JP2020059306A - エアバッグ - Google Patents
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Abstract
【課題】より安全性の高いエアバッグを提供する。【解決手段】二重織によって形成された互いに向かい合う一対の織布12,13を有する袋体11と、一対の織布12,13同士を繋ぐ複数のテザー51,61と、を備え、袋体11は、複数本の緯糸31と、複数本の経糸32によって構成されており、テザー51は、織布12を構成する経糸32と織布13を構成する経糸32の双方に掛けられるテザー糸52を備え、テザー糸52は、緯糸31によって構成され、複数のテザー51,61は、アンカー糸が共通である複数のテザー51からなるテザー群50と、アンカー糸が共通である複数のテザー61からなるテザー群60と、を備え、テザー群50のテザー糸52が掛けられるアンカー糸と、テザー群60のテザー糸62が掛けられるアンカー糸とは、互いに異なる経糸32であることに特徴を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、エアバッグに関する。
車両用の安全装置として、エアバッグが広く用いられている。エアバッグは、車両に対して外部から所定値以上の衝撃が加えられた際に、小さく折り畳まれていた袋体が膨張展開して乗員を衝撃から保護する装置である。この種の袋体としては、ワンピースウーブン(One Piece Woven:OPW)方式によって一体的に袋織りされたものが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に示されるように、OPW方式で製造された袋体においては、一対の織布を構成する糸を用いてテザーが構成されている。このようなテザーは、一対の織布同士を繋ぐ形で設けられ、袋体が膨張した際に一対の織布の対向間隔(ひいては袋体の厚さ)を規定する機能を有している。
上記のようなテザーを備えた袋体が膨張すると、織布においてテザーと接続される箇所はテザーによって拘束されることから膨張し難く、それ以外の箇所は外側に膨出する。つまり、織布の表面には複数の凸部と凸部間に配される溝部とが形成される。袋体に乗員が接した場合、溝部を折れ線として袋体が折れ曲がる事態が想定される。より安全性の高いエアバッグを提供するためには、袋体の折れ曲がりを抑制することが好ましく、この点において改善の余地があった。
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、より安全性の高いエアバッグを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示されるエアバッグは、乗物に設けられるエアバッグであって、二重織によって形成された互いに向かい合う一対の織布を有する袋体と、前記一対の織布同士を繋ぐことで当該エアバッグの膨張時に前記一対の織布の間の距離を規制する複数のテザーと、を備え、前記袋体は、当該エアバッグの展開時において鉛直方向に沿って延びる複数本の第1糸と、当該エアバッグの展開時において水平方向に沿って延びる複数本の第2糸によって構成されており、前記テザーは、前記一対の織布のうち一方の織布を構成する前記第2糸と前記一対の織布のうち他方の織布を構成する前記第2糸の双方に掛けられるテザー糸を備え、前記テザー糸は、前記第1糸によって構成され、前記複数の前記テザーは、前記第2糸の延設方向に沿って並ぶものとされ、前記テザー糸が掛けられる前記第2糸をアンカー糸とした場合において、前記複数の前記テザーは、前記アンカー糸が共通である複数の前記テザーからなる第1テザー群と、前記第1テザー群に対して前記第2糸の延設方向の少なくとも一方側に配され、前記アンカー糸が共通である複数の前記テザーからなる第2テザー群と、を備え、前記第1テザー群の前記テザー糸が掛けられる前記アンカー糸と、前記第2テザー群の前記テザー糸が掛けられる前記アンカー糸とは、互いに異なる前記第2糸であることに特徴を有する。
