JP2020083835A - 精神疲労抑制用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】精神疲労抑制に有効な新規な組成物の提供。【解決手段】本発明によれば、ホップ酸化反応産物を含んでなる、精神疲労抑制用組成物が提供される。本発明の組成物は好ましくは食品組成物であり、精神疲労した対象や精神疲労しやすい対象に摂取させることができる。精神疲労は例えば脳機能への負荷に起因するものである。ホップ酸化反応産物は好ましくはS−フラクションである。【選択図】なし

Description

本発明は、精神疲労抑制のための組成物に関する。
ビール中の苦味成分の起源であるホップは、古くから民間薬としても用いられており、鎮静効果、健胃効果等の様々な健康機能が知られている。このホップから得られる抽出物を飲食品に対して一定量以上配合すると独特の強烈な苦味が生じてしまい、嗜好性を損なう恐れがあるが、ホップを酸化処理することにより、ホップ特有の苦味を抑制しつつ、その脂質代謝改善機能を維持しうることが報告されている(特許文献1)。ホップ由来成分やその酸化処理物と精神疲労との関係についてはこれまで報告がなされていない。
国際公開第2012/081675号
本発明者らは、今般、ホップ酸化反応産物が、精神疲労の抑制に有効であることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は精神疲労の抑制に有効な新規な組成物を提供することを目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]ホップ酸化反応産物を含んでなる、精神疲労抑制用組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)および精神疲労抑制剤(以下、「本発明の用剤」ということがある)。
[2]精神疲労が脳機能への負荷に起因する、上記[1]に記載の組成物および用剤。
[3]精神疲労した対象に摂取させるための、上記[1]または[2]に記載の組成物および用剤。
[4]食品組成物である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[5]1回摂取に適した単位包装形態である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[6]ホップ酸化反応産物がS−フラクションである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物および用剤。
[7]S−フラクションを乾燥質量換算で1回当たりの摂取量で1〜500mgで含んでなる、上記[6]に記載の組成物および用剤。
本発明によれば、精神疲労抑制機能を発揮することができるホップ酸化反応産物を含有する組成物が提供される。ホップ酸化反応産物はヒトが食品として長年摂取してきたホップ由来の成分を利用することから、本発明はヒトを含む哺乳類に安全な機能性素材として利用できる点で有利である。
図1は、参考例1におけるホップ酸化反応産物についてのHPLC分析結果(HPLCクロマトグラム)を示した図である。 図2は、実施例2の試験の概要を示す図である。
発明の具体的説明
ホップ酸化反応産物
本発明において、ホップ酸化反応産物とは、ホップまたはその加工物(ホップペレット、ホップエキス等)を酸化処理して得られるものをいう。本発明により提供されるホップ酸化反応産物は、例えば、ホップを空気中の酸素に接触させて酸化することにより得ることができる。
ホップ酸化反応産物は、例えば、特許文献1に記載の方法に従い、ホップを酸化処理することにより製造することができる。酸化処理は、好ましくはホップを空気中で加熱することにより行われる。加熱温度は特に限定されないが、好ましい上限は100℃であり、より好ましい上限は80℃である。加熱温度を100℃以下とする場合には異性化よりも酸化を優先的に進行させる上で有利である。また、好ましい加熱温度の下限は60℃である。加熱温度を60℃以上とする場合には酸化反応を効率的に進行させる上で有利である。また、反応期間も特に限定されるものではなく、ホップの品種や反応温度により適宜決定することができる。例えば、60℃であれば48〜120時間、80℃であれば8〜24時間が好ましい。酸化反応に付される際のホップの形態は空気中の酸素と接触できれば特に限定されるものではないが、好ましくは粉末状にすることにより、反応時間を短縮できる。
本発明においてホップは、ルプリン部を含有するものであれば任意の形態のものでよく、収穫して乾燥させる前のもの、収穫して乾燥したもの、圧縮したもの、粉砕したもの、またはペレット状に加工したもの等用いてもよいが、好ましくはホップペレットの形態である。ホップペレットは、市販品を使用してもよく、例えば、ホップ毬花を圧縮しペレット状にしたもの(Type90ペレット)、ルプリン部分が選択的に濃縮されたペレット(Type45ペレット)、または異性化処理したホップペレット(例えば、Isomerized Pellets (HopSteiner社))等が挙げられる。
ホップエキスを酸化処理に付すことにより生成したホップエキス酸化反応物を本発明におけるホップ酸化反応産物として提供してもよい。ホップエキス酸化反応物は、例えば、特許文献1記載の方法に従い、ホップエキスを酸化処理することにより製造することができる。
