JP2020090583A - 変性ポリビニルアルコール系樹脂およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
結晶性が高いため、ガスバリア性が高く、包装材等のバリア性が求められる用途として有用である一方、結晶性が高いために、柔軟性が低下し、ピンホール等が生じやすいという欠点があった。
また、ケン化度が低いPVA系樹脂に、疎水基であるラクトン基で変性するため水溶性が劣るという問題があった。
そこで、溶融成形が比較的容易で、ガスバリア性にも優れ、水溶性にも優れる、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂が提案されている。しかしながら、かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂は、生分解性と溶融成形性については、まだまだ改善の余地があった。
そこで、本発明は、ガスバリア性と水溶性と生分解性、3つの性能を有する変性PVA系樹脂を提供することを目的とする。
構造単位(A)は、下記一般式(1)で表れる構造単位であり、
構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であることを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂に関するものである。
本発明の変性PVA系樹脂は、構造単位(A)及び(B)を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であって、
構造単位(A)は、下記一般式(1)で表され、主鎖に結合し、
構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であることを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂である。
化学式(1)において、Xはヘテロ原子を有する有機鎖を表す。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられる。これらのうち工業的観点からは、ヘテロ原子は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が好ましく、特には酸素原子が好ましい。
これらの中でも、ガスバリア性を向上させるという観点から、繰り返し単位としては、−CO−Rx−O−、−CO−Rx−NH−又は−CO−Rx−S−が好ましく、特にはZが酸素原子であることが好ましく、具体的には、繰り返し単位が−CO−Rx−O−の場合、化学式(1)は下記化学式(3)で表される。
なお、本発明の変性PVA系樹脂中の変性率は、核磁気共鳴分光による測定結果から算出することができる。
本発明の変性PVA系樹脂における化学式(1)〜(3)中のグラフト鎖の平均鎖長は、核磁気共鳴分光による測定結果から算出することができる。
構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であって、例えば、側鎖に1,2-ジオール構造単位やヒドロキシメチル基を有する構造単位が挙げられる。
中でも生産性の点で、側鎖に1,2-ジオール構造単位やオキシアルキレン基含有構造単位が好ましい。
側鎖に1,2-ジオール構造単位とは、下記一般式(4)で表されるものである。
ヒドロキシメチル基は以下の一般式(5)で表される。
本発明の変性PVA系樹脂は、通常、構造単位(B)を有するPVA樹脂とヘテロ官能基を有する化合物をグラフト反応させることにより得ることができる。
変性PVA系樹脂の主鎖が有する化学式(1)からなる繰り返し単位、すなわちグラフト反応による側鎖グラフト構造の形成は、原料として用いた構造単位(B)を有するPVA樹脂の水酸基を開始末端とするものである。
本発明で用いる構造単位(B)を有するPVA樹脂は、ビニルエステル系モノマーと共重合性を有する変性モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、公知の方法で製造することができる。
側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂及びオキシアルキレン基含有PVA系樹脂は、特開2015−117286号に記載の方法で製造することが出来る。ヒドロキシメチル基含有PVA系樹脂は、特開2013−177576号に記載の方法で製造することが出来る。
なお、上記平均重合度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
なお、上記ケン化度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
なお、上記粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
次に、ヘテロ官能基を有する化合物について説明する。ヘテロ官能基とは、ヘテロ原子を有する官能基であり、ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられ、ヘテロ原子を有する官能基としては、具体的に、エステル基、カルボン酸基、アシル基、チオエステル基、アミド基、カーボネート基、カルバメート基、チオカルバメート基、カルバミド基、N−アシル基、N,N’−ジアシル基等を挙げることができる。
