JP2020060158A - エンジン制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸気脈動が大きい運転領域での吸気量の演算精度を向上する。【解決手段】マスフロー方式で演算した第1吸気量に対するスロットルスピード方式で演算した第2吸気量の偏差量の学習値である偏差量学習値の学習に際して、脈動小判定時の第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量(=MC2+DEV[i])のずれ量DIに応じた偏差量学習値DEV[i]の学習(S360、S370)を、学習完了前(S330:NO)には吸気管圧力PMが第1下限値PMGL以上の領域で(S350:YES)、学習完了後(S330:YES)には吸気管圧力PMが第1下限値PMGLよりも高い第2下限値PMGH以上の領域で(S340:YES)、それぞれ行うようにした。【選択図】図7

Description

本発明は、エンジンの吸気量を演算するとともに、同吸気量の演算値に基づき燃料噴射量を決定してインジェクタの燃料噴射制御を行うエンジン制御装置に関する。
気筒内で燃焼する混合気の空燃比(空気に対する燃料の質量比率)を適切に制御するには、エンジンの吸気量を、すなわち気筒内に流入する吸気の質量を正確に把握する必要がある。従来、吸気量の演算方式として、マスフロー方式、スピードデンシティ方式、及びスロットルスピード方式の3つの方式が知られている。マスフロー方式では、吸気通路におけるスロットルバルブよりも上流側の部分に設置されたエアフローメータにより検出した吸気流量から吸気量を演算する。スピードデンシティ方式では、吸気通路におけるスロットルバルブよりも下流側の部分に設置された吸気管圧力センサにより吸気管圧力を検出するとともに、その吸気管圧力とエンジン回転数とに基づき推定した吸気流量から吸気量を演算する。さらに、スロットルスピード方式では、スロットル開度とエンジン回転数とに基づき推定した吸気流量から吸気量を演算する。
通常は、これら3つの演算方式の中でマスフロー方式が、エンジンの定常運転時の吸気量を最も精度良く演算することができる。ただし、エンジンの各気筒は、吸気弁の開閉に応じて間欠的に吸気を吸入しているため、吸気通路の吸気の流れは脈動を伴ったものとなる。そしてそうした吸気脈動の影響は、エアフローメータの検出値にも表れるため、吸気脈動の大きいエンジンの運転領域では、マスフロー方式よりもスピードデンシティ方式やスロットルスピード方式の方が高い精度で吸気量を演算できる場合がある。これに対して従来、特許文献1に見られるように、吸気脈動が小さいときにはマスフロー方式により吸気量を演算し、吸気脈動が大きいときにはスピードデンシティ方式又はスロットルスピード方式により吸気量を演算するように、吸気脈動の大小に応じて演算方式を切り替えつつ吸気量を演算するエンジン制御装置が提案されている。
特開2013−221418号公報
スピードデンシティ方式及びスロットルスピード方式では、推定した吸気流量から吸気量を演算しているため、吸気流量の推定に誤差があると、その演算値にも誤差が生じてしまう。上記従来のエンジン制御装置では、吸気脈動が大きくなったときにそうした誤差が生じていると、空燃比が目標とする値から乖離してエンジンの排気性能の低下を招く虞がある。
上記課題を解決するエンジン制御装置は、エンジンの吸気量を演算するとともに、同吸気量の演算値に基づき燃料噴射量を決定してインジェクタの燃料噴射制御を行うものであって、エアフローメータの吸気流量の検出値に基づいて吸気量を演算する第1吸気量演算処理と、同吸気流量の検出値を用いずに、吸気管圧力の検出値、及びスロットル開度のうちのいずれか一方に基づいて吸気量を演算する第2吸気量演算処理と、吸気通路内の吸気脈動が大きい状態にあるか否かを判定する判定処理と、を行っている。
第1吸気量演算処理では、エアフローメータの吸気流量の検出値に基づいたマスフロー方式の吸気量の演算が行われる。第2吸気量演算処理では、吸気管圧力の検出値に基づいたスピードデンシティ方式の吸気量の演算、又はスロットル開度に基づいたスロットルスピード方式の吸気量の演算が行われる。ここで、第1吸気量演算処理による吸気量の演算値を第1吸気量とするとともに、第2吸気量演算処理による吸気量の演算値を第2吸気量とする。このとき、上記エンジン制御装置は更に、判定処理において吸気脈動が大きい状態にないと判定されているときに第1吸気量に対する第2吸気量の偏差量を演算する偏差量演算処理と、判定処理において吸気脈動が大きい状態にないと判定されているときには第1吸気量を吸気量の演算値として設定するとともに、判定処理において吸気脈動が大きい状態にあると判定されているときには第2吸気量に偏差量を加えた和である補正後第2吸気量を吸気量の演算値として設定する演算方式切替処理と、を行っている。
上記エンジン制御装置では、判定処理により吸気脈動が大きい状態にないと判定(以下、脈動小判定と記載する)されているときには、エアフローメータの吸気流量の検出精度は低下しておらず、その検出値に基づく第1吸気量演算処理での第1吸気量の演算の精度も高いと考えられる。そこで、上記エンジン制御装置では、脈動小判定時には、マスフロー方式で演算した第1吸気量を吸気量の演算値として演算される。また、このときの第1吸気量が正確な値であるとすれば、第1吸気量に対する第2吸気量の偏差は、第2吸気量の演算値の誤差となる。上記エンジン制御装置では、偏差量演算処理において、脈動小判定時の第1吸気量に対する第2吸気量の偏差量を演算している。
一方、判定処理により吸気脈動が大きい状態にあると判定(以下、脈動大判定と記載する)されているときには、エアフローメータの吸気流量の検出精度が低下して、第1吸気量の演算精度も低下する。このときの上記エンジン制御装置では、脈動小判定時に演算した上記偏差量を第2吸気量に加えた和である補正後第2吸気量が吸気量の演算値として演算される。すなわち、このときには、脈動小判定時に確認された第2吸気量の誤差分の補償を、第2吸気量に施した値が吸気量の演算値として演算される。したがって、上記エンジン制御装置によれば、吸気脈動が大きい運転領域での吸気量の演算精度を向上できる。
さらに上記エンジン制御装置での偏差量演算処理では、第1吸気量に対する補正後第2吸気量のずれ量に応じて値の更新を行うことで偏差量の学習値である偏差量学習値を学習している。吸気量の演算値に偏差量学習値が反映されるのは、吸気脈動が発生するエンジン運転領域である脈動領域となる。脈動領域とその脈動領域から離れた運転領域とでは、第1吸気量と第2吸気量との偏差量が異なる場合がある。よって、学習精度を確保するには、偏差量学習値を学習する運転領域を脈動領域近傍の運転領域に限定することが望ましい。しかしながら、そうした場合、学習機会が限定されてしまい偏差量学習値の学習が完了する迄に長い時間を要してしまう虞がある。
そこで、上記エンジン制御装置での偏差量演算処理では、偏差量学習値の学習完了前には吸気脈動が発生するエンジン運転領域である脈動領域を含む第1学習領域においてずれ量に応じた偏差量学習値の学習を行い、且つ偏差量学習値の学習完了後には脈動領域を含む領域であって第1学習領域よりも狭い第2学習領域においてずれ量に応じた偏差量学習値の学習を行っている。そのため、学習完了前には、学習機会を確保して学習完了に要する時間を短縮する一方で、学習完了後には高い精度で学習を行うことが可能となる。そのため、偏差量学習値の学習を好適に行うことができる。
