JP2020078928A - 塗装金属板及び絞りしごき缶 - Google Patents

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Abstract

【課題】絞り加工やしごき加工等の過酷な加工に付された場合にも、金属露出が有効に防止された製缶加工性に優れる塗装金属板、及び該塗装金属板から成る絞りしごき缶を提供する。【解決手段】少なくとも片面に塗膜を有する塗装金属板において、前記塗膜が、主成分としてポリエステル樹脂及び硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、90℃の試験条件における伸び率が200%以上であり、かつMEK抽出率が50%以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、塗装金属板及び該塗装金属板から成る絞りしごき缶に関するものであり、より詳細には、優れた製缶加工性を有し、金属露出のない絞りしごき缶を成形可能な絞りしごき缶用塗装金属板及び絞りしごき缶に関する。
アルミニウム等の金属板を熱可塑性樹脂フィルムで被覆した有機樹脂被覆金属板は、缶用材料として古くから知られており、この有機樹脂被覆金属板を絞り加工或いは絞り・しごき加工等に付して、飲料等を充填するためのシームレス缶とし、或いはこれをプレス成形してイージーオープンエンド等の缶蓋とすることもよく知られている。例えば、エチレンテレフタレート単位を主体とした熱可塑性ポリエステル樹脂から成る熱可塑性樹脂フィルムを有機樹脂被覆層として有する有機樹脂被覆金属板は、絞りしごき加工により成形されるシームレス缶(絞りしごき缶)用の製缶材料として使用されている(特許文献1等)。このような有機樹脂被覆金属板は、液体クーラントを使用しないドライ条件下で絞りしごき成形を行うことができるため、有機樹脂で被覆していない金属板を、多量の液体クーラントを用いて絞りしごき成形する場合に比して、環境負荷を大幅に低減できるという利点がある。
このような有機樹脂被覆金属板は、熱可塑性ポリエステル樹脂等の予め形成されたフィルムを金属板に熱接着により貼り合せる方法、押出された熱可塑性ポリエステル樹脂等の溶融薄膜を金属板に貼り合せる押出しラミネート法等のフィルムラミネート方式により製造されている。
しかしながら、フィルムラミネート方式は、薄膜での製膜が難しいことから、フィルムの厚みが厚くなりやすく、経済性の面で問題となる場合がある。
このようなフィルムラミネート方式による有機樹脂被覆金属板に代えて、薄膜での成膜が可能な塗装方式により、金属板上に塗膜を形成した塗装金属板から、ドライ条件下で絞りしごき缶を製造することも提案されている。
例えば下記特許文献1には、両面塗装金属板であって、加工後に缶内面側となる皮膜の乾燥塗布量が90〜400mg/100cm、ガラス転移温度が50〜120℃であり、かつ60℃の試験条件において、鉛筆硬度H以上、伸び率200〜600%及び動摩擦係数0.03〜0.25の範囲内にあるものであり、加工後に缶外面側となる皮膜の乾燥塗布量が15〜150mg/100cm、ガラス転移温度が50〜120℃であり、かつ60℃の試験条件において、鉛筆硬度H以上にあるものである絞りしごき缶用塗装金属板が提案されている。
特開2001−246695号公報 特許第3872998号
しかしながら、上記特許文献2では、缶内面側塗料としてポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂、缶外面側塗料としてポリエステル樹脂とアミノ樹脂及び/又はレゾール型フェノール樹脂を含有する塗料組成物を用いており、そのような塗料組成物から形成される塗膜は、塗膜中にフェノール樹脂又はアミノ樹脂の自己縮合体に由来する硬く脆いドメインが形成されるため、そうしたドメインが塗膜の加工性低下を招き、製缶加工性の点で問題となる場合があった。また、レゾール型フェノール樹脂を用いた場合においては、形成される塗膜がフェノール樹脂特有の黄色味を帯びるため、外面側への適用など用途によっては塗膜色調が問題となる場合があった。
従って本発明の目的は、上記のような問題を生じることがなく、ドライ条件下での絞りしごき成形等の過酷な加工にも適用可能な優れた製缶加工性を有する塗装金属板及び該塗装金属板から成る耐食性に優れた絞りしごき缶を提供することである。
本発明によれば、少なくとも片面に塗膜を有する塗装金属板において、前記塗膜が、主成分としてポリエステル樹脂、硬化剤(架橋剤)としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、前記塗膜の90℃の試験条件における伸び率が200%以上であり、かつMEK抽出率が50%以下であることを特徴とする塗装金属板が提供される。
本発明によれば、
1.前記塗膜のガラス転移温度が20〜120℃の範囲であること、
2.前記β−ヒドロキシアルキルアミド化合物が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して2〜10質量部の範囲で含有されていること、
3.前記塗膜の膜厚が30μm未満であること、
4.前記塗膜が水性塗料組成物から形成されること、
が好適である。
本発明によればまた、上記塗装金属板から成る絞りしごき缶が提供される。
本発明の絞りしごき缶においては、缶底部における内面及び/又は外面塗膜が、主成分としてポリエステル樹脂、硬化剤(架橋剤)としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、90℃の試験条件における伸び率が200%以上であり、かつMEK抽出率が50%以下であることが好適である。
本発明者らは、前述の背景を鑑み、本用途に適した塗装金属板について鋭意検討した結果、主成分としてポリエステル樹脂、及び硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、かつ特定の物性を有する塗膜が形成された塗装金属板を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明の塗装金属板は、塗膜の伸び性及び加工性に優れており、ドライ条件下での絞り加工やしごき加工のような過酷な加工に付された場合にも、缶胴側壁部での破断(本発明で破胴ということがある)が生じてしまうことはもちろん、金属露出が有効に防止されるため、優れた製缶加工性を有していると共に、塗膜は無色透明であり、塗膜色調が問題となるおそれもない。
また本発明の塗装金属板を用いて得られた絞りしごき缶は、優れた耐食性を有している。
(塗装金属板)
本発明の塗装金属板は、金属板の少なくとも片面に形成される塗膜が、ポリエステル樹脂を主成分とし、β−ヒドロキシアルキルアミド化合物を硬化剤とする水性塗料組成物から形成され、この塗膜の90℃の試験条件下における伸び率が200%以上、好ましくは250%以上、より好ましくは300〜500%、更に好ましくは320〜460%であること、及び該塗膜のMEK抽出率が50%以下、好ましくは2〜40%、より好ましくは3〜35%、更に好ましくは5〜30%であることが重要な特徴である。この理由について以下に説明する。
