JP2020077774A - 正孔輸送剤、正孔輸送層形成用組成物、正孔輸送膜の製膜方法、並びに、光電変換素子及び太陽電池 - Google Patents

正孔輸送剤、正孔輸送層形成用組成物、正孔輸送膜の製膜方法、並びに、光電変換素子及び太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換素子の光電変換効率の低下を抑制できる正孔輸送剤、及びこの正孔輸送剤を含有する正孔輸送層形成用組成物、また光電変換効率の低下を抑制できる正孔輸送膜の製造方法、並びに、光電変換効率を維持できる光電変換素子及び太陽電池を提供する。【解決手段】特定の式で表わされる化合物からなる正孔輸送剤、この正孔輸送剤を含む正孔輸送層形成用組成物、この組成物を塗布する正孔輸送膜の製膜方法、特定の式で表わされる化合物からなる正孔輸送剤を含有する正孔輸送層を備えた光電変換素子及び太陽電池。【選択図】図1

Description

本発明は、正孔輸送剤、正孔輸送層形成用組成物、正孔輸送膜の製膜方法、並びに、光電変換素子及び太陽電池に関する。
光電変換素子は、各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。太陽電池は、非枯渇性の太陽エネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が期待されている。その中でも、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、ペロブスカイト化合物ということがある。)として金属ハロゲン化物を用いた太陽電池が、比較的高い光電変換効率を達成できるため、注目されている(例えば、非特許文献1)。
このような太陽電池においては、ペロブスカイト化合物だけではなく、正孔輸送層及びそれを形成する化合物についても、研究開発が進められている。例えば、非特許文献2には、正孔輸送層を形成する正孔輸送材料として、ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のポリマーが記載されている。また、特許文献1には、光吸収剤としてのペロブスカイト化合物と併用するものではないが、光電変換素子の電荷輸送層を形成する好適な化合物として、低分子化合物の芳香族アミン誘導体が記載されている。
特開2013−149446号公報
Science, 2012, vol.338, p.643−647 Dalton Trans., 2014, 43, p.5247−5251
光吸収剤として用いられるペロブスカイト化合物は、一般に、水若しくは熱に対する安定性が十分ではなく、分解しやすいことが知られている。実際に、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた太陽電池は、初期(製造直後)の光電変換効率が高いものであっても、使用環境下(大気中)において経時により光電変換効率が徐々に低下する。特に高湿環境(例えば湿度80%RH以上の環境)下では光電変換効率が著しく低下する(耐湿耐久性に劣る)。そのため、ペロブスカイト化合物を用いた太陽電池の実用化に際しては、光電変換効率の向上の他にも、使用環境において光電変換効率を維持する特性(耐久性)の改善が求められている。
本発明は、光吸収剤としてペロブスカイト化合物を含有する感光層と正孔輸送層とを備えた光電変換素子について、正孔輸送層に含有されることにより、光電変換効率の低下を抑制できる正孔輸送剤、及びこの正孔輸送剤を含有する正孔輸送層形成用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、ペロブスカイト化合物を含有する感光層と正孔輸送層とを備えた光電変換素子について、正孔輸送層として用いることにより、光電変換効率の低下を抑制できる正孔輸送膜を製造する方法を提供することを課題とする。
更に、本発明は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いていながらも、光電変換効率を維持できる光電変換素子、及びこの光電変換素子を用いた太陽電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、ペロブスカイト化合物を含有する感光層を有する光電変換素子に設けられる正孔輸送層に後述する式(S1)で表される特定の化合物を含有させることにより、得られる光電変換素子について、光電変換効率の低下を抑制できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>下記式(S1)で表わされる化合物からなる正孔輸送剤。
Figure 2020077774
式(S1)中、Arx1及びArx2はアリール基又はヘテロアリール基を示す。
Ar及びArはアリーレン基又はヘテロアリーレン基を示す。
は置換基を示す。
n1及びn2は0以上の整数である。ただし、n1+n2≧1である。
n3は3以上の整数である。
ただし、上記化合物は下記式1−a〜1−iのいずれかで表される基を少なくとも1つ有している。
Figure 2020077774
式中、Rは水素原子又は置換基を示す。*は上記化合物との連結部位を示す。eは1以上の整数である。環Aはe個の連結部位それぞれが結合する上記化合物を構成する原子を連結する原子鎖とともに5員若しくは6員の環を形成するのに必要な原子群を示す。
<2>化合物が、式1−a〜1−iのいずれかで表される基を少なくとも2つ有する<1>に記載の正孔輸送剤。
<3>式(S1)中のArx1及びArx2の少なくとも一方が、式1−a〜1−iのいずれかで表わされる基を有している、<1>又は<2>に記載の正孔輸送剤。
<4>化合物が、式1−a〜1−eのいずれかで表わされる基である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の正孔輸送剤。
<5>上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の正孔輸送剤を含有する正孔輸送層形成用組成物。
<6>下記式(S1)で表される化合物からなる正孔輸送剤を含有する正孔輸送層形成用組成物を塗布する、正孔輸送膜の製膜方法。
Figure 2020077774
式(S1)中、Arx1及びArx2はアリール基又はヘテロアリール基を示す。
Ar及びArはアリーレン基又はヘテロアリーレン基を示す。
は置換基を示す。
n1及びn2は0以上の整数である。ただし、n1+n2≧1である。
n3は3以上の整数である。
ただし、上記化合物は下記式1−a〜1−iのいずれかで表される基を少なくとも1つ有している。
Figure 2020077774
式中、Rは水素原子又は置換基を示す。*は上記化合物との連結部位を示す。eは1以上の整数である。環Aはe個の連結部位それぞれが結合する上記化合物を構成する原子を連結する原子鎖とともに5員若しくは6員の環を形成するのに必要な原子群を示す。
<7>上記化合物が式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される基を少なくとも一つ有する場合、正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、熱処理及び活性エネルギー線照射処理の少なくとも1種の後処理を行う、<6>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<8>正孔輸送層形成用組成物が重合開始剤を含有する、<7>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<9>正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、重合開始剤と接触させ、次いで活性エネルギー線照射処理を行う、<7>又は<8>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<10>上記化合物が式1−aで表される基を少なくとも一つ有する場合、正孔輸送層形成用組成物が、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物を含有する、<6>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<11>上記化合物が式1−aで表される基を少なくとも一つ有する場合、正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、熱処理、酸処理、塩基処理及び活性エネルギー線照射処理の少なくとも1種の後処理を行う、<6>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<12>正孔輸送層形成用組成物が、 水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物、及び光酸発生剤の少なくとも1種を含有する、<11>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<13>後処理を行う前に、正孔輸送層形成用組成物の塗布膜に、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物、及び光酸発生剤の少なくとも1種と接触させる、<11>又は<12>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<14>上記化合物が式1−c、式1−d及び式1−eのいずれかで表される基を少なくとも一つ有し、かつ正孔輸送層形成用組成物が、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物を含有する場合、正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、熱処理、酸処理及び塩基処理の少なくとも1種の後処理を行う、<6>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<15>上記化合物が式1−c、式1−d及び式1−eのいずれかで表される基を少なくとも一つ有する場合、正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物と接触させ、次いで熱処理、酸処理及び塩基処理の少なくとも1種の後処理を行う、<6>に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
<16>光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する電極と、対極と、導電性支持体と対極との間の正孔輸送層と、を有する光電変換素子であって、
正孔輸送層が、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の正孔輸送剤を含有する、光電変換素子。
<17>正孔輸送層が、<6>〜<15>のいずれか1つに記載の正孔輸送膜の製造方法により成膜された正孔輸送膜からなる、<16>に記載の光電変換素子。
<18>光吸収剤が、ペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含む、<16>又は<17>に記載の光電変換素子。
<19>上記<16>〜<18>のいずれか1つに記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
本発明の正孔輸送剤及び正孔輸送層形成用組成物は、光吸収剤としてペロブスカイト化合物を含有する感光層を備えた光電変換素子の正孔輸送層を形成する材料として用いられることにより、光電変換効率の低下を抑制できる。また、本発明の正孔輸送膜を製造する方法は、光電変換素子の正孔輸送層の形成法として適用されることにより、光電変換効率の低下を抑制できる正孔輸送膜を製造することができる。本発明の正孔輸送膜を製造する方法により製造される正孔輸送膜は、光電変換素子の正孔輸送層として用いることにより、光電変換効率の低下を抑制できる。更に、本発明の光電変換素子及び太陽電池は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いてなり、光電変換効率を維持して優れた耐湿耐久性を示す。
図1は本発明の光電変換素子の好ましい態様について、層中の円部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。 図2は本発明の光電変換素子の厚い感光層を有する好ましい態様について模式的に示す断面図である。 図3は本発明の光電変換素子の別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図4は本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。 図5は本発明の光電変換素子の更に別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。
本発明において、各式の表記は、化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各式において、部分構造を、(置換)基、イオン又は原子等と称するが、本発明において、これらは、(置換)基、イオン又は原子等のほかに、上記式で表される(置換)基若しくはイオンを構成する元素団、又は、元素を意味することがある。
本発明において、「化合物からなる正孔輸送剤」とは、化合物を含む正孔輸送剤と同義であり、正孔輸送剤が、化合物のみで構成される態様と、化合物とこの化合物以外の成分とを含む態様とを包含する。他の成分としては、正孔輸送剤、正孔輸送材料等に通常用いられる成分を特に制限されることなく挙げられることができる。
本発明において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。更に、置換又は無置換を明記していない化合物については、目的とする効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有する化合物を含む意味である。このことは、置換基及び連結基等(以下、置換基等という)についても同様である。
本発明において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂環、芳香族環、ヘテロ環は更に縮環して縮合環を形成していてもよい。
また、本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の正孔輸送剤は、後述する式(S1)で表わされる化合物からなり、各種の電子デバイスに適用されることにより、正孔輸送材料として機能する。中でも、光電変換素子、特に光吸収剤としてペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子に好適に用いられる。
本明細書においては、本発明の正孔輸送剤、正孔輸送層形成用組成物、本発明の正孔輸送膜の製造方法について、光電変換素子及び太陽電池と合わせて、説明する。
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する電極と、対極と、導電性支持体と対極との間の正孔輸送層とを有している。この正孔輸送層は後述する式(S1)で表される化合物からなる正孔輸送剤を含有している。
上記構成を有する本発明の光電変換素子は、上述のように、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いていても、光電変換効率を維持する特性(耐湿耐久性)に優れる。その理由の詳細についてはまだ定かではないが、次のように考えられる。
すなわち、本発明で規定する式(S1)で表される化合物は、式(S1)中の繰り返し単位数(重合度)n3が3以上であるため(立体的に嵩高いアリールアミン構造(特定の繰り返し単位)を3以上有するため)、この化合物からなる正孔輸送膜は、アモルファス膜を形成し、かつ経時においても、結晶化の進行等による欠陥の発生が防止され、このアモルファス膜を維持できると考えられる。更に、この化合物を硬化させる場合、正孔輸送剤の全分子量に対する、後述する式1−a等で表される基(特定の基ともいう。)の質量割合が小さくなって、硬化時の体積変化による欠陥の発生を防止できると考えられる。
このような特定の繰り返し単位を有する構造と特定の式で表される基とを有する、式(S−1)で表される化合物は、正孔輸送機能を維持しつつも、成膜する際に上記構造による膜形成能が上記特定の基に発現する親和力によって増強される。この膜形成能の補強は式(S1)で表される化合物を硬化させると更に強化される。そのため、式(S1)で表される化合物は強固で疎水的な(密な)正孔輸送膜を形成すると考える。このような正孔輸送膜を光電変換素子が備えていると、正孔輸送膜を経由して(介して)水が感光層に侵入することを抑止して、ペロブスカイト化合物の分解(劣化)を防止できる。その結果、本発明の光電変換素子は、高湿度環境下でも、耐湿耐久性に優れると考えられる。
本発明において、電極(第一電極ともいう。)は、導電性支持体上(導電性支持体と対極との間)に感光層が設けられている。本発明において、導電性支持体上に感光層を有するとは、導電性支持体の表面に接して感光層を設ける(直接設ける)態様、及び、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を設ける態様を含む意味である。導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層としては、光電変換素子を用いた太陽電池の電池性能を低下させないものであれば特に限定されない。例えば、多孔質層、ブロッキング層、電子輸送層及び正孔輸送層等が挙げられる。本発明において、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状(図1参照)又は厚い膜状(図2参照)に設けられる態様、ブロッキング層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図3参照)に設けられる態様、電子輸送層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図4参照)に設けられる態様、及び、正孔輸送層の表面に薄い膜状又は厚い膜状(図5参照)に設けられる態様が挙げられる。感光層は、線状又は分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
本発明の光電変換素子において、第一電極と対極(第二電極ともいう。)とは対向しており、第一電極と対極が互いに接した状態で積層された態様と、第一電極と対極とが他の層(例えば正孔輸送層)を介して積層された態様(すなわち、第一電極と対極とが他の層を挟んで互いに対向配置されている態様)を包含する。
本発明の光電変換素子は、好ましくは、第一電極を形成する導電性支持体と、この第一電極に対向する第二電極との間に、感光層と、この感光層に積層され、かつ後述する式(S1)で表される化合物からなる正孔輸送剤を含有する正孔輸送層とを有している。本発明において、感光層と正孔輸送層とが積層されるとは、感光層と正孔輸送層とを直接積み重ねる(隣接する)ことに加えて、感光層と正孔輸送層とを他の層を介して積み重ねることを包含する。感光層と正孔輸送層との間に積み重ねられる層としては、本発明の作用効果を損なわない限り(例えば、後述する電荷移動等を妨げない限り)、材質や層厚等は特に限定されない。例えば、電荷移動等を妨げない程度の薄層が設けられてもよい。本発明においては、感光層及び正孔輸送層は互いに隣接していることが好ましい。
本発明の光電変換素子において、導電性支持体と第二電極との間に、感光層と正孔輸送層とを有する層構造は、下記の2つの態様を包含する。すなわち、導電性支持体から第二電極に向かって、感光層及び正孔輸送層がこの順で積層されてなる態様と、正孔輸送層及び感光層がこの順で積層されてなる態様とである。
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子及び太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層(積層構造)に形成されてもよい。
本発明において規定する材料及び各部材以外の、光電変換素子又は太陽電池に用いられる材料及び各部材は、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子又は太陽電池について、例えば特許文献1、非特許文献1及び2を参照することができる。
また、色素増感太陽電池に用いられる材料及び各部材についても参考にすることができる。色素増感太陽電池ついて、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
本発明の光電変換素子自体は、通常の製造方法により製造できるが、後述する本発明の正孔輸送膜の製造方法を経て(本発明の正孔輸送膜の製造方法により製造された正孔輸送膜を用いて)製造されることが好ましい。
以下、本発明の光電変換素子の好ましい形態について説明する。
図1〜図5において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、図1及び図2は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示してある。これらの微粒子は、好ましくは、導電性支持体11に対して水平方向及び垂直方向に詰まり(堆積又は密着して)、多孔質構造を形成している。
本明細書において、単に光電変換素子10という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A〜10Eを意味する。このことは、システム100、第一電極1についても同様である。また、単に感光層13という場合は、特に断らない限り、感光層13A〜13Cを意味する。同様に、正孔輸送層3という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3A及び3Bを意味する。
本発明の光電変換素子の好ましい態様として、例えば、図1に示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1に示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第二電極2と、第一電極1Aと第二電極2の間に、第一電極1Aを形成する感光層13Aに隣接する正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11a及び透明電極11bからなる導電性支持体11と、多孔質層12と、図1において断面領域aを拡大した拡大断面領域aに模式的に示されるように多孔質層12の表面に、ペロブスカイト化合物を含む感光層13Aとを有している。また透明電極11b上にブロッキング層14を有し、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成される。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離及び電荷移動効率が向上すると推定される。
図2に示す光電変換素子10Bは、図1に示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設け、かつ正孔輸送層を薄く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは感光層13Bに隣接して薄く設けられている。光電変換素子10Bは、図1で示した光電変換素子10Aに対して感光層13B及び正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである。光電変換素子10Cは、図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成され、正孔輸送層3Bは感光層13Cの表面に接して形成されている。光電変換素子10Cにおいて、正孔輸送層3Bは正孔輸送層3Aと同様に厚く設けることもできる。
