(ダイカストマシンの概要)
図1は、実施形態に係るダイカストマシン1のマシン本体3の要部構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、半凝固金属を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、半凝固金属を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。
半凝固金属は、液状金属が冷却されることにより得られる、液相と固相とが混在した状態となっている金属である。別の観点では、液相線温度よりも高い温度から、液相線温度と固相線温度との間の温度へ温度変化した金属である。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、半凝固金属を製造する半凝固金属製造装置2(図2参照。以下、単に「製造装置2」ということがある。)と、製造装置2が製造した半凝固金属を金型101内に押し出すマシン本体3(狭義のダイカストマシン)と、これらを制御する制御ユニット5とを有している。
(マシン本体)
マシン本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体3は、公知の種々の構成と同様とされてよい。マシン本体3は、半凝固金属だけでなく、溶湯を金型101内に射出してダイカスト品を製造可能なものであってもよい。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させる(すなわち、型閉じを行う)。型閉じは、例えば、移動金型105及び固定金型103が互いに接触するまで(すなわち型接触まで)行われる。さらに、型締装置7は、移動金型105及び固定金型103を互いに押し付け合わせる(すなわち、型締めを行う。)。この押し付け合わせる力(型締力)は、タイバー(符号省略)を伸長させることによって得られ、その伸長量に応じた大きさである。型締めされた金型101内には製品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ半凝固状の金属材料を射出・充填する。キャビティCaに充填された金属材料は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、ダイカスト品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105からダイカスト品を押し出す。
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側(図1の紙面左側)を前方、その反対側を後方ということがある。
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には半凝固金属をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。射出駆動部25は、液圧シリンダ及び/又は電動機を含んで構成されている。
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、製造装置2によって1ショット分の半凝固金属が供給口21aからスリーブ21内へ供給される。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の半凝固金属が金型101内に押し出される(射出される)。
(半凝固金属製造装置)
図2は、半凝固金属製造装置2の要部構成を示す模式図である。
製造装置2は、液状の金属材料Mから半凝固状の金属材料Mを製造してスリーブ21に供給する装置として構成されている。製造装置2は、例えば、液状の金属材料Mを保持する保持炉31と、保持炉31から液状の金属材料を汲み出す注湯装置33と、注湯装置33により液状の金属材料が注がれ、注がれた液状の金属材料を半凝固状とする半凝固化装置35とを有している。
保持炉31及び注湯装置33は、例えば、一般的な液状の金属材料を成形するダイカストマシンにおいて液状の金属材料をスリーブ21へ注ぐための公知の構成と概ね同様とされてよい。保持炉31は、例えば、上面が開放された炉体に金属材料を収容するとともにその金属材料を加熱して液状に保つ。なお、保持炉31は、溶解炉を兼ねるものであってもよい。注湯装置33は、例えば、ラドル37と、ラドル37を搬送するラドル搬送装置39とを含んで構成されており、保持炉31から1ショット分の液状の金属材料を汲み出す。
半凝固化装置35は、例えば、注湯装置33により液状の金属材料Mが注がれる容器41を有している。液状の金属材料Mは、容器41内で冷却されることによって半凝固状となる。
容器41は、例えば、容器41の側面部41aを構成する中空部材53(図3も参照)と、容器41の底部を構成する底部材55とを有しており、これらは分離可能となっている。なお、液状の金属材料Mを容器41に注ぐ際には、容器41の上方に、容器41へ液状の金属材料Mを注ぐことを容易化するための不図示の漏斗が配置されてもよい。
中空部材53は、液状の金属材料Mを注ぐときに上下方向となる方向の両端が開口する中空状(筒状)に形成されている。換言すれば、中空部材53は、所定軸CL(図7(a)参照)を軸回りに囲む形状であり、液状の金属材料Mを注ぐ際には、所定軸CLが鉛直方向に概ね平行とされる。
なお、以下において、単に中空部材53に関して軸の語を用いる場合、この所定軸CLを指す。また、中空部材53のうち、液状の金属材料Mを注ぐときに上方とされる端部を上端53aといい、その反対側を下端53bという。
中空部材53において、所定軸CLに直交する横断面の形状は適宜に設定されてよいが、例えば、所定軸CLを中心とする円形である。また、中空部材53の内径及び外径は、例えば、上端53a側ほど大きくなっている。より具体的には、例えば、所定軸CLに平行な縦断面において、中空部材53の内面及び外面は所定軸CLに対して傾斜する直線状である。中空部材53の厚み(板厚)は、例えば、一定である。
底部材55は、例えば、概ね板状の部材であり、例えば、後述する載置装置47に固定されている。底部材55は、載置装置47の一部として捉えられてもよい。中空部材53が底部材55の上面に載置されて、中空部材53の下端53bの開口が底部材55により塞がれることにより、容器41が構成される。
中空部材53及び底部材55は、適宜な材料によって構成されてよい。例えば、これらの材料は、金属であり、より詳細には、例えば、ステンレス鋼又は銅(純銅)である。
半凝固化装置35は、容器41に液状の金属材料を注ぐ前に中空部材53の清掃等を行う噴出装置45と、噴出装置45を経た中空部材53を冷却する冷却装置43と、液状の金属材料Mが注がれるときに中空部材53が載置される載置装置47と、中空部材53から半凝固状の金属材料Mを取り出すための取出し装置49と、中空部材53を搬送する容器搬送装置51とを有している。
なお、図2では、保持炉31、冷却装置43、噴出装置45、載置装置47及びスリーブ21が直線状に配列されて図示されている。これは、図解の便宜上のものであり、実際には、これらの相対位置は、適宜に設定されてよい。
噴出装置45を除く各種の装置(冷却装置43、載置装置47、取出し装置49及び容器搬送装置51)の構成は、公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、冷却装置43の構成は、特許第5459812号公報に記載のものと同様とされてよい。また、例えば、載置装置47、取出し装置49及び容器搬送装置51は、上記公報、特許5442903号公報、特開2014-217865号公報及び特開2014-237173号公報に記載のものと同様とされてよい。従って、これらの公報の内容は、参照による援用(Incorporation by Reference)がなされてよい。以下では、噴出装置45を除く各種の装置については、概要のみ説明する。
図3は、冷却装置43の構成例の概要を示す模式図である。この冷却装置43は、上述の特許第5459812号公報に記載のものである。
冷却装置43は、例えば、中空部材53を冷却液C(例えば冷却水)に浸すことにより中空部材53を冷却する。具体的には、冷却装置43は、冷却液Cが入れられた冷却槽57と、中空部材53を保持する保持部59と、中空部材53を冷却槽57の冷却液Cに浸すように保持部59を上下に移動させる駆動装置61とを有している。保持部59は、上方に開口する中空状の受け部材63を有している。受け部材63は、上方の開口から中空部材53の下端53b側部分を受け入れる。受け部材63の内部は、基本的に冷却液Cが満たされておらず、気体(例えば空気)が存在している。
このような冷却装置43では、まず、受け部材63の開口が冷却液Cの液面よりも上面に位置している状態で中空部材53の下端53b側部分が受け部材63の開口に挿入される。次に、図示のように、中空部材53の上方の開口が冷却液Cに沈まない位置まで、中空部材53が冷却液Cに漬される。冷却液Cは、中空部材53の外面と受け部材63の開口縁部との間の隙間には流れ込まないか、流れ込んでも、受け部材63の下部開口から速やかに排出される。これにより、中空部材53は、基本的に、外面のみが冷却液Cに接した状態で冷却される。
