以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、不織布基材10に含浸させて積層板製造用の樹脂含浸基材12(以下、第一樹脂含浸基材12ともいう)を作製するための熱硬化性樹脂組成物である(図2参照)。組成物(X)は、熱硬化性樹脂(A)と、非球形アルミナ粒子(B)とを含有する。組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)の、体積基準での累積10%粒子径(D10)は0.10μm以上0.30μm以下、体積基準での累積50%粒子径(D50)は0.20μm以上1.00μm以下、体積基準での累積90%粒子径(D90)は1.00μm以上5.00μm以下である。
そのため、組成物(X)は、アルミナとして非球形アルミナ粒子(B)を含有しながら、非球形アルミナ粒子(B)は、組成物(X)を不織布基材10へ含浸させるに当たっての妨げになりにくい。
より詳しくは、組成物(X)は、アルミナとして上記の特定の粒度分布を有する非球形アルミナ粒子(B)を含有するため、非球形アルミナ粒子(B)は組成物(X)の粘度を上昇させにくい。そのため、組成物(X)を不織布基材10に含浸させるにあたって、組成物(X)の良好な流動性を確保して、組成物(X)を不織布基材10に含浸させやすくできる。このため、組成物(X)から第一樹脂含浸基材12、プリプレグ、積層板1又はプリント配線板20を製造する場合の製造効率を良好にできる。また、第一樹脂含浸基材12における組成物(X)の未充填を生じにくくでき、そのため組成物(X)から作製される第一樹脂含浸基材12、プリプレグ、積層板1及びプリント配線板20の不良を生じにくくできる。
組成物(X)について、更に詳しく説明する。組成物(X)は、上記のとおり、熱硬化性樹脂(A)と、非球形アルミナ粒子(B)とを、含有する。
熱硬化性樹脂(A)は、組成物(X)中の、熱硬化反応を起こす成分である。熱硬化性樹脂(A)が含む化合物は、高分子(ポリマー)であってもよく、低分子(モノマー)であってもよい。熱硬化性樹脂(A)は、例えばエポキシ樹脂とラジカル重合性樹脂とのうち少なくとも一方を含有する。
熱硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びアントラセン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有できる。特にエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有することが好ましい。なお、エポキシ樹脂が含みうる成分は前記に限られない。
熱硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂を含有する場合、熱硬化性樹脂(A)は、更にエポキシ樹脂の硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤は、例えばアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、及びイミダゾール系硬化剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。なお、硬化剤が含みうる成分は前記に限られない。
熱硬化性樹脂(A)中のエポキシ樹脂は、特にビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)を特に低粘度化させやすい。
熱硬化性樹脂(A)がラジカル重合性樹脂を含有する場合、ラジカル重合性樹脂は、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシビニルエステル樹脂及びラジカル重合性不飽和単量体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特にラジカル重合性樹脂が、エポキシビニルエステル樹脂及びラジカル重合性不飽和単量体を含有することが好ましい。なお、ラジカル重合性樹脂が含みうる成分は前記に限られない。
エポキシビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と、エチレン性不飽和一塩基酸とを反応させることで合成される。
エポキシビニルエステル樹脂の原料であるエポキシ樹脂は、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、複素環式エポキシ樹脂、及び臭素化エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有できる。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールS型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。ノボラック型エポキシ樹脂は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。