JP2020063397A - Tacフィルム用組成物及びその製造方法、並びにtacフィルム - Google Patents

Tacフィルム用組成物及びその製造方法、並びにtacフィルム Download PDF

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【課題】従来とは異なる機械的特性、光学特性を実現できTACフィルムを提供することを解決すべき課題とする。【解決手段】比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる無機粒子材料の凝集体からなる粉粒体である無機凝集体材料と、前記無機凝集体材料の表面を覆う有機物からなる有機被覆材料と、を有し、前記有機被覆材料の質量は、前記無機凝集体材料及び前記有機被覆材料の質量の和を基準として0.8%以上80%以下である複合凝集粒子材料を含有するTACフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、屈折率が制御され、トリアセチルセルロース(TAC)が分散乃至溶解可能なTACフィルム用組成物及びその製造方法、並びにTACを含有するTACフィルムに関する。
液晶の偏光板に汎用されているTACフィルムがある。TACフィルムに求められる性能としては、高い強度などの機械的特性に加え、適正な屈折率、高い透明性、複屈折が小さいなどの光学特性が求められる。
樹脂材料について機械的特性向上を目的としてシリカからなる粒子材料を分散させて樹脂組成物を製造することが行われている。得られた樹脂組成物は、高い機械的特性を示す。
また、複屈折率を低下させたり、屈折率を変化させたりするために、適正な屈折率をもつ無機物粒子を分散させることが行われている。
無機物粒子としてはシリカが取り扱いの容易さなどの観点から好ましいが、シリカの屈折率はおおよそ一定であるため、屈折率を調節するためにシランカップリング剤により表面処理を行い屈折率を制御する技術が開示されている(特許文献1)。
特許文献1にて開示された技術により得られたシリカ粒子は粒径が2nmから100nmであり、一次粒子にまで分散されている粒子である。
特開2013−204029号公報
ここで、分散させるシリカの粒径は大きい方が機械的特性を向上する観点からは望ましいが、想定される光線の波長に対して無視できない大きさにまで粒径を大きくすると、ヘイズ値が上昇して光の透過性が低下する。また、透明フィルム中にはシリカが均一に分散されていないと、複屈折性が大きくなり液晶の偏光板への応用は困難になる。
つまり、単純にシリカからなる粒子材料をTAC中に分散させても機械的特性と光学特性とを両立させることは困難であった。
本発明は実情に鑑み完成したものであり、従来とは異なる機械的特性、光学特性を実現でき、TACにシリカからなる粒子材料を分散させることを目的として好適に利用できるTACフィルム用組成物、その製造方法、そのTACフィルム用組成物を用いて製造可能なTACフィルムを提供することを解決すべき課題とする。
課題を解決する目的で本発明者らは鋭意検討を行った結果、以下の知見を得て本発明を完成した。すなわち、光学特性を向上するためには分散させる粒子材料の粒径を小さくすることが必要であり、機械的特性を向上するためには粒径を大きくすることが必要である。
この二律背反を解消するために粒子材料として充分に粒径が小さい一次粒子からなる凝集体を採用することで、一次粒子の粒径の小ささに由来する高い光学特性と、凝集体とすることに由来する高い機械的特性とが両立でき、更に凝集体としていることから樹脂材料中への分散性を向上できることを見出した。その場合にシランカップリング剤などのシラン化合物により表面処理を行うことにより有機被覆材料にて被覆することで屈折率の調整が出来ると共に樹脂材料中への分散性も向上できる。一次粒子の粒径を小さくしていることからシラン化合物にて表面処理を行って形成した有機被覆材料による光学的影響が少なくなり好適な光学特性が得られた。
(1)上記知見に基づき完成した上記課題を解決する本発明のTACフィルム用組成物は、トリアセチルセルロースからなる透明樹脂に用いる組成物であって、
