する構造単位が挙げられる。
中でも生産性の点で、側鎖に1,2-ジオール構造単位やオキシアルキレン基含有構造単位が好ましい。
まずは、側鎖に1,2-ジオール構造単位について説明する。
側鎖に1,2-ジオール構造単位とは、下記一般式(4)で表されるものである。
(化学式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは単結合又は炭素数1〜4アルキレン鎖を表す。)
一般式(4)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR〜Rは、すべて水素原子であることが側鎖の末端が一級水酸基となり更にブロック共重合体の官能基との反応性が向上する点で望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。炭素数1〜4のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等であり、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
なお、かかる側鎖に1,2−ジオール構造単位の含有量は、本発明の変性PVA系樹脂の全構造単位に対して、通常0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%、更に好ましくは2〜8モル%あり、残る部分は、通常のケン化度相当量のビニルアルコール構造単位とそれ以外は酢酸ビニル構造単位、一般式(1)で表される構造単位を含有する。
次に、ヒドロキシメチル基を有する構造単位について説明する。
ヒドロキシメチル基は以下の一般式(5)で表される。
なお、かかるヒドロキシメチル基を有する構造単位の含有量は、本発明の変性PVA系樹脂の全構造単位に対して、通常0.5〜10モル%であり、好ましくは1〜5モル%であり、残る部分は、通常のケン化度相当量のビニルアルコール構造単位とそれ以外は酢酸ビニル構造単位、一般式(1)で表される構造単位を含有する。
[変性PVA系樹脂の製造]
本発明の変性PVA系樹脂は、通常、構造単位(B)を有するPVA樹脂とヘテロ官能基を有する化合物をグラフト反応させることにより得ることができる。
変性PVA系樹脂の主鎖が有する化学式(1)からなる繰り返し単位、すなわちグラフト反応による側鎖グラフト構造の形成は、原料として用いた構造単位(B)を有するPVA樹脂の水酸基を開始末端とするものである。
(構造単位(B)を有するPVA樹脂)
本発明で用いる構造単位(B)を有するPVA樹脂は、ビニルエステル系モノマーと共重合性を有する変性モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、公知の方法で製造することができる。
側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂及びオキシアルキレン基含有PVA系樹脂は、特開2015−117286号に記載の方法で製造することが出来る。ヒドロキシメチル基含有PVA系樹脂は、特開2013−177576号に記載の方法で製造することが出来る。
また、構造単位(B)を有するPVA樹脂には、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。前記コモノマーは、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3−ブテン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体、1,3−ヒドロキシ−2−メチレンプロパン、1,5−ヒドロキシ−3−メチレンペンタン等ヒドロキシメチルビニリデン類;これらのエステル化物である1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のビニリデンジアセテート類;不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等のコモノマーである。
構造単位(B)を有するPVA樹脂の平均重合度は、200〜1000であることが好ましく、250〜800がより好ましく、300〜600が更に好ましい。かかる平均重合度が低すぎると、材料として脆くなる傾向があり、平均重合度が高すぎると樹脂の溶融粘度が高くなって混練時の加工性が低下する傾向がある。
なお、上記平均重合度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
構造単位(B)を有するPVA樹脂のケン化度は、70〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%がより好ましく、85〜100モル%が更に好ましい。かかるケン化度がこの範囲にあることで、溶融混練を行う際の効率が向上する傾向にある。一方で低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
なお、上記ケン化度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