脂環式エポキシ樹脂は、例えば3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及び1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。グリシジルエステル類は、例えばフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びダイマー酸グリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。グリシジルアミン類は、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP−アミノフェノール、及びN,N−ジグリシジルアニリンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。複素環式エポキシ樹脂は、例えば1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。臭素化エポキシ樹脂は、例えばテトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールF型エポキシ樹脂、ブロム化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。なお、エポキシビニルエステル樹脂の原料であるエポキシ樹脂が含みうる成分は前記に限られない。
エポキシビニルエステル樹脂の原料であるエポキシ樹脂が、カルボキシル基含有ゴム状重合体で変性されてもよい。すなわち、エポキシ樹脂におけるエポキシ基の一部がカルボキシル基含有ゴム状重合体と反応することで、変性されてもよい。エポキシ樹脂がカルボキシル基含有ゴム状重合体で変性されると、積層板1の耐衝撃性、パンチング加工性、層間密着性等が向上する。
カルボキシル基含有ゴム状重合体は、例えばカルボキシル基含有単量体、共役ジエン系単量体、及びこれら以外の重合性単量体を共重合させて得られる。また、カルボキシル基含有ゴム状重合体は、共役ジエン系単量体とそれ以外の重合性単量体とを共重合させ、その生成物にカルボキシル基を導入することで得られてもよい。カルボキシル基は、生成物の分子の末端、側鎖のいずれの位置に導入してもよい。生成物に導入されるカルボキシル基の数は、生成物の1分子あたり1〜5個であることが好ましく、1.5〜3個であればより好ましい。共役ジエン系単量体は、例えばブタジエン、イソプレン及びクロロプレンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。重合性単量体は、例えばアクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、及びハロゲン化スチレンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。なお、重合性単量体が含みうる成分は前記に限られない。
カルボキシル基含有ゴム状重合体の合成に供される全単量体に対するアクリロニトリルの百分比は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であれば更に好ましい。
エポキシビニルエステル樹脂の原料であるエチレン性不飽和一塩基酸は、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノブチルマレート、及びソルビン酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に、エチレン性不飽和一塩基酸が、(メタ)アクリル酸を含有することが好ましい。なお、エチレン性不飽和一塩基酸が含みうる成分は前記に限られない。
エポキシビニルエステル樹脂を合成するにあたっては、エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ゴム状重合体及びエチレン性不飽和一塩基酸を同時に反応させてもよい。また、エポキシビニルエステル樹脂を合成するにあたっては、エポキシ樹脂とカルボキシル基含有ゴム状重合体とを反応させた後、エチレン性不飽和一塩基酸を反応させてもよい。
エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ゴム状重合体及びエチレン性不飽和一塩基酸の比率は、特に制限されないが、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量当たり、カルボキシル基含有ゴム状重合体とエチレン性不飽和一塩基酸の総カルボキシル基が0.8当量以上1.1当量以下であることが好ましく、0.9当量以上1.0当量以下であれば更に好ましい。
ラジカル重合性不飽和単量体は、1分子中に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和基を有する。ラジカル重合性不飽和単量体は、例えば、ジアリルフタレート、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特にラジカル重合性不飽和単量体が、スチレンを含有することが好ましい。なお、ラジカル重合性不飽和単量体が含みうる成分は前記に限られない。
