図1は、本発明の実施形態に係る半凝固金属の製造装置1を含む成形機(成形装置)101の要部の構成を示す模式図である。
成形機101は、金属材料Mを金型103のキャビティ103a内にて凝固させて、成形品を製造するものである。成形機101は、例えば、ダイカストマシンである。この場合、金属材料Mは、例えば、アルミニウム合金である。
成形機101は、液状の金属材料Mから半凝固状の金属材料Mを製造する製造装置1と、その半凝固状の金属材料Mを金型103内のキャビティ103aに射出する射出装置105と、製造装置1及び射出装置105等を制御する制御装置107とを有している。なお、特に図示しないが、この他、成形機101は、金型103を型締する型締装置、金型103にて形成された成形品を押し出す押出装置等を有しており、制御装置107は、型締装置、押出装置等も制御する。
射出装置105は、金型103内のキャビティ103aに通じるスリーブ109と、スリーブ109内を摺動して金属材料Mを押し出すプランジャ111と、プランジャ111を駆動する不図示の駆動装置とを有している。スリーブ109の上面には、供給口109aが開口している。半凝固状の金属材料Mは、供給口109aを介してスリーブ109内に投下される。
制御装置107は、例えば、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含むコンピュータにより構成されている。なお、制御装置107は、成形機101に含まれる各種装置毎に設けられた制御装置から構成されてもよいし、成形機101に含まれる全ての装置を制御する1つの制御装置から構成されてもよいし、成形機101に含まれる複数の装置を制御する制御装置とそれら以外を制御する制御装置から構成されてもよい。
製造装置1は、例えば、液状の金属材料Mを保持する保持炉3と、保持炉3から液状の金属材料を汲み出す注湯装置5と、注湯装置5により液状の金属材料が注がれ、注がれた液状の金属材料を半凝固状態とする半凝固化装置7とを有している。
保持炉3は、公知の構成とされてよい。また、保持炉3は、溶解炉を兼ねるものであってもよい。例えば、保持炉3は、金属材料Mを収容する炉体11と、炉体11に収容されている金属材料Mを加熱する加熱装置13と、炉体11に収容されている金属材料Mの温度を検出する第1温度センサ15とを有している。
炉体11は、例えば、特に図示しないが、セラミック等の断熱性に優れた材料からなる容器内に、金属材料Mの液相線温度よりも固相線温度若しくは融点が高い金属からなる容器が配置されて構成されている。加熱装置13は、例えば、金属材料Mを電磁誘導により加熱するコイル、若しくは、ガスを燃焼して金属材料Mを加熱する燃焼装置を含んで構成されている。第1温度センサ15は、例えば、熱電対式の温度センサ若しくは放射温度計により構成されている。
注湯装置5は、公知の構成とされてよい。例えば、注湯装置5は、ラドル17と、ラドル17を駆動可能なラドル搬送装置19とを有している。
ラドル17は、金属材料Mの液相線温度よりも固相線温度若しくは融点が高い材料からなる、注ぎ口17aを有する容器であり、1ショット分の金属材料Mを収容可能である。ラドル搬送装置19は、例えば、多関節ロボットにより構成されており、ラドル17を上下方向及び水平方向へ移動させることが可能であるとともに、注ぎ口17aを上下させるようにラドル17を傾斜させることが可能である。
半凝固化装置7は、例えば、注湯装置5により液状の金属材料Mが注がれる容器21と、容器21に液状の金属材料を注ぐ前に容器21を冷却するプレ冷却装置23と、容器21に液状の金属材料Mが注がれるときに容器21が載置される載置装置25と、容器21を搬送する容器搬送装置27とを有している。
容器21は、金属材料Mの液相線温度よりも固相線温度若しくは融点が高く、好適には熱伝導率が比較的高い材料(好適には金属)により構成されている。容器21は、1ショット分の金属材料Mを収容可能である。
プレ冷却装置23は、例えば、容器21を冷却媒体に浸すことにより容器21を冷却する。冷却媒体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。後述するように、載置装置25も容器21の冷却機能を有する。載置装置25に加えてプレ冷却装置23を設けることにより、例えば、載置装置25に載置された容器21に金属材料Mを注ぎつつ、次に金属材料が注がれる容器21をプレ冷却装置23により冷却し、サイクルタイムを短縮できる。
容器搬送装置27は、例えば、多関節ロボットにより構成されており、容器21を上下方向及び水平方向へ移動させることが可能であるとともに、容器21の上下方向の向きを変える(容器21を逆さにする)ことが可能である。容器搬送装置27は、容器21のプレ冷却装置23から載置装置25への移送及び容器21の載置装置25からスリーブ109上への移送等を行う。