塗装金属板を用いて、ドライ条件下で絞りしごき缶を成形する場合、塗装金属板は、成形発熱による温度上昇を伴いながら、過酷な加工・変形に付されることになる。その際、塗装金属板上に形成された塗膜が、高い温度域での充分な伸び性や加工性を有していなければ、金属基材の加工に追従することができず、金属露出の発生や破胴が生じるおそれがある。また、特に絞りしごき缶を高速かつ連続で成形する場合においては、温度上昇がより顕著になるため、塗膜が充分な耐熱性を有していなければ、塗膜が軟化し金型に張り付くおそれがある。特に缶内面側においては、絞りしごき成形後、成形パンチから缶体を抜き取る時点で、缶体が成形パンチに張り付き、成形パンチと缶体が分離しにくくなる現象(ストリッピング性不良)が生じ、それにより缶体が座屈、または破胴するなど、生産性が低下するおそれがある。一方、缶外面側においては、塗膜が軟化することで耐キズ性が低下し、塗膜削れなどの外観不良が発生するおそれがある。従って、塗装金属板の塗膜には高い温度域での優れた伸び性や加工性、耐熱性が要求される。
本発明の塗装金属板は、上記材料から構成される塗膜が高い温度域で充分な伸び性や加工性を発現することで製缶加工性に優れ、絞りしごき成形時も金属露出の発生や破胴が有効に抑えられるため、絞りしごき缶用の塗装金属板として好適に用いることができる。さらに、塗膜の硬化度の尺度となるMEK抽出率を上記範囲内とすることにより、塗膜が充分な耐熱性を発現し、高速かつ連続で絞りしごき成形した際にも、塗膜が金型に張り付きにくく、生産性に優れている。
90℃の試験条件下における塗膜の伸び率が200%未満の場合は、製缶加工性が劣り、成形時に金属露出が発生しやすくなるため、缶内面側の場合は耐食性が劣るようになり、外面側の場合は露出した金属基材が金型と接触することで凝着が起こり、生産性に劣るようになる。一方MEK抽出率が50%より大きい場合は、塗膜の硬化性が低く、塗膜内に未架橋のポリエステル樹脂が多く存在することになるため、塗膜の耐熱性が低く、缶体を絞りしごき成形した際に、塗膜が金型に張り付きやすくなり、生産性が低下するおそれがある。
本発明の塗装金属板においては、上記塗膜のガラス転移温度(Tg)が20〜120℃、好ましくは25〜100℃、より好ましくは35〜85℃、更に好ましくは40〜80℃の範囲にあることが好適である。上記範囲よりもTgが高い場合には、加工性及び伸び性が低下し、成形により金属露出が発生するおそれがあり、製缶加工性に劣るようになる。一方で上記範囲よりもTgが低い場合には、塗膜の耐熱性が低下するため、高速かつ連続で絞りしごき成形した際に塗膜が金型に張り付きやすくなり、成形パンチの抜け性(ストリッピング性)等の不良による生産性の低下が懸念されると共に、塗膜のバリア性が低下し耐食性が劣るおそれがある。また缶内面側の場合は内容物のフレーバー(香気)成分を収着しやすくなり、耐フレーバー収着性が劣るようになる。また、缶外面側においては、塗膜削れなどの外面不良が発生するおそれがある。
また上記塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で30μm未満、好ましくは2μmより大きく20μm未満、より好ましくは3μm以上15μm未満、更に好ましくは4〜14μmの範囲にあることが好適である。上記範囲よりも薄膜の場合は、成形時に金属露出が発生しやすくなり、製缶加工性に劣るようになる。一方上記範囲よりも厚膜の場合は、更なる性能向上が望めず、経済性に劣るようになる。
(ポリエステル樹脂)
本発明の塗装金属板において、塗膜を構成する主成分としてポリエステル樹脂を用いるが、ここで主成分とは、塗膜を構成する成分の中で最も含有量(質量比率)の多いものとする。ポリエステル樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が、20〜120℃、好ましくは25〜100℃、より好ましくは35〜85℃、更に好ましくは40〜80℃の範囲にあることが好ましい。上記範囲よりもTgが高い場合には、形成される塗膜が硬くなり、塗膜の伸び率が不足し、所望の製缶加工性が得られない。一方上記範囲よりもTgが低い場合には、塗膜のバリア性が低下し、耐食性や耐レトルト性が劣るようになる。
本発明においては、Tgの異なる2種以上のポリエステル樹脂をブレンドして用いることもでき、Tgの異なるポリエステル樹脂をブレンドすることで、ポリエステル樹脂1種のみを使用した場合に比べ、耐衝撃性に優れ、外部から衝撃を受けても塗膜欠陥のできにくい塗膜を形成できる場合がある。
その場合においても、下記式(1)により算出されるポリエステル樹脂ブレンドのTgmixが上記のTg範囲にあれば良い。
1/Tgmix=(W/Tg)+(W/Tg)+…+(W/Tg
・・・(1)
+W+…+W=1
式中、Tgmixはポリエステル樹脂ブレンドのガラス転移温度(K)を表わし、Tg,Tg,…,Tgは使用する各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)単体のガラス転移温度(K)を表わす。また、W,W,…,Wは各ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1,ポリエステル樹脂2,…ポリエステル樹脂m)の質量分率を表わす。
本発明の塗装金属板においては、ポリエステル樹脂として、Tgが35℃〜100℃のポリエステル樹脂(A)と、Tgが−30℃〜25℃のポリエステル樹脂(B)を混合して用いることが、塗膜の耐衝撃性の観点から特に好ましい。その場合の配合比率は質量比で(A):(B)=98:2〜10:90、特に95:5〜30:70であることが好ましい。また、上記式(1)で算出されるガラス転移温度(Tgmix)が35℃以上であることが、耐食性や耐レトルト性の観点から好ましい。
またポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/gより高く50mgKOH/g未満、好ましくは10〜40mgKOH/g、更に好ましくは10mgKOH/g以上30mgKOH/g未満、特に好ましくは15mgKOH/g以上30mgKOH/g未満の範囲にあることが好適である。
すなわち、主成分となるポリエステル樹脂が適度なカルボキシル基量(酸価)を有することにより、塗膜の伸び性、加工性及び硬化性、更には金属基材との密着性を兼ね備えることが可能になる。上記範囲よりも酸価が小さい場合には、硬化剤との架橋点となるカルボキシル基が少なく充分な硬化性を得ることができないおそれがあり、また塗膜と金属基体間の密着性に寄与するカルボキシル基が少ないため、塗膜の密着性が劣るようになる。一方上記範囲よりも酸価が大きい場合には、硬化剤との架橋点が多くなることで硬化性には優れるものの、架橋密度が過度に高くなりやすく、塗膜の伸び性や加工性が低くなり、製缶加工性が劣るようになる。なお、上記範囲よりも酸価が大きい場合においても、硬化剤の配合量を少なくするなど調整すれば架橋密度を低く抑えることは可能であるが、その場合においては、架橋に用いられない遊離のカルボキシル基が塗膜に残存することになるため、塗膜の耐水性に劣るようになり、結果として充分な耐食性が得られない。
また、本発明においては、単独の酸価が上記範囲内にある2種以上のポリエステル樹脂をブレンドした混合ポリエステル樹脂を用いても良く、その場合においては各々のポリエステル樹脂の酸価と質量分率を乗じて得られた値の総和を、混合ポリエステル樹脂の平均酸価(Avmix)とする。
なお、単独の酸価が上記範囲内のポリエステル樹脂と、単独の酸価が上記範囲外のポリエステル樹脂をブレンドして用いる場合においては、全ポリエステル樹脂量(ポリエステル樹脂の総質量)に対して、単独の酸価が上記範囲内のポリエステル樹脂の含有量は30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%より大きいことが好ましい。また、単独の酸価が5mgKOH/g未満の低酸価ポリエステル樹脂をブレンドして用いる場合においては、全ポリエステル樹脂量(ポリエステル樹脂の総質量)に対して、前記低酸価ポリエステル樹脂の比率は60質量%未満、好ましくは50質量%未満、更に好ましくは40質量%未満とすることが好ましい。前記低酸価ポリエステル樹脂は、硬化剤との反応点となるカルボキシル基が極めて少ないため、前記低酸価ポリエステル樹脂自体は架橋構造に組み込まれにくく、焼付け後も未架橋のまま塗膜に残存する可能性が高い。従って、酸価が5mgKOH/g未満の低酸価ポリエステル樹脂の全体に占める割合が50質量%以上になると充分な硬化性を得ることができないおそれがある。