構造単位(B)を有するPVA樹脂のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、通常0.5〜50g/10分であり、好ましくは1.5〜25g/10分、特に好ましくは2〜20g/10分である。MFRが大きすぎる場合には、バリア性が低下する傾向があり、小さすぎる場合には加工性が低下する傾向がある。
構造単位(B)を有するPVA樹脂の20℃における4重量%水溶液の粘度は、2.5〜70mPa・sが好ましく、3〜12mPa・sがより好ましく、3.5〜6mPa・sが更に好ましい。該粘度が低すぎるとフィルム強度等の機械的物性が劣る傾向があり、高すぎるとフィルムへの製膜性が低下する傾向がある。
なお、上記粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
構造単位(B)を有するPVA樹脂としては、その平均値が、上記要件を充足する組合せであれば、エチレン含有率、ケン化度、MFR、変性種が異なる2種以上のPVA樹脂を混合して用いてもよい。
(ヘテロ官能基を有する化合物)
次に、ヘテロ官能基を有する化合物について説明する。ヘテロ官能基とは、ヘテロ原子を有する官能基であり、ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられ、ヘテロ原子を有する官能基としては、具体的に、エステル基、カルボン酸基、アシル基、チオエステル基、アミド基、カーボネート基、カルバメート基、チオカルバメート基、カルバミド基、N−アシル基、N,N’−ジアシル基等を挙げることができる。
ヘテロ官能基を有する化合物としては、ヘテロ官能基を有する環状化合物、カルボン酸化合物、カーボネート化合物、カルバメート化合物、チオカルバメート化合物、ジアシル化合物、トリアシル化合物、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
<ヘテロ官能基を有する環状化合物>
ヘテロ官能基を有する環状化合物としては、炭素数2以上のヘテロ環状化合物が好ましい。ヘテロ官能基を有する環状化合物としては、例えば、ラクトン類等の環状エステル、ラクタム類等の環状アミド、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、チエタン−2−オン、3,3−ジメチルチエタン−2−オン、4−メチルチエタン−2−オン、3−メチルチエタン−2−オン、3−エチルチエタン−2−オン、3−メチル−3−エチルチエタン−2−オン等の環状チオエステル、エチレンカルバメート等の環状カルバメート、フェニルフタルイミドやシクロヘキサンジカルボキシイミド、等のイミド化合物、N,N’−ジメチルプロピレン尿素や1,3−ジメチル−2−イミダゾリジソン等の環状ウレア誘導体、N−アシル置換カプロラクタム等の環式N,N’−ジアシル化合物、等が挙げられ、これらの中でも環状エステルが好ましく、ラクトン類がより好ましい。
ラクトン類としては、開環重合により脂肪族ポリエステルを形成する炭素原子の数が3〜15であるラクトン類を挙げることができる。このようなラクトン類は、置換基を有さない場合には下記一般式で表され、式中、nは2〜14の整数であり、好ましくはnが4〜5である。また、下記式中のアルキレン鎖−(CH)n−のいずれかの炭素原子が、少なくとも1個の、炭素数が1〜8程度の低級アルキル基、炭素数が1〜8程度の低級アルコキシ基、シクロアルキル基、フェニル基、アラルキル基等の置換基を有するものであってもよい。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン類、γ―ブチロラクトン類、ε−カプロラクトン類、δ−バレロラクトン類等を挙げることができる。
β−プロピオラクトン類としては、例えば、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオンラクトン等が挙げられる。
γ−ブチロラクトン類としては、例えば、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウロラクトン、γ−パルミトラクトン、γ−ステアロラクトン、クロトノラクトン、α−アンゲリカラクトン、β−アンゲリカラクトン等が挙げられる。
ε−カプロラクトン類としては、例えば、ε−カプロラクトン、モノメチル−ε−カプロラクトン、モノエチル−ε−カプロラクトン、モノデシル−ε−カプロラクトン、モノプロピル−ε−カプロラクトン等のモノアルキル−ε−カプロラクトン;2個のアルキル基がε位置以外の炭素原子にそれぞれ置換しているジアルキル−ε−カプロラクトン;3個のアルキル基がε位置以外の炭素原子にそれぞれ置換しているトリアルキル−ε−カプロラクトン;エトキシ−ε−カプロラクトン等のアルコキシ−ε−カプロラクトン;シクロヘキシル−ε−カプロラクトン等のシクロアルキル−ラクトン;ベンジル−ε−カプロラクトン等のアラルキル−ε−カプロラクトン;フェニル−ε−カプロラクトン等のアリール−ε−カプロラクトン等が挙げられる。
δ−バレロラクトン類としては、例えば、5−バレロラクトン、3−メチル−5−バレロラクトン、3,3−ジメチル−5−バレロラクトン、2−メチル−5−バレロラクトン、3−エチル−5−バレロラクトン等が挙げられる。