図2は、半凝固金属の製造装置1の容器21周辺部分を示す斜視図である。図3は、図2のIII−III線における断面図である。
容器21は、当該容器21の壁部を構成する中空部材31と、容器21の底部を構成する底部材33とを有しており、これらは分離可能となっている。容器21の上方には、容器21へ液状の金属材料Mを注ぐことを容易化するための漏斗35が配置される。
また、載置装置25は、容器21を冷却するための補助冷却装置37(図3)と、容器21内の金属材料Mの温度を検出する第2温度センサ39と、半凝固状の金属材料Mの容器21からの取り出しを容易化するための押圧装置41とを有している。
中空部材(構成部材)31は、上下両端が開口する中空形状に形成されている。中空部材31の開口方向に見た形状は適宜に設定されてよいが、金属材料Mを均等に冷却する観点からは円形が好ましい(中空部材31は筒状であることが好ましい。)。また、中空部材31の内径は、上方側が下方側よりも大きくされている。中空部材31の厚みは、例えば、一定である。
底部材33は、例えば、概ね板状の部材である。底部材33の平面形状は適宜に設定されてよく、本実施形態では円形を例示している。底部材33の平面視における外形は、中空部材31の開口よりも広く設定されている。底部材33の厚みは、例えば、一定とされている。ただし、中央側と外周側とで厚みが異なっていてもよい。また、底部材33の上面33aは、中央側と外周側とで高さが異なるなど、傾斜が設けられていてもよい。
中空部材31が底部材33の上面33aに載置されて、中空部材31の下方の開口が底部材33により塞がれることにより、容器21が構成される。図2において、上面33aのうち点線で囲って示した領域は、容器21の底面21bを構成する。
なお、中空部材31と底部材33との間には、金属材料Mが流出不可能で、空気(気体)が流出可能な比較的微小な隙間が形成されていてもよい。このような隙間は、金属材料Mを容器21に注いだときに空気を逃がし、金属材料Mに空気が巻き込まれることを抑制することに役立つ。
中空部材31及び底部材33は、例えば、底部材33が載置装置25の基体43に支持され、中空部材31が漏斗35により上から押さえつけられることにより、互いに固定される。漏斗35は、例えば、容器搬送装置27又は他のロボットにより位置保持され、中空部材31を押さえ付けるための力を付与される。
なお、中空部材31及び底部材33は、適宜なクランプ手段によって互いに固定されてもよい。また、底部材33は、基体43に固定されていることが好ましい。例えば、底部材33は、不図示のねじにより基体43に固定されている。中空部材31及び底部材33は、水平方向において互いに位置決めするための位置決め部を有していてもよい。例えば、底部材33には、中空部材31の下方の縁部を収容する溝部が形成されていてもよい。
底部材33を構成する材料は、例えば、中空部材31を構成する材料よりも熱伝導率が高い材料により構成されている。例えば、中空部材31がステンレス鋼により構成されているのに対して、底部材33は、銅(純銅)により構成されている。ただし、底部材33及び中空部材31は、互いに同一の材料により構成されていてもよい。また、底部材33は、中空部材31の厚みよりも厚く構成されていてもよい。
漏斗35は、金属材料Mの液相線温度よりも固相線温度若しくは融点が高く、好適には熱伝導率が比較的高い材料(好適には金属)により構成されている。漏斗35は、上方側ほど径が大きくなる中空状の部材であり、下方端は容器21の上方の開口に挿入される。なお、漏斗35の内壁の傾斜は、容器21の内壁の傾斜よりも大きいことが好ましい。
補助冷却装置37(図3)は、例えば、容器21のうち底部材33の冷却を行う。補助冷却装置37は、例えば、底部材33に形成された流路33cと、流路33cを流れる冷媒を冷却する熱交換器45と、冷媒の流れを生じさせるポンプ47とを含んで構成されている。
冷媒は例えば水である。流路33cの形状は適宜に設定されてよい。図3では、底部材33の中心回りに周回する形状の流路33cを例示している。熱交換器45及びポンプ47は、公知の構成のものとされてよい。
第2温度センサ39は、例えば、接触型の温度センサであり、より具体的には、例えば、熱電対式の温度センサである。第2温度センサ39は、底部材33に配置されている。より具体的には、例えば、第2温度センサ39は、底部材33を上下に貫通する孔部に嵌合されており、底面21bにて容器21内に露出している。従って、第2温度センサ39は、容器21に注がれた金属材料Mに当接して金属材料Mの温度を直接的に検出することができる。第2温度センサ39の頂面は、容器21の底面21bに段差が生じないように底部材33の上面33aと連続していることが好ましい。第2温度センサ39は、底面21bのうちの適宜な位置に配置されてよく、本実施形態では、底面21bの中心から少しずれた位置に配置された場合を例示している。
