JP2001169591A - 位置センサレスモータ制御装置 - Google Patents

位置センサレスモータ制御装置

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JP2001169591A JP34368699A JP34368699A JP2001169591A JP 2001169591 A JP2001169591 A JP 2001169591A JP 34368699 A JP34368699 A JP 34368699A JP 34368699 A JP34368699 A JP 34368699A JP 2001169591 A JP2001169591 A JP 2001169591A
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和成 楢崎
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徹 田澤
Yukinori Maruyama
幸紀 丸山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 位置センサレスモータ制御装置において、起
動時にモータが回転している場合でも、スムーズに起動
させることができる装置を得ること。 【解決手段】 モータを起動させる複数の起動手段と、
所望の起動手段を選択する選択手段とを有し、起動時の
電流を実質的に零に制御したときの電圧指令値の大きさ
により所望の起動手段を選択するよう構成し、起動時に
ロータが回転していても、ブラシレスモータをスムーズ
に起動させることができる位置センサレスモータ制御装
置を実現する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、位置センサを用い
ることなくブラシレスモータをスムーズに起動させる位
置センサレスモータ制御装置であり、特に、ロータが回
転状態であっても、ブラシレスモータをスムーズに起動
させることができる位置センサレスモータ制御装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】ブラシレスモータは、界磁に永久磁石を
使用するため高効率であり、機械的な転流機構を用いな
いため保守性に優れている。そのため、ブラシレスモー
タはファン用やポンプ用など様々な用途に使用されてい
る。しかし、ブラシレスモータは、ロータの回転に同期
して、ステータの相巻線に電流を流す必要がある。この
ようなブラシレスモータを駆動制御する従来のモータ制
御装置においては、ブラシレスモータに取り付けられた
ホール素子、レゾルバ、あるいは光エンコーダなどの位
置センサを用いてロータの角度情報を得ていた。したが
って、このような位置センサを設ける必要がある分、従
来のブラシレスモータはコストが上昇し、大型化してい
た。
【0003】このような位置センサを省略することによ
り、低コスト化と小型化とを実現した従来の位置センサ
レスモータ制御装置としては、電気学会論文集、D11
7巻、1号、平成9年、98頁〜104頁に記載された
ものと、電気学会研究会資料、半導体電力変換研究会、
SPC−97−7、37頁〜42頁に記載されたものが
知られている。以下、これらの従来の位置センサレスモ
ータ制御装置について説明する。
【0004】前者の従来の位置センサレスモータ制御装
置は、ある程度の速さでの回転時において、ブラシレス
モータのロータの角度を推定するものである。この従来
の位置センサレスモータ制御装置は、まず、相巻線に流
れる相電流を検知し、これらの相電流値を座標変換し
て、γ軸電流値iγとδ軸電流値iδとを作成する。次
に、ブラシレスモータのモデルを示すd軸とq軸の電圧
方程式にモータ定数をあてはめ、γ軸電流モデル値iγ
mとδ軸電流モデル値iδmとを作成する。さらに、こ
れらの電流値と電流モデル値との誤差であるγ軸電流誤
差値Δiγとδ軸電流誤差値Δiδとを作成する。そし
て、これらの電流誤差値に基づき推定角度と推定誘起電
圧とを補正する。このようにして作成した推定角度を用
いて相巻線に所定の電流を流し、ロータを所定の向きに
回転させていた。
【0005】一方、後者の従来の位置センサレスモータ
制御装置は、停止時、あるいは低速時において、突極性
を有するブラシレスモータのロータの角度を推定するも
のである。この従来の位置センサレスモータ制御装置
は、まず、γ軸に電圧パルスを印加する。次に、この電
圧パルスによる相電流の電流応答を検知し、これらの相
電流の電流応答を座標変換して、γ軸電流応答Δiγと
δ軸電流応答Δiδとを作成する。ところで、突極性を
有するブラシレスモータは、ロータの回転に応じて、イ
ンダクタンスが変化する。そこで、インダクタンスによ
り電流応答が変化することを利用して、これらのγ軸電
流応答Δiγとδ軸電流応答Δiδとに基づき推定角度
を作成する。このようにして作成した推定角度を用いて
相巻線に電流を流し、ロータを所定の向きに回転させて
いた。
【0006】また、起動時に停止しているモータを高速
で回転させるためには、以下の方法により駆動する。ま
ず、後者の従来の位置センサレスモータ制御装置で用い
られる方式で起動する。次に、適宜、前者の従来の位置
センサレスモータ制御装置で用いられる方式に切り替え
て、高速まで加速して回転させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ブラシレスモータをフ
ァン用に使用した場合等において、起動時に強い風がふ
いているとき、その風の影響でモータが回転する場合が
ある。このようにモータが起動時に回転している場合、
前述のように起動時に停止している場合と同様に、後者
の従来の位置センサレスモータ制御装置に用いられてい
る方式により起動すると、スムーズに起動させることは
できなかった。本発明は、起動時においてロータが回転
している場合であっても、ブラシレスモータをスムーズ
に起動させることができる位置センサレスモータ制御装
置を実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係る位置センサレスモータ制御装置は、
モータを起動させる複数の起動手段と、前記モータに
流れる電流を実質的に零に制御したときの電圧指令値に
基づき前記複数の起動手段から1つの起動手段を選択す
る選択手段とを具備する。この構成により、電流を零に
制御したときの電圧指令値の大きさにより適切な起動部
を選択し動作させることにより、ロータが回転していて
も、ブラシレスモータをスムーズに起動する位置センサ
レスモータ制御装置を実現することができる。
【0009】他の観点による発明の位置センサレスモー
タ制御装置は、高速時にモータを起動させるための第1
の起動手段と、低速時に前記モータを起動させるための
第2の起動手段と、前記モータに流れる電流を実質的に
零に制御したときの電圧指令値がしきい値より大きいと
き前記第1の起動手段を選択し、前記モータに流れる電
流を実質的に零に制御したときの前記電圧指令値がしき
い値より小さいとき前記第2の起動手段を選択する選択
手段とを具備する。この構成により、誘起電圧と等価な
電圧指令値により起動部を選択することにより、温度変
化などで誘起電圧が変化しても、常に最適な起動部を選
択することが可能な位置センサレスモータ制御装置を実
現することができる。
【0010】また、他の観点による発明の位置センサレ
スモータ制御装置は、モータを起動させる複数の起動手
段と、前記モータに流れる電流を実質的に零に制御する
ための電圧指令値を作成する電流零制御部と、前記電流
零制御部の作成した前記電圧指令値に基づき前記複数の
起動手段から1つの起動手段を選択する選択手段とを具
備する。この構成により、起動期間において、電流を零
に制御することにより、トルクを発生しない位置センサ
レスモータ制御装置を実現することができる。
【0011】また、他の観点による発明の位置センサレ
スモータ制御装置は、高速時にモータを起動させるため
の第1の起動手段と、低速時に前記モータを起動させる
ための第2の起動手段と、前記モータに流れる電流を実
質的に零に制御するための電圧指令値を作成する電流零
制御部と、前記電流零制御部の作成した前記電圧指令値
がしきい値より大きいとき前記第1の起動手段を選択
し、前記電圧指令値がしきい値より小さいとき前記第2
の起動手段を選択する選択手段とを具備する。この構成
により、起動期間において、電流を零に制御することに
より、トルクを発生しない位置センサレスモータ制御装
置を実現することができる。
【0012】また、他の観点による発明の位置センサレ
スモータ制御装置は、永久磁石が配置され回転自在に支
持されたロータと、前記ロータに近接して配置されたス
テータと、前記ステータに巻回された相巻線とを有する
ブラシレスモータを制御する位置センサレスモータ制御