アンカー糸においてテザー糸が掛けられた部分は、袋体においてその周囲よりも膨張し難い部分となる。このため、アンカー糸が共通である複数のテザーを備える場合、膨張した袋体の表面ではアンカー糸に沿って溝部(水平方向に沿う溝部)が生じる。仮にアンカー糸が共通である1種類のテザー群のみを備える構成では、テザーの配置領域の全長に亘って水平方向に延びる溝部が生じてしまい、このような溝部があると袋体は溝部において折れ曲がり易い。水平方向に沿って延びる溝部を折れ線として袋体が折れ曲がると、袋体の乗員側の面が乗員に対して傾斜することになるため、乗員の頸部に対して回転モーメントが作用する事態が懸念される。上記構成では、複数のテザーが2種類のテザー群(第1テザー群及び第2テザー群)を備え、第1テザー群のテザー糸と、第2テザー群のテザー糸とは、互いに異なるアンカー糸に掛けられている。このため、第1テザー群の配置領域で形成される溝部(第1テザー群のテザー糸が掛けられるアンカー糸に沿う溝部)と、第2テザー群の配置領域で形成される溝部(第2テザー群のテザー糸が掛けられるアンカー糸に沿う溝部)とは、水平方向に並びつつ鉛直方向の位置は異なるものとなる。つまり、上記構成によれば、アンカー糸が異なる2種類のテザー群を備えることで、1種類のテザー群のみを備える構成と比べて、比較的短い溝部が形成されることになるため、溝部を折れ線として袋体が折れ曲げる事態を抑制することができ、より安全性の高いエアバッグを提供することができる。
また、前記袋体の内部に収容されたインナーチューブを備え、前記インナーチューブは、前記アンカー糸の延設方向に沿って延びる筒状部を有するものとすることができる。袋体においてインナーチューブが収容される箇所では、テザーを配置することができないため、テザーはインナーチューブの周囲に配されることになる。また、膨張した袋体の表面においてアンカー糸に沿って溝部が生じた場合、袋体において溝部の端部となる箇所は、応力が集中し易い応力集中部となる。仮に溝部の延設方向(アンカー糸の延設方向)と筒状部の延設方向とが直交している場合には、より多くの上記応力集中部が筒状部の周辺に配されることになり、ガスがインナーチューブを介して袋体に供給された際の圧力が応力集中部に作用し易くなる。応力集中部に圧力が作用すると、その部分においてガス漏れが発生し易くなるから、ガス漏れを抑制するための対策(例えば袋体の表面に塗布するシリコーン膜の厚みを他の箇所よりも増やすなど)を講じる必要が生じ、コストが増加してしまう。上記構成のように、アンカー糸の延設方向と筒状部の延設方向とを同じ方向に設定することで、筒状部の周辺に配される上記応力集中部の個数を減らすことができ、好適である。
本発明によれば、より安全性の高いエアバッグを提供することができる。
本発明の一実施形態を図1から図8によって説明する。本実施形態ではエアバッグ10として、車両用のカーテンシールドエアバッグ装置に利用されるカーテンシールドエアバッグを例示する。図1は、本実施形態のエアバッグ10が平面状に展開された状態を示す図である。図1の左側が車両前方であり、右側が車両後方である。エアバッグ10は、車両に設けられ、図1に示すように、車両前後方向に沿って長い略矩形状をなしている。エアバッグ10は、車両に対して外部から所定値以上の衝撃が加えられた際に、インフレーター21からガスが供給されることにより、車室側部に沿って膨張展開し、車両のサイドウインドガラスやセンターピラー(Bピラー)を覆いつつ、乗員を保護する。なお、エアバッグ10は、通常時には、長手方向(車両前後方向)に沿って細長く延びた形となるように折り畳まれた状態で、車室側部の上端部にあるルーフサイド部(図示せず)にインフレーター21と共に収納される。なお、各図においては、車両前後方向をY軸方向とし、車幅方向(車室内外方向)をX軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向としている。
