JP2020077587A - 二次電池の使用方法 - Google Patents

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智之 河合
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Abstract

【課題】特定の二次電池の60℃を超える高温下での使用方法を提供する。【解決手段】 正極と、負極と、セパレータと、電解質としてスルホンイミド塩を1.8〜4mol/Lの濃度で含有し、かつ、非水溶媒としてジメチルカーボネートを非水溶媒全体に対して50体積%以上又は50モル%以上で含有する電解液と、を備える二次電池を、60℃を超える温度で使用することを特徴とする二次電池の使用方法。【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池の使用方法に関する。
一般に、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、主な構成要素として、正極、負極及び電解液を備える。そして、電解液には、適切な電解質が適切な濃度範囲で非水溶媒に溶解されている。例えば、リチウムイオン二次電池の電解液には、LiClO、LiPF、LiBF、CFSOLi、(CFSONLi等のリチウム塩が電解質として溶解されているのが一般的であり、ここで、電解液におけるリチウム塩の濃度は、イオン伝導度の関係から、概ね1mol/Lとされるのが一般的である。
電解液に用いられる非水溶媒(有機溶媒)には、電解質を好適に溶解させるために、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネートを約30体積%以上で混合して用いるのが一般的である。
実際に、特許文献1には、エチレンカーボネートを33体積%含む混合有機溶媒を用い、かつ、LiPFを1mol/Lの濃度で含む電解液を用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。また、特許文献2には、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを66体積%含む混合有機溶媒を用い、かつ、(CFSONLiを1mol/Lの濃度で含む電解液を用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。
最近になって、特許文献3や特許文献4などにより、電解質として金属塩を高濃度で含む電解液及び当該電解液を具備するリチウムイオン二次電池が報告された。
特に、特許文献4には、特定の金属塩に対する特定有機溶媒のモル比が3〜5の電解液が、物性に優れるものとして記載されており、さらに、金属塩が(FSONLiであり有機溶媒がジメチルカーボネートである電解液において、上記モル比が5付近であり、金属塩濃度が2mol/L付近の電解液がイオン伝導度に最も優れることが、具体的な試験結果と共に記載されている(評価例1、表3−1、表4−1、図1などを参照。)。加えて、特許文献4には、同文献に記載の電解液が低温条件下においても、凝固し難いことが記載されている(評価例4、評価例5、評価例6などを参照。)。
特開2013−149477号公報 特開2013−134922号公報 国際公開第2015/045389号 国際公開第2016/063468号
さて、一般に、二次電池の使用範囲の上限は60℃と考えられている。使用範囲の上限が60℃であることは、地球上において屋外気温が最も高くなる乾燥帯においても、年間極値の累年平均値が50℃であり、絶対極値の温度でさえも55℃であることから、一応、合理的と考えられる(JIS C 60721−2−1:2018を参照。)。
しかしながら、屋外気温が高い環境下においては、倉庫内、工場内、車内、ボンネット内などの空間における温度が屋外気温よりもさらに高くなり得ることは、経験上、現代人にとり、周知の事項といえる。さらには、人工衛星や月面などの地球外での二次電池の使用も予定されており、かかる環境下においては、局所的に60℃を超える場面が想定される。また、二次電池を作動させる際には、二次電池自体が発熱し得るので、環境温度よりも二次電池の温度が高くなることが想定される。
以上のとおり、60℃を超える温度で二次電池を使用する場面が想定される。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、60℃を超える高温下でも好適に使用し得る二次電池を提供すること、換言すれば、特定の二次電池の高温下での使用方法を提供することを目的とする。
本発明者が、数多くの試行錯誤を重ねながら鋭意検討を行ったところ、以下の知見を得た。
1)電解質として一般的に汎用されているLiPFよりも、(FSONLiの方が、耐熱性に優れる。
2)LiPFを含有する電解液を備える二次電池は、高温での保存後に抵抗が著しく上昇するのに対して、(FSONLiを含有する電解液を備える二次電池は、高温での保存後であっても、抵抗がほとんど上昇しない。
3)ジメチルカーボネートを用いた電解液はイオン伝導度に優れる。
4)電解質が(FSONLiであり、非水溶媒がジメチルカーボネートである電解液において、室温付近でのイオン伝導度は(FSONLiの濃度が2mol/L付近の電解液で最大となり、かつ、いずれの濃度においても温度上昇に伴いイオン伝導度が向上する。
5)電解質が(FSONLiであり、非水溶媒がジメチルカーボネートである電解液において、温度上昇に対するイオン伝導度の向上の割合は、(FSONLiの濃度が3mol/L付近の電解液で最大となる。