組成物(X)中のラジカル重合性樹脂100質量部に対する、ラジカル重合性樹脂中のラジカル重合性不飽和単量体の量は、25質量部以上45質量部以下であることが好ましい。ラジカル重合性不飽和単量体の量が25質量部以上であれば、組成物(X)が不織布基材10へより含浸しやすくなる。また、ラジカル重合性不飽和単量体の量が45質量部以下であれば、積層板1の寸法安定性及び耐熱性が高くなる。ラジカル重合性不飽和単量体の量が、25質量部以上40質量部以下であれば、更に好ましい。
熱硬化性樹脂(A)中のラジカル重合性樹脂は、特にビニルエステル樹脂、エポキシビニルエステル樹脂といった、ビニルエステル系樹脂を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)を特に低粘度化させやすい。なお、ラジカル重合性不飽和単量体が含みうる成分は前記に限られない。
組成物(X)がラジカル重合性樹脂を含有する場合、組成物(X)は、ラジカル重合開始剤を更に含有することが好ましい。ラジカル重合開始剤は、有機過酸化物を含有できる。有機過酸化物は、例えばメチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド、イソブチルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;クメンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のアルキルパーエステル類;及びビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチルカーボネート等のパーカーボネート類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。なお、有機過酸化物が含みうる成分は前記に限られない。
組成物(X)中のラジカル重合性化合物100質量部に対する、ラジカル重合開始剤の量は、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.9質量部以上2.0質量部以下であれば更に好ましい。
上記のとおり、組成物(X)は非球形アルミナ粒子(B)を含有する。非球形アルミナ粒子(B)は、組成物(X)の硬化物の熱伝導性を高めることができる。「非球形」とは、球形以外の形のことであり、例えば破砕形状である。破砕形状のアルミナ粒子(破砕状アルミナ粒子)は、原材料の水酸化アルミニウムを焼成後、破砕することにより粒径を制御して製造される。破砕状アルミナ粒子は、焼成の段階から球形を保持する球形アルミナ粒子とは性質を異にする。球形アルミナ粒子は、組成物中で高充填されても組成物の流動性を阻害しにくい性質がある一方で、球形アルミナ粒子中の粒子同士の接触面積が小さくなりやすいため組成物の硬化物の熱伝導率を高めにくい。一方、破砕状アルミナ粒子は、球形アルミナ粒子よりも製造されやすく、かつ組成物(X)の硬化物中で熱伝導のためのパスを形成しやすい。このため、球形アルミナ粒子に比較して、破砕状アルミナ粒子は、たとえ組成物(X)中の充填量が低くても、硬化物の熱伝導性を高めやすい。なお、粒子を走査型電子顕微鏡で撮影し、得られた画像を画像処理して算出される粒子の個数平均のアスペクト比が1.3以上であれば、粒子は非球形であると判断される。図3Aに球形アルミナ粒子の一例の走査型電子顕微鏡写真を示し、図3Bに破砕状アルミナ粒子の一例の走査型電子顕微鏡写真を示す。
組成物(X)中での非球形アルミナ粒子(B)の、体積基準での累積10%粒子径(D10)は0.10μm以上0.30μm以下である。組成物(X)中での非球形アルミナ粒子(B)の、体積基準での累積50%粒子径(D50)は0.20μm以上1.00μm以下である。組成物(X)中での非球形アルミナ粒子(B)の、体積基準での累積90%粒子径(D90)は1.00μm以上5.00μm以下である。これらの値は、非球形アルミナ粒子(B)をレーザー回折・散乱法で測定して得られる体積基準の粒度分布から算出される。測定装置として、例えば島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(半導体レーザー使用、レーザー波長680nm)を用いることができる。
組成物(X)中で非球形アルミナ粒子(B)が上記で示される特定の粒度を有する分散状態の場合には、凝集粒子が適度に分散されながら、一次粒子は粉砕等による損傷が低減された状態であるため、非球形アルミナ粒子(B)は、組成物(X)の粘度上昇を引き起こしにくい。そのため、組成物(X)の低粘度化を図ることができる。その理由は次のとおりであると推察される。D10の値が0.10μm未満の場合、D50の値が0.20μm未満の場合及びD90の値が1.00μm未満の場合には、非球形アルミナ粒子(B)中の粒子同士がネッキングした状態等のような、非常に硬い凝集体に高いエネルギーが投下されて粒子が分散させたことによって、粒子が粉砕されたことや粒子の表面に傷が入った可能性が考えられ、それらによって生じた破断面は活性化されている。