図1〜図14は、本発明によるベルト固定装置の一実施の形態を説明するための図である。このうち図1には、ベルト固定装置が用いられる幼児座席を備えた幼児座席付き自転車の全体構成が示されている。図1に示すように、本実施の形態による幼児座席付き自転車1は、幼児座席10と、幼児座席10を取り付けられた自転車2と、を含む。また、図2は、自転車2に取り付けられた幼児座席10を後方から見た図である。
なお、本明細書中において、自転車2に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、自転車2を運転する運転者を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」を意味する。したがって、「前後方向」とは、図1における紙面の左右の方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、自転車2を運転する運転者が向く側であり、図1における紙面の右側が自転車2の前側となる。一方、「上下方向」とは前後方向に直交するとともに接地面に直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「幅方向」とは、横方向であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。
また、本明細書中において、幼児座席10およびその構成要素(ベルト固定装置60を含む)に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、自転車2に取り付けられた幼児座席10に着座する幼児を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」を意味する。したがって、「前後方向」とは、図1における紙面の左右の方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、幼児座席10に着座する幼児が向く側であり、図1における紙面の右側が幼児座席10およびその構成要素の前側となる。一方、「上下方向」とは前後方向に直交するとともに、自転車2の接地面に直交する方向である。したがって、上記接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「幅方向」とは、横方向であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
上述したように、幼児座席付き自転車1は、幼児座席10と、幼児座席10を取り付けられた自転車2と、を含む。
まず、自転車2について説明する。自転車2は、概ね前後方向に延びる主フレーム部3と、主フレーム部3の前端に接続されたフロントフォーク4と、フロントフォーク4の下端部に回転可能に支持された前輪5aと、主フレーム部3の後端部に回転可能に支持された後輪5bと、を含む。フロントフォーク4は、概ね上下方向に沿って延びる軸線を中心として回動可能となっている。また、前輪5a及び後輪5bは、幅方向に沿った軸線を中心として回転可能となっている。さらに、自転車2は、フロントフォーク4の上端部に接続されたハンドル6と、主フレーム部3の長手方向の中央から上方に延び出すシートパイプ3aに支持されたサドル7と、サドル7の後方かつ後輪5bの上方に設けられた荷台8と、を含む。荷台8は、主フレーム部3の後端部から上方に延び出す荷台支持部材3bによって支持されている。
次に、図1および図2を参照してハンドル6について説明する。図2は、ハンドル6を後方から、すなわちサドル7の側から見た図である。ハンドル6は、運転者が前輪5aの向きを操作するために使用されるものである。ハンドル6は、フロントフォーク4の上端に固定され、フロントフォーク4と共に主フレーム部3に対して回転可能となっている。したがって、ハンドル6を回転させるとフロントフォーク4が保持する前輪5aの向きが変わる。
図2に示すように、ハンドル6は、U字状に形成されたハンドル本体6aを含む。ハンドル本体6aは、全体として水平方向に直線状に延びる中央直線部6bと、中央直線部6bの両側で上下方向に延びる一対の上下方向直線部6c,6dと、上下方向直線部6c,6dの下端と中央直線部6bの対応する側の端部とを接続する一対の湾曲部6e,6fと、を含む。また、ハンドル本体6aは、各上下方向直線部6c,6dの上端部から後方に延び出す一対の後方延出部6g,6hを含む。各後方延出部6g,6hの後端部には、グリップ6iが装着されている。