エアバッグ10は、袋体11と、インナーチューブ18と、を備える。袋体11は、OPWと略称されるワンピースウーブン(One Piece Woven)方式によって製造される織物からなる。OPW方式では、二枚の布を同時に製織(二重織)すると共に、必要な箇所を一重織とすることで、無縫製の袋体11が形成される。具体的には、袋体11は、図1及び図2に示すように、互いに向かい合う形で配された一対の織布12,13と、織布12,13の周りを取り囲む一重織部14と、を有する。織布12,13は、二重織によって形成された二重織部である。一重織部14は、袋体11の周端部に沿って配され、一重織によって形成されている。また、袋体11の各表面(両面)には、それぞれ公知の手法により、シリコーン膜(図示せず)が形成されている。
袋体11は、図1に示すように、車両前後方向に沿って延びた略矩形状の本体部15と、この本体部15の上端から上方に延びる延設部16と、を備える。インナーチューブ18は、布製の筒状部材であり、袋体11の内部に収容されている。インナーチューブ18は、車両前方(図1では左側)に向かうにつれて下降傾斜する入口側筒状部19と、車両前後方向に沿って延びる出口側筒状部20(アンカー糸の延設方向に沿って延びる筒状部)と、を有する。入口側筒状部19は、延設部16内に収容され、出口側筒状部20は、本体部15内において延設部16と隣接する箇所に収容されている。入口側筒状部19は、その下端部において出口側筒状部20の中央部と接続されている。入口側筒状部19内には、インフレーター21の一端部が収容されている。
エアバッグ10作動時には、インフレーター21から供給されたガスが、入口側筒状部19を通って、出口側筒状部20に向かい、出口側筒状部20の両端部から本体部15に供給されることで袋体11が膨張する。つまり、インナーチューブ18は、インフレーター21から供給されたガスを車両前後方向に分配する機能を有している。なお、一重織部14は、エアバッグ10において膨張部(一対の織布12,13)と非膨張部17との境界部分となっている。
織物である袋体11は、複数本の緯糸31(第1糸)と、複数本の経糸32(第2糸)によって構成されている。緯糸31は、エアバッグ10の展開時(図1参照)において鉛直方向に沿って延びる糸であり、経糸32は、エアバッグ10の展開時(図1参照)において車両前後方向(水平方向)に沿って延びる糸である。言い換えると、緯糸31は、袋体11の短辺方向に沿って延びる糸であり、経糸32は、袋体11の長辺方向に沿って延びる糸である。つまり、本実施形態では、緯糸31は、Z軸方向に沿って延びる糸であり、Y軸方向に沿って複数本並ぶ形で配されている。一方、経糸32は、Y軸方向に沿って延びる糸であり、Z軸方向に沿って複数本並ぶ形で配されている。なお、図1では、緯糸31のうち、テザー糸(後述)を構成する部分を破線で示しており、経糸32のうち、アンカー糸(後述)を構成する部分を2点鎖線で示している。
本実施形態のエアバッグ10においては、緯糸31は、車両前後方向に沿って複数本並んでおり、経糸32が鉛直方向(上下方向)に沿って複数本並んでいる。そして、エアバッグ10は、2種類のテザー51,61を備える。テザー51,61は、袋体11の内部(一対の織布12,13の間)に配され、一対の織布12,13同士を繋ぐことで、エアバッグ10の膨張時に一対の織布12,13の間の距離を規制する機能を有している。図1に示すように、複数のテザー51,61は、袋体11の長辺方向(経糸32の延設方向)に沿って並ぶものとされる。なお、テザー51,61の形成範囲は適宜設定可能であるが、袋体11内部においてインナーチューブ18が収容される部分S1にはテザー51,61が設けられておらず、インナーチューブ18とテザー51,61とが干渉しないようになっており、テザー51,61は、インナーチューブ18の周辺に配されている。
図3及び図4に示すように、本実施形態のテザー(テザー51又はテザー61)は、一対のテザー糸(例えばテザー糸52,53)を備える。テザー糸は、織布12(一対の織布のうち一方の織布)を構成する経糸32(第2糸)と、織布13(一対の織布のうち他方の織布)を構成する経糸32(第2糸)の双方に掛けられており、緯糸31によって構成されている。以下の説明では、テザーを構成する緯糸31をテザー糸と呼び、テザー糸が掛けられる経糸32をアンカー糸と呼ぶ。