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、電子輸送層15及び感光層13Cとを有している。正孔輸送層3Bは感光層13Cの表面に接して形成されている。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化又はフレキシブル化が可能になる。
図5に示す光電変換素子10Eは、本発明の光電変換素子の更に別の好ましい態様を模式的に示したものである。この光電変換素子10Eを含むシステム100Eは、システム100Aと同様に電池用途に応用したシステムである。
光電変換素子10Eは、第一電極1Eと、第二電極2と、第一電極1E及び第二電極2の間に電子輸送層4とを有している。第一電極1Eは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、正孔輸送層16及び感光層13Cとを有している。感光層13Cは正孔輸送層16の表面に接して形成されている。この光電変換素子10Eは、光電変換素子10Dと同様に、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として機能する。
すなわち、光電変換素子10において、導電性支持体11を透過して、又は第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体(カチオン)となる。
光電変換素子10A〜10Dにおいては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間を移動して導電性支持体11(透明電極11b)に到達する。導電性支持体11に到達した電子が外部回路6で仕事をした後、第二電極2及び正孔輸送層3を経由して、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。一方、光電変換素子10Eにおいては、光吸収剤から放出された電子は、感光層13Cから電子輸送層4を経て第二電極2に到達し、外部回路6で仕事をした後に導電性支持体11(透明電極11b)及び正孔輸送層16を経て、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10においては、このような、光吸収剤の励起及び電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
光電変換素子10A〜10Dにおいて、感光層13から導電性支持体11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無及びその種類等により、異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、本発明において、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部及び半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
上記他の層としてのブロッキング層14が導体又は半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。また、電子輸送層15でも電子伝導が起こる。
本発明の光電変換素子は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。
以下、本発明の光電変換素子及び太陽電池に用いるのに好適な部材及び化合物について、説明する。
<電極(第一電極)1>
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、図1〜図5に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14及び電子輸送層15及び正孔輸送層16の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点及び短絡防止の点で多孔質層12及びブロッキング層14を有していることが更に好ましい。
また、第一電極1は、光電変換素子の生産性の向上、薄型化又はフレキシブル化の点で、有機材料で形成された、電子輸送層15又は正孔輸送層16を有することが好ましい。
− 導電性支持体11 −
導電性支持体11は、導電性を有し、感光層13等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体11は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された構成、又は、ガラス若しくはプラスチックの支持体11aと、この支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。
中でも、図1〜図5に示されるように、ガラス又はプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電性支持体11が更に好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラス及びプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム:ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
導電性支持体11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
支持体11a及び導電性支持体11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることが更に好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.02〜25μmであることが更に好ましく、0.025〜20μmであることが特に好ましい。
導電性支持体11又は支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電性支持体11又は支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜及び低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
− ブロッキング層14 −
本発明においては、光電変換素子10A〜10Cのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電性支持体11と、多孔質層12、感光層13又は正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子において、例えば感光層13又は正孔輸送層3と、透明電極11b等とが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
ブロッキング層14を、光吸収剤を担持する足場として機能させることもできる。
このブロッキング層14は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けられてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電性支持体11と電子輸送層15との間に設けられてもよく、光電変換素子10Eの場合、第二電極2と電子輸送層4との間に設けられてもよい。
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されないが、可視光を透過する物質であって、導電性支持体11(透明電極11b)又は第二電極等に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電性支持体11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯や光吸収剤の基底状態のエネルギー準位より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmが更に好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
− 多孔質層12 −
本発明においては、光電変換素子10A及び10Bのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。ブロッキング層14を有している場合、多孔質層12はブロッキング層14上に形成されることが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子が堆積又は密着してなる、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電性支持体11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料又は半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(光吸収剤として用いるペロブスカイト化合物を除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、又はカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤ及びカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
金属のカルコゲニドとしては、特に限定されないが、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム又はタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型又はルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されないが、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。中でも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
多孔質層12を形成する材料は、中でも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム若しくはケイ素の酸化物、又はカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタン又は酸化アルミニウムが更に好ましい。
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物及びカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
多孔質層12の膜厚は、特に限定されないが、通常0.05〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜100μmの範囲である。太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。
− 電子輸送層15−
本発明においては、光電変換素子10Dのように、好ましくは、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有している。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電性支持体11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料としては、特に限定されないが、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PC61BM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、又は、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
− 正孔輸送層16−
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、透明電極11bの表面に正孔輸送層16を有している。正孔輸送層16は、励起した光吸収剤が電荷分離して発生する正孔を導電性支持体11に輸送する正孔輸送機能(透明電極11bから注入された電子を光吸収剤の酸化体に輸送(補充)する機能)を有しており、形成される位置が異なること以外は、後述する正孔輸送層3と同じである。
− 感光層(光吸収層)13 −
感光層13は、好ましくは、多孔質層12(光電変換素子10A及び10B)、ブロッキング層14(光電変換素子10C)、電子輸送層15(光電変換素子10D)又は正孔輸送層16(光電変換素子10E)の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の凹部内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、感光層13中には光吸収剤が含まれる。この光吸収剤は、後述するペロブスカイト化合物を少なくとも1種含有している。また、感光層は上記ペロブスカイト化合物以外に、例えば金属錯体色素、有機色素等の光吸収成分を有してもよい。感光層13中に含まれる光吸収剤は、すべて上記ペロブスカイト化合物であることが好ましい。
感光層13は、単層であっても2層以上の積層構造であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してなる積層構造でもよく、また、感光層と感光層の間に後述する正孔輸送材料を含む中間層を有する積層構造でもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、少なくとも1種含有していればよく、すべての感光層がペロブスカイト化合物を少なくとも1種含有していてもよい。
感光層13を導電性支持体11上に有する態様は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、励起した電子が導電性支持体11又は第二電極2に流れるように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
感光層13の膜厚は、導電性支持体11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。通常、膜厚は、例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmが更に好ましく、0.01〜5μmが特に好ましい。
多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、合計膜厚は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。
光電変換素子10において、多孔質層12及び正孔輸送層3を有する場合、多孔質層12と感光層13と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、この合計膜厚は、200μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましく、5μm以下が特に好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13B及び13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
〔光吸収剤〕
− ペロブスカイト化合物 −
感光層13中の光吸収剤は、「周期表第一族元素若しくはカチオン性有機基A」と、「周期表第一族元素以外の金属原子M」と、「アニオン性原子又は原子団X」とを有するペロブスカイト化合物を含有する。ペロブスカイト化合物の周期表第一族元素若しくはカチオン性有機基A、金属原子M及びアニオン性原子又は原子団Xは、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において、カチオン(便宜上、カチオンAということがある)、金属カチオン(便宜上、カチオンMということがある)及びアニオン(便宜上、アニオンXということがある)の各構成イオンとして存在する。
本発明において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造においてカチオンになる性質を有する有機基をいい、アニオン性原子又は原子団とはペロブスカイト型結晶構造においてアニオンになる性質を有する原子又は原子団をいう。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、カチオンAは、周期表第一族元素のカチオン若しくはカチオン性有機基Aからなる有機カチオンである。このカチオンAは、1種のカチオンであってもよく、2種以上のカチオンであってもよい。2種以上のカチオンである場合、2種以上の周期表第一族元素のカチオンでもよく、2種以上の有機カチオンでもよく、また、少なくとも1種の周期表第一族元素のカチオンと少なくとも1種の有機カチオンとを含むものでもよい。カチオンAは、有機カチオンを含むことが好ましく、有機カチオンであることがより好ましい。2種以上のカチオンである場合の各カチオンの存在比は特に限定されない。
周期表第一族元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウムの各元素のカチオンが挙げられ、特にセシウムのカチオンが好ましい。
有機カチオンは、上記性質を有する有機基のカチオンであれば特に限定されないが、下記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンであることが更に好ましい。
式(1): 1A−N(R1a
式中、R1Aは置換基を表す。R1Aとして採りうる置換基は有機基であれば特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基(芳香族ヘテロ環基)、脂肪族へテロ環基又は下記式(2)で表すことができる基が好ましい。中でも、アルキル基、下記式(2)で表すことができる基がより好ましい。
また、R1aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環又は脂肪族へテロ環基を示す。中でも、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
Figure 2020077774
式中、XはNR1c、酸素原子又は硫黄原子を表す。R1b及びR1cは各々独立に水素原子又は置換基を表す。***は式(1)のN原子との結合位置を表す。
本発明において、カチオン性有機基Aの有機カチオンは、R1aが水素原子であり、上記式(1)中のR1AとN(R1aとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基Aからなる有機アンモニウムカチオン(R1A−NH )が好ましい。この有機アンモニウムカチオンが共鳴構造を採り得る場合、有機カチオンは有機アンモニウムカチオンに加えて共鳴構造のカチオンを含む。例えば、上記式(2)で表すことができる基においてXがNH(R1cが水素原子)である場合、有機カチオンは、上記式(2)で表すことができる基とNHとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基の有機アンモニウムカチオンに加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンをも包含する。アミジニウムカチオン性有機基からなる有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(Aam)で表されるカチオンが挙げられる。本発明において、下記式(Aam)で表されるカチオンを便宜上、「R1bC(=NH)−NH 」と表記することがある。
Figure 2020077774
1A及びR1aとして採りうるアルキル基は、炭素数が1〜36のアルキル基が好ましく、1〜18のアルキル基がより好ましく、1〜6のアルキル基が更に好ましく、1〜3のアルキル基が特に好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル又はヘキシル等が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうるシクロアルキル基は、炭素数が3〜10のシクロアルキル基が好ましく、3〜8のシクロアルキル基がより好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシル等が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうるアルケニル基は、炭素数が2〜36のアルケニル基が好ましく、2〜18のアルケニル基がより好ましく、2〜6のアルケニル基が更に好ましい。例えば、ビニル、アリル、ブテニル又はヘキセニル等が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうるアルキニル基は、炭素数が2〜36のアルキニル基が好ましく、2〜18のアルキニル基がより好ましく、2〜4のアルキニル基が更に好ましい。例えば、エチニル、ブチニル又はヘキシニル等が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうるアリール基は、炭素数6〜24のアリール基が好ましく、炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、例えば、フェニルが挙げられる。
1A及びR1aとして採りうる芳香族ヘテロ環は、縮合環である場合、単環の芳香族ヘテロ環のみからなる基に加えて、単環の芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環又はヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基を包含する。芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子の数は1個以上であればよく、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。芳香族ヘテロ環の炭素数は5〜24であることが好ましく、5〜18であることがより好ましく、5〜10であることが更に好ましい。5員環の芳香族ヘテロ環及び5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、インダゾール環の各環基が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環及び6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環の各環基が挙げられる。