比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる無機粒子材料の凝集体からなる粉粒体である無機凝集体材料と、前記無機凝集体材料の表面を覆う有機物からなる有機被覆材料と、を有し、
前記有機被覆材料の質量は、前記無機凝集体材料及び前記有機被覆材料の質量の和を基準として0.8%以上80%以下である複合凝集粒子材料と、
トリアセチルセルロースに対して溶解性乃至親和性をもち、前記複合凝集粒子材料を分散する有機溶媒と、
を有する。
上記(1)に開示のTACフィルム用組成物は、以下に記載した(2)〜(6)に記載の発明特定事項のうちの1つ以上を組み合わせることができる。
(2)前記無機凝集体材料は体積平均粒径が0.05μm以上500μm以下であって、0.05μm以上500μm以下の範囲内に頻度極大値をもつ。
(3)前記無機凝集体材料は、ゲル法シリカ、沈降シリカ、又はヒュームドシリカである。
(4)前記有機溶媒は、TACを溶解できる有機溶媒である。
(5)前記有機物はSiO結合を介して前記無機粒子材料の表面に結合している。
(6)前記有機物は1つ以上のSiOR基(ここでRは炭化水素基である。)をもつシラン化合物の縮合物である。
(7)上記課題を解決するTACフィルム用組成物の製造方法は、比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる無機粒子材料から凝集体である無機凝集体材料を製造する無機凝集体材料製造工程と、
前記無機凝集体材料の表面にシラン化合物を反応させて有機被覆材料を形成して複合凝集粒子材料にする有機被覆材料被覆工程と、
を有するTACフィルム用組成物の製造方法が挙げられる。
(8)上記課題を解決するTACフィルムは、比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる無機粒子材料の凝集体からなる粉粒体である無機凝集体材料と、前記無機凝集体材料の表面を覆う有機物からなる有機被覆材料と、を有し、
前記有機被覆材料の質量は、前記無機凝集体材料及び前記有機被覆材料の質量の和を基準として0.8%以上80%以下である複合凝集粒子材料が、トリアセチルセルロースからなる透明樹脂材料中に分散されている。特に液晶パネルに用いることができる。
本発明のTACフィルム用組成物は以上の構成を有することから以下の作用効果を奏する。すなわち、所定の粒径をもつ一次粒子から構成され、その表面は有機被覆材料が被覆されていることから、TACフィルムに適用することで充分な光学特性をもつ。そして、シリカからなる一次粒子は凝集させることで強固に結合しており、TACからなる樹脂材料中に分散させることで高い機械的特性を付与することが出来る。
本発明のTACフィルム用組成物及びその製造方法、並びにそのTACフィルム用組成物を利用したTACフィルムについて、以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本明細書中において「TAC」とは、トリアセチルセルロースを意味し、透明な樹脂材料である。なお、トリアセチルセルロースと称していても完全にアセチル化されていることは必須ではない。例えば総アシル基の置換度の下限値が2.1や2.3程度であってもトリアセチルセルロースに含まれる。TACフィルムはTACを主成分とする樹脂材料と前述の複合凝集粒子材料とを有するフィルムであり、用途としては液晶パネルの偏光板などの光学フィルムが例示できる。
(TACフィルム用組成物)
本実施形態のTACフィルム用組成物は、複合凝集粒子材料とTACに対して溶解性乃至親和性をもつ有機溶媒とを有する。
複合凝集粒子材料は、無機凝集体材料と有機被覆材料とをもつ粉粒体である。無機凝集体材料は、無機粒子材料の凝集体である。無機凝集体材料は体積平均粒径が0.05μm以上500μm以下であることが好ましい。体積平均粒径の好ましい下限としては、0.05μm、0.1μm、0.5μmが例示でき、好ましい上限としては、10μm、100μm、500μmが例示できる。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。無機凝集体材料は、0.05μm以上500μm以下の範囲内に頻度極大値をもつことが好ましい。頻度極大値を持つ範囲の好ましい下限としては、0.05μm、0.1μm、0.5μmが例示でき、好ましい上限としては、10μm、100μm、500μmが例示できる。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。体積平均粒径や頻度極大値の大きさをこれらの下限値以上にすることで透明樹脂材料中に分散させたときの機械的特性が向上でき、これらの上限値以下にすることで透明樹脂材料中に分散させたときの可撓性が向上できる。