押圧装置41は、容器21内の金属材料Mを底面21b側から押すための押圧部材49と、押圧部材49を駆動するアクチュエータ51(図3)とを有している。
押圧部材49は、容器21の底面21bにおいて底部材33を上下に貫通する孔部を摺動するように構成されている。すなわち、押圧部材49は、底面21bの一部範囲において容器21内へ進退移動可能である。進退移動は、例えば、押圧部材49の頂面と底面21bとが連続する位置(退避位置)と、押圧部材49が底面21bから突出する位置(突出位置)との間の範囲でなされる。なお、押圧部材49は、底面21bのうち、適宜な位置に配置されてよく、本実施形態では、底面21bの中心に配置された場合を例示している。
押圧部材49のストローク(退避位置と突出位置との距離)は、容器21の深さ(中空部材31の下方の開口から上方の開口までの距離)よりも小さい。例えば、当該ストロークは、容器21の深さの1/2未満、1/3未満又は1/4未満である。
アクチュエータ51は、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアモータ等の適宜なアクチュエータにより構成されてよい。アクチュエータ51は、載置装置25の基体43に支持される固定部51aと、固定部51aに対して往復動可能であり、押圧部材49と固定された可動部51bとを有している。なお、可動部51bは、押圧部材49と一体に形成されていてもよい。
なお、補助冷却装置37は、押圧部材49及び/又は可動部51bも冷却してもよい。例えば、補助冷却装置37は、押圧部材49及び可動部51bに形成された流路37cを有しており、熱交換器45により冷却された冷媒をポンプ47により流路37cに送出する。
(製造装置の動作)
次に、製造装置1の動作を中心として成形機101の動作を説明する。
制御装置107は、第1温度センサ15の検出値に基づいて加熱装置13を制御し、炉体11に収容されている金属材料Mの温度を所定の第1温度T1に維持する。第1温度T1は、金属材料Mの液相線温度よりも高い温度であり、金属材料Mは、その全部が液状とされている。
容器21のうち底部材33は、成形機101の全工程を通じて載置装置25の基体43に載置されたままの状態とされる。制御装置107は、不図示の温度センサ又は第2温度センサ39の検出値に基づいて補助冷却装置37を制御し、金属材料Mが容器21に注がれる前の底部材33の温度を所定の第2温度T2にする。第2温度T2は、金属材料Mの液相線温度よりも低い温度である。
容器21のうち中空部材31は、容器搬送装置27に搬送されることにより、プレ冷却装置23、載置装置25及びスリーブ109上の間で移動可能である。制御装置107は、中空部材31をプレ冷却装置23に搬送するように容器搬送装置27を制御するとともに、中空部材31の温度を所定の第3温度T3にするようにプレ冷却装置23を制御する。第3温度T3は、金属材料Mの液相線温度よりも低い温度である。
なお、T2=T3であってもよいし、T2<T3としてもよい。T2<T3の場合、T2=T3に比較して、容器21の底側において金属材料Mの凝固が進みやすくなる。これにより、後述する半凝固状の金属材料Mを容器21から取り出す過程において、金属材料Mの底部から液相部分が垂れることが抑制される。
図4(a)〜図4(d)及び図5(a)〜図5(d)は、上述のように、金属材料Mがまだ注がれていない底部材33及び中空部材31を冷却した後の工程を説明する模式図である。
図4(a)に示すように、プレ冷却装置23により中空部材31が冷却されると、制御装置107は、中空部材31を底部材33上に搬送するように容器搬送装置27を制御する。これにより、中空部材31及び底部材33からなる容器21が構成される。
次に、図4(b)に示すように、制御装置107は、漏斗35を中空部材31上に搬送するように容器搬送装置27又は他の不図示のロボットを制御する。これにより、既に述べたように、中空部材31は、漏斗35により押さえ付けられて位置保持される。
次に、図4(c)に示すように、制御装置107は、ラドル17により液状の金属材料Mを漏斗35を介して容器21に注ぐようにラドル搬送装置19を制御する。
容器21内へ注がれた金属材料Mは、容器21に接触することにより急冷され、これにより、金属材料M内には多数の結晶核が生成される。多数の結晶核は、金属材料Mがある程度の高さから容器21内へ注がれることにより生じた流れにより攪拌される。これにより、析出した樹枝状結晶の枝が、せん断力により切断若しくは溶融して切断され、更に結晶核が増殖する。
容器21は、金属材料Mが注がれることにより急激に温度が上昇し、容器21の金属材料Mを冷却する機能は急激に低下する。その結果、多数の結晶核が形成された後、結晶成長速度は急激に低下し、結晶は樹枝状に成長せずに丸く成長する。