装置であって、前記相巻線に印加する電圧の指令値を表
す電圧指令値に基づき電圧を印加する駆動手段と、高速
時に前記ブラシレスモータを起動させるための第1の起
動手段と、低速時に前記ブラシレスモータを起動させる
ための第2の起動手段と、前記相巻線に流れる電流を実
質的に零に制御するための電圧指令値を作成する電流零
制御部と、前記電流零制御部の作成した前記電圧指令値
がしきい値より大きいとき前記第1の起動手段を選択
し、前記電圧指令値がしきい値より小さいとき前記第2
の起動手段を選択する選択手段とを具備し、前記第1の
起動手段が、前記相巻線に流れる電流を実質的に零にす
るように前記電圧指令値を制御して、前記電圧指令値に
基づき前記ロータの角度と速度とを演算し、前記第2の
起動手段が、前記相巻線に流れる電流を実質的に零にす
るように制御し、前記ロータの回転に伴うインダクタン
スの変化を利用して前記ロータの角度と速度とを演算す
る。この構成により、電流を零に制御したときの電圧指
令値の大きさにより適切な起動部を選択し動作させるこ
とにより、ロータが回転していても、ブラシレスモータ
をスムーズに起動する位置センサレスモータ制御装置を
実現することができる。また、この構成により、誘起電
圧と等価な電圧指令値により起動部を選択することによ
り、温度変化などで誘起電圧が変化しても、常に最適な
起動部を選択する位置センサレスモータ制御装置を実現
することができる。さらに、この構成により、起動期間
において、電流を零に制御することにより、トルクを発
生しない位置センサレスモータ制御装置を実現すること
ができる。
【0013】また、他の観点による発明の位置センサレ
スモータ制御装置は、永久磁石が配置され回転自在に支
持されたロータと、前記ロータに近接して配置されたス
テータと、前記ステータに巻回された相巻線とを有する
ブラシレスモータを制御する位置センサレスモータ制御
装置であって、前記相巻線に印加する電圧の指令値を表
す電圧指令値に基づき電圧を印加する駆動手段と、高速
時に前記ブラシレスモータを起動させるための第1の起
動手段と、低速時に前記ブラシレスモータを起動させる
ための第2の起動手段と、前記相巻線に流れる電流を実
質的に零に制御するための電圧指令値を作成する電流零
制御部と、前記電流零制御部の作成した前記電圧指令値
がしきい値より大きいとき前記第1の起動手段を選択
し、前記電圧指令値がしきい値より小さいとき前記第2
の起動手段を選択する選択手段とを具備し、前記第1の
起動手段が前記相巻線に流れる電流を実質的に零にする
ように前記電圧指令値を制御して、前記電圧指令値に基
づき前記ロータの角度と速度とを演算し、前記第2の起
動手段が前記相巻線に流れる電流を実質的に零にするよ
うに制御し、磁束の飽和を利用して前記ロータの角度と
速度とを演算する。この構成により、電流を零に制御し
たときの電圧指令値の大きさにより適切な起動部を選択
し動作させることにより、ロータが回転していても、ブ
ラシレスモータをスムーズに起動する位置センサレスモ
ータ制御装置を実現することができる。また、この構成
により、誘起電圧と等価な電圧指令値により起動部を選
択することにより、温度変化などで誘起電圧が変化して
も、常に最適な起動部を選択する位置センサレスモータ
制御装置を実現することができる。さらに、この構成に
より、起動期間において、電流を零に制御することによ
り、トルクを発生しない位置センサレスモータ制御装置
を実現することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る位置センサレ
スモータ制御装置の一実施の形態である具体的な実施例
について添付の図面を参照して説明する。
【0015】《実施例1》以下、本発明の実施例1であ
る位置センサレスモータ制御装置について説明する。実
施例1の位置センサレスモータ制御装置は、電流を0に
制御したときの電圧の大きさに基づき高速用起動部ある
いは低速用起動部のうち1つを選択し動作させるもので
ある。
【0016】まず、実施例1の位置センサレスモータ制
御装置の構成を説明する。図1は、実施例1における位
置センサレスモータ制御装置の構成を示すブロック図で
ある。ブラシレスモータ1には、電磁鋼板から構成され
たステータ(図示せず)と、相電流が流れ被覆銅線から
構成されステータに巻回された相巻線2u、2v、2w
と、このステータに対向し近接して配置されたロータ3
とが設けられている。ここで、相巻線2u、2v、2w
はY結線(各相巻線2u、2v、2wの片端が1点で接
続される結線)されている。ロータ3は、電磁鋼板から
構成されたロータヨーク4とこのロータヨーク4の内部
に配置された永久磁石5とロータヨーク4と同一の回転
中心を持つシャフト6とから構成されている。このロー
タ3は回転自在に支持され、相電流により生成される磁
束と永久磁石5による磁束との相互作用によりロータ3
が回転する。
【0017】実施例1の位置センサレスモータ制御装置
は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称)1
0と、相巻線2u、2vに流れる相電流をそれぞれ検知
してアナログu相電流値iuaとアナログv相電流値i
vaをそれぞれ出力する電流センサ8u、8vと、スイ
ッチング指令信号guh、gul、gvh、gvl、g
wh、gwlが入力されて相巻線2u、2v、2wに印
加する電圧を制御する駆動部9とを具備している。
【0018】マイコン10には、アナログu相電流値i
uaとアナログv相電流値ivaがそれぞれ入力され、
u相電流値iuとv相電流値ivをそれぞれ出力するA
DC(アナログ・デジタル・コンバータ)11uとAD
C11vが設けられている。また、マイコン10は、u
相電流値iuとv相電流値ivとが入力されてu相電圧
指令値vu*とv相電圧指令値vv*とw相電圧指令値
vw*とを出力するモータ制御部12と、u相電圧指令
値vu*とv相電圧指令値vv*とw相電圧指令値vw
*とが入力されてスイッチング信号guh、gul、g
vh、gvl、gwh、gwlを出力するPWM制御部
13とを有している。
【0019】モータ制御部12は、機能的に、選択部2
0と、高速用起動部30と、低速用起動部40と、運転
部50と、電流零制御部60とから構成される。このモ
ータ制御部12は、ハード的に、CPU、ROM、RA
M、タイマ、ポート、およびこれらをつなぐバスなどか
ら構成される。
【0020】図2は、実施例1における駆動部9の構成
を示す回路図である。図2に示すように、駆動部9に
は、電源91と、コレクタが電源91の正極に接続さ
れ、エミッタが相巻線2u、2v、2wにそれぞれ接続
された上側IGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トラン
ジスタ)92u、92v、92wと、これらの上側IG
BT92u、92v、92wにそれぞれ逆並列接続され
た上側フライホイールダイオード93u、93v、93
wが設けられている。また、駆動部9には、コレクタが
ステータ巻線2u、2v、2wにそれぞれ接続され、エ
ミッタが電源91の負極に接続された下側IGBT94
u、94v、94wと、これらの下側IGBT94u、
94v、94wにそれぞれ逆並列接続された下側フライ
ホイールダイオード95u、95v、95wと、スイッ
チング指令信号guh、gul、gvh、gvl、gw
h、gwlに基づきそれぞれ上側IGBT92u、92
v、92wのゲート電圧と下側IGBT94u、94
v、94wのゲート電圧とを制御するプリドライブ器9
6が設けられている。
【0021】次に、実施例1の位置センサレスモータ制
御装置の動作について説明する。図1に示したマイコン
10におけるモータ制御部12は、本発明の特徴であ
り、ブラシレスモータ5の起動制御および運転制御を行
う。この動作の詳細については後述する。
【0022】電流センサ8u、8vは、それぞれ相巻線
2u、2vに流れる電流を検知し、アナログu相電流値
iua、アナログv相電流値ivaを作成する。作成さ
れたアナログu相電流値iuaとアナログv相電流値i
vaは、ADC11uとADC11vに入力される。A
DC11u、ADC11vは、それぞれアナログ値であ
るアナログu相電流値iua、アナログv相電流値iv
aをディジタル値であるu相電流値iu、v相電流値i
vに変換する。
【0023】マイコン10におけるPWM制御部13
は、u相電圧指令値vu*とv相電圧指令値vv*とw
相電圧指令値vw*とをパルス幅変調(PWM:Pul
seWidth Modulation)する。PWM
制御部13においては、ある設定された周波数と振幅と
を持つ三角波を発生し、この三角波とu相電圧指令値v
u*とを比較する。そして、u相電圧指令値vu*のほ
うが大きいとき、スイッチング信号guhをH、スイッ
チング信号gulをLにする。一方、u相電圧指令値v
u*のほうが小さいとき、スイッチング信号guhを