これらのラクトン類は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、本発明で使用するラクトン類としては、反応性の点から、ε−カプロラクトン類又はδ−バレロラクトン類が好ましく、さらに安価かつ容易に入手できる点から、ε−カプロラクトン類がより好ましい。
<カルボン酸化合物>
カルボン酸化合物としては、直鎖カルボン酸エステル、直鎖カルボン酸チオエステル、直鎖カルボン酸アミド、カルボン酸のアシルハライド、あるいは酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、直鎖カルボン酸エステルが好ましい。
<カーボネート化合物>
カーボネート化合物としては、各種のジアルキルカーボネートやジアリールカーボネート、アリールアルキルカーボネート等が挙げられる。
<カルバメート化合物>
カルバメート化合物としては、メチルカルバメートやエチルカルバメート等が挙げられる。
<チオカルバメート化合物>
チオカルバメート化合物としては、ジメチルアミノ−S−アリールチオカルバメート等の誘導体等が挙げられる。
<ジアシル化合物>
ジアシル化合物としては、ジアセトアミドやジアセチル(シクロペンチル)アザン等が挙げられる。
<トリアシル化合物>
トリアシル化合物としては、トリアセトアミドやトリベンズアミド等が挙げられる。
その他、ヘテロ官能基を有する化合物として、化学式(1)〜(3)中のnで表記された繰り返し構成単位のオリゴマー、あるいは重合体を使用することもできる。例えばポリ−ε−カプロラクトンやポリ乳酸等のポリエステル類、ポリ−ε−カプロラクタム等のポリアミド類、あるいはポリチオエステル類等を使用できる。
上記したように、化学式(1)で表される構造単位を有する、本発明の変性PVA系樹脂の製造方法は、(i)構造単位(B)を有するPVA樹脂とヘテロ官能基を有する化合物を溶融混練し、ヘテロ官能基を有する化合物をPVA系樹脂にグラフト反応し、付加させて製造する方法、(ii)構造単位(B)を有するPVA系樹脂を溶剤に溶かし、得られたPVA系樹脂溶液にヘテロ官能基を有する化合物を含有させ、グラフト反応させて、製造する方法、(iii)構造単位(B)を有するPVA系樹脂を溶剤に膨潤させ、得られたPVA系樹脂膨潤液にヘテロ官能基を有する化合物を含有させ、グラフト反応させて、製造する方法等が挙げられる。
ヘテロ官能基を有する化合物としてヘテロ官能基を有する環状化合物が用いられる場合は、構造単位(B)を有するPVA樹脂の存在下でヘテロ官能基を有する環状化合物の開環重合反応及びグラフト反応を行う。または、ヘテロ官能基を有する化合物としてカルボン酸化合物が用いられる場合は、構造単位(B)を有するPVA樹脂の存在下でカルボン酸化合物の求核置換反応又は脱水縮合反応及びグラフト反応を行う。かかる工程により、本発明の変性PVA系樹脂を製造することができる。
本発明においては、重合材料には、上記したPVA樹脂とモノマーとしてヘテロ官能基を有する化合物を用い、及び所望により重合触媒を含有する。
各材料の仕込みは、各々順次行ってもよいし、予め混合して行ってもよい。中でも、先ずPVA樹脂を仕込み、これにヘテロ官能基を有する化合物を仕込む方法が最も好ましい。かかるヘテロ官能基を有する化合物の仕込みは、PVA樹脂を撹拌しながら行う方法が好ましく用いられる。
モノマーであるヘテロ官能基を有する化合物の使用量は、所望のグラフトした構造単位の含有量が得られるように適宜選択すればよいが、PVA樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜150質量部、更に好ましくは20〜100質量部である。ヘテロ官能基を有する化合物の使用量が少なすぎると、柔軟性が低下する傾向があり、一方で、使用量が多すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
重合触媒としては、例えば金属触媒が挙げられ、ヘテロ官能基を有する環状化合物の開環重合触媒、カルボン酸化合物の求核置換反応触媒又は脱水縮合反応触媒として従来公知のものを用いることができる。
例えば、チタン系化合物、錫系化合物、アルミニウム系化合物、鉄系化合物、ジルコニウム系化合物、亜鉛系化合物、鉛系化合物等を挙げることができる。具体的には、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトライソプロポキシチタンなどのチタニウムアルコキシド、ジブチルジブトキシスズなどのスズアルコキシド、ジブチルスズジアセテート、2−エチルヘキサン酸スズ(II)などのスズエステル化合物などが挙げられるが、これらの中でも本発明の効果がより効果的に得られる点でスズエステル化合物が好ましく、さらにヘテロ官能基を有する化合物に対する相溶性の点からは2−エチルヘキサン酸スズ(II)が好ましい。
重合触媒を使用する場合、その使用量は、モノマーであるヘテロ官能基を有する化合物100質量部に対して、5質量部未満であることが好ましく、好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