無機粒子材料は、比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる粒子である。比表面積粒径は、窒素を用いたBET法により測定した比表面積から球相当径として算出した値である。凝集体については、粒子同士が点接触していると仮定して算出する。比表面積粒径の好ましい下限としては、1nm、5nm、10nmが採用でき、好ましい上限としては、30nm、50nm、70nmが採用できる。無機粒子材料の比表面積粒径がこれらの下限値以上にすることで透明樹脂中に分散させたときの機械的特性が向上でき、これらの上限値以下にすることで透明樹脂中に分散させたときの光学特性が向上できる。上限値と下限値とは任意に組み合わせ可能である。なお、比表面積粒径(d)の算出は、d=6/(ρS)により行う。ここでρは無機凝集体材料を構成するシリカの密度、Sは測定した比表面積である。
凝集体とする方法は特に限定しない。通常は、上述の粒度分布とした無機粒子材料は特別な操作を行わなくても容易に凝集する。例えば一次粒子となる無機粒子材料を湿式で製造した後、乾燥させることで通常は凝集体になることが多い。無機粒子材料としては、湿式法にて製造されるもの、乾式法にて製造されるものの何れでも良い。湿式法は、ケイ酸ナトリウムを原料とするものが汎用されており、湿式法で製造された無機粒子材料としては、ゲル法シリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカなどがある。特にゲル法シリカは、pHを急激に酸性にすることで一次粒子として小さな粒径をもつものが製造できると共に、形成された凝集体についても緻密なものが製造できるため好ましい。ゲル法シリカについては、得られた凝集体を粉砕することで目的の粒径をもつ無機凝集体材料を製造することができる。乾式法としては、ヒュームドシリカ、燃焼法、アーク法などが知られている。
有機被覆材料は、無機凝集体材料の表面を被覆する。ここで、「被覆」とは無機凝集体材料の表面のうちの少なくとも一部に付着している状態を表しており、表面の全体を被覆した状態であることが好ましい。無機凝集体材料には、一次粒子である無機粒子材料が凝集することで内部(一次粒子間)に空孔が形成された形態となっており、有機被覆材料は内部に形成された空孔の表面についても被覆することが好ましい。有機被覆材料は無機凝集体材料の表面の性質(TACとの親和性など)に大きな影響を与えるほか、無機粒子材料との組み合わせにより、得られる無機凝集体材料の屈折率を制御するために適正な種類、量が選択される。
有機被覆材料は、複合凝集粒子材料全体(無機凝集体材料及び有機被覆材料の質量の和)の質量を基準として0.8%以上80%以下である。下限としては、0.8%、2%、5%が好ましく、上限としては、60%、70%、80%が好ましい。上限値と下限値とは任意に組み合わせ可能である。これらの下限以上にすることで充分な表面改質が実現でき、これらの上限値以下にすることで得られる複合凝集粒子材料の機械的特性が向上できる。
有機被覆材料は、SiO結合により無機凝集体材料の表面に結合することが好ましい。有機被覆材料を構成する材料としては特に限定しないが、ケイ素化合物からなることが好ましい。特に1つ以上のSiOR基をもつシラン化合物の縮合物であることが好ましく、
2つ以上のSiOR基をもつ有機シラン化合物の縮合物であることがより好ましい。ここでRは炭化水素基(好ましくは炭素数が1,2程度)である。シラン化合物は、有機官能基をもつ。有機被覆材料は、シラン化合物を無機凝集体材料の表面と反応させて製造されたものが挙げられる。