1A及びR1aとして採りうる脂肪族ヘテロ環基は、脂肪族ヘテロ環のみからなる単環の基と、脂肪族ヘテロ環に他の環(例えば、脂肪族環)が縮合した脂肪族縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。脂肪族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子の数は1個以上であればよく、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、脂肪族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。脂肪族ヘテロ環の炭素数は0〜24であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、更に好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜5である。脂肪族ヘテロ環の好ましい具体例としては、ピロリジン環、オキソラン環、チオラン環、ピペリジン環、テトラヒドロフラン環、オキサン環(テトラヒドロピラン環)、チアン環、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環、ピロリジン環、アゼチジン環、オキセタン環、アジリジン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
1Aとして採りうる、式(2)で表すことができる基において、XはNR1c、酸素原子又は硫黄原子を表し、NR1cが好ましい。ここで、R1cは、水素原子又は置換基を表し、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環又は脂肪族ヘテロ環基が好ましく、水素原子が更に好ましい。
1bは、水素原子又は置換基を表し、水素原子が好ましい。R1bとして採り得る置換基は、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環又は脂肪族ヘテロ環基が挙げられる。
1b及びR1cがそれぞれ採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環又は脂肪族ヘテロ環基は、上記R1Aの各基と同義であり、好ましいものも同じである。
1bとして採り得るアミノ基は、無置換でも置換アミノ基でもよく、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基の炭素数は0〜20が好ましい。
式(2)で表すことができる基としては、例えば、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基又はアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基及びチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル(CHC(=O)−)、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル(CHC(=S)−)、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基(HNC(=O)−)及びチオカルバモイル基(HNC(=S)−)を包含する。
イミドイル基は、R1b−C(=NR1c)−で表される基であり、R1b及びR1cはそれぞれ水素原子又はアルキル基が好ましく、アルキル基は上記R1Aのアルキル基と同義であるのがより好ましい。例えば、ホルムイミドイル(HC(=NH)−)、アセトイミドイル(CHC(=NH)−)、プロピオンイミドイル(CHCHC(=NH)−)等が挙げられる。中でも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(2)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR1bがアミノ基でR1cが水素原子である構造(−C(=NH)NH)を有する。
1A及びR1aとして採りうる、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環、脂肪族ヘテロ環基及び上記式(2)で表すことができる基は、いずれも、置換基を有していてもよい。R1A及びR1aが有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環、脂肪族ヘテロ環基)、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基等)、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が挙げられる。R1A及びR1aが有していてもよい各置換基は、更に置換基で置換されていてもよい。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、金属カチオンMは、周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンであって、ペロブスカイト型結晶構造を採り得る金属原子のカチオンであれば、特に限定されない。このような金属原子としては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、カドミウム、銅、ニッケル、マンガン、鉄、コバルト、パラジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、イッテルビウム、ユウロピウム、インジウム、チタン、ビスマス等の金属原子が挙げられる。
Mは1種の金属カチオンであってもよく、2種以上の金属カチオンであってもよい。中でも、金属カチオンMは、2価のカチオンであることが好ましく、2価の鉛カチオン(Pb2+)、2価の銅カチオン(Cu2+)、2価のゲルマニウムカチオン(Ge2+)及び2価のスズカチオン(Sn2+)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、Pb2+又はSn2+であることが更に好ましく、Pb2+であることが特に好ましい。2種以上の金属カチオンである場合、金属カチオンの割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、アニオンXは、アニオン性原子又は原子団Xのアニオンを表す。このアニオンは、好ましくはハロゲン原子のアニオン、又は、NCS、NCO、HO、NO 、CHCOO若しくはHCOOの、各原子団のアニオンが挙げられる。中でも、ハロゲン原子のアニオンであることが更に好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
アニオンXは、1種のアニオン性原子又は原子団のアニオンであってもよく、2種以上のアニオン性原子又は原子団のアニオンであってもよい。1種のアニオン性原子又は原子団のアニオンである場合には、ヨウ素原子のアニオンが好ましい。一方、2種以上のアニオン性原子又は原子団のアニオンである場合には、2種のハロゲン原子のアニオン、特に臭素原子若しくは塩素原子のアニオン及びヨウ素原子のアニオンが好ましい。なお、2種以上のアニオンの割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記の各構成イオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有し、下記式(I)で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
式(I):A
式中、Aは周期表第一族元素又はカチオン性有機基を表す。Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表す。Xはアニオン性原子又は原子団を表す。
aは1又は2を表し、mは1を表し、a、m及びxはa+2m=xを満たす。
式(I)において、周期表第一族元素若しくはカチオン性有機基Aは、ペロブスカイト型結晶構造の上記カチオンAを形成する。したがって、周期表第一族元素及びカチオン性有機基Aは、上記カチオンAとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる元素又は基であれば、特に限定されない。周期表第一族元素若しくはカチオン性有機基Aは、上記カチオンAで説明した上記周期表第一族元素若しくはカチオン性有機基と同義であり、好ましいものも同じである。Aは周期表第一族元素とカチオン性有機基とを含むものであってもよい。
金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造の上記金属カチオンMを形成する金属原子である。この金属原子Mは、周期表第一族元素以外の原子であって、上記金属カチオンMとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子であれば、特に限定されない。金属原子Mは、上記金属カチオンMで説明した上記金属原子と同義であり、好ましいものも同じである。
アニオン性原子又は原子団Xは、ペロブスカイト型結晶構造の上記アニオンXを形成する。アニオン性原子又は原子団Xは、上記アニオンXとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子又は原子団であれば、特に限定されない。アニオン性原子又は原子団Xは、上記アニオンXで説明したアニオン性原子又は原子団と同義であり、好ましいものも同じである。
式(I)で表されるペロブスカイト化合物は、aが1である場合、下記式(I−1)で表されるペロブスカイト化合物であり、aが2である場合、下記式(I−2)で表されるペロブスカイト化合物である。
式(I−1):AMX
式(I−2):AMX
式(I−1)及び式(I−2)において、Aは周期表第一族元素若しくはカチオン性有機基を表し、上記式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。Mは、周期表第一族元素以外の金属原子を表し、上記式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。Xは、アニオン性原子又は原子団を表し、上記式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、式(I−1)で表される化合物及び式(I−2)で表される化合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。したがって、本発明において、ペロブスカイト化合物は、光吸収剤として少なくとも1種が存在していればよく、組成式、分子式及び結晶構造等により、厳密にいかなる化合物であるかを明確に区別する必要はない。
以下に、本発明に用いうるペロブスカイト化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されない。下記においては、式(I−1)で表される化合物と、式(I−2)で表される化合物とを分けて記載する。ただし、式(I−1)で表される化合物として例示した化合物であっても、合成条件等によっては、式(I−2)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。同様に、式(I−2)で表される化合物として例示した化合物であっても、式(I−1)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。
式(I−1)で表される化合物の具体例として、例えば、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CHNHPbI、CHNHPbBrI、CHNHPbBrI、CHNHSnBr、CHNHSnI、CHNHGeCl、CH(=NH)NHPbI、CsSnI、CsGeI、Cs0.04FA0.8(CHNH0.16PbI2.84Br0.16等が挙げられる。ここで、FAはホルムアミドイル基(−C(=NH)NH)を示す。
式(I−2)で表される化合物の具体例として、例えば、(CNHPbI、(C1021NHPbI、(CH=CHNHPbI、(CH≡CNHPbI、(n−CNHPbI、(n−CNHPbI、(CNHPbI、(CCHCHNHPbI、(CNHPbI、(CNHPbI、(CSNHPbI、(CHNHCuCl、(CNHGeI、(CNHFeBr等が挙げられる。ここで、(CSNHPbIにおけるCSNHはアミノチオフェンである。
光吸収剤の使用量は、正孔輸送層3の表面のうち光が入射する表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
感光層13において、光吸収剤中の、ペロブスカイト化合物の含有量は、通常、1〜100質量%である。
<対極(第二電極)2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電性支持体11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電性支持体11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電性支持体11が透明であって太陽光等を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することが更に好ましい。
第二電極2を形成する材料としては、例えば、白金、金、ニッケル、銅、銀、インジウム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、アルミニウム等の金属、導電性支持体11で説明した導電性の金属酸化物、炭素材料、公知の導電性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
第二電極2としては、金属若しくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、又は、この薄膜を有するガラス基板若しくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板若しくはプラスチック基板としては、金若しくは白金の薄膜を有するガラス、又は、白金を蒸着したガラスが好ましい。
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.01〜1μmが更に好ましい。
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10A〜10Dのように、第一電極1と第二電極2との間に正孔輸送層3を有することが好ましい態様の1つである。この態様において、正孔輸送層3は感光層3Cと接触(積層)していることが好ましい。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられる。
この正孔輸送層3は、励起した光吸収剤が電荷分離して発生する正孔を第二電極2に輸送する正孔輸送機能(第2電極2から注入された電子を光吸収剤の酸化体に輸送(補充)する機能)を少なくとも有する層であれば、特に限定されない。正孔輸送層3は、この正孔輸送機能に加えて、電子ブロッキング機能、正孔抽出機能等を有していてもよい。これらの機能を有する場合、正孔輸送層3は、例えば、電子ブロッキング層又は正孔抽出層ともいう。
正孔輸送層の膜厚は、特に限定されず、50μm以下が好ましく、0.1nm〜10μmが好ましく、5nm〜5μmが更に好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。
正孔輸送層3は、好ましくは固体状の層(固体正孔輸送層)であり、下記式(S1)で表わされる化合物からなる正孔輸送剤を含有している。本発明において、正孔輸送剤が式(S1)で表わされる化合物からなるとは、式(S1)で表わされる化合物のそのもの(式(S1)で表わされる化学構造を維持した状態)で構成される態様と、式(S1)で表わされる化合物の硬化物(重合物)で構成される態様との両態様を包含する。すなわち、本発明において、正孔輸送剤は、下記式(S1)で表わされる化合物又はこの化合物の硬化物からなる。よって、正孔輸送層が式(S1)で表わされる化合物からなる正孔輸送剤を含有しているとは、式(S1)で表わされる化合物からなる正孔輸送剤をそのまま含有している態様と、式(S1)で表わされる化合物の硬化物からなる正孔輸送剤を含有している態様との両態様を包含する。
式(S1)で表わされる化合物の硬化物については後述する。
(正孔輸送剤)
光電変換素子の正孔輸送層が含有する正孔輸送剤は、本発明で規定する正孔輸送剤(本発明の正孔輸送剤)であり、具体的には、下記式(S1)で表わされる化合物(ただし、後述する特定の基を少なくとも1つ有している)からなり、他の成分を含有していてもよい。
下記式(S1)で表わされる化合物は、正孔輸送機能を有する重合体である。このような正孔輸送機能を有する化合物は、各種の電子デバイスに適用することができ、中でも、光電変換素子、特に光吸収剤としてペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子の正孔輸送層を形成する正孔輸送剤として好適に用いられる。
Figure 2020077774
式(S1)中、Arx1及びArx2はアリール基又はヘテロアリール基を示し、直接又は連結基を介してAr又はArと結合している。
Ar及びArはアリーレン基又はヘテロアリーレン基を示す。
は置換基を示す。
n1及びn2は0以上の整数である。ただし、n1+n2≧1である。
n3は3以上の整数である。
Arx1及びArx2として採りうるアリール基は、単環でも縮環でもよく、単環が好ましい。縮環のアリール基において、縮合する環数は、特に限定されず、2〜5個であることが好ましく、2個又は3個であることがより好ましく、2個であることが更に好ましい。単環のアリール基としてはベンゼン環基(フェニル基)が挙げられ、縮環のアリール基としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、クリセン環、ピセン環、ピレン環、フルオレン環又はアズレン環の各基が挙げられる。中でも、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
Arx1及びArx2として採りうるアリール基の環構成原子数は、特に限定されないが、6〜30が好ましく、6〜15がより好ましく、6〜13が更に好ましい。
Arx1及びArx2として採りうるヘテロアリール基としては、単環でも縮環でもよく、単環が好ましい。
単環のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、炭素原子と、少なくとも1つ(好ましくは1つ又は2つ)のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、セレン原子又はリン原子)とを環構成原子とするヘテロアリール基が好ましい。単環のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、5員環又は6員環の基が好ましい。単環のヘテロアリール基としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、シロール環、ホスホール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環又はテトラジン環の各基が挙げられ、チオフェン環又はフラン環の各基が好ましい。
縮環のヘテロアリール基は、単環のヘテロアリールが複数縮合してなる環基に加えて、単環のヘテロアリールと単環の炭化水素環が複数縮合してなる環基等が挙げられる。縮合する環数は、特に限定されず、2〜5個であることが好ましく、2個又は3個であることがより好ましく、2個であることが更に好ましい。縮環のヘテロアリール基としては、例えば、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイソチオフェン環、インダゾール環、インドール環、イソインドール環、インドリジン環、カルバゾール環(ジベンゾピロール環)、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、チエノピリジン環、シラフルオレン環(ジベンゾシロール環)、チエノチオフェン環、トリチオフェン環、シクロペンタジチオフェン環、シクロペンタジフラン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ジチエノピロール環、ジチエノフラン環、ジチエノシロール環の各基が挙げられる。
Arx1及びArx2として採りうるヘテロアリール基の環構成炭素原子数は、特に限定されないが、0〜24であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、3〜10であることが更に好ましい。
Arx1及びArx2は、それぞれ、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
Arx1及びArx2は、それぞれ、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
Arx1及びArx2として採りうるアリール基及びヘテロアリール基は、置換基(ただし、後述する式1−a〜1−iのいずれかで表わされる基を除く。)を有していてもよい。この置換基としては、特に制限されず、例えば、後述するRが有していてもよい置換基が挙げられる。Arx1及びArx2が有する置換基の数は、特に制限されず、適宜に決定される。置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、形成される縮合環が上記縮環のアリール基若しくはヘテロアリール基にも相当する場合、形成される縮合環は全体として、Arx1及びArx2として採りうる、縮環のアリール基若しくはヘテロアリール基と解釈する。
Arx1及びArx2において、後述するAr又はAr(n1又はn2が0である場合は窒素原子)と結合する部位(環構成原子の位置)は、特に制限されず、適宜の環構成原子を連結部位とすることができる。
Arx1及びArx2は、それぞれ、式(S1)においてAr又はAr(n1又はn2が0である場合は窒素原子)と直接結合してもよく、連結基を介して結合していてもよい。Arx1とArとを結合する連結基、及び、Arx2とArとを結合する連結基は、特に制限されず、アリーレン基若しくはヘテロアリーレン基又はこれらの組み合わせが挙げられる。連結基として採りうるアリーレン基又はヘテロアリーレン基としては、例えば、Arとして採りうるアリーレン基又はヘテロアリーレン基が挙げられる。組み合わせる基の数は特に制限されないが、例えば、2〜5個が挙げられる。
Ar及びArは、それぞれ、アリーレン基又はヘテロアリーレン基であり、アリーレン基が好ましい。
Ar及びArとして採りうるアリーレン基は、特に制限されないが、上記Arx1として採りうるアリール基から更に1個の水素原子を取り除いた基が挙げられる。中でも、フェニレン基、又はナフタレン環若しくはフルオレン環の各基が好ましい。
Ar及びArとして採りうるヘテロアリーレン基は、特に制限されないが、上記Arx1として採りうるヘテロアリール基から更に1個の水素原子を取り除いた基が挙げられる。中でも、チエニレン基が好ましい。
Ar及びArは、それぞれ、アリーレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
Ar及びArとして採りうるアリール基及びヘテロアリール基は、置換基(ただし、後述する式1−a〜1−iのいずれかで表わされる基を除く。)を有していてもよい。この置換基としては、特に制限されず、後述するRが有していてもよい置換基が挙げられる。Ar及びArが有する置換基の数は、特に制限されず、適宜に決定される。置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。また、隣接するAr同士、Arx1若しくはArx2とAr若しくはAr、更に式(S1)中の窒素原子に結合するAr及びArが、それぞれ置換基を有する場合、これらの置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、形成される縮合環が上記縮環のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基にも相当する場合、形成される縮合環は全体として縮環のアリーレン基若しくはヘテロアリーレン基と解釈する。
