JP2020068587A - 回転電機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ユーザに不快感を与えることを防止できる回転電機の制御装置を提供する。【解決手段】制御装置は、3相のシャント抵抗のうち少なくとも2相分のシャント抵抗に電流が流れている期間において、電流が流れている各シャント抵抗の電圧を検出する電流検出部と、回転電機のステータ巻線に高周波電圧を印加する高周波印加部と、電流検出部により検出された電圧に基づいて、高周波電圧の印加に伴いステータ巻線に流れる高周波電流を検出する高周波検出部とを備えている。制御装置は、検出された高周波電流に基づいて、回転電機の磁極位置を推定する推定部と、電流検出部により検出された電圧と、推定された磁極位置とに基づいて、インバータを構成する各スイッチのスイッチングモードを設定する設定部とを備えている。高周波印加部は、周波数が人の可聴域よりも高い方に外れた高周波電圧をステータ巻線に印加する。【選択図】 図6

Description

本発明は、回転電機の制御装置に関する。
この種の制御装置としては、特許文献1に記載されているように、3相分の上下アームのスイッチを有するインバータと、インバータに電気的に接続されたステータ巻線を有する同期式の回転電機と、シャント抵抗とを備えるシステムに適用されるものが知られている。シャント抵抗は、各相において、上下アームのうちいずれか一方のスイッチのみに電気的に接続されている。
制御装置は、各シャント抵抗のうち少なくとも2相分のシャント抵抗に電流が流れている期間において、電流が流れている各シャント抵抗の電圧を検出する。制御装置は、検出した電圧に基づいて、インバータを構成する各スイッチのスイッチングモードを設定する。
特開平6−351280号公報
スイッチングモードを設定するには、回転電機の磁極位置の情報が必要となる。ここで、ホール素子やレゾルバ等の角度センサにより検出される回転電機の回転角情報を用いることのない位置センサレス制御が採用される場合、磁極位置を推定する必要がある。
そこで、制御装置は、ステータ巻線に高周波電圧を印加し、電流が流れている各シャント抵抗の電圧検出値に基づいて、高周波電圧の印加に伴いステータ巻線に流れる高周波電流を検出する。制御装置は、推定した磁極位置をスイッチングモードの設定に用いる。
高周波電圧の印加に伴ってノイズ音が発生する。このノイズ音の主要な周波数は、高周波電圧の周波数と同じ周波数である。高周波電圧の周波数が人の可聴域(例えば20Hz〜20kHz)に含まれると、インバータ及び回転電機を備えるシステムを使用するユーザに不快感を与えるおそれがある。
本発明は、ユーザに不快感を与えることを防止できる回転電機の制御装置を提供することを主たる目的とする。
第1の発明は、3相分の上下アームのスイッチを有するインバータと、
前記インバータに電気的に接続されたステータ巻線を有する同期式の回転電機と、
各相において、上下アームのうちいずれか一方の前記スイッチのみに電気的に接続されたシャント抵抗と、を備えるシステムに適用される回転電機の制御装置において、
前記各シャント抵抗のうち少なくとも2相分のシャント抵抗に電流が流れている期間において、電流が流れている前記各シャント抵抗の電圧を検出する電流検出部と、
前記ステータ巻線に高周波電圧を印加する高周波印加部と、
前記電流検出部により検出された電圧に基づいて、前記高周波電圧の印加に伴い前記ステータ巻線に流れる高周波電流を検出する高周波検出部と、
前記高周波検出部により検出された高周波電流に基づいて、前記回転電機の磁極位置を推定する推定部と、
前記電流検出部により検出された電圧と、前記推定部により推定された磁極位置である推定磁極位置とに基づいて、前記インバータを構成する前記各スイッチのスイッチングモードを設定する設定部と、を備え、
前記高周波印加部は、周波数が人の可聴域よりも高い方に外れた高周波電圧を前記ステータ巻線に印加する。
第1の発明では、ステータ巻線に印加される高周波電圧の周波数が、人の可聴域よりも高い方に外れている。このため、磁極位置を推定するために高調波電圧を印加する場合において、ユーザに不快感を与えることを防止することができる。
第2の発明では、前記推定部は、前記高周波検出部により高周波電流が検出されるたびに前記磁極位置を推定し、