L、スイッチング信号gulをHにする。なお、スイッ
チング信号guh、gulの状態が遷移するとき、スイ
ッチング信号guh、gulを双方ともLにする短い時
間を設ける(この短い時間はデッドタイムと呼ばれ
る)。また、v相、およびw相についても同様に、それ
ぞれv相電圧指令値vv*、およびw相電圧指令値vw
*に基づきスイッチング信号gvh、gvl、およびス
イッチング信号gwh、gwlを作成する。
【0024】駆動部9は、スイッチング信号guh、g
ul、gvh、gvl、gwh、gwlで表される電圧
を相巻線2u、2v、2wに印加する。電源91は、駆
動部9に電力を供給する。そして、プリドライブ器96
は、スイッチング信号guhがHのとき上側IGBT9
2uが通電し、スイッチング信号guhがLのとき上側
IGBT92uが非通電となるように、上側IGBT9
2uのゲート電圧を制御する。一方、スイッチング信号
gulがHのとき下側IGBT94uが通電し、スイッ
チング信号gulがLのとき下側IGBT94uが非通
電となるように、下側IGBT94uのゲート電圧を制
御する。また、v相、およびw相についても同様に、ス
イッチング信号gvh、gvl、gwh、gwlに基づ
き上側IGBT92v、92w、下側IGBT94v、
94wのゲート電圧を制御する。
【0025】次に、実施例1の位置センサレスモータ制
御装置の動作の原理について説明する。まず、誘起電圧
の大小により、起動方式を切り替える必要があることを
説明する。ブラシレスモータ1は回転すると誘起電圧が
誘起される。そのため、高速時において、この誘起電圧
を利用し、モータのモデル式を用いて、角度を推定す
る。一方、停止時はもちろんのこと低速時においては、
十分な誘起電圧が誘起されないため、高速時と同様の方
法を用いることができない。ブラシレスモータ1は、永
久磁石5がロータヨーク4の内部に埋め込まれた突極性
を有するモータである。そのため、ロータ3が回転する
とインダクタンスが変化する。そこで、このインダクタ
ンスの変化を利用して、角度を推定する。このように、
誘起電圧の大小により、起動時の角度推定の方式を切り
替える必要がある。そのため、起動時に誘起電圧が大き
いときは、高速用の方式で起動する。一方、起動時に誘
起電圧が小さいときは、低速用の方式で起動する。
【0026】次に、誘起電圧の大小の求め方を説明す
る。まず、電流指令値を0にし、電流が0になるように
比例積分制御を用いて電圧指令値を制御する。そして、
この電圧指令値で表される電圧を駆動部9により相巻線
2u、2v、2wに印加する。ここで、電流を0に制御
するため、印加する電圧は誘起電圧に等しい。したがっ
て、電流を0に制御したときの電圧指令値が誘起電圧を
表す。これらのことから、電流を0に制御したときの電
圧指令値の大小により起動方式を切り替える。つまり、
電圧指令値の大きさが大きいとき、高速用の方式で起動
する。一方、電圧指令値の大きさが小さいとき、低速用
の方式で起動する。
【0027】次に、実施例1のモータ制御部12の動作
の詳細を説明する。まず、動作の流れを説明する。図1
に示すように、まず、モータ制御部12は選択部20を
動作させる。次に、選択部20は、高速用起動部30と
低速用起動部40のうちどちらを動作させるかを選択す
る。次に、高速用起動部30と低速用起動部40のうち
選択されたものを動作させる。そして、次に、運転部5
0を動作させる。なお、選択部20、および高速用起動
部30または低速用起動部40の内部において、電流零
制御部60が実行される。
【0028】モータ制御部12において、具体的に高速
用起動部30又は低速用起動部40が選択されるときの
動作について、以下に説明する。まず、高速用起動部3
0が選択される場合には、選択部20を動作させて高速
用起動部30が選択される。次に、高速用起動部30を
動作させ、続いて運転部50を動作させる。一方、低速
用起動部40が選択されるときは、まず、選択部20を
動作させて、低速用起動部40が選択される。次に、低
速用起動部40を動作させ、続いて運転部50を動作さ
せる。
【0029】[選択部20の動作]次に、選択部20の
動作について説明する。選択部20は、電流を0に制御
し、一定時間経過後に、電圧指令値の大きさを判断す
る。そして、電圧指令値の大きさがしきい値に比べて大
きいとき、高速用起動部30を選択する。一方、電圧指
令値の大きさがしきい値に比べて小さいとき、低速用起
動部40を選択する。
【0030】図3は、実施例1における選択部20の動
作を示すフローチャートである。まず、ステップS20
1において、選択部20の動作を開始する。次に、ステ
ップS202を実行する。ステップS202において
は、カウンタiを0にする。次に、ステップS203を
実行する。ステップS203においては、電流零制御部
60を動作させる。この動作の詳細は後述する。
【0031】次に、ステップS204を実行する。ステ
ップS204において、カウンタiに1を加える。次
に、ステップS205を実行する。ステップS205に
おいて、カウンタiがある設定された値i020より小
さいとき、次に、ステップS203を実行する。このよ
うにして、ステップS203の電流零制御部60の動作
をi020回だけ繰り返す。一方、ステップS205に
おいて、カウンタiがある設定された値i020以上の
とき、ステップS206を実行する。このように、ステ
ップS205においては、カウンタiの値により分岐す
る。
【0032】ステップS206においては、電圧指令値
の二乗値v2を作成する。下記式(1)のように、d軸
電圧指令値vd*とq軸電圧指令値vq*との二乗和を
電圧指令値の二乗値v2とする。ここで、d軸電圧指令
値vd*とq軸電圧指令値vq*は、電流零制御部60
において求められる。
【0033】 v2 = vd*・vd* + vq*・vq* ・・・(1)
【0034】次に、ステップS207を実行する。ステ
ップS207において、電圧指令値の二乗値v2の大小
により何れかの起動部を選択する。電圧指令値の二乗値
v2がある設定された値v020より大きいとき、高速
用起動部30を選択するために、ステップS208を実
行する。また、ステップS207において、電圧指令値
の二乗値v2がv020以下のとき、低速用起動部40
を選択するために、ステップS209を実行する。
【0035】ステップS208において、選択部20の
動作を終了する。次に、ステップS301を実行して、
高速用起動部30の動作を開始する。一方、ステップS
209において、選択部20の動作を終了する。次に、
ステップS401を実行して、低速用起動部40の動作
を開始する。
【0036】次に、実施例1におけるモータ制御部12
の電流零制御部60について説明する。電流零制御部6
0は、電流を0に制御するための電圧指令値を作成す
る。なお、角度と電流指令値とを0にし、通常の電流制
御をすることにより、制御ルーチンを共有化している。
【0037】[電流零制御部60の構成]まず、電流零
制御部60の構成について説明する。図4は、実施例1
における電流零制御部60の構成を示すブロック図であ
る。図4に示すように、電流零制御部60は、仮角度θ
tを出力する仮角度作成部61と、d軸電流指令値id
*とq軸電流指令値iq*とを出力する電流指令値作成
部62とを有している。また、電流零制御部60は、三
相二相変換部63と電圧指令値作成部64と二相三相変
換部65とを具備している。三相二相変換部63は、角
度θtとu相電流値iuとv相電流値ivとが入力さ
れ、d軸電流値idとq軸電流値iqとを出力する。電
圧指令値作成部64は、d軸電流指令値id*とq軸電
流指令値iq*とd軸電流値idとq軸電流値iqとが
入力され、d軸電圧指令値vd*とq軸電圧指令値vq
*とを出力する。二相三相変換部65は仮角度θtとd
軸電圧指令値vd*とq軸電圧指令値vq*とが入力さ
れ、u相電圧指令値vu*とv相電圧指令値vv*とw
相電圧指令値vw*とを出力する。
【0038】[電流零制御部60の動作]次に、電流零
制御部60の動作について説明する。電流零制御部60
は、仮角度作成部61、電流指令値作成部62、三相二
相変換部63、電圧指令値作成部64、および二相三相
変換部65の順に、各構成を動作させる。仮角度作成部
61は、下記式(2)のように、仮角度θtを0にす
る。これは、通常の電流制御と制御ルーチンを共有化す
るためである。電流零制御部60において、常に角度を
0°とし、後述するように三相二相変換部63と二相三
相変換部65において演算する。電流指令値作成部62
は、下記式(3)、(4)のように、d軸電流指令値i
d*、およびq軸電流指令値iq*を0にする。
【0039】 θt = 0 ・・・(2) id* = 0 ・・・(3) iq* = 0 ・・・(4)
【0040】三相二相変換部63は、ステータに固定さ
れた座標系上の値であるu相電流値iuとv相電流値i
