JP2020060681A - 重合トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
本開示の課題は、低温定着性及び耐熱保存性に優れ、軟化剤のブリード発生が起こりにくい重合トナーの製造方法を提供することにある。
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別される。本開示において、画像再現性等の印字特性に優れたトナーかつ比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が用いられ、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤、及び軟化剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤及び分子量調整剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行う。
本開示では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
本開示に使用されるエステルワックスは、ペンタエリスリトールとモノカルボン酸とのエステル化反応による生成物である。当該エステル化反応に使用されるモノカルボン酸は、ベヘン酸(CAS No.112−85−6,CH3(CH2)20COOH)、アラキジン酸(CAS No.506−30−9,CH3(CH2)18COOH)、及びステアリン酸(CAS No.57−11−4,CH3(CH2)16COOH)を含有する。当該エステル化反応においては、その原料であるモノカルボン酸(以下、原料モノカルボン酸と称する場合がある。)が混合物であるため、その結果として得られるエステルワックス(本開示のトナーに使用されるエステルワックス)も混合物である。
原料モノカルボン酸が、比較的炭素数の大きいベヘン酸を含むことによって、得られるトナーにおける軟化剤のブリードを抑制できる。また、原料モノカルボン酸が、比較的炭素数の小さいアラキジン酸及びステアリン酸を含むことによって、エステルワックスと結着樹脂との相溶性を向上させることができ、得られるトナーの粒径の粗大化を抑制することができる。
ベヘン酸の含有割合は、好適には65〜78質量%であり、より好適には70〜75質量%である。
アラキジン酸の含有割合は、好適には6〜14質量%であり、より好適には7〜12質量%である。
ステアリン酸の含有割合は、好適には16〜22質量%であり、より好適には17〜20質量%である。
混合物であるエステルワックス中に実際に含まれる軟化剤の種類は、測定によりその存在比を求めることも可能である。
温度計、窒素導入管、攪拌機、ディーンスタークトラップ及びジムロート冷却管を備えた反応容器に、ペンタエリスリトール、ベヘン酸、アラキジン酸及びステアリン酸を加え、窒素気流下220℃で、反応により生じる水を留去しつつ20時間常圧で反応を行って、エステル化粗生成物を得る。ペンタエリスリトール、ベヘン酸、アラキジン酸及びステアリン酸の混合比は、上記エステルワックスが得られるよう適宜調整する。このエステル化粗生成物について、脱酸及び水洗を適宜行うことにより、目的とするエステルワックスが得られる。
これらの炭化水素ワックスの中でも、パラフィンワックスがより好ましい。市販のパラフィンワックスとしては、例えば、HNP−10(商品名、日油社製、最も多く含まれるワックス分子の炭素数:45、融点:72℃)、及びHNP−11(商品名、日油社製、最も多く含まれるワックス分子の炭素数:32、融点:68℃)を採用することができる。
当該炭化水素ワックス中に最も多く含まれるワックス分子の炭素数は、好適には36〜54であり、より好適には40〜50である。当該炭化水素ワックスの融点は、好適には64〜84℃であり、より好適には69〜79℃である。
このような炭化水素ワックスとしては、例えば、上記HNP−10(商品名、日油社製、最も多く含まれるワックス分子の炭素数:45、融点:72℃)が挙げられる。
軟化剤の当該添加量が3〜25質量部である場合には、得られるトナーが離型性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性(耐ブロッキング性)に優れる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができ、本開示の着色剤における分散性向上の観点から、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、負帯電性トナーを得る観点からは、負帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
帯電制御樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算値で、5,000〜30,000の範囲内であり、好ましくは8,000〜25,000の範囲内であり、より好ましくは10,000〜20,000の範囲内である。
また帯電制御樹脂における4級アンモニウム基やスルホン酸塩基などの官能基を有する単量体の共重合割合は、0.5〜12質量%の範囲内であり、好ましくは1.0〜6質量%の範囲内であり、更に好ましくは1.5〜3質量%の範囲内である。
