[第1実施形態]
(ダイカストマシンの概要)
図1は、第1実施形態に係るダイカストマシン1の要部構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。図1において、紙面上下方向は鉛直方向である。
ダイカストマシン1は、ビレット状(換言すれば固体状)の金属材料を加熱して半溶融状態又は溶湯状態(完全に溶融した状態)にし、当該金属材料を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出する。金型101内に射出された金属材料は、金型101に熱を奪われて凝固し、ダイカスト品(成形品)となる。
金属材料は、適宜なものとされてよく、一例を挙げると、アルミニウム又はアルミニウム合金である。ビレットは、1ショットの鋳造に必要十分な大きさを有している。また、ビレットの形状は、後述する容器内への配置に支障が生じない限り、任意の形状とされてよい。半溶融状態は、換言すれば、液相と固相とが混在した状態である。溶湯状態は、換言すれば、液相の状態である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、ビレットを加熱して半溶融状態又は溶湯状態にする金属加熱供給装置2(以下、単に「供給装置2」ということがある。)と、供給装置2から供給された半溶融状態又は溶湯状態の金属を金型101内に充填するマシン本体3(狭義のダイカストマシン)と、これらを制御する制御ユニット5とを有している。
(マシン本体)
マシン本体3は、公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、マシン本体3(又はダイカストマシン1)は、その全体の動作が電動式の動力源によって実現される全電動式のものとされてよい。換言すれば、マシン本体3(又はダイカストマシン1)は、油圧シリンダ又はエアシリンダ等を有さないものとされてよい。
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に金属材料を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。
型締装置7は、例えば、固定金型103を保持する固定ダイプレート13と、移動金型105を保持する移動ダイプレート15とを有している。移動ダイプレート15は、電動機17の駆動力によって固定ダイプレート13に近接及び離反する方向(型開閉方向)に駆動される。図示の例では、電動機17の回転がねじ機構によって並進運動に変換されてリンク機構18を介して移動ダイプレート15に伝達される構成を開示している。型締装置7は、いわゆる横型締めタイプとされている。すなわち、型開閉方向は水平方向である。
射出装置9は、例えば、金型101内に通じる射出スリーブ19と、射出スリーブ19内を摺動可能なプランジャ21と、プランジャ21を駆動する射出駆動部23とを有している。なお、射出に関する説明においては、金型101側(図1の紙面左側)を前方、その反対側を後方ということがある。
射出スリーブ19は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材である。プランジャ21は、射出スリーブ19内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ21aと、先端がプランジャチップ21aに固定されたプランジャロッド21bとを有している。射出駆動部23は、例えば、図1では筐体(符号省略)に隠れて見えないが、電動式の電動機25(図5参照)の回転を並進運動に変換してプランジャ21に伝達する構成とされている。なお、電動機25は、リニアモータとされてもよい。
射出駆動部23(その筐体等)は、例えば、射出フレーム27に固定されてよい。射出フレーム27の構成は、例えば、公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、射出フレーム27は、いわゆるCフレームであり、図示のようにC字状に湾曲した形状とされている。そして、C字の両端は固定ダイプレート13に対して固定されている。平面透視において、射出スリーブ19及びプランジャ21は、例えば、射出フレーム27の幅方向(図1の紙面貫通方向)中央に位置している。
射出装置9は、いわゆる横射出のタイプとされている。すなわち、射出軸心CL1は水平である。射出軸心CL1は、背景技術の説明で述べたように、射出スリーブ19及びプランジャ21の軸心である。
押出装置11は、例えば、電動機29の駆動力によって移動金型105の固定金型103への対向面から押出ピン(符号省略)を押し出す構成とされている。電動機29は、回転式のものであってもよいし、リニアモータであってもよい。
なお、上記では、ダイカストマシン1が全電動式であるものとして、型締装置7、射出装置9及び押出装置11について説明した。ただし、ダイカストマシン1は、これら各装置の駆動力を油圧シリンダによって得る油圧式のものであってもよいし、油圧式と電動式とが組み合わされたハイブリッド式のものであってもよい。
型締装置7によって金型101が型閉じされ、さらに型締めされると、供給装置2によって1ショット分の金属材料が射出スリーブ19内へ供給される。なお、供給される金属材料が半溶融状態のものである場合においては、型締め前に金属材料を射出スリーブ19に供給することも可能である。次に、射出装置9は、プランジャ21を図示の初期位置から射出スリーブ19内を前進させる。これにより、射出スリーブ19内の金属材料が金型101内に押し出される(射出される)。金型101内の金属材料は、金型101に熱を奪われて凝固してダイカスト品となる。
その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。また、この型開きの際又はその後、押出装置11は、移動金型105からダイカスト品を押し出す。射出装置9は、プランジャ21を後退させて初期位置へ復帰させる。なお、射出装置9は、プランジャ21を後退させる前に、型開きに伴ってダイカスト品が固定金型103から離れるようにプランジャ21によってダイカスト品を押してもよい。
ダイカストマシン1は、基本的には、上記のような一連の動作を含む鋳造サイクルを一定の周期で繰り返し行う。
本実施形態では、後述の説明から理解されるように、ダイカストマシン1は、半溶融状態の金属材料を金型101内に射出するダイカストマシン、及び溶湯状態の金属材料を金型101内に射出するダイカストマシンのいずれとして構成又は運用されてよい。射出装置9等の具体的な動作も、その金属材料の状態に応じて適宜に設定されてよい。例えば、半溶融状態の金属材料が射出される態様においては、いわゆる層流充填のように、比較的低い一定の射出速度でプランジャ21が前進駆動されてよい。また、例えば、溶湯状態の金属材料が射出される態様においては、いわゆる低速射出及び高速射出が順次行われるようにプランジャ21が前進駆動されてよい。
(金属加熱供給装置)
図2は、供給装置2の要部構成を示す模式図である。図2は、図1のII−II線において供給装置2を見た図(図1の紙面右側から固定ダイプレート13の背後に位置する供給装置2を見た図)となっている。図2の紙面上方は鉛直上方である。また、図3は、図2のIII−III線における断面図である。図3は、供給装置2を上方から見た断面図となっている。射出軸心CL1及び回転軸CL2(後述)等の位置関係から理解されるように、図3の紙面下方は図2の紙面左側に対応している。
供給装置2は、例えば、ビレット111(図3)を収容する複数の容器31と、複数の容器31を保持している支持部材33と、支持部材33を回転軸CL2回りに回転させる回転駆動部35と、複数の容器31を加熱する加熱部37とを有している。また、供給装置2は、容器31をシールするシール機構39を有していてもよい。回転軸CL2は、ここでは、具体的な部材ではなく、支持部材33の回転中心を示す概念的な軸である。回転軸CL2は、射出軸心CL1に並列(例えば平行。別の観点では水平)となっている。
支持部材33が回転軸CL2回りに回転することによって複数の容器31は互いに同一の軌道OB上を移動する。各容器31は、軌道OBを1周する間に、種々の処理がなされる。例えば、容器31は、図2において矢印y1で示すように反時計回りに回転し、第1位置Ps1ではエアブロー等が行われ、第2位置Ps2ではビレット111が搬入される。また、容器31が第2位置Ps2から第7位置Ps7を経由して供給位置Ps0に到達するまでの間においては、加熱部37によって容器31内のビレット111が加熱され、ビレット111は半溶融状態又は溶湯状態の金属材料とされる。この金属材料の液相部分の容器31からの漏れはシール機構39によって低減される。供給位置Ps0では、半溶融状態又は溶湯状態の金属材料が容器31から取り出される。各容器31が1周する周期と、鋳造の周期(射出等の周期)とは同一である。図3では、第4位置Ps4にビレット111を示しているが、ビレット111は、第4位置Ps4において既に半溶融状態になっていてもよい。
なお、供給位置Ps0及び第1位置Ps1〜第7位置Ps7については、便宜上、軌道OB上の位置(容器31が通過する位置)のように表現する場合と、支持部材33の回転位置のように表現する場合とがある。後述する主停止位置PsM及び副停止位置PsSについても同様である。
ダイカストマシン1は、図2に模式的に矩形で示すように、軌道OBに沿って、支持部材33の回転に同期して上記の種々の処理等を行う装置を有している。例えば、ダイカストマシン1は、プランジャ21の潤滑等を行う射出側噴出装置41と、容器31にエアブロー等を行う容器側噴出装置43と、容器31にビレット111を搬入する搬入装置45と、容器31内の金属材料の温度を検出する温度センサ47とを有している。なお、射出側噴出装置41は射出装置9の一部と捉えられてよい。容器側噴出装置43、搬入装置45及び/又は温度センサ47は、供給装置2の一部と捉えられてよい。