図4(d)に示すように、上記の金属材料Mの冷却の過程において、制御装置107は、第2温度センサ39の検出する温度を監視する。第2温度センサ39の検出温度は、液状の金属材料Mが容器21に注がれ、金属材料Mが第2温度センサ39に当接することにより急激に上昇し、その後、金属材料Mの熱が容器21に奪われることによって低下していく。制御装置107は、この低下していく温度が所定の目標温度Ttに到達するか否かを判定する。
目標温度Ttは、原理的には、金属材料Mの固相線温度よりも高く、液相線温度よりも低い温度である。すなわち、目標温度Ttは、金属材料Mにおいて液相と固相とが混在する温度である。金属材料Mの温度と、金属材料Mの固相率との間には相関があり、目標温度Ttは、所望の固相率に応じて設定される。
なお、例えば、底部材33が中空部材31を構成する材料よりも熱伝導率が高い材料により構成されたり、底部材33が中空部材31の厚みよりも厚く構成されたり、T2<T3とされたりすると、金属材料Mの底部は、金属材料Mの中部及び上部よりも固相率が高くなる。また、第2温度センサ39は、補助冷却装置37の影響を受けるから、製造装置1の構成によっては、第2温度センサ39の検出温度は、金属材料Mの底部の温度よりも低くなることもある。従って、目標温度Ttは、金属材料Mの固相線温度よりも必ずしも高い必要は無い。
また、第2温度センサ39の検出温度(金属材料Mの温度)が目標温度Ttに到達する前に容器21及び金属材料Mが熱平衡に至らないように、容器21は予め十分に冷却される、及び/又は、金属材料Mを注いだ後も補助冷却装置37による冷却は継続される。
第2温度センサ39の検出する温度が目標温度Ttに到達すると、制御装置107は、金属材料Mの冷却を停止して金属材料Mを容器21から取り出すための処理を開始する。
具体的には、まず、図5(a)に示すように、制御装置107は、押圧部材49により半凝固状の金属材料Mを押すように押圧装置41を制御する。一方、容器21は、漏斗35により上方から押さえ付けられている。従って、金属材料Mは、容器21に対してずらされ、容器21との密着が解消される。すなわち、金属材料Mは、容器21から排出されやすくなる。
次に、図5(b)に示すように、制御装置107は、ずらされた金属材料Mを保持している中空部材(構成部材)31を底部材33(載置装置25)からスリーブ109上へ搬送するように容器搬送装置27を制御する。この際、中空部材31は、下方側ほど縮径するように形成されていることから、半凝固状の金属材料Mは中空部材31の下方の開口から落下しない。
なお、金属材料Mは、適宜な方法により底部の固相率が十分な大きさとされることにより、底部から液相部分が垂れることが抑制されている。例えば、既に述べたように、金属材料Mの底部は補助冷却装置37により冷却される。また、例えば、底部材33は、中空部材31よりも熱伝導率が高くされている。また、例えば、底部材33は、中空部材31の厚みよりも厚く構成されている。また、例えば、底部材33は、中空部材31の温度よりも低い温度に冷却されている。従って、底部材33付近においては、金属材料Mは、結晶核が多く発生しやすく、及び/又は、結晶が成長しやすい。その結果、金属材料Mは、底部付近において固相率が高くなる。
図5(c)に示すように、制御装置107は、中空部材31がスリーブ109の供給口109a上に搬送されると、中空部材31を逆さにするように容器搬送装置27を制御する。なお、ここでいう逆さは、中空部材31の上方の開口(液状の金属材料Mが注がれた開口)が多少なりとも下方を向く状態であればよく、上方の開口が真下を向かなくてもよい。
中空部材31が逆さにされると、金属材料Mは、中空部材31からスリーブ109内に落下する。金属材料Mは、予め押圧装置41により押されることによって中空部材31との密着が解消されていることから、中空部材31内に残ってしまう蓋然性は低い。
その後、図5(d)に示すように、プランジャ111がスリーブ109内を前進する。これにより、金属材料Mが金型103内に(より具体的には、金型103内のキャビティ103aに)射出される。そして、金属材料Mがキャビティ103a内にて冷却されて凝固することにより、成形品が形成される。
以上のとおり、本実施形態に係る半凝固金属の製造装置1は、液状の金属材料Mが注がれる容器21と、容器21内にて半凝固状となった金属材料Mを押して金属材料Mを容器21からずらす押圧装置41と、容器21の少なくとも一部を構成し、ずらされた後の金属材料Mを保持している構成部材(本実施形態では中空部材31)を押圧装置41から離れた位置へ搬送し、当該離れた位置にて中空部材31の向きを変えて中空部材31から金属材料Mを落下させる容器搬送装置27と、有する。