前記設定部は、前記推定部により磁極位置が推定されるたびに、前記回転電機の制御量をその指令値にするための指令信号を前記推定磁極位置に基づいて生成し、上下アームの前記スイッチの操作状態を所定期間毎に相ごとに順次固定しつつ、3相のうち操作状態が固定された相以外の2相を構成する上下アームの前記スイッチを、生成した前記指令信号及びキャリア信号の大小比較に基づくパルス幅変調によりオンオフ操作する2相変調の前記スイッチングモードを設定する。
第2の発明では、高周波検出部により高周波電流が検出されるたびに磁極位置が推定される。ここで、磁極位置が推定されるたびに、回転電機の制御量をその指令値にするための指令信号を推定磁極位置に基づいて生成し、3相分の上下アームのスイッチを指令信号及びキャリア信号の大小比較に基づくパルス幅変調によりオンオフ操作する構成を比較例と称すこととする。高周波電圧の周波数を人の可聴域よりも高い方に外そうとすると、高周波電圧の周波数が過度に高くなる。この場合、比較例において、磁極位置の推定頻度が高くなり、キャリア信号の1周期が短くなる。その結果、キャリア信号の1周期におけるスイッチング回数が増加し、スイッチング損失が増加してしまう。
そこで、第2の発明では、上記2相変調のスイッチングモードを設定する。これにより、スイッチング回数を3相変調よりも少なくできる。その結果、高周波電圧の周波数を人の可聴域よりも高い方に外しつつ、スイッチング損失の増加を抑制することができる。
第3の発明では、前記設定部は、3相のうち操作状態をオフに固定する相を順次切り替える。
2相変調により操作状態が固定された相において、上下アームのスイッチのうちオン操作固定されたスイッチに電流が流れる。ここで、オン操作固定される期間が長くなると、オン操作固定されたスイッチの発熱量が大きくなり、スイッチの信頼性が低下するおそれがある。
そこで、第3の発明では、設定部は、3相のうち操作状態をオフに固定する相を順次切り替える。これにより、オン操作固定されたスイッチの発熱量が大きくなることを回避できる。
第4の発明では、前記設定部は、前記推定部により磁極位置が推定されるたびに、前記回転電機の制御量をその指令値にするための指令信号を前記推定磁極位置に基づいて生成し、生成した前記指令信号及びキャリア信号の大小比較に基づくパルス幅変調により前記スイッチングモードを設定し、
前記推定部は、前記キャリア信号の2周期以上の周期毎に前記磁極位置を推定する。
第4の発明によれば、スイッチングモードの設定処理の演算期間を十分確保することができ、回転電機の制御が不安定となることを回避できる。
第1実施形態に係る回転電機の制御システムの全体構成を示す図。 制御装置の処理を示すブロック図。 電圧ベクトル及び検出可能な相電流の関係を示す図。 下ベタの2相変調処理時における指令時比率の推移を示すタイムチャート。 比較例に係る高周波電圧、指令時比率及びスイッチングモードの推移を示すタイムチャート。 第1実施形態に係る高周波電圧、指令時比率及びスイッチングモードの推移を示すタイムチャート。 第1実施形態の変形例2に係る制御システムの全体構成を示す図。 第1実施形態の変形例2に係る電圧ベクトル及び検出可能な相電流の関係を示す図。 第2実施形態に係る上ベタの2相変調処理時における指令時比率の推移を示すタイムチャート。 高周波電圧、指令時比率及びスイッチングモードの推移を示すタイムチャート。 第3実施形態に係る2相変調切り替え処理の手順を示すフローチャート。 第3実施形態の変形例に係る2相変調処理時における指令時比率の推移を示すタイムチャート。 第4実施形態に係る高周波電圧、指令時比率及びスイッチングモードの推移を示すタイムチャート。
<第1実施形態>
以下、本発明に係る回転電機の制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、制御システムは、回転電機10、インバータ20、及び回転電機10を制御対象とする制御装置40を備えている。回転電機10は、3相の同期機であり、ステータ巻線としてU,V,W相巻線11U,11V,11Wを備えている。同期機は、例えば永久磁石同期機である。本実施形態において、回転電機10は、突極機であるIPMSMである。本実施形態において、回転電機10は、車載補機を駆動するために用いられる。車載補機としては、例えば、ラジエータファンや、エアコンのブロワ、ウォーターポンプが挙げられる。