vとをdq軸上の値であるd軸電流値idとq軸電流値
iqとに変換する。通常は、ロータ3の角度を求め、d
q軸はロータ3の永久磁石5に固定された座標系として
変換するが、ここでは、仮角度θt=0を用いて変換す
る。そのため、この三相二相変換において、実質的に、
三相値が二相値に変換されるのみである。具体的には、
下記式(5)、(6)のように変換する。以下の式にお
いて、aの平方根を√(a)と表示する。
【0041】 id={√(2)}・{iu・sin(θt+60°)+iv・sinθt} ・・・(5) iq={√(2)}・{iu・cos(θt+60°)+iv・cosθt} ・・・(6)
【0042】電圧指令値作成部64は、d軸電流値id
がd軸電流指令値id*のとおりになるように比例積分
制御(PI制御)を用いてd軸電圧指令値vd*を制御
する。また、q軸電流値iqがq軸電流指令値iq*の
とおりになるように比例積分制御を用いてq軸電圧指令
値vq*を制御する。下記式(7)のように、d軸電流
指令値id*とd軸電流値idの差に比例ゲインKPD
を乗じたものと、d軸電流指令値id*とd軸電流値i
dの差を積分したものに積分ゲインKIDを乗じたもの
とを加算した結果をd軸電圧指令値vd*とする。ま
た、下記式(8)のように、q軸電流指令値iq*とq
軸電流値iqの差に比例ゲインKPQを乗じたものと、
q軸電流指令値iq*とq軸電流値iqの差を積分した
ものに積分ゲインKIQを乗じたものとを加算した結果
をq軸電圧指令値vq*とする。
【0043】 vd* = KPD・(id*−id)+KID・Σ(id*−id) ・・・(7) vq* = KPQ・(iq*−iq)+KIQ・Σ(iq*−iq) ・・・(8)
【0044】二相三相変換部65は、dq軸上の値であ
るd軸電圧指令値vd*とq軸電圧指令値vq*とをス
テータに固定された座標系上の値であるu相電圧指令値
vu*とv相電圧指令値vv*とw相電圧指令値vw*
とに変換する。通常は、ロータ3の角度を求め、dq軸
はロータ3の永久磁石5に固定された座標系として変換
するが、ここでは、仮角度θt=0を用いて変換する。
そのため、この二相三相変換において、二相値が三相値
に変換されるのみである。具体的には、下記式(9)、
(10)、(11)のように変換する。
【0045】 vu* ={√(2/3)}・{vd*・cosθt−vq*・sinθt} ・・・(9) vv* ={√(2/3)}・{vd*・cos(θt−120°) −vq*・sin(θt−120°)} ・・・(10) vw* ={√(2/3)}・{vd*・cos(θt+120°) −vq*・sin(θt+120°)} ・・・(11)
【0046】以上のように、実施例1におけるモータ制
御部12の電流零制御部60は、電流が0になるよう
に、電圧指令値を制御する。このように、モータ制御部
12における選択部20は、以上の動作をすることによ
り、電圧指令値の大きさが大きいとき高速用起動部30
を選択し、電圧指令値の大きさが小さいとき低速用起動
部40を選択する。
【0047】[高速用起動部30の動作]次に、実施例
1におけるモータ制御部12の高速用起動部30の動作
について説明する。高速用起動部30は、誘起電圧が大
きいときのための起動方式であり、電流を0に制御した
ときの電圧指令値に基づき推定角度θmと推定速度ωm
とを作成する。図5は、実施例1における高速用起動部
30の動作を示すフローチャートである。まず、ステッ
プS301において、高速用起動部30の動作を開始す
る。次に、ステップS302を実行する。ステップS3
02において、カウンタiを0にする。
【0048】次に、ステップS303を実行する。ステ
ップS303において、電流零制御部60を動作させ
る。この電流零制御部60は前述の動作を行うため、そ
の説明は省略する。次に、ステップS304を実行す
る。ステップS304において、推定角度θmを作成す
る。電流を0に制御したときの電圧指令値は誘起電圧を
表す。図6は、実施例1における高速用起動部30で電
流を零に制御したときの電圧指令値の変化を示す波形図
である。図6に示すように、角度θ(実際のロータの角
度を示す)が変化すると、d軸電圧指令値vd*とq軸
電圧指令値vq*とは互いに90°ずれて正弦波状に変
化する。そこで、この関係より角度を推定する。具体的
には、下記式(12)のように、逆正接関数atan
(アークタンジェント)を用いて推定角度θmを求め
る。ここで、d軸電圧指令値vd*の符号により、推定
角度θmを180°ずらす。
【0049】 θm = atan(vd*/vq*) (vd*≦0のとき) θm = atan(vd*/vq*)+180° (vd*>0のとき) ・・・(12)
【0050】次に、ステップS305を実行する。ステ
ップS305において、推定速度ωmを作成する。下記
式(13)のように、推定角度θmを差分し、ローパス
フィルタを作用させたものを推定速度ωmとする。式
(13)において、KW30はローパスフィルタの係数
である。このKW30は、1以下の正値であり、小さい
ほどローパスフィルタの作用が大きくなる。また、θm
(i)は今回にステップS304で作成された推定角度
θmであり、θm(i−1)は前回にステップS304
で作成された推定角度θmである。さらに、ΔT30
は、ステップS305を動作させる周期である。
【0051】 ωm = KW30・{θm(i)−θm(i−1)}/ΔT30 +(1−KW30)・ωm ・・・(13)
【0052】次に、ステップS306を実行する。ステ
ップS306において、カウンタiに1を加える。次
に、ステップS307を実行する。ステップS307に
おいて、カウンタiがある設定された値i030より小
さいとき、次に、ステップS303を実行する。このよ
うにして、ステップS303の電流零制御部60の動作
とステップS304の推定角度θmの作成とステップS
305の推定速度ωmの作成とをi030回だけ繰り返
す。一方、ステップS307において、カウンタiがあ
る設定された値i030以上のとき、ステップS308
を実行する。このように、ステップS307において
は、カウンタiの値により分岐する。ステップS308
においては、高速用起動部30の動作を終了させる。
【0053】次に、ステップS501を実行し、運転部
50の動作を開始する。高速用起動部30において求め
られた推定角度θmと推定速度ωmとを初期値として、
前述の従来の技術の欄で述べた前者の位置センサレスモ
ータ制御装置で用いられる方式でブラシレスモータ1を
駆動する。
【0054】[低速用起動部40の動作]次に、実施例
1におけるモータ制御部12の低速用起動部40の動作
について説明する。低速用起動部40は、誘起電圧が小
さいときのための起動方式であり、ロータ2の回転に伴
いインダクタンスが変化することを利用して推定角度θ
mと推定速度ωmとを作成する。図7は、実施例1にお
ける低速用起動部40の動作を示すフローチャートであ
る。まず、ステップS401において、低速用起動部4
0の動作が開始する。次に、ステップS402を実行す
る。ステップS402において、カウンタiを0にす
る。次に、ステップS403を実行する。ステップS4
03において、カウンタjを0にする。次に、ステップ
S404を実行する。ステップS404において、電流
零制御部60を動作させる。この電流零制御部60は、
前述と同様の動作を行うため、その説明は省略する。
【0055】次に、ステップS405を実行する。ステ
ップS405において、カウンタjに1を加える。次
に、ステップS406を実行する。ステップS406に
おいて、カウンタjがある設定された値j040より小
さいとき、次に、ステップS404を実行する。このよ
うにして、ステップS404の電流零制御部60の動作
をj040回だけ繰り返す。一方、ステップS406に
おいて、カウンタjがある設定された値j040以上の
とき、ステップS407を実行する。このように、ステ
ップS406においては、カウンタjの値により分岐す
る。ステップS407において、推定角度θmを作成す
る。このステップS407の動作の詳細は後述する。
【0056】次に、ステップS408において、推定速
度ωmを作成する。下記式(14)のように、推定角度
θmを差分し、ローパスフィルタを作用させたものを推
定速度ωmとする。式(14)において、KW40はロ
ーパスフィルタの係数である。このKW40は、1以下
の正値であり、小さいほどローパスフィルタの作用が大
きくなる。また、θm(i)は今回にステップS407
で作成された推定角度θmであり、θm(i−1)は前
回にステップS407で作成された推定角度θmであ
る。さらに、ΔT40は、ステップS408を動作させ
る周期である。
【0057】 ωm = KW40・{θm(i)−θm(i−1)}/ΔT40 +(1−KW40)・ωm ・・・(14)
【0058】次に、ステップS409を実行する。ステ