(i)の製造方法の場合の溶融混練の条件としては、加熱温度を180〜240℃とすることが好ましく、190〜235℃がより好ましく、195〜210℃が更に好ましい。加熱温度が低すぎるとグラフト反応の効率が低下する場合があり、加熱温度が高すぎると樹脂の着色や粘度増加によって加工性が低下する場合があるため、上記温度範囲で加熱することが好ましい。
(ii)の製造方法の場合の溶液反応の条件としては、原料となるPVAを十分に溶解出来る高極性溶媒を用いることが好ましい。例としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの日プロトン性の高極性溶媒が挙げられるが、溶解性と反応時の安定性からジメチルスルホキシドが特に好ましい。加熱温度は高極性溶媒の沸点と分解温度に依存し、50〜150℃が好ましく、80〜140℃がより好ましい。
(iii)の製造法の場合のPVA系樹脂を溶剤に膨潤させて反応させる条件としては、原料となるPVAを十分に膨潤できる溶媒を用いることが好ましい。例としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸などの各種カルボン酸類を用いることが出来るが、価格と膨潤性の観点から酢酸を用いることが好ましい。加熱温度は膨潤溶媒の沸点に依存し、50〜180℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
グラフト反応後、樹脂の臭気防止の為に、未反応モノマーを除去することが好ましい。
未反応モノマーを除去する方法としては、未反応モノマーが溶解する溶液に浸す方法や減圧除去する方法が挙げられるが、生産効率の観点から、減圧除去する方法が好ましい。
例えば、減圧除去の条件としては、反応温度と同じ設定温度で、100〜1200Paの圧力下で、1秒〜10時間行うことが好ましい。
未反応モノマーが溶解する溶媒としては、未反応モノマーを溶解させつつも本発明の変性PVA系樹脂を溶解させない溶媒であることが好ましい。溶媒は用いるモノマーによって自由に選択されるが、メタノールやエタノールの様な低級アルコールが特に好ましい。
本発明の変性PVA系樹脂の数平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算)としては、通常10000〜300000であり、好ましくは12500〜200000であり、特に好ましくは15000〜100000である。変性PVA系樹脂の数平均分子量が高すぎると、バリア性低下の傾向があり、一方で、変性PVA系樹脂の数平均分子量が低すぎると柔軟性低下の傾向がある。
なお、上記の変性PVA系樹脂中の数平均分子量は、GPC測定結果から算出することができる。
本発明の変性PVA系樹脂の融点としては、100〜190℃であることが好ましく、より好ましくは110〜160℃であり、特に好ましくは120〜150℃である。変性PVA系樹脂の融点が高すぎると、柔軟性低下の傾向があり、一方で、変性PVA系樹脂の融点が低すぎるとバリア性低下の傾向がある。
一般に、上記モノマーがグラフトされることにより、骨格のPVA樹脂における水酸基同士の水素結合等の分子間力が弱くなるため、変性PVA系樹脂中の変性率が高くなると、変性PVA系樹脂の融点が低くなる傾向がある。
なお、上記の変性PVA系樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
本発明の変性PVA系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲において(例えば変性PVA系樹脂に対して5質量%以下)、一般にPVA樹脂に配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などが含有されていてもよい。
可塑剤としては、例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等)等の多価アルコールへエチレンオキサイドを付加した化合物、各種アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合付加体等)、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、キシロール、アラビノース、リブロース等)、ビスフェノールAやビスフェノールS等のフェノール誘導体、N−メチルピロリドン等のアミド化合物、α−メチル−D−グルコシド等のグルコシド類等が挙げられる。
<変性PVA系樹脂の用途>
かくして得られた本発明の変性PVA系樹脂は、溶融成形により例えばフィルム、シート、カップやボトルなどに成形することができる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、通常120〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
成形物は、外観性が良好であることから、光学材料、食品包装材、紙などの表面コーティング剤、繊維のサイジング剤、各種顔料のバインダー等に好適に利用される。¥また、さらに強度を上げたり他の機能を付与したりするために他の基材と積層して積層体とすることもできる。