(容器及び射出スリーブ)
図3に示しているように、複数の容器31は、軌道OB上を移動することによって、順次、供給位置Ps0において射出スリーブ19の一部を構成する。換言すれば、射出スリーブ19は、金型101内に通じているスリーブ本体19aと、スリーブ本体19aの後方に同軸に位置している容器31と、容器31の後方に同軸に位置しているスリーブ後端19bとを有している。従って、容器31内で溶融された半溶融状態又は溶湯状態の金属材料は、プランジャ21によってスリーブ本体19a側へ押し出されることによって容器31から取り出される。すなわち、容器31からの金属材料の取出しは、射出動作の一部となっている。
スリーブ本体19a及びスリーブ後端19bの構成は、概略、公知の射出スリーブから中間部分を無くしたものとされてよい。スリーブ本体19a及びスリーブ後端19bは、固定ダイプレート13等に対して固定的な部分であり、これらの部材を支持するための部材は適宜な構成とされてよい。図示の例では、スリーブ本体19aは、固定ダイプレート13の孔(符号省略)に嵌合されることなどによって支持されている。スリーブ後端19bは、後述するようにシール機構39によって支持されている。
容器31は、例えば、概略、公知の射出スリーブの中間部分と同様の構成に対して、適宜な変形を加えた構成とされてよい。従って、容器31は、基本的に、射出軸心CL1(回転軸CL2)に平行な方向を軸方向とする筒状である。また、内径は軸方向に一定であり、軸方向の両端は開口している。図示の例では、容器31は、固定ダイプレート13側の端部付近に支持部材33との固定に供される鍔部(符号省略)を有している。また、図示の例では、容器31は、両端において端面側ほど肉厚が薄くされており、端面の面積が小さくされている。これは、例えば、後述の説明から理解されるように、シール機構39との摺動抵抗を低減することに寄与する。容器31の材料は、その内部でビレット111が溶融されることに照らして、通常の射出スリーブの材料とは異なるものとされてもよい。
(支持部材)
支持部材33は、回転軸CL2回りの同一円周上に容器31を保持可能な種々の構成とされてよい。図示の例では、支持部材33は、固定ダイプレート13の背面に対向する金属製のプレート部33aを有している。プレート部33aは、図2に示されているように、回転軸CL2から放射方向へ延びる複数の延在部33aaを有している。そして、複数の容器31は、複数の延在部33aaの先端にて保持されている。
延在部33aaの本数は、容器31の数と同数である。図示の例では、延在部33aa(容器31)の数は、比較的少なくされている。例えば、延在部33aaの数は、8以下又は4以下である。複数の延在部33aa(別の観点では複数の容器31)は、回転軸CL2回りに均等に配置されている。すなわち、複数の容器31のピッチPt1(図2)は一定である。図示の例では、延在部33aaの数は4つであるから、ピッチPt1を回転軸CL2回りの角度で表現すると、容器31の中心を基準として、ピッチPt1は90°である。
プレート部33aの厚さは適宜に設定されてよく、例えば、容器31の軸方向の長さの1/5以下である。また、プレート部33aは、容器31の適宜な位置を保持してよく、図示の例では、容器31のうちの固定ダイプレート13側の部分(例えば容器31を軸方向に4等分したうちの端部側部分)を保持している。このように容器31の端部側を1枚のプレート部33aによって保持する構成とすると、例えば、加熱部37、射出側噴出装置41及び容器側噴出装置43等の種々の装置の配置及び/又は動作に必要なスペースを確保することが容易化される。
プレート部33a(延在部33aa)と容器31との固定方法は適宜なものとされてよい。図示の例では、プレート部33aには、回転軸CL2回りの同一円周上に複数の孔(符号省略)が形成されている。複数の容器31は、前記の複数の孔に挿入されている。この挿入に伴って、容器31の鍔部(符号省略)はプレート部33aに重なっている。鍔部とプレート部33aとは不図示のボルトによって互いに固定されている。
支持部材33の軸支も適宜になされてよい。図示の例では、供給装置2は、固定ダイプレート13に対して回転不可能に取り付けられた軸部材49(図3)を有している。支持部材33は、適宜な軸受(符号省略)を介して軸部材49に対して回転可能に、かつ軸方向へ移動不可能に取り付けられている。より詳細には、支持部材33は、プレート部33aから固定ダイプレート13とは反対側へ突出する筒部33bを有しており、軸部材49は筒部33bに挿通されている。このような筒部33bを設けることによって、例えば、支持部材33の軸部材49に対する傾斜が低減される。
(回転軸の位置及び回転方向)
回転軸CL2は、例えば、射出軸心CL1に対して、射出軸心CL1に直交する水平方向にずれている。この水平方向へのずれの量は適宜に設定されてよい。図2に示す例では、回転軸CL2は、上下方向に見て射出フレーム27と重ならない位置まで射出軸心CL1から離れている。回転軸CL2の上下方向の位置は適宜に設定されてよい。図示の例では、回転軸CL2の高さは、射出軸心CL1の高さと同一とされている。
上記のような回転軸CL2の配置によって、例えば、支持部材33と射出フレーム27とは干渉しにくくなっている。別の観点では、支持部材33(別の観点では軌道OB)の半径を大きくすることができる。図示の例では、射出軸心CL1に直交する水平方向に見たときに、射出フレーム27の下部と支持部材33の下部とが重複している。
また、上記のような回転軸CL2の配置によって、容器31が射出スリーブ19の一部を構成する供給位置Ps0は、回転軸CL2に対して水平方向(別の観点では同一高さ)に位置している。支持部材33の回転方向は、図示の例のように容器31が供給位置Ps0から下方へ移動する方向であってもよいし、その反対方向であってもよい。
(回転駆動部)
回転駆動部35は、例えば、回転式の電動機51(図3)の回転を支持部材33へ伝達する構成とされている。電動機51から支持部材33へ回転を伝達するための伝達機構53の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、伝達機構53は、電動機51の回転が入力される減速機55と、減速機55から出力される回転を支持部材33へ伝える巻掛け伝動機構57とを有している。
電動機51は、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、ステッピングモータ、サーボモータ、ブレーキ付きモータ等の適宜な方式のものとされてよい。また、電動機51の位置及び向き等も適宜に設定されてよい。図示の例では、電動機51は、出力軸(減速機55に隠れて不図示)を固定ダイプレート13の背後に向けた状態で固定ダイプレート13の側面(上面でもよい)に対して固定されている。
減速機55は、特に図示しないが、例えば、歯車装置によって構成されており、電動機51の回転を減速して出力する。減速機55の位置及び向き等は適宜に設定されてよい。図示の例では、減速機55は、電動機51の出力軸側において固定ダイプレート13の側面(上面でもよい)に対して固定されている。また、減速機55は、その出力軸(符号省略)を固定ダイプレート13の背後に向けている。
巻掛け伝動機構57は、例えば、ローラーチェーンドライブによって構成されている。具体的には、巻掛け伝動機構57は、減速機55の出力軸に同心に固定されている第1スプロケット59と、第1スプロケット59に掛けられているローラーチェーン61(模式的に示す)と、ローラーチェーン61が掛けられている第2スプロケット63(図3)とを有している。第2スプロケット63は、支持部材33に対して同軸に固定されている。従って、減速機55の回転は、第1スプロケット59、ローラーチェーン61及び第2スプロケット63を介して支持部材33に伝達される。
より詳細には、例えば、第2スプロケット63は、軸部材49が挿通される孔(符号省略)を有しているリング状とされており、支持部材33の筒部33bのうちの固定ダイプレート13側の端部に固定されている。特に図示しないが、巻掛け伝動機構57は、ローラーチェーン61を押圧するピンチローラーを有していてもよい。巻掛け伝動機構57は、例えば、電動機51及び減速機55の軸心から離れた位置にある回転軸CL2に回転を伝達することに寄与している。巻掛け伝動機構57は、減速機55からの回転を減速してもよいし(図示の例)、減速しなくてもよい。
ここで、回転駆動部35の位置決め精度の試算例について述べる。電動機51として、1パルスで0.72°回転する5相ステッピングモータを想定する。減速機55及び巻掛け伝動機構57は、電動機51の回転を1/20に減じて支持部材33に伝達すると仮定する。また、容器31の軌道OBの直径は1000mmであるものとする。この場合、1パルスで容器31が軌道OB上を移動する距離は、π×1000mm×0.72°/360°×1/20=約0.31mmである。電動機51の位置決め精度が±0.05°であるとすると、回転駆動部35とは別に位置決め機構を設けなくても十分な精度で容器31を回転軸CL2回りに位置決めできることが分かる。
(加熱部)
加熱部37は、例えば、複数の容器31に対して個別に設けられた複数の個別加熱具65(図3)を有している。複数の個別加熱具65は、例えば、複数の容器31と共に回転軸CL2回りに回転し、また、互いに独立に複数の容器31を加熱可能である。各個別加熱具65は、例えば、自己に対応する容器31の回りに巻き回された誘導加熱コイルによって構成されている。誘導加熱コイルの構成は、公知の種々のものとされてよい。誘導加熱コイルの容器31(別の観点では支持部材33)に対する固定も適宜な方法によってなされてよい。
(シール機構)