さらに、主成分として用いるポリエステル樹脂としては、ポリエステル樹脂(α)と、該ポリエステル樹脂(β)よりも酸価が高く、ポリエステル樹脂(α)との酸価の差が5mgKOH/g以上となるポリエステル樹脂(β)を混合した混合ポリエステル樹脂を用いることが、塗膜の加工性及び硬化性を、より高いレベルで両立する上で好ましい。
主成分として比較的酸価が低い、すなわち硬化剤(β−ヒドロキシアルキルアミド化合物等)との反応点となるカルボキシル基量が比較的少ないポリエステル樹脂(α)のみを使用した場合は、架橋点密度が抑えられ加工性に優れる塗膜を形成しやすい反面、反応点の少なさから架橋反応に時間がかかり、高いレベルまで硬化度が達するためには、焼付けに時間がかかり、硬化性に劣る傾向にある。一方、主成分として比較的酸価が高い、すなわちカルボキシル基量が比較的多いポリエステル樹脂(β)のみを使用した場合は、短時間で充分な硬化度が得られやすく、硬化性に優れる反面、得られる塗膜は架橋点密度が高くなりやすく、加工性は劣る傾向にある。
これらに対して、ポリエステル樹脂(α)とポリエステル樹脂(β)とを混合した混合ポリエステル樹脂を用いた場合、ポリエステル樹脂(α)のみを用いた場合に比して、塗膜全体の硬化性が顕著に向上する一方で、加工性においてはポリエステル樹脂(α)の特性が強く反映され、優れた加工性を発現でき、単独のポリエステル樹脂のみを用いる場合よりも、より高いレベルで硬化性と加工性を両立することが可能となる。
なお、ポリエステル樹脂(α)とポリエステル樹脂(β)の酸価の差は、上記の通り5mgKOH/g以上、好ましくは10〜30mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、酸価の差が5mgKOH/g未満では、酸価の異なるポリエステル樹脂を組み合わせることによる効果を得ることは難しい。
上記効果を効率よく奏するためには、ポリエステル樹脂(α)とポリエステル樹脂(β)の酸価の差が5mgKOH/g以上であることを条件に、ポリエステル樹脂(α)として酸価が5mgKOH/gより高く20mgKOH/g以下、特に5mgKOH/gより高く15mgKOH/g以下の範囲にあるポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂(β)として酸価が12mgKOH/g以上50mgKOH/g未満、特に15〜45mgKOH/gの範囲にあるポリエステル樹脂を用いることが好適であり、かかるポリエステル樹脂(α)とポリエステル樹脂(β)を、(α):(β)=95:5〜5:95、特に90:10〜10:90の範囲(質量比)となるように混合することが好適である。
なお、本発明においては、下記式(2)で表される、上記ポリエステル樹脂(α)及び(β)を混合して成る混合ポリエステル樹脂の酸価(Avmix)が、10〜40mgKOH/g、好ましくは10mgKOH/g以上30mgKOH/g未満の範囲にあることが好適である。
Avmix=Avα・Wα+Avβ・Wβ・・・(2)
式中、Avmixは混合ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)を表わし、Avα,Avβは使用するポリエステル樹脂(α)及び(β)の酸価(mgKOH/g)、Wα、Wβはポリエステル樹脂(α)及び(β)の質量分率を表わす。
本発明で用いるポリエステル樹脂は、製缶加工性という観点から、上述した範囲のガラス転移温度を有することが好適であり、より好適には上述した範囲の酸価を有することが望ましいが、それ以外は、水性塗料組成物に用いられる公知の水分散性ポリエステル樹脂及び/又は水溶性ポリエステル樹脂を使用することができる。
水分散性ポリエステル樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂は、親水基を成分として含むポリエステル樹脂であり、これらの成分は、ポリエステル分散体表面に物理吸着されていてもよいが、ポリエステル樹脂骨格中に共重合されていていることが特に好ましい。
親水基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの誘導体や金属塩、エーテル等であり、これらを分子内に含むことにより水に分散可能な状態で存在することができる。
親水性基を含む成分としては、具体的には無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のカルボン酸無水物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等の水酸基含有ポリエーテルモノマー、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸等のスルホン酸含有モノマーの金属塩、又はアンモニウム塩等を挙げることができる。
本発明においては、ポリエステル樹脂としては、親水基としてカルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
また、前記親水性基を含むモノマーと組み合わせて、ポリエステル樹脂を形成するモノマー成分としては、ポリエステル樹脂の重合に通常用いられるモノマーであれば特に限定されるものではない。ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、テルペン−マレイン酸付加体などの不飽和ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択し使用できる。
本発明においては、耐食性や耐レトルト性、フレーバー性等の観点からポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分に占めるテレフタル酸やイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の割合が60モル%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、特に限定はなく、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、4−プロピル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、などの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテルグリコール類、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカングリコール類、水添加ビスフェノール類、などの脂環族ポリアルコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、などの3価以上のポリアルコール等から1種、または2種以上の組合せで使用することができる。本発明においては、上記の多価アルコール成分の中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオールを、ポリエステル樹脂を構成する成分として好適に用いることができる。