ホップには、α酸(フムロン類)、β酸(ルプロン類)、イソα酸(イソフムロン類)等の酸性樹脂成分が含まれている。本発明において「フムロン類」は、フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、およびプレフムロンを含む意味で用いられる。また、本発明において「ルプロン類」はルプロン、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロンおよびプレルプロンを含む意味で用いられる。さらに、本発明において「イソフムロン類」は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン、Rho−イソフムロン、Rho−イソアドフムロン、Rho−イソコフムロン、Rho−イソポストフムロン、Rho−イソプレフムロン、テトラハイドロイソフムロン、テトラハイドロイソアドフムロン、テトラハイドロイソコフムロン、テトラハイドロイソプレフムロン、テトラハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソフムロン、ヘキサハイドロイソアドフムロン、ヘキサハイドロイソコフムロン、ヘキサハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソプレフムロンを含む意味で用いられる。なお、イソフムロン類にはシスおよびトランス立体異性体が存在するが、特に断りがない限りその両者を含む意味で用いられる。
ホップを酸化処理に付すことによりα酸、β酸、イソα酸の含有量が低減され、これら以外の成分の含有量が増加する。このようなホップ酸化反応産物の例としては、実施例1と同様のHPLC分析を実施した場合に、酸化反応産物のうちHPLC総ピーク面積に対するα酸、β酸およびイソα酸のピーク面積の割合が20%以下、好ましくは10%以下であるものが挙げられる。
本発明の酸化反応産物に含まれるα酸、β酸、イソα酸以外の成分は、HPLC等の周知の分析手段により容易に検出することができる。例えば、特許文献1の実施例1と同様の手順で調製されるホップ酸化反応産物には、α酸、β酸およびイソα酸以外の成分が含まれており、この成分に対応するピーク(本明細書において「S−フラクション(S−Fr)」ともいう)は生理活性を奏しうる。特許文献1における実施例1の図1Aにおいて矢印で示される範囲のピーク(α酸、β酸のピークを除く)がS−フラクションに該当する。
特許文献1と同様の条件で調製したホップ酸化反応産物について実施したHPLC分析とその結果(HPLCクロマトグラム)は参考例1および図1に示される通りである。矢印A1およびA2で示される範囲のピーク(α酸、β酸のピークを除く)がS−フラクションに該当する。ここで、図1において、矢印A1およびA2で分画される範囲のピーク面積値は、保持時間3分から25分までのA1のピーク面積値と、保持時間32分から39分までのA2のピーク面積値(α酸、β酸のピークを除く)との総和である。ここで、A1における「保持時間25分まで」とは、trans−イソコフムロンと同定されているピークの出現までを意味する。また、図1のA1で分画される範囲には、保持時間9.7分付近、保持時間11.8分付近、保持時間12.3分付近に特徴的なピークが認められた。また、図1のA2で分画される範囲には、ショルダーピークが認められ、その始点が保持時間32分付近、そのトップ点(α酸、β酸のピークを除く)は保持時間35分〜36分付近、終点は保持時間39分付近であった。
ホップ酸化反応産物は、好ましくはα酸酸化物、イソα酸酸化物およびβ酸酸化物を含有しており、このような酸化物として、例えば、「トリシクロオキシイソフムロン類」を含有する。ここで、「トリシクロオキシイソフムロン類」とは、トリシクロオキシイソコフムロン A(tricyclooxyisocohumulone A)(TCOIcoH A:下記式1参照、IUPAC名:(3aS,5aS,7S,8aS)-3,3a-dihydroxy-7-(1-hydroxy-1-methylethyl)-6,6-dimethyl-2-(2-methylpropanoyl)-5a,6,7,8-tetrahydro-3aH,5H-cyclopenta[c]pentalene-1,4-dione)、トリシクロオキシイソフムロン A(tricyclooxyisohumulone A)(TCOIH A:下記式2参照、IUPAC名:(3aS,5aS,7S,8aS)-3,3a-dihydroxy-7-(1-hydroxy-1-methylethyl)-6,6-dimethyl-2-(3-methylbutyryl)-5a,6,7,8-tetrahydro-3aH,5H-cyclopenta[c]pentalene-1,4-dione)、トリシクロオキシイソアドフムロン A(tricyclooxyisoadhumulone A)(TCOIadH A:下記式3参照、IUPAC名:(3aS,5aS,7S,8aS)-3,3a-dihydroxy-7-(1-hydroxy-1-methylethyl)-6,6-dimethyl-2-(2-methylbutanoyl)-5a,6,7,8-tetrahydro-3aH,5H-cyclopenta[c]pentalene-1,4-dione)を含む化合物群である。本明細書では、以下、TCOIcoH A、TCOIH AおよびTCOIadH AをまとめてTCOIHsAということがある。TCOIHsAの含有量は後記実施例1に記載の方法で測定する。
Figure 2020083835
Figure 2020083835
Figure 2020083835
ホップ酸化反応産物(好ましくはS−フラクション)に含まれる「トリシクロオキシイソフムロン類」以外の酸化物としては、スコルピオフムリノールAおよびスコルピオコフムリノールAが挙げられる。