これらの知見に基づき、本発明者は、本発明を完成するに至った。
本発明の二次電池の使用方法は、
正極と、負極と、セパレータと、
電解質としてスルホンイミド塩を1.8〜4mol/Lの濃度で含有し、かつ、非水溶媒としてジメチルカーボネートを非水溶媒全体に対して50体積%以上又は50モル%以上で含有する電解液と、
を備える二次電池を、60℃を超える温度で使用することを特徴とする。
本発明により、特定の二次電池の60℃を超える高温下での使用方法を提供できる。
非水溶媒としてジメチルカーボネートを採用した電解液についての、(FSONLiの濃度と25℃におけるイオン伝導度との関係のグラフである。 (FSONLiの濃度と温度上昇に対するイオン伝導度の向上の割合との関係のグラフである。 評価例4のNMRチャートである。 評価例5における初期放電容量に対する回復容量の割合を示したグラフである。 評価例5における初期抵抗値に対する保存後抵抗値の割合を示したグラフである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の二次電池の使用方法は、
正極と、負極と、セパレータと、
電解質としてスルホンイミド塩を1.8〜4mol/Lの濃度で含有し、かつ、非水溶媒としてジメチルカーボネートを非水溶媒全体に対して50体積%以上又は50モル%以上で含有する電解液(以下、本発明の電解液ということがある。)と、
を備える二次電池(以下、本発明の二次電池ということがある。)を、60℃を超える温度(以下、使用温度ということがある。)で使用することを特徴とする。
本発明の二次電池の使用方法における使用とは、本発明の二次電池を電源として用いることを意味する。すなわち、本発明における使用とは、本発明の二次電池を電源として作動させることや、本発明の二次電池を電源として配置することなどを意味する。
なお、本発明における使用には、二次電池の出荷前のエージングや活性化などの製造行為は該当しない。エージングや活性化などの製造行為は、二次電池を電源として使用していないからである。
使用温度(t℃)の範囲としては、60<t≦120、65≦t≦115、70≦t≦110、75≦t≦105、80≦t≦100を例示できる。
なお、本発明の二次電池は、60℃を超える温度条件下のみで好適に使用可能となるのではなく、60℃以下の温度条件下でも当然に使用可能である。
本発明の二次電池の使用方法は、本発明の二次電池を、60℃を超える温度条件下のみで使用することを規定しているのではなく、60℃を超える温度で使用するすべての態様を包含する。すなわち、本発明の二次電池の使用方法は、60℃以下の温度と60℃を超える温度との両温度範囲で使用する態様、例えば、最低温度が−20℃であり最高温度が70℃となる環境で使用する態様も包含する。
本発明の電解液は、電解質としてスルホンイミド塩を1.8〜4mol/Lの濃度で含有し、かつ、非水溶媒としてジメチルカーボネートを非水溶媒全体に対して50体積%以上又は50モル%以上で含有する。
スルホンイミド塩は耐熱性に優れるため、60℃を超える温度条件下であっても、過剰な分解が抑制される。また、スルホンイミド塩は、二次電池の充放電時に一部が分解して、正極及び/又は負極の表面に安定なSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成し得る。SEI被膜の存在に因り、電解液と、正極及び/又は負極との直接接触が抑制されるので、電解液、正極及び負極の劣化が抑制される。加えて、スルホンイミド塩に由来するSEIはS=O構造を有していると予想される。SEIにおけるS=OのOがLiイオンなどの電荷担体の配位サイトとなることで、Liイオンなどの電荷担体はSEI中を好適に伝導できる。その結果、正極及び負極の抵抗上昇は抑制される。
スルホンイミド塩のカチオンとしては、二次電池の電荷担体となる金属であれば、制限は無い。二次電池の電荷担体となる金属として、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムを例示できる。
スルホンイミド塩のアニオンとしては、(FSON、(CFSON、(CSON、FSO(CFSO)N、(SOCFCFSO)N、(SOCFCFCFSO)N、FSO(CHSO)N、FSO(CSO)N、FSO(CSO)Nを例示できる。
本発明の電解液は、スルホンイミド塩を1.8〜4mol/Lの濃度で含有する。かかる濃度範囲は、室温付近でのイオン伝導度に優れ、かつ、温度上昇に対するイオン伝導度の向上率に優れる範囲である。
スルホンイミド塩の濃度が上昇するのに伴い、本発明の電解液に含有されるジメチルカーボネートの気化温度が上昇する。ジメチルカーボネートの沸点は90℃であるため、スルホンイミド塩の濃度が低すぎると、90℃付近で使用した際に、ジメチルカーボネートが気化するおそれがある。
他方、スルホンイミド塩の濃度が高すぎると、電解液が高粘度となるため、イオン伝導度が著しく低下する場合がある。
本発明の二次電池を、高温のみではなく、室温付近や室温以下の温度でも使用することを考慮すると、スルホンイミド塩の濃度は1.8〜3.5mol/Lの範囲が好ましく、1.9〜3.2mol/Lの範囲がより好ましく、2〜3mol/Lの範囲がさらに好ましい。
本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の電解液には、スルホンイミド塩以外の電解質を添加してもよい。
本発明の電解液における電解質全体に対するスルホンイミド塩の割合としては、80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%がさらに好ましい。