次に、図1〜図4を参照して、幼児座席10について説明する。図3は幼児座席10の全体構成を示す斜視図であり、図4は、図3に対応する図であって、幼児を幼児座席10に乗せ降ろしする際の幼児座席10を示す図である。なお、幼児座席10に含まれるいくつかの構成要素は、一部の図面では示されているものの、他の図面では図示を省略されている。
図3に示すように、幼児座席10は、幼児を収容する座席本体20と握り部材50とを有する。握り部材50は、概ね座席本体20の幅方向に延び、両端部が座席本体20に接続している。
図示された例では、座席本体20は、座面部21と、座面部21に後方から接続した後壁部22と、を含む。座面部21は、幼児座席10に着座する幼児の臀部に対面するようになる部位である。後壁部22は、幼児の背中に対面するようになる部位である。また、座席本体20は、座面部21の前方に位置する前壁部23と、座面部21に側方から接続し且つ後壁部22と前壁部23とを接続する一対の側壁部25,26と、前壁部23と座面部21とを連結する接続部27とを含む。一対の側壁部25,26、後壁部22および前壁部23によって、座面部21および接続部27を周状に取り囲む周壁部28が形成されている。一対の側壁部25,26には、握り部材50を接続するための一対の端部支持部材41,42が設けられている。
図2に示すように、幼児座席10は、ハンドル本体6aの一対の上下方向直線部6c,6dの間に配置され、ハンドル6に対して固定されている。より具体的には、座席本体20が、座面部21において、ハンドル本体6aの中央直線部6bに固定されている。また、座席本体20は、各側壁部25,26において、ハンドル本体6aの対応する側の上下方向直線部6c,6dに固定されている。なお、座席本体20が自転車2の荷台8に取り付け可能な形状を有する場合、幼児座席10は荷台8に取り付けられてもよい。
図3に示すように、座面部21、後壁部22および一対の側壁部25,26には、衝撃吸収部材29aが設けられている。また、後壁部22の上部には、ヘッドレスト29bが設けられている。また、座席本体20には、子供用ベルト30が設けられている。
次に、握り部材50について説明する。握り部材50は、握り部材50の一側端部をなす一側接続部51と、他側端部をなす他側接続部52と、一側接続部51および他側接続部52を接続する中間部53と、を有する。中間部53は湾曲しており、握り部材50は、全体としてU字状をなす。したがって、握り部材50の軸線50xは、U字状に延びている。握り部材50の一側接続部51および他側接続部52は、握り部材50のU字の両端に相当する部分である。一側接続部51は、一側側壁部25に設けられた一側端部支持部材41に接続する。また、他側接続部52は、他側側壁部26に設けられた他側端部支持部材42に接続する。図3に示すように、一側側壁部25が一側端部支持部材41に接続した状態において、中間部53は、座面部21の上方を幼児座席10の幅方向に沿って延びている。
図3から理解されるように、一側接続部51は、一側端部支持部材41に接続した状態において、一側側壁部25から上方に延び出している。また、他側接続部52は、他側端部支持部材42に接続した状態において、他側側壁部26から上方に延び出している。これにより、握り部材50の中間部53と座席本体20の座面部21との間に、広い空間が確保される。
なお、図示された例では、握り部材50は、幼児を幼児座席10に乗せ降ろしし易いよう、必要に応じて座面部21の上方から移動させることができるようになっている。
具体的には、図3および図4から理解されるように、握り部材50の一側接続部51は、一側端部支持部材41に着脱可能に接続している。また、握り部材50の他側接続部52は、他側端部支持部材42に対して回転可能に接続している。したがって、握り部材50の一側接続部51を一側端部支持部材41から取り外し、他側接続部52を他側端部支持部材42に対して回転させることにより、握り部材50を、座面部21の上方から座面部21の側方へ移動させることができる。
次に、子供用ベルト30について、図3〜図6を参照して説明する。図5は、幼児座席10の前後方向に沿った縦断面図であって、幼児座席10の右側に位置する構成を、幅方向内側から示している。なお、図5では、握り部材50および他側端部支持部材42の図示を省略している。図6は、図4に示す幼児座席10を、座面部21および後壁部22に設けられた衝撃吸収部材29aを取り除いて示す斜視図である。
図3〜図6に示す例では、子供用ベルト30は、股ベルト、腰ベルトおよび肩ベルトを有する五点式ベルトとして形成されているが、これに限られない。例えば、子供用ベルト30は、股ベルトおよび肩ベルトを有する三点式ベルトとして形成されてもよい。