本発明においては、ホップ酸化反応産物を水性媒体抽出物として提供してもよい。水性媒体は通常食品製造に使用されるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、水またはエタノールであり、より好ましくは水である。また、抽出温度は特に限定されないが、好ましくは60℃以下であり、抽出効率を勘案すれば、50〜60℃がより好ましい。
本発明に使用するホップ酸化反応産物(好ましくは、ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物)は、トリシクロオキシイソフムロンAおよびトリシクロオキシイソコフムロンAの合計量の、スコルピオフムリノールAおよびスコルピオコフムリノールAの合計量に対する比率(乾燥質量換算)で特徴付けることができ、例えば、この比率が1〜30の範囲であるホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物を、好ましくは、2〜20の範囲であるホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物を用いることができる。
また、本発明に使用するホップ酸化反応産物は、S−フラクションに占める TCOIHsの含有比率(乾燥質量換算)により特徴付けることができ、例えば、この含有比率が5〜15質量%、好ましくは5〜12質量%であるホップ酸化反応産物(好ましくは、ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物)を用いることができる。ホップ酸化反応産物のS−フラクションが図1中に示される矢印A1画分の成分で主に構成される場合は、Biosci.,Biotechnol.,Biochem.,2015 (79):1684-1694記載のmatured hop bitter acidsと同様の測定法により、その含有量を測定することができる。
ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物のBrix値は、特に制限されないが、例えば、3以下であり、好ましくは1.5〜3である。ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物は、デカンテーションまたはろ紙等により不溶性成分を除去してもよい。ホップ酸化反応産物の水性媒体抽出物はまた、活性炭処理を施してもよい。
本発明の組成物および用剤は、ホップ酸化反応産物に加えて、精神疲労抑制を意図した1種または2種以上の別の成分を含んでいてもよい。精神疲労抑制を意図した成分としては、例えば、カフェイン、ホスファチジルセリン、オルニチン、テアニン、リジン等のアミノ酸が挙げられる。
用途
後記実施例2に示されるように、ホップ酸化反応産物(好ましくは、S−フラクション)は、負荷課題により生じる精神疲労に対して抑制効果を有し、特に、POMS2検査により選定された日常的に疲労を感じやすい者について、日常的な精神疲労および負荷課題により生じる精神疲労に対して抑制効果を発揮する。従って、ホップ酸化反応産物は精神疲労抑制用組成物および精神疲労抑制剤の有効成分として使用することができる。なお、本発明においては「精神疲労抑制剤」は「抗精神疲労剤」と言い換えることができる。
ここで、「精神疲労」とは、精神的作業を連続して行った場合に、倦怠感、脱力感、不快感等を伴って自覚することをいう。精神疲労の原因としては、非肉体的な負荷、特に、脳機能への負荷が挙げられ、例えば、頭脳労働、勉強、オフィスワーク、面接、面談、プレゼンテーション、会議、事務作業、運転、テレビゲーム、モバイルゲーム、試験、満員電車が挙げられる。精神疲労はまた、ねむけ感、不安定感、不快感、だるさ感およびぼやけ感からなる群から選択される1種または2種以上の感覚を伴うものとすることができる。
本発明の組成物および用剤は、精神疲労した対象(疲労を感じている対象を含む)や精神疲労しやすい対象(疲労を感じていない対象を含む)に摂取させることができ、例えば、脳機能への負荷により精神疲労した対象や脳機能への負荷により精神疲労しやすい対象に摂取させることができる。本発明の組成物および用剤はまた、日常生活において精神疲労した対象または日常生活において精神疲労しやすい対象に摂取させることができる。なお、精神疲労度は、後記実施例2に記載されたPOMS2検査により評価することができ、例えば、「疲労−無気力」スコアが被験者集団で中央値以上(例えば43点以上)の対象を精神疲労を感じている対象と判定することができる。
本発明の組成物および用剤が抑制の目的とするところの精神疲労は、脳神経疾患に起因する精神疲労とは区別される。すなわち、本発明の組成物および用剤は、例えば、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症等の脳神経疾患に罹っていない対象や、前記脳神経疾患患者である、あるいはその恐れがあると診断されていない対象に摂取させることができる。
本発明において「精神疲労抑制」は、精神疲労した対象において精神疲労を改善することのみならず、精神疲労のリスクがある対象において該リスクを低減することを含む意味で用いられる。すなわち、本発明の組成物および用剤は、精神疲労した対象または精神疲労のリスクがある対象に摂取させるか、あるいは投与することができる。ここで、「精神疲労のリスクがある対象」は、精神疲労していないが、将来において精神疲労の恐れがある対象を意味する。また、「リスクの低減」は、精神疲労を緩和することや、精神疲労を予防することを含む。なお、摂取または投与対象は後述のようにヒトを含む哺乳動物である。
本発明の組成物および用剤は、医薬品(例えば、医薬組成物)、医薬部外品、食品、飼料(ペットフード含む)等の形態で提供することができ、下記の記載に従って実施することができる。