ップS409において、カウンタiに1を加える。次
に、ステップS410を実行する。ステップS410に
おいて、カウンタiがある設定された値i040より小
さいとき、次に、ステップS403を実行する。このよ
うにして、ステップS407の推定角度θmの作成とス
テップS408の推定速度ωmの作成とをi040回だ
け繰り返す。一方、ステップS410において、カウン
タiがある設定された値i040以上のとき、ステップ
S411を実行する。このように、ステップS410に
おいて、カウンタiの値により分岐する。ステップS4
11においては、極性が判断される。このステップS4
11の動作の詳細については後述する。
【0059】次に、ステップS412を実行する。ステ
ップS412において、低速用起動部40の動作を終了
する。次に、ステップS502を実行し、運転部50の
動作を開始する。低速用起動部40において求められた
推定角度θmと推定速度ωmとを初期値として、前述の
従来の技術の欄で述べた後者の位置センサレスモータ制
御装置で用いられる方式によりブラシレスモータ1を駆
動する。
【0060】次に、推定角度θmを作成するステップS
407の動作について説明する。まず、推定角度θmを
作成するステップS407の動作の原理を説明する。図
8は、実施例1における電圧パルスと電流応答との関係
を示す波形図である。誘起電圧が小さいため、d軸電圧
指令値vd*、およびq軸電圧指令値vq*は小さい。
ここで、d軸電圧指令値vd*にパルス電圧を重畳す
る。この重畳により、パルス電圧に応答して、d軸電流
値idがd軸電流応答Δidだけ変化する。また、q軸
電流値iqがq軸電流応答Δiqだけ変化する。なお、
演算における角度は仮角度θt=0として固定する。
【0061】図9は、実施例1における角度と電流応答
との関係を示す波形図である。ブラシレスモータ1は、
突極性を有するため、角度θ(実際のロータの角度を示
す)が変化すると、インダクタンスが変化する。そのた
め、角度θが変化すると、d軸電流応答Δidとq軸電
流応答Δiqとが変化する。この関係から推定角度θm
を求める。なお、インダクタンスの変化は、180°の
周期を持つため、推定角度θmは0〜180°の範囲で
求められるのみである。
【0062】次に、推定角度θmを作成するステップS
407の動作の詳細について説明する。図10は、実施
例1における低速用起動部40での推定角度θmを作成
するステップS407の動作を示すフローチャートであ
る。まず、ステップS701において、推定角度θmを
作成するステップS407の動作を開始する。次に、ス
テップS702を実行する。ステップS702におい
て、仮角度θtを0にする。次に、ステップS703を
実行する。ステップS703において、電圧パルスの正
パルス部を印加し、この状態をある設定された時間だけ
保持する。下記式(15)、(16)、(17)のよう
に、d軸電流指令値vd*に電圧パルスを重畳し、二相
三相変換したものをu相電圧指令値vu*、v相電圧指
令値vv*、w相電圧指令値vw*とする。そして、こ
の状態をある設定された時間だけ保持する。
【0063】 vu*={√(2/3)}・{(vd*+ΔV)・cosθt −vq*・sinθt} ・・・(15) vv*={√(2/3)}・{(vd*+ΔV)・cos(θt−120°) −vq*・sin(θt−120°)} ・・・(16) vw*={√(2/3)}・{(vd*+ΔV)・cos(θt+120°) −vq*・sin(θt+120°)} ・・・(17)
【0064】u相電圧指令値vu*、v相電圧指令値v
v*、w相電圧指令値vw*が設定された時から、ある
設定された時間だけ経過した後、ステップS704を実
行する。ステップS704において、u相電流値iu、
およびv相電流値ivをそれぞれu相電流応答Δiu、
およびv相電流応答Δivとして保存する。
【0065】次に、ステップS705を実行する。ステ
ップS705において、電圧パルスの負パルス部を印加
し、この状態をある設定された時間だけ保持する。下記
式(18)、(19)、(20)のように、d軸電流指
令値vd*に電圧パルスを重畳し、二相三相変換したも
のをu相電圧指令値vu*、v相電圧指令値vv*、w
相電圧指令値vw*とする。そして、この状態をある設
定された時間だけ保持する。
【0066】 vu*={√(2/3)}・{(vd*−ΔV)・cosθt −vq*・sinθt} ・・・(18) vv*={√(2/3)}・{(vd*−ΔV)・cos(θt−120°) −vq*・sin(θt−120°)} ・・・(19) vw*={√(2/3)}・{(vd*−ΔV)・cos(θt+120°) −vq*・sin(θt+120°)} ・・・(20)
【0067】その後、u相電圧指令値vu*、v相電圧
指令値vv*、w相電圧指令値vw*を、それぞれ前述
の式(9)、(10)、(11)で設定された、電圧パ
ルスを印加する前の値に戻す。次に、ステップS706
を実行する。ステップS706において、ステータに固
定された座標系上の値であるu相電流応答Δiuとv相
電流応答Δivとをdq軸上の値であるd軸電流応答Δ
idとq軸電流応答Δiqとに変換する。ここで、q軸
電流応答Δiqは、変換後、さらに、−1を乗じる。通
常は、ロータ3の角度を求め、dq軸はロータ3の永久
磁石5に固定された座標系として変換する。しかし、こ
こでは、仮角度θt=0とし変換する。そのため、この
三相二相変換において、実質的に、三相値が二相値に変
換されるのみである。具体的には、下記式(21)、
(22)のように変換する。
【0068】 Δid={√(2)}・{Δiu・sin(θt+60°) +Δiv・sinθt} ・・・(21) Δiq= −{√(2)}・{Δiu・cos(θt+60°) +Δiv・cosθt} ・・・(22)
【0069】次に、ステップS707を実行する。ステ
ップS707において、推定角度θmを演算する。角度
θ(実際のロータ3の角度)と電流応答には、図9に示
した関係がある。そのため、下記式(23)のように、
逆正接関数atan(アークタンジェント)を用いて推
定角度θmを求める。ここで、推定角度θmの範囲を0
〜180°に限定する。
【0070】 θm = atan(Δiq/Δid)/2 (Δiq≧0のとき) θm ={atan(Δiq/Δid)/2}+90° (Δiq<0のとき) ・・・(23)
【0071】次に、ステップS708を実行する。ステ
ップS708において、推定角度θmを作成するステッ
プS407の動作を終了する。
【0072】次に、極性を判断するステップS411の
動作について説明する。まず、推定角度θmの位置とこ
の位置と180°ずれた位置に電圧パルスを印加する。
このように電圧パルスを印加することにより、2つの位
置における電流応答の大きさが磁気飽和の影響により異
なる。そこで、この大きさから極性を判断する。
【0073】図11は、実施例1における低速起動部4
0での極性を判断するステップS411の動作を示すフ
ローチャートである。ステップS801において、極性
を判断するステップS411の動作を開始する。次に、
ステップS811を実行する。ステップS811におい
て、カウンタiを0にする。次に、ステップS812を
実行する。ステップS812において、電流零制御部6
0を動作させる。この電流零制御部60は、前述の動作
と同様に動作するため、その説明は省略する。
【0074】次に、ステップS813を実行する。ステ
ップS813において、カウンタiに1を加える。次
に、ステップS814を実行する。ステップS814に
おいて、カウンタiがある設定された値i080より小
さいとき、次に、ステップS812を実行する。このよ
うにして、ステップS812の電流零制御部60の動作
をi080回だけ繰り返す。一方、ステップS814に
おいて、カウンタiがある設定された値i080以上の
とき、ステップS821を実行する。このように、ステ
ップS814においては、カウンタiの値により分岐す
る。ステップS821において、仮角度θtを推定角度
θmとする。次に、ステップS822を実行する。ステ
ップS822からステップS824までは、前述のステ
ップS703からステップS705までと同様の内容を
実行する。そのため、その実行内容の説明は、前述のス
テップS703からステップS705までの説明を援用
して、ここでは省略する。
【0075】次に、ステップS825を実行する。ステ
ップS825において、ステータに固定された座標系上
の値であるu相電流応答Δiuとv相電流応答Δivと
をdq軸上の値であるd軸電流応答Δidに変換する。
この変換は、前述のステップS706においてなされた
ものと同様であり、その説明は省略する。
【0076】次に、ステップS826を実行する。ステ
ップS826において、d軸電流応答Δidを第1のd
軸電流応答Δid1として保存する。次に、ステップS