インバータ20は、上アームスイッチSUp,SVp,SWpと下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチSUp,SUn,SVp,SVn,SWp,SWnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、NチャネルMOSFETが用いられている。このため、各スイッチSUp,SUn,SVp,SVn,SWp,SWnの高電位側端子はドレインであり、低電位側端子はソースである。各スイッチSUp,SUn,SVp,SVn,SWp,SWnは、各ボディダイオードDUp,DUn,DVp,DVn,DWp,DWnを有している。
U相上アームスイッチSUpのソースには、バスバー等のU相導電部材21Uの第1端と、U相下アームスイッチSUnのドレインとが接続されている。U相導電部材21Uの第2端には、U相巻線11Uの第1端が接続されている。V相上アームスイッチSVpのソースには、バスバー等のV相導電部材21Vの第1端と、V相下アームスイッチSVnのドレインとが接続されている。V相導電部材21Vの第2端には、のV相巻線11Vの第1端が接続されている。W相上アームスイッチSWpのソースには、バスバー等のW相導電部材21Wの第1端と、W相下アームスイッチSWnのドレインとが接続されている。W相導電部材21Wの第2端には、W相巻線11Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線11U,11V,11Wの第2端同士は、中性点で接続されている。
U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpのドレインと、直流電源である蓄電池30の正極端子とは、正極側母線Lpにより接続されている。正極側母線Lpにおいて、各上アームスイッチSUp,SVp,SWpのうち蓄電池30の正極端子に最も近いスイッチとの接続点と、蓄電池30の正極端子との間には、平滑コンデンサ22の第1端が接続されている。
U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnのソースには、U,V,W相シャント抵抗23U,23V,23Wの第1端が接続されている。U,V,W相シャント抵抗23U,23V,23Wの第2端と、蓄電池30の負極端子とは、負極側母線Lnにより接続されている。負極側母線Lnにおいて、各シャント抵抗23U,23V,23Wのうち蓄電池30の負極端子に最も近いシャント抵抗との接続点と、蓄電池30の負極端子との間には、平滑コンデンサ22の第2端が接続されている。
制御装置40は、マイコンを主体として構成され、回転電機10の制御量をその指令値にフィードバック制御すべく、インバータ20を構成する各スイッチをスイッチング操作する。本実施形態において、制御量は電気角速度(回転速度)であり、その指令値は指令角速度ω*である。制御装置40は、インバータ20から各相巻線11U〜11Wに印加される電圧ベクトルが、電気角速度を指令角速度ω*に制御するための指令電圧ベクトルになるように、インバータ20を構成する各スイッチをスイッチング操作する。これにより、互いに120度ずれた正弦波状の相電流が各相巻線11U,11V,11Wに流れる。
制御装置40は、位置センサレス制御を行い、この制御の際に電気角を推定する。位置センサレス制御は、ホール素子やレゾルバ等の角度センサにより検出される回転電機10の回転角情報を用いることのない回転電機10の制御である。
ちなみに、制御装置40は、自身が備える記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御機能を実現する。各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの双方によって実現されてもよい。
続いて、図2のブロック図を用いて、制御装置40の処理について詳しく説明する。
速度偏差算出部41は、指令角速度ω*から、後述する速度推定部51により算出された推定角速度ωestを減算することにより、速度偏差Δωを算出する。推定角速度ωestは、電気角速度の推定値である。指令角速度ω*は、回転電機10のロータを特定方向(正方向)に回転させる場合に正の値となり、特定方向とは逆方向にロータを回転させる場合に負の値となる。