図2に戻って、載置装置47は、例えば、単に底部材55を保持するだけのもの(装置と呼べるほどのものでなく、単にテーブル)であってもよい。また、載置装置47は、例えば、底部材55を冷却する機能を有していてもよいし、及び/又は底部材55から上方へ突出する部材を有することによって半凝固状の金属材料Mを底部材55及び中空部材53から剥がす機能を有していてもよい。すなわち、載置装置47は、容器を冷却する冷却装置及び/又は容器から半凝固金属を取り出す取出し装置を構成していてもよい。
取出し装置49は、例えば、中空部材53の下端53bの開口から半凝固状の金属材料Mを押圧するシリンダ装置を含んで構成されている。この押圧は、例えば、中空部材53を載置装置47から供給口21a上へ搬送する途中で、半凝固金属を中空部材53から剥がすために行われてもよいし、中空部材53の上端53aを供給口21a上で下方に向けている状態で、半凝固金属を中空部材53から剥がすために、及び/又は半凝固金属を押し出すために行われてもよい。
容器搬送装置51は、例えば、1以上の多関節ロボットによって構成されている。容器搬送装置51は、中空部材53を噴出装置45、冷却装置43、載置装置47及び供給口21a上の位置の間で搬送する。容器搬送装置51は、供給口21a上では、中空部材53の上端53aを下方に向ける。これにより、半凝固状の金属材料Mがスリーブ21内へ落下する。なお、容器搬送装置51は、容器から半凝固金属を取り出す取出し装置を構成していると捉えられてもよい。
(噴出装置)
図4は、噴出装置45の要部構成を示す模式図である。
噴出装置45は、例えば、中空部材53の内面及び外面に対して気体(例えば空気)を吹き付けることによって(エアブローを行うことによって)中空部材53の清掃を行う。清掃では、塵の他、中空部材53の冷却に供された冷却液も除去されてよい。また、噴出装置45は、中空部材53の内面に離型剤を吹き付ける。噴出装置45の構成は、例えば、以下のとおりである。
噴出装置45は、中空部材53を保持する保持部材65と、中空部材53の内面に向けて気体を噴出する内部気体ノズル69と、中空部材53の外面に向けて気体を噴出する外部気体ノズル71と、中空部材53の内面に向けて離型剤を噴出する離型剤ノズル67と、内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67を上下方向(換言すれば、中空部材53の所定軸CL(図7(a))の軸方向。以下、同様。)に移動させる移動装置73と、保持部材65を所定軸CLの軸回りに回転させる回転装置75とを有している。
回転装置75によって中空部材53を軸回りに回転させつつ、各種のノズルから噴出対象(気体又は離型剤)を噴出することによって、例えば、軸回りの方向において満遍なく噴出対象を中空部材53の内面及び外面に吹き付けることができる。移動装置73によって内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67を上下に移動させつつ、これらのノズルから噴出対象を噴出することによって、例えば、軸方向において満遍なく噴出対象を中空部材53の内面に吹き付けることができる。外部気体ノズル71は、上下方向の複数位置に設けられており、これにより、例えば、軸方向において満遍なく気体を中空部材53の外面に吹き付けることができる。
また、噴出装置45は、例えば、上記の各種のノズル及び装置を支持するための支持部77と、中空部材53から除去された塵及び/又は中空部材53に吹き付けられた余剰な離型剤を収集する収集部79とを有している。
(保持部材)
保持部材65は、例えば、中空部材53を下方(図4における下方であって、下端53b側の意味ではない。)から保持(支持)する。別の観点では、保持部材65は、離型剤ノズル67及び内部気体ノズル69が出し入れされる側とは反対側に位置している。中空部材53は、例えば、上端53a側を下方にして保持部材65に保持されている。本実施形態では、中空部材53は、上端53a側ほど拡径しているから、中空部材53は、拡径する側が下方とされて保持される。
保持部材65が中空部材53を保持する方法は、適宜なものとされてよい。図示の例では、中空部材53は、保持部材65の上面に形成された凹部(符号省略。また、後述するように凹部の底面の大部分は抜け穴となっている。)に嵌合されて保持されている。なお、このような構成に代えて、又は加えて、保持部材65は、例えば、特に図示しないが、中空部材53の外面を軸回りの方向の複数位置で外側から内側へ押さえ付ける機構を有していたり、電磁力、静電気力又は真空吸着によって中空部材53を吸着する機構を有していたりしてもよい。
保持部材65は、上下に貫通する貫通孔65hを有している。中空部材53は、この貫通孔65hに同軸的になるように保持部材65に保持される。貫通孔65hの、貫通方向に直交する横断面の形状は、適宜な形状とされてよいが、例えば、中空部材53の横断面の形状と同様であり、本実施形態では円形である。貫通孔65hの径(横断面の面積)は適宜に設定されてよく、中空部材53の内径(例えば上端53aにおける内径)よりも小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。ここでの同等は、例えば、両者(例えば直径)の差が中空部材53の内径(直径)の10%以下の状態とされてよい。
(ノズル)
上述のように、内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71は気体を噴出し、離型剤ノズル67は、離型剤を噴出する。離型剤ノズル67は、例えば、液状の離型剤を霧状にして噴出してもよいし、粉体状の離型剤を噴出してもよい。離型剤ノズル67は、霧状又は粉体状の離型剤の噴出に際して、厳密には、離型剤だけでなく、気体(例えば空気)も噴出する。ただし、離型剤ノズル67からの気体の噴出については、本実施形態の説明では省略することがある。
ノズルの構成は、公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、ノズルは、単なるパイプ(例えば銅管)であってもよいし、先端形状及び開口形状等に工夫がなされたものであってもよい。また、例えば、ノズルは、平面視又は側面視において、所定の方向へ噴出対象を噴出する構成のものであってもよいし、全方位に噴出対象を噴出する構成のものであってもよい。また、例えば、ノズルは、噴出対象がノズルを中心として扇状に広がるように噴出対象を噴出するものであってもよいし、扇状とは言えないほどに広がりを抑制して噴出対象を噴出するものであってもよい。
本実施形態では、例えば、内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71は、平面視及び側面視において、中心角が180°未満(平面視と側面視とで異なっていてよい。)の扇状に気体を噴出する(図7(c)及び図7(d)参照)。また、例えば、離型剤ノズル67は、鉛直軸回りの全方位(360°)に向けて離型剤を噴出し、また、側面視においては、中心角が180°未満の扇状に離型剤を噴出する(図7(e)及び図7(f)参照)。
側面視における噴出方向(例えば扇形の中心角を2等分する中心線の方向)は、適宜に設定されてよい。例えば、噴出方向は、水平方向(別の観点では所定軸CLに直交する方向)であってもよいし、水平方向よりも下方(別の観点では中空部材53の拡径側及び/又は貫通孔65h側)へ傾斜した方向であってもよいし、水平方向よりも上方(別の観点では中空部材53の縮径側及び/又は貫通孔65hとは反対側)へ傾斜した方向であってもよい。図示の例では、内部気体ノズル69の噴出方向は、水平方向よりも下方とされている。また、外部気体ノズル71及び離型剤ノズル67の噴出方向は、概ね水平方向とされている。
内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67(より詳細にはその噴出口。以下、ノズルの位置について説明するときは、特に断りがない限り、同様。)は、保持部材65に保持されている中空部材53よりも上方の位置から、中空部材53の内部の位置までの範囲内で移動する。その移動範囲の下端は、例えば、中空部材53の下方の端部(上端53a)よりも上方である。なお、移動範囲の下端は、上端53aと同等の位置、又は上端53aよりも下方の位置とされても構わない。また、ここでいう移動範囲の下端は、移動装置73等の構成から物理的に規定される下端(駆動限)であってもよいし、移動装置73の制御によって規定される下端であってもよい。
内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67の水平方向における位置は、中空部材53の内側となる位置である限り、適宜に設定されてよい。例えば、当該位置は、中空部材53の内面(例えば下端53bの位置の内面)よりも中空部材53の所定軸CLに近い位置であってもよいし、逆に、所定軸CLよりも中空部材53の内面に近い位置であってもよいし、所定軸CLと中空部材53の内面との中間の位置であってもよい。また、2つのノズルのいずれか一方は所定軸CL上に位置していてもよい。
複数の外部気体ノズル71は、上下方向の互いに異なる位置に配置されている。これにより、例えば、既述のように、中空部材53及び外部気体ノズル71を上下方向に相対移動させることなく、中空部材53の上下方向の全体に気体を吹き付けることができる。複数の外部気体ノズル71の数、中空部材53に対する上下方向の位置及び外部気体ノズル71同士の上下方向の間隔等は、例えば、上記のような中空部材53の上下方向の全体に気体を吹き付ける作用に照らして、適宜に設定されてよい。図示の例では、概略、中空部材53を上下方向において複数に等分(より詳細には5等分)したときの複数(4つ)の境界位置に複数(4つ)の外部気体ノズル71が配置されている。