演算方式の違いによる第1吸気量と第2吸気量の偏差量がエンジン回転数により異なった量となることがある。こうした場合には、偏差量学習値、第1学習領域、及び第2学習領域を、エンジン回転数に応じて区分けされた複数の回転数域毎にそれぞれ個別に設定するとともに、偏差量学習値の学習の完了の有無を、複数の回転数域のそれぞれにおいて個別に判定するとよい。
偏差量学習値の学習は、脈動領域でのずれ量が十分小さい値となるまで値が更新されれば、完了したと判定することができる。一方、上記のように、演算方式の違いによる第1吸気量と第2吸気量の偏差量が、脈動領域に近い運転領域と脈動領域からはられた運転領域とでは異なった量となることがある。そのため、偏差量学習値の学習の完了の有無の判定を第1学習領域全体で行うと、脈動領域から離れた運転領域で判定が行われ、脈動領域に近い運転領域では十分にずれ量が小さくなっていない状態で学習が完了したと判定される可能性がある。その点、偏差量学習値の学習の完了は第2学習領域におけるずれ量に基づいて判定すれば、学習完了前の偏差量学習値の学習を第1学習領域で行いつつも、同学習の完了を適切に判定できるようになる。
ちなみに、学習の完了の有無の判定は、例えば次の態様で行うことができる。すなわち、第2学習領域でエンジンが運転されているときにずれ量の絶対値が規定の収束判定値以下であるか否かの判定を規定の判定周期毎に行う。そして、ずれ量の絶対値が収束判定値以下であると判定された回数が規定の学習完了判定値以上となった場合に偏差量学習値の学習が完了したと判定する。
なお、第1学習領域及び第2学習領域は、例えば次のように吸気管圧力に基づいて範囲を設定することができる。すなわち、第1学習領域を吸気管圧力が規定の第1下限値以上の領域とし、且つ第2学習領域を、吸気管圧力が第1下限値よりも高い第2下限値以上の領域とする。
第1実施形態のベースとなるエンジン制御装置の構成を模式的に示す略図。 同エンジン制御装置が実行する燃料噴射量の制御に係る処理の流れを示すブロック図。 同エンジン制御装置が実行する吸気量演算処理の流れを示すブロック図。 同エンジン制御装置が脈動判定処理において使用する脈動率の演算態様を示すグラフ。 上記エンジン制御装置が脈動判定処理に際して実行する脈動判定ルーチンのフローチャート。 同エンジン制御装置における吸気量演算処理の実施態様の一例を示すタイムチャート。 第1実施形態のエンジン制御装置が実行する偏差量学習ルーチンのフローチャート。 偏差量学習ルーチンにおいて演算される偏差量学習値の更新量とずれ量との関係を示すグラフ。 同実施形態のエンジン制御装置における偏差量学習領域の設定態様を示すグラフ。 同実施形態のエンジン制御装置が実行する学習完了判定ルーチンのフローチャート。 同実施形態のエンジン制御装置における学習完了判定の実施態様の一例を示すタイムチャート。 制御モードの切替を行うエンジンの一例の構成を模式的に示す図。 制御モードの切替を行うエンジンにおける負荷率を用いた偏差量学習領域の設定態様を示すグラフ。 制御モードの切替を行うエンジンでのスロットル開度を用いた偏差量学習領域の設定態様を示すグラフ。 制御モードの切替を行うエンジンでの吸気管圧力を用いた偏差量学習領域の設定態様を示すグラフ。
ここではまず、第1実施形態のエンジン制御装置の元になったエンジン制御装置について説明する。第1実施形態のエンジン制御装置は、この元になったエンジン制御装置(以下、前提構成と記載する)に改良を加えたものとなっている。
図1に示すように、前提構成のエンジン制御装置が適用されるエンジン10の吸気通路11の最上流部には、吸気中の塵等をろ過するエアクリーナ12が設けられている。吸気通路11におけるエアクリーナ12よりも下流側の部分には、吸気流量を検出するエアフローメータ13が設けられている。さらに吸気通路11におけるエアフローメータ13よりも下流側の部分には、吸気通路11の吸気流量を調整するための弁であるスロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14の近傍には、同スロットルバルブ14を開閉駆動するためのスロットルモータ15と、スロットルバルブ14の開度(スロットル開度TA)を検出するためのスロットルセンサ16と、が設けられている。
吸気通路11におけるスロットルバルブ14よりも下流側の部分には、エンジン10の各気筒に吸気を分配するための分枝管であるインテークマニホールド(以下、インマニ17と記載する)が設けられている。インマニ17の各分枝管は、気筒別の吸気ポート18を介して各気筒の燃焼室19にそれぞれ接続されている。各気筒の吸気ポート18には、同吸気ポート18を通って燃焼室19に流入する吸気中に燃料を噴射するインジェクタ20がそれぞれ設けられている。また、各気筒の燃焼室19には、内部に流入した燃料と吸気との混合気を放電により点火する点火装置21がそれぞれ設けられている。なお、各気筒には、エンジン10の出力軸であるクランクシャフト22の回転に連動して開閉する吸気弁23、及び排気弁24がそれぞれ設けられている。そして、吸気弁23の開弁に応じて吸気ポート18から燃焼室19に吸気が流入し、排気弁24の開弁に応じて燃焼室19から排気が排出される。
エンジン10は、エンジン制御装置としての電子制御ユニット25により制御されている。電子制御ユニット25は、エンジン制御に係る各種の演算処理を行う演算処理回路26と、制御用のプログラムやデータを記憶したメモリ27とを備えている。そして、電子制御ユニット25には、上述のエアフローメータ13、スロットルセンサ16に加え、吸気温度THAを検出する吸気温度センサ28、大気圧PAを検出する大気圧センサ29、及びクランクシャフト22の回転角(クランク角CRNK)を検出するクランク角センサ30などの各種センサの検出信号が入力されている。そして、電子制御ユニット25は、それらセンサの検出信号に基づき、スロットルモータ15、インジェクタ20、点火装置21などのアクチュエータを制御することで、エンジン10の各種制御を行っている。なお、電子制御ユニット25は、クランク角センサ30によるクランク角CRNKの検出結果からエンジン回転数NEを演算している。
図2に、インジェクタ20の燃料噴射量の制御に係る電子制御ユニット25の処理の流れを示す。燃料噴射量の制御に際して電子制御ユニット25はまず、吸気量演算処理P1において、エアフローメータ13の吸気流量の検出値であるAFM検出吸気量GA、スロットル開度TA、エンジン回転数NEに基づき、エンジン10の吸気量を演算する。この吸気量演算処理P1で演算する吸気量(以下、吸気量演算値MCと記載する)は、燃焼室19での燃焼に供される空気の質量の推定値を表している。続いて、電子制御ユニット25は、噴射量決定処理P2において、吸気量演算処理P1で演算した吸気量演算値MCに基づき、燃焼室19で燃焼する混合気の空燃比が目標とする値となるように燃料噴射量QINJを決定する。そして、電子制御ユニット25は、インジェクタ駆動処理P3において、燃料噴射量QINJ分の燃料噴射を行うように各気筒のインジェクタ20を駆動する。