かかる他の基材としてはPVA樹脂以外の熱可塑性樹脂が有用である。熱可塑性樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂のような生分解性樹脂が挙げられる。
積層体の熱可塑性樹脂層及び接着性樹脂層の厚みは、層構成、熱可塑性樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、熱可塑性樹脂層は通常10〜1000μm、好ましくは50〜500μm、接着性樹脂層は5〜500μm、好ましくは10〜250μm程度の範囲から選択される。
また、本発明の変性PVA系樹脂層の厚みは要求されるガスバリア性などによって異なるが、通常は5〜500μmであり、好ましくは10〜250μm、特に好ましくは20〜100μmであり、かかる厚みが薄すぎると十分なガスバリア性が得られない傾向があり、逆に厚すぎるとフィルムの柔軟性が低下する傾向にある。
また、本発明の変性PVA系樹脂は水溶性であることから、かかる変性PVA系樹脂を水に溶解し、コーティング液として、各種基材に塗布することも出来る。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、特記しない限り質量基準を意味する。
(実施例1)
〔本発明の変性PVA系樹脂の製造〕
3か所混練部を有するスクリュー、モノマー導入部を付属した2軸押出機(テクノベル社製、L/D=60、15mmφ)を用いて、原料投入部より、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(側鎖の1,2−ジオール構造6モル%、平均重合度470、ケン化度99モル%、MFR3.3g(210℃、荷重2,160g))100部を投入し、モノマー導入部より、触媒として2−エチルヘキサン酸スズ(II)(Sn(Oct)2)を1%含有したε−カプロラクトンモノマー(株式会社ダイセル製「PLACCEL M」)30部を連続的に導入し、押出機(スクリュー回転数:200rpm)の中で230℃にて混練した。
混練後の樹脂をストランド状に吐出しながら空気乾燥させた後、ファンカッターで切断することによって本発明の変性PVA系樹脂ペレットを得た。核磁気共鳴分光法を用いた構造解析により、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂とモノマーとの反応率は94%であり、グラフト鎖の平均鎖長は1.7であった。
構造解析については、ブルカージャパン社製 Ascend400の装置を用いて以下の通り行った。
測定装置:
H−NMR測定条件
重溶媒 ジメチルスルホキシド−d6
測定濃度 5重量%
測定温度 50℃
積算回数 16回
H−NMRチャート(図1)
・1.2〜1.7ppm:PVAのメチレンプロトン
・1.9〜2.0ppm:PVAの残存酢酸基のプロトン
・2.1〜2.3ppm:主鎖にグラフトしたカプロラクトン鎖に含まれる
カルボニル基のαメチレンプロトン、及びモノマーが加水分解した開環体
・2.6ppm:残存する未反応のεカプロラクトンモノマー
・4.2〜4.6ppm:水酸基プロトン
13C−NMR測定条件(逆ゲートデカップリング法、緩和時間2秒)
重溶媒 ジメチルスルホキシド−d6
測定濃度 5重量%
測定温度 80℃
積算回数 4096回
13C−NMRチャート(図2)
・60.4ppm:主鎖にグラフトしたカプロラクトン鎖の末端カーボン(a)
・63.3ppm:主鎖にグラフトしたカプロラクトン鎖の繰り返し連鎖中に含まれる末端カーボン(b)
末端カーボン(a)及び末端カーボン(b)の具体的な位置を以下に示す。
<融点評価>
上記で得られた本発明の変性PVA系樹脂ペレットをメトラー・トレド社のDSC1の装置を用いて示差走査熱量測定を行うことで樹脂の融点を測定した。値は2nd Runの融点を採用した。測定条件を以下に示す。
1st Run:−30〜215℃
2nd Run:−30〜230℃
昇温速度:10℃/分
結果を表1に示す。
〔フィルムの作製〕
得られた本発明の変性PVA系樹脂ペレットを用い、圧縮成形機(アズワン社、PRESS AH−10TD)を用いて200℃にて熱プレス成型を行うことで、厚み約50μmのフィルムを得た。
<酸素ガスバリア性評価>
上記で得られたフィルムを、酸素ガス透過量測定装置(モコン社製、「OX−TRAN 2/20)を用いて、OTR(酸素透過度、23℃、内部65%RH、外部50%RH)を測定した。得られたOTRの値は20μm換算で比較した。
結果を表1に示す。
<水溶性評価>
上記で得られたフィルムを2cm×2cmの試験片に切り出して80℃の熱水中で1時間加熱させた後、かき混ぜながら室温まで徐冷させ、水への溶解状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
〇:フィルムが水に溶解し、目視では観察できない状態となった
×:フィルムが水にほとんど溶解せず、目視でフィルムが観察できる状態であった
結果を表1に示す。
<生分解性評価>
上記で得られたフィルムを、それぞれ所定量裁断し、JIS K6950に記載された生分解性試験の方法を参考にし、生分解性の評価を行った。