外部気体ノズル71と中空部材53との距離(例えば水平方向)は、適宜に設定されてよい。外部気体ノズル71を中空部材53から離すと、外部気体ノズル71から扇状に噴出される気体が中空部材53に吹き付けられる面積が広がる一方で、中空部材53に吹き付けられる気体の圧力は低下する。従って、例えば、中空部材53の上下方向の全体に対して所望の圧力で気体を吹き付けることができるように、外部気体ノズル71の上下方向における配置数と、噴出圧力とを勘案して、外部気体ノズル71と中空部材53との距離を設定してよい。このとき、中空部材53が下方側ほど拡径されていることが考慮されて、上下の位置によって、上下方向の外部気体ノズル71同士の間隔及び/又は外部気体ノズル71と中空部材53との距離等が異なっていてもよい。
複数の外部気体ノズル71の、中空部材53の軸回りの方向における配置位置については、特に制限はない。本実施形態では、中空部材53が軸回りに回転されることから、外部気体ノズル71は、中空部材53の軸回りの方向においていずれの位置に配置されても、中空部材53の全周に対して気体を吹き付けることができる。図示の例では、複数の外部気体ノズル71は、中空部材53(所定軸CL)を挟んで両側に同数(2つずつ)で配置されている。このように配置すると、例えば、外部気体ノズル71からの気体が中空部材53に付与する力が釣り合いやすく、中空部材53が倒れにくいから、保持部材65の負担が軽減される。
各種のノズルは、後述する供給部91から噴出対象(気体及び離型剤)が供給される。供給部91と各種のノズルとは、例えば、可撓性のホース90によって接続されている。
(移動装置)
移動装置73は、例えば、内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67を保持するノズル保持部材81と、ノズル保持部材81を上下に駆動するアクチュエータ83とを有している。
ノズル保持部材81の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、ノズル保持部材81は、直線状に延びる中空状の部材とされている。一方、内部気体ノズル69は、気体が流れるパイプ70の先端に設けられている。離型剤ノズル67は、離型剤が流れるパイプ68の先端に設けられている。パイプ70及びパイプ68は、基本的に(例えば端部を除いて)直線状に延びている。そして、パイプ70及びパイプ68は、ノズル保持部材81に挿通されて保持されている。ひいては、内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67がノズル保持部材81に保持されている。
ノズル保持部材81は、例えば、中空部材53(保持部材65)に対して同軸的に、かつ中空部材53の上方に位置している。パイプ70(内部気体ノズル69)及びパイプ68(離型剤ノズル67)は、例えば、ノズル保持部材81(別の観点では中空部材53)の軸心に対して若干ずれている。ただし、一方が軸心に位置していてもよい。また、ノズル保持部材81は、例えば、内部気体ノズル69が離型剤ノズル67よりも上方に位置するようにこれらを保持している。これにより、例えば、全方位型の離型剤ノズル67による離型剤の噴出が内部気体ノズル69によって妨げられるおそれが低減される。また、ノズル保持部材81は、例えば、平面視において内部気体ノズル69が離型剤ノズル67とは反対側を向くようにこれらを保持している。
アクチュエータ83の構成は、直線運動を生じることができる限り、適宜なものとされてよい。図示の例では、アクチュエータ83は、液圧式又は気体圧式のシリンダによって構成されている。すなわち、アクチュエータ83は、シリンダ部83aと、シリンダ部83a内を摺動する不図示のピストンと、当該ピストンに固定されてシリンダ部83aから延び出ているロッド83bとを有している。特に図示しないが、シリンダ部83a内は、ピストンによって2つのシリンダ室に区画されており、2つのシリンダ室に選択的に液体(例えば油)又は気体(例えば空気)が供給されることによって、ピストン及びロッド83bはシリンダ部83aに対して軸方向(上下方向)に移動する。なお、上位概念で言えば、アクチュエータ83は、固定部(シリンダ部83a)と、固定部に対して直線的に駆動される可動部(ロッド83b)とを有している。
アクチュエータ83は支持部77に固定されている。ロッド83bは連結部材84によってノズル保持部材81に連結されている。アクチュエータ83の軸方向は、鉛直方向とされている。従って、ロッド83bのシリンダ部83aに対する移動により、内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67が上下に駆動される。アクチュエータ83とノズル保持部材81とは、並列に連結されてもよいし(図示の例)、直列(同軸)に連結されてもよい。並列に連結する場合においては、例えば、噴出装置45を低背化することができる。
移動装置73の駆動位置(別の観点では内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67の位置)は、例えば、位置センサ85によって検出される。位置センサ85の構成は適宜なものとされてよい。例えば、位置センサ85は、ロッド83bに設けられた不図示のスケール部と共に光学式又は磁気式のリニアエンコーダを構成している。この他、位置センサ85として、例えば、レーザ測長器が用いられてもよい。
(回転装置)
回転装置75の構成は、回転運動を生じて保持部材65に伝達できる限り、適宜なものとされてよい。図示の例では、回転装置75は、回転式の電動機86と、電動機86の回転を保持部材65に伝達する伝達機構87とを有している。
電動機86は、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、ステッピングモータ、サーボモータ等の適宜な方式のものとされてよい。例えば、電動機86は、回転センサ86bの検出する回転数に基づいてフィードバック制御がなされるサーボモータである。回転センサ86bは、例えば、エンコーダ又はレゾルバである。また、電動機86の定格回転数及び定格トルク等は適宜に設定されてよい。電動機86の保持部材65(中空部材53)に対する配置位置は、適宜に設定されてよい。図示の例では、電動機86は、保持部材65に対して並列に配置されている。
伝達機構87は、例えば、電動機86の出力軸86aに固定されている第1プーリ87aと、第1プーリ87aに掛けられているベルト87bと、ベルト87bが掛けられている第2プーリ87cとを有している。第2プーリ87cは、例えば、保持部材65と同心となるように保持部材65の外面に固定されている。
従って、電動機86の回転は、第1プーリ87a、ベルト87b及び第2プーリ87cを順に伝わって保持部材65に伝達される。伝達機構87は、例えば、電動機86と保持部材65との位置関係の自由度を向上させることに寄与している。伝達機構87は、電動機86の回転を変速してもよいし、変速しなくてもよい。換言すれば、第1プーリ87a及び第2プーリ87cの径は、互いに異なっていてもよいし、互いに同一であってもよい。
第2プーリ87cは、保持部材65の外側に固定されており、保持部材65の外面に電動機86からの力を伝達する。別の観点では、伝達機構87は、貫通孔65hに対して直列に(同軸に)位置しないように構成されており、貫通孔65hからの塵又は余剰な離型剤の排出の妨げとなっていない。なお、第2プーリ87c(換言すれば保持部材65の外面に固定された保持部材65と同心の環状部材)は、保持部材65の一部と捉えられ、ベルト87bが保持部材65の外面に力を伝えていると捉えても構わない。
(支持部)
支持部77は、上述した各種の構成を支持することができる限り、適宜な構成とされてよい。図示の例では、例えば、以下のとおりである。支持部77は、柱状及び/又は壁状の基礎部77aと、基礎部77a上に水平に配置された支持板77bと、支持板77b上にチャンバCHを構成する包囲部77cとを有している。これらは、例えば、金属からなる複数の板を溶接又は締結によって適宜に固定することによって構成されている。
包囲部77cは、中空部材53を収容するとともに、各種のノズルの少なくとも先端(噴出口)を収容している。これにより、例えば、冷却液、塵及び/又は離型剤が噴出装置45の周囲に飛散することが抑制される。包囲部77cの形状及び大きさは適宜に設定されてよい。包囲部77cは、例えば、紙面奥手方向又は手前方向の一部に不図示の開口を有している。中空部材53は、上記開口を介してチャンバCH内に出し入れされる。当該開口は、扉によって開閉されてもよい。なお、上記では、包囲部77cがノズルの少なくとも先端を収容していると表現したが、ノズルは、比較的長いパイプによって構成されていることもあるから、包囲部77cに収容されている部分がノズルと捉えられてもよい。
支持板77bは、例えば、包囲部77cに囲まれた領域に開口77dを有している。開口77dには、保持部材65が挿通されている。既述のように、保持部材65には、中空部材53と同軸に貫通孔65hが形成されている。従って、中空部材53から除去された塵及び/又は余剰な離型剤は、貫通孔65hを介してチャンバCH外へ排出される。
保持部材65は、例えば、軸受機構89を介して、支持板77bのうちの開口77dの周囲の領域に支持されている。軸受機構89は、例えば、特に図示しないが、スラスト軸受及びラジアル軸受を組み合わせて構成され、保持部材65の回転を滑らかにすることに寄与している。軸受は、例えば、転がり軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよい。