図3および図4によく示されているように、子供用ベルト30は、第1ベルト材31と、第2ベルト材32と、を有している。第1ベルト材31は、股ベルトとして機能する。第2ベルト材32は、肩ベルト32a及び腰ベルト32bとして機能する。図5および図6に示すように、第1ベルト材31は、座面部21の略中央に一端を固定されている。第1ベルト材31は、座面部21内を通過して、座面部21の上面に設けられた開口21hから延び出ている。第1ベルト材31の他端には、バックル33が取り付けられている。また、図3および図4に示すように、第1ベルト材31には、ベルトカバー34が設けられている。一方、第2ベルト材32は、幅方向に離間して一対設けられている。図6によく示されているように、各第2ベルト材32はタング35を通過して延びており、タング35で折り返されることによって、肩ベルト32a及び腰ベルト32bが画成される。第2ベルト材32の腰ベルト32b側の端部は、座面部21に固定されている。一対の第2ベルト材32は、座面部21内を通過して、座席本体20のうちの座面部21と後壁部22と側壁部25,26との接続位置を含む腰区域24内において側壁部25,26に設けられた子供用ベルト穴25h,26hから、それぞれ延び出ている。第2ベルト材32の肩ベルト32a側の端部は、後壁部22に設けられた子供用ベルト穴22hを通過して、後壁部22内に配置されている。そして、後壁部22内で、調節ベルト材36の一端に接続されている。調節ベルト材36は、座面部21に設けられた調節ベルト穴21f、および、座面部21に固定されたベルト固定装置60を通過して、その他端がベルトカバー34に接続されている。調節ベルト材36の他端は、留め具37によって、ベルトカバー34に着脱可能に接続されている。
このような子供用ベルト30を用いる場合、まず、幼児座席10に子供を着座させ、タング35をバックル33で係止する。次に、調節ベルト材36を引っ張って、腰ベルト32b及び肩ベルト32aの長さを調節する。このようにして、子供用ベルト30によって、幼児座席10に着座した子供を幼児座席10に固定することができる。なお、調節ベルト材36は、ベルト固定装置60によって保持され、座席本体20に対して固定される。このベルト固定装置60によって、意図せず調節ベルト材36が座席本体20内に引き込まれて腰ベルト32b及び肩ベルト32aが緩むことが防止されている。
次に、ベルト固定装置60について、図5〜図14を参照して説明する。図7は、ベルト固定装置60と、ベルト固定装置60が配置される座面部21の固定装置用凹部21aと、を示す斜視図である。図7において、ベルト固定装置60は、座面部21から取り外された状態で示されている。図8および図9は、それぞれ、ベルト固定装置60を前方および後方から示す斜視図である。図10および図11は、それぞれ、ベルト固定装置60を構成するベース部材61およびロック部材70を、前方から示す斜視図である。図12および図13は、他方のガイド側壁部64が取り除かれたベルト固定装置60を示す断面図であって、それぞれ、調節ベルト材36を保持した状態、および、調節ベルト材36の保持が解除された状態で示す図である。また、図14は、図12に示すロック部材70の歯73を拡大して示す図である。
図5および図6に示すように、ベルト固定装置60は、調節ベルト材36の一端と他端との間に配置されている。言い換えると、ベルト固定装置60は、調節ベルト材36と第2ベルト材32の肩ベルト32a側の端部との接続部と、調節ベルト材36とベルトカバー34との接続部と、の間に配置されている。図示された例では、図6および図7に示すように、座席本体20の座面部21には、座面部21の上面に設けられた開口21hの前方に、ベルト固定装置60を配置するための固定装置用凹部21aが形成されており、ベルト固定装置60は、固定装置用凹部21a内に固定されている。図7に示すように、固定装置用凹部21aは、凹部底壁部21bと、凹部底壁部21bの幅方向両側に位置する一対の凹部側壁部21cと、一対の凹部側壁部21cの後端部に接続する凹部後壁部21dと、によって画成されている。凹部後壁部21dには、上述した調節ベルト穴21fが形成されている。
図8、図9、図12および図13によく示されているように、ベルト固定装置60は、ベース部材61と、ベース部材61に回転可能に支持されるロック部材70と、ロック部材70をベース部材61に対して一方の向きD1へ回転させるように付勢する付勢部材80と、を含む。そして、ベルト固定装置60は、ベース部材61と付勢部材80によって付勢されたロック部材70との間に、調節ベルト材36を保持する。以下、ベルト固定装置60を構成する各部材61,70,80について、さらに詳細に説明する。