図3に、吸気量演算処理P1に係る電子制御ユニット25の処理の流れを示す。吸気量演算処理P1は、第1吸気量演算処理P4、第2吸気量演算処理P5、判定処理P6、偏差量演算処理P7、及び演算方式切替処理P8の各処理を通じて実行されている。
第1吸気量演算処理P4では、エアフローメータ13の吸気流量の検出値であるAFM検出吸気量GAとエンジン回転数NEとに基づく吸気量の演算が行われる。具体的には、第1吸気量演算処理P4では、AFM検出吸気量GAをエンジン回転数NEで割った商に規定の係数Kを掛けた積(=K×GA/NE)を定常運転時の吸気量の値として求めている。そして、その定常運転時の吸気量に追従しつつ緩変化する値として吸気量を演算している。すなわち、第1吸気量演算処理P4では、エアフローメータ13の吸気流量の検出値を用いた、いわゆるマスフロー方式による吸気量の演算が行われる。以下の説明では、第1吸気量演算処理P4による吸気量の演算値を第1吸気量MC1と記載する。
第2吸気量演算処理P5では、スロットル開度TAとエンジン回転数NEとに基づく吸気量の演算が行われる。具体的には、第2吸気量演算処理P5では、スロットル開度TAとエンジン回転数NEとに基づき吸気流量を推定するとともに、その吸気流量の推定値(推定吸気流量GA*)をエンジン回転数NEで割った商に上記係数Kを掛けた積(=K×GA*/NE)を定常運転時の吸気量の値として求めている。そして、その定常運転時の吸気量に追従しつつ緩変化する値として吸気量を演算している。すなわち、第2吸気量演算処理P5では、エアフローメータ13の吸気流量の検出値の代わりに、スロットル開度TA及びエンジン回転数NEに基づく吸気流量の推定値を用いた、いわゆるスロットルスピード方式による吸気量の演算が行われる。以下の説明では、第2吸気量演算処理P5による吸気量の演算値を第2吸気量MC2と記載する。
判定処理P6では、吸気通路11内の吸気脈動が大きい状態にあるか否かの判定が行われる。判定処理P6の詳細については後述する。
偏差量演算処理P7では、判定処理P6において吸気脈動が大きい状態にないとの判定(以下、脈動小判定と記載する)がなされているときに、第1吸気量MC1に対する第2吸気量MC2の偏差量DEVを演算する。具体的には、偏差量演算処理P7では、脈動小判定時に、第1吸気量MC1から第2吸気量MC2を引いた差を求めるとともに、その差が偏差量DEVの更新後の値となるように偏差量DEVの値を更新する。なお、判定処理P6において吸気脈動が大きい状態にあるとの判定(以下、脈動大判定と記載する)がなされているときには、偏差量演算処理P7は実施されず、偏差量DEVの値が保持される。
演算方式切替処理P8では、脈動小判定時には、第1吸気量MC1を吸気量演算値MCの値として設定する。また、演算方式切替処理P8では、脈動大判定時には、第2吸気量MC2に偏差量DEVを加えた和である補正後第2吸気量MC3(=MC2+DEV)を吸気量演算値MCの値として設定する。
続いて、判定処理P6の詳細を説明する。判定処理P6には、図4に示すような、規定の期間TにおけるAFM検出吸気量GAの最大値GMAX、最小値GMIN、及び平均値GAVEが用いられる。なお、期間Tは、吸気脈動の周期よりも長い時間となるように設定されている。
図5に、判定処理P6において実行される脈動判定ルーチンのフローチャートを示す。本ルーチンの処理は、エンジン10の運転中、吸気量の演算周期毎に電子制御ユニット25により繰り返し実行される。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS100において、脈動率RTEの演算が行われる。脈動率RTEの値は、上述したAFM検出吸気量GAの最大値GMAXから最小値GMINを引いた差を平均値GAVEで割った商(=(GMAX−GMIN)/GAVE)として演算されている。続いて、ステップS110において、脈動率RTEの値が規定の脈動大判定値α以上であるか否かが判定される。
脈動率RTEの値が脈動判定値α以上の場合(S110:YES)、ステップS120に処理が進められ、そのステップS120において、脈動大フラグFがセットされる。さらにこの場合には、ステップS130においてカウンタCOUNTの値が0にリセットされた後、今回の本ルーチンの処理が終了される。脈動大フラグFは、判定処理P6の判定結果を示すフラグであって、脈動大判定時にはセットされ、脈動小判定時にはクリアされる。上述の偏差量演算処理P7、及び演算方式切替処理P8では、こうした脈動大フラグFがセットされているか否かにより、判定処理P6の判定結果を確認している。
一方、脈動率RTEの値が脈動大判定値α未満の場合(S110:NO)、ステップS140に処理が進められる。そして、ステップS140において、脈動大フラグFがセットされているか否かが判定される。ここで、脈動大フラグFがセットされていなければ(S140:NO)、上述のステップS130に処理が進められ、そのステップS130においてカウンタCOUNTの値が0にリセットされた後、今回の本ルーチンの処理が終了される。一方、脈動大フラグFがセットされている場合には(S140:YES)、ステップS150に処理が進められる。
ステップS150に処理が進められると、そのステップS150においてカウンタCOUNTの値のインクリメントが行われる。そして、続くステップS160において、インクリメント後のカウンタCOUNTの値が規定の脈動オフ判定値β以上であるか否かが判定される。このときのカウンタCOUNTの値が脈動オフ判定値β未満である場合には(S160:NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。これに対してカウンタCOUNTの値が脈動オフ判定値β以上である場合には(S160:YES)、ステップS170において脈動大フラグFがクリアされた後、今回の本ルーチンの処理が終了される。
以上の脈動判定ルーチンにおいて脈動大フラグFは、脈動大判定値α未満の値から同脈動大判定値α以上の値へと脈動率RTEの値が増加したときに、クリアされた状態からセットされた状態へと切り替えられる。また、脈動大フラグFは、脈動率RTEが脈動大判定値α未満であり、且つカウンタCOUNTの値が脈動判定値β以上となったときにセットされた状態からクリアされた状態に切り替えられる。一方、カウンタCOUNTの値は、脈動率RTEが脈動大判定値α未満であって、且つ脈動大フラグFがセットされている場合にインクリメントされ、それ以外の場合には0にリセットされる。すなわち、カウンタCOUNTの値のインクリメントは、脈動率RTEが脈動大判定値α以上の値から脈動大判定値α未満の値に低下したときに開始され、その後、脈動率RTEが脈動大判定値α以上となるか、脈動大フラグFがクリアされるか、のいずれかとなるまで継続される。そして、このときのカウンタCOUNTの値のインクリメントは脈動判定ルーチンの実行毎に行われ、さらに脈動判定ルーチンは吸気量の演算周期毎に実行される。よって、脈動大フラグFのセットからクリアへの切替は、脈動率RTEが脈動大判定値α以上の値から脈動大判定値α未満の値に低下し、且つその後、脈動率RTEが脈動大判定値α未満の値となっている状態が一定の時間継続したときに行われる。
続いて、以上説明したエンジン制御装置の作用効果を説明する。
図6に、このエンジン制御装置における吸気量演算処理P1の実施態様の一例を示す。