速度制御器42は、速度偏差Δωを0にフィードバック制御するための操作量として、回転電機10の指令トルクTrq*を算出する。指令トルクTrq*は、ロータを特定方向に回転させる場合に正の値となり、特定方向とは逆方向にロータを回転させる場合に負の値となる。なお、速度制御器42におけるフィードバック制御としては、例えば比例積分制御が用いられればよい。
電流変換部43は、後述する角度推定部52により算出された推定角θestと、後述する電流検出部53により検出された各相電流IU,IV,IWとに基づいて、UVW座標系におけるU,V,W相電流を、γδ座標系におけるγ軸電流Iγr及びδ軸電流Iδrに変換する。推定角θestは、電気角の推定値である。UVW座標系は、回転電機10の3相固定座標系であり、γδ座標系は、回転電機10の2相回転座標系であるdq座標系の推定座標系である。
指令電流設定部44は、指令トルクTrq*に基づいて、γ軸指令電流Iγ*と、δ軸指令電流Iδ*とを設定する。γ軸指令電流Iγ*及びδ軸指令電流Iδ*により、γδ座標系における指令電流ベクトルが定まる。本実施形態において、指令電流設定部44は、γ軸指令電流Iγ*を0に設定する。
γ軸偏差算出部45aは、γ軸指令電流Iγ*からγ軸電流Iγrを減算した値として、γ軸偏差ΔIγを算出する。δ軸偏差算出部45bは、δ軸指令電流Iδ*からδ軸電流Iδrを減算した値として、δ軸偏差ΔIδを算出する。
電流制御器46は、γ軸偏差ΔIγに基づいて、γ軸電流Iγrをγ軸指令電流Iγ*にフィードバック制御するための操作量として、γ軸電圧Vγrを算出する。また、電流制御器46は、δ軸偏差ΔIδに基づいて、δ軸電流Iδrをδ軸指令電流Iδ*にフィードバック制御するための操作量として、δ軸電圧Vδrを算出する。γ軸電圧Vγr及びδ軸電圧Vδrにより、γδ座標系における指令電圧ベクトルが定まる。なお、電流制御器46におけるフィードバック制御としては、例えば比例積分制御が用いられればよい。
γ軸重畳部47aは、γ軸電圧Vγrと、高周波生成部48により生成されたγ軸高周波電圧Vγhとの加算値を、γ軸指令電圧Vγ*として出力する。δ軸重畳部47bは、δ軸電圧Vδrと、高周波生成部48により生成されたδ軸高周波電圧Vδhとの加算値を、δ軸指令電圧Vδ*として出力する。各高周波電圧Vγh,Vδhは、各指令電圧Vγ*,Vδ*の基本波成分の電気角速度よりも十分高い角速度で変動するパルス信号であり、その振幅をVaとする。本実施形態では、δ軸高周波電圧Vδhが0に設定されている。このため、δ軸電圧Vδrがそのままδ軸指令電圧Vδ*となる。なお、本実施形態において、γ軸重畳部47a、δ軸重畳部47b及び高周波生成部48が高周波印加部に相当する。
高周波生成部48は、γ軸高周波電圧Vγhの周波数を、人の可聴域よりも高い方に外している。これは、磁極位置を推定するためにγ軸高周波電圧Vγhを印加する場合において、ユーザに不快感を与えることを防止するためである。
電圧変換部49は、γ軸指令電圧Vγ*、δ軸指令電圧Vδ*及び推定角θestに基づいて、電気角で位相が互いに120°ずれたU,V,W相指令電圧VU,VV,VWを算出する。本実施形態において、各指令電圧VU,VV,VWは、正弦波信号である。
信号生成部50は、電圧変換部49から出力されたU,V,W相指令電圧VU,VV,VWを蓄電池30の端子間電圧で除算することにより、U,V,W相指令時比率Dtu,Dtv,Dtw(指令信号に相当)を算出する。本実施形態では、各指令時比率Dtu,Dtv,Dtwの最大値が1となり、最小値が0になることとする。
信号生成部50は、算出したU,V,W相指令時比率Dtu,Dtv,Dtwに基づいて、各スイッチSUp,SUn,SVp,SVn,SWp,SWnに対する各操作信号gUp,gUn,gVp,gVn,gWp,gWnを生成する。操作信号は、オン指令又はオフ指令のいずれかである。同じ相の上アーム操作信号と下アーム操作信号とは、同時にオン指令にならない。信号生成部50は、生成した各操作信号gUp〜gWnを、インバータ20を構成する各スイッチSUp〜SWnに対して出力する。各操作信号gUp〜gWnにより、各スイッチSUp〜SWnのスイッチングモードが定まる。
信号生成部50は、3相それぞれにおいて、指令時比率とキャリア信号SigCとの大小比較に基づくPWM(Pulse Width Modulation)により操作信号を生成する。本実施形態において、キャリア信号SigCは、漸増速度と漸減速度とが等しい三角波信号である。本実施形態では、キャリア信号SigCの振幅を1/2とする。このため、キャリア信号SigCは、1/2を中心として、0から1までの範囲の値を取る。