本発明の電解液は、非水溶媒としてジメチルカーボネートを非水溶媒全体に対して50体積%以上又は50モル%以上で含有する。ジメチルカーボネートが主溶媒であるため、本発明の電解液はイオン伝導度に優れる。また、エチレンカーボネートやフルオロエチレンカーボネートなどの環状カーボネートは、高温での充放電に対する耐性に劣るため、正極及び/又は負極の表面に高抵抗の分解物(重合体)を生成すると考えられているが、ジメチルカーボネートは高温での充放電に対する耐性に優れているため、抵抗の原因となる物質の生成が抑制されるといえる。
非水溶媒全体に対するジメチルカーボネートの体積%としては、50〜100体積%が好ましく、60〜100体積%がより好ましく、70〜100体積%がさらに好ましく、80〜100体積%が特に好ましく、90〜100体積%が最も好ましい。
非水溶媒全体に対するジメチルカーボネートのモル%としては、50〜100モル%が好ましく、60〜100モル%がより好ましく、70〜100モル%がさらに好ましく、80〜100モル%が特に好ましく、90〜100モル%が最も好ましい。
本発明の電解液は、副溶媒として、ジメチルカーボネート以外の非水溶媒を含有してもよい。ジメチルカーボネートと、ジメチルカーボネート以外の非水溶媒を併用することで、ジメチルカーボネートの気化温度が上昇する。そのため、高温条件下でのジメチルカーボネートの気化を抑制できる。
ジメチルカーボネート以外の非水溶媒の割合としては、1〜50体積%又は1〜50モル%が好ましく、3〜30体積%又は3〜30モル%がより好ましく、5〜20体積%又は5〜20モル%がさらに好ましく、7〜15体積%又は7〜15モル%が特に好ましい。
ジメチルカーボネート以外の非水溶媒としては、二次電池に採用可能な非水溶媒であれば限定は無い。ジメチルカーボネート以外の非水溶媒としては、1種類を採用してもよいし、複数種類を採用してもよい。
ジメチルカーボネート以外の具体的な非水溶媒として、ジメチルカーボネート以外のカーボネートを例示できる。
カーボネートとしては、鎖状カーボネートと環状カーボネートがある。
高温での充放電に対する耐性の点からは、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネートが好ましい。
また、環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを例示できる。エチレンカーボネートやフルオロエチレンカーボネートと比較して、分解物の抵抗が低い点から、プロピレンカーボネートが好ましい。
ジメチルカーボネート以外の具体的な非水溶媒として、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、マロノニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル等のエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、イソプロピルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、クロロメチルイソシアネート等のイソシアネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のエステル類、グリシジルメチルエーテル、エポキシブタン、2−エチルオキシラン等のエポキシ類、オキサゾール、2−エチルオキサゾール、オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物、ジメチルスルホン、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン等のニトロ類、フラン、フルフラール等のフラン類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状エステル類、チオフェン、ピリジン等の芳香族複素環類、テトラヒドロ−4−ピロン、1−メチルピロリジン、N−メチルモルフォリン等の複素環類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類を挙げることができる。
また、本発明の電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の添加剤を加えてもよい。公知の添加剤の一例として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネートに代表される不飽和結合を有する環状カーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネートに代表されるカーボネート化合物、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物に代表されるカルボン酸無水物、エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィドに代表される含硫黄化合物、1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミドに代表される含窒素化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩に代表されるリン酸塩、ヘプタン、オクタン、シクロヘプタンに代表される飽和炭化水素化合物、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフランに代表される不飽和炭化水素化合物が挙げられる。