ポリエステル樹脂は、上記の多価カルボン酸成分の1種類以上と多価アルコール成分の1種類以上とを重縮合させることや、重縮合後に多価カルボン酸成分、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等で解重合する方法、また、重縮合後に酸無水物、例えば 無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリト酸、エチレングリコールビストリメリテート二無水物等を開環付加させること等、公知の方法によって製造することができる。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂として、アクリル変性ポリエステル樹脂、例えば重合性不飽和モノマー(ビニル系モノマー)をポリエステル樹脂にグラフト重合させ、アクリル樹脂で変性したポリエステル樹脂を用いることもできるが、アクリル樹脂で変性されたポリエステル樹脂は、形成される塗膜の加工性や伸び性が劣る傾向にあると共に、その変性のために製造工程数が増え、製造コストも高くなる場合があるため、本発明に用いるポリエステル樹脂としては、アクリル樹脂で変性していないポリエステル樹脂(未アクリル変性ポリエステル樹脂)であることが好ましい。アクリル樹脂変性ポリエステル樹脂を用いる場合は、アクリル変性ポリエステル樹脂の総質量に占めるアクリル成分(重合性不飽和モノマーの重合体成分)の質量比率が10質量%未満、特に5質量%未満であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)はこれに限定されるものではないが、1,000〜100,000、特に3,000〜50,000の範囲にあることが好ましい。上記範囲よりも小さいと塗膜が脆くなり、加工性に劣る場合があり、上記範囲よりも大きいと塗料安定性が低下するおそれがある。
塗料組成物における水分散性ポリエステル樹脂の平均分散粒子径は10〜1,000nm、特に20〜500nmの範囲にあることが好ましい。
ポリエステル樹脂の水酸基価については、これに限定されるものではないが、20mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下であることが好ましい。硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を用いた場合においては、ポリエステル樹脂のカルボキシル基とは反応するが、水酸基とは反応しにくい、或いは反応しないと考えられるため、ポリエステル樹脂の水酸基の大部分は未反応のまま塗膜に残存することとなる。そのため、上記範囲よりも水酸基価が大きい場合は、残存する水酸基が多くなり、耐食性が低下するおそれがある。
[硬化剤(架橋剤)]
本発明の塗装金属板において、主成分であるポリエステル樹脂が有するカルボキシル基と架橋反応可能な官能基であるβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有するβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を硬化剤(架橋剤)として用いることが重要な特徴である。
βーヒドロキシアルキルアミド化合物から成る硬化剤は、硬化剤同士で自己縮合反応しにくい、或いは自己縮合反応しないことから、一般にポリエステル系塗料組成物の硬化剤として使用されているレゾール型フェノール樹脂やメラミン樹脂等のアミノ樹脂のように、硬化剤同士の自己縮合反応による加工性の低下を招くおそれがない。また自己縮合反応により硬化剤の反応点(官能基)が消費されてしまうことなく、必要最低限の量で十分な硬化性を得ることができるため効率的であると共に、塗膜中の硬化剤量も少なくでき、結果として伸び性や加工性、耐衝撃性等に優れた塗膜を形成することができる。さらに、フェノール樹脂を用いた場合のように、塗膜が着色するおそれがなく、無色透明な塗膜を形成できる。フレーバー性等の観点からは原料としてホルムアルデヒドを含まないことも利点である
硬化剤として用いるβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物としては、例えば下記一般式〔I〕で示されるものが挙げられる。
一般式〔I〕;
[HO―CH(R)―CH―N(R)―CO―]―A―[―CO―N(R’)―CH―CH(R’)―OH]
[式中、RおよびR’は水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基、RおよびR’は水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基又は一般式〔II〕で示されるもの、Aは多価の有機基、mは1又は2、nは0から2(mとnの合計は少なくとも2である。)を表わす。]
一般式〔II〕;HO―CH(R)―CH
[式中、Rは水素原子又は炭素数1から5までのアルキル基を表わす。]
前記一般式〔I〕中のAは、脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素であることが好ましく、炭素数2から20の脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素がより好ましく、炭素数4から10の脂肪族炭化水素が更に好ましい。
前記一般式〔I〕におけるmとnの合計は、2又は3又は4であることが好ましい。
またβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物における官能基当量としては、30〜500g/eqであることが好ましく、特に40〜200g/eqの範囲にあることが好ましい。尚、本明細書において官能基当量とは、分子量を硬化剤1分子当たりの官能基数(β−ヒドロキシアルキルアミド基数)で除した値であり、硬化剤の前記官能基1個当たりの分子量を意味する。官能基当量が上記範囲よりも小さいと架橋点間距離を長くとることができないため、塗膜の柔軟性が低下し、加工性が劣る。一方で上記範囲よりも大きすぎると硬化性が不足する。
更に硬化剤の平均分子量は1000以下であることが好ましい。上記範囲よりも大きいと、主剤のポリエステル樹脂との相溶性が低下するおそれがあり、反応性が低下する場合がある。さらに、硬化剤1分子当たりの平均官能基数が3以上であることが、良好な硬化性を得る上で好ましい。
上記一般式〔I〕で示されるもの中でも、硬化剤として用いるβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物としては、特にN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジポアミド[CAS:6334−25−4、製品例:EMS社製Primid XL552]やN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジポアミド[CAS:57843−53−5、製品例:EMS社製Primid QM1260]が好ましい。これらの中でも、硬化性や耐レトルト性の観点からN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジポアミドを用いることがより好ましい。N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジポアミドに比べて、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジポアミドの方が、ポリエステル樹脂との反応性が高く、硬化性に優れると共に、より緻密な架橋構造を形成することで、レトルト時にも塗膜が白化しにくく、耐レトルト性に優れた塗膜を形成することができる。