ヘテロ官能基を有する環状化合物としては、炭素数2以上のヘテロ環状化合物が好ましい。ヘテロ官能基を有する環状化合物としては、例えば、ラクトン類等の環状エステル、ラクタム類等の環状アミド、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、チエタン−2−オン、3,3−ジメチルチエタン−2−オン、4−メチルチエタン−2−オン、3−メチルチエタン−2−オン、3−エチルチエタン−2−オン、3−メチル−3−エチルチエタン−2−オン等の環状チオエステル、エチレンカルバメート等の環状カルバメート、フェニルフタルイミドやシクロヘキサンジカルボキシイミド、等のイミド化合物、N,N’−ジメチルプロピレン尿素や1,3−ジメチル−2−イミダゾリジソン等の環状ウレア誘導体、N−アシル置換カプロラクタム等の環式N,N’−ジアシル化合物、等が挙げられ、これらの中でも環状エステルが好ましく、ラクトン類がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、直鎖カルボン酸エステル、直鎖カルボン酸チオエステル、直鎖カルボン酸アミド、カルボン酸のアシルハライド、あるいは酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、直鎖カルボン酸エステルが好ましい。
カーボネート化合物としては、各種のジアルキルカーボネートやジアリールカーボネート、アリールアルキルカーボネート等が挙げられる。
カルバメート化合物としては、メチルカルバメートやエチルカルバメート等が挙げられる。
チオカルバメート化合物としては、ジメチルアミノ−S−アリールチオカルバメート等の誘導体等が挙げられる。
ジアシル化合物としては、ジアセトアミドやジアセチル(シクロペンチル)アザン等が挙げられる。
トリアシル化合物としては、トリアセトアミドやトリベンズアミド等が挙げられる。
例えば、チタン系化合物、錫系化合物、アルミニウム系化合物、鉄系化合物、ジルコニウム系化合物、亜鉛系化合物、鉛系化合物等を挙げることができる。具体的には、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトライソプロポキシチタンなどのチタニウムアルコキシド、ジブチルジブトキシスズなどのスズアルコキシド、ジブチルスズジアセテート、2−エチルヘキサン酸スズ(II)などのスズエステル化合物などが挙げられるが、これらの中でも本発明の効果がより効果的に得られる点でスズエステル化合物が好ましく、さらにヘテロ官能基を有する化合物に対する相溶性の点からは2−エチルヘキサン酸スズ(II)が好ましい。
未反応モノマーを除去する方法としては、未反応モノマーが溶解する溶液に浸す方法や減圧除去する方法が挙げられるが、生産効率の観点から、減圧除去する方法が好ましい。
例えば、減圧除去の条件としては、反応温度と同じ設定温度で、100〜1200Paの圧力下で、1秒〜10時間行うことが好ましい。
なお、上記の変性PVA系樹脂中の数平均分子量は、GPC測定結果から算出することができる。
一般に、上記モノマーがグラフトされることにより、骨格のPVA樹脂における水酸基同士の水素結合等の分子間力が弱くなるため、変性PVA系樹脂中の変性率が高くなると、変性PVA系樹脂の融点が低くなる傾向がある。
なお、上記の変性PVA系樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
かくして得られた本発明の変性PVA系樹脂は、溶融成形により例えばフィルム、シート、カップやボトルなどに成形することができる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、通常120〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
かかる他の基材としてはPVA樹脂以外の熱可塑性樹脂が有用である。熱可塑性樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂のような生分解性樹脂が挙げられる。
〔本発明の変性PVA系樹脂の製造〕
3か所混練部を有するスクリュー、モノマー導入部を付属した2軸押出機(テクノベル社製、L/D=60、15mmφ)を用いて、原料投入部より、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(側鎖の1,2−ジオール構造6モル%、平均重合度470、ケン化度99モル%、MFR3.3g(210℃、荷重2,160g))100部を投入し、モノマー導入部より、触媒として2−エチルヘキサン酸スズ(II)(Sn(Oct)2)を1%含有したε−カプロラクトンモノマー(株式会社ダイセル製「PLACCEL M」)30部を連続的に導入し、押出機(スクリュー回転数:200rpm)の中で230℃にて混練した。
構造解析については、ブルカージャパン社製 Ascend400の装置を用いて以下の通り行った。
1H−NMR測定条件
重溶媒 ジメチルスルホキシド−d6
測定濃度 5重量%
測定温度 50℃
積算回数 16回
・1.2〜1.7ppm:PVAのメチレンプロトン
・1.9〜2.0ppm:PVAの残存酢酸基のプロトン
・2.1〜2.3ppm:主鎖にグラフトしたカプロラクトン鎖に含まれる
カルボニル基のαメチレンプロトン、及びモノマーが加水分解した開環体
・2.6ppm:残存する未反応のεカプロラクトンモノマー
・4.2〜4.6ppm:水酸基プロトン
重溶媒 ジメチルスルホキシド−d6
測定濃度 5重量%
測定温度 80℃
積算回数 4096回
・60.4ppm:主鎖にグラフトしたカプロラクトン鎖の末端カーボン(a)