シラン化合物がもつ有機官能基としては、炭化水素基(フェニル基などのアリール基、アルキル基、ビニル基など)、エポキシ基、アクリル基などが挙げられる。有機官能基を選択する指標としては、シリカと比べて屈折率が大きいか小さいか(大きければ反応させることで屈折率が大きくでき、小さければ屈折率が小さくできる)の他、分散される透明樹脂との親和性を考慮して選択される。シラン化合物としては特に多数のフェニル基を有することで屈折率が大きくなるトリフェニルメトキシシラン及びその縮合物が好ましい。
具体的には、TACの屈折率に近づけるために、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルモノメトキシラン、トリフェニルモノエトキシシラン等アリール基を有する屈折率がシリカより大きいものを1つ以上選択することが好ましい。
有機溶媒はTACを溶解できるものであるか、TACフィルムとの親和性をもちTACを分散できるものであれば特に限定しない。例えば、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。更にはこれらの有機溶媒を2種類以上混合したり、これら以外の有機溶媒を混合したりすることでTACと混合したときのTACの挙動(溶解、分散)を制御することができる。
有機溶媒と無機凝集体材料との混合量としては特に限定しないが、無機凝集体材料の質量を100質量部として、100質量部以上1900質量部以下の有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒の含有量の好ましい下限としては100質量部、150質量部、233質量部が挙げられ、好ましい上限としては900質量部、1300質量部、1900質量部が挙げられる。上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。
(TACフィルム用組成物の製造方法)
本実施形態のTACフィルム用組成物の製造方法は、上述した本実施形態のTACフィルム用組成物を製造する製造方法である。本実施形態のTACフィルム用組成物の製造方法は、無機凝集体材料製造工程と有機被覆材料被覆工程とを有する。
無機凝集体材料製造工程は、前述した無機粒子材料を凝集させて無機凝集体材料を製造する工程である。凝集させる方法としては特に限定しない。例えば、無機粒子材料を液体中で製造した後、乾燥させることで凝集させたり、乾燥状態の無機粒子材料を水などの液体中に分散させた後に乾燥させることで凝集させたりすることができる。特に水ガラスなどのケイ酸ナトリウムに対して急激に酸性にすることで粒径の小さな無機粒子材料が析出できるゲル法シリカの製造方法を採用すると、一次粒子である無機粒子材料の粒径を小さくできると共に得られた無機凝集体材料を緻密にすることができるため好ましい。得られた無機凝集体材料は必要な粒度分布になるように粉砕や分級により制御できる。
有機被覆材料被覆工程は、無機凝集体材料の表面に有機被覆材料を被覆して複合凝集粒子材料を得る工程である。無機凝集体材料の表面に、有機官能基をもつシラン化合物を反応させることで行うことができる。シラン化合物はそのまま、又は何らかの溶媒を利用した溶液として、無機凝集体材料の表面に噴霧・付着させて行うことができる。表面に付着させた後は加熱するなどして反応を完遂することが好ましい。シラン化合物としては特に限定されず、上述した化合物を採用することが出来る。
有機被覆材料被覆工程により得られた複合凝集粒子材料は、有機溶媒中に分散させることで本実施形態のTACフィルム用組成物となる。有機溶媒中への分散方法は特に限定しないが、有機溶媒と無機凝集体材料とは良く混合することが好ましい。混合は公知の方法にて行うことが可能であり、有機溶媒を液状として行うことが望ましい。
(TACフィルム)