本実施形態では、図1に示すように、テザーが2つのグループ(テザー群)に区分されている。具体的には、複数のテザー51,61は、アンカー糸が共通である複数のテザー51(第1テザー)からなるテザー群50(第1テザー群)と、アンカー糸が共通である複数のテザー61(第2テザー)からなるテザー群60(第2テザー群)と、を備える。テザー群50とテザー群60とは、経糸32の延設方向において交互に並ぶものとされる。つまり、テザー群60は、テザー群50に対してY軸方向の少なくとも一方側に配されている。
テザー51は、一対のテザー糸52,53を備える。テザー糸52は、図3に示すように、ジグザク状をなしており、織布12側のアンカー糸52Aと、織布13側のアンカー糸52Bに交互に掛けられている。テザー糸53は、図3に示すように、ジグザク状をなしており、織布12側のアンカー糸53Aと、織布13側のアンカー糸53Bに交互に掛けられている。図1に示すように、テザー群50において、テザー糸52とテザー糸53とはY軸方向について交互に並ぶ形で配されている。
テザー61は、一対のテザー糸62,63を備える。テザー糸62は、図3に示すように、ジグザク状をなしており、織布12側のアンカー糸62Aと、織布13側のアンカー糸62Bに交互に掛けられている。テザー糸63は、図3に示すように、ジグザク状をなしており、織布12側のアンカー糸63Aと、織布13側のアンカー糸63Bに交互に掛けられている。図1に示すように、テザー群60において、テザー糸62とテザー糸63とはY軸方向について交互に並ぶ形で配されている。
このように、テザー群50のテザー糸52,53が掛けられるアンカー糸と、テザー群60のテザー糸62,63が掛けられるアンカー糸とは、互いに異なる糸(経糸32)となっている。なお、図1は、エアバッグ10を車室内側から視た図であり、アンカー糸については、一対の織布12,13のうち、車室内側に配される織布12側のアンカー糸について図示しており、織布13側のアンカー糸については図示省略している。なお、織布12の表面は、乗員と対向する対向面である。本実施形態では、図3に示すように、Z軸方向において、隣り合うアンカー糸62A,63Aの中心にアンカー糸52A(又はアンカー糸53A)が配されている。また、Z軸方向において、隣り合うアンカー糸62B,63Bの中心にアンカー糸52B(又はアンカー糸53B)が配されている。つまり、テザー51とテザー61とは50%重なりつつ、Z軸方向について位置がずれている。
各テザー糸52,53,62,63は、袋体11の膨張時においてV字状をなす一対の延設部71,72を有しており、一対の延設部71,72がZ軸方向に並ぶことで、全体としてジグザク状をなしている。延設部71は、図3の右側に向かうにつれて下降傾斜するように延びており、織布12のアンカー糸から織布13のアンカー糸まで延びている。延設部72は、図3の左側に向かうにつれて下降傾斜するように延びており、織布12のアンカー糸から織布13のアンカー糸まで延びている。
また、一対のテザー糸52,53は、袋体11の厚さ方向(図3の上下方向)について対称となるように配されている。つまり、一対のテザー糸52,53においては、図3に示すように、経糸32の延設方向における一方側から視た場合において、一方のテザー糸の延設部71と他方のテザー糸の延設部72とが直交することでX字状をなしている。これと同様に、一対のテザー糸62,63も、袋体11の厚さ方向(図3の上下方向)について対称となるように配されている。つまり、一対のテザー糸62,63においては、図3に示すように、経糸32の延設方向における一方側から視た場合において、一方のテザー糸の延設部71と他方のテザー糸の延設部72とが交差することでX字状をなしている。
なお、袋体11の膨張時においては、アンカー糸がテザー糸によって拘束されることから、織布12,13においては隣り合うアンカー糸の間に配される部分が膨出し、凸部22となる。言い換えると、袋体11の膨張時には、織布12,13においてアンカー糸に対応する部分は、溝部55,65となる。なお、図5に示すように、溝部55は、テザー群50によって形成される溝部であり、溝部65は、テザー群60によって形成される溝部である。なお、図3においては、テザー群50に係るアンカー糸を白丸で示しており、テザー群60に係るアンカー糸を黒丸で示している。