硬化剤は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、1〜15質量部で配合することが好ましく、2〜10質量部がより好ましく、3〜8質量部が更に好ましい。上記範囲よりも硬化剤の配合量が少ない場合には、充分な硬化性を得ることができず、一方上記範囲よりも硬化剤の配合量が多い場合には、経済性に劣るだけでなく、ポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対して、硬化剤の官能基が大過剰になると、硬化剤1分子が2分子以上のポリエステル樹脂と反応することが困難になり、結果として架橋形成に不備が生じ、かえって硬化性が低下する場合がある。また長期保存の安定性に劣るおそれがある。
また、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対する硬化剤のβ−ヒドロキシアルキルアミド基由来の水酸基の当量比(OH基/COOH基モル比)が、0.3〜3.0、好ましくは0.5〜2.5、より好ましくは0.8〜2.0の範囲にあることが望ましい。
(塗料組成物)
本発明の塗装金属板における上述した特性を有する塗膜は、ポリエステル樹脂を主成分とし、β−ヒドロキシアルキルアミド化合物を硬化剤として含有する水性塗料組成物から形成することができる。なお、本発明においては、水性塗料組成物中の塗膜を形成する固形成分(水や溶剤などの揮発する物質を除いた不揮発成分)の中で、最も含有量(質量割合い)が多い成分のことを、主成分(主剤)として定義する。なお、ここで、塗膜を形成する固形成分とは、塗装後の焼付けにより、塗膜として連続層を形成する有機成分のことを意味し、連続層を形成しない成分、例えば無機顔料、無機粒子(フィラー)等は、これに該当しない。
(水性媒体)
本発明に用いる水性塗料組成物は上述したポリエステル樹脂及び硬化剤と共に、水性媒体を含有する。
水性媒体としては、公知の水性塗料組成物と同様に、水、或いは水とアルコールや多価アルコール、その誘導体等の有機溶剤を混合したものを水性媒体として用いることができる。有機溶剤を用いる場合には、水性塗料組成物中の水性媒体全体に対して、1〜45質量%の量で含有することが好ましく、特に5〜30質量%の量で含有することが好ましい。上記範囲で溶剤を含有することにより、製膜性能が向上する。
このような有機溶媒としては、両親媒性を有するものが好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n―ブタノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールエチレングリコールモノブルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノールなどが挙げられる。
(塩基性化合物)
本発明に用いる塗料組成物において、ポリエステル樹脂に水分散性又は水溶性を付与するために、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和可能な塩基性化合物が含有されていることが好ましい。塩基性化合物としては塗膜形成時の焼付で揮散する化合物、すなわち、アンモニア及び/又は沸点が250℃以下の有機アミン化合物などが好ましい。
具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン等のアルキルアミン類、2−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジメチルアミノメチルプロパノール等アルコールアミン類等が使用される。またエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等多価アミンも使用できる。更に、分岐鎖アルキル基を有するアミンや複素環アミンも好適に使用される。分岐鎖アルキル基を有するアミンとしては、イソプロピルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、イソアミルアミン等の炭素数3〜6、特に炭素数3〜4の分岐鎖アルキルアミンが使用される。複素環アミンとしては、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等の1個の窒素原子を含む飽和複素環アミンが使用される。
本発明においては、上記の中でもトリエチルアミン、又は2−ジメチルアミノエタノールを好適に使用することができ、その使用量は、カルボキシル基に対して0.5〜1.5当量で用いるのがよい。
(潤滑剤)
本発明に用いる塗料組成物には、必要に応じ潤滑剤を含有することができる。ポリエステル樹脂100質量部に対し、潤滑剤0.1質量部〜10質量部を加えることが好ましい。
潤滑剤を加えることにより、成形加工時の塗膜の傷付きを抑制でき、また成形加工時の塗膜の滑り性を向上させることができる。
塗料組成物に加えることのできる潤滑剤としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、ラノリン、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバろう、およびシリコン系化合物、ワセリンなどを挙げることができる。これらの潤滑剤は一種、または二種以上を混合し使用できる。
(その他)
本発明に用いる塗料組成物には、上記成分の他、従来より塗料組成物に配合されている、レベリング剤、顔料、消泡剤等を従来公知の処方に従って添加することもできる。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂と併せてその他の樹脂成分が含まれていても良く、例えばポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、アクリルアミド系化合物、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水分散或いは水溶性樹脂が含まれていても良い。
本発明に用いる塗料組成物においては、ポリエステル樹脂が固形分として5〜55質量%の量で含有されていることが好適である。上記範囲よりも樹脂固形分が少ない場合には、適正な塗膜量を確保することができず、被覆性が劣るようになる。一方、上記範囲よりも樹脂固形分が多い場合には、作業性及び塗工性に劣る場合がある。
(塗装金属板の製造方法)
本発明の塗装金属板は、上述した塗料組成物を、ロールコーター塗装、スプレー塗装、ディップ塗装などの公知の塗装方法によって、金属板の少なくとも缶内面側となる面に、好適には両面に塗装した後、コイルオーブン等の加熱手段によって焼き付けることにより製造することができる。
塗料組成物の焼き付け条件は、ポリエステル樹脂、硬化剤、金属基材の種類、塗工量等によって適宜調節されるが、上述した塗料組成物は、充分な硬化性を得るために、焼付け温度が150℃〜350℃、好ましくは200℃より高く320℃以下の温度で、5秒以上、好ましくは5秒〜30分間、特に好ましくは5秒〜180秒間の条件で加熱硬化させることが好ましい。
塗装金属板に用いる金属板としては、これに限定されないが、例えば、熱延伸鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板、アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、ティンフリースチール、ニッケルメッキ鋼板、極薄スズメッキ鋼板、クロム処理鋼板などが挙げられ、必要に応じてこれらに各種表面処理、例えばリン酸クロメート処理やジルコニウム系の化成処理、ポリアクリル酸などの水溶性樹脂と炭酸ジルコニウムアンモン等のジルコニウム塩を組み合わせた塗布型処理等を行ったものが使用できる。