エンジン10の吸気通路11では、吸気弁23の間欠的な開弁により、吸気の脈動が発生する。エンジン10の高負荷運転時等には、こうした吸気脈動が大きくなり、その影響がエアフローメータ13の検出結果に表れる。そのため、吸気脈動が大きい状態にあるときには、エアフローメータ13の検出精度が低下する。
一方、マスフロー方式による吸気量の演算は、エアフローメータ13の吸気流量の検出値(AFM検出吸気量GA)に基づいて行われる。そのため、吸気脈動が大きい状態にあってエアフローメータ13の検出精度が低下すると、マスフロー方式による吸気量の演算精度も低下する。
これに対して、このエンジン制御装置では、判定処理P6において吸気脈動が大きい状態にあるか否かを判定している。そして、脈動小判定時にはマスフロー方式により吸気量を演算する一方、脈動大判定時にはスロットルスピード方式により吸気量を演算するようにしている。
図6の場合、時刻t1までは判定処理P6により脈動小判定がなされており、脈動大フラグFはクリアされている。そして、時刻t1に判定処理P6の判定結果が脈動小判定から脈動大判定に切り替わり、その時刻t1以降は脈動大フラグFがセットされた状態となっている。脈動小判定中は、エアフローメータ13の検出精度は低下しておらず、第1吸気量演算処理P4での第1吸気量MC1の演算精度も高いと考えられる。そこで、前提構成のエンジン制御装置では、脈動小判定中は、第1吸気量MC1を吸気量演算値MCの値として演算するようにしている。
また、脈動小判定中の第1吸気量MC1が正確な値であるとすると、このときの第1吸気量MC1に対する第2吸気量MC2の偏差量DEV分の誤差が、第2吸気量MC2の演算値に生じていることになる。前提構成のエンジン制御装置では、偏差量演算処理P7において、脈動小判定中にそうした偏差量DEVの演算を行っている。
一方、脈動小判定から脈動大判定に切り替わると、エアフローメータ13の検出精度が低下して、第1吸気量演算処理P4による第1吸気量MC1の演算精度も低下する。このときの上記エンジン制御装置では、脈動小判定時に演算した偏差量DEVを第2吸気量MC2に加算した和である補正後第2吸気量MC3を、吸気量演算値MCの値として演算している。すなわち、脈動小判定時の偏差量DEVの演算結果から確認された第2吸気量MC2の誤差を補償した値が、脈動大判定時の吸気量演算値MCの値として演算されている。そのため、吸気脈動が大きい状態にあるときにも、吸気量演算値MCを精度良く演算できる。
また、第1吸気量MC1に対する第2吸気量MC2の偏差が偏差量DEVの値として適切に設定されていれば、時刻t1における第1吸気量MC1と、第2吸気量MC2に偏差量DEVを加えた和である補正後第2吸気量MC3とは同値となる。そのため、上記エンジン制御装置によれば、演算方式の切替前後の吸気量演算値MCの値に段差が生じることを抑えられる。
(第1実施形態)
続いて、以上説明した前提構成に対する第1実施形態のエンジン制御装置の相違点を説明する。本実施形態のエンジン制御装置では、偏差量演算処理P7において、エンジン運転中の第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC3のずれ量DIに基づき、同ずれ量DIが小さくなる側に値を更新することで偏差量DEVの学習値である偏差量学習値の学習を行っている。また、本実施形態では、偏差量学習値の学習を、エンジン回転数に応じて区分けされた複数の偏差量学習領域毎にそれぞれ個別に学習している。
図7に、偏差量学習値の学習にかかる偏差量学習ルーチンのフローチャートを示す。本ルーチンの処理は、エンジン10の運転中、吸気量の演算周期毎に電子制御ユニット25により繰り返し実行される。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS300において、学習実行条件が成立しているか否かが判定される。そして、学習実行条件が不成立の場合(NO)には、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。本実施形態では、(1)エンジン10の暖機が完了していること、(2)エンジン10の運転条件の変化が大きい過渡時ではないこと、及び(3)センサやアクチュエータ系に異常がないこと、のすべてが満たされていることが学習実行条件の成立要件となっている。
学習実行条件が成立している場合(S300:YES)には、ステップS310に処理が進められ、そのステップS310において、脈動小判定時であるか否かが判定される。具体的には、ここでの判定は、図5の脈動大フラグFに基づいて行われている。すなわち、脈動大フラグFがクリアされている場合には脈動小判定時であると判定され、脈動大フラグFがセットされている場合には脈動小判定時ない(脈動大判定時である)と判定される。そして、脈動小判定時である場合(YES)にはステップS320に処理が進められ、脈動小判定時でない場合(NO)、すなわち脈動大判定時にはそのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。
なお、本実施形態では、エンジン10の運転領域を、エンジン回転数に応じて複数の回転数域に区分けしている。そして、回転数域のそれぞれにおいて個別に偏差量DEVの学習を行っている。本実施形態では、5つの回転数域を設定した場合を例として説明する。そして、以下の説明では、5つの回転数域を、エンジン回転数NEの小さい側から順に、回転数域[1]、回転数域[2]、回転数域[3]、回転数域[4]、回転数域[5]とそれぞれ記載する。また、「i」を1、2、3、4、5のうちのいずれかとしたとき、回転数域[i]に対応した偏差量DEVの学習値を偏差量学習値DEV[i]と記載する。
ステップS320に処理が進められると、そのステップS320において、エンジン10が現在運転中の回転数域の特定が行われる。なお、以下の説明では、エンジン10が現在運転中の回転数域を現回転数域と記載する。そして、続くステップS330において、現回転数域[i]に対応した学習完了フラグFG[i]がセットされているか否かが判定される。学習完了フラグFG[i]は、回転数域[i]毎、すなわち偏差量学習値DEV[i]毎にそれぞれ個別に設定されている。そして、学習完了フラグFG[i]は、セットされた状態にあることをもって対応する回転数域[i]の偏差量学習値DEV[i]の学習が完了していることを、クリアされた状態にあることをもって対応する回転数域[i]の偏差量学習値DEV[i]の学習が完了していないことをそれぞれ示すフラグとなっている。こうした学習完了フラグFG[i]の状態は、後述する学習完了判定ルーチンの処理において操作される。
現回転数域の学習完了フラグFG[i]がクリアされている場合(S330:NO)、すなわち現回転数域[i]の偏差量学習値DEV[i]の学習が完了していない場合には、ステップS350において吸気管圧力PMが規定の第1下限値PMGL以上であるか否かが判定される。吸気管圧力PMが第1下限値PMGL以上の場合(YES)にはステップS360に処理が進められ、吸気管圧力PMが第1下限値PMGL未満の場合(NO)にはそのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。なお、第1下限値PMGLには、エアフローメータ13の検出精度の低下を招く程度の大きい吸気脈動が発生するエンジン10の運転領域である脈動領域における吸気管圧力PMの最小値よりも低い圧力が値として設定されている。