本開示では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
本開示では、重合性単量体、着色剤、及び軟化剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス社製、商品名:T.K.ホモミクサーMARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。分散安定化剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部あることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、結着樹脂、着色剤、及び軟化剤を含む着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
重合性単量体組成物の液滴を安定に分散させた状態で重合を行うために、本重合工程においても上記(A−2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)に引き続き、攪拌による分散処理を行いながら重合反応を進行させてもよい。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
上述の(A)懸濁重合法、又は乳化重合凝集法等の重合法により着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.960未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
なお、これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることが好ましい。
上記工程を経て得られる本開示のトナーは、軟化剤として上記エステルワックスを含有することにより、低温定着性及び耐熱保存性に優れ、軟化剤のブリード発生が起こりにくいトナーである。
ブリード率は、下記保管試験により測定される。
温度45℃、かつ湿度80%の環境下で20日保管した後のトナーをSEMにて観察する。倍率2,000倍の条件にて、トナーの画像を10枚撮影する。次に、撮影した各トナー画像について、当該画像中の全てのトナー粒子の数(A)と、当該画像中における、ワックスがブリードアウトしたトナー粒子の数(B)とを、それぞれ数える。その後、各トナー画像について、トナー粒子数(B)をトナー粒子数(A)により除し、さらに100を乗じた値を算出する。10枚のトナー画像について算出した当該値の平均を、そのトナーのブリード率(%)とする。
本発明のトナーの、フローテスターにおける1/2流出温度T1/2は、好ましくは126〜134℃であり、より好ましくは127〜133℃である。
フローテスターにおけるトナーの1/2流出温度T1/2は、フローテスターを用いて測定した溶融粘度から算出できる。具体的には、まず、フローテスター(島津製作所製、商品名:CFT−500C等)を用いて、所定の開始温度、昇温速度、予熱時間、及び剪断応力の条件下で溶融粘度を測定する。次に、得られた溶融粘度から、トナーの1/2流出温度T1/2を求めることができる。
前記1/2流出温度T1/2は、例えば、架橋性単量体の添加量等により調節することができる。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
[製造例1]
以下、ワックスa1の製造方法を説明する。なお、下記表1にワックスa1の原料モノカルボン酸の質量比を示す。
温度計、窒素導入管、攪拌機、ディーンスタークトラップ及びジムロート冷却管を備えた反応容器に、ペンタエリスリトール10部、ベヘン酸72部、アラキジン酸9部及びステアリン酸19部(モノカルボン酸全体でペンタエリスリトールの1.05モル当量)を加え、窒素気流下220℃で、反応により生じる水を留去しつつ20時間常圧で反応を行って、エステル化粗生成物を得た。このエステル化粗生成物にトルエン10部及びイソプロパノール5部を添加し、エステル化粗生成物の酸価の1.5倍当量に相当する量の10%水酸化カリウム水溶液15部を加え、70℃で30分間攪拌した。30分間静置して水相部を除去して脱酸工程を終了した。次いで、得られた油相部にイオン交換水20部を加え、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置して水相部を除去した。除去した水相部のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。水洗後の油相部を180℃、1kPaの条件下で減圧して溶媒を留去し、ろ過を行い、最終目的物であるワックスa1を得た。
[実施例1]