それらの活性化された表面は、粒度分布測定時のような希薄な状態においては問題にならないが、組成物(X)のように高密度に非球形アルミナ粒子(B)が分散した状態においては、再凝集の要因となりうる。このことが、組成物(X)の粘度上昇を引き起こす原因となると考えられる。さらに、粒子の再凝集によって発生した凝集体は、はじめの凝集体よりも大きくなることがあり、そのような凝集体は組成物(X)を不織布に含侵させにくくする。一方、D10の値が0.30μmを超える場合、D50の値が1.00μmを超える場合及びD90の値が5.00μmを超える場合には、非球形アルミナ粒子(B)中の粒子の分散が不十分になって凝集体が生じやすいと推察される。そのような凝集体は組成物(X)を不織布に含侵させにくくする。さらに、分散が不十分な状態である組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)中の粒子間距離は不均一になりやすい。粒子間距離が近い箇所では、粒子界面での抵抗が上昇するために組成物(X)の粘度上昇を引き起こす。組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)の濃度が高いほど、分散が不十分であることによる粘度上昇が引き起こされやすくなる。
累積10%粒子径(D10)は0.10μm以上0.25μm以下であればより好ましく、0.10μm以上0.20μm以下であれば更に好ましい。累積50%粒子径(D50)は0.20μm以上0.75μm以下であればより好ましく0.25μm以上0.55μm以下であれば更に好ましい。累積90%粒子径(D90)は1.00μm以上3.50μm以下であればより好ましく、1.50μm以上2.50μm以下であれば更に好ましい。
なお、組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)は、一次粒子と、一次粒子が凝集した凝集粒子とのうち、いずれも含みうる。特に組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)は、一次粒子と凝集粒子とを両方含むことが好ましい。
非球形アルミナ粒子(B)の平均一次粒子径は、0.3μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.4μm以上1.5μm以下であることがより好ましく、0.4μm以上1.0μm以下であれば更に好ましい。この場合、組成物(X)中では、非球形アルミナ粒子(B)は適度な比率で一次粒子と凝集粒子とを含むことができる。それにより、非球形アルミナ粒子(B)は、組成物(X)の粘度上昇を更に引き起こしにくい。平均一次粒子径は、次の方法で特定される。組成物(X)に含まれる、非球形アルミナ粒子(B)を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率5000倍以上にて観察する。TEMで得られた像又はSEMで観察された粒子における、凝集体を形成していない非球形アルミナ粒子(B)を、一次粒子とみなす。この一次粒子の長径を、一次粒子径とみなす。百個の一次粒子について、一次粒子径を測定する。一次粒子径の個数基準の算術平均値を算出した結果を、平均一次粒子径とする。
また、非球形アルミナ粒子の一次粒子の最大粒径が3.0μm以下であることも好ましい。非球形アルミナ粒子の一次粒子の最小粒径が0.1μm以上であることも好ましい。すなわち、非球形アルミナ粒子の一次粒子は、0.1μm以上3.0μm以下の範囲内にあることが好ましい。
また組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)の粒度分布は、粒径0.1μmから1.0μmまでの範囲内にピークトップ(小粒子径側のピーク)があり、及び粒径1.1μmから10.0μmまでの範囲内にもピークトップ(大粒子径側のピーク)があることが好ましい。大粒子径側のピークトップの頻度に対する、小粒子径側のピークトップの頻度の比(小粒子径側ピークトップの頻度/大粒子径側ピークトップの頻度)は、1.2〜3.5の範囲内であることが好ましい。この比は1.3〜3.0の範囲内であることがより好ましく、1.4〜2.5の範囲内であることがさらに好ましい。
組成物(X)中の熱硬化性樹脂(A)100質量部に対する、非球形アルミナ粒子(B)の量は、120質量部以上350質量部以下であることが好ましい。非球形アルミナ粒子(B)の量が120質量部以上であれば、非球形アルミナ粒子(B)は組成物(X)の硬化物の熱伝導率を特に高めやすい。また、非球形アルミナ粒子(B)の量が350質量部以下であれば、非球形アルミナ粒子(B)は組成物(X)の粘度を特に高めやすい。非球形アルミナ粒子(B)の量は、150質量部以上であればより好ましく、180質量部以上であれば更に好ましい。また、非球形アルミナ粒子(B)の量は、300質量部以下であればより好ましく、250質量部以下であれば更に好ましい。