シール機構39は、回転軸CL2回りに回転不可能な第1シール部材67(図3)及び第2シール部材69(図2及び図3)を有している。第1シール部材67及び第2シール部材69は、回転軸CL2に平行な方向において軌道OBを挟んで互いに対向している第1摺動面67a及び第2摺動面69aを有している。複数の容器31は、その回転軸CL2に平行な方向の両端を第1摺動面67a及び第2摺動面69aに摺動させつつ、軌道OB上を移動する。これにより、容器31の両端の開口は、第1摺動面67a及び第2摺動面69aによって塞がれる。
第1シール部材67及び第2シール部材69は、容器31が射出スリーブ19の一部を構成する供給位置Ps0においては非配置とされている。これにより、供給位置Ps0に位置している容器31は、第1シール部材67及び第2シール部材69に塞がれず、内部をプランジャ21が摺動可能となっている。
具体的には、例えば、第1シール部材67は、スリーブ本体19aと容器31とを連通する孔67h(図3)を有している。また、第2シール部材69は、例えば、スリーブ後端19bの一部が嵌合する切欠き69h(図2)を有している。なお、特に図示しないが、第2シール部材69は、容器31とスリーブ後端19bとを連通する孔を有する構成とされてもよいし、スリーブ後端19bが挿通される孔を有する構成とされてもよい。
回転軸CL2に平行に見たときの第2摺動面69a(第2シール部材69)の形状は、図2において点線で例示されている。回転軸CL2に平行な方向に見て、第1摺動面67a(第1シール部材67)の形状は、概略、第2摺動面69aの形状と、スリーブ後端19bの形状とを足し合わせた形状である。第1摺動面67a及び第2摺動面69aは、例えば、回転軸CL2に平行に見て、軌道OBの一部範囲のみに亘って広がっている。
従って、複数の容器31のうち、一部の容器31のみが第1摺動面67a及び第2摺動面69aによって塞がれる。具体的には、例えば、第1摺動面67a及び第2摺動面69aは、容器31が射出スリーブ19を構成する供給位置Ps0からその手前の第7位置Ps7までの間において広がっている。従って、容器31の開口は、第7位置Ps7から供給位置Ps0の直前までの間において塞がれる。なお、図3では、シール機構39のうち図示の断面よりも手前側の部分が2点鎖線で示されている。
別の観点では、例えば、第1摺動面67a及び第2摺動面69aは、複数の容器31のうち、供給位置Ps0に到達する前の少なくとも1つの容器31(図示の例では1つ)を塞ぐとともに、供給位置Ps0を過ぎた後の少なくとも2つの容器31(図示の例では3つ)を開放する(塞がない。)。なお、供給位置Ps0に到達する前の少なくとも1つの容器31が塞がれるという場合、例えば、少なくとも1つの容器31の開口の全体が少なくとも一時的に塞がれることをいう。従って、例えば、摺動面が供給位置Psから第7位置Ps7へ延びる長さが図示の例よりも短く(例えば半分程度で)、開口が塞がれる容器31が1つも存在しない状態が生じてもよい。同様に、供給位置Ps0を過ぎた後の2つの容器31が開放されるという場合、開口全体が開放される容器31が一時的にでも2つ存在すればよい。また、供給位置Ps0に到達する前の容器31及び供給位置Ps0を過ぎた後の容器31は、供給位置Ps0にて容器31の開口を開放させるための空所に開口が重なっている容器31は含まない。従って、金属材料を射出スリーブに供給するための孔と、ビレットを容器内に供給するための孔との2つの孔から2つの容器がシール部材の外部へ露出している状態(特許文献1参照)は、供給位置Ps0を過ぎた後の少なくとも2つの容器31が開放されている状態に含まれない。
さらに別の観点では、例えば、第1摺動面67a及び第2摺動面69aは、270°以下、180°以下、90°以下又は45°以下の範囲で容器31の開口を塞ぐ。図示の例では、第1摺動面67a及び第2摺動面69aは、概ね45°の範囲で容器31の開口を塞いでいる。
第1シール部材67及び第2シール部材69を回転軸CL2回りに回転不可能に支持するための構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、第1シール部材67は、固定ダイプレート13に対して不図示のボルト等によって固定されている。また、図示の例では、第2シール部材69は、射出軸心CL1に平行な方向に移動可能に支持されており、適宜な大きさの力で第1シール部材67側へ付勢されている。第2シール部材69がこのように支持されていることにより、例えば、容器31の第1摺動面67a及び第2摺動面69aに対する接触圧(別の観点では摺動抵抗)を適宜な大きさにすることができる。なお、第2シール部材69に代えて、又は加えて、第1シール部材67に対して、射出軸心CL1に平行な方向に移動可能な支持構造が適用されてもよい。
具体的には、例えば、シール機構39は、軸部材49が挿通されている連結部材71を有している。連結部材71は、キー溝などの公知の構成によって、軸部材49に対して、軸方向へ移動可能とされているとともに軸回りに回転不可能とされている。連結部材71には、第2シール部材69が固定されている。例えば、第2シール部材69は、第7位置Ps7にて第2シール部材69から連結部材71側へ突出する固定部材73を介して連結部材71に固定されている。また、連結部材71は、保持部材75を介してスリーブ後端19bを保持しており、第2シール部材69は、スリーブ後端19b及び/又は保持部材75に係合又は固定されている。
また、シール機構39は、軸部材49に対して連結部材71よりも端部側(固定ダイプレート13から離れる側)に固定されている係止部材77を有している。連結部材71と係止部材77との間には、圧縮状態の弾性部材79(図3)が介在している。これにより、連結部材71は固定ダイプレート13側へ付勢され、ひいては、第2シール部材69が第1シール部材67側へ付勢される。図3では、弾性部材79として、コイルばねが例示されている。なお、連結部材71を付勢する付勢手段として、弾性部材79に代えて、又は加えて、アクチュエータが設けられても構わない。
上記の説明から理解されるように、図示の例では、スリーブ後端19bもシール機構39によって固定ダイプレート13側へ付勢される。これにより、容器31とスリーブ後端19bとの間の接触圧も適宜な大きさにすることができる。
(支持部材の停止位置、及び停止位置における動作)
既述のように、本実施形態では、容器31は、射出スリーブ19の一部を構成する。従って、少なくともプランジャ21が射出スリーブ19内を前進してから後退するまでの間、支持部材33は一旦停止している必要がある。複数の容器31は、回転軸CL2回りに均等に配置されており、また、順次、供給位置Ps0にて射出スリーブ19の一部を構成する。従って、支持部材33は、複数の容器31の配置のピッチPt1と同一のピッチPt1で移動する度に、一旦停止することになる。
なお、以下の説明では、ピッチPt1を容器31の配置のピッチとして表現する場合と、支持部材33の間欠的な回転のピッチとして表現する場合とがある。後述するピッチPt2についても同様である。
上記のようにいずれかの容器31が供給位置Ps0に位置しているときの支持部材33の回転位置を主停止位置PsMと呼称することとする。主停止位置PsMは、図2の例では、供給位置Ps0、第2位置Ps2、第4位置Ps4及び第6位置Ps6である。支持部材33は、基本的に(360/n)°回転対称の形状である(nは延在部33aaの数)。ただし、本開示の説明においては、任意の1つの延在部33aaを基準として考えて、支持部材33が複数の主停止位置PsMに順次到達するというような表現をすることがある。後述する副停止位置PsSについても同様である。
本実施形態では、支持部材33は、複数の主停止位置PsMの間の複数の副停止位置PsSに到達したときにも一旦停止する。副停止位置PsSは、図2の例では、第1位置Ps1、第3位置Ps3、第5位置Ps5及び第7位置Ps7である。支持部材33が複数の副停止位置PsSにおいても一旦停止することによって、例えば、各容器31がいずれかの主停止位置PsMに一旦停止している時期よりも前に、又は後に、各容器31に対して所定の処理を行うことが容易化される。
各副停止位置PsSの、その両側の主停止位置PsMに対する相対位置は適宜に設定されてよく、図示の例では、両側の主停止位置PsMの中央とされている。すなわち、互いに隣り合う主停止位置PsM及び副停止位置PsSのピッチPt2は、Pt1/2である。別の観点では、支持部材33は、ピッチPt2で移動する度に、主停止位置PsM又は副停止位置PsSにて一旦停止する。
支持部材33が主停止位置PsM及び副停止位置PsSにて一旦停止したときの動作としては適宜なものが設定されてよい。例えば、支持部材33が複数の副停止位置PsSに順次一旦停止する度に、プランジャ21の潤滑等が行われる。また、1つの容器31に着目した場合においては、既に述べたように、例えば、供給位置Ps0では金属材料の取出し(射出)が行われ、第1位置Ps1ではエアブローが行われ、第2位置Ps2ではビレット111の搬入が行われる。供給位置Ps0及び第2位置Ps2はそれぞれ主停止位置PsMであり、第1位置Ps1は副停止位置PsSである。従って、供給装置2全体として見れば、支持部材33が複数の主停止位置PsMに順次一旦停止する度に射出及びビレット111の搬入が行われ、支持部材33が複数の副停止位置PsSに順次一旦停止する度に容器31のエアブローが行われていることになる。
複数の主停止位置PsMにおける停止時間は、例えば、互いに同一である。複数の副停止位置PsSにおける停止時間は、例えば、互いに同一である。主停止位置PsMにおける停止時間と副停止位置PsSにおける停止時間とは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。後者の場合、例えば、副停止位置PsSにおける停止時間は、主停止位置PsMにおける停止時間よりも短くされてもよいし、長くされてもよい。