・63.3ppm:主鎖にグラフトしたカプロラクトン鎖の繰り返し連鎖中に含まれる末端カーボン(b)
末端カーボン(a)及び末端カーボン(b)の具体的な位置を以下に示す。
上記で得られた本発明の変性PVA系樹脂ペレットをメトラー・トレド社のDSC1の装置を用いて示差走査熱量測定を行うことで樹脂の融点を測定した。値は2nd Runの融点を採用した。測定条件を以下に示す。
1st Run:−30〜215℃
2nd Run:−30〜230℃
昇温速度:10℃/分
結果を表1に示す。
得られた本発明の変性PVA系樹脂ペレットを用い、圧縮成形機(アズワン社、PRESS AH−10TD)を用いて200℃にて熱プレス成型を行うことで、厚み約50μmのフィルムを得た。
上記で得られたフィルムを、酸素ガス透過量測定装置(モコン社製、「OX−TRAN 2/20)を用いて、OTR(酸素透過度、23℃、内部65%RH、外部50%RH)を測定した。得られたOTRの値は20μm換算で比較した。
結果を表1に示す。
上記で得られたフィルムを2cm×2cmの試験片に切り出して80℃の熱水中で1時間加熱させた後、かき混ぜながら室温まで徐冷させ、水への溶解状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
〇:フィルムが水に溶解し、目視では観察できない状態となった
×:フィルムが水にほとんど溶解せず、目視でフィルムが観察できる状態であった
結果を表1に示す。
上記で得られたフィルムを、それぞれ所定量裁断し、JIS K6950に記載された生分解性試験の方法を参考にし、生分解性の評価を行った。
装置 :閉鎖系酸素消費量測定装置
植種源:大阪市の下水処理場の返送汚泥
標準試験培養液:300mL
植種濃度:90mg/L
温度:25±1℃
期間:28日間
サンプルの元素分析値より算出された理論的酸素要求量に基づいて、生分解度を算出した。
結果を表1に示す。
実施例1において、ε−カプロラクトンモノマーを、Sn(Oct)2触媒を2%含有させたε−カプロラクトンとし、導入量を側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂100部に対して20部に変え、押出機内の反応温度を220℃で実施した以外は、実施例1と類似の方法で反応させることで樹脂ペレットを得た。核磁気共鳴分光法を用いた構造解析により、樹脂とモノマーとの反応率は99%で、グラフト鎖の平均鎖長は2.7であった。
得られた本発明の変性PVA樹脂ペレットを用いて実施例1と同様の方法でフィルムを得、同様に評価した。結果を表1に示す。
未変性PVA(ケン化度:75モル%、MFR:5.2g/10分(210℃、荷重2160g))100部を、ブラベンダー社のプラスチコーダーを用いて、220℃で溶融状態とさせた。その後ε−カプロラクトンモノマー(触媒含有無し)30部を加えて、220℃、50rpmの条件で10分間溶融混練によって反応させることで変性PVA系樹脂を得た。核磁気共鳴分光法を用いた構造解析により、樹脂とモノマーとの反応率は93%で、グラフト鎖の平均鎖長は1.0であった。
得られた樹脂ペレットを用いて実施例1と同様の方法でフィルムを得、同様に評価した。結果を表1に示す。
側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂(ケン化度:99モル%、側鎖の1,2−ジオール構造6モル%、平均重合度1200)の各種評価を行った。
樹脂を90℃熱水に溶解させて水溶液を得た後、23℃、50%RHの環境で乾燥させることでフィルムを得、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
また、構造単位(B)を有するPVA系樹脂をカプロラクトン変性しなかった比較例2は、生分解に時間を要するものであった。
Claims (6)
- 構造単位(A)及び構造単位(B)を主鎖に有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であって、
構造単位(A)は、下記一般式(1)で表れる構造単位であり、
構造単位(B)は、側鎖の末端に水酸基を有するアルキル基を有する構造単位であることを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂。
- 前記変性ポリビニルアルコール系樹脂における前記一般式(1)中のnの平均値が1〜10の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
- 前記化学式(1)において、Xにおけるヘテロ原子が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
- 構造単位(B)が、下記一般式(4)で表される側鎖1,2−ジオール構造を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
- 構造単位(B)が、下記一般式(5)で表されるヒドロキシメチル基を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
- 請求項1〜5のいずれか記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂とヘテロ官能基を有する化合物を溶融混練する工程を含むことを特徴とする変性ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法。
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