組成物(X)は、非球形アルミナ粒子(B)以外の無機充填材を更に含有してもよい。無機充填材は、例えばタルク、シリカ、カーボンブラック、マイカ、水酸化アルミニウム、クレー、酸化チタン及びチタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有できる。なお、非球形アルミナ粒子(B)以外の無機充填材が含みうる成分は前記に限られない。組成物(X)が無機充填材を含有する場合、熱硬化性樹脂(A)100質量部に対する、非球形アルミナ粒子(B)と無機充填材との合計量は、180質量部以上300質量部以下であることが好ましい。
組成物(X)は、必要に応じて、例えば硬化触媒、溶剤、減粘剤及びカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を更に含有してもよい。なお、組成物(X)が含みうる成分は前記に限られない。
組成物(X)は、溶剤を更に含有してもよく、含有しなくてもよい。組成物(X)が溶剤を含有しない場合、組成物(X)を不織布基材10に含浸させてから硬化させる過程で、組成物(X)から溶剤を除去する必要がなくなる。このため、溶剤の揮発による環境悪化が防止される。また、溶剤除去のための工程が不要となるため、積層板1の製造効率が向上し、連続工法による積層板1の製造も容易となる。
組成物(X)は、適宜の方法で調製される。例えば組成物(X)の成分を、ディスパー、ボールミル、ビーズミル、ロール等を用いて混合することで、組成物(X)を調製することができる。
組成物(X)の調製時には、組成物(X)の成分を、ビーズミルを用いて平均処理温度が60℃未満で処理することが好ましい。この場合、組成物(X)中で非球形アルミナ粒子(B)を適度に凝集させることができ、これにより非球形アルミナ粒子(B)の上記で示される特定の粒度を実現させやすくなる。
組成物(X)の30℃での粘度は800mP・s以上2500mP・s以下であることが好ましい。粘度が2500mP・s以下であると、組成物(X)を不織布基材10に特に含浸させやすくなる。粘度が800mP・s以上であると、非球形アルミナ粒子(B)中の分散した粒子の再凝集が短時間で発生しやすくなってしまう。組成物(X)の30℃での粘度は900mP・s以上であればより好ましく、1000mP・s以上であれば更に好ましい。また、組成物(X)の30℃での粘度は2200mP・s以下であればより好ましく、2000mP・s以下であれば更に好ましい。
この組成物(X)の粘度は、非球形アルミナ粒子(B)の上記で示される特定の粒度によって実現されやすい。すなわち、非球形アルミナ粒子(B)が上記で示される特定の粒度を有すれば、組成物(X)が非球形アルミナ粒子(B)を含有していても、組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)以外の熱硬化性樹脂(A)などの成分の種類及び量を適宜調整することで、800mP・s以上2500mP・s以下の粘度を容易に実現できる。
本実施形態に係るプリプレグは、不織布基材10と、不織布基材10に含浸している組成物(X)の乾燥物又は半硬化物とを備える。このプリプレグを、以下、第一プリプレグということがある。
不織布基材10は、例えばガラス繊維;アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維等の合成樹脂繊維;及び紙からなる群から選択される少なくとも一種の材料から作製される。なお、不織布基材10の材料は前記に限られない。不織布基材10の厚みは0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上0.9mm以下であれば更に好ましい。不織布基材10中の繊維同士を接着するバインダは、熱的強度に優れるエポキシシランなどのエポキシ化合物を含有することが好ましい。不織布基材10中の繊維100質量部に対するバインダの量は5質量部以上25質量部以下であることが好ましい。
第一プリプレグの製造方法について説明する。まず不織布基材10に組成物(X)を含浸させることで、樹脂含浸基材(第一樹脂含浸基材12)を作製する。続いて、第一樹脂含浸基材12中の組成物(X)を加熱することで組成物(X)を乾燥させ又は半硬化させる。組成物(X)を加熱する条件は、組成物(X)の組成などの条件に応じ、適宜設定される。これにより、プリプレグが得られる。プリプレグ全体に対する組成物(X)の百分比は、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であれば更に好ましい。上記のとおり、本実施形態では組成物(X)の低粘度化が可能であるため、不織布基材10に組成物(X)を含浸させやすい。そのため第一樹脂含浸基材12及び第一プリプレグの製造効率を向上させることができる。また、第一樹脂含浸基材12中及び第一プリプレグ中に未充填による気泡が生じにくい。
この第一プリプレグは、例えば積層板1、プリント配線板20等の絶縁層5を作製するために使用できる。この場合、絶縁層5に高い熱伝導性を付与することができる。