図10に示すように、ベース部材61は、調節ベルト材36を支持するガイド底壁部62と、ガイド底壁部62に側方から接続した一対のガイド側壁部63,64と、を有する。一対のガイド側壁部63,64のうち、一方のガイド側壁部63はガイド底壁部62の一側から上方に延び出している。また、他方のガイド側壁部64は、ガイド底壁部62の他側から上方に延び出している。一対のガイド側壁部63,64には、それぞれ、後述する軸部材85を支持する軸受穴63a,64aが設けられている。さらに、ベース部材61は、幅方向に延びて一対のガイド側壁部63,64を連結する第1ブリッジ部65及び第2ブリッジ部66を有する。一対のガイド側壁部63,63が第1ブリッジ部65及び第2ブリッジ部66によって連結されていることにより、ベース部材61の変形を抑制することができる。例えば、ガイド側壁部63,64がガイド底壁部62に対して傾倒することが抑制される。図示された例では、第1ブリッジ部65及び第2ブリッジ部66は、それぞれ、ガイド側壁部63,64の前端部および後端部に設けられている。第1ブリッジ部65とガイド底壁部62との間、及び、第2ブリッジ部66とガイド底壁部62との間に、調節ベルト材36の通過経路が形成されるよう、第1ブリッジ部65及び第2ブリッジ部66は、ガイド底壁部62から離間している。
さらに、ベース部材61は、ガイド底壁部62から一対のガイド側壁部63,64よりも前方に延び出す延出部67を有する。延出部67には、ベース部材61を固定装置用凹部21aに固定するためのボルト孔67aが設けられている。また、ベース部材61は、各ガイド側壁部63,64の後端部から後方に突出する突出部68を有する。延出部67にボルト孔67aが設けられていることに対応して、固定装置用凹部21aの凹部底壁部21bには、ボルト孔21eが形成されている(図7参照)。ボルト孔21eの内周面には、ボルトと螺合する螺子山が形成されている。また、各ガイド側壁部63,64の後端部に突出部68が設けられていることに対応して、凹部後壁部21dの調節ベルト穴21fの寸法は、突出部68を受容可能な大きさに設定されている。そして、このようなベース部材61を有するベルト固定装置60は、固定装置用凹部21aに対して次のように固定される。すなわち、突出部68を凹部後壁部21dの調節ベルト穴21fに前方から挿入し、ボルトB(図5参照)を、ガイド底壁部62のボルト孔67aに挿通して凹部底壁部21bのボルト孔21eと螺合させることにより、ベルト固定装置60は固定装置用凹部21aに固定される。突出部68が座面部21の穴21fと係合することにより、ベルト固定装置60を少ない数の締結部材Bで固定しても、ベルト固定装置60を座面部21に対して強固に固定することができる。
図示された例では、ベース部材61は樹脂で形成されている。これにより、ベース部材61を金属で形成する場合と比較して、ベース部材61の設計の自由度が向上し、ガイド底壁部62、一対のガイド側壁部63,64、第1ブリッジ部65、第2ブリッジ部66、延出部67および突出部68を、安価に一体成型することができる。また、ベース部材61の各部を所望の形状にすること、及び、ベース部材61の各部に凹凸による模様を施すことが容易であり、ベルト固定装置60の意匠性を向上させることができる。また、ベース部材61に雨水等が付着してベース部材61が腐食することを、防止することができる。このことは、ベース部材61が自転車用の幼児座席10に用いられる場合、特に重要である。自転車用の幼児座席10は、駐輪場など雨ざらしの環境に置かれる可能性が高いからである。なお、ベース部材61を樹脂で形成しても、ガイド側壁部63,64がブリッジ部65,66によって連結されていることにより、ベース部材61の成型中にガイド側壁部63,64がガイド底壁部62に対して傾倒する等してベース部材61が変形することが抑制される。
次に、ロック部材70および付勢部材80について説明する。
図11に示すように、ロック部材70は、全体として筒状のロック本体部71と、ロック本体部71の外周面から延び出す操作部72と、を有する。操作部72の内部には、筒状のロック本体部71の内部空間71sと連通する内部空間72sが形成されている。
図8、図9、図12および図13から理解されるように、ロック本体部71の内部空間71sには、軸部材85が挿通されている。軸部材85は、その両端部において、一対のガイド側壁部63,64に形成された軸受穴63a,64aによって支持されている。このようにして、ロック部材70は、ベース部材61に回転可能に支持されている。図12および図13に示すように、ロック部材70のロック本体部71とベース部材61のガイド底壁部62との間に、調節ベルト材36の通過経路が形成される。