本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物は、ヒトおよび非ヒト動物に経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物を食品として提供する場合には、これらをそのまま食品として提供することができ、あるいはこれらを食品に含有させて提供することができる。このようにして提供された食品はホップ酸化反応産物を有効量含有した食品である。本明細書において、ホップ酸化反応産物を「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲でホップ酸化反応産物(好ましくは、S−フラクション)が摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)を含む意味で用いられる。なお、本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物をヒト以外の動物に摂取させる場合には、本発明でいう食品が飼料として使用されることはいうまでもない。
本発明の組成物および用剤並びにホップ酸化反応産物は精神疲労抑制作用を有するため、日常摂取する食品、さらにはサプリメントとして摂取する食品に含有させて提供することができる。この場合、本発明の組成物および用剤並びにホップ酸化反応産物は、1食当たりに摂取する量が予め定められた単位包装形態で提供することができる。1食当たりの単位包装形態としては、例えば、パック、包装、缶、ボトル等で一定量を規定する形態が挙げられる。本発明の組成物および用剤並びにホップ酸化反応産物の各種作用をよりよく発揮させるためには、後述する、ホップ酸化反応産物の1回当たりの摂取量に従って1食当たりの摂取量を決定できる。本発明の食品は、摂取量に関する説明事項が包装に表示されるか、あるいは説明事項が記載された文書等と一緒に提供されてもよい。
前述の通り、本発明の食品は、日常摂取する食品やサプリメントとして摂取する食品にホップ酸化反応産物を含有させて提供することができるが、ホップ酸化反応産物は、健康食品や機能性食品、好適には、精神疲労抑制を意図した1種または2種以上の他の成分を含有する食品に含有させることができる。あるいは、ホップ酸化反応産物を含有する本発明の食品には、精神疲労抑制を意図した1種または2種以上の他の成分がさらに添加されてもよい。精神疲労抑制を意図した他の成分としては前記と同様のものが挙げられる。
「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であっても、半液体やゲル状の形態であってもよい。また、サプリメントとしては、ホップ酸化反応産物の乾燥粉末に賦形剤、結合剤等を加え練り合わせた後に打錠することにより製造された錠剤やタブレット、さらには、カプセル等に封入されたカプセル剤が挙げられる。
本発明で提供される食品としては、本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物を含有する限り、特に限定されるものではないが、例えば、清涼飲料水、炭酸飲料、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、ドリンクタイプのゼリー、コーヒー、ココア、茶飲料、栄養ドリンク、エナジー飲料、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、ニア・ウォーター、ノンアルコールのビールテイスト飲料等の非アルコール飲料;飯類、麺類、パン類およびパスタ類等炭水化物含有飲食品;クッキー、ケーキ、チョコレート等の洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルト、ゼリーやプリン等の冷菓や氷菓、スナック菓子等の各種菓子類;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、その他雑酒、酎ハイ等のアルコール飲料;卵を用いた加工品、魚介類や畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工品(珍味を含む)、スープ類等の加工食品、濃厚流動食等の流動食等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。なお、ミネラルウォーターは、発泡性および非発泡性のミネラルウォーターのいずれもが包含される。
茶飲料としては、発酵茶、半発酵茶および不発酵茶のいずれもが包含され、例えば、紅茶、緑茶、麦茶、玄米茶、煎茶、玉露茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ウコン茶、プーアル茶、ルイボスティー、ローズ茶、キク茶、イチョウ葉茶、ハーブ茶(例えば、ミント茶、ジャスミン茶)が挙げられる。
果汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、モモ、マンゴー、アサイー、ブルーベリーおよびウメが挙げられる。また、野菜汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、カボチャ、キュウリおよびスイカが挙げられる。