本発明においては、上記金属板の中でもアルミニウム板、具体的には「JIS H 4000」における3000番台、5000番台、6000番台のアルミニウム合金板を好適に使用することができる。金属板の厚みは、缶体強度、成形性の観点から0.1〜1.00mmの範囲内にあるのが良い。
また、上記塗装金属板の塗膜上に更に、有機樹脂被覆層としてポリエステル樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムをラミネートし、有機樹脂被覆塗装金属板を形成することもできる。
(絞りしごき缶)
本発明の絞りしごき缶は、上述した塗装金属板を用いる限り、従来公知の成形法により製造することができる。本発明の塗装金属板の塗膜が優れた伸び性や加工性、及び密着性を有していることから、過酷な絞り・しごき加工の際にも、破胴や缶口端での塗膜剥離を生じることなく、絞りしごき缶を成形することができる。なお、本発明の塗装金属板は、成形性や潤滑性に優れるものであるから、液体のクーラントを用いる場合はもちろん、液体クーラントを用いず、ドライ条件下で成形を行った場合でも、絞りしごき缶を成形することができる。
絞りしごき成形に先立って塗装金属板の表面にはワックス系潤滑剤、例えば、パラフィン系ワックス、白色ワセリン、パーム油、各種天然ワックス、ポリエチレンワックス等を塗布することが好ましく、これによりドライ条件下で効率よく絞りしごき加工を行うことができる。ワックス系潤滑剤が塗布された塗装金属板を、カッピング・プレスで、ブランクを打抜き、絞り加工法により、絞りカップを成形する。本発明においては、下記式(3)で定義される絞り比RDが、トータル(絞りしごき缶まで)で1.1〜2.6の範囲、特に1.4〜2.6の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりも絞り比が大きいと、絞りしわが大きくなり、塗膜に亀裂が発生して金属露出を発生するおそれがある。
RD=D/d・・・(3)
式中、Dはブランク径、dは缶胴径を表す。
次いで、前記絞りカップを、再絞り−一段又は数段階のしごき加工を行うが、この際本発明においては、成形パンチの温度が10〜80℃となるように温度調節されていることが好ましい。
本発明においては、下記式(4)で表されるしごき率Rが、25〜80%、特に40〜70%の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりもしごき率が低いと、十分に薄肉化できず、経済性の点で十分満足するものではなく、一方上記範囲よりもしごき率が高い場合には、金属露出のおそれがある。
R(%)=(tb−tw)/tb×100・・・(4)
式中、tbは元の塗装金属板の厚み、twは絞りしごき缶の缶胴側壁中央部の厚みを表す。
また本発明の絞りしごき缶においては、缶胴側壁中央部の厚みが、缶底(中央部)の厚みの20〜75%、好ましくは30〜60%の厚みであることが好適である。
得られた絞りしごき缶を、常法に従って底部のドーミング成形及び開口端縁のトリミング加工を行う。その後、所望により、一段或いは多段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻締用の缶とする。また、絞りしごき缶を成形した後、その上部を変形させてボトル形状にすることもできるし、底部を切り取って、他の缶端を取り付けてボトル形状とすることもできる。
本発明の塗装金属板から成る絞りしごき缶においては、製缶時の加工度が低い缶底部の内面及び/又は外面塗膜において、塗装金属板の特徴、すなわち塗膜が主成分としてポリエステル樹脂、硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、90℃の試験条件における伸び率が200%以上であり、かつMEK抽出率が50%以下であるという特徴を確認することができる。
本発明の塗装金属板は、優れた製缶加工性を有することから、絞りしごき缶の製造のように過酷な加工にも耐え、金属露出が有効に抑えられた耐食性に優れた絞りしごき缶を成形することができる。したがって、本発明の塗装金属板は、絞りしごき缶以外の用途、例えば従来公知の製法による絞り缶(DR缶)、深絞り缶(DRD缶)、引っ張り絞りしごき加工缶(DTR缶)、又は缶蓋等にも好適に適用できる。缶蓋の形状は、内容物注出用開口を形成するためのスコア及び開封用のタブが設けられたイージーオープン蓋等の従来公知の形状を採用することができ、フルオープンタイプ又はパーシャルオープンタイプ(ステイ・オン・タブタイプ)の何れであってもよい。
以下製造例、実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。実施例において単に部とあるものは質量部を示す。
ポリエステル樹脂A〜Kの各種測定項目は以下の方法に従った。なお、ポリエステル樹脂A〜Kはいずれも未アクリル変性ポリエステル樹脂である。
(数平均分子量の測定)
ポリエステル樹脂の固形物を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。
(ガラス転移温度の測定)
ポリエステル樹脂の固形物を用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
(酸価の測定)
ポリエステル樹脂の固形物1gを10mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂酸価(mgKOH/g)を求めた。指示薬はフェノールフタレインを用いた。ポリエステル樹脂が溶解しない場合には、溶媒にテトラヒドロフラン等の溶媒を用いた。
(モノマー組成の測定)
ポリエステル樹脂の固形物30mgを重クロロホルム0.6mlに溶解させ、1H−NMR測定し、ピーク強度からモノマー組成比を求めた。なおごく微量な成分(全モノマー成分に対して1モル%未満)は除き、組成比を決定した。
(水性塗料組成物の調製)
(製造例1)
主成分のポリエステル樹脂としてポリエステル樹脂A(酸価:23mgKOH/g、Tg:80℃、Mn=8,000、モノマー組成:テレフタル酸成分/エチレングリコール成分/プロピレングリコール成分=50/10/40mol%)、硬化剤のβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物として、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジポアミド[EMS−GRILTECH社製Primid QM1260;表中「β−ヒドロキシアルキルアミドA」と表記]を用いた。ポリエステル樹脂Aの水分散液(樹脂固形分濃度:30質量%、イソプロピルアルコール濃度:18質量%)を333部(固形分100部)、予めイオン交換水を用いて調整しておいたβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物の水溶液(固形分濃度:30質量%)を16.7部(固形分5部)をガラス容器内に入れて10分間攪拌し、固形分濃度30質量%、固形分配合比がポリエステル樹脂/硬化剤=100/5(質量比)の水性塗料組成物を得た。
(製造例2〜4)
表1に示すように、ポリエステル樹脂を、ポリエステル樹脂B(Tg:67℃、Mn=9,000、酸価:18mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=36/14/24/26mol%)、ポリエステル樹脂C(Tg:40℃、Mn=9,000、酸価:17mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/アジピン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=28/15/7/25/25mol%)、ポリエステル樹脂E(Tg:40℃、Mn=6,000、酸価:29mgKOH/g)に変えた以外は、製造例1と同様に行い、水性塗料組成物を得た。