Ar及びArにおいて、上述のArx1又はArx2と結合する部位(環構成原子の位置)は、特に制限されず、適宜の環構成原子を連結部位とすることができる。例えば、式(S1)中の窒素原子と結合する環構成原子に対して3位又は4位が好ましい。
Ar及びArは、それぞれ、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、Arx1とAr、Arx2とArとは、それぞれ、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
n1及びn2は、それぞれ、0以上の整数であり、好ましくは1以上の整数である。その上限は、特に制限されないが、10以下の整数であることが好ましく、5以下の整数であることがより好ましい。n1及びn2は、それぞれ、1又は2であることが更に好ましい。n1及びn2は同じであっても異なっていてもよい。
本発明において、n1及びn2は、合計で1以上の整数(n1+n2≧1)であり、好ましくは合計で1〜20の整数であり、より好ましくは合計で2〜10の整数であり、特に好ましくは合計で2〜5の整数である。n1及びn2が2以上の整数である場合、2以上のAr及びArは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
は置換基を示す。Rとして採りうる置換基は、特に制限されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、脂肪族ヘテロ環基が挙げられる。中でも、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が好ましい。Rとして採りうる、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び脂肪族ヘテロ環は、それぞれ、R1Aとして採りうる上記基の対応するものと同義である。Rとして採りうる、アリール基及びヘテロアリール基は、それぞれ、上記Arx1として採りうる、アリール基及びヘテロアリール基と同義である。
は、Ar又はArと同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい態様の1つである。この態様において、R、Ar及びArはベンゼン環からなる基(式(S1)中の繰り返し単位がトリフェニルアミン化合物に由来する単位)であることが好ましい。
として採りうる置換基は、更に置換基(ただし、後述する式1−a〜1−iのいずれかで表わされる基を除く。)を有していてもよい。更に有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環、脂肪族ヘテロ環基)、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基等)、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ、カルボキシ基が挙げられる。
上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族ヘテロ環及び脂肪族ヘテロ環基としては、R1Aとしてとりうる基の対応するものと同義である。上記以外の基でアルキル基、アルケニル基又はアリール基を含む基(アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基等)が有する、アルキル基、アルケニル基又はアリール基は、R1Aとしてとりうる基の対応するものと同義である。
として採りうる置換基が更に有していてもよい置換基の数は、特に制限されず、適宜に決定されるが、例えば1〜7個が挙げられる。
本発明において、Rと式(S1)中の窒素原子と結合するAr若しくはArとは、互いに結合していない態様と、互いに直接(単結合で)結合し、又は、連結基を介して、若しくは、R、Ar若しくはArが有している置換基を介して、互いに結合している態様との両態様を包含する。本発明においては、RとAr若しくはArとが互いに結合していない態様が好ましい。
n3は、3以上の整数であり、3〜5000の整数が好ましく、3〜1000の整数がより好ましく、5〜200の整数が更に好ましく、本発明において、n3は、上記式(S1)において角括弧で括られている繰返単位が結合している繰返単位数(重合度)であり、次の方法により算出した値とする。すなわち、上記式(S1)で表わされる化合物の数平均分子量を後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し、得られた数平均分子量を、繰返単位の分子量で除した値(小数点以下は四捨五入)とする。
式(S1)で表わされる化合物において、3以上の繰返単位は同一でも異なっていてもよい。また、式(S1)で表される化合物は、n3が3以上の整数である重合体を少なくとも1種含んでいればよく、互いに異なる複数のn3を持つ重合体の混合物であってもよい。
上記式(S1)で表わされる化合物は、特定の基、すなわち下記式1−a〜1−iのいずれかで表される基、を少なくとも1つ有している。
Figure 2020077774
式中、Rは水素原子又は置換基を示す。*は上記式(S1)で表わされる化合物(構造)との連結部位を示す。
eは1以上の整数である。
環Aは、e個の上記連結部位それぞれが結合する、式(S1)で表される化合物を構成する原子を連結する原子鎖とともに5員若しくは6員の環を形成するのに必要な原子群を示す。
Rとして採りうる置換基は、特に制限されず、例えば、Rとして採りうる置換基が更に有していてもよい上記置換基が挙げられ、中でも、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル又はエチルが更に好ましい。式1−iにおけるRは水素原子又はメチルが特に好ましい。
式1−iにおける3つのRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
式1−eにおいて、eは上記式(S1)で表わされる化合物との連結部位の数を示し、1以上の整数である。好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは2である。
環Aは、e個の連結部位がそれぞれ結合する、式(S1)で表される化合物を構成する原子を連結する原子鎖(原子群)とともに5員若しくは6員の環を形成するのに必要な原子群を示す。例えば、環Aがフェニル基に縮合している場合(環Aがフェニル基を構成数炭素原子2つに結合している場合)、環Aは、フェニル基構成炭素原子2つの原子とともに上記環を形成するのに必要な原子群を示す。式1−eで表される基を有するアリール基としては、特に制限されないが、無水フタル酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
上記式1−a〜1−iのいずれかで表される基は、上記式(S1)で表される構造に導入されることにより、式(S1)で表される化合物同士の親和力を増強させて、膜形成能を高めることができる。中でも、式1−a〜1−gのいずれかで表される基が好ましく、式1−a〜1−eのいずれかで表される基がより好ましい。
上記基のうち式1−a〜1−gのいずれかで表される基を有する化合物は、これらの基が反応することにより、硬化して、更に増強された上記親和力を発現する。上記基の反応は、その種類、特性等に応じて一義的ではない。例えば、式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される基は、いずれも重合性基に相当し、(連鎖)重合反応を生起する。また、式1−c、式1−d及び式1−eのいずれかで表される基は、例えば活性水素を含有する化合物若しくはその塩(好ましくは、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する化合物(以下、硬化剤という。))に対して高い反応性を示し、逐次重合反応を生起する。更に、式1−aで表される基は、単独で、又は例えば上記硬化剤に対して高い反応性を示し、開環反応若しく逐次重合反応(重付加反応)を生起する。これらの反応により、式(S1)で表される化合物は硬化反応して硬化物となる。硬化物の詳細は後述する。
上記各式で表される基は、上記連結部位で、上記式(S1)で表される構造に直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。このような連結基としては、特に制限されず、例えば、アルキレン基(炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。)、アリーレン基(炭素数は6〜24が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい。)、炭素数3〜12のヘテロアリーレン基、エーテル基(−O−)、スルフィド基(−S−)、カルボニル基、イミノ基(−NR−:Rは結合部位、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数6〜10のアリール基)、又は、これらを2個以上(好ましくは2〜3個)組み合わせた連結基が挙げられる。
上記1−bで表される基は、上記式(S1)で表される構造に連結基を介して結合していることが好ましく、−O−を介して結合していることがより好ましい。
上記1−iで表される基が上記式(S1)で表される構造に連結基を介して結合する場合、連結基としては上記の中でもイミノ基及びエーテル基以外の各基又はこれらを組み合わせた連結基が好ましく適用される。
上記式(S1)で表される化合物は、上記式のいずれかで表される基を少なくとも1つ有していればよいが、少なくとも2つ有していることが好ましく、2〜4つ有していることがより好ましい。上記化合物が上記式のいずれかで表される基を有する数の上限は、この基が導入されている部位に応じて一義的ではない。例えば、この基が式(S1)の繰り返し単位中に導入されている場合には1つの繰り返し単位中に有する数と繰り返し単位数n3との積となり、上記基が末端基(Arx1及びArx2)に導入されている場合には末端基中に置換しうる最大の水素原子数となる。上記化合物が複数の基を有している場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。互いに異なる基を複数有する場合、これらの基は上記硬化反応が同種のものが生産性の点で好ましい。
上記式(S1)で表される化合物は、上記式のいずれかで表される基を、上記(S1)で表される構造のいずれの部位に有していてもよいが、高い膜形成能(特に硬化物としたとき)を発現する点で、式(S1)中のR、Arx1及びArx2のいずれかに有していることが好ましく、式(S1)中のArx1及びArx2の少なくとも一方に有していることがより好ましく、Arx1及びArx2それぞれに少なくとも1つずつ有していることが更に好ましく、Arx1及びArx2それぞれに1つずつ有していることが特に好ましい。Arx1又はArx2に上記式のいずれかで表される基が結合する位置は、特に制限されないが、膜形成能の点で、式(S1)中のAr又はArと結合する、Arx1又はArx2の環構成原子(1位)に対して2位又は3位が好ましい。
上記式(S1)で表される化合物の重量平均分子量は、特に制限されないが、例えば、500〜2000000であることが好ましく、化合物のネットワークが更に密に形成され、光電変換効率を向上させることができる点で、500〜1000000であることがより好ましく、1000〜200000であることが更に好ましい。
上記化合物又は重合体において、重量平均分子量又は数平均分子量は、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値(標準ポリスチレン換算値)を意味する。測定装置及び測定条件としては、下記条件によることを基本とするが、重合体種によっては、更に適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定して用いてもよい。
その他の事項については、JIS K 7252−1〜4:2008を参照することとする。なお、難溶の化合物については、下記条件の下、溶解可能な濃度で測定することとする。
−条件−
・カラム:TOSOH TSKgel Super AWM−H(商品名)を2本つなげる
・キャリア:10mM LiBr/N−メチルピロリドン
・測定温度:40℃
・キャリア流量:1.0mL/min
・試料濃度:0.1質量%
・検出器:RI(屈折率)検出器
・注入量:0.1mL
上記式(S1)で表される化合物は、公知の方法を参照して合成でき、また市販品を用いることもできる。合成方法としては、例えば、後述する実施例で説明する合成方法が挙げられる。
以下に、上記式(S1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されない。各式中、n3は式(S1)中のn3と同義である。なお、化合物S1−9において、Meはメチルを示す。また、化合物S1−18において、Ar2−1〜Ar2−4のうち2つは9,9−ジメチル−フルオレン−2,7−ジイル基、残りの2つはフェニル基を示し、これらの結合順は特に限定されない。
Figure 2020077774
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正孔輸送層中の、式(S1)で表される化合物からなる正孔輸送剤の含有量は、特に制限されず、例えば、1〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、10〜100質量%であることが更に好ましい。正孔輸送剤として式(S1)で表される化合物の硬化物を含有する場合、式(S1)で表される化合物(未硬化物)及びその硬化物の合計に対する硬化物の含有量は、特に制限されず、例えば1質量%以上であることが好ましい。
正孔輸送層は、式(S1)で表される化合物からなる正孔輸送剤以外の正孔輸送剤(材料)、式(S1)で表される化合物の硬化剤若しくは硬化助剤等、更には他の成分を含有していてもよい。式(S1)で表される化合物以外の正孔輸送剤(材料)としては、公知のものを特に限定されずに用いることができる。この正孔輸送材料の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、例えば、99質量%以下である。
本発明の光電変換素子において、正孔輸送層は、本発明の正孔輸送剤を含有する層を備えており、上述の、本発明の正孔輸送剤以外の正孔輸送材料からなる正孔輸送層を備えていてもいなくてもよい。
<正孔注入層>
本発明の光電変換素子は、正孔注入層(図1〜図5において図示しない。)を備えていてもよい。正孔注入層は、正孔輸送層(正孔輸送材料)から電荷を受け取ることで正孔輸送層中に自由電荷を発生させ、正孔輸送層の導電率を向上させる層をいう。導電率を向上させる程度は、特に限定されないが、例えば、1.01〜1010倍程度であることが好ましい。正孔注入層は、通常、正孔輸送層の近傍に設けられ、正孔輸送層に対して感光層と反対側に、好ましくは正孔輸送層に隣接して設けられる。
正孔注入層を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、金属錯体、金属塩又は有機化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、(p−BrCNSbCl、三価のコバルト錯体(FK209他)、LiTFSI(lithiumbis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、FeCl、WO、MoO、Molybdenum tris(1−(trifluoroacetyl)−2−(trifluoromethyl)ethane−1,2−dithiolene)、SnCl、SbCl、F4−TCNQ等が挙げられる。
正孔注入層の膜厚は、特に限定されず、0.1nm〜10μmが好ましく、1nm〜1μmがより好ましく、10nm〜0.5μmが更に好ましい。
<その他の構成>
本発明においては、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14に代えて、又は、ブロッキング層14等とともに、スペーサー、セパレータ等を設けることもできる。また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
[太陽電池]
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。例えば図1〜図5に示されるように、外部回路6に対して仕事させるように構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。第一電極1(導電性支持体11)及び第二電極2に接続される外部回路6は、公知のものを特に制限されることなく、用いることができる。
また、本発明の光電変換素子を複数接続して太陽電池を構成することもできる。
本発明は、例えば、特許文献1、非特許文献1及び2、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051に記載の各太陽電池に適用することができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化及び蒸散等を防止するために、側面をポリマー、接着剤等で密封することが好ましい。
[正孔輸送層形成用組成物及び正孔輸送層形成用キット]
次いで、本発明の光電変換素子及び本発明の太陽電池の両製造方法に好適に用いられる、正孔輸送層形成用組成物及び正孔輸送層形成用キットについて説明する。
本発明の正孔輸送層形成用組成物及び正孔輸送層形成用キットは、それぞれ、各種の電子デバイスに適用されることにより、正孔輸送膜(正孔輸送層)を形成できる。中でも、光電変換素子、特に光吸収剤としてペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子の正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
<正孔輸送層形成用組成物>
本発明の正孔輸送層形成用組成物は、上述の本発明の正孔輸送剤を含有する。この正孔輸送層形成用組成物は、本発明の正孔輸送剤の中でも、式(S1)で表わされる化合物の未硬化物を含有することが好ましく、この場合、未硬化物を硬化させる硬化剤、又は硬化を促進する硬化助剤を含有することもできる。硬化剤及び硬化助剤としては、本発明の正孔輸送剤が含有する上記各式で表わされる基に応じて適宜に選択され、一義的に決定できない。更に、本発明の正孔輸送剤は、他の成分、溶媒等を含有してもよい。
硬化剤は、式1−a、式1−c、式1−d、式1−e、式1−f又は式1−gで表わされる基を硬化反応させる化合物が好ましく、低分子化合物及び高分子化合物を包含する。この硬化剤は、通常、その一部が式(S1)で表される化合物の硬化物中に(好ましくは2価以上の連結基(架橋基)として)組み込まれる化合物をいい、上記各基の硬化に用いられる通常の硬化剤等を特に制限されることなく適用できる。例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基及びこれらの塩から選択される基を少なくとも1つ有する化合物が挙げられ、少なくとも2つ有する多官能化合物が好ましい。具体的には、ジオール、トリオール、テトラオール等の多官能ヒドロキシ化合物(ポリオール化合物)、ジチオール、トリチオール、テトラチオール等の多官能チオール化合物、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等の多官能アミン化合物、更にはアミノアルコール、アミノチオール等の複数種の基を有する多官能化合物、又はこれらの塩等が挙げられる。硬化剤は、脂肪族化合物でも芳香族化合物でもよい。また、高分子化合物としては、例えば、ポリウレタンの合成に用いられるPCD(ポリカーボネートジオール)、PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)等のジオール、ポリウレアの合成に用いられるPEA(ポリエーテルアミン)等のジアミン、更には上記基を有する正孔輸送材料等が挙げられる。
エポキシ基の硬化剤としては、例えば、(単官能若しくは多官能)アミン化合物(脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物(イミダゾールアミン化合物を含む)、変性アミン化合物)、多官能チオール化合物、酸無水物基、潜在性硬化剤(三フッ化ホウ素アミン錯体、オニウム塩等の紫外線硬化剤、トリアリルスルホニウム塩等)等が挙げられる。
1分子の硬化剤が有する、水酸基、メルカプト基、アミノ基及びこれらの塩から選択される基の数(官能基数)は、特に制限されないが、2〜8個が好ましく、2〜4個がより好ましい。
水酸基、メルカプト基又はアミノ基の塩を形成する対塩は、特に制限されず、各種のカチオン又はアニオンが挙げられる。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、セシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、銀イオン、銅イオン等の金属カチオン、アンモニウムイオン(NR )、ホスホニウムイオン(PR )等の有機カチオンが挙げられる。Rは水素原子又は置換基を示し、水素原子が好ましい。Rとしてとりうる置換基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子、又は、これらの基を複数組み合わせてなる基が挙げられる。アニオンとしては、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン(F)、ヨウ化物イオン(I)、臭素化物イオン(Br)、塩素化物イオン(Cl)等)、O2−等が挙げられる。正孔輸送層形成用組成物中において、硬化剤の対塩は、それぞれ、解離した形を採っていてもよく、塩の形態であってもよい。
以下に、硬化剤の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されない。硬化剤b2、b12及びb13のnはそれぞれ1〜30であり、硬化剤b15のnは1〜1000整数である。また、硬化剤b12のRは連結基であり、例えばアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基若しくはヘテロアリーレン基又はこれらを組み合わせた基を示す。
Figure 2020077774
硬化助剤は、式(S1)で表される化合物の硬化反応を促進する化合物(硬化促進剤、触媒ともいう。)であり、通常、式(S1)で表される化合物が有する式(S1)で表される化合物の硬化物に2価以上の連結基(架橋基)として組み込まれない化合物をいう。
硬化助剤としては、本発明の正孔輸送剤が式1−aで表されるエポキシ基を有する場合、光酸発生剤、開裂反応触媒としての酸触媒若しくは塩基触媒等が挙げられる。
また、本発明の正孔輸送剤が式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される基(ビニルカルボニル基、アルケニル基及びアルキニル基)を有する場合、重合開始剤等が挙げられる。