831を実行する。ステップS831において、カウン
タiを0にする。次に、ステップS832を実行する。
ステップS832において、電流零制御部60を動作さ
せる。この電流零制御部60の動作は、前述の動作と同
様であるため、その説明は省略する。
【0077】次に、ステップS833を実行する。ステ
ップS833において、カウンタiに1を加える。次
に、ステップS834を実行する。ステップS834に
おいて、カウンタiがある設定された値i080より小
さいとき、次に、ステップS832を実行する。このよ
うにして、ステップS832の電流零制御部60の動作
をi080回だけ繰り返す。
【0078】一方、ステップS834において、カウン
タiがある設定された値i080以上のとき、ステップ
S841を実行する。このように、ステップS834に
おいては、カウンタiの値により分岐する。ステップS
841においては、仮角度θtを推定角度θm+180
°とする。次に、ステップS842を実行する。ステッ
プS842からステップS845までは、前述のステッ
プS822からステップS825までと同様の内容を実
行する。このため、その実行内容の説明を省略する。
【0079】ステップS846において、d軸電流応答
Δidを第2のd軸電流応答Δid2として保存する。
次に、ステップS851を実行する。ステップS851
において、第1のd軸電流応答Δid1と第2のd軸電
流応答Δid2とを比較し、分岐する。第1のd軸電流
応答Δid1が第2のd軸電流応答Δid2以上のと
き、ステップS852を実行する。ステップS852に
おいて、推定角度θmを推定角度θmとする。次に、ス
テップS861を実行する。
【0080】一方、ステップS851において、第1の
d軸電流応答Δid1が第2のd軸電流応答Δid2未
満のとき、ステップS853を実行する。ステップS8
53において、推定角度θmを推定角度θm+180°
とする。次に、ステップS861を実行する。ステップ
S861において、極性を判断するステップS411の
動作を終了する。以上のように、実施例1の位置センサ
レスモータ制御装置を構成して、動作させることによ
り、ロータ2が回転していても、ブラシレスモータ5の
スムーズな起動が実現可能となる。
【0081】次に、実施例1の位置センサレスモータ制
御装置の効果について説明する。従来の位置センサレス
モータ制御装置においては、前述の従来の技術の欄で述
べたように、ロータ3が停止しているとして、後者の従
来の位置センサレスモータ制御装置で用いられる方式に
より起動する。そして、適宜、前者の従来の位置センサ
レスモータ制御装置で用いられている方式に切り替え
て、高速まで加速させていた。そのため、起動直前にロ
ータ3が回転しているとき、前述のように起動時に停止
しているとして、後者の従来の位置センサレスモータ制
御装置で用いられる方式で起動させると、スムーズに起
動できないという問題があった。
【0082】実施例1の位置センサレスモータ制御装置
は、まず、電流を零に制御する。このときの電圧指令値
は、誘起電圧と等価になるため、この電圧指令値の大き
さにより起動方式を選択する。すなわち、電圧指令値の
大きさが大きいとき、電圧指令値に基づき角度と速度と
を推定する高速用起動部を動作させる。一方、電圧指令
値の大きさが小さいとき、ロータ3の回転に伴うインダ
クタンスの変化を利用して角度と速度とを推定する低速
用起動部を動作させる。このように、実施例1の位置セ
ンサレスモータ制御装置は、電流を零に制御したときの
電圧指令値の大きさにより適切な起動部を選択し動作さ
せることで、ロータ3が回転していても、ブラシレスモ
ータ1のスムーズな起動を実現している。
【0083】次に、回転数により起動方式を選択するこ
とを考える。誘起電圧は、ブラシレスモータ1の製造の
ばらつきにより、個体差がある。また、永久磁石5の温
度が変化すると誘起電圧の大きさが変化する。そのた
め、回転数により起動方式を選択する場合には、常に最
適な起動部を選択することができなかった。実施例1の
位置センサレスモータ制御装置は、まず、電流を零に制
御する。このときの電圧指令値は、誘起電圧と等価にな
るため、この電圧指令値の大きさにより起動方式を選択
する。このように、実施例1の位置センサレスモータ制
御装置は、誘起電圧と等価な電圧指令値により起動部を
選択することで、温度変化などで誘起電圧が変化して
も、常に最適な起動部の選択を実現する。
【0084】次に、起動期間中に電流を流すことを考え
る。起動期間中は、角度を正確に推定することができな
い。このため、ある電流を流すためにある電流指令値を
与えても、この電流指令値のとおりに電流を流すことが
できなかった。そのため、起動期間中に電流を流すと、
不適切な電流が流れ、振動や異音が発生する場合があっ
た。実施例1の位置センサレスモータ制御装置は、選択
部20において電流を零に制御し、トルクを発生させな
い。また、高速用起動部30において電流を零に制御
し、トルクを発生させない。同様に、低速用起動部40
において電流を零に制御し、トルクを発生させない。こ
のように、実施例1の位置センサレスモータ制御装置
は、起動期間において、電流を零に制御することによ
り、トルクを発生させない構成である。このため、実施
例1の位置センサレスモータ制御装置は、起動期間中に
電流を流しても、異常な電流が流れることがなく、振動
や異音の発生が防止されている。
【0085】《実施例2》次に、本発明に係る実施例2
の位置センサレスモータ制御装置について添付の図面を
参照しつつ説明する。前述の実施例1の位置センサレス
モータ制御装置において、低速用起動部40は、ロータ
3の回転に伴うインダクタンスの変化を利用して角度と
速度とを推定した。実施例2の位置センサレスモータ制
御装置においては、低速用起動部2040が磁束の飽和
を利用して角度と速度とを推定するものである。また、
実施例1の位置センサレスモータは、永久磁石5がロー
タヨーク4の内部に埋め込まれた埋込磁石型モータを制
御する構成である。実施例2の位置センサレスモータ
は、永久磁石2005がロータヨーク2004の表面に
配置された表面磁石型モータを制御するものである。
【0086】以下、実施例2の位置センサレスモータ制
御装置の構成について説明する。図12は、実施例2に
おける位置センサレスモータ制御装置の構成を示すブロ
ック図である。実施例2のブラシレスモータ2001に
は、電磁鋼板から構成されたステータ(図示せず)と、
被覆銅線から構成され相電流が流れるステータに巻回さ
れた相巻線2u、2v、2wと、このステータに対向し
近接して配置されたロータ2003とが設けられてい
る。相巻線2u、2v、2wはY結線されている。ロー
タ2003は、電磁鋼板から構成されたロータヨーク2
004とこのロータヨーク2004の表面に配置された
永久磁石2005とロータヨーク2004と同一の回転
中心を持つシャフト2006とから構成される。このロ
ータ2003は回転自在に支持され、相電流により生成
される磁束と永久磁石2005による磁束との相互作用
によりロータ2003が回転する。
【0087】実施例2の位置センサレスモータ制御装置
に含まれる構成のうち、マイコン2010が実施例1と
異なる。このマイコン2010に含まれる構成のうち、
モータ制御部2012が実施例1と異なる。このモータ
制御部2012に含まれる構成のうち、低速用起動部2
040が実施例1と異なる。その他の構成は、実施例1
と同様であるため、それらの構成と動作の説明は実施例
1の説明を援用して、実施例2においては省略する。
【0088】次に、実施例2における低速用起動部20
40の動作について説明する。低速用起動部2040
は、誘起電圧が小さいときのための起動方法であり、磁
束の飽和を利用して推定角度θmと推定速度ωmとを作
成する。まず、低速用起動部2040の動作の原理につ
いて説明する。図8に示したように、誘起電圧は小さい
ため、d軸電圧指令値vd*、およびq軸電圧指令値v
q*は小さい。ここで、d軸電圧指令値にパルス電圧を
重畳すると、この電圧パルスに応答して、d軸電流値i
dがd軸電流応答Δidだけ変化する。なお、演算にお
ける角度は仮角度θt=0として固定する。
【0089】図13は、実施例2における角度(横軸)
と電流応答(縦軸)との関係を示す波形図である。角度
θ(実際のロータ2003の角度)が0のとき、電圧パ
ルスにより、永久磁石2005が発生する磁束を強める
方向に磁束が発生する。このように磁束が発生すると、
ステータにおいて磁束飽和が発生するため、電流応答が
大きくなる。したがって、電流応答が一番大きくなると
き、推定角度θm=0とすればよい。
【0090】次に、低速用起動部2040の動作の詳細
について説明する。図14は、実施例2における低速用
起動部2040の動作を示すフローチャートである。ス
テップS2401において、低速用起動部2040の動
作を開始する。次に、ステップS2402を実行する。