これに対して、現回転数域の学習完了フラグFG[i]がセットされている場合(S330:YES)、すなわち現回転数域の偏差量学習値DEV[i]の学習が完了している場合には、ステップS340において、吸気管圧力PMが規定の第2下限値PMGH以上であるか否かが判定される。そして、吸気管圧力PMが第2下限値PMGH以上の場合(YES)にはステップS360に処理が進められ、吸気管圧力PMが第2下限値PMGH未満の場合(NO)にはそのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。なお、第2下限値PMGHには、脈動領域における吸気管圧力PMの最小値よりも低く、且つ第1下限値PMGLよりも高い圧力が値として設定されている。
ステップS340又はステップS350での判定の結果、ステップS360に処理が進められた場合には、そのステップS360において、第1吸気量MC1に対する第2吸気量MC2の差から現回転数域の偏差量学習値DEV[i]を引いた値(=MC1−MC2−DEV[i])が、すなわち第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC3(=MC2+DEV[i])の差がずれ量DIの値として演算される。そして、続くステップS370において、ずれ量DIに基づいて現回転数域の偏差量学習値DEV[i]の更新が行われた後、今回の本ルーチンの処理が終了される。このときの偏差量学習値DEV[i]の更新量ΔDEVは、ずれ量DIと学習完了フラグFG[i]の状態とにより決定される。
図8には、学習完了フラグFG[i]がクリアされている場合の偏差量学習値DEV[i]の更新量ΔDEVとずれ量DIとの関係が実線で示されている。また、同図8には、学習完了フラグFG[i]がセットされている場合の偏差量学習値DEV[i]の更新量ΔDEVとずれ量DIとの関係が点線で示されている。同図に示される値εは、収束判定値であり、学習完了判定ルーチンでの偏差量学習値DEV[i]の学習完了の判定に用いられる。
ずれ量DIの絶対値が収束判定値εを超過する領域では、学習完了フラグFG[i]がセット、クリアのいずれの状態にあっても、ずれ量DIの値が同じであれば同じ値が更新量ΔDEVの値として設定される。具体的には、この領域における更新量ΔDEVの値は、次のような値となるように設定される。すなわち、ずれ量DIの値を収束判定値εから次第に増加させていったときの更新量ΔDEVの値は、ずれ量DIの増加と共に増加していく値となるように設定される。また、ずれ量DIの値を「−ε」から次第に減少させていったときの更新量ΔDEVの値は、ずれ量DIの減少と共に減少していく値となるように設定される。
これに対して、ずれ量DIが0を超え、且つ「ε」以下の領域では、学習完了フラグFG[i]がクリアされている場合には規定の正の値「ζ1」が、学習完了フラグFG[i]がセットされている場合には「ζ1」よりも小さい正の値である「ζ2」が、それぞれ更新量ΔDEVの値として設定される。また、ずれ量DIが0未満、且つ「−ε」以上の領域では、学習完了フラグFG[i]がクリアされている場合には「−ζ1」が、学習完了フラグFG[i]がセットされている場合には「−ζ1」よりも大きい(絶対値が小さい)負の値である「−ζ2」が、それぞれ更新量ΔDEVの値として設定される。なお、ずれ量DIが0の場合には、学習完了フラグFG[i]の状態に関わらず、0が更新量ΔDEVの値として設定される。
以上の偏差量学習ルーチンでは、脈動小判定時の第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC3のずれ量DIに応じて値の更新を行うことで偏差量学習値DEV[i]の学習が行われる。また偏差量学習ルーチンでは、こうした脈動小判定時におけるずれ量DIに応じた偏差量学習値DEV[i]の学習を行うエンジン10の運転領域である偏差量学習領域が、偏差量学習値DEV[i]の学習完了の有無により切り替えられるようになっている。
図9に、本実施形態での偏差量学習領域の設定を示す。同図の線Lは、エンジン10の運転領域におけるエンジン回転数毎の吸気管圧力の最高値を示している。また、同図にハッチングで示された脈動領域は、エアフローメータ13の検出精度の低下を招く程度の大きい吸気脈動が発生するエンジン10の運転領域を表している。
上述のように偏差量学習ルーチンでは、偏差量学習値DEV[i]の学習完了前(S330:NO)には、吸気管圧力PMが第1下限値PMGL以上の場合(S350:YES)に、ステップS360及びステップS370でのずれ量DIに応じた偏差量学習値DEV[i]の値の更新が行われる。これに対して偏差量学習値DEV[i]の学習完了後(S330:YES)には、吸気管圧力PMが第2下限値PMGH(>PMGL)以上の場合に、ステップS360及びステップS370でのずれ量DIに応じた偏差量学習値DEV[i]の値の更新が行われる。また、第1下限値PMGL及び第2下限値PMGHは、脈動領域における吸気管圧力PMの最小値よりも低い圧力が値として設定されている。ここで、各回転数域[i]における吸気管圧力PMが第1下限値PMGL以上の領域を各回転数域[i]における第1学習領域とし、各回転数域[i]における吸気管圧力PMが第2下限値PMGH以上の領域を各回転数域[i]における第2学習領域とする。本実施形態では、各回転数域[i]でのずれ量DIに応じた偏差量学習値DEV[i]の学習は、偏差量学習値DEV[i]の学習完了前には脈動領域を含む第1学習領域において、偏差量学習値DEV[i]の学習完了後には脈動領域を含む領域であって第1学習領域よりも狭い第2学習領域において、それぞれ行われるようになっている。
図10に、学習完了判定ルーチンのフローチャートを示す。本ルーチンの処理は、エンジン10の運転中、規定の判定周期毎に電子制御ユニット25により繰り返し実行される。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS400において、現回転数域[i]の学習完了フラグFG[i]がクリアされているか否かが判定される。そして、学習完了フラグFG[i]がクリアされている場合(YES)にはステップS410に処理が進められ、学習完了フラグFG[i]が既にセットされている場合(NO)にはそのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。
ステップS410に処理が進められると、そのステップS410において、吸気管圧力PMが上述の規定値PMGH以上であるか否かが判定される。そして、吸気管圧力PMが規定値PMGH以上の場合(YES)にはステップS420に処理が進められ、そうでない場合(NO)にはそのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。