また、本実施形態に係る半凝固金属の製造方法は、液状の金属材料Mを容器21に注ぐステップ(図4(c))と、容器21内にて半凝固状となった金属材料Mを押して金属材料Mを容器21からずらすステップ(図5(a))と、容器21の少なくとも一部を構成し、ずらされた後の金属材料Mを保持している構成部材(中空部材31)を、金属材料Mを押した位置から離れた位置へ搬送するステップ(図5(b))と、その離れた位置にて中空部材31の向きを変えて中空部材31から金属材料Mを落下させるステップ(図5(c))とを有する。
また、本実施形態に係る半凝固金属を用いた成形方法は、液状の金属材料Mを容器21に注ぐステップ(図4(c))と、容器21内にて半凝固状となった金属材料Mを押して金属材料Mを容器21からずらすステップ(図5(a))と、容器21の少なくとも一部を構成し、ずらされた後の金属材料Mを保持している構成部材(中空部材31)を、金属材料Mを押した位置からキャビティ103aに通じるスリーブ109の供給口109a上へ搬送するステップ(図5(b))と、搬送された中空部材31から供給口109aへ金属材料Mを落下させるステップ(図5(c))と、供給口109aを介してスリーブ109内へ落下した金属材料Mをキャビティ103aに押し出すステップ(図5(d))とを有する。
すなわち、特許文献1及び2では、金属材料を「押す」という動作を金属材料の容器からの排出そのものに利用しているのに対して、本実施形態では、金属材料を「押す」という動作を金属材料を容器から抜け易くすることに利用している。このような思想の相違から、例えば、以下の効果が奏される。
まず、押圧装置41は、金属材料Mを容器21からずらすだけでよく、金属材料Mを押し出す必要が無いから、そのストロークが小さくてよい。すなわち、押圧装置41は小型である。また、押圧装置41は、金属材料Mを押し出すものではないことから、スリーブ109上に配置されなくてもよい。以上のことから、成形機101の設計の自由度が向上する。
また、本実施形態では、押圧装置41は、容器21の底面21b内の一部範囲にて容器21内へ進退移動可能な押圧部材49を有する。従って、容器21の底面21b全体で金属材料Mを押すような場合に比較して、押圧装置41をより小型化できる。また、容器21の底面21bは移動する必要が無くなるから、流路33cに冷媒を供給することも容易化される。
また、本実施形態では、容器21は、上下両端が開口しており、上方の開口から金属材料Mが注がれる中空部材31と、中空部材31の下方の開口を閉塞可能であり、且つ、中空部材31と分離可能な底部材33と、を有する。容器搬送装置27は、中空部材31及び底部材33のうち中空部材31のみを搬送する。
従って、中空部分と底部分とが一体形成された容器の底部に孔部を形成し、当該孔部を介して押圧部材49を進退移動させる場合(この場合も本願発明に含まれる)に比較して、種々の設計上の優位点がある。例えば、押圧部材49の摺動によって変形しないように底部材33を厚くすることが容易である。また、例えば、一体形成された容器を載置装置25に載置するときは、底部の孔部と押圧部材49との位置合わせをしなければならないが、そのような位置合わせは不要である。
また、本実施形態では、底部材33には、冷媒が流れる流路33cが形成されている。従って、既に述べたように、金属材料Mの底部を直接的に冷却して当該底部の固相率を十分な大きさとすることができ、中空部材31のみによって半凝固状の金属材料Mを搬送したときに、金属材料Mの底部から液相部分が垂れることが抑制される。底部材33は搬送されないことから、冷媒を底部材33に供給する流路(管)を設けることが容易であり、このような構成が可能となる。底部材33を冷却して金属材料Mを冷却することから、中空部材31及び金属材料Mを底部材33から離せば金属材料Mの冷却を停止乃至は緩和することができ、温度に基づく固相率管理が容易化される。
また、本実施形態では、製造装置1は、底部材33に配置された第2温度センサ39を更に有する。従って、第2温度センサ39を容器21内へ出し入れするような機構は不要である。また、底部材33は、中空部材31とともに搬送されないから、第2温度センサ39と制御装置107とを接続するケーブルが容器21の移動に伴って移動するということがない。
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、容器からの半凝固金属の取り出し方法及び当該方法に係る構成のみが第1の実施形態と相違する。第1の実施形態においては、中空部材31を底部材33に載置したままの状態で半凝固金属を底側から押して半凝固金属を中空部材31からずらし、その後、中空部材31をスリーブ109上へ搬送して半凝固金属を落下させた。これに対して、本実施形態では、中空部材31を底部材33に載置したままの状態で半凝固金属を底側から押すことはせず、中空部材31をスリーブ上へ搬送した後、半凝固金属を底側から押して、半凝固金属を落下させる。具体的には、以下のとおりである。