本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物はヒトが食品として長年摂取してきたホップ由来の成分を利用することから、毒性も低く、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いることができる。ホップ酸化反応産物の摂取量または投与量は、受容者の性別、年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与経路並びに組み合わせる薬剤等に依存して決定できる。本発明におけるホップ酸化反応産物の成人1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)を例示すると、0.5〜16000mg(好ましくは0.5〜8000mg、より好ましくは0.5〜4000mg)であり、S−フラクションの成人1回当たりの摂取量および投与量(乾燥質量換算)を例示すると、0.1〜2000mg(好ましくは0.1〜1000mg、より好ましくは0.1〜500mg、特に好ましくは0.2〜100mg)である。なお、上記の本発明の有効成分であるホップ酸化反応産物の摂取量並びに下記摂取タイミングおよび摂取期間は、ホップ酸化反応産物を非治療目的および治療目的のいずれで使用する場合にも適用があり、治療目的の場合には摂取は投与に読み替えることができる。
ホップ酸化反応産物は、対象によっては上記摂取量または投与量を1日分の摂取量または投与量として1回で、あるいは数回に分けて摂取させ、あるいは投与してもよい。中長期的な効果を期待する場合には、上記量での摂取または投与を1ヶ月(好ましくは3ヶ月、より好ましくは6ヶ月)間、週に1回以上(好ましくは、3日に1回以上、より好ましくは毎日継続)とすることができる。
ホップ酸化反応産物はまた、精神疲労の原因となる事象の前に、および/または、精神疲労の原因となる事象の後に、対象に摂取させるか、あるいは投与することができる。摂取または投与の回数は、事象の前後それぞれにおいて、1回以上とすることができ、好ましくは3回以上、4回以上、5回以上または6回以上である。本発明において精神疲労の原因となる事象としては、例えば、前記のような非肉体的な負荷(特に、脳機能への負荷)が挙げられる。
本発明の組成物および用剤並びに食品には、精神疲労抑制効果を有する旨の表示が付されてもよい。この場合、消費者に理解しやすい表示とするため本発明の組成物および用剤並びに食品には以下の一部または全部の表示が付されてもよい。なお、本発明において「精神疲労抑制」が以下の表示を含む意味で用いられることはいうまでもない。
・頭脳労働による疲れに
・運転による疲れに
・勉強、オフィスワーク、面接、面談、プレゼンテーションの後も元気でいたい方に
・頭脳労働後の活力のために
・勉強、オフィスワーク、面接、面談、プレゼンテーションの疲れを残さないために
・勉強後、会議後の眠気対策のために
本発明によれば、有効量のホップ酸化反応産物またはそれを含む組成物を、それを必要としている対象に摂取させるか、あるいは投与することを含んでなる、精神疲労抑制方法が提供される。摂取または投与対象は、ヒトを含む哺乳動物であり、好ましくはヒトである。本発明の精神疲労抑制方法は、本発明の組成物および用剤並びに本発明の有効成分に関する記載に従って実施することができる。
本発明によれば、精神疲労抑制用組成物の製造のための、または、精神疲労抑制剤の製造のための、ホップ酸化反応産物またはそれを含む組成物の使用が提供される。本発明によればまた、精神疲労抑制のための、または、精神疲労抑制剤としての、ホップ酸化反応産物またはそれを含む組成物の使用が提供される。本発明によればまた、精神疲労抑制に用いるための、ホップ酸化反応産物が提供される。本発明の使用および本発明のホップ酸化反応産物は、本発明の組成物および用剤並びに本発明の有効成分に関する記載に従って実施することができる。
本発明の方法および本発明の使用は、ヒトを含む哺乳類における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
参考例1:ホップペレット酸化反応産物の調製
ホップとしては、ペレット状のハラタウペルレ種(HPE種)を用いた。このホップをミルで粉砕し、80℃で24時間まで加熱反応時間を保持した。得られた生成物について以下のように前処理を実施した後、HPLC分析に供した。
[反応物分析前処理]
採取した生成物を10%w/vとなるようエタノールに添加し、50℃で1時間抽出を行った。得られた抽出液をエタノールで10倍に希釈した。
[HPLC構成装置]
ホンプ:LC-10ADvp×3(SHIMADZU)
デガッサー:DGU-20A5(SHIMADZU)
システムコントローラー:CBM-20A(SHIMADZU)
オートサンプラー:SIL-20ACHT(SHIMADZU)
カラムオーブン:CTO-20AC(SHIMADZU)
フォトダイオードアレー検出器:SPD-M20A(SHIMADZU)
波形解析ソフトウェア:LCSolution(SHIMADZU)
[HPLC条件]
カラム:Alltima C18 2.1mm I.D. x100mm 粒子径3μm
流速:0.6mL/分
溶出溶媒A:水/リン酸、1000/0.2, (v/v) + EDTA(free) 0.02%(w/v)
溶出溶媒B:アセトニトリル
溶出溶媒C:水
注入量:3μL
カラム温度:40℃
検出波長:270nm(酸化反応産物、イソα酸、α酸、β酸)
グラジエントプログラム:
Figure 2020083835
上記分析条件にて、検出波長270nmで検出される全ピークの合計面積値(mAU・min)中のα酸、β酸、イソα酸のピークの面積値の比率(%)を算出した。波形解析にあたって、溶媒ピークやインジェクションショックによる負ピークが生じる領域は解析除外領域とした。上記生成物の分析時のHPLCクロマトグラムは図1に示される通りであった。
実施例1:ホップ酸化反応産物の調製
(1)ホップ酸化処理工程
ハラタウペルレ種(HPE種)のホップをペレットミルで粉砕し、得られたホップ粉砕物を大気下で攪拌しながら60℃で120時間程度加熱した。得られた加熱済みホップ(熟成ホップペレット)に、固形分濃度5w/v%となるように水に添加し、50℃で30分間抽出処理を行った。得られた抽出液をデカンテーションにより固液分離し、固液分離液(Brix 約2)を得た。