ノズル保持部材81は、例えば、包囲部77cの上面に挿通されている。これにより、チャンバCHの外部からパイプ70および68を介して内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67へ噴出対象(気体又は離型剤)を供給することが可能になっている。より詳細には、包囲部77cの上面には、ノズル保持部材81が挿通され、かつ摺動するブッシュ77fが設けられている。これにより、例えば、包囲部77cの密閉性を向上しつつ、ノズル保持部材81の上下動を円滑化できる。
外部気体ノズル71は、例えば、包囲部77cの側面部に取り付けられている。具体的には、例えば、外部気体ノズル71又は外部気体ノズル71に固定された中空部材が、包囲部77cの側面部に形成された孔に挿通されるとともに、不図示のボルト及びナット等によって包囲部77cの側面部に固定されている。これにより、チャンバCHの外部から外部気体ノズル71へ気体が供給される。
移動装置73は、例えば、アクチュエータ83のシリンダ部83aが包囲部77cの側面部に取り付けられることにより、支持部77に支持されている。取り付けは、例えば、ボルト及びナット等を用いて適宜になされてよい。アクチュエータ83は、ロッド83b側がシリンダ部83a側に対して上方になるように配置されており、ロッド83bは、包囲部77cよりも上方に延び出ている。そして、ロッド83bとノズル保持部材81とを連結する連結部材84は、包囲部77cの上方にて上下に移動される。
回転装置75の電動機86は、例えば、包囲部77cの外側で支持板77bの上面に配置されている。また、電動機86は、例えば、支持板77bに形成された孔(符号省略)に出力軸86aを挿通させた状態で設けられている。そして、第1プーリ87aは、支持板77bの下方で出力軸86aに固定されている。第2プーリ87cは、保持部材65のうち、支持板77bの開口77dから下方へ突出している部分に固定されている。ベルト87bは、支持板77bの下方で第1プーリ87a及び第2プーリ87cに掛け渡されている。
(収集部)
収集部79は、保持部材65の貫通孔65hの下方(中空部材53とは反対側)の開口に対向する開口79hを有する中空状とされている。これにより、中空部材53からの塵又は余剰な離型剤は、貫通孔65hを通過した後、開口79hを介して収集部79の内部に収容され、周囲に飛散されることが抑制される。
より具体的には、収集部79は、例えば、開口79hを有している外箱79aと、外箱79a内に出し入れ可能な内箱79bとを有している。このような構成にすることにより、例えば、開口79hの貫通孔65hに対する位置関係を安定化したり、溜まった塵又は離型剤の取出しを容易化したりすることができる。
外箱79a及び内箱79bの形状等は適宜なものとされてよい。図示の例では、外箱79aは、本体部79aaと、上方に突出しており、先端に開口79hが形成されている突部79abとを有している。本体部79aaは、例えば、概略、直方体状である。また、本体部79aaは、内箱79bを出し入れ可能に、例えば、特に図示しないが、一側面が開放されているか、一側面が扉とされている。突部79abは、例えば、概略円筒状である。内箱79bは、例えば、概略、上方が開放された直方体状である。
(制御ユニット)
図1に戻って、制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図5参照)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9、押出装置11及び製造装置2毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分等の適宜な位置に設けられてよい。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
なお、ダイカストマシン1のうち製造装置2に着目する場合において、制御ユニット5は、製造装置2の制御ユニットとして捉えられてよい。同様に、噴出装置45に着目する場合において、制御ユニット5は、噴出装置45の制御ユニットとして捉えられてよい。
(信号処理系等を中心とするブロック図)
図5は、信号処理系の構成を中心としてダイカストマシン1の構成を示すブロック図である。ここでは、特に、噴出装置45に係る部分を示している。
図5において模式的に示すように、噴出装置45は、既述の内部気体ノズル69、外部気体ノズル71、離型剤ノズル67、アクチュエータ83及び電動機86を有している。また、噴出装置45は、例えば、各種のノズルに噴出対象を供給する供給部91と、アクチュエータ83(シリンダ)に液圧又は気圧を付与する圧力回路92と、電動機86に電力を付与するドライバ93とを有している。
供給部91は、例えば、内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71に気体を供給する気体供給部91aと、離型剤ノズル67に離型剤(及び気体)を供給する離型剤供給部91bとを有している。
気体供給部91aは、例えば、金型に対してエアブローを行うノズルに気体を供給する公知の供給部の構成と同様の構成とされてよい。例えば、特に図示しないが、気体供給部91aは、気体を送出するコンプレッサと、送出された気体の内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71への流れを許容又は禁止するバルブとを有している。内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71からの気体の噴出及びその停止は、例えば、バルブの開閉によって制御される。バルブにより流量制御がなされてもよい。なお、コンプレッサは、内部気体ノズル69と外部気体ノズル71とで共用されていてもよいし、別個に設けられていてもよい。同様に、バルブは、内部気体ノズル69と外部気体ノズル71とで共用されていてもよいし、別個に設けられていてもよい。
離型剤供給部91bは、例えば、金型に対して離型剤を塗布するノズルに離型剤を供給する公知の供給部の構成と同様の構成とされてよい。例えば、特に図示しないが、離型剤供給部91bは、液状の離型剤を保持するタンクと、タンクの離型剤を加圧して離型剤を送出する加圧部と、送出された離型剤の離型剤ノズル67への流れを許容又は禁止する離型剤用バルブと、気体を送出するコンプレッサと、送出された気体の離型剤ノズル67への流れを許容又は禁止する気体用バルブとを有している。離型剤及び気体は、離型剤ノズル67等において混合され、霧状の離型剤として離型剤ノズル67から噴出される。離型剤の噴出及びその停止は、例えば、離型剤用バルブ及び気体用バルブの開閉によって制御される。バルブにより流量制御がなされてもよい。なお、離型剤供給部91bのコンプレッサ及び気体用バルブには、気体供給部91aのものが利用されてもよい。
圧力回路92は、例えば、特に図示しないが、作動流体(例えば油又は空気)を送出するポンプ及び/又はアキュムレータ等の圧力源と、圧力源からアクチュエータ83への作動流体の流れを制御する複数のバルブとを有している。なお、これらの構成要素の一部(例えば圧力源)には、マシン本体3のものが利用されてもよい。
ドライバ93は、例えば、入力された指令値(例えば速度の目標値)を実現する電力を電動機86に供給する。なお、図示の例では、ドライバ93は、回転センサ86bの検出値に基づいて、電動機86の制御量が目標値に収束するようにフィードバック制御を行う。
制御装置13は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。そして、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の機能部(13a,13b及び13c)が構築される。
各種の機能部は、例えば、供給部91を制御する噴出制御部13a、圧力回路92(別の観点ではアクチュエータ83)を制御する移動制御部13b、及びドライバ93(別の観点では電動機86)を制御する回転制御部13cを含む。噴出制御部13aは、例えば、供給部91内の上述した各種のバルブの開閉を制御する。移動制御部13bは、例えば、位置センサ85の検出値に基づいて、アクチュエータ83の位置及び速度のフィードバック制御を行う。回転制御部13cは、例えば、回転センサ86bの検出値に基づいて、電動機86の速度(実施態様によっては速度に加えて位置)のフィードバック制御を行う。
(ダイカストマシンの動作)
図6は、ダイカストマシン1の動作の概要を説明するためのフローチャートである。別の観点では、図6は、制御装置13が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、1サイクルの成形において行われるものであり、繰り返し行われてよい。
ステップST1~ST5は、マシン本体3において行われる動作の概要を示している。具体的には、ステップST1では、制御装置13は、型閉じを行うように型締装置7を制御する。ステップST2では、制御装置13は、型締めを行うように型締装置7を制御する。ステップST3では、制御装置13は、製造装置2によりスリーブ21に供給された半凝固状の金属材料Mを金型101内へ射出するように射出装置9を制御する。ステップST4では、制御装置13は、型開きを行うように型締装置7を制御する。ステップST5では、制御装置13は、移動金型105からダイカスト品を押し出すように押出装置11を制御する。