(製造例5)
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂H(Tg:−25℃、Mn=17,000、酸価:11mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/セバシン酸成分/1,4−ブタンジオール成分=14/17/19/50mol%)を、質量比で90:10となるように混合したもの(AVmix:21.8mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、水性塗料組成物を調製した。
(製造例6〜15)
表1に示す各種ポリエステル樹脂、或いは、固形分配合比となるようにした以外は、製造例5と同様に水性塗料組成物を調製した。ポリエステル樹脂としては、前述のポリエステル樹脂の他は、ポリエステル樹脂G(Tg:8℃、Mn=19,000、酸価:8mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/セバシン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=30/5/15/22/28mol%)、ポリエステル樹脂F(Tg:20℃、Mn=17,000、酸価:8mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/セバシン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=31/7/12/30/20mol%)、ポリエステル樹脂D(Tg:80℃、Mn=5,000、酸価:36mgKOH/g)を用いた。なお、製造例15においては、β−ヒドロキシアルキルアミド化合物としてN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジポアミド(EMSーGRILTECH社製Primid XL−552;表中「β−ヒドロキシアルキルアミドB」と表記)を用いた。
(製造例16〜18)
表1に示すようにポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂I(Tg:70℃、Mn=3,000、酸価:58mgKOH/g)、又はポリエステル樹脂J(Tg:46℃、Mn=3,000、酸価:50mgKOH/g)、又はポリエステル樹脂K(Tg:52℃、Mn=17,000、酸価:5mgKOH/g、モノマー組成:テレフタル酸成分/イソフタル酸成分/アジピン酸成分/エチレングリコール成分/ネオペンチルグリコール成分=23/23/4/24/26mol%)を用いた以外は、製造例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
(製造例19)
ポリエステル樹脂として、アクリル樹脂で変性したアクリル変性ポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂L(Tg:60℃、酸価:15mgKOH/g、アクリル成分の含有率:70質量%)用いた以外は、製造例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
(製造例20)
ポリエステル樹脂として、アクリル樹脂で変性したアクリル変性ポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂M(Tg:50℃、酸価:30mgKOH/g、アクリル成分の含有率:40質量%)用いた以外は、製造例1と同様に水性塗料組成物を調製した。
(製造例21)
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂N(Tg:4℃、Mn=8,000、酸価:3mgKOH/g未満)を、質量比で50:50となるように混合したものを用いた以外は、製造例1と同様に行い、水性塗料組成物を調製した。
(製造例22)
ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂C、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂、硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸(アミン中和物)を用いて、常法により水性塗料組成物(固形分濃度:30質量%、固形分配合比:ポリエステル樹脂/硬化剤/硬化触媒=100/15/1)を調製した。
(塗装金属板の作成)
(実施例1〜18、比較例1〜5、参考例1〜2)
各製造例で得られた水性塗料組成物を用い、各実施例、比較例、参考例の塗装金属板を作成した。なお、塗装金属板の内面側と外面側の塗膜は同じ水性塗料組成物を用いて形成した。金属板としてリン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.28mm、表面処理皮膜中のクロム重量:20mg/m)を用い、まず、成形後に外面側となる面に、乾燥・焼付け後の塗膜の膜厚が3μmになるように、水性塗料組成物をバーコーターにて塗装し120℃で60秒間乾燥を行った。その後、反対側の内面側となる面に、乾燥・焼付け後の塗膜の膜厚が、表2に示す膜厚となるよう水性塗料組成物をバーコーターにて塗装し、250℃(オーブンの炉内温度)で60秒間焼付けを行なうことにより作成した。
各製造例の塗料組成物で得られる塗膜の性能、および上記方法で得られた各実施例、比較例、参考例の塗装金属板において、下記の試験方法に従って試験を行った。結果を表2に示す。
[塗膜のガラス転移温度(塗膜Tg)]
表2に示す各実施例および比較例、参考例で用いた水性塗料組成物を、各実施例、比較例、参考例における内面塗膜の膜厚と同じになるようにアルミニウム箔上にバーコーターにて塗装し、250℃で60秒間焼付けを行い、アルミニウム箔上に塗膜を形成した。次いで、塗膜を形成したアルミニウム箔を希釈した塩酸水溶液中に浸漬させてアルミニウム箔を溶解させることで、フィルム状の塗膜を取り出し、十分に蒸留水で洗浄して乾燥させ、測定用サンプルとした。得られた塗膜について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、下記の条件で塗膜のガラス転移温度を測定した。なお、2nd−run(昇温)において、補外ガラス転移開始温度、すなわち低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度を塗膜のガラス転移温度(塗膜Tg)とした。
装置:セイコーインスツルメント株式会社製 DSC6220
試料量:5mg
昇温速度:10℃/分
温度範囲:−80〜200℃(昇温、冷却、昇温)
環境条件:窒素気流下
なお、両面に塗膜を形成した塗装金属板から測定用サンプルを得る場合は、測定しない片側の塗膜をサンドペーバーで削るなどして除去した後、希釈した塩酸水溶液中に浸漬させるなど常法により金属基材(金属板)を溶解させ、フィルム状のフリー塗膜を取り出し、十分に蒸留水で洗浄して乾燥させることで、測定用サンプルを得ることができる。
(塗膜伸び率)