主停止位置PsMから副停止位置PsSへの移動速度は、例えば、複数の主停止位置PsMについて互いに同一である。副停止位置PsSから主停止位置PsMへの移動速度は、例えば、複数の主停止位置PsMについて互いに同一である。前者の移動速度と、後者の移動速度とは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
(射出側噴出装置)
図4(a)は、図2において供給位置Ps0付近に模式的に示した射出側噴出装置41の構成の一例を示す模式図である。
射出側噴出装置41は、スリーブ本体19aの内面、スリーブ後端19bの内面及びプランジャ21の表面の少なくとも1つに対して噴出対象を吹き付けるものである。噴出対象は、例えば、清掃のための気体(例えば空気又は窒素)及び/又は噴出剤(例えば潤滑剤及び/又は離型剤)である。
図4(a)では、スリーブ本体19aの内面に噴出対象を吹き付けるノズル81A及び81Bと、スリーブ後端19bの内面及びプランジャ21の表面に噴出対象を吹き付けるノズル81C及び81Dが例示されている。ノズル81A及び81Cは、例えば、清掃のための気体を噴出するものであり、気体供給部83に接続されている。ノズル81B及び81Dは、例えば、噴出剤を噴出するものであり、噴出剤供給部85に接続されている。
ノズル81A〜81D、気体供給部83及び噴出剤供給部85の構成は、公知の種々のものと同様とされてよい。例えば、気体供給部83は、特に図示しないが、ポンプ、アキュムレータ及びバルブを含んで構成されてよい。噴出剤供給部85は、気体供給部83の構成に加えて気体の流路に噴出剤を供給するタンク及びバルブを含んで構成されてよい。気体供給部83及び噴出剤供給部85は一部が共通化されていてもよい。気体供給部83及び/又は噴出剤供給部85は、スリーブ本体19a用のノズルとスリーブ後端19b用のノズルとで別個に設けられていてもよい。
複数のノズル81A〜81Dは、例えば、適宜な構成の移動機構87によって移動可能に保持されている。これにより、複数のノズル81A〜81Dの先端は、容器31が射出スリーブ19を構成するときに位置する領域(スリーブ本体19aとスリーブ後端19bとの間の領域)に対して出し入れされる。容器31が配置されるべき領域に挿入されたノズル81A〜81Dの先端は、スリーブ本体19a内又はスリーブ後端19b内(プランジャ21)に向けられる。この状態でノズル81A〜81Dの先端から噴出対象が噴出される。
移動機構87の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、移動機構87は、複数のノズル81A〜81Dを共に保持するノズル保持部材87aと、ノズル保持部材87aを移動させる移動機構本体87bとを有している。移動機構本体87bは、例えば、特に図示しないが、電動機を含んで構成されており、ノズル保持部材87aを少なくとも1軸方向において移動させる。なお、移動機構87は、複数のノズル81A〜81Dを別個に移動させる構成であってもよい。
(容器側噴出装置)
図4(b)は、図2において第1位置Ps1に模式的に示した容器側噴出装置43の構成の一例を示す模式図である。
容器側噴出装置43は、容器31の内面に対して噴出対象を吹き付けるものである。噴出対象は、例えば、清掃のための気体(例えば空気又は窒素)及び/又は噴出剤(例えば潤滑剤及び/又は離型剤)である。図4(b)では、2つのノズル81E及び81Fが例示されている。ノズル81Eは、例えば、清掃のための気体を噴出するものであり、気体供給部89に接続されている。ノズル81Fは、例えば、噴出剤を噴出するものであり、噴出剤供給部91に接続されている。
ノズル81E及び81F、気体供給部89及び噴出剤供給部91の構成は、射出スリーブ等に関して利用されている公知の種々のものと同様とされてよい。気体供給部89及び噴出剤供給部91は一部が共通化されていてもよい。気体供給部89は、射出側噴出装置41の気体供給部83の一部又は全部と共通化されていてもよい。噴出剤供給部91は、射出側噴出装置41の噴出剤供給部85と一部又は全部が共通化されていてもよい。
ノズル81E及び81Fは、例えば、固定ダイプレート13等に対して固定的に設けられている。容器31が軌道OB上を移動して第2位置Ps2に位置すると、結果として、当該容器31内にノズル81E及び81Fの先端が向けられる。なお、容器側噴出装置43は、例えば、第2位置Ps2に位置している容器31の軸方向へノズル81E及び81Fを進退させて、ノズル81E及び81Fの先端を容器31内へ出し入れする移動機構を有していても構わない。
容器側噴出装置43は、例えば、支持部材33の間欠的な回転に伴って各容器31が一旦停止する複数の位置(Ps0〜Ps7)のうち、供給位置Ps0よりも後、かつビレット111を容器31に搬入する位置よりも前の位置にある容器31に対して噴出対象を吹き付ける。図示の例では、既述のように、容器側噴出装置43は、第1位置Ps1に位置している容器31に対して噴出対象を吹き付ける。第1位置Ps1は、複数の副停止位置PsSのうちの1つであり、別の観点では、容器31が供給位置Ps0の次に一旦停止する位置である。
なお、図示の例とは異なり、容器側噴出装置43は、ビレット111が容器31に搬入される位置において、ビレット111の搬入前に容器31内に噴出対象を吹き付けるように構成されてもよい。また、特に図示しないが、容器が射出スリーブの一部を構成しない金属加熱供給装置においては、容器から金属材料を取出す供給位置において、金属材料が取り出された後の容器内に噴出対象を吹き付けることも可能である。
(搬入装置)
図2において第2位置Ps2付近に模式的に示した、ビレット111を容器31内に搬入する搬入装置45は、適宜な構成とされてよい。例えば、搬入装置45は、直交ロボット、スカラロボット又は多関節ロボット等の電動機を含む汎用のロボットによって構成されてよい。また、搬入装置45は、ビレット111を容器31内へ搬送するための専用の装置として構成されていてもよい。
搬入装置45は、例えば、支持部材33の間欠的な回転に伴って各容器31が一旦停止する複数の位置(Ps0〜Ps7)のうち、供給位置Ps0の後、かつ供給位置Ps0に比較的近い位置(例えば供給位置Ps0の点対称の位置よりも供給位置Ps0側)にある容器31にビレット111を搬入する。供給位置Ps0に近い位置でビレット111を容器31に搬入することによって、加熱時間を長くできる。図示の例では、既述のように、搬入装置45は、第2位置Ps2に位置している容器31にビレット111を搬入する。第2位置Ps2は、複数の主停止位置PsMのうちの1つであり、別の観点では、容器31が噴出対象を吹き付けられる位置(Ps1)の次に一旦停止する位置である。
なお、容器側噴出装置43の説明で述べたように、容器31内に噴出対象を吹き付ける位置と、ビレット111を容器31内に搬入する位置とを同一の位置とすることもできる。この場合、ビレット111が容器31内に搬入される位置は、第1位置Ps1とされてもよい。また、特に図示しないが、容器が射出スリーブの一部を構成しない金属加熱供給装置においては、容器から金属材料を取出す供給位置において、容器内にビレットを搬入することも可能である。
(温度センサ)
図2において第7位置Ps7に模式的に示した温度センサ47は、適宜な構成とされてよい。例えば、温度センサ47は、容器31内の金属材料に接触して金属材料の温度を検出する接触式のものとされてよい。接触式の温度センサとしては、例えば、熱電対を挙げることができる。
接触式の温度センサ47は、例えば、シール機構39の固定部材73に固定され、第7位置Ps7にて第2摺動面69aから露出している。従って、容器31が第7位置Ps7に到達すると、温度センサ47は、容器31の第2摺動面69a側の開口から金属材料に接触する。なお、温度センサ47を容器31内へ出し入れする不図示の移動機構が設けられても構わない。
温度センサ47は、例えば、支持部材33の間欠的な回転に伴って各容器31が一旦停止する複数の位置(Ps0〜Ps7)のうち、供給位置Ps0の手前、かつ供給位置Ps0に比較的近い位置(例えば供給位置Ps0と点対称の位置よりも供給位置Ps0側)にある容器31が保持している金属材料の温度を検出する。図示の例では、既述のように、温度センサ47は、第7位置Ps7に位置している容器31内の金属材料の温度を検出する。第7位置Ps7は、複数の副停止位置PsSのうちの1つであり、別の観点では、供給位置Ps0の直前(1つ手前)で一旦停止する位置である。
温度センサ47に加えて、温度センサ47の配置位置(ここでは第7位置Ps7)よりも手前の位置(例えば第6位置Ps6)に、温度センサ48(図2)が設けられていてもよい。この温度センサ48は、例えば、非接触式の温度センサによって構成されている。非接触式の温度センサとしては、例えば、放射温度計を挙げることができる。
(制御ユニット)
図1に戻って、制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置93(図5参照)と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置95と、画像を表示する表示装置97と、を有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部99とを有している。なお、ダイカストマシン1のうち供給装置2に着目する場合において、制御ユニット5は、供給装置2の制御ユニットとして捉えられてよい。