速度推定部51は、γ軸高周波電圧Vγhの印加に伴って流れるδ軸高周波電流Iδhに基づいて、推定角速度ωestを算出する。具体的には、速度推定部51は、γ軸高周波電圧Vγhが正の電圧(Va)から負の電圧(−Va)へと切り替えられることに伴って流れるδ軸高周波電流Iδhに基づいて推定角速度ωestを算出し、γ軸高周波電圧Vγhが負の電圧から正の電圧へと切り替えられることに伴って流れるδ軸高周波電流Iδhに基づいて推定角速度ωestを算出する。速度推定部51は、例えば、δ軸電流Iδrにハイパスフィルタを施すことによりδ軸高周波電流Iδhを算出すればよい。なお、推定角速度ωestの算出方法は、本実施形態の要部ではないため、その詳細な説明を省略する。
角度推定部52は、推定角速度ωestを時間積分することにより、推定角θestを算出する。なお、本実施形態において、速度推定部51及び角度推定部52が高周波検出部及び推定部に相当する。
続いて、電流検出部53について説明する。
電流検出部53は、U,V,W相シャント抵抗23U,23V,23Wの端子間電圧VIU,VIV,VIWに基づいて、U,V,W相電流IU,IV,IWを検出する。本実施形態において、電流検出部53は、キャリア信号SigCがその最大値(1)となるタイミングを電流検出タイミングtdとしている。
図3に示すように、電圧ベクトルV0〜V6に応じて、下アームスイッチのオン期間中にシャント抵抗に相電流が流れる。本実施形態では、シャント抵抗の第1端側の電位が第2端側の電位よりも高い場合のシャント抵抗の端子間電圧の符号を正と定義する。また、実際の相電流について、インバータ20側から回転電機10側へと流れる電流方向を正と定義する。このため、図3のアーム電流の欄では、シャント抵抗の端子間電圧の符号と、実際の相電流の符号とが異なる場合に負の符号を付している。図3において、V1〜V6は、有効電圧ベクトルとしての第1〜第6ベクトルであり、V0,V7は、無効電圧ベクトルとしての第0,第7ベクトルである。
本実施形態において、信号生成部50は、いわゆる下ベタの2相変調により、各操作信号gUp〜gWnを生成する。詳しくは、図4に示すように、電気角120°毎に相ごとに、上アームスイッチのオフ操作固定及び下アームスイッチのオン操作固定を順次行いつつ、操作状態が固定された相以外の2相を構成する上,下アームスイッチをオンオフ操作するように指令時比率Dtu,Dtv,Dtwを変更する。ここでは、線間電圧が正弦波となるように各相の指令時比率を変更する。オフ操作固定されるスイッチの指令時比率が0に固定され、オン操作固定されるスイッチの指令時比率が1に固定される。なお、図4に示す各指令時比率Dtu,Dtv,Dtwは、γ軸電圧Vγrにγ軸高周波電圧Vγhが重畳されていない場合のものである。
続いて、本実施形態の構成を比較例と対比しつつ説明する。比較例は、図5に示すように、3相変調により各操作信号gUp〜gWnを生成してスイッチングモードを設定する構成である。図5(a)は、磁極位置推定用の上述したγ軸高周波電圧Vγhの推移を示し、図5(b)は、各相指令時比率Dtu,Dtv,Dtwの推移を示し、図5(c)は、各スイッチSUp〜SWnのスイッチングモードの推移を示す。ここで、図5(a)において、Tcは、比較例におけるキャリア信号SigCの1周期を示す。また、図5(c)において、例えばU相について説明すると、ONは、U相上アーム操作信号gUpがオン指令であってかつU相下アーム操作信号gUnがオフ指令であることを示す。また、OFFは、U相上アーム操作信号gUpがオフ指令であってかつU相下アーム操作信号gUnがオン指令であることを示す。
比較例においても、キャリア信号SigCが最大値となるタイミングが電流検出タイミングtdに設定されている。この設定によれば、電流検出タイミングtdを第0ベクトルV0の期間にできるため、3相分の相電流を検出できる。
電流検出タイミングtdで検出された各相電流IU,IV,IWに基づいて、回転電機10の制御量の制御が実施され、また、推定角θestが算出される。このため、γ軸高周波電圧Vγhの電圧値の切り替え周期がキャリア信号SigCの1周期、すなわちγ軸高周波電圧Vγhの1周期がキャリア信号SigCの2周期に設定されている。その結果、γ軸高周波電圧Vγhの周波数(例えば10kHz)が人の可聴域(例えば20Hz〜20kHz)に含まれてしまい、システムのユーザに不快なノイズ音を与えるおそれがある。