更に、本発明の正孔輸送剤が式1−c、式1−d及び式1-eのいずれかで表される基(イソシアナト基、チオイソシアナト基及びカルボン酸無水物基)を有する場合、光酸発生剤等が挙げられる。
光酸発生剤としては、光の照射により酸を発生する化合物であればよく、上記エポキシ基の開環反応等に用いられる通常の化合物を特に制限されることなく適用できる。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
エポキシ基を開環反応等させる酸触媒及び塩基触媒としては、上記エポキシ基の開環反応等に用いられる通常の触媒を特に制限されることなく適用できる。例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素アミン錯体、ビス(二酸化硫黄)−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン付加物(DABSO)、ジエチレントリアミン(DTA)等が挙げられる。
式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される基の重合開始剤としては、炭素−炭素不飽和結合の重合反応に用いられる通常の化合物を特に制限されることなく適用できる。例えば、ラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)が挙げられ、アゾ化合物、有機過酸化物等が好適に挙げられる。
硬化剤及び硬化助剤は、市販品を用いてもよく、公知の合成方法に準じて合成したものを用いてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、硬化剤及び硬化助剤を、それぞれ、1種単独で、又は2種以上含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物が硬化剤又は硬化助剤を含有する場合、本発明の正孔輸送剤が硬化反応を生起しない条件で、調製、取扱い、更には保管をする。この条件は、上記式で表される基及び硬化剤の種類(組み合わせ)等に応じて一義的ではないが、例えば、温度50℃以下、遮光環境等を挙げられる。本発明において、正孔輸送層形成用組成物は、正孔輸送層形成用組成物の成膜性(本発明の正孔輸送剤の膜形成能)、取扱性等を損なわない限り、本発明の正孔輸送剤の硬化反応が生起してもよい。例えば、上記式で表される基の総モル数に対して10モル%以下)であれば反応してもよい。
本発明の正孔輸送層形成用組成物が含有する溶媒としては、特に制限されず、後述する「光電変換素子の製造方法に使用する溶媒又は分散媒」で説明する溶媒が挙げられる。本発明において、正孔輸送層形成用組成物に用いる溶媒としては、上記各式で表される基と(硬化)反応しないものを選択する。
本発明の正孔輸送層形成用組成物中における、正孔輸送剤の含有量は、特に制限されず、例えば、0.1〜100質量%が好ましく、0.1〜50質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が更に好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
本発明の正孔輸送層形成用組成物中における、硬化剤及び硬化助剤の含有量は、それぞれ、正孔輸送剤が有する上記基の種類若しくは数、又は硬化剤の種類等に応じて適宜に決定される。硬化剤の含有量は、例えば、正孔輸送剤100質量部に対して0.001〜90質量部、好ましくは0.01〜10質量部とすることができる。硬化助剤の含有量は、例えば、正孔輸送剤100質量部に対して0.001〜30質量部、好ましくは0.01〜10質量部とすることができる。
本発明の正孔輸送層形成用組成物中における溶媒の含有量は、特に制限されないが、例えば、0〜99.9質量%が好ましく、10〜99質量%がより好ましく、20〜90質量%が更に好ましい。
本発明の正孔輸送層形成用組成物は、通常の方法により各成分を混合して、調製できる。混合条件としては、本発明の正孔輸送剤が硬化反応しない上記条件が好ましく採用される。
<正孔輸送層形成用キット>
本発明の正孔輸送層形成用キットは、本発明の正孔輸送剤を含む組成物(正孔輸送剤組成物)と、本発明の硬化剤及び硬化助剤の少なくとも1種を含む組成物(硬化用組成物)とを組み合わせてなる組成物キットである。この正孔輸送層形成用キットにおいて、上述の硬化剤及び硬化助剤は、本発明の正孔輸送剤とは別途独立した薬剤若しくは成分として、キットを構成する。本発明の正孔輸送剤、硬化剤及び硬化助剤はそれぞれ上述の通りである。正孔輸送剤組成物及び硬化用組成物は、それぞれ、その形態は特に制限されず、正孔輸送剤、硬化剤又は硬化助剤単独の形態であってもよく、他の成分、溶媒等との混合物の形態であってもよい。溶媒は本発明の正孔輸送層形成用組成物で説明した通りである。正孔輸送層形成用キットにおいて、正孔輸送剤が有する上記各式で表される基に応じて、適宜の硬化剤又は硬化助剤が組み合わされる。その具体的な組み合わせとして、通常適用される組み合わせが挙げられ、例えば、上記本発明の正孔輸送層形成用組成物で説明した通りである。
正孔輸送剤組成物において、正孔輸送剤の含有量は、特に制限されず、例えば、0.1〜99質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましい。溶媒の含有量は、特に制限されず、例えば、50〜99.9質量%が好ましく、80〜99.5質量%がより好ましい。
硬化用組成物において、硬化剤の含有量は、特に制限されず、例えば、0〜100質量%とすることができ、好ましくは1〜10質量%である。硬化助剤の含有量は、特に制限されず、例えば、0〜50質量%とすることができる。溶媒の含有量は、特に制限されず、例えば、0〜99.9質量%が好ましく、90〜99.9質量%がより好ましい。
硬化剤又は硬化助剤の使用量は、それぞれ、硬化用組成物と組み合わされる正孔輸送剤組成物における正孔輸送剤が有する上記基の種類若しくは数、又は硬化剤の種類等に応じて適宜に決定される。使用量とは、正孔輸送剤組成物中の正孔輸送剤に対して実際に反応又は作用させる硬化剤又は硬化助剤の割合をいう。例えば、正孔輸送剤組成物の塗布膜上に硬化用組成物をスピンコート法で塗布する場合は、スピンコート後に残存している硬化剤又は硬化助剤の割合をいう。硬化剤の、正孔輸送剤に対する使用量は、一義的ではないが、例えば、0.001〜90質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。硬化助剤の、正孔輸送剤に対する使用量は、通常、触媒量であればよいが、過剰に用いることもできる。使用量は、一義的ではないが、例えば、0.001〜30質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。
正孔輸送層形成用キットは、正孔輸送剤組成物又は硬化用組成物の濃度等を調製する溶媒等からなる組成物を組み合わせて有していてもよい。
このキットの使用方法は、後述する、正孔輸送膜の製造方法において説明する。
[光電変換素子の製造方法及び太陽電池の製造方法]
本発明の光電変換素子及び本発明の太陽電池の両製造方法(以下、併せて本発明の製造方法という。)は、後述する本発明の正孔輸送膜の製造方法を含んで(経て)、本発明の光電変換素子又は太陽電池を製造する方法である。
以下に、本発明の製造方法について、説明する。
本発明の光電変換素子及び太陽電池は、正孔輸送層の形成方法以外は、通常の製造方法、例えば、特許文献1、非特許文献1、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051、並びに、Science,338,p.643(2012)等に記載の方法に準じて、製造できる。
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上に感光層を設ける工程と、この工程の前又は後に正孔輸送層を設ける工程とを有する製造方法により、製造することが好ましい。
この製造方法において、導電性支持体上に感光層を設けるとは、導電性支持体の表面に接して感光層を設ける(直接設ける)態様、及び、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を設ける態様を含む意味である。導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層は上述した通りである。
<光電変換素子の製造方法>
− 第一電極の作製 −
本発明の製造方法においては、まず、導電性支持体11を上述の方法若しくは公知の方法に準じて準備する。次いで、導電性支持体11の表面に、所望によりブロッキング層14、多孔質層12、電子輸送層15及び正孔輸送層16の少なくとも1つを形成する。
(ブロッキング層の形成)
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質又はその前駆体化合物等を含有する分散物を導電性支持体11の表面に塗布し、焼成する方法又はスプレー熱分解法等によって、形成できる。
(多孔質層の形成)
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、更に好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電性支持体11の表面又はブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間、例えば空気中で焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚及び塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電性支持体11の表面積1m当たりの、多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、更には5〜100gが好ましい。
(電子輸送層又は正孔輸送層の形成)
電子輸送層15又は正孔輸送層16を設ける場合、それぞれ、後述する正孔輸送層3又は電子輸送層4と同様にして、形成することができる。
透明電極11上に正孔輸送層16を設ける場合、所望により、正孔輸送層16の形成に先立ち、正孔注入層を形成することができる。正孔注入層の形成方法は後述する。
(感光層の形成)
次いで、感光層13を設ける。
感光層の形成に用いるペロブスカイト化合物は、下記式(II)で表される化合物と下記式(III)で表される化合物とから合成できる。
式(II):AX
式(III):MX
式(II)中、Aは周期表第一族元素若しくはカチオン性有機基を表し、上記式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。Xはアニオン性原子又は原子団を表し、上記式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。式(A−2)で表される化合物は、通常、周期表第一族元素以外の金属原子のカチオンMと、アニオン性原子又は原子団のXとがイオン結合してなる化合物である。
式(III)中、Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表し、上記式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。Xはアニオン性原子又は原子団を表し、上記式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。式(A−3)で表される化合物は、通常、周期表第一族元素又はカチオン性有機基のカチオンAと、アニオン性原子又は原子団のXとがイオン結合してなる化合物である。
本発明の製造方法において、感光層14を設ける方法は、湿式法及び乾式法が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、湿式法が好ましく、例えば、光吸収剤を含有する光吸収剤組成物(溶液)に接触させる方法が好ましい。
本発明の製造方法においては、まず、感光層14を形成するための光吸収剤組成物を調製する。光吸収剤組成物は、ペロブスカイト化合物そのものを含有する組成物であってもよいが、ペロブスカイト化合物の合成原料である、上記式(II)で表される化合物及び式(III)で表される化合物をそれぞれ含有する組成物が好ましい。この光吸収剤組成物において、上記式(II)で表される化合物(AX)と上記式(III)で表される化合物(MX)とのモル比は目的に応じて適宜に調整される。光吸収剤としてペロブスカイト化合物を形成する場合、AXとMXとのモル比は、1:1〜10:1であることが好ましい。この光吸収剤組成物は、AXとMXとを所定のモル比で混合した後に好ましくは加熱することにより、調製できる。この組成物は通常溶液であるが、懸濁液でもよい。加熱する条件は、特に限定されないが、加熱温度は30〜200℃が好ましく、60〜150℃が更に好ましい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜3時間が更に好ましい。溶媒又は分散媒は後述するものを用いることができる。
次いで、調製した光吸収剤組成物を、その表面に感光層13を形成する層(感光層被形成層ともいい、例えば、多孔質層12、ブロッキング層14又は電子輸送層15のいずれかの層が挙げられる。)の表面に接触させる。具体的には、感光層被形成層の表面に光吸収剤組成物を塗布し、又は感光層被形成層を光吸収剤組成物中に浸漬することが好ましい。これにより、ペロブスカイト化合物が感光層被形成層の表面に堆積又は吸着等されて、感光層が形成される。接触させる温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。塗布する条件は膜厚等に応じて適宜に決定できる。塗布した光吸収剤組成物を乾燥させる場合、光吸収剤組成物の乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常、常圧下で、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
また、上記AXを含有するAX組成物(アンモニウム塩組成物)と、上記MXを含有するMX組成物(金属塩組成物)とを、別々に、感光層被形成層の表面に接触させる方法も挙げられる。この方法では、いずれの組成物を先に接触させてもよいが、好ましくはMX組成物を先に接触させる。この方法におけAXとMXとのモル比、接触させる方法及び条件、更に乾燥条件は、上記方法と同じである。この方法では、上記AX組成物及び上記MX組成物の接触に代えて、AX又はMXを、蒸着させることもできる。
更に、上記光吸収剤組成物の溶剤を除去した化合物又は混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。例えば、上記AX及び上記MXを、同時又は順次、蒸着させる方法も挙げられる。
更に他の方法として、ペロブスカイト化合物の合成方法に準じて感光層を形成することもできる。ペロブスカイト化合物の合成方法については、例えば、特許文献1に記載の方法を参考にできる。また、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051に記載の方法も参考にできる。
こうして、感光層被形成層の表面に感光層13を形成して、第一電極を作製する。
本発明の製造方法においては、感光層13上に正孔輸送層3又は電子輸送層4を形成する。
− 正孔輸送層の形成 −
本発明の製造方法において、正孔輸送層を形成する方法は、上記式(S1)で表される化合物からなる正孔輸送剤を含む正孔輸送層を形成できれば特に制限されない。光電変換素子の正孔輸送層を本発明の正孔輸送膜の製造方法により形成する場合、感光層13又は導電性支持体11の表面で本発明の正孔輸送膜の製造方法を実施する方法が好ましい。
(本発明の正孔輸送膜の製造方法)
本発明の正孔輸送膜の製造方法は、上述の、本発明の正孔輸送層形成用組成物又は本発明の正孔輸送層形成用キット(以下、単に正孔輸送層形成用組成物等ということがある。)を用いることが好ましい。本発明の正孔輸送層形成用組成物、及び正孔輸送層形成用キットの正孔輸送剤組成物が含有する正孔輸送剤は、式(S1)で表わされる化合物が式1−a〜式1−gのいずれかで表される基を有する場合(式(S1)で表わされる化合物が硬化性化合物である場合)、式(S1)で表わされる化合物の硬化物を含んでいてもよいが、式(S1)で表わされる化合物の未硬化物を含むことが、正孔輸送膜の形成状態の点で、好ましい。したがって、本発明の正孔輸送膜の製造方法は、正孔輸送層形成用組成物中の式(S1)で表される化合物を積極的に硬化させない方法と、式(S1)で表される化合物を積極的に硬化させる方法との両方法を包含する。
式(S1)で表される化合物が硬化性化合物である場合、この硬化性化合物を積極的に硬化させない方法(後述する後処理等で硬化させる態様において正孔輸送層形成用組成物の塗布膜を形成する方法を含む。)としては、正孔輸送層形成用組成物を、感光層13の表面に塗布(浸漬塗布法を含む。)し、所望により乾燥する方法が挙げられる。この方法に用いる正孔輸送層形成用組成物は、式(S1)で表わされる化合物の未硬化物及び硬化物のいずれを含有していてもよい。また、この正孔輸送層形成用組成物は、上述の硬化剤又は硬化助剤を含有していてもよいが、含有していないこと(正孔輸送剤組成物)が好ましい。正孔輸送層形成用組成物を塗布する温度及び塗布時間は、特に限定されず、適宜に設定される。正孔輸送層形成用組成物をスピンコーティングによる塗布する場合、その条件としては、特に制限されないが、例えば、回転数50〜10,000rpmで塗布時間1〜600秒の条件とすることができる。また、塗布した正孔輸送層形成用組成物を乾燥する場合、乾燥条件は、正孔輸送剤の種類、正孔輸送剤の硬化工程等に応じて、適宜に設定される。この乾燥工程で正孔輸送剤を積極的に硬化させない場合、乾燥条件は、正孔輸送層形成用組成物中の式(S1)で表される化合物の硬化が完結しない条件とされる。通常、正孔輸送層形成用組成物を乾燥すると、正孔輸送剤、式1−a〜1−gのいずれかで表される基、更には硬化剤等の種類等によって、正孔輸送剤の一部が硬化する場合があるが、未硬化状態又は部分硬化状態(例えば、式1−a〜1−gのいずれかで表される基の総モル数に対して10モル%以下)となる乾燥条件が適用される。このような乾燥条件としては、加熱条件が好ましく、例えば100℃未満、好ましくは30℃以上100℃未満、より好ましくは40〜70℃の加熱条件を適用できる。正孔輸送層形成用組成物中の硬化性化合物が加熱処理で硬化しない場合、乾燥条件は、上記条件以外にも、後述する硬化工程における熱処理条件を採用することもできる。
一方、式(S1)で表わされる化合物が式1−h及び式1−iのいずれかで表される基を有する場合(式(S1)で表わされる化合物が非硬化性化合物である場合)、上記と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を、感光層13の表面に塗布し、所望により乾燥する方法が挙げられる。ただし、乾燥条件は、上記条件を採用してもよく、後述する硬化工程における熱処理条件を採用してもよい。
式(S1)で表される化合物が硬化性化合物である場合、この硬化性化合物を積極的に硬化させる方法としては、感光層13の表面上において式(S1)で表される化合物を硬化させることができれば、特に制限されず、正孔輸送層形成用組成物等の形態に応じて、適宜の方法を採用できる。この方法に用いる正孔輸送層形成用組成物は、式(S1)で表わされる化合物の未硬化物を含有している。
この方法において、硬化剤及び硬化助剤の、正孔輸送剤に対する使用量は上述の通りである。
以下に、式(S1)で表される化合物を積極的に硬化させる方法を具体的に説明する。
1.本発明の正孔輸送剤が式1−aで表されるエポキシ基を有する態様
本態様においては、正孔輸送層形成用組成物が上述の硬化剤を含有している場合、正孔輸送層形成用組成物を感光層の表面に塗布し、所望により乾燥することにより、エポキシ基を有する正孔輸送剤を硬化させることができる。このときの塗布条件及び乾燥条件は、特に制限されず、例えば、上述の、正孔輸送剤を積極的に硬化させない方法と同様の塗布条件、及び下記熱処理と同様の乾燥条件が挙げられる。
本態様においては、正孔輸送層形成用組成物を感光層の表面に塗布し、所望により乾燥した後に、硬化工程として、熱処理、酸処理、塩基処理及び活性エネルギー線照射処理の少なくとも1種の後処理を行う方法が好ましい。これにより、エポキシ基を有する正孔輸送剤を効果的に硬化させることができる。
熱処理としては、エポキシ基を硬化させることができる方法及び条件であれば特に制限されず、通常、エポキシ基の硬化が完結する条件とされる。ここで、エポキシ基の硬化が完結するとは、すべてのエポキシ基が硬化反応している態様に限定されず、本発明の効果を奏する範囲内に設定され、実際的には、エポキシ基の総モル数に対して10モル%以上のエポキシ基が硬化反応していればよい。熱処理における加熱条件としては、例えば、公知の加熱機を用いて、加熱温度30〜200℃で1分以上、加熱する方法及び条件が挙げられる。加熱温度は好ましくは100℃以上である。
酸処理及び塩基処理としては、それぞれ、エポキシ基を硬化させることができる方法及び条件であれば特に制限されず、例えば、正孔輸送層形成用組成物の塗布膜に上述の酸触媒又は塩基触媒を接触させる方法が挙げられる。ここで、正孔輸送層形成用組成物の塗布膜は、正孔輸送層形成用組成物を塗布することにより形成される膜をいい、塗布した正孔輸送層形成用組成物を乾燥する場合には、塗布乾燥膜を包含する。接触方法及び条件としては、特に制限されないが、例えば、感光層被形成層と光吸収剤との接触方法及び接触条件が挙げられる。
活性エネルギー線照射処理に用いる活性エネルギー線としては、特に制限されず、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。またプラズマも挙げられる。硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等の点で、紫外線が好ましい。
活性エネルギー線を照射する装置としては、特に制限されないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、Deep−UV光、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、無電極放電ランプ及び紫外線LED等を用いることができる。光照射のエネルギーは、特に制限されないが、例えば、1〜10J/cmであるのが好ましい。
電子線を照射する場合の条件としては、特に制限されないが、例えば、公知の電子線照射装置(EPS)を用いて、加速電圧30〜1000kVの電子線を1秒〜30分照射する条件が挙げられる。
プラズマを照射する場合の条件としては、特に制限されないが、例えば、公知のプラズマ線照射装置を用いて、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等を放電ガスとして、1秒〜30分照射する条件が挙げられる。
上記後処理は、正孔輸送層形成用組成物の組成に応じて、単独で行うこともできるが、2種以上を組み合わせて行うこともできる。
例えば、上記の後処理を行う好ましい方法においては、硬化剤を含有しない正孔輸送層形成用組成物を用いることもできる。
正孔輸送膜の形成状態の点で、上述の硬化剤及び光酸発生剤(硬化助剤)の少なくとも1種を含有する正孔輸送層形成用組成物を用いることが好ましい。これらの硬化剤又は硬化助剤を含有する正孔輸送層形成用組成物を用いる場合、熱処理、酸処理、塩基処理又は活性エネルギー線照射処理を単独で行うことができるが、好ましくは、酸処理、塩基処理及び活性エネルギー線照射処理と組み合わせて、これら処理の後に熱処理を行う。