次に本実施形態の効果について説明する。袋体11の膨張時(図3参照)には、アンカー糸においてテザー糸が掛けられた部分は、袋体11においてその周囲よりも膨張し難い部分となる。このため、本実施形態のように、アンカー糸が共通である複数のテザーを備える場合、図5に示すように、膨張した袋体11の表面ではアンカー糸に沿って溝部55,65(水平方向に沿う溝部)が生じる。
図6に示す比較例のエアバッグ3のように、仮にアンカー糸が共通である1種類のテザー群(例えばテザー群50)のみを備える構成では、テザー51の配置領域の全長に亘って水平方向に延びる溝部42が生じてしまい、このような溝部42があると袋体11は溝部42において折れ曲がり易い。図7に示すように、エアバッグ3作動時に水平方向に沿って延びる溝部42を折れ線として袋体11が折れ曲がると、袋体11における乗員側の面が乗員8に対して傾斜することになるため、乗員8の頸部に対して回転モーメントが作用する事態が懸念される。
これに対して、本実施形態では、図1に示すように、2種類のテザー群(テザー群50及びテザー群60)を備え、テザー群50のテザー糸52,53と、テザー群60のテザー糸62,63とは、互いに異なるアンカー糸に掛けられている。このため、図5に示すように、テザー群50の配置領域で形成される溝部55(第1テザー群のテザー糸が掛けられるアンカー糸に沿う溝部)と、テザー群60の配置領域で形成される溝部65(第2テザー群のテザー糸が掛けられるアンカー糸に沿う溝部)とは、Y軸方向(水平方向)に並びつつ鉛直方向の位置は異なるものとなる。つまり、上記構成によれば、アンカー糸が異なる2種類のテザー群50,60を備えることで、1種類のテザー群のみを備える構成と比べて、比較的短い溝部が形成されることになるため、溝部を折れ線として袋体が折れ曲げる事態を抑制することができ、より安全性の高いエアバッグを提供することができる。
また、本実施形態では、袋体11の内部に収容されたインナーチューブ18を備え、インナーチューブ18は、経糸32(ひいてはアンカー糸)の延設方向に沿って延びる出口側筒状部20を有する。袋体11においてインナーチューブ18が収容される箇所では、テザー51,61を配置することができないため、テザー51,61はインナーチューブ18の周囲に配されることになる。また、膨張した袋体11の表面においてアンカー糸に沿って溝部55,65が生じた場合、袋体11において溝部55,65の端部(テザー糸がアンカー糸に掛かっている部分)となる箇所は、応力が集中し易い応力集中部P1(図5参照)となる。なぜなら、溝部55,65の中央部では、その両側にテザー糸が配されるが、溝部55,65の端部では、片側のみにしかテザー糸が隣接しないためである。
図8に示す比較例のエアバッグ4に示すように、テザー糸5が経糸32によって構成されている場合には、アンカー糸6は緯糸となるから、鉛直方向に沿って延びることになる。つまり、アンカー糸6(ひいてはアンカー糸に沿う溝部7)の延設方向(Z軸方向)が出口側筒状部20の延設方向(Y軸方向)と直交する。溝部7の延設方向(アンカー糸6の延設方向)と出口側筒状部20の延設方向とが直交している場合には、より多くの上記応力集中部P1(溝部7の端部)が出口側筒状部20の周辺に配されることになり、ガスがインナーチューブ18を介して袋体11に供給された際の圧力が応力集中部P1に作用し易くなる。
応力集中部P1に圧力が作用すると、その部分においてガス漏れが発生し易くなるから、ガス漏れを抑制するための対策(例えば袋体11の表面に塗布するシリコーン膜の厚みを他の箇所よりも増やすなど)を講じる必要が生じ、コストが増加してしまう。本実施形態のように、アンカー糸の延設方向(ひいては溝部55,65の延設方向)と出口側筒状部20の延設方向とを同じ方向に設定することで、図5に示すように、出口側筒状部20の周辺に配される上記応力集中部P1(溝部55又は溝部65の各端部)の個数を図8の比較例と比べて減らすことができ、好適である。
なお、緯糸の織密度が増加すると、筬打ちに必要な力が増えることが懸念される。このため、テザー糸として用いる緯糸については、経糸に対する交錯数を少なくすることで、筬打ちに必要な力が増える事態を抑制することが好ましい。