図6は、第2の実施形態に係る半凝固金属の製造装置の押圧装置229の構成を示す模式図である。
押圧装置229は、スリーブ109(図1参照)の上方にて、中空部材31に保持されている金属材料Mを底側から押すための装置である。押圧装置229は、例えば、エアシリンダ249と、エアシリンダ249に空気を供給する空圧回路251とを有している。
エアシリンダ249は、例えば、ばね付きの単動形シリンダによって構成されており、シリンダ部253と、シリンダ部253内を摺動可能なピストン255と、ピストン255に固定され、シリンダ部253から延び出るピストンロッド257と、ピストン255を付勢するばね259とを有している。
ピストン255は、シリンダ部253の内部を前方(ピストンロッド257側)のロッド側室253rと、後方(ピストンロッド257とは反対側)のヘッド側室253hとに区画している。そして、ヘッド側室253hに空気が供給されることによって、ピストン255及びピストンロッド257は前進する。なお、ロッド側室253rは、例えば、大気開放されている。
ばね259は、例えば、ロッド側室253rに収容されており、シリンダ部253に対してピストン255を後方に付勢している。従って、ヘッド側室253hの圧抜きがなされると、ピストン255及びピストンロッド257は後退する。
エアシリンダ249は、例えば、スリーブ109の供給口109aよりも上方、且つ、供給口109aに対して後側に、スリーブ109に対して固定的に設けられている。また、エアシリンダ249は、鉛直方向に対して前後方向に斜めに、且つ、ピストンロッド257が延び出る方向を供給口109aに向けるように配置されている。なお、エアシリンダ249は、その全体が供給口109aの全体よりも後側に位置している必要は無い。
一方、供給口109aとエアシリンダ249との間には、半凝固状となった金属材料Mを保持している中空部材31が搬送される。中空部材31は、鉛直方向に対してエアシリンダ249と概ね同一の方向に傾斜され、上部側が供給口109aに向けられ、底部側がエアシリンダ249に向けられる。
従って、中空部材31を保持している容器搬送装置27の保持部27aをエアシリンダ249側に移動させることにより、及び/又は、ピストンロッド257をシリンダ部253から突出させることにより、ピストンロッド257は、半凝固状の金属材料Mの底部に当接可能である。
空圧回路251は、特に図示しないが、ポンプ、アキュムレータ、バルブ等を含んで構成されており、制御装置107(図1参照)からの制御信号に基づいて動作する。空圧回路251は、ヘッド側室253hに接続されており、ヘッド側室253hの圧力を制御可能である。
例えば、空圧回路251は、アキュムレータとヘッド側室253hとの間のバルブを開閉することにより、アキュムレータに蓄圧された所定の圧力の空気を適宜なタイミング及び時間長さでヘッド側室253hに供給可能である。また、空圧回路251は、空圧回路251の外部(大気雰囲気)とヘッド側室253hとの間のバルブを開閉することにより、適宜なタイミング及び時間長さでヘッド側室253hの圧抜きが可能である。
さらに、空圧回路251は、上述のような、ヘッド側室253hへの空気の供給と、ヘッド側室253hの圧抜きとを適宜な周期で繰り返すことが可能である。この場合、ピストンロッド257は、ヘッド側室253hの圧力による前進と、ばね259による後退とを繰り返す。すなわち、押圧装置229は、ピストンロッド257を、半凝固状の金属材料Mに近接・離間する方向において往復動(振動)させることが可能である。
図7(a)〜図7(d)は、第2の実施形態における半凝固金属の取り出し工程を説明する模式図である。この工程前までは、第1の実施形態の図4(a)〜図4(d)と同様である。
なお、本実施形態では、既に述べたように、中空部材31を底部材233に載置したままの状態で中空部材31内の金属材料Mを押すことはしないことから、図7(a)に示すように、底部材233には、押圧部材49は配置されていない。それ以外については、底部材233は、底部材33と概ね同様の構成であり、例えば、第2温度センサ39や流路(図7(a)では不図示)が配置されている。この底部材233と中空部材31とで容器221が構成されている。
第1の実施形態と同様に、図4(a)〜図4(d)に示した工程が行われ、第2温度センサ39の検出する温度が目標温度Ttに到達すると、制御装置107は、金属材料Mの冷却を停止して金属材料Mを容器221から取り出すための処理を開始する。
具体的には、まず、漏斗35(図2参照)を取り外すように容器搬送装置27又は他の不図示のロボットを制御し、さらに、図7(a)に示すように、中空部材31を持ち上げるように容器搬送装置27を制御する。半凝固状の金属材料Mは、中空部材31に保持されており、中空部材31とともに底部材233から離間される。