ステップST11~ST16は、製造装置2において行われる動作の概要を示している。この動作は、例えば、ステップST1及びST2と並行して行われる。なお、ステップST1とST11とはいずれが先に開始されてもよく、例えば、ステップST11は、ステップST1よりも先に開始される。
ステップST11では、制御装置13は、中空部材53を冷却するように製造装置2を制御する。具体的には、制御装置13は、中空部材53の下部を冷却装置43の受け部材63に挿入するように容器搬送装置51を制御する。次に、制御装置13は、中空部材53を冷却液Cに漬すように冷却装置43(駆動装置61)を制御する。その後、制御装置13は、中空部材53を冷却液Cから引き揚げて冷却を終了する。
ステップS12~ST14は、製造装置2のうち噴出装置45において行われる動作の概要を示している。なお、特に図示しないが、ステップST11からステップST12への移行の際には、制御装置13は、冷却後の中空部材53を冷却装置43から噴出装置45(保持部材65)に配置するように容器搬送装置51を制御する。
図7(a)~図7(f)は、ステップST12~ST14を補足するための模式図である。図7(a)、図7(c)及び図7(e)は、中空部材53の縦断面(所定軸CLに平行な断面)を示している。図7(b)、図7(d)及び図7(f)は、中空部材53の横断面(所定軸CLに直交する断面)を示している。
ステップST12では、図7(a)及び図7(b)に示すように、制御装置13(回転制御部13c)は、中空部材53(保持部材65)を軸回りに回転させるように噴出装置45の回転装置75(電動機86)を制御する。このとき、各種のノズルからは噴出対象は噴出されていない。回転は、例えば、ステップST12が実行されている間は停止されることなく同一の向き(軸回りの一方側又は他方側)に連続的に行われる。回転速度は、例えば、後述するステップST13及びST14における回転速度よりも高速とされてよい。
中空部材53が回転されることにより、例えば、中空部材53の外面に付着している冷却液Cの少なくとも一部が除去される。より具体的には、例えば、冷却液Cは、遠心力によって中空部材53の外面から離れて飛散する。及び/又は、例えば、冷却液Cは、遠心力によって径が大きい側である中空部材53の上端53a側へ中空部材53の外面を伝っていく。
ステップST13では、図7(c)及び図7(d)に示すように、制御装置13(回転制御部13c及び噴出制御部13a)は、中空部材53を軸回りに回転させつつ、内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71によって気体を中空部材53に吹き付けるように噴出装置45(電動機86及び気体供給部91a)を制御する。これにより、例えば、中空部材53に付着している塵及び/又は冷却液Cが除去される。
具体的には、制御装置13は、例えば、ステップST12に引き続いて中空部材53の軸回りの回転を維持するように回転装置75を制御する。回転は、例えば、ステップST13が実行されている間は停止されることなく同一の向き(軸回りの一方側又は他方側)に連続的に行われる。回転速度は、例えば、図7(a)の矢印y1及び図7(b)の矢印y2よりも図7(c)の矢印y3及び図7(d)の矢印y4を細く示しているように、ステップST12における回転速度よりも低速とされてよい。このような速度設定により、例えば、気体を中空部材53に十分な時間で吹き付けることができる。
また、制御装置13(移動制御部13b)は、内部気体ノズル69を下方へ移動させて中空部材53に挿通するように移動装置73(アクチュエータ83)を制御する。さらに、制御装置13は、内部気体ノズル69が中空部材53内で上下方向において所定の範囲内で移動するように移動装置73を制御する。また、制御装置13(噴出制御部13a)は、内部気体ノズル69が上下方向に移動している最中に、内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71から気体が噴出されるように供給部91(気体供給部91a)を制御する。
気体の噴出量は、例えば、噴出開始から噴出終了まで一定である。気体の噴出開始は、内部気体ノズル69が中空部材53に挿入される前から行われてもよいし、挿入後に行われてもよい。内部気体ノズル69は、ステップST13が終了するときに、その後の離型剤ノズル67による離型剤の噴出(ステップST14)に備えて中空部材53に挿入されたままとされてもよいし、引き抜かれてもよい。引き抜かれる場合において、気体の噴出終了は、内部気体ノズル69が中空部材53から引き抜かれる前に行われてもよいし、引抜後に行われてもよい。内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71とで噴出を別個に制御可能な場合は、両者で噴出の開始及び/又は終了のタイミングが異なっていてもよい。
また、ステップST13における内部気体ノズル69の上下方向の移動は、例えば、上方から下方への片道だけであってもよい。そして、内部気体ノズル69を上方へ移動させて中空部材53から引き抜く動作は、次のステップST14(離型剤の塗布)において行われてもよい。また、ステップST13における内部気体ノズル69の上下方向の移動は、1往復であってもよい。この場合、内部気体ノズル69からの気体の噴出は、片道だけで行われてもよいし、往路と復路との双方で行われてもよい。また、ステップST13における内部気体ノズル69の上下方向の移動は、2往復以上されてもよい。この場合も、気体の噴出は、各往復移動について、片道だけで行われてもよいし、往路と復路との双方で行われてもよい。
内部気体ノズル69の移動速度の具体的な値は適宜に設定されてよい。また、この移動速度は、例えば、一定の速度であってもよいし、変速がなされてもよい。例えば、内部気体ノズル69が下方に位置するほど移動速度は低くされてもよい。
ステップST14では、図7(e)及び図7(f)に示すように、制御装置13(回転制御部13c及び噴出制御部13a)は、中空部材53を軸回りに回転させつつ、離型剤ノズル67によって離型剤を中空部材53に吹き付けるように噴出装置45(電動機86及び離型剤供給部91b)を制御する。これにより、中空部材53の内面に離型剤が塗布される。
具体的には、制御装置13は、ステップST13に引き続いて中空部材53の軸回りの回転を維持するように回転装置75を制御する。回転は、例えば、ステップST14が実行されている間は停止されることなく同一の向き(軸回りの一方側又は他方側)に連続的に行われる。回転速度は、例えば、図7(e)の矢印y5および図7(f)の矢印y6の太さが、図7(a)の矢印y1および図7(b)の矢印y2の太さと、図7(c)の矢印y3および図7(d)の矢印y4の太さとの間の太さで示されているように、ステップST12における回転速度よりも低速、かつステップST13における回転速度よりも高速とされてよい。このような速度設定により、例えば、離型剤が必要以上に付着されたり、逆に、離型剤が十分に付着しなかったりするおそれが低減される。
また、制御装置13(移動制御部13b)は、離型剤ノズル67が中空部材53内で上下方向において所定の範囲内で移動するように移動装置73を制御する。また、制御装置13(噴出制御部13a)は、離型剤ノズル67が上下方向に移動している最中に、離型剤ノズル67から離型剤が噴出されるように供給部91(離型剤供給部91b)を制御する。
離型剤の噴出量は、例えば、噴出開始から噴出終了まで一定である。離型剤の噴出開始及び噴出終了は、基本的に、離型剤ノズル67が中空部材53内に挿入されている状態で行われる。ステップST13の説明から理解されるように、ステップST14における離型剤ノズル67の移動(離型剤の塗布)は、上方から下方へなされてもよいし、下方から上方へなされてもよい。離型剤の塗布は、例えば、離型剤ノズル67が上方又は下方へ移動する片道においてのみなされてよい。ただし、例えば、離型剤の塗布は、1往復の往路と復路との双方においてなされてもよいし、2往復以上について片道又は往路と復路との双方においてなされても構わない。
離型剤ノズル67の移動速度の具体的な値は適宜に設定されてよい。この移動速度は、例えば、離型剤ノズル67の位置によらずに一定とされる。ただし、変速がなされても構わない。例えば、離型剤ノズル67が下方に位置するほど移動速度は低くされてもよい。
ステップST12~ST14における回転数(回転速度)の具体的な値は適宜に設定されてよい。一例を挙げると、ステップST13およびST14においては、保持部材65は、1秒間に1/10回転以上10回転以下の速度で回転する。ただし、これはあくまで一例であり、ステップST13又はST14において、前記範囲よりも遅く、又は速く保持部材65が回転してもよいし、ステップST12において前記範囲内で保持部材65が回転してもよい。
ステップS15では、製造装置2は、容器41に注湯を行う。具体的には、まず、制御装置13は、離型剤が塗布された中空部材53を噴出装置45から載置装置47の底部材55上に配置するように容器搬送装置51を制御する。これにより、中空部材53及び底部材55からなる容器41が構成される。次に、制御装置13は、ラドル37によって保持炉31内の液状の金属材料Mを載置装置47上の容器41に注ぐ。