図示された例では、付勢部材80は、トーションばねである。図11に示すように、トーションばね80は、ロック本体部71の内部空間71sに収容されている。図12および図13に示すように、トーションばね80の内部には、上述した軸部材85が挿入されている。図9に示すように、トーションばね80の一端81は、ロック本体部71の外に延び出して、第2ブリッジ部66に設けられた係止用穴66aに係止されている。図12および図13に示すように、トーションばね80の他端82は、操作部72の内部空間72sに延び出している。トーションばね80は、ロック部材70をベース部材61に対して一方の向きD1へ回転させるように付勢している。具体的には、トーションばね80は、ロック本体部71の外周面のガイド底壁部62に対向する領域A1,A2を第1ブリッジ部65から第2ブリッジ部66に向かう向きに移動させるように、ロック部材70を付勢している。
図示された例では、ロック部材70の操作部72は、ロック部材70にトーションばね80の付勢力のみが加えられている状態において、第2ブリッジ部66の上方に延び出している(図12参照)。そして、操作部72をトーションばね80の付勢力に抗して第2ブリッジ部66の側に押し下げることにより、ロック本体部71を上記一方の方向D1とは反対の他方の方向D2に回転させることができる(図13参照)。
ロック本体部71は、第1ブリッジ部65、ロック部材70および第2ブリッジ部66と、ガイド底壁部62と、の間に形成される調節ベルト材36の通過経路に沿って、第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66の間に位置している。ロック部材70が第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66の間に配置されることにより、ロック部材70とガイド底壁部62との間を通過する調節ベルト材36の向きが、第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66によって規制される。すなわち、調節ベルト材36の一端または他端が上方に引っ張られても、ロック本体部71とガイド底壁部62との間における調節ベルト材36の動きは、第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66によって規制される。これにより、ロック部材70とガイド底壁部62との間における調節ベルト材36の向きは、概ねガイド底壁部62のロック部材70側の面に沿った向きに維持される。この結果、調節ベルト材36の一端または他端が上方へ引っ張られても、調節ベルト材36からロック部材70に対して、ロック部材70を支持する軸部材85に向かう過剰の力が加わることが、抑制される。したがって、上記過剰の力によって軸部材85およびロック部材70が撓む虞が、低減される。
ロック本体部71は、ロック部材70のベース部材61に対する回転の回転軸線Axを中心とする周方向に配列された複数の歯73を有している。各歯73は、幅方向に沿って延びている。複数の歯73は、ロック本体部71の外周面の一部の領域A1に設けられている。具体的には、複数の歯73は、ロック本体部71の外周面のうち、ガイド底壁部62と対面する領域A1,A2の一部A1に、形成されている。以下では、ロック本体部71の外周面の複数の歯73が形成されている領域を「有歯領域A1」と称する。また、ロック本体部71の外周面のガイド底壁部62と対面する領域のうち、有歯領域A1以外の領域を「無歯領域A2」と称する。回転軸線Axから各歯73の先端までの距離は、回転軸線Axから無歯領域A2の各点までの距離よりも大きい。そして、ロック部材70は、複数の歯73のいずれかとベース部材61のガイド底壁部62との間に、調節ベルト材36を保持する。有歯領域A1は、無歯領域A2よりも、ロック本体部71の上記一方の向きD1への回転において移動方向後端側に位置している。
図示された例では、図14によく示されているように、複数の歯73は、5つの歯73a,73b,73c,73d,73eを含む。複数の歯73a,73b,73c,73d,73eは、ロック本体部71の上記一方の向きD1への回転において移動方向先端側から移動方向後端側に向かって、この順で並んでいる。