また、本実施形態では、テザーが袋体11の厚さ方向について対称となる一対のテザー糸によって構成されている。このような構成とすれば、袋体11の膨張時において織布12と織布13の膨出の態様(すなわち袋体11の表裏面の態様)をより近いものとすることができる。この結果、エアバッグ10を車両に設置する際には織布12及び織布13のいずれを車室内側に向けて配してもエアバッグ10の性能はほぼ同じとなる。つまり、1つのエアバッグ10を、例えば車両の右側用のエアバッグ又は左側用のエアバッグとしてそれぞれ用いることができ、好適である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、テザー51が一対のテザー糸52,53を備える構成を例示したが、これに限定されない。例えば、テザーが一対のテザー糸52,53のうちいずれか一方のテザー糸のみを備えていてもよい。
(2)上記実施形態では、エアバッグとして、車両に設けられたカーテンシールドエアバッグを例示したが、これに限定されない。エアバッグの種類は適宜変更可能である。また、車両以外の乗物用のエアバッグに適用することも可能である。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、テザー51が一対のテザー糸52,53を備える構成を例示したが、これに限定されない。例えば、テザーが一対のテザー糸52,53のうちいずれか一方のテザー糸のみを備えていてもよい。
(2)上記実施形態では、エアバッグとして、車両に設けられたカーテンシールドエアバッグを例示したが、これに限定されない。エアバッグの種類は適宜変更可能である。また、車両以外の乗物用のエアバッグに適用することも可能である。
10…エアバッグ、11…袋体、12…織布(一対の織布のうち一方の織布)、13…織布(一対の織布のうち他方の織布)、18…インナーチューブ、20…出口側筒状部(アンカー糸の延設方向に沿って延びる筒状部)、31…緯糸(第1糸)、32…経糸(第2糸)、50…テザー群(第1テザー群)、51…テザー(第1テザー群のテザー)、52,53…テザー糸(第1テザー群のテザー糸)、52A,52B,53A,53B…アンカー糸(第1テザー群のテザー糸が掛けられるアンカー糸)、60…テザー群(第2テザー群)、61…テザー(第2テザー群のテザー)、62,63…テザー糸(第2テザー群のテザー糸)、62A,62B,63A,63B…アンカー糸(第2テザー群の前記テザー糸が掛けられる前記アンカー糸)
Claims (2)
- 乗物に設けられるエアバッグであって、
二重織によって形成された互いに向かい合う一対の織布を有する袋体と、
前記一対の織布同士を繋ぐことで当該エアバッグの膨張時に前記一対の織布の間の距離を規制する複数のテザーと、を備え、
前記袋体は、当該エアバッグの展開時において鉛直方向に沿って延びる複数本の第1糸と、当該エアバッグの展開時において水平方向に沿って延びる複数本の第2糸によって構成されており、
前記テザーは、前記一対の織布のうち一方の織布を構成する前記第2糸と前記一対の織布のうち他方の織布を構成する前記第2糸の双方に掛けられるテザー糸を備え、
前記テザー糸は、前記第1糸によって構成され、
前記複数の前記テザーは、前記第2糸の延設方向に沿って並ぶものとされ、
前記テザー糸が掛けられる前記第2糸をアンカー糸とした場合において、前記複数の前記テザーは、
前記アンカー糸が共通である複数の前記テザーからなる第1テザー群と、
前記第1テザー群に対して前記第2糸の延設方向の少なくとも一方側に配され、前記アンカー糸が共通である複数の前記テザーからなる第2テザー群と、を備え、
前記第1テザー群の前記テザー糸が掛けられる前記アンカー糸と、前記第2テザー群の前記テザー糸が掛けられる前記アンカー糸とは、互いに異なる前記第2糸であるエアバッグ。 - 前記袋体の内部に収容されたインナーチューブを備え、
前記インナーチューブは、前記アンカー糸の延設方向に沿って延びる筒状部を有する請求項1に記載のエアバッグ。
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