ステップS420に処理が進められると、そのステップS420において、ずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下の値となっているか否かが判定される。そして、ずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下の場合(YES)にはステップS430に、そうでない場合(NO)にはステップS460に、それぞれ処理が進められる。
ステップS430に処理が進められると、そのステップS430において、回転数域[i]毎に設定された判定用カウンタGCNT[i]のカウントアップが行われる。すなわち、更新前の値に1を加えた和が更新後の値となるように判定用カウンタGCNTの値が更新される。続いてステップS440において、判定用カウンタGCNT[i]が学習完了判定値ι以上の値となっているか否かが判定される。そして、判定用カウンタGCNT[i]が完了判定値ι以上の値である場合(YES)にはステップS450に処理が進められ、そうでない場合(NO)にはそのまま今回の処理が終了される。ステップS450に処理が進められた場合には、そのステップS450において現回転数域[i]の学習完了フラグFG[i]がセットされた後、今回の本ルーチンの処理が終了される。
一方、ステップS460に処理が進められると、そのステップS460において、ずれ量DIの絶対値が乖離判定値ηを超過する値となっているか否かが判定される。乖離判定値ηには収束判定値εよりも大きい値が設定されている。ここで、ずれ量DIの絶対値が乖離判定値ηを超過している場合(YES)にはステップS470に処理が進められ、そうでない場合(NO)にはそのまま今回の処理が終了される。ステップS470に処理が進められた場合には、そのステップS470において判定用カウンタGCNT[i]の値が0にリセットされた後、今回の本ルーチンの処理が終了される。
図11に、上記学習完了判定ルーチンによる偏差量学習値DEV[i]の学習完了判定の実施態様の一例を示す。偏差量学習値DEV[i]の学習は、吸気脈動に応じた吸気量の演算方式の切替に際して吸気量の演算値に段差が生じないようにするため、第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC3とのずれ量DIが十分小さくなるように行われる。本実施形態では、学習完了判定ルーチンにおいて、第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC3のずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下であるか否かを規定の演算周期毎に行っている。そして、ずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下と判定された回数を示す判定用カウンタGCNT[i]の値が学習完了判定値ι以上となったことを条件に、偏差量学習値DEV[i]の学習が完了したと判定している。
同図における時刻t1以降の期間には、第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC3のずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下まで減少した状態となっている。ただし、本実施形態では、ずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下、且つ吸気管圧力PMが第2下限値PMGH以上の場合に判定用カウンタGCNT[i]の値をカウントアップするようにしている。すなわち、判定用カウンタGCNT[i]のカウントアップを第2学習領域でのみ行うようにしている。そのため、ずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下となっていても、吸気管圧力PMが第2下限値PMGH未満となっている時刻t1から時刻t2までの期間、及び時刻t3から時刻t4までの期間には、判定用カウンタGCNT[i]の値は保持されている。そして、ずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下、且つ吸気管圧力PMが第2下限値PMGH以上の状態でのカウントアップにより判定用カウンタGCNT[i]の値が学習完了判定値ιに達した時刻t5に、学習が完了したとして学習完了フラグFG[i]をセットしている。
このように本実施形態では、第2学習領域でエンジン10が運転されているときにずれ量DIの絶対値が規定の収束判定値ε以下であるか否かの判定が規定の判定周期毎に行われ、ずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下であると判定された回数が判定用カウンタGCNTの値として記録される。そして、判定用カウンタGCNTの値が、すなわちずれ量DIの絶対値が収束判定値ε以下であると判定された回数が規定の学習完了判定値ι以上となった場合に偏差量学習値DEV[i]の学習が完了したと判定している。なお、こうした偏差量学習値DEV[i]の学習の完了の有無の判定は、回転数域[i]のそれぞれにおいて個別に実施されている。
本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態のエンジン制御装置では、脈動小判定時には、第1吸気量演算処理P4によりエアフローメータ13の検出結果に基づき演算された第1吸気量MC1を吸気量演算値MCの値として演算している。これに対してエアフローメータ13の検出精度が低下する脈動大判定時には、補正後第2吸気量MC3を吸気量演算値MCの値として演算している。補正後第2吸気量MC3は、第2吸気量演算処理P5によりエアフローメータ13の検出結果を用いずに演算された第2吸気量MC2に偏差量学習値DEV[i]を加えた和として求められている。そして、脈動小判定時の第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC3のずれ量DIに応じて値の更新を行うことで偏差量学習値DEV[i]を学習している。
このように偏差量学習値DEV[i]は、脈動大判定時の吸気量演算値MCの演算に用いられる。すなわち、偏差量学習値DEV[i]が吸気量演算値MCに反映されるのは、脈動領域であるエンジン10の高負荷運転領域に限られる。一方、演算方式の違いによる第1吸気量MC1、第2吸気量MC2の偏差は、エンジン10の運転領域により異なるため、軽負荷運転領域と高負荷運転領域とでは、偏差量学習値DEV[i]の学習結果に違いが生じる可能性がある。よって、学習精度を確保するには、偏差量学習値DEV[i]の学習を高負荷運転領域でのみ行うことが望ましい。しかしながら、偏差量学習値DEV[i]の学習は、脈動小判定時に行う必要があり、高負荷運転領域だけでは学習機会が限定されてしまう。そのため、偏差量学習値DEV[i]の学習を第2学習領域だけで行うと、学習が完了する迄に要する時間が長くなりやすい。