図示された例では、上記一方の向きD1への回転において移動方向先端側となる歯73aの先端までの回転軸線Axからの距離Laは、上記一方の向きD1への回転において移動方向後端側となる歯73eの先端までの回転軸線Axからの距離Leよりも短い。これにより、複数の歯73のうち調節ベルト材36を保持する歯の歯先とガイド底壁部62との距離を、ロック本体部71の上記一方の向きD1への回転角度量に応じて、調節ベルト材36の厚みに適した距離に調節することができる。したがって、ロック本体部71の歯73は、調節ベルト材36を安定して保持することができる。とりわけ、図示された例では、各歯73a,73b,73c,73d,73eの先端と回転軸線Axとの距離La,Lb,Lc,Ld,Leは、上記一方の向きD1への回転において移動方向前端側から移動方向後端側に向かうにつれて、長くなる。すなわち、距離La,Lb,Lc,Ld,Leは、この順で長くなる。これにより、複数の歯73のうち調節ベルト材36を保持する歯の先端とガイド底壁部62との距離を、段階的に調節することができる。また、互いに隣り合う二つの歯で、例えば歯73bおよび歯73cで、調節ベルト材36を保持することができる。これにより、調節ベルト材36を、より安定して保持することができる。
なお、上記複数の歯73a,73b,73c,73d,73eの上記距離La,Lb,Lc,Ld,Leが、上記一方の向きD1への回転において移動方向先端側から移動方向後端側に向かうにつれて長くなっていることにより、ロック部材70とガイド底壁部62とにより保持された調節ベルト材36の一端側(肩ベルト32aとの接続部側の端部)が引っ張られた場合に、調節ベルト材36がロック部材70とガイド底壁部62との間で移動することを、効果的に抑制することができる。すなわち、この場合、調節ベルト材36からロック本体部71には、ロック本体部71を上記一方の向きD1へ回転させる力が働くが、記距離La,Lb,Lc,Ld,Leがこの順で長くなっていることにより、複数の歯73のうち調節ベルト材36を保持する歯とガイド底壁部62との距離を、ロック本体部71の上記一方の向きD1へ回転にともなって小さくすることができ、ロック本体部71とガイド底壁部62とによる調節ベルト材36の保持力を増大させることができる。これにより、調節ベルト材36が保持された状態で肩ベルト32aや腰ベルト32bが引っ張られた際に、意図せず、調節ベルト材36がロック本体部71とガイド底壁部62との間を移動して、肩ベルト32aおよび腰ベルト32bが緩む、ということが効果的に抑制される。
図示された例では、複数の歯73の先端は面取りされている。これにより、歯73の先端の剛性が向上し、歯73の変形が抑制される。したがって、歯73は、調節ベルト材36を安定して保持することができる。さらに、図示された例では、各歯73a,73b,73c,73d,73eは、その先端に平坦面74a,74b,74c,74d,74eを有している。これにより、調節ベルト材36と調節ベルト材36を保持する歯73の先端との間に、摩擦力を生じさせることができる。したがって、歯73は、調節ベルト材36を安定して保持することができる。
なお、図示された例では、ロック部材70は樹脂で形成されている。これにより、ロック部材70を金属で形成する場合と比較して、ロック部材70の設計の自由度が向上する。また、ロック部材70の各部の形状を所望の形状にすること、及び、ロック部材70の各部に凹凸による模様を施すことが容易であり、ベルト固定装置60の意匠性を向上させることができる。また、ロック部材70に雨水等が付着してロック部材70が腐食することを、防止することができる。このことは、ロック部材70が自転車用の幼児座席10に用いられる場合、特に重要である。自転車用の幼児座席10は、駐輪場など雨ざらしの環境に置かれる可能性が高いからである。
ロック本体部71は、上述した操作部72を操作することにより、上記一方の向きD1とは反対の他方の向きD2に回転する。ロック本体部71を上記他方の向きD2に回転させることにより、ロック本体部71の無歯領域A2をガイド底壁部62に対面させることができる。したがって、ロック本体部71の歯73とガイド底壁部62との間での調節ベルト材36の保持を解除することができる。なお、図示された例では、図13に示すように、操作部72を第2ブリッジ部66に接触するまで傾倒させると、ロック本体部71の無歯領域A2がガイド底壁部62に対面するようになる。すなわち、操作部72が第2ブリッジ部66に接触すると、調節ベルト材36の保持が解除される。言い換えると、ロック本体部71の上記他方の向きD2への回転角度量は、第2ブリッジ部66によって規制される。これにより、ベルト固定装置60を操作する操作者は、調節ベルト材36の保持を解除する際の操作部72の操作量が十分であることを感知することができる。