積層板1について説明する。積層板1は、例えば二つの表層2と、二つの表層2の間に介在する芯層3とを備える。芯層3は、不織布基材10と、不織布基材10に含浸している第一樹脂組成物の硬化物とを備える。二つの表層2の各々は、織布基材11と、織布基材11に含浸している第二樹脂組成物の硬化物とを備える。第一樹脂組成物は、上記の組成物(X)である。
第二樹脂組成物(以下、組成物(Y)という)は、熱硬化性樹脂を含有する。組成物(Y)中の熱硬化性樹脂は、例えば上記で説明した組成物(X)中の熱硬化性樹脂が含有しうる成分と同じ成分を含有できる。
組成物(Y)は、無機充填材を含有しなくてもよい。この場合、組成物(Y)の粘度が無機充填材によって上昇することがないため、組成物(Y)の低粘度化ができる。このため、組成物(Y)を織布基材11に含浸させやすい。組成物(Y)は無機充填材を含有してもよい。組成物(Y)中の無機充填材は、例えばタルク、シリカ、カーボンブラック、マイカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、酸化チタン及びチタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有できる。なお、無機充填材が含みうる成分は、前記に限られない。
組成物(Y)は、必要に応じて、例えば硬化触媒、溶剤、減粘剤及びカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を更に含有してもよい。
組成物(Y)は、溶剤を更に含有してもよく、含有しなくてもよい。組成物(Y)が溶剤を含有しない場合、組成物(Y)を織布基材11に含浸させてから硬化させる過程で、組成物(Y)から溶剤を除去する必要がなくなる。このため、溶剤の揮発による環境悪化が防止される。また、溶剤除去のための工程が不要となるため、積層板1の製造効率が向上し、連続工法による積層板1の製造も容易となる。
積層板1は、金属箔4を備えてもよい。すなわち、積層板1は金属張積層板であってもよい。積層板1が金属張積層板である場合、積層板1は、絶縁層5と金属箔4とを備え、絶縁層5は、二つの表層2と、二つの表層2の間に介在する芯層3とを備える。積層板1は、絶縁層5における二つの表層2の内の一方に重なる金属箔4を備える片面金属張積層板であってもよく、二つの表層2にそれぞれ重なる二つの金属箔4を備える両面金属張積層板であってもよい。
積層板1の製造方法について説明する。
第一プリプレグ、第二プリプレグ、及び金属箔4を用意する。
第一プリプレグは、不織布基材10と、不織布基材10に含浸している組成物(X)の乾燥物又は半硬化物とを備える。第一プリプレグについては既に説明したとおりである。
第二プリプレグは、織布基材11と、織布基材11に含浸している組成物(Y)の乾燥物又は半硬化物とを備える。
組成物(Y)については、上記で説明したとおりである。
織布基材11は、例えば、ガラスクロス及び合成樹脂クロスから選択される。合成樹脂クロスは、例えばアラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維等の合成樹脂繊維から作製される。なお、織布基材11の材料は前記に限られない。織布基材11の厚みは、例えば50μm以上500μm以下である。
第二プリプレグの製造方法について説明する。まず織布基材11に組成物(Y)を含浸させることで、樹脂含浸基材(第二樹脂含浸基材13)を作製する。続いて、第二樹脂含浸基材13中の組成物(Y)を加熱することで組成物(Y)を乾燥させ又は半硬化させる。組成物(Y)を加熱する条件は、組成物(Y)の組成などの条件に応じ、適宜設定される。これにより、第二プリプレグが得られる。第二プリプレグ全体に対する組成物(Y)の百分比は、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であれば更に好ましい。
金属箔4は、いかなる金属の箔でもよい。金属箔4は、例えば銅箔又はニッケル箔である。
金属箔4、少なくとも一枚の第二プリプレグ、少なくとも一枚の第一プリプレグ、少なくとも一枚の第二プリプレグ及び金属箔4を、この順番に重ねて、積層物16を作製する。この積層物16を加熱することで、第一プリプレグ及び第二プリプレグを硬化させる。積層物16を加熱するに当たっては、積層物16を熱プレスしてもよい。これにより、積層物16中の第一プリプレグは硬化して芯層3になり、積層物16中の第二プリプレグの各々は硬化して表層2になる。これにより、金属箔4、表層2、芯層3、表層2及び金属箔4がこの順に積層している積層板1が得られる。積層物16を加熱する条件は適宜設定される。
上記の積層板1の製造方法において、第一プリプレグ及び第二プリプレグに代えて、組成物(X)を含浸させた不織布基材10(第一樹脂含浸基材12)と、組成物(Y)を含浸させた織布基材11(第二樹脂含浸基材13)とを用いてもよい。すなわち、第一プリプレグ及び第二プリプレグを作製する工程を経ることなく、積層板1を製造してもよい。
より具体的には、第一樹脂含浸基材12、第二樹脂含浸基材13、及び金属箔4を用意する。第一樹脂含浸基材12は、不織布基材10と、不織布基材10に含浸している組成物(X)とを備える。第二樹脂含浸基材13は、織布基材11と、織布基材11に含浸している組成物(Y)とを備える。