ステップS16では、製造装置2は、容器41から半凝固状の金属材料Mを取り出して、スリーブ21に供給する。具体的には、制御装置13は、中空部材53を上下を逆さにしつつスリーブ21上へ移動させるように容器搬送装置51を制御する。また、制御装置13は、中空部材53の下端53b側から半凝固状の金属材料Mを押圧するように取出し装置49を制御する。
(回転速度等の制御)
図8は、ステップST14において行われる回転装置75及び移動装置73の制御の手順の一例を示すフローチャートである。図9(a)~図9(d)は、図8を補足するための模式図である。図9(a)及び図9(c)は、中空部材53の縦断面(所定軸CLに平行な断面)を示している。図9(b)及び図9(d)は、中空部材53の横断面(所定軸CLに直交する断面)を示している。ただし、図9(b)は、図9(a)に示す離型剤ノズル67の位置における横断面を示し、図9(d)は、図9(b)に示す離型剤ノズル67の位置における横断面を示し、両図の位置は互いに異なっている。
既に述べたように、離型剤の塗布は、離型剤ノズル67が下方へ移動する過程でなされてもよいし、上方へ移動する過程でなされてもよいし、双方でなされてもよい。ここでは、下方へ移動する過程で離型剤の塗布がなされる態様を例にとる。
ステップST21の開始時において、離型剤ノズル67は、上下方向の移動範囲のうちの上端(初期位置)に位置している。そして、ステップST21では、制御装置13(回転制御部13c)は、中空部材53の回転速度を予め設定されている初期回転速度にするように回転装置75を制御する。
ステップST22では、制御装置13(移動制御部13b)は、予め設定されている初期速度で離型剤ノズル67を下方に移動させるように移動装置73を制御する。ステップST23では、制御装置13(回転制御部13c)は、中空部材53の回転速度を減少させるように回転装置75を制御する。ステップST24では、制御装置13(移動制御部13b)は、中空部材53の下方への移動速度を減少させるように移動装置73を制御する。ステップST25では、制御装置13は、離型剤ノズル67が下限に到達したか否か判定し、否定判定のときはステップST22に取り、肯定判定のときは処理を終了する。特に図示しないが、ステップST22~ST25に並行して、離型剤ノズル67からの離型剤の噴出が行われている。
このような処理により、例えば、図9(a)の矢印y11及び図9(b)の矢印y12よりも図9(c)の矢印y13及び図9(d)の矢印y14を細く示しているように、離型剤ノズル67が下方へ位置するほど、中空部材53の回転速度(及び離型剤ノズル67の移動速度)は減じられる。なお、図8では、離型剤ノズル67の下方への移動(ステップST22)と、回転速度の減少(ステップST23)と、移動速度の減少(ステップST24)とが順次行われている。これは、例えば、コンピュータによる周期の短い処理における概念である。従って、実質的にこれらは並行して連続的に行われていると捉えられてよいし、コンピュータの処理上も並行していてもよい。
このように回転速度及び移動速度を制御すると、例えば、回転速度及び移動速度が離型剤ノズル67の上下方向の位置によらずに一定の態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、離型剤を均一に塗布することができる。具体的には、例えば、以下のとおりである。
本実施形態では、中空部材53は、上端53a側ほど拡径する形状とされている。従って、中空部材53が一定の回転速度で回転したとすると、中空部材53の内面における接線方向の速度及び遠心力は、上端53a側において大きくなる。その結果、離型剤の中空部材53の内面に対する付着量が上端53a側と下端53b側とで異なってしまうおそれがある。しかし、接線方向の速度又は遠心力が同等となるように、離型剤ノズル67が上端53a側に位置するほど回転速度を低下させることにより、そのようなおそれを低減することができる。
また、中空部材53は、上端53a側ほど拡径することによって上端53a側ほど円周が長くなっている。従って、上端53a側と下端53b側とで同一の厚さで離型剤を中空部材53の内面に塗布するためには、上端53a側ほど離型剤ノズル67からの離型剤の噴出量は多くなる。本実施形態では、例えば、離型剤ノズル67が下方に位置するほど上下方向の移動速度を低下させることにより、上端53a側と下端53b側との離型剤の厚さの差を低減できる。
なお、例えば、本実施形態とは異なり、平面視において離型剤ノズル67が扇状に離型剤を噴出する態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)を考える。この態様では、中空部材53が回転することによって、離型剤が中空部材53の全周に塗布される。当該態様において、上下方向において等間隔で互いに離れた複数位置に離型剤ノズル67を停止させ、その停止している間だけ、中空部材53を1回転させて離型剤ノズル67から離型剤を噴出させる動作(当該動作も本開示に係る技術に含まれる。)を考える。この動作においては、離型剤ノズル67が下方に位置するほど回転速度を低下させる(1回転させる時間を長くする)ことにより、上端53a側と下端53b側との離型剤の厚さの差を低減できる。
ステップST14(離型剤の塗布)を例に取ったが、ステップST13(エアブローによる清掃)においても、図8に示した処理と同様の処理がなされてよい。この場合も、気体の中空部材53に対する吹き付けを均一に行うことができる作用が奏される。
以上のとおり、本実施形態では、噴出装置45は、中空部材53に噴出対象(気体又は離型剤)を吹き付けるものである。中空部材53は、注がれた液状の金属材料Mを冷却して半凝固状にする容器41のうちの、当該容器41の深さ方向に延びる所定軸CLを軸回りに囲む側面部41aを構成する。噴出装置45は、中空部材53を保持する保持部材65と、側面部41aに向けて噴出対象を噴出する1以上のノズル(離型剤ノズル67、内部気体ノズル69及び複数の外部気体ノズル71)と、保持部材65を所定軸CLの軸回りに回転させる回転装置75と、を有している。
また、別の観点では、本実施形態に係る半凝固金属製造装置2は、中空部材53と、冷却装置43と、噴出装置45と、注湯装置33と、取出し装置49と、を有している。中空部材53は、所定軸CLを軸回りに囲む側面部41aを有している。冷却装置43は、中空部材53を冷却する。噴出装置45は、中空部材53に噴出対象を吹き付ける。注湯装置33は、噴出対象が吹き付けられた中空部材53を含む容器41に液状の金属材料Mを注ぐ。取出し装置49は、容器41内で冷却されて半凝固状となった金属材料Mを容器41(中空部材53)から取り出す。さらに、噴出装置45は、中空部材53を保持する保持部材65と、側面部41aに向けて噴出対象を噴出する1以上のノズル(離型剤ノズル67、内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71)と、保持部材65を所定軸CLの軸回りに回転させる回転装置75と、を有している。
従って、例えば、ノズルは、中空部材53に対して所定軸CLの軸回りに相対移動しつつ、中空部材53に噴出対象を吹き付けることができる。従って、例えば、複数のノズルを所定軸CLの軸回りに配列しなくても中空部材53の内面又は外面の全周に噴出対象を吹き付けることがきる。また、中空部材53を回転させずに、所定軸CLの軸回りに配列された複数のノズルによって噴出対象を中空部材53に吹き付ける態様においては、複数のノズルの正面の位置と複数のノズルの間の位置とで噴出対象の吹き付けの程度が異なってしまうおそれがあるが、そのようなおそれも低減される。すなわち、噴出対象を軸回りにおいて均一に中空部材53に吹き付けることができる。別の観点では、多数のノズルを軸回りに隙間なく配列したり、中空部材53に挿入されるノズルを全方位型のものにしたりする必要性が低減される。全方位型のノズルを用いた場合において、ノズルからの噴出量に関して方位に対するばらつきが生じてしまっても、中空部材53が回転して噴出対象が吹き付けられる位置が変化することによって、中空部材53に吹き付けられる量のばらつきが緩和される。また、例えば、中空部材53の回転に起因する遠心力が塵又は冷却液Cの除去に寄与する。
また、本実施形態では、噴出装置45は、1以上のノズルのうちの少なくとも1つ(内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71)に噴出対象としての気体を供給する気体供給部91aを更に有している。
この場合、例えば、中空部材53に対して軸回りの方向において均一にエアブローを行って、中空部材の内面及び/又は外面の清掃を行うことができる。また、例えば、中空部材53の回転によって中空部材53に付着している塵が振り落とされ、エアブローによる清掃が効率化される。
また、本実施形態では、噴出装置45は、1以上のノズルのうちの少なくとも1つ(離型剤ノズル67)に噴出対象としての離型剤を供給する離型剤供給部91bを更に有している。
この場合、例えば、中空部材53に対して軸回りの方向において均一に離型剤を塗布することができる。また、例えば、中空部材53に付着した離型剤には遠心力が付与される。その結果、例えば、液面が重力によって水平になるのと同様の原理により、中空部材53の内面に付着した離型剤の表面が遠心力によって円形になりやすい。すなわち、離型剤の表面は、中空部材53の円形の内面と平行になりやすい。ひいては、離型剤の厚さが均一になりやすい。