なお、図7(a)等において、金属材料Mの底部を中部及び上部とは異なるハッチングにより示したのは、底部側の固相率が中部及び上部の固相率よりも高いことを表わしたものである。
次に、図7(b)に示すように、制御装置107は、金属材料Mを保持している中空部材31をスリーブ109の供給口109aとエアシリンダ249との間に搬送するように容器搬送装置27を制御する。中空部材31は、鉛直方向に対して斜めに、また、底部側をエアシリンダ249に、上部側を供給口109aに向けて配置される。
この時点においては、金属材料Mの底面は、ピストンロッド257の先端に当接していない。例えば、金属材料Mの底面は、ピストンロッド257(の先端)のストローク外に位置するか、ピストンロッド257のストローク内であって、後退限に位置するピストンロッド257から所定の距離だけ離れた位置に位置している。
次に、図7(c)に示すように、制御装置107は、ピストンロッド257を往復運動させる(矢印y1参照)ように空圧回路251を制御するとともに、中空部材231をエアシリンダ249に近づける(矢印y2参照)ように容器搬送装置27を制御する。なお、中空部材31をエアシリンダ249に近づける速度は、ピストンロッド257が後退する速度よりも遅い。また、中空部材31の移動及びピストンロッド257の振動は、いずれが先に開始されてもよいし、同時に開始されてもよい。
上記のような動作の結果、ピストンロッド257は、容器221の深さよりも小さいストロークで、金属材料Mを繰り返し押す。別の観点では、ピストンロッド257は、半凝固状の金属材料Mの底面に繰り返し衝突する。衝突により、金属材料Mは、中空部材31の内面から剥がされ、中空部材31から落下する。つまり、金属材料Mは、上記のような動作により、ピストンロッド257より衝撃が与えられて(加えられて)、中空部材31の内面から剥がされ、中空部材31から落下する。
なお、エアシリンダ249のストローク、エアシリンダ249の動作、及び、容器搬送装置27の動作等は、金属材料Mが中空部材31に対して最初の位置からある程度ずれた後は、重力のみにより金属材料Mが中空部材31の外へ落下するように設定されてもよいし、金属材料Mの概ね全体が中空部材31の外に位置するまでピストンロッド257が金属材料Mに当接するように設定されてもよい。
中空部材31から落下した金属材料Mは、供給口109aを介してスリーブ109内に収容される。中空部材31は、上方の開口をスリーブ109の後方から前方に向けるように、鉛直方向に対して斜めに傾斜して逆さにされているから、金属材料Mは、スリーブ109内において、上部を金型103(キャビティ103a)側に、底部をプランジャ111側に向ける。
その後、図7(d)に示すように、プランジャ111がスリーブ109内を前進すると、金属材料Mが金型103内のキャビティ103aに射出される。そして、金属材料Mがキャビティ103a内(金型103内)にて冷却されて凝固することにより、成形品が形成される。
このとき、金属材料Mのうち、固相率が高い底部は、方案部(ビスケット)に収まる。方案部の大きさは、例えば、プランジャ111の移動方向において、15mm〜30mmである。固相率が高い底部は、例えば、その半分以下の量である。
以上の第2の実施形態においても、半凝固状となった金属材料Mを容器221の深さよりも小さいストロークで押して金属材料Mを容器21からずらすことから、第1の実施形態と同様の効果が奏される。また、第2の実施形態では、押し部材(本実施形態ではピストンロッド257)を半凝固状の金属材料Mに(好適には複数回)衝突させることにより(衝撃を与えることにより)、好適に金属材料Mを中空部材31から引き剥がすことができる。
なお、ピストンロッド257が金属材料Mを押すストロークは、容器搬送装置27による容器221とエアシリンダ249との相対位置及び相対移動に影響されるから、エアシリンダ249のストロークと同一ではない。従って、エアシリンダ249のストロークは、容器221の深さよりも大きくてもよい。もちろん、エアシリンダ249のストロークが容器221の深さよりも小さい方が、装置が小型化されて好ましい。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
半凝固金属の製造装置は、成形機の一部でなくてもよい。すなわち、製造装置により製造された半凝固金属は、直接に射出装置のスリーブへ供給されるのではなく、急冷凝固されて、半溶融状金属の素材(ビレット)とされてもよい。
半凝固金属の製造装置の全体構成は、保持炉から液状の金属材料をラドルにより汲み出して容器に注ぐ構成に限定されない。例えば、保持炉及びラドルに代えて、1ショット分の金属材料を溶融するるつぼを用い、当該るつぼにより容器に金属材料を注いでもよい。また、例えば、保持炉から容器へ適宜な流路を介して液状の金属材料を注いでもよい。