(2)活性炭処理工程
上記(1)で得られた固液分離液に、活性炭(Y180C、味の素ファインケミカル社製;対固液分離液0.5w/v%)およびポリビニルポリピロリドン(ポリクラール10、ISPジャパン社製;対固液分離液0.4w/v%)を添加して2時間静置した。得られた混合液に濾過助剤(珪藻土)を添加し、濾過処理を行い、濾液(Brix値約1.5)を得た。得られた濾液をホップ酸化反応産物水抽出物として以下の実施例で使用した。
(3)ホップ酸化反応産物の成分分析
上記(2)で得られた濾液(ホップ酸化反応産物水抽出液)について、以下の条件にてHPLC−MSMS分析を行い、ホップ酸化反応産物に含まれる各種成分の含有量を測定した。なお、ホップ酸化反応産物には、α酸酸化物、イソα酸酸化物またはβ酸酸化物として、スコルピオフムリノールA、スコルピオコフムリノールA、トリシクロオキシイソフムロンA、トリシクロオキシイソコフムロンAが含まれることが知られている(Biosci.,Biotechnol.,Biochem.,2015 (79):1684-1694、J.,Agric.,Food Chem., 2015:63:10181-10191)。また、分析に際して使用した標準品はJ.,Agric.,Food Chem., 2015:63:10181-10191およびJ. Nat. Prod. 2014, 77, 1252-1261に記載の方法に準じて調製した。
[HPLC条件]
カラム:Unison UK−C18 100×2mm i.d. 粒子径3μm
流速:0.25mL/分
カラム温度:40℃
移動相A:1%ギ酸含有水
移動相B::1%ギ酸含有アセトニトリル
注入量:3μL
グラジエント:0→30分、15→31%B
30→40分、31→80%B
40→43分、80%B
以降は、洗浄および平衡化工程
[MSMS条件]
質量分析装置:AB SCIEX 4000Q Trap
イオンソース:ESI−ネガティブイオンモード
イオンスプレー電圧:−4500V
分析パラメータ:
Figure 2020083835
上記(1)および(2)を3回実施して濾液を得て、スコルピオフムリノールA、スコルピオコフムリノールA、トリシクロオキシイソフムロンAおよびトリシクロオキシイソコフムロンAの含有量を測定した結果、トリシクロオキシイソフムロンAおよびトリシクロオキシイソコフムロンAの合計量の、スコルピオフムリノールAおよびスコルピオコフムリノールAの合計量に対する比率((トリシクロオキシイソフムロンA+トリシクロオキシイソコフムロンA)/(スコルピオフムリノールA+スコルピオコフムリノールA))は以下の通りであった。
ロット1:3.2
ロット2:6.8
ロット3:12.1
以上の結果から、ホップ酸化反応産物においては、トリシクロオキシイソフムロンおよびトリシクロオキシイソコフムロンの合計量の、スコルピオフムリノールおよびスコルピオコフムリノールの合計量に対する比率は2〜20程度であることが分かった。
実施例2:ホップ酸化反応産物(特にS‐Fr)の抗精神疲労効果
(1)試験の概要
本試験は、プラセボを対照とした無作為化二重盲検並行群間比較試験とした。試験期間は12週間とし、試験期間中は試験食品または対照食品を摂取させた。具体的には、脳の衰えを自覚する45歳以上64歳以下の健康な男女に、試験食品として「ホップ酸化反応産物含有カプセル」を、対照食品として「ホップ酸化反応産物非含有カプセル」をそれぞれ摂取させて、ホップ酸化反応産物(特にS‐Fr)の精神疲労に対する効果を確認した。
(2)被験者
事前検査において医師から健常と判断された者を試験食品群と対照食品群に無作為に割り付けた。また、被験食品摂取開始前にPOMS2検査によって選ばれた者を疲労を感じやすい者とみなして別途の解析(層別解析)を行った。被験者には、試験期間中は試験期間前と同様の生活を継続させた。
POMS2検査はProfile of Mood States 2nd Edition(短縮版)(本明細書において、「POMS2検査」ということがある。)に基づいて次のように行った。すなわち、被験者が感じた過去1週間の気分状態ついて合計35問の質問に答えさせた。回答を項目ごとに「怒り−敵意」、「混乱−当惑」、「抑うつ−落込み」、「疲労−無気力」、「緊張−不安」、「活気−活力」および「友好」の7尺度について算出し、過去1週間の気分状態を評価した。各尺度の点数をT得点(世代平均が50、標準偏差が10の正規分布に近似するように変換された値)で評価したところ、「疲労−無気力」の中央値は43点であったため、43点以上の者を日常的に疲れを感じやすい者とみなして解析対象者とした。解析対象者の内訳は表3の通りであった。
Figure 2020083835
(3)被験食品
試験期間中(12週間)、試験食品群には3粒の試験食品を、対照食品群には3粒の対照食品を1日1回水またはぬるま湯と共に毎日摂取させた。試験食品としては、「ホップ酸化反応産物含有カプセル」(カプセル3粒中にS−Frを乾燥質量換算で35mg含む)を用いた。また、対照食品としてはホップ酸化反応産物に代えて、デキストリン(パインデックス#100:松谷化学工業社製)を配合する以外は同様の方法によって製造した「ホップ酸化反応産物非含有カプセル」を用いた。1粒あたりの試験食品の処方は表4に示す通りである。
Figure 2020083835
(4)測定
ア 測定項目
測定項目は測定時点での主観的状態を評価可能である以下の2項目とした。いずれも測定時点における疲労感や介入の効果の経時的変化の評価に適する検査である。