制御装置93は、例えば、不図示の制御盤及び操作部99に設けられている。制御装置93は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置93は、型締装置7、射出装置9、押出装置11及び供給装置2毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置97及び入力装置95は、例えば、操作部99に設けられている。操作部99は、例えば、型締装置7の固定的部分等の適宜な位置に設けられてよい。表示装置97は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置95は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
(信号処理系等を中心とするブロック図)
図5は、信号処理系の構成を中心としてダイカストマシン1の構成を示すブロック図である。ここでは、特に、供給装置2に係る部分を示している。
図5の紙面左側においては、ダイカストマシン1の既述の種々の構成要素が模式的に示されており、紙面右側においては、制御装置93のブロック図が示されている。具体的には、紙面左側においては、上から順に、射出駆動部23、回転駆動部35、操作部99、加熱部37、温度センサ47、射出側噴出装置41、容器側噴出装置43及び搬入装置45が示されている。既に述べたように、射出駆動部23は電動機25を含む。回転駆動部35は電動機51を含む。操作部99は入力装置95及び表示装置97を含む。加熱部37は複数の個別加熱具65を含む。
供給装置2は、加熱部37に電力を供給する電力供給部121を有している。電力供給部121は、例えば、商用電源を適宜な電圧の交流電圧に変換して加熱部37に供給する。より詳細には、例えば、電力供給部121は、複数の個別加熱具65に供給する電力を互いに独立に制御することができる。すなわち、図5において交流電源の記号で表現しているように、電力供給部121は、複数の個別加熱具65に個別に電力を供給する複数の個別電力供給部123を有していると概念することができる。
また、供給装置2は、複数の個別電力供給部123から複数の個別加熱具65へ供給された電力を個別に測定する複数の電力検出部125を有している。電力検出部125は、例えば、所定の開始時期から現時点までに個別加熱具65へ供給された電力の積算値を出力する。なお、図5では、電力検出部125は、制御装置93とは別の構成として示されている。ただし、電力検出部125は、時々刻々の電力を検出する検出計と、その検出値を積算する制御装置93内の機能部とによって構成されてもよい。
制御装置93は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。そして、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の機能部(93a、93b、93c、93d、93e、93f及び93k)が構築される。
射出制御部93aは、射出駆動部23(電動機25)を制御する。回転制御部93bは、回転駆動部35(電動機51)を制御する。射出側噴出制御部93eは、射出側噴出装置41を制御する。容器側噴出制御部93fは、容器側噴出装置43を制御する。搬入制御部93kは、搬入装置45を制御する。
目標値設定部93cは、入力装置95を介して得られる情報、及びデータベース93sを参照して得られる情報に基づいて、種々の目標値を設定する。目標値設定部93cは、例えば、目標温度設定部93gと、目標電力設定部93hとを有している。
目標温度設定部93gは、例えば、入力装置95を介して得られる情報、及びデータベース93sを参照して得られる情報に基づいて、容器31が供給位置Ps0に到達したときの容器31内の金属材料の目標温度を設定する。
目標電力設定部93hは、例えば、目標温度設定部93gが設定した目標温度、及びデータベース93sを参照して得られる情報に基づいて、加熱部37に供給される電力の目標値を設定する。具体的には、各容器31が軌道OBを1周する間に個別電力供給部123が個別加熱具65に供給する電力の目標値を設定する。この目標値は、例えば、複数の個別加熱具65(別の観点では複数の容器31)に対して共通に設定される。
また、電力の目標値は、例えば、軌道OB上の1以上の通過位置に対して設定される。具体的には、例えば、容器31が軌道OB上において所定の電力供給開始位置から所定の通過位置に到達するまでに個別加熱具65に供給される電力の積算値について目標値が設定される。目標値が設定される通過位置は、軌道OB上に複数設定されてよい。本実施形態では、複数の通過位置として、主停止位置PsM及び/又は副停止位置PsSを利用する態様を例に取る。
なお、容器31が軌道OBを周回する周期内において、容器31が軌道OB上の所定の通過位置を通過する時刻は、複数の周期間で一定である。従って、軌道OB上の通過位置に対する目標値の設定も、周期内の時刻に対する目標値の設定も、実質的に同じものである。本開示の説明では、便宜上、軌道OB上の位置の概念によって電力の目標値等について説明する。ただし、実際の演算においては、位置に代えて時間が用いられていても構わない。
加熱制御部93dは電力供給部121を制御する。より詳細には、加熱制御部93dは、複数の個別電力供給部123を個別に制御する複数の個別加熱制御部93pを有している。複数の個別加熱制御部93pのうち最も上段のものにおいて例示しているように、各個別加熱制御部93pは、第1制御部93m(温度検出前制御部の一例)と、第2制御部93n(温度検出後制御部の一例)とを有している。
第1制御部93mは、個別加熱具65に供給される電力が、目標電力設定部93hが設定した目標電力となるように、電力検出部125が検出する電力に基づいて個別電力供給部123を制御する。第2制御部93nは、容器31内の金属材料の温度が、目標温度設定部93gが設定した目標温度となるように、温度センサ47が検出する温度に基づいて個別電力供給部123を制御する。
(目標値の設定方法)
図6(a)は、目標温度の設定方法を説明するための図である。
より詳細には、図6(a)は、Al−Si合金の模式的な状態図である。この図において、横軸はAlとSiとの質量比を示しており、横軸に付された数字は、Siの質量%を示している。また、縦軸は温度を示している。図中には、合金が固相状態及び液相状態等のいずれの状態であるかが付されている。この図から理解されるように、合金の成分及び温度から固相率を求めたり、合金の成分及び固相率から温度を求めたりすることができる。
データベース93s(図5)は、例えば、1種以上の合金について、図6(a)に示した状態図に相当するデータを保持している。目標温度設定部93gは、例えば、入力装置95を介して、ビレット111の合金の成分の情報、及び供給位置Ps0に位置する容器31内の金属材料の固相率の目標値の情報の入力を受け付ける。そして、目標温度設定部93gは、データベース93sに記録されているデータ(状態図)を参照して、取得した合金の成分及び固相率の目標値に対応する温度を特定し、この温度を目標温度として設定する。
図6(b)は、目標電力の設定方法を説明するための模式図である。この図において、横軸は、容器31内の金属材料の温度を示しており、縦軸は、個別加熱具65に供給される電力を示している。
データベース93sは、例えば、概念的に図6(b)で示されるような、個別加熱具65に供給される電力(積算値)と、当該電力が供給されたときの容器31内の金属材料の温度との対応関係のデータを保持している。このようなデータは、例えば、ダイカストマシン1の運用前に予め実験によって得られてよい。また、特に図示しないが、このようなデータは、ビレット111の質量及び/又は形状毎に得られてデータベース93sに記憶されている。
目標電力設定部93hは、例えば、入力装置95を介して、ビレット111の形状及び/又は質量の情報の入力を受け付ける。また、目標電力設定部93hは、目標温度設定部93gが設定した目標温度の情報を取得する。そして、目標電力設定部93hは、データベース93sに記録されているデータ(図6(b)に相当するデータ等)を参照して、ビレット111の形状及び/又は質量、並びに目標温度に対応する電力(積算値)を特定する。さらに、目標電力設定部93hは、容器31が軌道OB上の加熱開始位置から加熱終了位置(供給位置Ps0)へ移動する間に、上記の特定した電力が個別加熱具65に供給されるように、軌道OB上の複数の領域に対して電力を配分して複数の位置に対して目標電力を設定する。
なお、目標温度は、目標温度設定部93gによって設定されるのではなく、オペレータによって入力装置95を介して直接に設定されても構わない。また、上述した情報以外の種々の情報が目標温度及び/又は目標電力の設定に利用されても構わない。例えば、鋳造サイクルの周期の情報及び/又はダイカストマシン1の周囲の気温等の情報が入力装置95を介して入力され、目標電力の設定に利用されてもよい。
(金属加熱供給装置の動作)
図7は、制御装置93が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、主として、供給装置2の動作に係る処理を抽出して示している。図7に示す処理は、例えば、ダイカストマシン1に対して、所定回数の鋳造サイクルの実行を指示する操作が入力装置95に入力されたときに開始される。
まず、ステップST1では、制御装置93は初期動作を行う。この初期動作においては、ステップST2〜ST6において繰り返し行われる一連の動作へ移行するために必要な動作が行われる。その具体的な内容は、例えば、ステップST2〜ST6を変形したものであり、後述する。
ステップST2では、制御装置93(回転制御部93b)は、支持部材33をピッチPt2で移動させるように回転駆動部35を制御する。ここでは、支持部材33が主停止位置PsMから副停止位置PsSへ移動する場合を想定している。