金属箔4、少なくとも一枚の第二樹脂含浸基材13、少なくとも一枚の第一樹脂含浸基材12、少なくとも一枚の第二樹脂含浸基材13及び金属箔4を、この順番に重ねて、積層物16を作製する。この積層物16を加熱することで、第一樹脂含浸基材12及び第二樹脂含浸基材13を硬化させる。積層物16を加熱するに当たっては、積層物16を熱プレスしてもよい。これにより、積層物16中の第一樹脂含浸基材12は硬化して芯層3になり、積層物16中の第二樹脂含浸基材13の各々は硬化して表層2になる。これにより、金属箔4、表層2、芯層3、表層2及び金属箔4がこの順に積層している積層板1が得られる。積層物16を加熱する条件は、第一樹脂含浸基材12及び第二樹脂含浸基材13を硬化させうるように適宜設定される。
積層板1を連続工法で製造してもよい。積層板1を連続工法で製造する方法の一例を、図2を参照して説明する。長尺な不織布基材10を巻いたコイル(不織布基材コイル6)を用意し、この不織布基材コイル6から不織布基材10を引き出して移動させる。不織布基材10の移動経路上に供給装置8を配置し、この供給装置8で不織布基材10に組成物(X)を供給する。これにより、不織布基材10に組成物(X)を含浸させる。図2における供給装置8はロールコータであるが、供給装置8は、不織布基材10に組成物(X)を供給することで不織布基材10に組成物(X)を含浸させるように構成されているのであれば、これに限定されない。
なお、本方法では、一つの不織布基材10を含む芯層3を形成するために、不織布基材コイル6を一つだけ用いるが、複数の不織布基材10を含む芯層3を形成する場合には、芯層3における不織布基材10の数に応じた数の不織布基材コイル6を用いる。
また、長尺な織布基材11を巻いたコイル(織布基材コイル9)を二つ用意し、各織布基材コイル9から織布基材11を引き出して移動させる。各織布基材11の移動経路上に供給装置19を配置し、この供給装置19で織布基材11に組成物(Y)を塗布する。図2における供給装置19はロールコータであるが、供給装置19は、織布基材11に組成物(Y)を供給することで織布基材11に組成物(Y)を含浸させるように構成されているのであれば、これに限定されない。
なお、本方法では、一つの織布基材11を含む表層2を二つ形成するために、不織布基材コイル6を二つだけ用いるが、複数の織布基材11を含む表層2を形成する場合には、各表層2における織布基材11の数に応じた数の織布基材コイル9を用いる。
また、長尺な金属箔4を巻いたコイル(金属箔コイル14)を二つ用意し、各金属箔コイル14から金属箔4を引き出して移動させる。
第一樹脂含浸基材12、二つの第二樹脂含浸基材13及び二つの金属箔4を、移動させながら、金属箔4、第二樹脂含浸基材13、第一樹脂含浸基材12、第二樹脂含浸基材13及び金属箔4の順に積層することで、積層物16を作製する。この積層物16を二つのロール15,15間に導入する。これにより、積層物16の厚みを調整でき、かつ積層物16内の樹脂量を調整できる。
この積層物16を、加熱炉17内に導入することで、加熱する。これにより、第二樹脂含浸基材13中の組成物(Y)と第一樹脂含浸基材12中の組成物(X)とを熱硬化させる。加熱温度及び加熱時間は、組成物(Y)及び組成物(X)の組成等に応じて適宜設定されるが、例えば加熱温度(最高到達温度)は140〜190℃の範囲内、加熱時間は40〜80分の範囲内である。
これにより、長尺な積層板1(長尺板101)が得られる。長尺板101を加熱炉17から引き出してから、カッター18で所定の寸法にカットすることで、より小さい積層板1(個片板102)を作製できる。積層板1を更に加熱することで後硬化(アフターキュア)させてもよい。
積層板1からプリント配線板20を製造できる。例えば、上記の製造方法で作製した積層板1の最外層に導体配線41を設けることで、プリント配線板20を製造することができる。プリント配線板20は、例えば図1Bに示すように、絶縁層5と、導体配線41とを備える。絶縁層5は、二つの表層2、2と、二つの表層2、2の間に介在する芯層3とを備える。芯層3は、不織布基材と、不織布基材に含浸している第一樹脂組成物の硬化物とを備える。二つの表層2、2の各々は、織布基材と、織布基材に含浸している第二樹脂組成物の硬化物とを備える。第一樹脂組成物は、上記の組成物(X)である。
例えばまず上記の製造方法で作製した個片板102の最外層に、アディティブ法、サブトラクティブ法などの方法で導体配線41を設けることで、プリント配線板20を製造できる。
また、上記の製造方法で作製した長尺板101を切断せずに、この長尺板101の最外層に、アディティブ法、サブトラクティブ法などの方法で導体配線41、41を設けてから、長尺板101を切断することで、プリント配線板20を製造してもよい。
プリント配線板20に絶縁層及び導体配線を更に追加して、更に多層のプリント配線板20を製造してもよい。
1.組成物の調製
後掲の表に示す成分を配合して組成物を得た。この組成物の温度を表1の「組成物温度(℃)」の欄に示す値に調整した。この組成物をビーズミルで、直径1mmのジルコニアビーズを用い、混練羽根(ディスク)の回転数を表1の「ミル回転数(Hz)」の欄に示す値に設定して、表1の「処理時間[min]」に示す時間、分散処理した。