その点、本実施形態では、偏差量学習値DEV[i]の学習完了前には、脈動領域から離れた軽負荷運転領域も含んだ第1学習領域において偏差量学習値DEV[i]の学習を行うようにしている。そのため、学習機会を確保して、学習完了迄に要する時間を短縮できる。一方、学習完了後にも、エアフローメータ13の検出特性やスロットルバルブ14の開度特性などの経時変化により、第1吸気量MC1と第2吸気量MC2との偏差量が変化する。こうした経時変化は長い時間を掛けて緩やかに進行するため、学習機会があまりなくても、偏差量学習値DEV[i]の値をその変化に追従させられる。そこで、本実施形態では、学習完了後には、第2学習領域だけで偏差量学習値DEV[i]の学習を行うようにしている。このように本実施形態では、偏差量学習値DEV[i]の学習を行うエンジン10の運転領域として、学習完了前には学習機会を確保するために広い領域を設定する一方で、学習完了後には学習精度を確保するために狭い領域を設定している。そのため、偏差量学習値DEV[i]の学習を好適に行うことができる。
上述のように演算方式の違いによる第1吸気量MC1と第2吸気量MC2との偏差量はエンジン10の運転領域により異なるため、脈動領域から離れた運転領域ではずれ量DIが十分に小さくなっていても、脈動領域に近い運転領域ではずれ量DIが未だ十分に縮小していない場合が生じうる。その点、本実施形態では、学習完了前には第1学習領域で偏差量学習値DEV[i]の学習を行う一方で、学習完了の判定は第2学習領域でのみ行っているため、学習完了迄に要する時間を短縮しながらも、学習完了の判定を精度良く行うことができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、エンジン回転数NEに応じて区分けされた5つの回転数域[i]のそれぞれにおいて個別に偏差量学習値DEV[i]の学習を行う場合を説明したが、回転数域[i]の数は適宜に変更してもよい。また、回転数域の区分けを行わず、単一の偏差量学習値を使用するようにしてもよい。
・上記実施形態では、第2吸気量演算処理P5における第2吸気量MC2の演算を、スロットル開度TA及びエンジン回転数NEに基づく吸気流量の推定値を用いた、いわゆるスロットルスピード方式により行っていた。こうした第2吸気量MC2の演算を、吸気管圧力PM及びエンジン回転数NEの検出結果に基づく吸気流量の推定値を用いた、いわゆるスピードデンシティ方式により行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、エンジン回転数NEに関わらず、第2下限値PMGHを固定した値としていた。エンジン回転数NEにより脈動領域の下限となる吸気管圧力PMが異なる場合などには、第2下限値PMGHを回転数域[i]毎に変えるようにしたり、エンジン回転数NEにより変化する値として第2下限値PMGHを設定するようにしたり、してもよい。
・上記実施形態では、第1学習領域及び第2学習領域の範囲をエンジン回転数NEと吸気管圧力PMとにより規定していたが、エンジン負荷率KLやスロットル開度TAのようなエンジン負荷に相関するパラメータを吸気管圧力PMの代わりに用いて第1学習領域及び第2学習領域の範囲を規定するようにしてもよい。
(第2実施形態)
車載等のエンジンでは、運転者の手動操作により、エンジンの制御モードの切替が行われるものがある。こうしたエンジンでは、制御モードにより、エンジンの制御内容が変わり、その結果として脈動領域が変化することがある。本実施形態では、こうした制御モードの切替を行うエンジンにおける第2学習領域の設定態様について説明する。
図12に、制御モードの切替を行うエンジン100の一例の構成を示す。同図に示すように、エンジン100は、排気の一部を吸気中に再循環する排気再循環(EGR)システムを備えている。EGRシステムは、排気通路31と吸気通路11におけるスロットルバルブ14よりも下流側の部分(例えば吸気マニホールド17)とを連通するEGR通路32を備えている。EGR通路32には、同EGR通路32を通って吸気中に再循環される排気(EGRガス)を冷却するEGRクーラ33と、EGRガスの流量を調整するための流量調整弁であるEGRバルブ34とが設けられている。また、エンジン10には、吸気弁23のバルブタイミング(開閉弁時期)を可変とする可変動弁機構35が設けられている。
同エンジン100では、運転席に設けられたスイッチの操作により、エンジン100の制御モードとして、燃費モードとパワーモードとを選択できるようになっている。燃費モードは、高負荷運転時にも大量のEGRガスを導入することで、エンジン100の燃費を向上する制御モードとなっている。これに対して、パワーモードは、高負荷運転時のEGRガスの導入量を抑えて、その分、燃焼室19に導入する空気量を増やすことで、エンジン100の最大出力を増大する制御モードとなっている。
なお、パワーモードでは、高負荷運転時に、吸気弁23の閉弁時期が吸気下死点よりも遅い時期となるように可変動弁機構35を制御している。吸気弁23の閉弁時期を吸気下死点よりも遅い時期とすると、吸気下死点から吸気弁23の閉弁までの期間に燃焼室19に導入された吸気の一部が吸気通路11に押し戻されて、その分、吸気管圧力PMが高くなる。そのため、燃費モードでは、EGRガスの大量導入に必要な吸気負圧を確保するため、高負荷運転時における吸気弁23の閉弁時期がパワーモードの場合よりも早い時期となるように可変動弁機構35を制御している。
こうしたエンジン100では、EGRバルブ34の開度や吸気弁23のバルブタイミングも吸気量を決める要素となる。そのため、このエンジン100に適用する場合の第1吸気量演算処理P4では、AFM検出吸気量GA及びエンジン回転数NEに加え、EGRバルブ34の開度及び吸気弁23のバルブタイミングにも基づいて第1吸気量MC1を演算するとよい。また、第2吸気量演算処理P5では、スロットル開度TA及びエンジン回転数NEに加え、EGRバルブ34の開度及び吸気弁23のバルブタイミングにも基づいて第2吸気量MC2を演算するとよい。
本実施形態でも、第1実施形態の場合と同様に、脈動小判定時には第1吸気量MC1に対する補正後第2吸気量MC2のずれ量DIに応じて偏差量学習値DEV[i]を学習し、脈動大判定時にはその偏差量学習値DEV[i]を用いて吸気量を演算するようにしている。また、偏差量学習値DEV[i]の学習を行う運転領域を、学習完了に応じて第1学習領域から第2学習領域に切り替えている。
なお、上述のように、第2学習領域の範囲を規定するエンジン負荷の指標値としては、吸気管圧力PMの他、エンジン負荷率KLやスロットル開度TAを用いることが可能である。ただし、上記のような制御モードの切替を行うエンジン100の場合には、第2学習領域の範囲の設定に際して、制御モードによる脈動領域の変化を考慮する必要がある。以下の説明では、吸気管圧力PM、エンジン負荷率KL、及びスロットル開度TAのいずれかをエンジン負荷の指標値とし、そのエンジン負荷の指標値とエンジン回転数NEとをそれぞれ座標軸とした直交座標系に脈動領域の範囲を描いたときの脈動領域におけるエンジン負荷の指標値の下限値とエンジン回転数NEとの関係を示す線を脈動領域境界線と記載する。また、上記直交座標系に第2学習領域の範囲を描いたときの第2学習領域における上記エンジン負荷の指標値の下限値とエンジン回転数NEとの関係を示す線を学習切替線と記載する。
ここではまず、制御モードの切替を行うエンジン100において、エンジン負荷率KLを用いて第2学習領域の範囲を規定する場合について説明する。