表2に示す各実施例および比較例で用いた水性塗料組成物を、各実施例、比較例の内面塗膜の膜厚と同じになるようにアルミニウム箔上にバーコーターにて塗装し250℃で60秒間焼付けを行い、アルミニウム箔上に塗膜を形成した。次いで、塗膜を形成したアルミニウム箔を5mm幅で30mm長さに切り、希釈した塩酸水溶液中に浸漬させてアルミニウム箔を溶解させ、フィルム状のフリー塗膜を取り出し、十分に蒸留水で洗浄して乾燥させ、5mm幅で30mmの測定用サンプルを得た。上下5mmをつかみ代として、引張り試験機にチャッキングし、チャック間距離(サンプルの元長さ)が20mmとなるようにした。下記条件で引張試験を行い、90℃の試験条件下における塗膜の破断までの伸び率(破断伸度)を測定した。結果を表2に示す。
装置:株式会社島津製作所製 オートグラフAG−IS
測定雰囲気温度:90℃
引っ張り速度:500mm/min
伸び率は下記式(5)で求められる。なお、ここで破断時のサンプルの伸び量(伸びた長さ)は、破断時の試験機のクロスヘッド移動量で代用した。
伸び率(%)=100×(ΔL/L)・・・(5)
:サンプルの元長さ(mm)
ΔL:破断時のサンプルの伸び量(mm)
ここで、全く伸びずに破断したものを「測定不可」と評価した。
なお、両面に塗膜を形成した塗装金属板から測定用サンプルを得る場合は、測定しない片側の塗膜をサンドペーバーで削るなどして除去した後、5mm幅で30mm長さに塗装金属板を切りだし、希釈した塩酸水溶液中に浸漬させるなど常法により金属基材(金属板)を溶解させ、フィルム状のフリー塗膜を取り出し、十分に蒸留水で洗浄して乾燥させることで、測定用サンプルを得ることができる。
(MEK抽出率)
表2に示す各実施例および比較例、参考例で用いた水性塗料組成物を、各実施例、比較例、参考例の内面塗膜の膜厚と同じになるようにリン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.28mm、表面処理皮膜中のクロム重量:20mg/m)にバーコーターにて塗装し250℃ で60秒間焼付けを行い、塗装金属板を作製した。塗装金属板から5cm×5cmサイズの試験片を切り出し、試験片の質量測定後(W1)、200mlのMEK(メチルエチルケトン)を用い、沸騰しているMEK(80℃還流下)に試験片を1時間浸漬させ、沸点で1時間のMEK抽出を行った。抽出後の試験片をMEKで洗浄後、120℃1時間の条件で乾燥し、抽出後の試験片の質量(W2)を測定した。さらに塗膜を濃硫酸による分解法で剥離・除去し、洗浄・乾燥し、試験片の質量(W3)を測定した。塗装金属板の塗膜のMEK抽出率(質量%)は下記式(6)で求められる。結果を表2に示す。
MEK抽出率(%)=100×(W1−W2)/(W1−W3)・・・(6)
(塗膜張り付き性評価)
表2に示す各実施例および比較例、参考例で用いた水性塗料組成物を、各実施例、比較例、参考例の内面塗膜の膜厚と同じになるようにリン酸クロメート系表面処理アルミニウム板(3104合金、板厚:0.28mm、表面処理皮膜中のクロム重量:20mg/m)にバーコーターにて塗装し、250℃で60秒間焼付けを行い、塗装金属板を作製した。塗装金属板を2cm×5cmの大きさに切り出し、試験片とした。6cm角の金属板(アルミニウム板)の上に、塗膜面が金属板側にくるように試験片をのせ、加熱プレスを用い、150℃の熱盤にて40MPaで1分間加熱加圧した後、金属板と試験片を取り出し、室温に戻してから試験片をはがし、その状態を評価した。
装置:株式会社井元製作所製 電動油圧加熱成形機
評価基準は次の通りである。
○:金属板上に塗膜の張り付きが見られない。
△:金属板上に塗膜の張り付きがごくわずかに見られる。
×:金属板上に塗膜の張り付きが部分的に見られる。
(絞りしごき缶の作成)
上記の方法で作成した各実施例、比較例、参考例の塗装金属板の両面に、パラフィンワックスを塗油した後、直径142mmの円形に打ち抜き、浅絞りカップを作成した。次いで、この浅絞りカップを、油圧プレスを用いて、ドライ条件下で外径Φ66mmのパンチ(温調あり)を速度1m/sにて移動させ、まず再絞り加工を行いし、次いで三回のしごき加工を施し、ドーミング成形を行い、トータル絞り比2.15、しごき率64%の絞りしごき缶(缶高さ:約130mm、缶胴側壁中央部の厚みが缶底中央部の厚みの38.5%)を得た。
(製缶加工性評価)
上記で得られた絞りしごき缶において、硫酸銅試験により成形後の内面塗膜の被覆性(金属露出度合い)を評価した。缶体のフランジより約10mmまで硫酸銅水溶液[20部の硫酸銅(II)五水和物、70部の脱イオン水、及び10部の塩酸(36%)を混合して調製]を満たし、約2分間放置後させた。次いで、缶体から硫酸銅溶液を出し、水洗して缶を切り開き、内面側の銅の析出の程度により金属露出度合いを観察し製缶加工性を評価した。
評価基準は以下の通りである。
◎:金属露出が認められない。
○:缶胴側壁の最も加工が厳しく薄肉化されている部位の一部で金属露出が認められ
る。
△:缶胴側壁の最も加工が厳しく薄肉化されている部位で金属露出が認められる。
×:缶胴側壁の広範囲において金属露出が認められる。
表1に各製造例における水性塗料組成物の組成(ポリエステル樹脂の種類、硬化剤の種類、固形分配合比等)、表2に各実施例、比較例、参考例の塗装金属板における塗装条件(水性塗料組成物の種類、塗膜厚み)、塗膜性能、及び各種評価結果を示す。
本発明の塗装金属板は、高い温度域での伸び性や耐熱性を有する塗膜を有していることから製缶加工性に優れ、絞りしごき缶の製造に好適に使用でき、得られる絞りしごき缶は、金属露出が有効に防止されていることから、飲料容器等に好適に使用できる。
本発明によればまた、上記塗装金属板から成る絞りしごき缶が提供される。
本発明の絞りしごき缶においては、缶胴側壁中央部の厚みが、缶底部の厚みの20〜75%の厚みであることが好適である。
本発明の絞りしごき缶においては、缶底部における内面及び/又は外面塗膜が、主成分としてポリエステル樹脂、硬化剤(架橋剤)としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、90℃の試験条件における伸び率が200%以上であり、かつMEK抽出率が50%以下であることが好適である。

Claims (8)

  1. 少なくとも片面に塗膜を有する塗装金属板であって、前記塗膜が、主成分としてポリエステル樹脂及び硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、前記塗膜の90℃の試験条件における伸び率が200%以上であり、かつ前記塗膜のMEK抽出率が50%以下であることを特徴とする塗装金属板。
  2. 前記塗膜のガラス転移温度が20〜120℃の範囲である請求項1記載の塗装金属板。
  3. 前記β−ヒドロキシアルキルアミド化合物が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して2〜10量部の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の塗装金属板。
  4. 前記塗膜の膜厚が30μm未満である請求項1〜3の何れかに記載の塗装金属板。
  5. 前記塗膜が水性塗料組成物から形成される請求項4記載の塗装金属板。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の塗装金属板から成る絞りしごき缶。
  7. 缶胴側壁中央部の厚みが、缶底部の厚みの20〜75%の厚みであることを特徴とする請求項6記載の絞りしごき缶。
  8. 缶底部における内面及び/又は外面塗膜が、主成分としてポリエステル樹脂及び硬化剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を含有し、90℃の試験条件における伸び率が200%以上であり、かつMEK抽出率が50%以下である請求項6又は7記載の絞りしごき缶。
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