ユーザに不快感を与えることを防止するために、γ軸高周波電圧Vγhの周波数を、人の可聴域よりも高い方に外れた周波数(例えば40kHz)に設定する。しかし、この場合、γ軸高周波電圧Vγhの周波数が過度に高い周波数(例えば20kHz)となり、それに伴ってキャリア信号SigCの1周期が短くなる。その結果、キャリア信号SigCの1周期におけるスイッチング回数が増加してスイッチング損失が増加し、ひいてはスイッチの発熱量が増加してしまう。
そこで、本実施形態では、図6に示すように、γ軸高周波電圧Vγhの周波数を人の可聴域よりも高い方に外れた周波数(例えば40kHz)に設定しつつ、2相変調により各操作信号gUp〜gWnを生成する。図6(a)〜図6(c)は、先の図5(a)〜図5(c)に対応している。図6(a)において、Tnは、人の可聴域よりも高い方に外れた周波数を有するキャリア信号SigCの1周期を示す。
2相変調によれば、スイッチング回数を3相変調と比較して2/3にすることができる。その結果、γ軸高周波電圧Vγhの周波数を人の可聴域よりも高い方に外しつつ、スイッチング損失の増加を抑制することができる。その結果、スイッチの発熱量の増加を抑制することができる。
スイッチングモードの切り替えに伴って、シャント抵抗に流れる電流のリンギングが発生する。ここで、2相変調とすることにより、第0ベクトルV0の開始タイミングから電流検出タイミングtdまでの期間を長くすることができる。これにより、スイッチングモードの切り替えに伴って発生するリンギングが収束した後に電流検出タイミングtdを設定することができる。その結果、相電流の検出精度を高めることができる。
なお、本実施形態の制御装置40は、内燃機関が搭載されていない電気自動車に適用される車載補機用モータ、又は内燃機関が搭載されている車両において内燃機関が稼働していない場合に駆動される車載補機用モータに適用されるときに特に有効である。ハイブリッド車や電気自動車では内燃機関の稼働音が無いため、補機用モータの作動音が相対的に大きくなる傾向にある。この場合、例えば、車両の商品価値が低下したり、ドライバが車両故障と誤認識したりする懸念がある。この点、本実施形態では、γ軸高周波電圧Vγhの周波数を人の可聴域よりも高い方に外すことができるため、このような懸念は発生しない。
<第1実施形態の変形例1>
U相シャント抵抗23Uの設置場所としては、図1に示したものに限らず、例えば、U相下アームスイッチSUnのドレインとU相導電部材21Uの第1端との間であってもよい。なお、V相シャント抵抗23U及びW相シャント抵抗23Wについても同様である。
<第1実施形態の変形例2>
図7に示すように、シャント抵抗を上アーム側に設けてもよい。図7において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpのドレインには、U,V,W相シャント抵抗24U,24V,24Wの第1端が接続されている。U,V,W相シャント抵抗24U,24V,24Wの第2端と、蓄電池30の正極端子とは、正極側母線Lpにより接続されている。
本実施形態では、図8に示すように、電圧ベクトルV1〜V7に応じて、上アームスイッチのオン期間中にシャント抵抗に相電流が流れる。このため、電流検出タイミングtdが、例えばキャリア信号SigCが最小値(0)となるタイミングに設定されればよい。これにより、電流検出タイミングtdを、3相分の相電流を検出可能な第7ベクトルV7の期間に設定できる。
なお、図7に示す構成において、U相シャント抵抗23Uの設置場所としては、図9に示したものに限らず、例えば、U相上アームスイッチSUpのソースとU相導電部材21Uの第1端との間であってもよい。なお、V相シャント抵抗23U及びW相シャント抵抗23Wについても同様である。
<第1実施形態の変形例3>
信号生成部50は、PWMに代えて、空間ベクトル変調(SVM:Space Vector Modulation)により各操作信号gUp〜gWpを生成してもよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、信号生成部50は、いわゆる上ベタの2相変調により、各操作信号gUp〜gWnを生成してスイッチングモードを設定する。詳しくは、図9に示すように、電気角120°毎に相ごとに、上アームスイッチのオン操作固定及び下アームスイッチのオフ操作固定を順次行いつつ、操作状態が固定された相以外の2相を構成する上,下アームスイッチをオンオフ操作するように指令時比率Dtu,Dtv,Dtwを変更する。なお、図9に示す各指令時比率Dtu,Dtv,Dtwは、γ軸電圧Vγrにγ軸高周波電圧Vγhが重畳されていない場合のものである。