本発明の二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、本発明の電解液を備える。以下、本発明の二次電池の一態様である本発明のリチウムイオン二次電池について説明する。
正極は、集電体と、集電体の表面に形成された正極活物質層を有する。正極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
集電体は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はなく、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムとは、純アルミニウムを意味する。純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
集電体は炭素や炭素と樹脂の複合体などの公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。高温条件下では、集電体と正極活物質層との密着性の低下が想定される。よって、集電体と正極活物質層との密着性を維持するために、集電体の表面の形状は、凹凸形状であるのが好ましい。
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。例えば、正極活物質として、層状岩塩構造のLiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、層状岩塩構造のLiNiCoAl(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、及びスピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体(S)、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウム等の電荷担体を含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておく必要がある。電荷担体は、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、電荷担体がリチウムである場合には、リチウム箔を正極及び/又は負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質としては、層状岩塩構造のLiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、層状岩塩構造のLiNiCoAl(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)を採用することが好ましい。
層状岩塩構造の一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが0.1≦b≦0.95、0.01≦c≦0.5、0.01≦d≦0.5の範囲であることが好ましく、0.3≦b≦0.9、0.03≦c≦0.5、0.03≦d≦0.3の範囲であることがより好ましく、0.4≦b≦0.9、0.05≦c≦0.4、0.05≦d≦0.2の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
具体的な正極活物質として、スピネル構造のLixyMn2-y4(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素、0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。より具体的には、LiMn、LiNi0.5Mn1.5を例示できる。
具体的な正極活物質として、オリビン構造のLiMPO(MはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、B、Te、Moから選ばれる少なくとも1の元素である。hは0<h<2を満足する。)を例示できる。LiMPOのMは、Mn、Fe、Co、Ni、Mg、V、Teから選ばれる少なくとも1の元素であるのが好ましく、また、Mが2種類以上の元素で構成されるのがさらに好ましい。また、hは0.6<h<1.1であるのが好ましい。当該Mは、Mn、Fe及びVから選択されるのがより好ましく、h=1であるのがより好ましい。
LiMPOとしては、Mn及びFeが必須の構成元素であるLiMnFePO(x、yは、x+y=1、0<x<1、0<y<1を満足する。)で表されるものが、さらに好ましい。x及びyの範囲として、0.5≦x≦0.9、0.1≦y≦0.5や、0.6≦x≦0.8、0.2≦y≦0.4も例示できる。
オリビン構造の正極活物質としてはLiFePOが汎用されているが、Mn及びFeが共存するLiMnFePOは、LiFePOよりも反応電位が高いことが知られている。
正極の結着剤及び導電助剤は負極で説明するものを適宜適切に採用すればよい。
負極は、集電体と、集電体の表面に形成された負極活物質層を有する。
集電体は、正極で説明したものを、適宜適切に採用すればよい。
負極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る負極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
より具体的な負極活物質として、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、いわゆるハードカーボンである難黒鉛化性炭素、いわゆるソフトカーボンである易黒鉛化性炭素を例示できる。