ここで、本実施の形態のベルト固定装置60を用いた肩ベルト32aおよび腰ベルト32bのベルト長の調節方法について説明する。まず、肩ベルト32aおよび腰ベルト32bを短くする場合について説明する。この場合、調節ベルト材36を、その他端(留め具37側の端部)とベルト固定装置60との間で把持し、座席本体20内の調節ベルト材36を引き出すように引っ張る。このとき、調節ベルト材36からロック本体部71に対し、ロック本体部71を上記他方の向きD2に回転させるように力が働く。これにより、ロック本体部71は付勢部材80による付勢力に抗して、上記他方の向きD2へ回転する。この結果、ロック本体部71の歯73の先端とガイド底壁部62との距離が大きくなり、調節ベルト材36は、座席本体20から引き出される。これに伴って、第2ベルト材32が座席本体20内に引き込まれて、肩ベルト32aおよび腰ベルト32bが短くなる。肩ベルト32aおよび腰ベルト32bが所望の長さになったら、調節ベルト材36を座席本体20から引き出すのを止める。これにより、調節ベルト材36からロック本体部71に対してロック本体部71を上記他方の向きD2に回転させるように力が働かなくなり、ロック本体部71は、付勢部材80の付勢力によって、上記一方の向きD1に回転する。この結果、ロック本体部71の歯73の先端とガイド底壁部62との距離が小さくなり、調節ベルト材36は、ロック本体部71とガイド底壁部62とによって保持される。
なお、調節ベルト材36を座席本体20から引き出す際に調節ベルト材36が上方に引っ張られても、ロック本体部71とガイド底壁部62との間での調節ベルト材36の向きは、第1ブリッジ部66および第2ブリッジ部66によって規制されるため、調節ベルト材36からロック本体部71に対して軸部材85に向かう過剰の力が加わることが抑制される。
また、肩ベルト32aおよび腰ベルト32bの調節後に肩ベルト32aおよび腰ベルト32bが引っ張られても、上記複数の歯73a,73b,73c,73d,73eの上記距離La,Lb,Lc,Ld,Leが、上記一方の向きD1への回転において移動方向先端側から移動方向後端側に向かうにつれて長くなっていることにより、肩ベルト32aおよび腰ベルト32bが緩むことが抑制されている。なぜなら、第2ベルト材32が座席本体20から引き出されるように引っ張られる際、調節ベルト材36からロック本体部71に対し、ロック本体部71を上記一方の向きD1に回転させるように力が働くが、この場合、調節ベルト材36を保持する歯73の歯先とガイド底壁部62との距離が、ロック本体部71の上記一方の向きD1へ回転にともなって小さくなり、ロック本体部71とガイド底壁部62とによる調節ベルト材36の保持力が増大するからである。
次に、肩ベルト32aおよび腰ベルト32bを長くする場合について説明する。この場合、まず、ロック部材70の操作部72を後方に押し下げて、ロック本体部71を上記他方の向きD2に回転させ、ロック本体部71とガイド底壁部62との間での調節ベルト材36の保持を解除する。このとき、操作部72が第2ブリッジ部66に当接するまで操作部72を押し下げることで、ロック本体部71の無歯領域A2とガイド底壁部62とを対面させて、上記調節ベルト材36の保持を解除することができる。そして、操作部72を押し下げたまま、第2ベルト材32を座席本体20から引き出すように引っ張る。このとき、調節ベルト材36の一部が座席本体20内に引き込まれる。肩ベルト32aおよび腰ベルト32bの長さが所望の長さになったら、第2ベルト材32を座席本体20から引き出すのを止める。また、操作部72の操作を止める。これにより、ロック本体部71が、付勢部材80の付勢力によって上記一方の向きD1に回転する。そして、ロック本体部71の歯73とガイド底壁部62とが対面して、調節ベルト材36は、ロック本体部71の歯73とガイド底壁部62とによって保持される。
なお、図示された例では、ロック本体部71とガイド底壁部62とによる調節ベルト材36の保持を解除せずに第2ベルト材32を引っ張っても、第2ベルト材32を座席本体20から引き出すことはできない。これは、上述したように、次の理由による。すなわち、第2ベルト材32が座席本体20から引き出されるように引っ張られる際、調節ベルト材36からロック本体部71に対し、ロック本体部71を上記一方の向きD1に回転させるように力が働くが、この場合、調節ベルト材36を保持する歯73の歯先とガイド底壁部62との距離が、ロック本体部71の上記一方の向きD1へ回転にともなって小さくなり、ロック本体部71とガイド底壁部62とによる調節ベルト材36の保持力が増大するからである。