図10に、本実施形態の電流検出タイミングtdを示す。図10(a)〜図10(c)は、先の図6(a)〜図6(c)に対応している。
本実施形態においても、キャリア信号SigCが最大値となるタイミングが電流検出タイミングtdに設定されている。この設定によれば、電流検出タイミングtdを第1ベクトルV1の期間にできるため、2相分の相電流を検出できる。電流検出部53は、2相分の相電流を検出した場合、2相分の相電流に基づいて、「IU+IV+IW=0」の関係を用いて、残りの相電流を算出する。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に準じた効果を得ることができる。
<第3実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、信号生成部50は、第1実施形成で説明した下ベタの2相変調と、第2実施形態で説明した上ベタの2相変調とを規定時間毎に交互に切り替える処理を行う。
図11に、信号生成部50により実行される2相変調の切り替え処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期毎に実行される。
ステップS10では、下ベタ及び上ベタのうち一方から他方へと2相変調が前回切り替えられてからの経過時間をカウントする。
ステップS11では、カウントした経過時間が規定時間Tα経過したか否かを判定する。ステップS11において否定判定した場合には、次回の制御周期におけるステップS10の処理に移行する。一方、ステップS11において肯定判定した場合には、ステップS12に進み、2相変調を切り替える。そして、カウントした経過時間を0にリセットする。
以上説明した本実施形態によれば、2相変調によりオン操作固定された特定の相のスイッチの発熱量が大きくなることを回避できる。特に、回転電機10の電気角速度がゼロ又はゼロよりも高い低速度の場合においては、オン操作固定される期間が長くなり、オン操作固定される特定の相のスイッチの発熱量が大きくなりやすい。このため、回転電機10の電気角速度がゼロ又はゼロよりも高い低速度の場合においては、本実施形態の2相変調の切り替え処理が特に有効である。
<第3実施形態の変形例>
図12に示すように、信号生成部50は、電気角60°毎に相ごとに上アームスイッチ及び下アームスイッチの操作状態を順次固定してかつ、電気角60°毎に相ごとに上記操作状態を固定する上アームスイッチ及び下アームスイッチそれぞれのオン操作固定及びオフ操作固定を交互に切り替えるように指令時比率Dtu,Dtv,Dtwを変更してもよい。なお、図12に示す各指令時比率Dtu,Dtv,Dtwは、γ軸電圧Vγrにγ軸高周波電圧Vγhが重畳されていない場合のものである。
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、制御装置40は、図13に示すように、キャリア信号SigCの1周期Tnと同じ周期毎に電流検出タイミングtdを設定する。制御装置40は、推定角θestの算出と、算出した推定角θestに基づく各操作信号gUp〜gWnの生成とを含む制御を、キャリア信号SigCの2周期と同じ周期毎に実施する。つまり、各操作信号gUp〜gWnを生成するための制御装置40の制御周期が、キャリア信号SigCの2周期と同じ周期に設定されている。なお、図13(a)〜図13(c)は、先の図6(a)〜図6(c)に対応している。
本実施形態によれば、各操作信号gUp〜gWnの生成処理の演算期間を十分確保することができ、制御周期内にその演算処理が完了しなくなるといった事態の発生を回避できる。これにより、回転電機10の回転速度制御が不安定になることを回避できる。
なお、制御装置40は、例えば、電流検出タイミングtd毎に、検出した相電流に基づいて、ステータ巻線に過電流が流れているか否かを判定する処理を行ってもよい。この構成によれば、各操作信号gUp〜gWnの生成処理の演算期間を十分確保しつつ、ステータ巻線に過電流が流れていることを迅速に判定できる。