また、本実施形態では、噴出装置45は、保持部材65(中空部材53)と1以上のノズルのうちの少なくとも1つ(内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67)とを所定軸CLの軸方向において相対移動させる移動装置73を更に有している。
この場合、例えば、軸回りの方向と同様に、複数のノズルを軸方向に隙間なく配列しなくても、中空部材53に対して軸方向において均一に噴出対象を吹き付けることができる。また、例えば、全方位型でないノズルを考えると、軸回りの移動と軸方向の移動とを組み合わせると、ノズルの噴出方向は、中空部材53に対して螺旋状に移動することになる。ここで、軸方向の移動が行われずに、軸回りの移動のみが行われる態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)を仮定する。この態様において、例えば、制御の誤差により、ノズルが噴出を開始してから終了するまでの期間が、中空部材53が1周する期間よりも長くなったとする。この場合、1周した後に、噴出対象の吹き付けを開始した位置を超えてさらに噴出対象が吹き付けられ、軸回りの一部に重複して噴出対象が吹き付けられる。その結果、例えば、一部において離型剤が厚くなる。別の観点では、しかし、螺旋状に相対移動が行われる態様においては、1周したときに上下方向の位置がずれているから、重複して噴出対象が吹き付けられるおそれが低減される。
また、本実施形態では、1以上のノズルは、中空部材53に出し入れされる内部ノズル(内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67)を含む。保持部材65は、内部ノズルが中空部材53にて出し入れされる側とは反対側にて中空部材53に同軸な貫通孔65hを有している。
この場合、例えば、エアブローによって中空部材53の内面から除去された塵、及び/又は中空部材53の内面に吹き付けられた離型剤のうちの余剰分を、貫通孔65hを介して排出することができる。これにより、例えば、塵又は離型剤の余剰分が中空部材53の周囲に飛散したり、保持部材65に溜まったりするおそれが低減され、ひいては、これらが中空部材53に再付着してしまうおそれが低減される。また、保持部材65は、軸回りに回転されていることから、例えば、中空部材53から貫通孔65hに排出された塵又は離型剤が貫通孔65hの内面に接触しても、これらの少なくとも一部は振り落とされる。その結果、例えば、中空部材53の下方に隣接して回転しない貫通孔が位置している態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、貫通孔の清掃が容易である。
また、本実施形態では、噴出装置45は、中空部材53及び内部ノズル(内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67)を収容するチャンバCHを構成しているチャンバ部材(支持部77。特に支持板77b及び包囲部77cの組み合わせ)を更に有している。支持部77(支持板77b)は、チャンバCHの内部と外部とを通じさせる開口77dを有している。保持部材65は、開口77dに挿通されており、貫通孔65hの一端がチャンバCHの内部に位置しているとともに貫通孔65hの他端がチャンバCHの外部に位置している。
この場合、例えば、中空部材53は、チャンバCH内に配置されていることによって、貫通孔65hから排出された塵又は離型剤から隔離される。従って、貫通孔65hから排出された塵又は離型剤が中空部材53に再付着することが抑制される。また、例えば、チャンバCH内に外部ノズル(外部気体ノズル71)も収容されていることによって、エアブローによって除去された冷却液が周囲へ飛散することを抑制することができる。
また、本実施形態では、噴出装置45は、貫通孔65hの、中空部材53とは反対側に対向している開口79hを有している中空状の収集部79を更に有している。
この場合、例えば、貫通孔65hを介して排出された塵及び/又は離型剤を溜めておくことができるから、塵及び/又は離型剤の廃棄処理が容易化される。
また、本実施形態では、回転装置75は、回転式の電動機86と、電動機86の回転を保持部材65の外周面に伝達する伝達機構87と、を有している。
この場合、例えば、電動機の制御の精度は油圧機器及び空圧機器に比較して高いから、保持部材65(中空部材53)の回転速度及び/又は回転位置を正確に制御することができる。その結果、例えば、軸回りの方向の単位長さ当たりの離型剤の塗布時間を高精度に制御することができる。ひいては、離型剤の厚さを均一にしたり、高精度に所望の厚さにしたりすることができる。さらに、伝達機構87は、保持部材65の外面に力を伝達することから、中空部材53から貫通孔65hを経由して排出される塵又は離型剤の経路を避けて伝達機構87を設けることができる。
また、本実施形態では、噴出装置45は、気体供給部91aと、離型剤供給部91bと、噴出制御部13aと、回転制御部13cとを有している。気体供給部91aは、1以上のノズルのうちの少なくとも1つ(内部気体ノズル69及び外部気体ノズル71)に噴出対象としての気体を供給する。離型剤供給部91bは、1以上のノズルのうちの少なくとも1つ(離型剤ノズル67)に噴出対象としての離型剤を供給する。噴出制御部13aは、気体を中空部材53の側面部41aに吹き付ける清掃工程(ステップST13)と、離型剤を側面部41aに吹き付ける塗布工程(ステップST14)とを順次行うように気体供給部91a及び離型剤供給部91bを制御する。回転制御部13cは、清掃工程における保持部材65の回転速度に対して、塗布工程における保持部材65の回転速度が速くなるように回転装置75を制御する。
この場合、例えば、清掃工程では中空部材53の回転が相対的に遅いから、気体を中空部材53に十分な時間で吹き付けることができる。ひいては、より確実に塵を除去して、清掃を十分に行うことができる。その一方で、塗布工程では中空部材53の回転が相対的に速いから、離型剤が必要以上に付着されるおそれが低減される。また、中空部材53の内面に付着した離型剤に遠心力を作用させて離型剤の斑を低減する効果も得られやすい。
また、本実施形態では、中空部材53は、所定軸CLの軸方向の一方側(上端53a側)ほど拡径している。保持部材65は、上端53a側を鉛直方向の下方側にして中空部材53を保持する。
この場合、例えば、塵又は離型剤の余剰分が中空部材53の上方側(下端53b側)から下方側(上端53a)側に落下した時に、下方側の方が上方側よりも径が大きいから、塵又は離型剤が下方において再付着するおそれが低減される。その結果、例えば、エアブローによる清掃の効率を向上させたり、下方に離型剤の厚い部分が形成されてしまうおそれを低減したりすることができる。
また、本実施形態では、噴出装置45は、保持部材65とノズルとを所定軸CLの軸方向において相対移動させる移動装置73と、回転装置75を制御する回転制御部13cと、を更に有している。中空部材53は、所定軸CLの軸方向の一方側(上端53a側)ほど拡径している。回転制御部13cは、ノズルが中空部材53に対して上端53a側に位置するほど保持部材65の回転速度が遅くなるように回転装置75を制御する。
この場合、図9(a)~図9(d)を参照して説明したように、上下方向の位置の相違に伴う径の相違に起因して生じるエアブロー又は離型剤の塗布の不均一性を低減することができる。
また、本実施形態では、冷却装置43は、中空部材53を冷却液Cに漬す冷却槽57を有している。噴出装置45は、冷却液Cに漬された後の中空部材53を保持部材65に保持して処理(ステップST12の回転及び/又はステップST13の気体の噴出等)を行う。
この場合、例えば、回転装置75によって中空部材53を回転させて中空部材53に付着している冷却液Cを除去したり、エアブローによって中空部材53に付着している冷却液Cを除去したりすることができる。すなわち、噴出装置45は、噴出対象を中空部材53に吹き付けることに寄与するだけでなく、冷却液Cを除去することにも寄与する。従って、例えば、製造装置2の構成を簡素化したり、製造装置2が半凝固状の金属材料を製造するサイクルを短縮したりすることができる。
また、本実施形態では、噴出装置45は、回転装置75を制御する回転制御部13cを更に有している。回転制御部13cの制御により、冷却液Cに漬された後の中空部材53を保持している保持部材65は、ノズルによる噴出対象の噴出前と噴出中との双方で回転する。また、噴出前の回転速度は、噴出中の回転速度よりも速い。
この場合、例えば、エアブロー前に中空部材53の回転によって中空部材53に付着している冷却液Cを除去することができる。その結果、例えば、気体供給部91a及びエアブロー用のノズルの構成にもよるが、省エネルギー及び/又はサイクルタイムの短縮がなされる。また、噴出前の回転速度が相対的に速いことから、冷却液Cを除去する効果が向上する。
また、本実施形態では、1以上のノズルは、冷却液Cに漬された後の中空部材53の側面部41aの外面に噴出対象としての気体を吹き付ける外部気体ノズル71を有している。
この場合、例えば、中空部材53の外面に付着している冷却液Cをエアブローによって除去することができる。
なお、以上の実施形態において、気体及び離型剤それぞれは噴出対象の一例である。離型剤ノズル67、内部気体ノズル69及び複数の外部気体ノズル71のそれぞれ又はいずれか2以上の組み合わせは、1以上のノズルの一例である。内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67は、内部ノズルの一例である。外部気体ノズル71は外部ノズルの一例である。支持部77(又は支持板77b及び包囲部77cの組み合わせ)は、チャンバ部材の一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