本実施形態のTACフィルムは、前述した本実施形態のTACフィルム用組成物にTACからなる透明樹脂を溶解させ、薄膜状にして溶媒を除去して製造可能な部材である。よって、TACフィルムは透明樹脂材料中に複合凝集粒子材料含む。本実施形態のTACフィルムは、光の透過率が高く且つヘイズ値や複屈折が小さくでき、良好な光学特性を示すことができると共に、機械的特性も向上している。シリカを添加する量は、透明フィルムについて必要な光学特性と必要な機械的特性を発揮できる範囲内において特に限定されない。好ましいシリカの添加量は、透明樹脂材料100質量部に対する無機凝集体材料の含有量の下限値は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、特に好ましくは15質量部以上である。この下限値以上にすることにより充分な機械的特性が実現できる。
(屈折率の調整)
・試料の調製
表1に示した配合で比表面積が275m/g、比表面積粒径が10nmの乾式シリカ(凝集粒子の体積平均粒径0.5μm)100質量部をミキサーに入れたのち、アルコキシシラン化合物としてのフェニルトリメトキシシラン(有機官能基としてのフェニル基を有する:信越化学製、KBM−103)/アセトン=100質量部/200質量部の混合液を撹拌しながら添加した。表1中の有機物配合量は加水分解していない原料であるフェニルトリメトキシシランの質量部である。室温で一日熟成させて、混合物を防爆乾燥機に移し揮発分がなくなってから更に160℃、5時間反応させて試験例1から4の複合凝集粒子材料を得た。屈折率は屈折率が既知且つ異なる値を有する複数の液体に複合凝集粒子材料を浸して、最も透明な液体の屈折率を複合凝集粒子材料の屈折率とした。結果を表1に示す。
屈折率が既知且つ異なる値を有する複数の液体は屈折率が高いと低い且つ相溶する二種類の液体を混合することで調合でき、例えばトルエンとイソプロパノールでは屈折率が1.49から1.37までの複数の屈折率の異なる液体を調合でき、混合液の屈折率をデジタル式屈折率計で測定し粉体の屈折率を算出できる。
Figure 2020063397
表1より明らかなように、比表面積粒径が10nmである一次粒子から構成された無機凝集体材料(凝集シリカ)を用いた試験例1〜4については表面に被覆された有機被覆材料の量を変化させることで屈折率を大きく変化させることが可能になった。今回の試験ではシリカよりも屈折率が大きいフェニル基を有するシラン化合物を採用したために有機被覆材料の量が大きくなるにつれて屈折率も大きくなったが、反対にシリカよりも屈折率が小さい有機被覆材料を構成できる有機官能基をもつシラン化合物を採用すれば屈折率を低下させることも可能であると考えられる。
(TACフィルムの検討)
試験例1から4の複合凝集粒子材料とアセトンを質量比1:3で混合したアセトン組成物100質量部に屈折率が1.49のTAC樹脂(市販品)を100質量部溶解させて、キャスティング法で50ミクロンのフィルムを作成した。乾燥後のフィルム中の複合凝集粒子材料の量は、シリカ換算で20%であった。なお、シリカ粒子や複合凝集粒子材料を含有させずに製造したTACフィルムについて参照例として記載している。
得られたフィルムに対してD線での光透過率を測定し、参照例のTACフィルムを100とした時の相対値を表2にまとめた。
Figure 2020063397
表2より明らかなように、試験例2〜4のTACフィルムにおいては、使用した複合凝集粒子材料の屈折率に応じてTACフィルムの屈折率を制御できた。また、複屈折の発生は認められず、更にはヘイズ値も小さいことが分かった。有機被覆材料にて被覆していない試験例1のTACフィルムは不透明であり光学用途への応用は困難であった。
(剛性の評価)
試験例1から4の複合凝集粒子材料から得られたTACフィルム及び参照例のTACフィルムを短柵状のサンプルピースに切り取り、同じ変位にまで曲げる時に必要な力を測定した。参照例のTACフィルムを100とした時の相対値を表3にまとめた。
Figure 2020063397
表3より明らかなように、有機被覆材料にて被覆した複合凝集粒子材料を採用した試験例2〜4は、シリカ粒子や複合凝集粒子材料を含有しない参照例と比べて剛性が高くなることが分かった。なお、凝集シリカではなく一次粒子にまで分散しているシリカ粒子を用いた以外は試験例2と同じ操作を行って調製したTACフィルムについて剛性を測定したところ150であり凝集シリカを用いることで高い剛性が得られていることが裏付けられた。
(TAC以外の樹脂についての検討)