ステップST3では、制御装置93は、支持部材33が副停止位置PsSにて一旦停止しているときに行われる処理を行う。具体的には、例えば、制御装置93(射出側噴出制御部93e)は、スリーブ本体19a及び/又はプランジャ21(スリーブ後端19b)に対して噴出対象を吹き付けるように射出側噴出装置41を制御する。また、例えば、制御装置93(容器側噴出制御部93f)は、第1位置Ps1に位置している容器31に対して噴出対象を吹き付けるように容器側噴出装置43を制御する。また、例えば、制御装置93(個別加熱制御部93pのいずれか)は、第7位置Ps7に位置している容器31が保持している金属材料の温度を温度センサ47から取得する。
ステップST4では、制御装置93(回転制御部93b)は、支持部材33をピッチPt2で移動させるように回転駆動部35を制御する。ここでは、支持部材33が副停止位置PsSから主停止位置PsMへ移動する場合を想定している。
ステップST5では、制御装置93は、支持部材33が主停止位置PsMにて一旦停止しているときに行われる処理を行う。具体的には、例えば、制御装置93(射出制御部93a)は、プランジャ21の前進から後退までの射出に係る一連の動作が行われるように射出装置9(射出駆動部23)を制御する。また、例えば、制御装置93(搬入制御部93k)は、第2位置Ps2に位置している容器31にビレット111を搬入するように搬入装置45を制御する。
ステップST6では、制御装置93は、鋳造サイクルの終了条件が満たされたか否か判定する。例えば、鋳造サイクルが所定回数実行されたか否か判定する。制御装置93は、否定判定のときは、ステップST2に戻り、肯定判定とのきは処理を終了する。
ステップST1では、例えば、ステップST2〜ST5から、実行不可能及び/又は実行不要な処理を除いた処理が、適宜な回数で繰り返し行われる。例えば、供給装置2の動作開始直後においては、いずれの位置の容器31も金属材料を保持していない。そこで、射出動作等が省略された状態で、金属材料を保持している容器31が供給位置Ps0に到達するまで、ステップST2〜ST5と同様の動作が繰り返される。
なお、特に図示しないが、ステップST6の後、又は鋳造サイクルの繰り返しが終了する間際の鋳造サイクルにおいては、供給装置2が初期の状態(例えば容器31内に金属材料が保持されていない状態)となるように、ステップST2〜ST5から一部の処理を除いた処理が行われてよい。
(個別加熱制御部の処理)
図8は、制御装置93の各個別加熱制御部93pが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。すなわち、図8は、1個の容器31についての加熱制御の処理の手順を示している。図8に示す処理は、1個の容器31が軌道OBを1周する度に実行される。
以下の図8及び図9の説明において、容器31、個別加熱具65、電力検出部125、個別電力供給部123及び個別加熱制御部93pは、複数の容器31、複数の個別加熱具65、複数の電力検出部125、複数の個別電力供給部123及び複数の個別加熱制御部93pのうち、互いに対応しているものを指しているものとする。
ステップST11では、個別加熱制御部93pは、容器31が第2位置Ps2に到達したか否か判定する。そして、個別加熱制御部93pは、否定判定のときは待機し、肯定判定のときはステップST12に進む。
ステップST12では、個別加熱制御部93pは、個別加熱具65への電力供給を開始するように個別電力供給部123を制御する。また、個別加熱制御部93pは、個別加熱具65に供給される電力の積算値の測定を開始するように電力検出部125に指示する。
ステップST13では、個別加熱制御部93pは、第1制御部93mによる制御を行う。第1制御部93mは、既述のように、個別加熱具65に供給される電力の積算値が、目標電力設定部93hが設定した目標電力となるように、電力検出部125が検出する電力の積算値に基づいて個別電力供給部123を制御する。
ステップST14では、個別加熱制御部93pは、容器31が第7位置Ps7に到達したか否か判定する。そして、個別加熱制御部93pは、否定判定のときはステップST13に戻って第1制御を継続し、肯定判定のときはステップST15に進む。
ステップST15では、個別加熱制御部93pは、第2制御部93nによる制御を行う。すなわち、ステップST14からステップST15への移行に伴って、個別加熱制御部93pの制御は、第1制御から第2制御へ移行する。第2制御部93nは、既述のように、容器31内の金属材料の温度が、目標温度設定部93gが設定した目標温度となるように、温度センサ47が検出する温度に基づいて個別電力供給部123を制御する。このとき利用される検出温度は、ステップST14の肯定判定に対応する時期(既述の図7の観点ではステップST3)において検出されたものである。すなわち、1つの容器31内の金属材料の温度は、当該1つの容器31が軌道OBを移動している間に継続して検出されるのではなく、当該1つの容器31が第7位置Ps7に位置しているときに第7位置Ps7に対して固定的な温度センサ47によって検出される。そして、この検出温度に基づいて、第7位置Ps7を離れた後の前記1つの容器31について、第2制御が行われる。なお、個別加熱制御部93pは、容器31が第7位置Ps7を離れる前に、温度検出を完了して第2制御を開始してもよい。
ステップST16では、個別加熱制御部93pは、容器31が供給位置Ps0に到達したか否か判定する。そして、個別加熱制御部93pは、否定判定のときはステップST15に戻って第2制御を継続し、肯定判定のときはステップST17に進む。
ステップST17では、個別加熱制御部93pは、個別加熱具65への電力供給を終了するように個別電力供給部123を制御する。また、個別加熱制御部93pは、個別加熱具65に供給される電力の積算値の測定を終了し、積算値の値をリセットするように電力検出部125に指示する。
その後、個別加熱制御部93pは、ステップST11に戻る。容器31が繰り返し軌道OBを周回することによって、ステップST11〜ST17も繰り返される。上記の説明から理解されるように、第1制御部93mによる制御は、第2位置Ps2から第7位置Ps7まで行われ、第2制御部93nによる制御は、第7位置Ps7から供給位置Ps0まで行われる。
ステップST11、ST14及びST16等の容器31が所定の位置に到達したか否かの判定は、適宜になされてよい。例えば、容器31を軌道OB上で移動させるための回転駆動部35の電動機51がステッピングモータである場合においては、電動機51に入力されるパルスの数によって判定されてよい。また、例えば、電動機51がサーボモータの場合においては、エンコーダの検出値に基づいて判定されてよい。既に言及したように、位置ではなく、時間に基づいて判定されてもよい。
(第1制御部及び第2制御部の処理)
図9は、図8のステップST13において第1制御部93mが実行する所定の手順の一例を示すフローチャートである。
このフローチャートの前提として、例えば、目標電力設定部93hは、容器31が第4位置Ps4及び第6位置Ps6に到達するまでに個別加熱具65に供給される電力(積算値)の目標値を設定する。具体的には、例えば、まず、目標電力設定部93hは、既述のように容器31が供給位置Ps0に到達したときの目標温度から容器31が供給位置Ps0に到達するまでに供給される目標電力を特定する。そして、目標電力設定部93hは、電力の供給開始位置(第2位置Ps2)から供給位置Ps0までの間隔(例えば角度又は時間)で目標電力を割り、電力入力ペース(例えば単位角度又は単位時間当たりに入力される電力)を算出する。そして、その電力入力ペースの積算値から、容器31が第4位置Ps4及び第6位置Ps6に到達するまでに個別加熱具65に供給される電力の目標値を設定する。
なお、上記では、電力の目標値が設定される位置を第4位置Ps4及び第6位置Ps6としたが、他の位置とされてもよい。また、電力入力ペースは、第2位置Ps2から供給位置Ps0まで一定であるものとして説明したが、軌道OB上の位置に応じて変化させてもよい。例えば、第2位置Ps2から第4位置Ps4までと、第4位置Ps4から第6位置Ps6までとで電力入力ペースが異なっていてもよい。
特に図示しないが、第1制御部93mは、上記の電力入力ペースで個別加熱具65に電力が供給されるように、個別電力供給部123を制御する。なお、この際、電力検出部125によって検出される時々刻々の電力に基づいて、設定された電力入力ペースが維持されるようにフィードバック制御がなされてもよい。
ステップST21では、第1制御部93mは、容器31が第4位置Ps4又は第6位置Ps6に到達したか否か判定する。否定判定のときは、ステップST22をスキップして図8のステップST14へ進む。そして、ステップST14で否定判定がなされてステップST13に戻ると、図9の処理が再度実行される。従って、ステップST14で肯定判定がなされない限りは、現在の電力入力ペースでの電力供給が維持されることになる。
ステップST21で第4位置Ps4に到達したと判定された場合、ステップST22では、第1制御部93mは、電力検出部125から電力の積算値の検出値を取得し、この検出値と第4位置Ps4に対して設定されている電力の積算値の目標値とを比較する。そして、両者に差があれば、第1制御部93mは、第6位置Ps6及び/又は供給位置Ps0に対して設定された電力の積算値の目標値が達成されるように電力入力ペースを再設定する。別の観点では、第1制御部93mは、容器31が第4位置Ps4にあるときに、検出値が目標値よりも大きければ、電力入力ペースを下げ、検出値が目標値よりも小さければ、電力入力ペースを上げる。ステップST21で第6位置Ps6に到達したと判定された場合の動作も同様である。
特に図示しないが、第2制御部93n(ステップST15)は、第1制御部93mの上記の処理と類似した処理を行う。例えば、ステップST14において容器31が第7位置Ps7において到達したと判定されると、第2制御部93nは、ステップST22と同様に、電力入力ペースの調整を行う。