・疲労感Visual Analogue Scale検査(本明細書において、「疲労感VAS検査」ということがある。)
・自覚症しらべ
イ 測定時期
疲労感VAS検査および自覚症しらべは、被験食品摂取開始前、摂取開始後6週時、摂取開始後12週時の被験者来院時に2回ずつ行った。すなわち、図2に示すように、来院時には負荷課題の前後に各1回(計2回)疲労感VAS検査および自覚症しらべを実施した。なお、6週時および12週時において、被験食品の摂取は測定の開始30分前を目安に行った。
ウ 測定方法
(i)疲労感VAS検査
疲労感VAS検査は、日本疲労学会により制定された疲労感VAS検査方法に則り実施した。左端を「全く疲れを感じない最良の感覚」、右端を「何もできないほど疲れ切った最悪の感覚」と設定した100mmの直線上に、被験者が感じる現時点での疲労感を×印で示させた。左端から×印までの距離を評価した。実測値の低下が疲労感の改善を意味する。
(ii)自覚症しらべ
日本産業衛生学会産業疲労研究会が作成した作業による疲労に伴う感覚の経時的変化を捉えることを目的とした質問紙形式の試験である。試験食品が疲労に伴う感覚に与える影響の評価や脳機能検査結果に影響を与えうる被験者の疲労に伴う感覚の把握のために実施した。疲労に伴う感覚として、「ねむけ感」、「不安定感」、「不快感」、「だるさ感」、「ぼやけ感」および疲労に伴う感覚の統合的な指標として「合計点」を評価することができる。なお、本試験では、2002年版の「自覚症しらべ」の質問項目(25問)に、「自覚症しらべ(1970)」の精神的な疲労感を判定するII群の質問項目(8問(2002年版との重複項目を除く))を追加して実施した(http://square.umin.ac.jp/of/service.html、労働の科学57(5)(2002)295-298;労働の科学57(5)(2002)299-304;労働の科学57(5)(2002) 305-308)。
(iii)精神疲労負荷課題
各被験者に精神疲労を負荷するような課題(負荷課題)を与え、対応させた。負荷課題は、記憶力や注意力の評価を行う対面式の神経心理テストであり、脳機能試験単語の記憶試験(今村陽子「臨床高次脳機能評価マニュアル2000(改訂第2版)」新興医学出版社)等に答えさせるものであり、約60分間を要するものであった。
(5)評価と解析
ア 数値の評価方法
各アンケート指標において、各測定時点におけるスコアを得、摂取開始後のスコアから、対応する摂取開始前のスコアを減じた値を変化量とした。なお、負荷課題の前後の差(負荷課題実施後の値から実施前の値を減じた値)についての変化量(摂取開始後における負荷課題前後の差から摂取開始前における負荷課題前後の差を減じた値)も算出した。両群の実測値および被験食品摂取前からの変化量について、疲労感VAS検査においては2標本t検定によって検定を行い、自覚症しらべにおいてはMann−WhitneyのU検定によって検定を行った。
イ 層別解析の方法
上述のように、本試験では、被験者全員を対象とする全体解析と、疲労を感じやすいとみなされる者のみを対象とした解析(層別解析)を行った。
(6)結果
ア 全体解析
(i)疲労感VAS検査
結果は表5に示される通りであった。
Figure 2020083835
疲労感VAS検査の負荷課題の前後の差に関して、摂取開始前からの変化量は試験食品摂取群の減少の方が大きく(すなわち試験食品摂取群の改善の方が大きく)、特に、摂取開始12週時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意に改善し(P<0.01)、摂取開始6週時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意傾向で改善した(P<0.1)。また、負荷課題の前後の差の実測値も試験食品摂取群の減少の方が大きく、摂取開始12週目時点において、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意傾向で改善した(P<0.1)。一方で、負荷課題実施後の変化量についてみても、試験食品摂取群の減少が大きかった。
(ii)自覚症しらべ
結果は表6(負荷課題実施前)、表7(負荷課題実施後)および表8(負荷課題実施後−負荷課題実施前)に示される通りであった。
Figure 2020083835
Figure 2020083835
Figure 2020083835
ねむけ感、不安定感、不快感、合計点について負荷試験実施後、試験食品群の変化量の方が大きく減少し、摂取開始後6週時、12週時におけるねむけ感と、摂取開始後6週時における合計点については対照食品群に比しての群間の差が有意傾向であると認められた(P<0.1)。すなわち、負荷課題実施後の変化量は試験食品群の減少が大きかった。また、負荷課題実施前後の差(負荷課題実施後−実施前)についての変化量は、ほとんどの項目で試験食品群の減少の方が大きく、ねむけ感については摂取開始6週時時点で群間の有意差が認められ(P<0.05)、摂取開始12週時時点で群間の差が有意傾向であると認められた(P<0.1)。
(iii)全体解析のまとめ
試験食品群で、負荷課題実施後と負荷課題実施前後の差における疲労感の抑制がより大きく認められた。すなわち、試験食品の摂取は、負荷課題により生じる精神疲労を抑制することがわかった。特に、ねむけ感を伴うような疲労を大きく抑制することがわかった。
イ 層別解析
(i)疲労感VAS検査
結果は表9に示される通りであった。
Figure 2020083835
負荷課題実施前、負荷課題実施後、負荷課題実施前後の差について、いずれの時点においても、試験食品群の方が変化量の減少が大きかった。特に12週時点において、負荷課題実施後、負荷課題実施前後の差については群間の有意差が認められた(P<0.05)。