モノビニル単量体としてスチレン73部及びn−ブチルアクリレート27部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.45部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:♯25B)12部、帯電制御剤として正帯電性帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名:FCA−676P、4級アンモニウム塩含有スチレン/アクリル樹脂)5.0部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.0部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6、Tg=94℃)0.1部、及び軟化剤としてワックスa1(融点:75.8℃、130℃における溶融粘度:9.1m・Pa/s)20部を、攪拌装置で攪拌、混合した後、さらにメディア式分散機により、均一に分散させることで、重合性単量体組成物を得た。
実施例1において、軟化剤の種類及び添加量、並びにトナー組成を下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2、比較例1〜比較例4のトナーを作製し、試験に供した。
なお、下記表2中、軟化剤の詳細は以下の通りである。
・ワックスx:ペンタエリスリトールテトラステアレート(融点:76.0℃、130℃における溶融粘度:5.5m・Pa/s)
・ワックスy:ペンタエリスリトールテトラベヘネート(融点:78.7℃、130℃における溶融粘度:9.3m・Pa/s)
なお、下記表1に各エステルワックスの原料モノカルボン酸の質量比を示す。
上記実施例1〜実施例2、比較例1〜比較例4の静電荷像現像用トナー、並びにこれらのトナーの製造に用いた各着色樹脂粒子について物性を調べた。詳細は以下の通りである。
着色樹脂粒子を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤として界面活性剤水溶液(富士フイルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mLを加えた。そのビーカーへ、更に専用電解液(ベックマン・コールター社製、商品名:アイソトンII−PC)を10〜30mL加え、20Wの超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII−PC、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dp)を測定し、粒径分布(Dv/Dp)を算出した。測定及び算出結果を下記表2に示す。
キャリア(パウダーテック社製、商品名:NZ−3)9.5gと、トナー0.5gを秤量し、容積100ccのガラス瓶に入れ、30分間、150回転/分の回転数で回転させた。次に、ブローオフメーター(京セラケミカル社製、商品名:TB−203)を用い、窒素ガスを4.5kPaの圧力でブローし、9.5kPaの圧力で吸引することにより、トナーのブローオフ帯電量(μQ/g)を測定した。測定は、温度23℃、相対湿度50%で行った。
以下の方法により、トナーの軟化温度Ts、流動開始温度Tfb、1/2流出温度T1/2、及び流動終了温度Tendを測定した。
まず、トナーをフローテスター(島津製作所製、商品名「CFT−500C」)を用いて、下記条件で測定した。
開始温度=35℃、昇温速度=3℃/分、予熱時間=5分、シリンダー圧力=10.0kg・f/cm2、ダイ直径=0.5mm、ダイ長さ=1.0mm、剪断応力=2.451×105Pa、試料投入量=1.0〜1.3g。
次に、当該測定結果から、トナーの軟化温度Ts、流動開始温度Tfb、1/2流出温度T1/2、及び流動終了温度Tendを求めた。算出結果を下記表2に示す。
トナー10gを100mLのポリエチレン製の容器に入れて密閉した後、所定の温度に設定した恒温水槽の中に該容器を沈め、8時間経過した後に取り出した。取り出した容器からトナーを42メッシュの篩の上にできるだけ振動を与えないように移し、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT−R)にセットした。篩の振幅を1.0mmに設定して、30秒間、篩を振動させた後、篩上に残ったトナーの質量を測定し、これを凝集したトナーの質量とした。
この凝集したトナーの質量が0.5g以下になる最高温度(℃)を、保存性の指標とした。
上記実施例1〜実施例2、比較例1〜比較例4の各トナーを評価した。詳細は以下の通りである。
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変えられるように改造したプリンターを用い、当該プリンターの現像装置内のトナーカートリッジに、トナーを100g充填した後、印字用紙をセットした。
ベタ画像の紙面上トナー量が0.30(mg/cm2)となるようにプリンターの調整を行った後、定着ロールの温度(定着温度)を170℃に設定し、5cm四方のベタ画像を用紙(Xerox社製、商品名:Vitarity)に印字した。得られた5cm四方のベタ画像を、グロスメーター(日本電色工業製、商品名:VGS−SENSOR)を用いて、入射角60°によりグロスの値を測定した。なお、グロスの値は、大きい程光沢感があることを示す。
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、ホットオフセット試験を行った。ホットオフセット試験は、定着ロール部の温度を150℃から5℃ずつ220℃まで変化させて、5cm四方のベタ画像を用紙(Xerox社製、商品名:Vitarity)に印字し、定着ロールにトナーの融着が発生していないかホットオフセット現象の有無を目視にて観察した。