具体的な負極活物質として、スズを含む材料を例示できる。より具体的には、Sn単体、Cu−SnやCo−Snなどのスズ合金、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物を例示できる。アモルファススズ酸化物としてはSnB0.40.63.1を例示でき、スズケイ素酸化物としてはSnSiOを例示できる。
具体的な負極活物質として、Li4+xTi5+y12(−1≦x≦4、−1≦y≦1))などのスピネル構造のチタン酸リチウム、LiTiなどのラムスデライト構造のチタン酸リチウムが例示できる。
具体的な負極活物質として、ケイ素を含む材料であるSi含有負極活物質を例示できる。Si含有負極活物質としては、Siを含有し、負極活物質として機能するものであればよい。具体的なSi含有負極活物質としては、ケイ素単体、SiOx(0.3≦x≦1.6)、Siと他の金属との合金、国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料を例示できる。Si含有負極活物質は炭素で被覆されていてもよい。炭素で被覆されたSi含有負極活物質は導電性に優れる。
結着剤は活物質や導電助剤などを集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、結着剤として、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーを結着剤として具備する本発明のリチウムイオン二次電池は、より好適に容量を維持できる。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。中でも、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸などの分子中にカルボキシル基を含むポリマー、又は、ポリ(p−スチレンスルホン酸)などのスルホ基を含むポリマーが好ましい。
ポリアクリル酸、あるいはアクリル酸とビニルスルホン酸との共重合体など、カルボキシル基及び/又はスルホ基を多く含むポリマーは水溶性となる。親水基を有するポリマーは、水溶性ポリマーであることが好ましく、化学構造でいうと、一分子中に複数のカルボキシル基及び/又はスルホ基を含むポリマーが好ましい。
分子中にカルボキシル基を含むポリマーは、例えば、酸モノマーを重合する方法や、ポリマーにカルボキシル基を付与する方法などで製造することができる。酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンジェリカ酸、チグリン酸など分子中に一つのカルボキシル基をもつ酸モノマー、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ペンテン二酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸など分子内に二つ以上のカルボキシル基をもつ酸モノマーなどが例示される。
上記の酸モノマーから選ばれる二種以上の酸モノマーを重合してなる共重合ポリマーを結着剤として用いてもよい。
また、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーを、ジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
活物質層中の結着剤の配合割合は、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
活物質層中の導電助剤の配合割合は、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含むスラリー状の組成物を調製し、これを集電体の表面に塗布後、乾燥して電極とする。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。また、上記スラリー状の組成物には、分散剤を添加してもよい。活物質層は集電体の片面に形成させてもよいが、集電体の両面に形成させるのが好ましい。電極密度を高めるべく、乾燥後の電極を圧縮するのが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
60℃を超える温度で使用することを特徴とする本発明の二次電池の使用方法を鑑みると、セパレータの材料としては、高温状態においても、その機能が維持されるものが好ましい。そのようなものとして、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアラミド、セルロース、セラミックスを例示できる。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法について述べる。
正極及び負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体及び負極の集電体から外部に通ずる正極端子及び負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に本発明の電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、高温での使用に適している。そのため、本発明のリチウムイオン二次電池においては、一般のリチウムイオン二次電池に具備される冷却機構や放熱機構を簡素化して採用することも可能である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、高温環境下での使用に適しているため、高温となり得る場所での電源として使用するのが好ましい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、具体例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの具体例によって限定されるものではない。