ただし、このとき、第2制御部93nは、電力を比較するのではなく、例えば、温度センサ47の検出した温度と、供給位置Ps0に対して設定された目標温度とを比較する。そして、第2制御部93nは、その温度差を解消するために個別加熱具65に供給されるべき電力を算出し、さらには、その算出した電力が、容器31が供給位置Ps0に到達するまでに供給されるように電力入力ペースを設定する。なお、温度差に基づく必要電力の算出は、例えば、図6(b)を参照して説明したように、適宜なデータベースに基づいてなされてよい。
なお、上記の説明から理解されるように、第2制御部93nの制御は、温度センサ47の検出した温度に基づいて目標電力を設定し、個別加熱具65に供給される電力が目標電力になるように個別電力供給部123を制御するものと捉えることができる。
特に図示しないが、ステップST22において、電力の積算値の目標値と検出値と差が所定の閾値を上回ったときは、所定の異常時処理が行われてもよい。異常時処理は、例えば、異常を報知する画像を表示装置97に表示させる処理である。このような判定及び処理は、第4位置Ps4及び第6位置Ps6だけでなく、温度検出に基づく制御が開始される第7位置Ps7においても行われてよい。
同様に、温度の目標値と検出値とを比較したときに、両者の差が所定の閾値を上回ったときは、所定の異常時処理が行われてよい。このような判定及び処理は、温度センサ47によって温度検出がなされる第7位置Ps7だけでなく、温度センサ48によって温度検出がなされる第6位置Ps6において行われてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、ダイカストマシン1は、型締装置7と、射出装置9と、供給装置2とを有している。型締装置7は、金型101を保持する。射出装置9は、水平な、又は水平方向に傾斜している射出軸心CL1に沿ってプランジャ21を駆動して金型101内に金属材料を射出する。供給装置2は、金属材料(ビレット111)を加熱して射出装置9に供給する。また、供給装置2は、支持部材33と、複数の容器31と、加熱部37とを有している。支持部材33は、射出軸心CL1に並列な回転軸CL2回りに回転する。複数の容器31は、支持部材33によって回転軸CL2を中心とする同一円周上に支持されている。加熱部37は、複数の容器31内の金属材料を加熱する。回転軸CL2は、射出軸心CL1に対して、射出軸心CL1に直交する水平方向にずれている。
ダイカストマシン1においては、支持部材33が配置される範囲及び/又は移動する範囲として、回転軸CL2回りの円形領域が確保される必要がある。この円形領域は、当然に、回転軸CL2に対して真上及び真下に最上部及び最下部が位置している。別の観点では、円形領域の上下方向の長さは、回転軸CL2から水平方向に偏心した位置ほど短くなる。従って、回転軸CL2を射出軸心CL1に対して水平方向にずらすと、円形領域の最上部及び最下部が射出軸心CL1から水平方向にずれる。その結果、支持部材33は、射出軸心CL1の上方及び/又は下方に位置する部材(例えば射出フレーム27)に対して干渉し難くなる。
また、本実施形態では、射出装置9は、スリーブ本体19aと、射出駆動部23とを有している。スリーブ本体19aは、射出軸心CL1に沿って延びており、金型101内に通じている。射出駆動部23は、スリーブ本体19aを含む射出スリーブ19内にてプランジャ21を射出軸心CL1に沿って駆動する。複数の容器31は、回転軸CL2に平行な方向の両側に開口しており、回転軸CL2回りの軌道OBが射出軸心CL1に対して交差しており、支持部材33の回転に伴って、順次、スリーブ本体19aに対して後方かつ同軸の供給位置Ps0にてスリーブ本体19aと射出スリーブ19を構成する。
この場合、例えば、容器31から金属材料を取出して射出スリーブへ供給するための専用の機構は不要である(そのような機構が設けられたものも本開示に係る技術に含まれてよい。)。また、サイクルタイムの短縮及び金属材料の酸化低減等の効果も奏される。このような構成においては、回転軸CL2を射出軸心CL1に対して並列に、かつ近づける必要がある。従って、上述した回転軸CL2を射出軸心CL1に対して水平方向にずらして、供給装置2と射出軸心CL1の上方及び/又は下方の部材(例えば射出フレーム27)とが干渉する蓋然性を下げる効果が有効に奏される。
本実施形態では、容器31の数は比較的少なくされている。一例として、容器31の数は4つである。
この場合、例えば、容器31の数の低減に付随して個別加熱具65等の数も減らすことができ、供給装置2の構成が飛躍的に簡素化される。また、例えば、容器31等の回転駆動される質量が低減されるから、支持部材33及び回転駆動部35の負担が軽減される。本実施形態とは異なり、大部分の容器31の開口を摺動面によってシールする態様においては、容器31の数の低減によって摺動抵抗も低減される。
また、本実施形態では、供給装置2は、回転駆動部35と、回転制御部93bとを有している。回転駆動部35は、支持部材33を回転軸CL2回りに回転駆動する。回転制御部93bは、支持部材33が回転軸CL2回りの複数の主停止位置PsMにて一旦停止することによって複数の容器31が供給位置Ps0にて順次一旦停止するように回転駆動部35を制御する。また、回転制御部93bは、支持部材33が複数の主停止位置PsMの間の複数の副停止位置PsSにおいても一旦停止するように回転駆動部35を制御する。
この場合、例えば、既述のように、各容器31がいずれかの主停止位置PsMに一旦停止している時期よりも前に、又は後に、各容器31に対して所定の処理を行うことが容易化される。これにより、例えば、容器31の数を少なくした場合においても、供給位置Ps0を過ぎた容器31に対して早期にエアブローを行ったり、早期にビレット111を供給したりすることができる。また、例えば、容器31の数を少なくした場合においても、供給位置Ps0に近い位置において容器31内の金属材料の温度を検出することが容易化される。また、例えば、いずれの容器31も射出スリーブ19を構成していないときに支持部材33が停止することになるから、スリーブ本体19a及びプランジャ21に対する処理も容易化される。
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、射出側噴出装置41と、射出側噴出制御部93eとを有している。射出側噴出装置41は、スリーブ本体19a内及びプランジャ21の少なくとも一方(図4(a)の例では双方)に向けて噴出対象物(気体又は噴出剤)を噴出する。射出側噴出制御部93eは、支持部材33が複数の副停止位置PsSにて一旦停止しているときに噴出対象物が噴出されるように射出側噴出装置41を制御する。
この場合、例えば、スリーブ本体19a内及び/又はプランジャ21(スリーブ後端19b)の清掃及び/又は潤滑等がなされ、ダイカスト品の品質が向上する。支持部材33が主停止位置PsMだけでなく、副停止位置PsSにおいて一旦停止することから、既述のように、容器31がスリーブ本体19aとプランジャ21との間に介在していない時間が確保される。その結果、例えば、スリーブ本体19aとプランジャ21との間にノズル81A〜81Dを出し入れすることが容易化される。別の観点では、射出側噴出装置41の構成の自由度が向上する。
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、容器側噴出装置43を有している。容器側噴出装置43は、複数の容器31のうち、支持部材33が複数の主停止位置PsM及び複数の副停止位置PsSにて一旦停止することによって複数の容器31が供給位置Ps0の次に順次停止する第1位置Ps1にある容器31内に向けて噴出対象物(気体及び/又は噴出剤)を噴出する。
この場合、例えば、容器31の清掃及び/又は潤滑等がなされ、ダイカスト品の品質が向上する。また、供給位置Ps0の次の停止位置である第1位置Ps1にて容器31に対して清掃等がなされるから、早期にビレット111を容器31に搬入する準備が整う。その結果、ビレット111が加熱される時間を容器31が軌道OBを周回する周期内に長く確保しやすくなる。ひいては、容器31が軌道OBを周回する周期を短くすることができる。容器31が軌道OBを周回する周期及び軌道OB上の容器31の数は、前者を後者で割った値が鋳造サイクルと同じになるように設定される。従って、容器31が軌道OBを周回する周期を短くすることによって、例えば、容器31の数を少なくできる。
本実施形態では、支持部材33は、回転軸CL2から放射方向へ延びている複数の延在部33aaを有しており、複数の延在部33aaにて複数の容器31を個別に支持している。
この場合、例えば、プレート部33aが複数の延在部33aaを有さずに円盤状である態様(このような態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、プレート部33aの質量を低減して回転駆動部35等の負担を軽減することができる。また、例えば、プレート部33aが円盤状である態様に比較して、射出側噴出装置41のノズル81A〜81Dのようにプレート部33aの回転に同期して移動する部材がプレート部33aに干渉する蓋然性を低減できる。
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、回転軸CL2回りに回転不可能な1対のシール部材(第1シール部材67及び第2シール部材69)を有している。第1シール部材67及び第2シール部材69は、複数の容器31の回転軸CL2に平行な方向の両端の開口を塞ぐように回転軸CL2に平行な方向において複数の容器31の軌道を挟んで互いに対向している1対の摺動面(第1摺動面67a及び第2摺動面69a)を有している。第1摺動面67a及び第2摺動面69aは、複数の容器31のうち、供給位置Ps0に到達する前の少なくとも1つの容器31の開口を塞ぐとともに、供給位置Ps0を過ぎた後の少なくとも2つの容器31の開口を開放するように軌道OBの一部範囲にのみ亘っている。