このホットオフセット試験において、定着ロールにトナーの融着が発生した最低の設定温度を、ホットオフセット発生温度とした。
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。
定着試験は、黒ベタ(印字濃度100%)を印字して、改造プリンターの定着ロールの温度を5℃ずつ変化させて、それぞれの温度でのトナーの定着率を測定し、温度−定着率の関係を求めて行った。
定着率は、黒ベタ(印字濃度100%)の印字領域においてテープ剥離を行い、テープ剥離前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、下記計算式により算出できる。
計算式:
定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分に粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD914)を用いて測定した。
この定着試験において、定着率が80%を超える最低の定着ロールの温度をトナーの最低定着温度とした。
温度45℃、かつ湿度80%の環境下で20日保管した後のトナーをSEMにて観察した。倍率2,000倍の条件にて、トナーの画像を10枚撮影した。次に、撮影した各トナー画像について、当該画像中の全てのトナー粒子の数(A)と、当該画像中における、ワックスがブリードアウトしたトナー粒子の数(B)とを、それぞれ数えた。その後、各トナー画像について、トナー粒子数(B)をトナー粒子数(A)により除し、さらに100を乗じた値を算出した。10枚のトナー画像について算出した当該値の平均を、そのトナーのブリード率(%)とした。
以下、表2を参照しながら、トナー評価結果について検討する。
表2より、比較例1〜比較例3のトナーは、軟化剤としてワックスxを含むトナーである。このようなトナーは、以下の通りトナー物性及びトナー評価にバラつきが生じる。まず、トナー組成中のスチレン量の割合が高いときは最低定着温度が155℃と高くかつブリード率が16.2%と高い(比較例1)。一方、トナー組成中のスチレン量の割合が低くジビニルベンゼン量の割合が高いときは、耐熱保存性の評価温度が54℃以下と低い(比較例2及び比較例3)。したがって、ペンタエリスリトールテトラステアレート(ワックスx)を用いた場合には、低温定着性及び耐熱保存性のバランスが十分ではなく、かつ軟化剤のブリードが生じ易い。
また、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(ワックスy)を使用した場合(比較例4)には、トナー粒子が粗大化した。これは、ワックスyにおける脂肪酸残基部分の分子量が大きすぎるため、ワックスyのスチレンモノマーに対する溶解性(相溶性)が十分ではなく、その結果、重合性単量体組成物の液滴安定性が低下したためと考えられる。
表2より、実施例1〜実施例2のグロスの値は5.2以上であり、ホットオフセット発生温度は200℃以上であり、最低定着温度は145℃以下であり、ブリード率は0%である。
したがって、ペンタエリスリトールとモノカルボン酸(ベヘン酸の含有割合が60〜80質量%であり、アラキジン酸の含有割合が5〜15質量%であり、かつステアリン酸の含有割合が15〜25質量%である)とのエステル化反応による生成物を軟化剤として含む実施例1〜実施例2のトナーは、低温定着性及び耐熱保存性に優れ、軟化剤のブリード発生が起こりにくい重合トナーであることが分かる。
Claims (5)
- 水系媒体中で、少なくとも重合性単量体の重合を行い、結着樹脂、着色剤及び軟化剤を含有する着色樹脂粒子を得る工程を含む重合トナーの製造方法であって、
前記軟化剤として、
ペンタエリスリトールとモノカルボン酸とのエステル化反応による生成物であり、
前記エステル化反応に用いられるモノカルボン酸は、ベヘン酸、アラキジン酸及びステアリン酸を含有し、かつ当該モノカルボン酸100質量%あたり、ベヘン酸の含有割合が60〜80質量%であり、アラキジン酸の含有割合が5〜15質量%であり、かつステアリン酸の含有割合が15〜25質量%である、エステルワックスを用いることを特徴とする重合トナーの製造方法。 - 前記軟化剤の添加量が、前記重合性単量体100質量部に対して、3〜25質量部であることを特徴とする請求項1に記載の重合トナーの製造方法。
- 前記重合性単量体組成物が、前記軟化剤としてさらに炭化水素ワックスを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の重合トナーの製造方法。
- 前記炭化水素ワックスが2種以上のワックス分子を含み、
前記炭化水素ワックス中に最も多く含まれるワックス分子の炭素数は35〜55であり、
前記炭化水素ワックスの融点は60〜85℃であることを特徴とする請求項3に記載の重合トナーの製造方法。 - 前記炭化水素ワックスがパラフィンワックスであることを特徴とする請求項3又は4に記載の重合トナーの製造方法。
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