なお、ビーズミルで処理する際の組成物の温度が20℃を下回る場合は、処理時の組成物の粘度が高いためにビーズミルの負荷が増大しやすく、そのため非球形アルミナ粒子の分散性が低くなりやすいと考えられる。また、一方、組成物の温度が高すぎると、分散性は高くなりやすいが、組成物の溶剤の揮発、過分散により組成物の粘度が増大してしまいやすい。また処理時のディスクの回転数が高いほど分散性は高くなる一方で、組成物の発熱により溶剤の揮発、過分散により組成物の粘度が増大してしまいやすい。回転数が低いほど分散が不十分となりやすく、この場合も組成物の粘度が低くなりにくい。このため、回転数の最適化が分散と流動性にとって重要となると考えられる。
表に示す成分の詳細は次のとおりである。
(1)熱硬化性樹脂
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:DIC製製、品番830S。
・硬化剤:四国化成製、品番2E4MZ−CN。
・ラジカル重合性樹脂:DIC製、ビニルエステル樹脂、品番UE−5101L。
・ラジカル重合開始剤:ナカライテスク社製、クメンヒドロパーオキシド。
(2)非球形アルミナ粒子
・非球形アルミナ粒子1:日本軽金属株式会社製、品番LS−711A、平均アスペクト比1.9。
・非球形アルミナ粒子2:住友化学株式会社製、品番AES−11C、平均アスペクト比2.2。
(3)その他
・希釈溶剤(メチルエチルケトン:昭和化学製)
2.第一樹脂含浸基材の作製
組成物(X)を、不織布基材10(厚み0.6mmのガラス不織布、バイリーン株式会社製、バインダはエポキシシランを含有し、バインダの割合はガラス繊維100質量部に対して5〜25質量部)に含浸させることで、第一樹脂含浸基材12を作製した。
3.積層板の作製
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC製製、品番830S)と硬化剤(四国化成製、品番2E4MZ−CN)とを99:1の質量比で配合して、組成物(Y)を調製した。この組成物(Y)を、織布基材11(厚み0.18mmのガラスクロス、日東紡株式会社製、品番7628)に含浸させることで、第二樹脂含浸基材13を作製した。
また、金属箔4として、厚み18μmの銅箔を用意した。
金属箔4、第二樹脂含浸基材13、第一樹脂含浸基材12、第二樹脂含浸基材13及び金属箔4を、この順番に重ねて、積層物16を作製した。この積層物16を、最高加熱温度150℃、加熱時間30分の条件で加熱した。これにより、積層板1を得た。
4.評価
4−1.粒度分布
組成物(X)に含まれる非球形アルミナ粒子(B)の平均一次粒子径を、次の方法で特定した。非球形アルミナ粒子(B)を透過型電子顕微鏡(TEM)又は操作型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率5000倍以上にて観察した。TEMで得られた像又はSEMで観察された粒子に現れる凝集体を形成していない非球形アルミナ粒子の粒子を、一次粒子とみなした。この一次粒子の長径を、一次粒子径とみなした。百個の一次粒子について、一次粒子径を測定し、一次粒子径の個数基準の算術平均値を、平均一次粒子径とした。
また、組成物(X)中の非球形アルミナ粒子(B)について、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(半導体レーザー使用、レーザー波長680nm)を用いて、分散媒の屈折率条件を1.545に設定して、粒子径の体積分布を測定した。測定試料は、組成物(X)の1滴(1〜2g)をスチレン100mlに加えて希釈液を調製し、希釈液の2〜3滴を、粒度分布測定装置におけるガラスセルに予め入れてある約30mlのスチレンに加えて透過率を基準内に調整することで、得た。
4−2.粘度
組成物(X)の粘度を、JIS−K7117に準拠して、B型粘度計で、LVタイプ標準スピンドルLV−3を用いて、回転数12回転/分の条件で測定した。その結果を後掲の表に示す。
4−3.熱伝導性
積層板1における絶縁層5の熱伝導率をASTM−E1461で規定されるレーザーフラッシュ法で測定した。
4−4.含浸性
積層板1の金属箔4をエッチングして除去することでアンクラッド板を作製した。このアンクラッド板のX線検査を行い、アンクラッド板における250mm×250mmのエリア内にあるボイドの数を確認した。
表1の結果より、粒度分布測定結果における体積基準での累積10%粒子径(D10)が0.10μm以上0.30μm以下、体積基準での累積50%粒子径(D50)が0.20μm以上1.00μm以下、及び体積基準での累積90%粒子径(D90)が1.00μm以上5.00μm以下である実施例は、含侵性の評価においてボイドが確認されなかった。しかしながら、前記D10、D50及びD90のいずれか一つの値が、前記範囲外である比較例は、含侵性の評価においてボイドが確認されただけでなく、実施例で得られた熱硬化性樹脂組成物に比べて極めて高い粘度の熱硬化性樹脂組成物であった。