試験例1又は4の複合凝集粒子材料100質量部にポリエチレンテレフタラート粉末400質量部を加えよく混合し、260℃で押出成型することでポリエチレンテレフタラート樹脂中に試験例1又は4が含有する複合凝集粒子材料を分散した樹脂組成物を調製した。
同様に、試験例1又は4の複合凝集粒子材料100質量部にポリスチレン粉末400質量部を加えよく混合し、260℃で押出成型することでポリスチレン樹脂中に試験例1又は4が含有する複合凝集粒子材料を分散した樹脂組成物を調製した。
試験例1又は4の複合凝集粒子材料とアセトンを質量比1:3で混合したアセトン組成物100質量部に液状エポキシ樹脂(東都化成株式会社製「ZX−1059」)100質量部を加えた。そして、攪拌しながら120℃に加熱し、真空引きすることによりアセトンを除去し、シリカ粒子の固形分が20質量%の液状組成物を得た。この得られた液状組成物100質量部に硬化触媒の2−PHZ(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)4.0質量部を混合し、この樹脂組成物をフィルム状に塗布し、120℃で3時間、さらに150℃で1時間保持すると硬化し、フィルム状樹脂成形物が得られた。
得られたフィルムを観察するとポリエチレンテレフタラート、エポキシ樹脂、ポリスチレンのいずれにおいても不透明であり、これらの樹脂においては有機被覆材料の有無に関係無く光学用途への応用は困難であることが分かった。

Claims (9)

  1. 比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる無機粒子材料の凝集体からなる粉粒体である無機凝集体材料と、前記無機凝集体材料の表面を覆う有機物からなる有機被覆材料と、を有し、
    前記有機被覆材料の質量は、前記無機凝集体材料及び前記有機被覆材料の質量の和を基準として0.8%以上80%以下である複合凝集粒子材料と、
    トリアセチルセルロースに対して溶解性乃至親和性をもち、前記複合凝集粒子材料を分散する有機溶媒と、
    を有するトリアセチルセルロースからなる透明樹脂に用いるTACフィルム用組成物。
  2. 前記無機凝集体材料は体積平均粒径が0.05μm以上500μm以下であって、0.05μm以上500μm以下の範囲内に頻度極大値をもつ請求項1に記載のTACフィルム用組成物。
  3. 前記無機凝集体材料は、ゲル法シリカ、沈降シリカ、又はヒュームドシリカである請求項1又は2に記載のTACフィルム用組成物。
  4. 前記有機溶媒は、TACを溶解できる有機溶媒である請求項1〜3の何れか1項に記載のTACフィルム用組成物。
  5. 前記有機物はSiO結合を介して前記無機粒子材料の表面に結合している請求項1〜4の何れか1項に記載のTACフィルム用組成物。
  6. 前記有機物は1つ以上のSiOR基(ここでRは炭化水素基である。)をもつシラン化合物の縮合物である請求項1〜5の何れか1項に記載のTACフィルム用組成物。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載のTACフィルム用組成物について製造する方法であって、
    比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる前記無機粒子材料から凝集体である前記無機凝集体材料を製造する無機凝集体材料製造工程と、
    前記無機凝集体材料の表面にシラン化合物を反応させて前記有機被覆材料を形成して前記複合凝集粒子材料にする有機被覆材料被覆工程と、
    を有するTACフィルム用組成物の製造方法。
  8. 比表面積粒径が0.8nm以上80nm以下のシリカからなる無機粒子材料の凝集体からなる粉粒体である無機凝集体材料と、前記無機凝集体材料の表面を覆う有機物からなる有機被覆材料と、を有し、
    前記有機被覆材料の質量は、前記無機凝集体材料及び前記有機被覆材料の質量の和を基準として0.8%以上80%以下である複合凝集粒子材料が、トリアセチルセルロースからなる透明樹脂材料中に分散されているTACフィルム。
  9. 液晶パネルに用いられる請求項8に記載のTACフィルム。
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