上述した実施の形態においては、ベルト固定装置60が調節ベルト材36を保持するために用いられる例について説明してきたが、これに限られない。ベルト固定装置60は、他のベルト材31,32を保持するために用いられてもよい。また、上述した実施の形態においては、ベルト固定装置60は自転車用の幼児座席10に用いられる場合について説明してきたが、これに限られない。例えば、ベルト固定装置60は、自転車以外の車両用のチャイルドシート、乳母車、揺動椅子、歩行器等、他の育児器具に用いられてもよい。
以上のように、本実施の形態によれば、ベルト材36を支持するベルト固定装置60は、ベルト材36を支持するガイド底壁部62と、ガイド底壁部62に接続した一対のガイド側壁部63,64と、一対のガイド側壁部63,64を連結する第1ブリッジ部65及び第2ブリッジ部66と、を有するベース部材61を備えている。また、ベルト固定装置60は、一対のガイド側壁部63,64に回転可能に支持され、ベース部材61に対して一方の向きD1に回転することでガイド底壁部62との間にベルト材36を保持するロック部材70と、ロック部材70をベース部材61に対して一方の向きD1へ回転させるように付勢する付勢部材80と、を備えている。そして、第1ブリッジ部65、ロック部材70および第2ブリッジ部66と、ガイド底壁部62と、の間に形成されるベルト材36の経路に沿って、ロック部材70は、第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66の間に位置する。
このようなベルト固定装置60によれば、一対のガイド側壁部63,64が第1ブリッジ部65及び第2ブリッジ部66によって連結されているので、ベース部材61の変形を抑制することができる。例えば、ガイド側壁部63,64がガイド底壁部62に対して傾倒することが抑制される。また、第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66がベルト材36の向きを規制するので、調節ベルト材36からロック部材70に向かって過剰の力が加わってロック部材70が撓んだり変形したりする、という虞が低減される。
また、本実施の形態において、第2ブリッジ部66は、ベース部材61に対して他方の向きD2に回転したロック部材70と接触し、ロック部材70のベース部材61に対する他方の向きD2へ回転角度量を規制する。このようなベルト固定装置60によれば、ロック部材70が第2ブリッジ部66に接触した際にロック部材70とガイド底壁部62との間でのベルト材36の保持が解除されるようにすれば、ベルト固定装置60の操作者は、上記ベルト材36の保持を解除する際に、ロック部材70の操作量が十分であることを容易に感知することができる。
また、本実施の形態において、ベース部材61のガイド底壁部62、一対のガイド側壁部63,64、第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66は、樹脂により一体的に形成されている。このようなベルト固定装置60によれば、ガイド底壁部62、一対のガイド側壁部63,64、第1ブリッジ部65および第2ブリッジ部66を有するベース部材61を安価に作製することができる。また、ベース部材61の形状および模様の設計の自由度が増し、ベース部材61の意匠性を向上させることができる。また、ベース部材61に雨水等が付着してベース部材が腐食することが防止される。
また、本実施の形態において、ロック部材70は、ロック部材70のベース部材61に対する回転の回転軸線Axを中心とする周方向に配列された複数の歯73a,73b,73c,73d,73eを有し、複数の歯73の先端に平坦面74a,74b,74c,74d,74eを有している。このようなベルト固定装置60によれば、複数の歯73a,73b,73c,73d,73eの歯先の剛性を向上させることができ、歯73a,73b,73c,73d,73eの変形を抑制することができる。したがって、歯73a,73b,73c,73d,73eは、ベルト材36を安定して保持することができる。
また、本実施の形態において、ロック部材70は、ロック部材70のベース部材61に対する回転の回転軸線Axを中心とする周方向に配列された複数の歯73a,73b,73c,73d,73eを有し、複数の歯の先端は面取りされている。このようなベルト固定装置60によれば、複数の歯73a,73b,73c,73d,73eの歯先の剛性を向上させることができ、歯73a,73b,73c,73d,73eの変形を抑制することができる。したがって、歯73a,73b,73c,73d,73eは、ベルト材36を安定して保持することができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。