半凝固金属の製造は、その全ての工程が製造装置により自動的に行われる必要はない。例えば、加熱装置の制御、注湯装置の制御及び半凝固化装置の制御の少なくともいずれか一つは、作業者により行われてもよい。また、例えば、加熱、注湯及び冷却の少なくともいずれか一つについては、装置といえるほどの設備によらずに実現されてもよい。
本実施形態では、ある程度の高さから液状の金属材料を容器に注ぐだけで半凝固金属を攪拌したが、容器を運動させるような攪拌装置や金属材料内で部材を運動させるような攪拌装置が設けられてもよい。また、本実施形態では、半凝固金属から液相部分の一部の排出を全く行わなかったが、当該排出が行われてもよい。
容器の底部材に配置される(第2)温度センサは、容器内に露出しなくてもよい(金属材料に当接しなくてもよい。)。例えば、底部材に薄い部分を形成し、当該薄い部分に下方から温度センサを当接させるように温度センサを配置してもよい。
プレ冷却装置及び補助冷却装置の一方は設けられなくてもよい。補助冷却装置は、容器の底部材を外部から冷却するものであってもよい(冷媒を流すための流路が底部材に形成されなくてもよい)し、底部材だけでなく中空部材も冷却するものであってもよい。
容器は、互いに分離可能な中空部材及び底部材を有するものに限定されない。例えば、容器は、一体形成されたものであってもよいし、互いに接合された中空部材及び底部材を有するものであってもよい。
容器を構成する中空部材は、下方側が縮径している必要は無い。例えば、中空部材の内径が上方から下方へ亘って一定であっても、中空部材を横にして搬送することなどにより、搬送中に中空部材から半凝固状の金属材料が落下しないようにすることができる。この場合、中空部材の上方の開口(液状の金属材料が注がれた開口)を下に向けるのではなく、下方の開口を下に向けて、当該下方の開口から半凝固状の金属材料を落下させてもよい。ただし、この場合には、図5(c)や図7(c)と同様に、落下された金属材料Mの上部が金型103と対向するように、つまり、金属材料Mの底部がプランジャ111と対向するように、金属材料Mを落下させることが好ましい。すなわち、本発明では、金属材料Mは、上部側が金型103側を、底部側がプランジャ111側を向くようにスリーブ109内に収容されるように落下されることが好ましい。
押圧装置は、容器の底側から金属材料を押すものに限定されない。例えば、上述のように容器の径が上方から下方に亘って一定の場合においては、中空部材を横にした後、上方の開口から金属材料を押して金属材料を容器からずらし、その後、スリーブ上へ搬送することも可能である。また、押圧装置は、容器の底面全体を中空部材に対して押し上げるものであってもよい。
容器の底面の一部範囲において容器内へ進退移動可能な押圧部材は、容器の底面から突出しなくてもよい。例えば、押圧部材は、容器の底面よりも下方へ退避した位置から、容器の底面と連続する位置へ移動して、半凝固状の金属材料を押し、金属材料を容器からずらしてもよい。
搬送装置は、押圧装置を兼ねていてもよい。例えば、金属材料を保持した中空部材を固定された押圧部材に対して移動させることにより、押圧部材に金属材料を押させ、容器から金属材料をずらしてもよい。
金属材料を押すストロークが容器の深さよりも小さいという条件は、金属材料を容器からずらすときに満たされればよい。従って、例えば、第2の実施形態において、容器の深さよりも小さいストロークで金属材料を押して(繰り返し衝撃を与えて)金属材料を容器からずらした後、容器の深さよりも大きいストロークで金属材料を容器から押すように、容器搬送装置によって容器をエアシリンダ側へ大きく移動させるものも本願発明に含まれる。
なお、「容器の深さよりも小さい『ストローク』で押し」であるから、例えば、特許文献1のように、容器の深さよりも大きいストロークで容器内の金属材料をひと押しするときに、その初期に金属材料が容器からずれる現象が生じ、そのずれる現象が生じるまでに押した距離が容器の深さよりも短かったとしても、それはストロークの一部が容器の深さよりも小さいに過ぎず、本願発明の要件を満たしたことにはならない。
第2の実施形態では、ピストンロッドを繰り返し金属材料に衝突させて、金属材料に繰り返し衝撃を与えた。しかし、繰り返しの衝突無しに、金属材料に繰り返し衝撃を与えることも可能である。例えば、第1の実施形態において、アクチュエータ51を、比較的早い立ち上がり時間で駆動力を押圧部材49に付与する構成とする。そして、アクチュエータ51により押圧部材49を駆動したときに、押圧部材49が突出位置に到達する前に金属材料Mからの反力によって押圧部材49が停止してしまった場合、一度押圧部材49への駆動力の付与を停止して、再度、駆動力を押圧部材49に付与するようにアクチュエータ51を制御する。駆動力の付与の停止の際、押圧部材49が後退しなければ、押圧部材49は、金属材料Mに当接したまま、金属材料Mに繰り返し衝撃を与えることになる。