また、硬化剤又は硬化助剤の含有に関わらず、正孔輸送層形成用組成物の塗布膜に、上述の硬化剤及び光酸発生剤の少なくとも1種を接触させることもできる。塗布膜と硬化剤又は硬化助剤との接触方法は、特に制限されず、例えば、感光層被形成層と光吸収剤との接触方法及び接触条件が挙げられるが、浸漬法よりも硬化剤又は硬化助剤を含む組成物を塗布膜の表面に塗布する方法が好ましい。こうして接触させた後に後処理を行う。硬化剤又は硬化助剤を含有しない正孔輸送層形成用組成物に硬化剤又は硬化助剤を接触させる方法においては、例えば上述の本発明の正孔輸送層形成用キットを用いることができる。
エポキシ基を有する正孔輸送剤の硬化物は、硬化剤の種類、硬化処理の種類等に応じて一義的ではないが、少なくともエポキシ基が開裂した構造を有し、例えば正孔輸送剤と硬化剤との重付加物が挙げられる。
2.本発明の正孔輸送剤が式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される基を有する態様
本態様においては、正孔輸送層形成用組成物を感光層の表面に塗布し、所望により乾燥した後に、硬化工程として、熱処理及び活性エネルギー線照射処理の少なくとも1種の後処理を行う方法が好ましい。熱処理及び活性エネルギー線照射処理、それらの条件は上述の通りである。これにより、上記基を有する正孔輸送剤を硬化させることができる。
本態様においては、硬化助剤(重合開始剤)を含有しない正孔輸送層形成用組成物を用いることもできる。ただし、この場合は、正孔輸送層形成用組成物の塗布膜に、重合開始剤を接触させた後に熱処理又は活性エネルギー線照射処理(好ましくは活性エネルギー線照射処理)を行う。塗布膜と重合開始剤との接触方法は、特に制限されず、例えば、感光層被形成層と光吸収剤との接触方法及び接触条件が挙げられるが、浸漬法よりも重合開始剤を含む組成物を塗布膜の表面に塗布する方法が好ましい。重合開始剤を含有しない正孔輸送層形成用組成物に重合開始剤を接触させる方法においては、例えば上述の本発明の正孔輸送層形成用キットを用いることができる。熱処理及び活性エネルギー線照射処理、それらの条件は上述の通りである。
正孔輸送膜の形成状態の点で、硬化助剤として上述の重合開始剤を含有する正孔輸送層形成用組成物を用いることが好ましい。重合開始剤を含有する正孔輸送層形成用組成物を用いる場合、上述の、熱処理又は活性エネルギー線照射処理を行うことができるが、活性エネルギー線照射処理を行うことが好ましい。
式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される炭素−炭素不飽和基を有する正孔輸送剤の硬化物としては、炭素−炭素不飽和基が互いに反応(ラジカル重合反応)した構造を有し、例えばラジカル重合物が挙げられる。
3.本発明の正孔輸送剤が式1−c、式1−d及び式1−eのいずれかで表される基を有する態様
本態様においては、正孔輸送層形成用組成物が硬化剤として上述の硬化剤を含有している場合、正孔輸送層形成用組成物を感光層の表面に塗布し、所望により乾燥した後に、硬化工程として、熱処理、酸処理及び塩基処理の少なくとも1種の後処理を行う方法が好ましい。熱処理、酸処理及び塩基処理、それらの条件は上述の通りである。これにより、上記基を有する正孔輸送剤を硬化させることができる。
本態様においては、硬化剤を含有しない正孔輸送層形成用組成物を用いることもできる。ただし、この場合は、正孔輸送層形成用組成物の塗布膜に上記硬化剤を接触させた後に、熱処理、酸処理及び塩基処理を行う。塗布膜と硬化剤との接触方法は、特に制限されず、例えば、感光層被形成層と光吸収剤との接触方法及び接触条件が挙げられるが、浸漬法よりも硬化剤を含む組成物を塗布膜の表面に塗布する方法が好ましい。熱処理、酸処理及び塩基処理、それらの条件は上述の通りである。硬化剤を含有しない正孔輸送層形成用組成物に上記硬化剤を接触させる方法においては、例えば上述の本発明の正孔輸送層形成用キットを用いることができる。
式1−c、式1−d及び式1−eのいずれかで表される基を有する正孔輸送剤の硬化物は、硬化剤の種類、硬化処理の種類等に応じて一義的ではないが、少なくとも、上記基と硬化剤とが付加反応してなる基若しくは結合((チオ)ウレタン結合、(チオ)ウレア、(チオ)カルバメート、イミド結合等)を有している。
本発明において、式(S1)で表される化合物の硬化物は、この化合物が有する基、更には硬化剤が反応して得られる硬化物であればよく、上記したものに限定されない。例えば、式(S1)で表される化合物が炭素−炭素不飽和基(例えば、上記式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される基)を有する場合、多官能チオール化合物との(光)エンチオール反応による硬化物、多官能アミン化合物又は多官能チオール化合物とのマイケル付加反応による硬化物が挙げられる。
上述のようにして、感光層13の表面に正孔輸送層を形成できる。
光電変換素子中の正孔輸送層を本発明の正孔輸送膜の製造方法で形成すると、正孔輸送層中において式(S1)で表される化合物を高い親和力で相互作用させることができ、光電変換素子の耐湿耐久性の向上に寄与する。特に、正孔輸送剤を硬化させる方法は、強固で疎水的な(密な)正孔輸送膜を形成でき、耐湿耐久性の更なる向上に寄与できる。
− 正孔注入層の形成 −
本発明の製造方法においては、正孔輸送層3を形成した後に、所望により正孔注入層を形成する。正孔注入層は、上述の材料を含有する正孔注入材料溶液を塗布し、乾燥して、又は、上述の材料を用いて乾式法(蒸着等)により、形成することができる。
− 電子輸送層の形成 −
電子輸送層4は、例えば、電子輸送材料を含有する電子輸送材料組成物を塗布し、乾燥して、形成することができる。塗布する温度及び塗布時間は、特に限定されず、適宜に設定される。電子輸送材料組成物の乾燥条件は、加熱条件が好ましく、通常、30〜200℃、好ましくは40〜110℃の加熱条件を適用できる。
− 第二電極の作製 −
本発明の製造方法においては、更に、正孔輸送層3、正孔注入層又は電子輸送層4上に第二電極2を形成する。第二電極2は、公知の方法により、形成できる。
こうして、本発明の光電変換素子を製造できる。
− 層形成条件等 −
各層の膜厚は、各層を形成する組成物(溶液又は分散液)の濃度、塗布回数(浸漬時間)を適宜に変更して、設定できる。例えば、膜厚が厚い感光層13B及び13Cを設ける場合には、感光層形成用組成物、又は、アンモニウム塩組成物若しくは金属塩組成物を複数回塗布、乾燥すればよい。
上述の各分散液及び組成物は、それぞれ、適宜の、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
光電変換素子の製造方法に使用する溶媒又は分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、更に、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒、スルフィド溶媒、及び、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒又は炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、γ−ブチロラクトン、n−プロピルスルフィド、クロロホルム、クロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)若しくはジメチルアセトアミド、又は、これらの混合溶媒が好ましい。
各層を形成する組成物又は分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の各塗布方法を用いることができる。中でも、スピンコート法、スクリーン印刷法、浸漬法等が好ましい。
塗布、乾燥等の各処理を行う際の雰囲気は、特に制限されないが、低湿度環境であることが好ましく、例えば、乾燥空気下、不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)が挙げられる。
本発明の光電変換素子は、適宜、アニール、ライトソーキング、酸素雰囲気下での放置等の効率安定化処理を行うこともできる。
<太陽電池の製造方法>
本発明の太陽電池は、上述の本発明の光電変換素子の製造方法を経て、製造できる。具体的には、上記のようにして製造した光電変換素子に対して、第一電極1及び第二電極2に外部回路6を接続することにより、太陽電池を製造できる。本発明の太陽電池の製造方法においては、外部回路6を接続する前又は後に、複数の光電変換素子を接続して光電変換素子ユニットを形成し、これを用いて太陽電池とすることもできる。
以下に実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。本発明において「室温」とは25℃を意味する。
合成例
以下に、実施例で用いる式(S1)で表される化合物の合成方法を詳しく説明するが、出発物質、色素中間体及び合成ルートはこれらに限定されるものではない。
[化合物S1−1の合成]
下記スキームに基づき、化合物S1−1を合成した。
Figure 2020077774
<ポリマーS1eの合成>
1gの4,4’−ジブロモトリフェニルアミンS1aと1モル当量の化合物S1bをトルエン−水混合液(体積比20/1)中で混合し、そこへ、アミンS1aに対して、5mol%のPd(PPhと2モル当量の炭酸カリウムを加えて、100℃に加温し、窒素雰囲気下で8時間攪拌した。その後、得られた混合物に、アミンS1aに対して、化合物S1cを0.1モル当量加えて1時間撹拌し、続けて化合物S1dを0.1モル当量加えて更に1時間撹拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、ポリマーS1eを1.1g得た。
化合物S1bは、Journal of Materials Chemistry,2012,vol.22,#16,p.7945に記載の方法に準じて合成した。
<化合物S1−1の合成>
得られたポリマーS1e全量を塩化メチレンに溶解して、原料であるアミンS1aに対して、0.2モル当量の化合物S1fと、ピリジン0.5モル当量を加え、30℃に加温して4時間撹拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水を加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S1−1を0.5g得た。
化合物S1−1の重量平均分子量及び数平均分子量を測定し、数平均分子量から重合度n3を算出した(以下、合成した他の化合物について同じ。)。
重量平均分子量:22000
数平均分子量:9500(n3=39)
[化合物S1−2の合成]
下記スキームに基づき、化合物S1−2を合成した。
Figure 2020077774
1gの4,4’−ジブロモトリフェニルアミンS1aと1.05モル当量の化合物S1bをトルエン中で混合し、アミンS1aに対して、5mol%のPd(PPhと2モル当量の炭酸カリウムを加え、100℃に加温し、窒素雰囲気下で8時間攪拌した。その後、得られた混合物に、アミンS1aに対して、化合物S1bを0.05モル当量加えて1時間撹拌し、続けて化合物S2aを0.2モル当量加えて更に1時間撹拌した。その後、得られた反応物を室温まで放冷した後、水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S1−2を0.7g得た。
重量平均分子量:31000
数平均分子量:14000(n3=58)
[化合物S1−3の合成]
下記スキームに基づき、化合物S1−3を合成した。
Figure 2020077774
<化合物S3bの合成>
8gの化合物S3aと1.05モル当量の二炭酸ジ−tert−ブチルと2モル当量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジンをテトラヒドロフラン(TFH)中で混合し、13時間攪拌した。その後、得られた反応物に水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S3bを6.3g得た。
化合物3bの構造は質量分析法(Mass Spectrometry:MS)により確認した。
MS−ESI m/z=348.1(M+H)
<化合物S3cの合成>
6gの化合物S3bと0.5モル当量の化合物S1bをトルエン中で混合し、そこへ、化合物S3bに対して、5mol%のPd(PPhと2モル当量の炭酸カリウムを加えて、100℃に加温し、窒素雰囲気下で36時間攪拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S3cを2.8g得た。
<化合物S3dの合成>
2.8gの化合物S3cをジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(TFA)(体積比10:1)の混合溶媒に加え、室温で3時間撹拌した。得られた反応物に水を加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで生成することで、化合物S3dを2.0g得た。
化合物3dの構造は質量分析法により確認した。
MS−ESI m/z=580.3(M+H)
<化合物S3fの合成>
2.0gの化合物S3dと3モル当量の化合物S3eトルエン中で混合し、化合物S3dに対して、5mol%の酢酸パラジウムと2モル当量のt−BuONaを加え、90℃で48時間撹拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S3fを1.7g得た。
<化合物S3gの合成>
1.7gの化合物S3fをTHFに溶解し、−78℃に冷却した。そこへ、2.5M n−BuLiヘキサン溶液を化合物S3fに対して2.1モル当量加えて、1時間撹拌した。その後、得られた混合物にB(OiPr)を化合物S3fに対して2.2モル当量加えて2時間撹拌した後、室温まで放冷した。得られた反応物に水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S3gを1.1g得た。なお、B(OiPr)中のiPrはイソプロピル基を示す。
化合物3fの構造は質量分析法により確認した。
MS−ESI m/z=890.2(M+H)
<化合物S3jの合成>
1.1gの化合物S3gと2.2モル当量の化合物S3hをトルエン中で混合し、化合物S3gに対して5mol%のPd(PPhと2モル当量の炭酸カリウムを加えて100℃に加温し、窒素雰囲気下で16時間攪拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後に水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S3iを0.6g得た。
<化合物S1−3の合成>
0.6gの化合物S3iと2.3モル当量の化合物S3jをTHF中で混合し、5モル当量のトリエチルアミンを加えて窒素雰囲気下で7時間攪拌した。得られた反応物に水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで、精製することで、化合物S1−3を0.3g得た。
化合物S1−3の構造は質量分析法により確認した。
MS−ESI m/z=966.4(M+H)
[化合物S1−4の合成]
下記スキームに基づき、化合物S1−4を合成した。
Figure 2020077774
1.4gの化合物S3iと2.2モル当量の化合物S4aを、塩化メチレンと水の混合溶媒(体積比1:1)中で混合し、0℃に冷却した。そこへ、化合物S3iに対して8モル当量の炭酸水素ナトリウムを加えて1時間撹拌した後、室温まで放冷し、更に2時間撹拌した。得られた反応物に飽和塩化ナトリウム水を加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S1−4を0.5g得た。
化合物S1−4の構造は質量分析法により確認した。
MS−ESI m/z=998.3(M+H)
[化合物S1−5〜S1−9の合成]
化合物S1−2の合成において、化合物S2aの代わりに、4−ブロモフタル酸無水物、4−ブロモスチレン、1−ブロモ−4−エチニルベンゼン、4−ブロモベンゾニトリル又は1−ブロモ−4−トリメチルシリルベンゼンをそれぞれ用いたこと以外は、化合物S1−2の合成と同様にして、化合物S1−5〜S1−9をそれぞれ合成した。
<化合物S1−5の同定>
重量平均分子量:24000
数平均分子量:13000(n3=53)
<化合物S1−6の同定>
重量平均分子量:18000
数平均分子量:9700(n3=40)
<化合物S1−7の同定>
重量平均分子量:41000
数平均分子量:21000(n3=86)
<化合物S1−8の同定>
重量平均分子量:30000
数平均分子量:14000(n3=58)
<化合物S1−9の同定>
重量平均分子量:50000
数平均分子量:22000(n3=90)
[化合物S1−10の合成]
下記スキームに基づき、化合物S1−10を合成した。
Figure 2020077774
<ポリマーS10cの合成>
2gの化合物S10aをTHFに溶解させ、5mol%のPd(PPhと2モル当量の炭酸カリウムを加えて50℃に加温し、窒素雰囲気下で5時間攪拌した後。その後、得られた混合物に、化合物S10aに対して、化合物S10bを0.2モル当量加えて1時間撹拌し、続けて化合物S1cを0.4モル当量加えて更に1時間撹拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、ポリマーS10cを1.2g得た。
化合物S10aは、Journal of the American Chemical Society,2009,vol.131,#31,p.10814又はJournal of the American Chemical Society,2013,vol.135,#1,p.474記載の方法に準じて合成した。
<化合物S1−10の合成>
得られたポリマーS10c全量を塩化メチレン中に溶解して、原料である化合物S10aに対して0.2モル当量の化合物S1fとピリジン0.5モル当量を加え、30℃に加温しで4時間撹拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水を加え、分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S1−10を0.7g得た。
重量平均分子量:25000
数平均分子量:12000(n3=49)
[化合物S1−11の合成]
化合物S1−10の合成において、化合物S1cの代わりに4−ブロモベンゾニトリルを用いたこと(化合物S1fとの反応は行っていない)以外は、化合物S1−10の合成と同様にして、化合物S1−11を合成した。
重量平均分子量:31000
数平均分子量:16000(n3=66)
[化合物S1−12の合成]
化合物S1−1の合成において、化合物S1a〜S1dに代えて下記化合物S12a〜S12dをそれぞれ用いたこと(化合物S1fとの反応は行っていない)以外は、下記スキームに基づいて、化合物S1−1の合成に準じて、化合物S1−12を合成した。
重量平均分子量:19000
数平均分子量:9000(n3=34)
Figure 2020077774
化合物S12aは、RSC Advances,2014,vol.4,#65,p.34332に記載の方法に準じて合成した。
また、化合物S12bは、化合物S12aとビス(ピナコラト)ジボロンを公知の方法で反応させて合成した。
[化合物S1−13の合成]
下記スキームに基づき、化合物S1−13を合成した。
Figure 2020077774
<化合物S13e及びS13fの合成>
化合物S1−1の合成において、化合物S1a〜S1dに代えて上記化合物S13a〜S13dをそれぞれ用いたこと以外は、化合物S1−1の合成に準じて、化合物S13eを合成した。得られた化合物S13eをクロロホルムに溶解し、原料である化合物S13aに対して2.5モル当量のBBrを加えて3時間撹拌した。得られた反応液を水に滴化して分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S13fを得た。
<化合物S1−13の合成>
1gの化合物S13fを塩化メチレンに溶解して、0.5gの化合物S13gと、化合物S13gに対してピリジン0.5モル当量を加え、30℃に加温して4時間撹拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水を加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S1−13を0.3g得た。
重量平均分子量:25000
数平均分子量:13000(n3=41)
[化合物S1−14の合成]
下記スキームに基づき、化合物S1−14を合成した。
Figure 2020077774
<S14bの合成>
1.5gの化合物S14aと2.1モル当量のS1cをTHFに溶解させ、化合物S14aに対して、5mol%のPd(PPhと2モル当量の炭酸カリウムを加えて50℃に加温し、窒素雰囲気下で5時間攪拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水とクロロホルムを加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、S14bを0.6g得た。
S14aは、Dyes and Pigments,2017,143,416に記載の方法に準じて合成した。
<S1−14の合成>
S14b0.6gを塩化メチレンに溶解して、2モル当量の化合物S1fと、ピリジン4モル当量を加え、30℃に加温して4時間撹拌した。得られた反応物を室温まで放冷した後、水を加えて分液し、有機層を濃縮した後にカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物S1−14を0.2g得た。
化合物S1−4の構造は質量分析法により確認した。
MS−ESI m/z=900.4(M+H)
(n3=3)
実施例1
[光電変換素子(試料No.101)の製造]
以下に示す手順により、図1に示される光電変換素子10Aを製造した。なお、感光層13の膜厚が大きい場合は、図2に示される光電変換素子10Bに対応することになる。
<第一電極の作製>
− 導電性支持体11の作製 −
ガラス基板(透明基板11a、厚さ2mm)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(透明電極11b、膜厚300nm)を形成し、導電性支持体11を作製した。
− ブロッキング層14の形成 −
まず、チタニウム ジイソプロポキシド ビス(アセチルアセトナート)の15質量%イソプロパノール溶液(アルドリッチ社製)を1−ブタノールで希釈して、0.02M(モル/L)のブロッキング層用溶液を調製した。
次いで、このブロッキング層用溶液を用いてスプレー熱分解法により、450℃にて、導電性支持体11のSnO導電膜上に酸化チタンからなるブロッキング層14(膜厚50nm)を形成した。
− 多孔質層12の形成 −
まず、酸化チタン(アナターゼ、平均粒径20nm)のエタノール分散液に、エチルセルロース、ラウリン酸及びテルピネオールを加えて、酸化チタンペーストを調製した。
次いで、調製した酸化チタンペーストをブロッキング層14の上にスクリーン印刷法で塗布し、空気中、500℃で3時間焼成した。その後、得られた酸化チタンの焼成体を、40mMのTiCl水溶液に浸した後、60℃で1時間加熱し、続けて500℃で30分間加熱して、TiOからなる多孔質層12(膜厚250nm)を形成した。