吸気脈動によるエアフローメータ13の検出精度の低下は、吸気弁23の開閉に応じた燃焼室19への間欠的なガス(吸気+EGRガス)の流入により生じた吸気ポート18内の圧力変動がエアフローメータ13の設置箇所まで吸気通路11を遡上することで発生する。エンジン回転数NEが同じであれば、吸気ポート18内の圧力変動は、吸気ポート18を流れるガスの流量(以下、ポート流量)が多いほど大きくなる。一方、エンジン回転数NE及びエンジン負荷率KLを一定としたときのポート流量は、EGRガスの導入量が多い分、パワーモード時よりも燃費モード時の方が多くなる。そのため、エンジン回転数NEを一定としたときの脈動領域におけるエンジン負荷率KLの下限値は、燃費モード時の方がパワーモード時よりも小さい値となる。一方、第2学習領域は、脈動領域近傍の高負荷運転領域となるように設定する必要がある。そのため、上記のような制御モードの切替を行うエンジン100において、エンジン負荷率KLを用いて第2学習領域を規定する場合には、制御モードによる脈動領域の変化に応じて、第2学習領域の範囲も制御モードにより切り替える必要がある。図13には、この場合のパワーモード時及び燃費モード時の脈動領域境界線L1,L2、それらに応じて第2学習領域を設定したときのパワーモード時及び燃費モード時の学習切替線L3,L4の設定態様の一例が示されている。
続いて、制御モードの切替を行うエンジン100において、スロットル開度TAを用いて第2学習領域の範囲を規定する場合について説明する。エンジン回転数NE及びスロットル開度TAを一定としたときのポート流量は、EGRガスの導入量が多い分、パワーモード時よりも燃費モード時の方が多くなる。よって、エンジン回転数NEを一定としたときの脈動領域におけるスロットル開度TAの下限値は、燃費モード時の方がパワーモード時よりも小さい値となる。そのため、この場合にも、制御モードによる脈動領域の変化に応じて、第2学習領域の範囲も制御モードにより切り替える必要がある。図14には、この場合のパワーモード時及び燃費モード時の脈動領域境界線L5,L6、及びそれらに応じて第2学習領域を設定したときのパワーモード時及び燃費モード時の学習切替線L7,L8の設定態様の一例が示されている。
最後に、制御モードの切替を行うエンジン100において、吸気管圧力PMを用いて第2学習領域の範囲を規定する場合について説明する。ポート流量は、エンジン回転数NEと吸気管圧力PMとによりほぼ一義的に定まるため、脈動領域の下限値となる吸気管圧力PMとエンジン回転数NEとの関係は制御モードが変わっても変化しない。そのため、この場合には、第2学習領域の範囲を制御モードにより切り替える必要はないことになる。すなわち、エンジン回転数NEと吸気管圧力PMとでエンジン100の運転領域を規定した場合には、パワーモード及び燃費モードのいずれの制御モードにおいても、脈動領域の範囲は同じとなるため、第2学習領域として共通の範囲を設定できることになる。図15には、この場合の脈動領域境界線L9、及びその脈動領域境界線L9に応じて第2学習領域を設定したときの学習切替線L10の設定態様の一例が示されている。同図に示すように、この場合には、パワーモード及び燃費モードの双方の制御モードでの脈動領域境界線L9及び学習切替線L10は、それぞれ共通となる。
10,100…エンジン、11…吸気通路、12…エアクリーナ、13…エアフローメータ、14…スロットルバルブ、15…スロットルモータ、16…スロットルセンサ、17…吸気マニホールド、18…吸気ポート、19…燃焼室、20…インジェクタ、21…点火プラグ、22…クランクシャフト、23…吸気弁、24…排気弁、25…電子制御ユニット(エンジン制御装置)、26…演算処理回路、27…メモリ、28…吸気温度センサ、29…大気圧センサ、30…クランク角センサ、31…排気通路、32…EGR通路、33…EGRクーラ、34…EGRバルブ、35…可変動弁機構、P1…吸気量演算処理、P2…噴射量決定処理、P3…インジェクタ駆動処理、P4…第1吸気量演算処理、P5…第2吸気量演算処理、P6…判定処理、P7…偏差量演算処理、P8…演算方式切替処理。

Claims (5)

  1. エンジンの吸気量を演算するとともに、同吸気量の演算値に基づき燃料噴射量を決定してインジェクタの燃料噴射制御を行うエンジン制御装置において、
    エアフローメータの吸気流量の検出値に基づいて吸気量を演算する第1吸気量演算処理と、
    前記吸気流量の検出値を用いずに、吸気管圧力の検出値、及びスロットル開度のうちのいずれか一方に基づいて前記吸気量を演算する第2吸気量演算処理と、
    前記エンジンの吸気通路内の吸気脈動が大きい状態にあるか否かを判定する判定処理と、
    前記第1吸気量演算処理による前記吸気量の演算値を第1吸気量とするとともに、前記第2吸気量演算処理による前記吸気量の演算値を第2吸気量としたとき、前記判定処理において前記吸気脈動が大きい状態にないと判定されているときに前記第1吸気量に対する前記第2吸気量の偏差量を演算する偏差量演算処理と、
    前記判定処理において前記吸気脈動が大きい状態にないと判定されているときには前記第1吸気量を前記吸気量の演算値として設定するとともに、前記判定処理において前記吸気脈動が大きい状態にあると判定されているときには前記第2吸気量に前記偏差量を加えた和である補正後第2吸気量を前記吸気量の演算値として設定する演算方式切替処理と、
    を行い、
    且つ前記偏差量演算処理では、前記第1吸気量に対する前記補正後第2吸気量のずれ量に応じて値の更新を行うことで前記偏差量の学習値である偏差量学習値を学習するとともに、前記偏差量学習値の学習完了前には前記吸気脈動が発生するエンジン運転領域である脈動領域を含む第1学習領域において前記ずれ量に応じた前記偏差量学習値の学習を行い、且つ前記偏差量学習値の学習完了後には前記脈動領域を含む領域であって前記第1学習領域よりも狭い第2学習領域において前記ずれ量に応じた前記偏差量学習値の学習を行う
    エンジン制御装置。
  2. 前記偏差量学習値、前記第1学習領域、及び前記第2学習領域は、エンジン回転数に応じて区分けされた複数の回転数域毎にそれぞれ個別に設定されており、
    且つ前記偏差量学習値の学習の完了の有無は、前記複数の回転数域のそれぞれにおいて個別に判定されている
    請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 前記偏差量学習値の学習の完了は、前記第2学習領域における前記ずれ量に基づいて判定されている
    請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
  4. 前記第2学習領域で前記エンジンが運転されているときに前記ずれ量の絶対値が規定の収束判定値以下であるか否かの判定を規定の判定周期毎に行い、
    且つ前記ずれ量の絶対値が前記収束判定値以下であると判定された回数が規定の学習完了判定値以上となった場合に前記偏差量学習値の学習が完了したと判定する
    請求項3に記載のエンジン制御装置。
  5. 前記第1学習領域は、吸気管圧力が規定の第1下限値以上の領域とされ、且つ前記第2学習領域は、前記吸気管圧力が前記第1下限値よりも高い第2下限値以上の領域とされている
    請求項1〜4の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
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