装置 :閉鎖系酸素消費量測定装置
植種源:大阪市の下水処理場の返送汚泥
標準試験培養液:300mL
植種濃度:90mg/L
温度:25±1℃
期間:28日間
サンプルの元素分析値より算出された理論的酸素要求量に基づいて、生分解度を算出した。
結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、ε−カプロラクトンモノマーを、Sn(Oct)2触媒を2%含有させたε−カプロラクトンとし、導入量を側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂100部に対して20部に変え、押出機内の反応温度を220℃で実施した以外は、実施例1と類似の方法で反応させることで樹脂ペレットを得た。核磁気共鳴分光法を用いた構造解析により、樹脂とモノマーとの反応率は99%で、グラフト鎖の平均鎖長は2.7であった。
得られた本発明の変性PVA樹脂ペレットを用いて実施例1と同様の方法でフィルムを得、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例1
未変性PVA(ケン化度:75モル%、MFR:5.2g/10分(210℃、荷重2160g))100部を、ブラベンダー社のプラスチコーダーを用いて、220℃で溶融状態とさせた。その後ε−カプロラクトンモノマー(触媒含有無し)30部を加えて、220℃、50rpmの条件で10分間溶融混練によって反応させることで変性PVA系樹脂を得た。核磁気共鳴分光法を用いた構造解析により、樹脂とモノマーとの反応率は93%で、グラフト鎖の平均鎖長は1.0であった。
得られた樹脂ペレットを用いて実施例1と同様の方法でフィルムを得、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例2
側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂(ケン化度:99モル%、側鎖の1,2−ジオール構造6モル%、平均重合度1200)の各種評価を行った。
樹脂を90℃熱水に溶解させて水溶液を得た後、23℃、50%RHの環境で乾燥させることでフィルムを得、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
本発明の変性PVA系樹脂を用いた実施例1及び2は、ガスバリア性、水溶性、生分解性を有するものであった。一方、構造単位(B)を有しない未変性PVAを用いた比較例1は、ガスバリア性が劣り、更には水に対して溶解しないものであった。
また、構造単位(B)を有するPVA系樹脂をカプロラクトン変性しなかった比較例2は、生分解に時間を要するものであった。
本発明によって得られた変性PVAは、成形性と水溶性を有するため、各種成形物関係、積層構造体、被覆材関係、乳化剤、懸濁剤の分野等に好適に用いることが出来る。特に低温での成形性と適度なバリア性を持つために、ホットメルトやヒートシール用の材料として好適に用いることができる。更に生分解性が良好であるので、生分解性の包材や成形物の用途に好適に用いることが出来る。

Claims (6)

  1. 構造単位(A)及び構造単位(B)を主鎖に有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であって、
    構造単位(A)は、下記一般式(1)で表れる構造単位であり、
    構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であることを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂。
    (化学式(1)中、Xはヘテロ原子を有する有機鎖を表し、nは正の整数を表す。)
  2. 前記変性ポリビニルアルコール系樹脂における前記一般式(1)中のnの平均値が1〜10の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
  3. 前記化学式(1)において、Xにおけるヘテロ原子が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
  4. 構造単位(B)が、下記一般式(4)で表される側鎖1,2−ジオール構造を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
    (化学式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは単結合又は炭素数1〜4アルキレン鎖を表す。)
  5. 構造単位(B)が、下記一般式(5)で表されるヒドロキシメチル基を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法であって、
    ポリビニルアルコール系樹脂とヘテロ官能基を有する化合物を溶融混練する工程を含むことを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法。
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