− 感光層13Aの形成 −
(光吸収剤溶液Aの調製)
メチルアミンの40質量%メタノール溶液(27.86mL)と、57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)を、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CHNHIの粗体を得た。得られたCHNHIの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶し、得られた結晶をろ取し、60℃で5時間減圧乾燥して、精製CHNHIを得た。
次いで、精製CHNHIとPbIとをモル比3:1でDMF中、60℃で12時間攪拌混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Aを調製した。
(感光層の形成)
調製した光吸収剤溶液Aを導電性支持体11上に成膜した多孔質層12上に、スピンコート法(2000rpmで60秒)により塗布(塗布温度:25℃)した後、塗布した光吸収剤溶液Aをホットプレートにより100℃で60分間乾燥して、CHNHPbIのペロブスカイト化合物からなる感光層13A(膜厚300nm(多孔質層12の膜厚250nmを含む。))を形成した。
こうして第一電極1Aを作製した。
<正孔輸送層3Aの形成>
− 正孔輸送層形成用組成物No.101の調製 −
正孔輸送材料として上記化合物S1−1からなる正孔輸送剤(20mg)をクロロホルム(1mL)に溶解した後ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用組成物(溶液)No.101を調製した。
− 正孔輸送層の形成 −
次いで、正孔輸送層形成用組成物No.101を、スピンコート法(3,000rpmで30秒)により、第一電極1Aの表面上に形成した感光層13A上に塗布(塗布温度:25℃)し、塗布した正孔輸送層形成用組成物を乾燥(70℃、30分)して、固体状の正孔輸送層3A(膜厚60nm)を形成した。この正孔輸送層3A中の、化合物S1−1の含有量は100質量%であった。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物S1−1(未硬化物)を含有していた。
<第二電極2の作製>
正孔輸送層上に蒸着法により金を蒸着して、第二電極2(膜厚100nm)を作製した。
こうして、光電変換素子10A(試料No.101)を製造した。
各膜厚は、上記方法に従って走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、測定した。
[光電変換素子(試料No.102〜114)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、正孔輸送剤としての化合物S1−1を表1に示す化合物に変更したこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.102〜114の光電変換素子10をそれぞれ製造した。
各試料No.の光電変換素子の正孔輸送層は、それぞれ、正孔輸送剤として化合物S1−2〜S1−14(未硬化物)を含有していた。
[光電変換素子(試料No.115)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.115の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物No.101の塗布乾燥膜に、紫外光・可視光硬化用コンベアシステム:アイグランデージ(アイグラフィックス社製)及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmの紫外線(UV)光を1分照射した(光照射エネルギー:1000〜2000mJ/cm)。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として、化合物S1−1の炭素−炭素不飽和基が互いにラジカル重合反応した重合物を約100質量%含有していた。以下、試料No.116〜123の正孔輸送層も同様の重合物を正孔輸送剤として含有していた。
[光電変換素子(試料No.117及び119)の製造]
試料No.115の光電変換素子の製造において、UV照射に代えて下記条件で電子線(EB)照射又はプラズマ照射したこと以外は、試料No.115の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.117及び119の光電変換素子10をそれぞれ製造した。
電子線照射条件:加速電圧125KV、照射時間2分
プラズマ照射条件:放電ガスとして窒素ガス、照射時間30秒
[光電変換素子(試料No.116)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.116の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
− 表面処理組成物No.116の調製 −
ラジカル重合開始剤V−601(商品名、和光純薬工業社製)をメタノールに溶解して、濃度5質量%の表面処理組成物(硬化用組成物)No.116を調製した。
− 正孔輸送層の形成 −
試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、上記表面処理組成物No.116をスピンコート法(2,000rpmで30秒)により塗布(塗布温度:25℃)した(スピンコート条件はラジカル重合開始剤の使用量が上述の範囲内となるように設定した。以下、スピンコート法によりラジカル重合開始剤を塗布する場合において同じ。)。その後、塗布した表面処理組成物No.116に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmのUV光を10分照射した。
[光電変換素子(試料No.118及び120)の製造]
試料No.116の光電変換素子の製造において、UV照射に代えて下記条件で電子線(EB)照射又はプラズマ照射したこと以外は、試料No.116の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.118及び120の光電変換素子10をそれぞれ製造した。
電子線照射条件:加速電圧125KV、照射時間2分
プラズマ照射条件:放電ガスとして窒素ガス、照射時間30秒
[光電変換素子(試料No.121)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.121の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜を、更に100℃で1時間加熱処理(GB内)した。
[光電変換素子(試料No.122)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.122の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
− 正孔輸送層形成用組成物No.122の調製 −
正孔輸送材料として化合物S1−1からなる正孔輸送剤(30mg)と、ラジカル重合開始剤V−601(商品名、1mg)とをクロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用組成物No.122を調製した。
− 正孔輸送層の形成 −
試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、調製した正孔輸送層形成用組成物No.122を感光層13A上に塗布して30℃で乾燥した(化合物S1−1の硬化は完結していない)。得られた正孔輸送層形成用組成物No.122の塗布乾燥膜に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmの紫外線(UV)光を30分照射した。こうして化合物S1−1をラジカル重合させた。
[光電変換素子(試料No.123)の製造]
試料No.122の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.122の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.123の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
試料No.122の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、上記表面処理組成物No.116をスピンコート法(2,000rpmで30秒)により塗布(塗布温度:25℃)した。その後、塗布した表面処理組成物No.116に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmのUV光を30分照射した。
[光電変換素子(試料No.124及び125)の製造]
試料No.102の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.124及び125の光電変換素子10をそれぞれ製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、下記塩基酸処理液No.124(試料No.124)又は酸処理液No.125(試料No.125)をスピンコート法(2,000rpmで30秒)により塗布(塗布温度:25℃)した後、100℃で1時間加熱処理した。スピンコート条件は酸若しくは塩基の使用量が上述の範囲内となるように設定した(以下、スピンコート法により酸処理液又は塩基処理液を塗布する場合において同じ)。
酸処理液No.125:三ふっ化ほう素モノエチルアミン錯体をエタノールに溶解して、濃度5質量%の酸処理液(硬化用組成物)を調製した。
塩基処理液No.124:ジエチレントリアミン(DTA)をエタノールに溶解して、濃度5質量%の塩基処理液(硬化用組成物)を調製した。
正孔輸送層は、いずれも、正孔輸送剤として、化合物S1−2のエポキシ基が開裂した構造を有する硬化物を含有していた。以下、試料No.126〜128の正孔輸送層も同様の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.126)の製造]
試料No.102の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.126の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmの紫外線(UV)光を2分照射した。
[光電変換素子(試料No.127)の製造]
試料No.102の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.127の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
− 表面処理組成物No.127の調製 −
光酸発生剤WPAG−370(商品名、Diphenyl(4−methoxyphenyl)sulfonium trifluoromethanesulfonate、富士フイルム和光純薬社製)をメタノールに溶解して、濃度5質量%の表面処理組成物(硬化用組成物)No.127を調製した。
− 正孔輸送層の形成 −
試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、上記表面処理組成物No.127をスピンコート法(2,000rpmで30秒)により塗布(塗布温度:25℃)した。スピンコート条件は光酸発生剤の使用量が上述の範囲内となるように設定した(以下、スピンコート法により光酸発生剤を塗布する場合において同じ)。その後、塗布した表面処理組成物に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmのUV光を2分照射し、更に100℃で1時間加熱処理した。
[光電変換素子(試料No.128)の製造]
試料No.102の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.128の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
− 正孔輸送層形成用組成物No.128の調製 −
正孔輸送材料として化合物S1−2からなる正孔輸送剤(20mg)と、光酸発生剤WPAG−370(1mg)とを、クロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用組成物No.128を調製した。
− 正孔輸送層の形成 −
試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、調製した正孔輸送層形成用組成物No.128を感光層13A上に塗布して乾燥した。得られた正孔輸送層形成用組成物No.128の塗布乾燥膜に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmの紫外線(UV)光を2分照射した後、更に100℃で1時間加熱処理した。
[光電変換素子(試料No.129)の製造]
試料No.127の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送層形成用組成物No.129を用いたこと以外は、試料No.127の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.129の光電変換素子10を製造した。
<No.129の調製>
正孔輸送材料として化合物S1−2からなる正孔輸送剤(20mg)と、上記例示硬化剤b5(0.4mg)とをクロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用組成物No.129を調製した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として、化合物S1−2のエポキシ基と硬化剤b5の水酸基とが反応した重付加物(化合物S1−2の硬化物)を含有していた。以下、試料No.130〜133の正孔輸送層も同様の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.130)の製造]
試料No.102の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.130の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
− 正孔輸送層形成用組成物No.130の調製 −
正孔輸送材料として化合物S1−2からなる正孔輸送剤(20mg)と、上記例示硬化剤b5(0.4mg)と、光酸発生剤WPAG−370(1mg)とをクロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用組成物No.130を調製した。
− 正孔輸送層の形成 −
試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、調製した正孔輸送層形成用組成物No.130を感光層13A上に塗布して乾燥した。得られた正孔輸送層形成用組成物No.130の塗布乾燥膜に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmの紫外線(UV)光を30分照射した後、更に100℃で1時間加熱処理した。
正孔輸送層3A中には、化合物S1−2のエポキシ基が化合物b5の水酸基と反応した、化合物S1−2の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.131)の製造]
試料No.125の光電変換素子の製造において、上記正孔輸送層形成用組成物No.129を用いたこと以外は、試料No.125の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.131の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料No.132)の製造]
試料No.102の光電変換素子の製造において、上記正孔輸送層形成用組成物No.129を用いたこと以外は、試料No.102の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.132の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料No.133)の製造]
試料No.124の光電変換素子の製造において、上記正孔輸送層形成用組成物No.129を用いたこと以外は、試料No.124の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.133の光電変換素子10を製造した。
[光電変換素子(試料No.134、136〜139)の製造]
試料No.121の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送層形成用組成物No.134、136〜139をそれぞれ用いたこと以外は、試料No.121の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.134、136〜139の光電変換素子10をそれぞれ製造した。
− 正孔輸送層形成用組成物No.134、136〜139の調製 −
正孔輸送材料として化合物S1−3からなる正孔輸送剤(20mg)と、表1に示す上記例示硬化剤(0.4mg)とを、クロロホルム(1mL)に溶解して、正孔輸送層形成用組成物No.134、136〜139をそれぞれ調製した。
化合物S1−3は、正孔輸送層形成用組成物の乾燥時には例示硬化剤b1と完全に硬化反応せず、後処理としての熱処理時に硬化反応が完結して、化合物S1−3の硬化物を形成した。
試料No.134、136〜139の正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物S1−3と例示硬化物とが硬化反応して、順に、ウレタン結合、ウレア結合、−NHCOS−結合、ウレタン結合及びウレタン結合を有する、化合物S1−3の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.135)の製造]
試料No.124の光電変換素子の製造において、正孔輸送層形成用組成物No.134及び下記の塩基処理液No.135を用いたこと以外は、試料No.124の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.135の光電変換素子10を製造した。
− 塩基処理液(硬化用組成物)No.135の調製 −
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)をエタノールに溶解して、濃度5質量%の塩基処理液No.135を調製した。
化合物S1−3は、正孔輸送層形成用組成物の乾燥時には例示硬化剤b1と完全に硬化反応せず、後処理としての熱処理時に硬化反応が完結して、化合物S1−3の硬化物を形成した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物S1−3と例示硬化物b1とが硬化反応してウレタン結合を有する、化合物S1−3の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.140)の製造]
試料No.103の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層3Aを形成したこと以外は、試料No.103の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.140の光電変換素子10を製造した。
<正孔輸送層3Aの形成>
− 表面処理組成物No.140の調製 −
上記例示硬化剤b1をメタノールに溶解して、濃度5質量%の表面処理組成物(硬化用組成物)No.140を調製した。
− 正孔輸送層の形成 −
試料No.103の光電変換素子の製造と同様にして、感光層13A上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、上記表面処理組成物No.140をスピンコート法(2,000rpmで30秒)により塗布(塗布温度:25℃)した後、50℃で5分乾燥した。スピンコート条件は例示硬化剤b1の使用量が上述の範囲内となるように設定した(以下、スピンコート法により硬化剤を塗布する場合において同じ)。次いで、塩基処理液No.135(DABCO)をスピンコート法(2,000rpmで10秒)により塗布(塗布温度:25℃)した後、100℃で1時間加熱処理した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物S1−3と例示硬化物b1とが硬化反応してウレタン結合を有する、化合物S1−3の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.141)の製造]
試料No.140の光電変換素子の製造において、塩基処理液No.135による塩基処理を行わなかったこと以外は、試料No.140の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.141の光電変換素子10を製造した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物S1−3と例示硬化物b1とが硬化反応してウレタン結合を有する、化合物S1−3の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.142)の製造]
試料No.141の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送層形成用組成物No.142を用いたこと以外は、試料No.141の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.142の光電変換素子10を製造した。
− 正孔輸送層形成用組成物No.142の調製 −
正孔輸送材料として化合物S1−4からなる正孔輸送剤(20mg)をクロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用組成物No.142を調製した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物S1−4と例示硬化物b1とが硬化反応してウレタン結合を有する、化合物S1−4の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.143)の製造]
試料No.141の光電変換素子の製造において、下記正孔輸送層形成用組成物No.143及び下記表面処理組成物No.143を用いたこと以外は、試料No.141の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.143の光電変換素子10を製造した。
− 正孔輸送層形成用組成物No.143の調製 −
正孔輸送材料として化合物S1−5からなる正孔輸送剤(20mg)をクロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用組成物No.143を調製した。
− 表面処理組成物No.143の調製 −
上記例示硬化剤b6をメタノールに溶解して、濃度5質量%の表面処理組成物(硬化用組成物)No.143を調製した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物S1−5と例示硬化物b6とが硬化反応してウレア結合を有する、化合物S1−5の硬化物を含有していた。