(評価例1)
エチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートに、(FSONLiを溶解して、表1に示す電解液を製造した。各電解液につき、以下の条件で、25℃でのイオン伝導度を測定した。結果を表1に示す。また、図1に、非水溶媒としてジメチルカーボネートを採用した電解液についての、(FSONLiの濃度と25℃におけるイオン伝導度の関係をグラフで示す。
イオン伝導度測定条件
Ar雰囲気下、白金極を備えたセル定数既知のガラス製セルに、電解液を封入し、25℃、10kHzでのインピーダンスを測定した。インピーダンスの測定結果から、イオン伝導度を算出した。測定機器はSolartron 147055BEC(ソーラトロン社)を使用した。
表1の結果から、非水溶媒としてエチルメチルカーボネートを採用した電解液よりもジメチルカーボネートを採用した電解液の方が、イオン伝導度に優れるといえる。
また、図1のグラフから、電解質が(FSONLiであり、非水溶媒がジメチルカーボネートの電解液においては、濃度1.8〜2.4mol/L程度の範囲内に、25℃におけるイオン伝導度の極大が存在すると考えられる。
(評価例2)
ジメチルカーボネートに(FSONLiを溶解した電解液につき、評価例1と同様の方法で、25℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃でのイオン伝導度を測定した。なお、評価例2の測定は評価例1の測定とは別の日に行った。
結果を表2に示す。
表2の結果から、電解液の温度上昇に伴い、電解液のイオン伝導度が向上することがわかる。
また、電解液の各濃度毎に、各温度での測定値から、温度上昇に対するイオン伝導度の向上の割合(d(イオン伝導度)/d(温度))を算出した。結果を表3に示し、(FSONLiの濃度と温度上昇に対するイオン伝導度の向上の割合との関係をグラフで図2に示す。
さらに、測定値から近似曲線を算出して、濃度2.0mol/L及び3.0mol/Lの電解液の100℃におけるイオン伝導度を推定した。結果を表3に示す。
表3及び図2の結果から、濃度2〜3.5mol/Lの範囲内に、温度上昇に対するイオン伝導度の向上の割合の極大が存在すると考えられる。
(評価例3)
ジメチルカーボネート又はジメチルカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒に(FSONLiを溶解して、表4に示す電解液を製造した。各電解液を袋に密閉して昇温し、袋が膨張する温度、すなわち電解液の気化温度を測定した。
結果を表4に示す。以下の表において、DMCはジメチルカーボネートの略称であり、ECはエチレンカーボネートの略称である。
ジメチルカーボネートの沸点は90℃である。表4の結果から、(FSONLiの濃度が増加するのに伴い、電解液の気化温度も上昇することがわかる。また、電解液の非水溶媒としてジメチルカーボネート以外の非水溶媒が存在することで、電解液の気化温度が上昇することがわかる。
本発明の電解液においては、90℃以上であっても電解液の気化が抑制されている。そのため、本発明の二次電池は、90℃以上の温度条件下でも、作動し得ると考えられる。
(実施例1)
ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒に(FSONLiを溶解して、実施例1の電解液を製造した。実施例1の電解液における(FSONLiの濃度は2.4mol/Lであり、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートのモル比は9:1である。
正極活物質であるLiNi0.5Co0.35Mn0.15で表される層状岩塩構造のリチウム含有金属酸化物90質量部、導電助剤であるアセチレンブラック5質量部及び鱗片状黒鉛3質量部、並びに、結着剤であるポリフッ化ビニリデン2質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを製造した。集電体として厚み15μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の両面に、上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を120℃の炉内で乾燥することでN−メチル−2−ピロリドンを揮発により除去した。その後、このアルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で120℃、6時間加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔を得た。これを正極とした。
負極活物質である球状黒鉛98質量部、並びに結着剤であるスチレンブタジエンゴム1質量部及びカルボキシメチルセルロース1質量部を混合した。この混合物を適量のイオン交換水に分散させて、スラリーを製造した。集電体として厚み10μmの銅箔を準備した。この銅箔の両面に、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥して水を除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を真空乾燥機で100℃、6時間加熱乾燥して、負極活物質層が形成された銅箔を得た。これを負極とした。