・信号生成部50は、キャリア信号SigCの2周期よりも長い周期に、各操作信号gUp〜gWnを生成するための制御装置40の制御周期を設定してもよい。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・キャリア信号としては、三角波信号に限らず、例えばのこぎり波信号であってもよい。
・キャリア信号と比較される指令信号としては、指令時比率に限らず、指令電圧であってもよい。この場合、指令電圧の振幅の大きさに応じて、キャリア信号の振幅を可変設定すればよい。
・インバータを構成するスイッチとしては、MOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。また、スイッチには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
また、インバータ20を構成するスイッチとしては、電圧制御形のものに限らず、バイポーラトランジスタ等の電流制御形のものであってもよい。
・回転電機の制御量としては、回転速度に限らず、例えばトルクであってもよい。
・回転電機としては、星形結線されているものに限らず、Δ結線されているものであってもよい。また、回転電機としては、車載補機を駆動するために用いられるものに限らず、車両の走行動力源となる車載主機として用いられるものであってもよい。加えて、回転電機としては、永久磁石同期機に限らず、例えば、巻線界磁型同期機やシンクロナスリラクタンスモータであってもよい。
10…回転電機、20…インバータ、23U,23V,23W…U,V,W相シャント抵抗、40…制御装置。

Claims (4)

  1. 3相分の上下アームのスイッチ(SUp〜SWn)を有するインバータ(20)と、
    前記インバータに電気的に接続されたステータ巻線(11U〜11W)を有する同期式の回転電機(10)と、
    各相において、上下アームのうちいずれか一方の前記スイッチのみに電気的に接続されたシャント抵抗(23U〜23W,24U〜24W)と、を備えるシステムに適用される回転電機の制御装置(40)において、
    前記各シャント抵抗のうち少なくとも2相分のシャント抵抗に電流が流れている期間において、電流が流れている前記各シャント抵抗の電圧を検出する電流検出部と、
    前記ステータ巻線に高周波電圧を印加する高周波印加部と、
    前記電流検出部により検出された電圧に基づいて、前記高周波電圧の印加に伴い前記ステータ巻線に流れる高周波電流を検出する高周波検出部と、
    前記高周波検出部により検出された高周波電流に基づいて、前記回転電機の磁極位置を推定する推定部と、
    前記電流検出部により検出された電圧と、前記推定部により推定された磁極位置である推定磁極位置とに基づいて、前記インバータを構成する前記各スイッチのスイッチングモードを設定する設定部と、を備え、
    前記高周波印加部は、周波数が人の可聴域よりも高い方に外れた高周波電圧を前記ステータ巻線に印加する回転電機の制御装置。
  2. 前記推定部は、前記高周波検出部により高周波電流が検出されるたびに前記磁極位置を推定し、
    前記設定部は、前記推定部により磁極位置が推定されるたびに、前記回転電機の制御量をその指令値にするための指令信号を前記推定磁極位置に基づいて生成し、上下アームの前記スイッチの操作状態を所定期間毎に相ごとに順次固定しつつ、3相のうち操作状態が固定された相以外の2相を構成する上下アームの前記スイッチを、生成した前記指令信号及びキャリア信号の大小比較に基づくパルス幅変調によりオンオフ操作する2相変調の前記スイッチングモードを設定する請求項1に記載の回転電機の制御装置。
  3. 前記設定部は、3相のうち操作状態をオフに固定する相を順次切り替える請求項2に記載の回転電機の制御装置。
  4. 前記設定部は、前記推定部により磁極位置が推定されるたびに、前記回転電機の制御量をその指令値にするための指令信号を前記推定磁極位置に基づいて生成し、生成した前記指令信号及びキャリア信号の大小比較に基づくパルス幅変調により前記スイッチングモードを設定し、
    前記推定部は、前記キャリア信号の2周期以上の周期毎に前記磁極位置を推定する請求項1に記載の回転電機の制御装置。
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