[光電変換素子(試料No.c101)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、下記正孔輸送層形成用溶液No.c1を用いたこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.c101の光電変換素子を製造した。
<正孔輸送層形成用溶液No.c1の調製>
正孔輸送材料としてのspiro−OMeTAD(180mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させた。このクロロベンゼン溶液に、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(170mg)をアセトニトリル(1mL)に溶解させたアセトニトリル溶液37.5μLと、t−ブチルピリジン(TBP、17.5μL)とを加えて混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用溶液No.c1を調製した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤としてspiro−OMeTADを含有していた。
[光電変換素子(試料No.c102)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、下記正孔輸送層形成用溶液No.c102を用いたこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.c102の光電変換素子を製造した。
<正孔輸送層形成用溶液No.c102の調製>
正孔輸送材料としてのPTAA(重量平均分子量:16000、数平均分子量:8000、アルドリッチ社製、40mg)をクロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用溶液No.c102を調製した。
正孔輸送層は、正孔輸送剤としてPTAAを100質量%含有していた。
[光電変換素子(試料No.c103〜c106)の製造]
試料No.101の光電変換素子の製造において、化合物S1−1を表1に示す化合物に変更したこと以外は、試料No.101の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.c103〜c106の光電変換素子をそれぞれ製造した。
各正孔輸送層は、正孔輸送剤として化合物c1〜c4(未硬化物)をそれぞれ100質量%含有していた。
[光電変換素子(試料No.c107)の製造]
試料No.123の光電変換素子の製造において、下記正孔輸送層形成用溶液No.c107を用い、かつUV照射後に、更に100℃で1時間加熱処理したこと以外は、試料No.123の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.c107の光電変換素子を製造した。
− 正孔輸送層形成用溶液No.c107の調製 −
正孔輸送材料としてのPTAA(アルドリッチ社製、20mg)と、ラジカル重合開始剤V−601(商品名、1.5mg)をクロロホルム(1mL)に溶解した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用溶液No.c102を調製した。
[光電変換素子(試料No.c108及びc109)の製造]
試料No.123の光電変換素子の製造において、化合物S1−1を表1に示す化合物に変更し、かつUV照射後に、更に100℃で1時間加熱処理したこと以外は、試料No.123の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.c108及びc109の光電変換素子をそれぞれ製造した。
試料No.c107の正孔輸送層は、正孔輸送剤としてPTAAを100質量%含有していた。試料No.c108及びc109の正孔輸送層は、例示化合物c1又はc5のラジカル反応物(硬化物)を含有していた。
試料No.c101〜c109に用いた化合物(正孔輸送剤)を以下に示す。
Figure 2020077774
試料No.c101に用いたspiro−MeTADはテトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニル−アミン)−9,9’−スピロ−ビフルオレンであり、試料No.c102及びc107に用いたPTAAはポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン]である。試料No.c103〜c106、c108及びc109に用いた正孔輸送剤c1〜c5を以下に示す。
化合物c1:化合物S1bと2当量の化合物S1cをカップリング反応させて得たアルコール体と、化合物S1fを2当量反応させて、合成した。
化合物c2及びc3は、それぞれ、化合物S1−2の合成方法に準じて、合成した。化合物c2及びc3の重量平均分子量及び数平均分子量は下記の通りであった。
<化合物c2の同定>
重量平均分子量:30,000
数平均分子量:9,000(n3=37)
<化合物c3の同定>
重量平均分子量:28000
数平均分子量:9,500(n3=39)
化合物c4:化合物S1bの代わりに下記化合物c4aを用いたこと以外は化合物c1と同様にして化合物c4を合成した。下記化合物C4aは公知の合成方法に準拠して合成した。
化合物c5は、公知の合成方法に準拠して合成した。
Figure 2020077774
[耐湿耐久性の評価]
以下のようにして、初期の光電変換効率と、耐湿環境下で保存した後の光電変換効率とを測定して、耐湿耐久性を評価した。その結果を表1に示す。
<初期の光電変換効率の測定>
上記のようにして各試料No.の光電変換素子をそれぞれ6検体ずつ製造した。
各試料No.の光電変換素子6検体それぞれについて、電池特性試験を行って、初期の光電変換効率を測定した。測定した6検体の光電変換効率の平均値を求め、これを各試料No.の光電変換素子の初期の光電変換効率(ηINI/%)とした。
電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5Gフィルタを通したキセノンランプから1000W/mの擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、初期の光電変換効率を求めた。
光電変換素子No.101〜143について、初期の光電変換効率は十分な値を示していた。
<保存後の光電変換効率の測定及び耐湿耐久性の評価>
各試料No.の光電変換素子6検体それぞれを、温度40℃、湿度80%RHの恒温恒湿槽に48時間保存した後に、上記<初期の光電変換効率の測定>と同様にして電池特性試験を行い、保存後の光電変換効率を測定した。測定した6検体の光電変換効率の平均値を求め、これを各試料No.の光電変換素子の、保存後の光電変換効率(ηAFT/%)とした。
光電変換素子の耐湿耐久性は、下記式によって算出される光電変換効率の低下率が下記の評価基準のいずれに含まれるによって、評価した。
本試験において、評価ランク「F」以上が合格レベルである。

低下率(%)=100−[100×(ηAFT)/(ηINI)]

− 耐湿耐久性の評価基準 −
A: 17%未満
B: 17%以上、19%未満
C: 19%以上、21%未満
D: 21%以上、26%未満
E: 26%以上、29%未満
F: 29%以上、33%未満
G: 33%以上、38%未満
H: 38%以上
Figure 2020077774
表1の結果から以下のことが分かる。
本発明で規定する化合物からなる正孔輸送剤を含有する正孔輸送層を備えていない光電変換素子は耐湿耐久性に劣ることが分かる。すなわち、光電変換素子No.c101、c102及びc107の正孔輸送層は通常の正孔輸送剤(未硬化物)を含有するものである。光電変換素子No.c103及びc106の正孔輸送層は本発明で規定する式(S1)のn3を満たさない正孔輸送剤c1及びc4を含有するものである。光電変換素子No.c104及びc105の正孔輸送層は本発明で規定する各式で表わされる基を有さない正孔輸送剤c2又はc3を含有するものである。光電変換素子No.c108及びc109の正孔輸送層は正孔輸送剤c1又は本発明で規定する式(S1)を満たさない正孔輸送剤c5の硬化物を含有するものである。
これに対して、本発明で規定する化合物からなる正孔輸送剤を含有する正孔輸送層を備えた光電変換素子は耐湿耐久性に優れることが分かる。特に、正孔輸送剤として式(S1)で表わされる化合物の硬化物を含有する正孔輸送層を備えた光電変換素子No.115〜143はより優れた耐湿耐久性を示している。
実施例2
本例は、ペロブスカイト化合物を変更して、光電変換素子の耐湿耐久性を評価した。
[光電変換素子(試料No.201〜203)の製造]
実施例1における試料No.101、115及び116の光電変換素子の製造において、感光層を下記のようにして形成したこと以外は、試料No.101、115及び116の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.201〜203の光電変換素子10Aをそれぞれ製造した。
<光吸収剤溶液Bの調製>
ヨウ化セシウム39mgと、ホルムアミジンヨウ化水素酸塩(Formamidine Hydroiodide)516mgと、CHNHBr67mgと、ヨウ化鉛1.73gとを、DMFとDMSO(ジメチルスルホキシド)との混合溶媒(DMF/DMSO=4/1(体積比))に溶解した。得られた液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Bを調製した。
<感光層13Aの形成>
調製した光吸収剤溶液Bを導電性支持体11上に成膜した多孔質層12上に、スピンコート法(5000rpmで50秒)により塗布(塗布温度:25℃)した。また、塗布中にクロロベンゼン(500μL)をピペッターで塗布層表面に吹きかけた。その後、塗布した光吸収剤溶液Bをホットプレートにより100℃で60分間乾燥して、Cs0.04FA0.8(CHNH0.16PbI2.84Br0.16のペロブスカイト化合物からなる感光層13A(膜厚200nm(多孔質層12の膜厚250nmを含まない))を設けた。
[光電変換素子(試料No.c201)の製造]
試料No.201の光電変換素子の製造において、実施例1における試料No.c102で調製した正孔輸送層形成用溶液No.c102を用いたこと以外は、試料No.201の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.c201の光電変換素子10を製造した。
<耐湿耐久性の評価>
製造した各光電変換素子について、実施例1と同様にして、耐湿耐久性を評価した。その結果を表2に示す。
Figure 2020077774
表2の結果から、実施例1の光電変換素子に対してペロブスカイト化合物の種類を変更しても、正孔輸送剤として本発明で規定する化合物を用いると、実施例1と同様に優れた耐湿耐久性を示すことが分かる。
実施例3
本例は、図5に示す層構成を有する光電変換素子10Eを製造して、光電変換素子の耐湿耐久性を評価した。
[光電変換素子(試料No.301)の製造]
<第一電極の作製>
− 正孔輸送層16の形成 −
ITO基板(導電性基板11、透明電極11bの膜厚300nm)上に、実施例1における試料No.101で調製した正孔輸送層形成用組成物No.101をスピンコート法(3,000rpmで30秒)により塗布(塗布温度:25℃)した。塗布した正孔輸送層形成用組成物No.101を乾燥(100℃で10分間)して、固体状の正孔輸送層16を形成した。
− 感光層13Cの形成 −
実施例2における試料No.201で調製した光吸収剤溶液Bを正孔輸送層16上にスピンコート法(5000rpmで50秒)により塗布(塗布温度:25℃)した。塗布した光吸収剤溶液Bをホットプレートにより100℃で60分間乾燥して、Cs0.04FA0.8(CHNH0.16PbI2.84Br0.16のペロブスカイト化合物からなる感光層13C(膜厚200nm)を設けた。
こうして第一電極1Eを作製した。
<電子輸送層4の形成>
− 電子輸送材料溶液の調製 −
[6,6]−phenyl−C61−butyric acid methyl ester(PC61BM、20mg/mL)をクロロベンゼン(1mL)に溶解して、電子輸送材料溶液を調整した。
− 電子輸送層4の形成 −
次いで、感光層13C上に、調製した電子輸送層用溶液をスピンコート法により塗布(塗布温度:25℃)した。塗布した電子輸送層用溶液を乾燥(120℃で30分間)して、固体状の電子輸送層4(膜厚100nm)を成膜した。
<第二電極2の作製>
電子輸送層4上に蒸着法によりアルミニウムを蒸着して、第二電極2(膜厚100nm)を作製した。
こうして、光電変換素子10E(試料No.301)を製造した。
[光電変換素子(試料No.302)の製造]
試料No.301の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層16を形成したこと以外は、試料No.301の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.302の光電変換素子10Eを製造した。
<正孔輸送層16の形成>
試料No.301の光電変換素子の製造と同様にして、ITO基板上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmの紫外線(UV)光を30分照射した。
[光電変換素子(試料No.303)の製造]
試料No.301の光電変換素子の製造において、下記の正孔輸送膜の製造方法により正孔輸送層16を形成したこと以外は、試料No.301の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.303の光電変換素子10Eを製造した。
<正孔輸送層16の形成>
試料No.301の光電変換素子の製造と同様にして、ITO基板上に塗布した正孔輸送層形成用組成物の塗布乾燥膜に、実施例1における試料No.116で調製した表面処理組成物No.116をスピンコート法(3000rpmで50秒)により塗布(塗布温度:25℃)した。その後、塗布した表面処理組成物No.116に、上記アイグランデージ及びメタルハライドランプを用いて200〜400nmのUV光を30分照射した。
[光電変換素子(試料No.c301)の製造]
試料No.301の光電変換素子の製造において、実施例1における試料No.c102で調製した正孔輸送層形成用溶液No.c102を用いたこと以外は、試料No.301の光電変換素子の製造と同様にして、試料No.c301の光電変換素子10を製造した。
<耐湿耐久性の評価>
製造した各光電変換素子について、実施例1と同様にして、耐湿耐久性を評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2020077774
表3の結果から、実施例1の光電変換素子に対してペロブスカイト化合物の種類及び光電変換素子の層構成を変更しても、正孔輸送剤として本発明で規定する化合物を用いると、実施例1と同様に優れた耐湿耐久性を示すことが分かる。
以上の結果から次のことが分かる。すなわち、本発明の光電変換素子及び太陽電池は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いていても、優れた耐湿耐久性を示す。
また、本発明の正孔輸送剤及び正孔輸送層形成用組成物は、光吸収剤としてペロブスカイト化合物を含有する感光層を備えた光電変換素子の正孔輸送層を形成する材料として用いられることにより、光電変換効率の低下を抑制できる。更に、本発明の正孔輸送膜を製造する方法は、光電変換素子の正孔輸送層の形成法として適用されることにより、光電変換効率の低下を抑制できる正孔輸送膜を製造することができる。この製造方法により製造される正孔輸送膜は、光電変換素子の正孔輸送層として用いることにより、光電変換効率の低下を抑制できる。
1A〜1E 電極(第一電極)
11 導電性支持体
11a 支持体
11b 透明電極
12 多孔質層
13A〜13C 感光層
14 ブロッキング層
2 第二電極
3A、3B、16 正孔輸送層
4、15 電子輸送層
6 外部回路(リード)
10A〜10E 光電変換素子
100A〜100E 太陽電池を利用したシステム
M 電動モーター

Claims (19)

  1. 下記式(S1)で表わされる化合物からなる正孔輸送剤。
    Figure 2020077774
    式(S1)中、Arx1及びArx2はアリール基又はヘテロアリール基を示す。
    Ar及びArはアリーレン基又はヘテロアリーレン基を示す。
    は置換基を示す。
    n1及びn2は0以上の整数である。ただし、n1+n2≧1である。
    n3は3以上の整数である。
    ただし、前記化合物は下記式1−a〜1−iのいずれかで表される基を少なくとも1つ有している。
    Figure 2020077774
    式中、Rは水素原子又は置換基を示す。*は前記化合物との連結部位を示す。eは1以上の整数である。環Aはe個の前記連結部位それぞれが結合する前記化合物を構成する原子を連結する原子鎖とともに5員若しくは6員の環を形成するのに必要な原子群を示す。
  2. 前記化合物が、前記式1−a〜1−iのいずれかで表される基を少なくとも2つ有する請求項1に記載の正孔輸送剤。
  3. 前記式(S1)中のArx1及びArx2の少なくとも一方が、前記式1−a〜1−iのいずれかで表わされる基を有している、請求項1又は2に記載の正孔輸送剤。
  4. 前記化合物が、前記式1−a〜1−eのいずれかで表わされる基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の正孔輸送剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の正孔輸送剤を含有する正孔輸送層形成用組成物。
  6. 下記式(S1)で表される化合物からなる正孔輸送剤を含有する正孔輸送層形成用組成物を塗布する、正孔輸送膜の製膜方法。
    Figure 2020077774
    式(S1)中、Arx1及びArx2はアリール基又はヘテロアリール基を示す。
    Ar及びArはアリーレン基又はヘテロアリーレン基を示す。
    は置換基を示す。
    n1及びn2は0以上の整数である。ただし、n1+n2≧1である。
    n3は3以上の整数である。
    ただし、上記化合物は下記式1−a〜1−iのいずれかで表される基を少なくとも1つ有している。
    Figure 2020077774
    式中、Rは水素原子又は置換基を示す。*は前記化合物との連結部位を示す。eは1以上の整数である。環Aはe個の前記連結部位それぞれが結合する前記化合物を構成する原子を連結する原子鎖とともに5員若しくは6員の環を形成するのに必要な原子群を示す。
  7. 前記化合物が前記式1−b、式1−f及び式1−gのいずれかで表される基を少なくとも一つ有する場合、前記正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、熱処理及び活性エネルギー線照射処理の少なくとも1種の後処理を行う、請求項6に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  8. 前記正孔輸送層形成用組成物が重合開始剤を含有する、請求項7に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  9. 前記正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、重合開始剤と接触させ、次いで活性エネルギー線照射処理を行う、請求項7又は8に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  10. 前記化合物が前記式1−aで表される基を少なくとも一つ有する場合、前記正孔輸送層形成用組成物が、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物を含有する、請求項6に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  11. 前記化合物が前記式1−aで表される基を少なくとも一つ有する場合、前記正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、熱処理、酸処理、塩基処理及び活性エネルギー線照射処理の少なくとも1種の後処理を行う、請求項6に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  12. 前記正孔輸送層形成用組成物が、 水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物、及び光酸発生剤の少なくとも1種を含有する、請求項11に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  13. 前記後処理を行う前に、前記正孔輸送層形成用組成物の塗布膜に、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物、及び光酸発生剤の少なくとも1種と接触させる、請求項11又は12に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  14. 前記化合物が前記式1−c、式1−d及び式1−eのいずれかで表される基を少なくとも一つ有し、かつ前記正孔輸送層形成用組成物が、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物を含有する場合、該正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、熱処理、酸処理及び塩基処理の少なくとも1種の後処理を行う、請求項6に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  15. 前記化合物が前記式1−c、式1−d及び式1−eのいずれかで表される基を少なくとも一つ有する場合、前記正孔輸送層形成用組成物を塗布した後に、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びそれらの塩構造から選ばれる官能基を少なくとも2つ有する多官能化合物と接触させ、次いで熱処理、酸処理及び塩基処理の少なくとも1種の後処理を行う、請求項6に記載の正孔輸送膜の製膜方法。
  16. 光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する電極と、対極と、前記導電性支持体と対極との間の正孔輸送層と、を有する光電変換素子であって、
    前記正孔輸送層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の正孔輸送剤を含有する、光電変換素子。
  17. 前記正孔輸送層が、請求項6〜15のいずれか1項に記載の正孔輸送膜の製造方法により成膜された正孔輸送膜からなる、請求項16に記載の光電変換素子。
  18. 前記光吸収剤が、ペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含む、請求項16又は17に記載の光電変換素子。
  19. 請求項16〜18のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
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