セパレータとして、厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔膜を準備した。
正極及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回して、極板群とした。この極板群を実施例1の電解液とともに角型のケースに収容することで、実施例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例2)
ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒に(FSONLiを溶解して、実施例2の電解液を製造した。実施例2の電解液における(FSONLiの濃度は2.0mol/Lであり、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートのモル比は7:3である。
実施例2の電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒にLiPFを溶解して、比較例1の電解液を製造した。比較例1の電解液におけるLiPFの濃度は1mol/Lであり、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの体積比は3:3:4である。比較例1の電解液は、従来の一般的な電解液である。
比較例1の電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例4)
実施例1の電解液を、25℃、40℃、80℃、95℃、100℃の恒温槽中で24時間保存した。保存後の実施例1の電解液を19F−NMRで分析した。比較例1の電解液を、25℃、40℃の恒温槽中で24時間保存した。保存後の比較例1の電解液を19F−NMRで分析した。
それぞれのNMRチャートを図3に示す。なお、図3のLiFSIとは(FSONLiの略称である。
図3から、比較例1の電解液は40℃での保存にて分解物が著しく増加したことがわかるが、実施例1の電解液は95℃での保存においても分解物が検出されなかった。
電解質として一般的に汎用されているLiPFよりも、(FSONLiの方が、耐熱性に著しく優れるといえる。
(評価例5)
25℃の条件下、実施例1のリチウムイオン二次電池を0.33Cの電流で4.1Vまで充電し、その後、0.33Cの電流で3Vまで放電した。この時の放電容量を初期放電容量とした。また、25℃の条件下、実施例1のリチウムイオン二次電池をSOC(state of charge)56%に調整した上で、電流125Aで10秒間充電した。この際の電圧の変動値と電流値から抵抗値を算出し、これを初期抵抗値とした。
実施例1のリチウムイオン二次電池を、SOC80%に調整し、60℃の恒温槽で保存した。所定期間経過後に恒温槽の温度を25℃にして、リチウムイオン二次電池を3Vまで放電した後に、0.33Cの電流で4.1Vまで充電し、その後、0.33Cの電流で3Vまで放電した。この時の放電容量を回復容量とした。
回復容量測定後の実施例1のリチウムイオン二次電池をSOC56%に調整した上で、電流125Aで10秒間充電した。この際の電圧の変動値と電流値から抵抗値を算出し、保存後抵抗値とした。
保存後抵抗値測定後の実施例1のリチウムイオン二次電池を再度SOC80%に調整した上で、恒温槽の温度を60℃にして、リチウムイオン二次電池を保存した。所定期間経過後に、上述したのと同様の方法で、回復容量及び保存後抵抗値の測定を行った。これらの測定を、60℃での保存期間が576時間となるまで実施した。
続いて70℃での保存条件下での測定を、70℃での保存期間が525時間となるまで実施した。さらに続いて80℃での保存条件下での測定を、80℃での保存期間が405時間となるまで実施した。
実施例2のリチウムイオン二次電池及び比較例1のリチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
初期放電容量に対する回復容量の割合を示したグラフを図4に示し、初期抵抗値に対する保存後抵抗値の割合を示したグラフを図5に示す。
図4から、比較例1のリチウムイオン二次電池と比較して、実施例1及び実施例2のリチウムイオン二次電池は、回復容量に優れていることがわかる。同様に、図5から、比較例1のリチウムイオン二次電池と比較して、実施例1及び実施例2のリチウムイオン二次電池は、保存後抵抗値の上昇が抑制されていることがわかる。
以上の結果から、本発明の二次電池は、高温条件に対する耐性に優れているといえる。

Claims (4)

  1. 正極と、負極と、セパレータと、
    電解質としてスルホンイミド塩を1.8〜4mol/Lの濃度で含有し、かつ、非水溶媒としてジメチルカーボネートを非水溶媒全体に対して50体積%以上又は50モル%以上で含有する電解液と、
    を備える二次電池を、60℃を超える温度で使用することを特徴とする二次電池の使用方法。
  2. 前記電解液が、ジメチルカーボネート以外のカーボネートを非水溶媒全体に対して1〜50体積%又は1〜50モル%で含有する、請求項1に記載の二次電池の使用方法。
  3. 前記カーボネートがプロピレンカーボネートである請求項2に記載の二次電池の使用方法。
  4. 前記スルホンイミド塩のアニオンの化学構造が(FSONである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池の使用方法。
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