ステップS2402において、カウンタiの値を0にす
る。次に、ステップS2403を実行する。ステップS
2403において、カウンタjの値を0にする。次に、
ステップS2404を実行する。ステップS2404に
おいて、電流零制御部60を動作させる。この電流零制
御部60の動作は、前述の実施例1における電流零制御
部60の動作と同様であるため、その説明は省略する。
【0091】次に、ステップS2405を実行する。ス
テップS2405において、カウンタjに1を加える。
次に、ステップS2406を実行する。ステップS24
06において、カウンタjがある設定された値j020
40より小さいとき、次に、ステップS2404を実行
する。このようにして、ステップS2404の電流零制
御部60の動作をj02040回だけ繰り返す。一方、
ステップS2406において、カウンタjがある設定さ
れた値j02040以上のとき、ステップS2407を
実行する。このように、ステップS2406において
は、カウンタjの値により分岐する。ステップS240
7からステップS2410までは、前述の図10に示し
た実施例1におけるステップS702からステップS7
05までの動作と同様の内容を実行する。このため、そ
の実行内容の説明は省略する。
【0092】ステップS2411において、ステータに
固定された座標系上の値であるu相電流応答Δiuとv
相電流応答Δivとをdq軸上の値であるd軸電流応答
Δidに変換する。この変換は、前述の実施例1におけ
るステップS825の動作と同様であり、その説明は省
略する。次に、ステップS2412を実行する。ステッ
プS2412において、d軸電流応答Δidが極大か否
かを判断して分岐する。d軸電流応答Δidが極大のと
き、ステップS2413を実行する。一方、d軸電流応
答Δidが極大でないとき、ステップS2403を実行
する。なお、d軸電流応答Δidの傾きが正から負に転
じたとき、d軸電流応答Δidが極大であると判断す
る。このようにして、ステップS2411のd軸電流応
答Δidの演算をd軸電流応答Δidが極大となるまで
繰り返す。
【0093】ステップS2413において、推定角度θ
mを0にする。次に、ステップS2414を実行する。
ステップS2414において、推定速度ωmを作成す
る。ステップS2414は、電気角で360°おきに実
行される。そのため、速度は、360°をステップS2
414が実行される時間間隔で除算したものとなる。そ
して、この除算結果にローパスフィルタを作用させたも
のを推定速度ωmとする。具体的には、下記式(24)
のようにする。式(24)において、KW2040はロ
ーパスフィルタの係数である。このKW2040は、1
以下の正値であり、小さいほどローパスフィルタの作用
が大きくなる。また、ΔT2040は、前回ステップS
2414が実行されたときから今回ステップS2414
が実行されるまでの時間である。
【0094】 ωm = KW2040・360°/ΔT2040 +(1−KW2040)・ωm ・・・(24)
【0095】次に、ステップS2415を実行する。ス
テップS2415において、カウンタiに1を加える。
次に、ステップS2416を実行する。ステップS24
16において、カウンタiがある設定された値i020
40より小さいとき、次に、ステップS2403を実行
する。このようにして、ステップS2413の推定角度
θmの作成とステップS2414の推定速度ωmの作成
とをi02040回だけ繰り返す。一方、ステップS2
416において、カウンタiがある設定された値i02
040以上のとき、ステップS2417を実行する。こ
のように、ステップS2416においては、カウンタi
の値により分岐する。ステップS2417においては、
低速用起動部2040の動作を終了させる。
【0096】次に、ステップS503を実行して、運転
部50の動作を開始する。低速用起動部2040におい
て求められた推定角度θmと推定速度ωmとを初期値と
して、例えば、特願平10−329049号公報に示さ
れる位置センサレスモータ制御装置で用いられる方式に
よりブラシレスモータ2001を駆動する。
【0097】以上のように、実施例2の位置センサレス
モータ制御装置を構成して動作させることにより、起動
時にロータ2003が回転していても、ブラシレスモー
タ2001のスムーズな起動を実現することができる。
また、実施例2の位置センサレスモータ制御装置は、実
施例1の位置センサレスモータ制御装置と同様の作用を
有し、実施例1と同様の効果を実現することができる。
【0098】なお、実施例1においては埋込磁石型モー
タ(ブラシレスモータ1)を制御し、実施例2において
は表面磁石型モータ(ブラシレスモータ2001)を制
御する構成の例で説明した。しかし、実施例1の方式に
より表面磁石型モータを制御し、実施例2の方式により
埋込磁石型モータを制御する構成でもよい。一般に、表
面磁石型モータは、ロータの回転に伴うインダクタンス
の変化が小さい。しかし、特定の表面磁石型モータにお
いては、比較的インダクタンスの変化に富むものがあ
る。このような表面磁石型モータにおいては、実施例2
の方式よりも実施例1の方式のほうが有効である。ま
た、一般に、埋込磁石型モータは、ロータの回転に伴う
インダクタンスの変化が大きい。しかし、特定の埋込磁
石型モータにおいては、インダクタンスの変化が乏しい
ものがある。このような埋込磁石型モータにおいては、
実施例1の方式よりも実施例2の方式がほうが有効であ
る。
【0099】また、前述の実施例の低速用起動部40、
2040において、電圧パルスを印加する方式を用いた
が、本発明はこの方式に限定されるものではない。例え
ば、高周波電圧や高周波電流を重畳し、その電流応答や
電圧応答により角度を推定する方式を用いてもよい。ま
た、PWMキャリア内での電流応答から角度を推定して
もよい。同様に、前述の実施例の高速用起動部30にお
いては、実施例1の方式に限定されるものではなく、電
流を制御して、このときの電圧指令値を用いる構成のも
のであれば本発明に含まれる。
【0100】さらに、本発明は起動時に正転している場
合のみに限定されるものではなく、起動時に逆転してい
る場合でもよい。起動時に逆転の向きに低速で回転して
いるとき、正転の向きに高速で回転させるために、本発
明の位置センサレスモータ制御装置は、以下のように動
作する。まず、選択部20が動作し、低速用起動部4
0、2040を選択し、低速用起動部40、2040が
動作する。低速用起動部40、2040は、推定角度θ
mと負の推定速度ωmを作成し、これらに基づき運転部
50が動作する。そして、運転部50は、低速用の角度
推定を行い、正の向きのトルクを発生する。やがて、逆
転の向きで回転していたものが、正転の向きに回転し始
める。さらに、適宜、高速用の角度推定を行い、高速ま
で加速する。
【0101】一方、起動時に逆転の向きに高速で回転し
ているとき、正転の向きに高速で回転させるために、本
発明の位置センサレスモータ制御装置は、以下のように
動作する。まず、選択部20が動作して、高速用起動部
30を選択し、高速用起動部30を動作させる。高速用
起動部30は、推定角度θmと負の推定速度ωmを作成
し、これらに基づき運転部50が動作する。そして、運
転部50は、高速用の角度推定を行い、正の向きのトル
クを発生する。やがて、減速され、適宜、低速用の角度
推定を行い、逆転の向きで回転していたものが、正転の
向きに回転し始める。さらに、適宜、高速用の角度推定
を行い、高速まで加速する。なお、電流零制御部60に
おいて、仮角度θtを0としたが、その他の角度にして
もよい。この場合、高速起動部30のステップS304
における推定角度θmの作成を適切に変更する必要があ
る。
【0102】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、電流を
零に制御したときの電圧指令値の大きさにより適切な起
動部を選択し動作させることにより、ロータが回転して
いても、ブラシレスモータをスムーズに起動させる位置
センサレスモータ制御装置を実現することができる。ま
た、本発明によれば、誘起電圧と等価な電圧指令値によ
り起動部を選択することにより、温度変化などで誘起電
圧が変化しても、常に最適な起動部を選択する位置セン
サレスモータ制御装置を実現することができる。また、
本発明によれば、起動期間において、電流を零に制御す
ることにより、トルクが発生せず、スムーズな起動が可
能となる位置センサレスモータ制御装置を実現すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施例1の位置センサレスモータ
制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1における駆動部の構成を示す回路図で
ある。
【図3】実施例1における選択部の動作を示すフローチ