中空部材は、両端が開放されたもの(筒状)に限定されないし、容器の一部を構成するものに限定されない。例えば、中空部材は、容器の全体を構成するもの、別の観点では有底の中空状であってもよい。また、中空部材は、上端側ほど拡径するものに限定されず、例えば、深さ方向において径が一定のものであってもよい。
中空部材の噴出装置における向きは、開口方向を上下方向に向ける向きに限定されず、例えば、開口方向を横方向に向ける向きであってもよい。また、上端側が拡径する中空部材は、噴出装置において、上端側を下方に向けるのではなく、上端側を上方に向けて配置されてもよい。
噴出対象は、気体及び離型剤に限定されない。例えば、噴出対象は、中空部材の洗浄及び/又は冷却を目的とした液体(例えば水)であってもよい。また、そのような液体は、霧状とされてもよいし、霧状とされずに吹き付けられて中空部材に液圧を付与してもよい。また、噴出装置は、気体の噴出及び離型剤の噴出に用いられる必要は無く、いずれか一方のみの噴出に用いられたり、これら2つのいずれとも異なる噴出対象の噴出に用いられたりしてもよい。噴出前の中空部材の回転(ステップST12)は行われなくてもよい。
1つのノズルは、複数の噴出対象を噴出することに利用されてもよい。例えば、1つのノズルは、気体の噴出(エアブロー)と離型剤の噴出(離型剤の塗布)とに兼用されてよい。
中空部材の内面に噴出対象を吹き付けるノズル(例えば内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67)と、中空部材の外面に噴出対象を吹き付けるノズル(例えば外部気体ノズル71)との双方が設けられる必要は無く、いずれか一方のみが設けられてもよい。また、ノズルは、複数設けられる必要は無く、1つのみ設けられてもよい。
実施形態では、離型剤ノズル67は、軸回りの全方位に離型剤を噴出するものとされた。ただし、実施形態の説明でも触れたように、離型剤ノズルは、軸回りの所定の角度範囲に離型剤を噴出するものとされてもよい。また、実施形態では、内部気体ノズル69は、軸回りの所定の角度範囲に気体を噴出するものとされた。ただし、内部気体ノズルは、軸回りの全方位に気体を噴出するものとされてもよい。
本開示に係る技術では、保持部材(中空部材)が絶対座標系において回転するから、ノズルは、絶対座標系において回転する必要は無い。ただし、絶対座標系において回転する保持部材に加えて、絶対座標系において回転するノズルが設けられても構わない。このときの回転方向は、保持部材とノズルとで逆方向であってもよいし、同一方向であってもよい。
実施形態では、内部気体ノズル69は1つのみ設けられた。同様に、離型剤ノズル67は1つのみ設けられた。すなわち、1つの噴出対象に対応する1つの内部ノズルは、1つのみ設けられた。ただし、軸方向の位置、軸方向の向き及び/又は軸回りの向きが互いに異なり、同一の噴出対象に対応する2以上の内部ノズルが設けられてもよい。
実施形態では、複数の外部気体ノズル71(すなわち、同一の噴出対象に対応する複数の外部ノズル)は、軸方向の位置が互いに異なる位置とされた。ただし、軸方向の位置が互いに同一の、同一の噴出対象に対応する2以上の外部ノズルが存在しても構わない。また、外部ノズルは、内部ノズルと同様に、中空部材に対して軸方向に相対移動してもよい。
実施形態では、中空部材の内面に噴出対象を吹き付けるノズル(内部気体ノズル69及び離型剤ノズル67)は、中空部材内に出し入れされた。ただし、当該ノズルは、中空部材の外側から中空部材の内部に向けて噴出対象を吹き付けても構わない。
ノズルと中空部材(保持部材)とを中空部材の軸方向に相対移動させる移動装置は設けられなくてもよい。例えば、中空部材にノズルを出し入れしない態様では、中空部材を横方向に移動させてノズル付近に配置する装置があれば十分である。移動装置が設けられる場合、移動装置は、ノズルを絶対座標系において移動させるものに限定されず、中空部材を絶対座標系において移動させるものであってもよい。移動装置は、ノズルと中空部材とを軸方向だけでなく、軸方向に直交する方向にも相対移動させることが可能であってもよい。
回転装置及び移動装置の具体的な構成は、実施形態に例示した構成以外に、種々可能である。例えば、回転装置は、回転式の電動機の出力軸が保持部材に同軸に連結された構成とされてもよい。また、例えば、回転装置の伝達機構は、プーリ・ベルト機構に代えて、歯車機構であってもよい。また、例えば、回転装置の電動機は、その出力軸が保持部材の軸に直交する向きで配置されてもよい。また、例えば、移動装置は、液圧式又は気圧式のシリンダに代えてリニアモータを有する構成とされてもよい。
実施形態では、中空部材を連続的に回転させつつ噴出対象を連続的に噴出させた。ただし、例えば、間欠的に中空部材を回転させ、中空部材の回転が停止したときに噴出対象を噴出するようにしてもよい。また、実施形態では、同一方向に中空部材を回転させた。ただし、例えば、適宜な角度(例えば360°又は180°)の正転と逆転とを繰り返してもよい。
実施形態では、ノズルと中空部材との軸方向の相対移動に関して、少なくとも片道においては、ノズルと中空部材とを連続的に相対移動させつつ噴出対象を連続的に噴出させた。ただし、例えば、実施形態の説明でも触れたように、片道において、ノズルと中空部材とを間欠的に相対移動させ、移動が停止したときに噴出対象を噴出するようにしてもよい。また、ノズルと中空部材との軸方向の相対移動は、単にノズルを中空部材に挿入することのみに利用され、軸方向の複数位置で吹き付けを行うことに寄与しなくてもよい。
実施形態では、互いに異なる工程(ステップST12~ST14)同士で回転速度を異ならせた。ただし、工程の異同を問わずに(換言すればノズルからの噴出の有無又は噴出対象の切換えによらずに)、一定の回転速度とされても構わない。
また、互いに異なる工程間で、中空部材の姿勢が代えられてもよい。例えば、まず、実施形態とは逆に、上端側ほど拡径する中空部材の上端側を上方として、中空部材の回転及び/又はエアブローを行い、その後、実施形態と同様に、中空部材の上端側を下方として、エアブロー及び/又は離型剤塗布を行ってよい。ここで、例えば、実施形態の冷却装置43では、中空部材53の上端53aは濡れておらず、下端53bは受け部材63に流れ込む冷却液Cによって濡れている。従って、中空部材53の下端53bを上端53aに対して上方に位置させると、下端53bに付着している冷却液Cが中空部材53の内面に垂れるおそれがある。しかし、上記のような動作を行うことにより、そのようなおそれが低減される。
中空部材の冷却方法は、中空部材を冷却液に漬すものに限定されない。例えば、気体状の冷却媒体に中空部材を触れされてもよい。実施形態においても触れたように、中空部材の冷却は、噴出対象の中空部材への噴出の前に加えて、又は代えて、噴出の後に行われてもよいし、噴出対象によってなされてもよい。
実施形態では、型締めの後に半凝固金属を金型内に射出した。ただし、型接触する手前で型閉じを終了し、次に半凝固金属を金型内に射出し、その後、型締めを行ってもよい。この場合、例えば、型締めによって金属材料に付与される圧力によって初晶が圧縮されて金属組織が緻密化され、ダイカスト品の品質が向上する。このような構成及び動作については、例えば、特開2017-202501号公報及び特開2017-094367号公報に記載の構成及び動作と同様とされてよい。これらの公報の内容は、参照による援用(Incorporation by Reference)がなされてよい。
なお、本開示からは、以下の概念を抽出可能である。
(概念1)
注がれた液状の金属材料を冷却して半凝固状にする容器のうちの、当該容器の深さ方向に延びる所定軸を軸回りに囲む側面部を構成する中空部材に噴出対象を吹き付ける噴出装置であって、
前記中空部材を保持する保持部材と、
前記中空部材に出し入れされる1以上のノズル(内部ノズル)と、
を有しており、
前記保持部材は、前記内部ノズルが前記中空部材にて出し入れされる側とは反対側にて前記中空部材に同軸な貫通孔を有している
噴出装置。
(概念2)
所定軸を軸回りに囲む側面部を有している中空部材と、
前記中空部材を冷却する冷却装置と、
前記中空部材に噴出対象を吹き付ける噴出装置と、
前記噴出対象が吹き付けられた前記中空部材を含む容器に液状の金属材料を注ぐ注湯装置と、
前記容器内で冷却されて半凝固状となった前記金属材料を前記容器から取り出す取出し装置と、
を有しており、
噴出装置は、
前記中空部材を保持する保持部材と、
前記側面部に向けて噴出対象を噴出する1以上のノズルと、を有しており、
前記中空部材は、前記所定軸の軸方向の一方側ほど拡径しており、
前記保持部材は、前記一方側を鉛直方向の下方側にして前記中空部材を保持する
半凝固金属製造装置。
上記の概念1の噴出装置又は概念2の半凝固金属製造装置においては、保持部材(中空部材)が回転されることは必須ではない。もちろん、保持部材は回転されてもよい。また、上記の概念1又は2の技術においても、実施形態で例示した各種の構成が適用されてよい。例えば、中空部材及びノズルを収容するチャンバが設けられ、チャンバの開口(77d)に保持部材が挿通されたり、中空部材の外面に噴出対象を吹き付ける外部ノズルがチャンバ内に設けられたりしてよい。