この場合、まず、容器31から金属材料の液相部分が漏れる蓋然性が低減される。その結果、例えば、供給装置2は、半溶融状態の金属材料を供給する装置としてだけでなく、溶湯状態の金属材料を供給する装置として構成又は運用されることが可能である。また、例えば、半溶融状態の金属材料を供給する装置として利用する場合においても、液相部分が漏れて容器31内の金属材料の質量が減じられてしまう蓋然性を低下させ、ダイカスト品の品質を向上させることができる。さらに、第1摺動面67a及び第2摺動面69aは、複数の容器31のうち、供給位置Ps0の手前に位置する一部の容器31のみを塞ぐ。従って、例えば、ビレット111を供給してから供給位置Ps0に至るまでの全領域に亘って容器31を塞ぐ態様(このような態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、支持部材33を回転させる際の摺動抵抗を低減することができる。ひいては、回転駆動部35等の負担を低減することができる。また、例えば、容器31の摩耗を低減して、容器31の寿命を長くすることができる。
また、本実施形態では、射出装置9は、複数の容器31のうち複数の容器31の軌道OB上の所定の供給位置Ps0にある容器31から取り出された金属材料を射出する。加熱部37は、複数の個別加熱具65を有している。複数の個別加熱具65は、複数の容器31と共に回転軸CL2回りに回転し、複数の容器31を個別に加熱する。供給装置2は、複数の個別電力供給部123と、複数の電力検出部125と、温度センサ47と、複数の個別加熱制御部93pと、を有している。複数の個別電力供給部123は、複数の個別加熱具65に個別に電力を供給する。複数の電力検出部125は、複数の個別電力供給部123から複数の個別加熱具65に供給された電力を個別に検出する。温度センサ47は、複数の容器31のうち軌道OB上の所定の温度検出位置(本実施形態では第7位置Ps7)にある容器31内の金属材料の温度を検出する。複数の個別加熱制御部93pは、複数の個別電力供給部123を個別に制御する。複数の個別加熱制御部93pそれぞれは、第1制御部93m及び第2制御部93nを有している。第1制御部93mは、自己に対応する容器31が供給位置Ps0から第7位置Ps7までのうちの少なくとも一部の範囲(本実施形態では第2位置Ps2から第7位置Ps7まで)にあるときは、自己に対応する個別加熱具65に供給される電力が、軌道OB上の位置に応じて予め設定されている目標電力になるように、自己に対応する個別電力供給部123を制御する。第2制御部93nは、自己に対応する容器31が第7位置Ps7から供給位置Ps0までのうちの少なくとも一部の範囲(本実施形態では第7位置Ps7から供給位置Ps0まで)にあるときは、自己に対応する容器31について温度センサ47によって検出された温度に応じた電力が、自己に対応する個別加熱具65に供給されるように、自己に対応する個別電力供給部123を制御する。
この場合、例えば、容器31が供給位置Ps0から遠い位置にある期間においては、電力の検出に基づいて簡便な制御を行い、容器31が供給位置Ps0に近い位置にある期間においては、温度の検出値に基づく高精度な制御を行うことができる。換言すれば、温度センサ47は、供給位置Ps0の近くに設けられるだけでよく、コスト削減が図られる。
また、本実施形態では、温度センサ47によって温度を検出する位置は、支持部材33が複数の主停止位置PsM及び複数の副停止位置PsSにて一旦停止することによって複数の容器31が供給位置Ps0の直前に順次停止する位置(本実施形態では第7位置Ps7)である。
この場合、例えば、容器31が停止しているときに温度を検出できるので、温度の検出精度が向上する。さらに、供給位置Ps0に最も近い停止位置で測定されることから、高精度に温度が制御された金属材料を射出装置9に供給することができる。支持部材33は、主停止位置PsMだけでなく、副停止位置PsSにおいても停止する。そして、第7位置Ps7は、支持部材33が主停止位置PsMのみに停止する態様(このような態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)において最も供給位置Ps0に近い停止位置よりも供給位置Ps0に近い。従って、射出装置9に供給される金属材料の温度の精度が更に向上する。
また、本実施形態では、ダイカストマシン1は、目標値設定部93cを有している。目標値設定部93cは、金属材料の成分の情報及び金属材料の射出時の目標固相率の情報に基づいて軌道OB上の位置に対して目標電力を設定する。この場合、例えば、オペレータの意図した固相率が制御装置93によって自動的に実現されることになり、利便性が高い。
[第2実施形態]
図10及び図11は、第2実施形態に係る供給装置202の要部構成を示す図であり、第1実施形態の図2及び図3に相当する。図11は、図10のXI−XI線における断面図である。
第2実施形態の説明では、基本的に第1実施形態との相違部分のみについて説明する。特に言及がない事項については、第1実施形態と同様とされてよい。また、説明の便宜上、第1実施形態の構成に対応する構成については、相違点があっても同じ符号を付すことがある。
供給装置202は、端的に言えば、第1実施形態の供給装置2において、シール機構39を無くした構成である。これに伴い、例えば、支持部材33を軸支する軸部材249の構成及び軸部材249の端部を覆うカバー277の具体的構成が第1実施形態の軸部材49及び係止部材77と異なっている。また、射出スリーブ219は、シール部材を含んでいない。また、容器31の開口がシール部材によって塞がれないことから、第7位置Ps7の温度センサ47を接触式の温度センサだけでなく、非接触式の温度センサによって構成することも容易である。
このような供給装置202は、例えば、第1実施形態の供給装置2とは異なり、半溶融状態の金属材料を射出装置9に供給する(溶湯状態の金属材料は供給しない)装置として構成及び運用される。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
型締装置は、いわゆる横型締めのものに限定されず、縦型締めのものであってもよい。射出軸心及び回転軸は、水平方向に平行でなく、水平方向に傾斜する方向であってもよい。回転軸は、射出軸心と同一の高さではなく、射出軸心に対して上方又は下方にずれていてもよい。
供給装置は、既に言及したように、容器が射出スリーブの一部を構成するものでなくてもよい。例えば、容器を傾けて金属材料を射出スリーブ内へ落下させる構成、又はロボットによって半溶融状の金属材料を容器から取り出して射出スリーブへ搬送する構成が採用されてもよい。
実施形態の説明でも言及したように、支持部材は、回転軸から放射方向へ延びる延在部を有していなくてもよい。また、延在部の数は、容器の数と異なっていてもよい。例えば、容器を取り付け可能であるが、ダイカストマシンの運用時において容器が取り付けられていない延在部が存在してもよい。また、複数の容器及び/又は複数の延在部は、回転軸回りに均等なピッチで配置されていなくてもよい。別の観点では、複数の主停止位置は均等なピッチで設定されていなくてもよい。
主停止位置の数は、容器の数と同数である。ただし、ここでいう容器は、供給位置で停止するものであり、ダミーの容器は含まれない。実施形態の説明でも言及したように、支持部材は、複数の主停止位置の間の複数の副停止位置において停止しなくてもよい。また、副停止位置は、互いに隣り合う主停止位置の間において、中央以外の位置に位置してもよいし、2以上設定されてもよい。
支持部材を回転させる機構は、回転式の電動機を有するものに限定されない。例えば、特許文献2に開示されているように、直線運動を支持部材の回転運動に変換することも可能である。このような態様においては、例えば、リニアモータ等が利用されてよい。また、回転式の電動機が利用される場合において、実施形態とは異なり、伝達機構が用いられずに電動機の回転が直接に支持部材に伝達されてもよいし、実施形態に例示した伝達機構とは異なる伝達機構が利用されてもよい。
加熱部の構成は、複数の容器を個別に加熱可能な構成に限定されず、2以上の容器を含むグループ毎に容器を加熱したり(例えば特許文献2参照)、複数の容器全体を加熱する構成とされたりしてよい。また、実施形態では、加熱部(個別加熱具)は、支持部材に対して固定的とされ、容器とともに回転した。ただし、加熱部は、固定ダイプレート等に対して固定的とされ、加熱部付近を通過していく容器内の金属材料を加熱するものであってもよい。
実施形態では、支持部材が一旦停止する位置(主停止位置又は副停止位置)において、電力の積算値の検出値と目標値とを比較した。ただし、支持部材が停止位置から次の停止位置へ移動している途中の位置で積算値の検出値と目標値とが比較されても構わない。また、停止位置等の特定の位置ではなく、リアルタイムで積算値の検出値と目標値とが比較され、電力入力ペースの調整等が行われても構わない。
実施形態では、容器から金属材料が取り出される供給位置の手前かつ供給位置の近くの停止位置において、容器内の金属材料の温度が検出された。ただし、温度の検出は、供給位置から離れた位置及び/又は容器の移動途中の位置でなされてもよい。また、実施形態では、温度センサは、固定ダイプレート等に対して固定的とされた。ただし、温度センサは、支持部材に対して固定的であってもよい。例えば、複数の容器それぞれに対して温度センサが設けられてもよい。このことから理解されるように、容器内の金属材料の温度は、容器が特定の位置に到達したときだけでなく、リアルタイムで検出されてもよい。
実施形態では、電力の検出値に基づく制御と、温度の検出値に基づく制御とが順次に行われた。ただし、いずれか一方のみが行われても構わない。