ャートである。
【図4】実施例1における電流零制御部の構成を示すブ
ロック図である。
【図5】実施例1における高速用起動部の動作を示すフ
ローチャートである。
【図6】実施例1における高速用起動部で電流を零に制
御したときの電圧指令値の変化を示す波形図である。
【図7】実施例1における低速用起動部の動作を示すフ
ローチャートである。
【図8】実施例1における電圧パルスと電流応答との関
係を示す波形図である。
【図9】実施例1における角度と電流応答との関係を示
す波形図である。
【図10】実施例1における低速用起動部での推定角度
を作成するステップの動作を示すフローチャートであ
る。
【図11】実施例1における低速用起動部での極性を判
断するステップの動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る実施例2における位置センサレ
スモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図13】実施例2における角度と電流応答との関係を
示す波形図である。
【図14】実施例2における低速用起動部の動作を示す
フローチャートである。
【符号の説明】
1 ブラシレスモータ 2u、2v、2w 相巻線 3 ロータ 5 永久磁石 8u、8v 電流センサ 9 駆動部 10 マイコン 12 モータ制御部 20 選択部 30 高速用起動部 40 低速用起動部
フロントページの続き (72)発明者 田澤 徹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 丸山 幸紀 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5H560 AA01 BB04 BB07 BB12 DC12 GG04 SS01 TT01 TT12 TT15 TT18 UA06 XA12

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モータを起動させる複数の起動手段と、 前記モータに流れる電流を実質的に零に制御したときの
    電圧指令値に基づき前記複数の起動手段から1つの起動
    手段を選択する選択手段と、を具備することを特徴とす
    る位置センサレスモータ制御装置。
  2. 【請求項2】 高速時にモータを起動させるための第1
    の起動手段と、 低速時に前記モータを起動させるための第2の起動手段
    と、 前記モータに流れる電流を実質的に零に制御したときの
    電圧指令値がしきい値より大きいとき前記第1の起動手
    段を選択し、前記モータに流れる電流を実質的に零に制
    御したときの前記電圧指令値がしきい値より小さいとき
    前記第2の起動手段を選択する選択手段と、を具備する
    ことを特徴とする位置センサレスモータ制御装置。
  3. 【請求項3】 モータを起動させる複数の起動手段と、 前記モータに流れる電流を実質的に零に制御するための
    電圧指令値を作成する電流零制御部と、 前記電流零制御部の作成した前記電圧指令値に基づき前
    記複数の起動手段から1つの起動手段を選択する選択手
    段と、を具備することを特徴とする位置センサレスモー
    タ制御装置。
  4. 【請求項4】 高速時にモータを起動させるための第1
    の起動手段と、 低速時に前記モータを起動させるための第2の起動手段
    と、 前記モータに流れる電流を実質的に零に制御するための
    電圧指令値を作成する電流零制御部と、 前記電流零制御部の作成した前記電圧指令値がしきい値
    より大きいとき前記第1の起動手段を選択し、前記電圧
    指令値がしきい値より小さいとき前記第2の起動手段を
    選択する選択手段と、を具備することを特徴とする位置
    センサレスモータ制御装置。
  5. 【請求項5】 前記第1の起動手段が前記電圧指令値を
    利用することを特徴とする請求項2又は請求項4に記載
    の位置センサレスモータ制御装置。
  6. 【請求項6】 前記第2の起動手段が前記モータのロー
    タの回転に伴うインダクタンスの変化を利用することを
    特徴とする請求項2又は請求項4に記載の位置センサレ
    スモータ制御装置。
  7. 【請求項7】 前記第2の起動手段が磁束の飽和を利用
    することを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の位
    置センサレスモータ制御装置。
  8. 【請求項8】 永久磁石が配置され回転自在に支持され
    たロータと、前記ロータに近接して配置されたステータ
    と、前記ステータに巻回された相巻線とを有するブラシ
    レスモータを制御する位置センサレスモータ制御装置で
    あって、 前記相巻線に印加する電圧の指令値を表す電圧指令値に
    基づき電圧を印加する駆動手段と、 高速時に前記ブラシレスモータを起動させるための第1
    の起動手段と、 低速時に前記ブラシレスモータを起動させるための第2
    の起動手段と、 前記相巻線に流れる電流を実質的に零に制御するための
    電圧指令値を作成する電流零制御部と、 前記電流零制御部の作成した前記電圧指令値がしきい値
    より大きいとき前記第1の起動手段を選択し、前記電圧
    指令値がしきい値より小さいとき前記第2の起動手段を
    選択する選択手段とを具備し、 前記第1の起動手段が、前記相巻線に流れる電流を実質
    的に零にするように前記電圧指令値を制御して、前記電
    圧指令値に基づき前記ロータの角度と速度とを演算し、 前記第2の起動手段が、前記相巻線に流れる電流を実質
    的に零にするように制御し、前記ロータの回転に伴うイ
    ンダクタンスの変化を利用して前記ロータの角度と速度
    とを演算することを特徴とする位置センサレスモータ制
    御装置。
  9. 【請求項9】 永久磁石が配置され回転自在に支持され
    たロータと、前記ロータに近接して配置されたステータ
    と、前記ステータに巻回された相巻線とを有するブラシ
    レスモータを制御する位置センサレスモータ制御装置で
    あって、 前記相巻線に印加する電圧の指令値を表す電圧指令値に
    基づき電圧を印加する駆動手段と、 高速時に前記ブラシレスモータを起動させるための第1
    の起動手段と、 低速時に前記ブラシレスモータを起動させるための第2
    の起動手段と、 前記相巻線に流れる電流を実質的に零に制御するための
    電圧指令値を作成する電流零制御部と、 前記電流零制御部の作成した前記電圧指令値がしきい値
    より大きいとき前記第1の起動手段を選択し、前記電圧
    指令値がしきい値より小さいとき前記第2の起動手段を
    選択する選択手段とを具備し、 前記第1の起動手段が前記相巻線に流れる電流を実質的
    に零にするように前記電圧指令値を制御して、前記電圧
    指令値に基づき前記ロータの角度と速度とを演算し、 前記第2の起動手段が前記相巻線に流れる電流を実質的
    に零にするように制御し、磁束の飽和を利用して前記ロ
    ータの角度と速度とを演算することを特徴とする位置セ
    ンサレスモータ制御装置。
  10. 【請求項10】 前記第1の起動手段は、前記電圧指令
    値に基づき誘起電圧を推定し、前記ロータの角度と速度
    とを演算することを特徴とする請求項5、請求項8又は
    請求項9に記載の位置センサレスモータ制御装置。
  11. 【請求項11】 前記第2の起動手段は、電圧パルスを
    印加したときの電流応答に基づき、前記ロータの角度と
    速度とを演算することを特徴とする請求項6、請求項
    7、請求項8又は請求項9に記載の位置センサレスモー
    タ制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009303328A (ja) * 2008-06-11 2009-12-24 Mitsubishi Electric Corp 交流回転機の制御装置
JPWO2017022083A1 (ja) * 2015-08-04 2017-10-26 三菱電機株式会社 同期電動機制御装置、圧縮機駆動装置、空気調和機及び同期電動機の制御方法
JP2018033302A (ja) * 2016-08-22 2018-03-01 レイクビュー イノベーション リミテッドLakeview Innovation Ltd. Pmsmモータのセンサフリー制御の為の方法
CN109994755A (zh) * 2019-03-26 2019-07-09 广东亚氢科技有限公司 一种燃料电池系统及提高燃料电池系统发电性能的方法

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