(ii)自覚症しらべ
結果は表10(負荷課題実施前)、表11(負荷課題実施後)および表12(負荷課題実施前後の差)に示される通りであった。
Figure 2020083835
Figure 2020083835
Figure 2020083835
「ねむけ感」の負荷課題前後の差に関して、摂取開始前からの変化量が、摂取開始6、12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意に改善した(6週目:P<0.05、12週目:P<0.01)。また、「ねむけ感」の負荷課題後の結果に関して、摂取開始前からの変化量が、摂取開始6、12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意に改善した(P<0.05)。
「不安定感」の負荷課題後の結果に関して、摂取開始前からの変化量が、摂取開始6、12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意傾向で改善した(P<0.1)。
「不快感」の負荷課題後の結果に関して、摂取開始前からの変化量が、摂取開始12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意に改善し(P<0.05)、摂取開始6週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意傾向で改善した(P<0.1)。また、「不快感」の負荷課題後の実測値は、摂取開始6、12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意傾向で改善した(P<0.1)。
「だるさ感」の負荷課題後の実測値は、摂取開始12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意傾向で改善した(P<0.1)。また、「ぼやけ感」の負荷課題後の実測値は、12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意に改善した(P<0.05)。
疲労に伴う統合的な感覚を表す「合計点」の負荷課題後の結果に関して、摂取開始前からの変化量が、摂取開始6、12週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意傾向で改善した(P<0.1)。また、「不快感」は負荷課題前の実測値も、摂取開始6週目時点に、試験食品摂取群が対照食品摂取群と比較して有意に改善した(P<0.05)。
変化量についてまとめると以下のとおりであった。すなわち、負荷課題実施前について不安定感、だるさ感、ぼやけ感、合計点の項目が、負荷課題実施後についてすべての項目が、負荷課題実施前後の差についてほとんどすべての項目が、摂取開始後6週および12週時点において、対照食品群と比較して試験食品群の方が摂取開始前からの変化量の減少が大きかった。特にねむけ感については、負荷課題実施後および負荷課題実施前後の差において群間の有意差が認められた(P<0.05またはP<0.01)。また、不安定感、不快感および合計点については、負荷課題実施後の値において群間の有意差(P<0.05)または群間差の有意傾向(P<0.1)が認められた。
(iii)層別解析のまとめ
層別解析では、試験食品群で負荷課題実施後と負荷課題実施前後の差における疲労感の抑制がより大きく認められた。すなわち、試験食品の摂取は、負荷課題により生じる精神疲労を抑制することがわかった。特に、ねむけ感や不快感を伴うような疲労を大きく抑制することがわかった。また、負荷課題実施前でも一定の疲労感抑制効果が認められていることから、疲労を感じやすい者においては、試験食品の摂取により日常の疲労感が抑制されることがわかった。
(7)結論
以上の結果より、ホップ酸化反応産物含有カプセルを摂取することにより、被験者の疲労感VAS検査、疲労に伴う感覚の尺度である自覚症しらべの「ねむけ感」の項目が有意に改善し、疲労に伴う統合的な感覚を表す「合計点」が有意傾向で改善したことから、ホップ酸化反応産物(特にS−Fr)は疲労感を改善する効果を有することが示された。また、POMS2検査の「疲労−無気力」を指標とした層別解析では、疲労感VAS検査、自覚症しらべの「ねむけ感」に加えて「不快感」、「ぼやけ感」が有意に改善し、「不安定感」、「だるさ感」および疲労に伴う統合的な感覚を表す「合計点」が有意傾向で改善したことから、ホップ酸化反応産物(特にS−Fr)の疲労感改善効果は、日常の疲労感が高い被験者に対して顕著に表れることが示された。

Claims (7)

  1. ホップ酸化反応産物を含んでなる、精神疲労抑制用組成物。
  2. 精神疲労が脳機能への負荷に起因する、請求項1に記載の組成物。
  3. 精神疲労した対象に摂取させるための、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 食品組成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 1回摂取に適した単位包装形態である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. ホップ酸化反応産物がS−フラクションである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. S−フラクションを乾燥質量換算で1回当たりの摂取量で1〜500mgで含んでなる、請求項6に記載の組成物。

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