JP2014113989A - エアバッグ - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間で膨張・展開するための気密性及び強度を維持しながら、内圧を逃がすことができるエアバッグを提供する。
【解決手段】気体の流入により膨張する袋部11を備えたエアバッグ10であって、袋部11は、2層の織物層12(12a及び12b)が、互いに離間可能に重ねられているとともに、その周囲を閉部13により囲まれており、袋部11の織物層12では、閉部13から所定距離だけ離れた位置の離隔領域14の織り組織が、その周囲15の織り組織よりも、通気度が高くなる織り組織とされている。
【選択図】図8

Description

本発明は、エアバッグに関し、更に詳しくは、膨張して保護対象への衝撃を緩和するためのエアバッグに関する。
近年、エアバッグは様々な用途に用いられている。例えば、車両に備え付けられ、車両の衝突時に展開することにより、乗員を保護する目的で利用されている。また、救命ジャケット、救命ボート、マット、ホームエレベーターでも利用されている。
このようなエアバッグでは、膨張された袋部を衝撃吸収に利用するために、袋部を短時間に膨張させる必要があり、高い圧力で気体を流入させている。このため、袋部の端縁には強度と気密性とが必要とされる。この気密性を高めるために、袋部の端縁の組織を工夫したエアバッグとして下記特許文献1が知られている。
特開2003−267176号公報
これに対して、衝突時に瞬時に、膨張・展開できる気密性及び強度を有しながら、必要に応じて展開時及び/又は展開後に内圧を逃がすことができる特性が求められつつある。即ち、短時間で膨張・展開するための気密性及び強度を維持しながら、エアバッグが保護対象と衝突する際の衝撃を緩和できる内圧制御性が求められている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、短時間で膨張・展開するための気密性及び強度を維持しながら、内圧を逃がすことができるエアバッグを提供することを目的とする。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載のエアバッグは、気体の流入により膨張する袋部を備えたエアバッグであって、
前記袋部は、2層の織物層が、互いに離間可能に重ねられているとともに、その周囲を閉部により囲まれており、
前記袋部の前記織物層では、前記閉部から所定距離だけ離れた位置の離隔領域の織り組織が、その領域の織り組織よりも、通気度が高くなる織り組織とされていることを要旨とする。
請求項2に記載のエアバッグは、請求項1に記載のエアバッグにおいて、本エアバッグは、袋織によって製織されており、
前記袋部及び前記閉部は、共通する経糸及び緯糸を用いて一体に織られていることを要旨とする。
請求項3に記載のエアバッグは、請求項1又は2に記載のエアバッグにおいて、本エアバッグは、ロール状に巻かれた状態で車両に設置され、その巻き始めに近い位置に前記離隔領域が設けられることを要旨とする。
請求項4に記載のエアバッグは、請求項1又は2に記載のエアバッグにおいて、本エアバックは、ジャバラ状に折り畳まれた状態で車両に設置され、気体流入口から離れた先端側のヒダに前記離隔領域が設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載のエアバッグは、請求項1乃至4のうちのいずれかに記載のエアバッグにおいて、前記離隔領域の外周は、角のない曲線により形成されていることを要旨とする。
請求項6に記載のエアバッグは、請求項1乃至5のうちのいずれかに記載のエアバッグがカーテンシールドエアバッグであることを要旨とする。
本発明のエアバッグによれば、短時間で膨張して展開するための気密性及び強度を維持しながら、通気度が高くなる織り組織とされている離隔領域から内圧を逃がすことができる。これにより、エアバッグが保護対象と衝突する際の衝撃を緩和できる。
エアバッグが、袋織によって製織されており、袋部及び閉部が、共通する経糸及び緯糸を用いて一体に織られている場合には、2枚の生地を重ねて縫製したエアバッグに比べて折り畳んだ際の体積を小さくできる。また、部品点数を少なくできるからコスト的に有利である。
エアバッグがロール状に巻かれた状態で車両に設置され、その巻き始めに近い位置に通気度が高くされた離隔領域が設けられる場合には、以下の作用効果を奏する。即ち、ロール状に巻かれた状態で車両に設置されるエアバッグは、まず、巻き終わりの部分が先に膨張し、徐々に巻き始めの部分が膨張するように展開していく。このエアバックでは、巻き終わりの部分が膨張する展開の初期段階では、巻き始めに近い位置は、巻かれた未展開の状態となっている。従って、通気度が高くされている離隔領域も未展開の状態であるから、ここからは気体が漏れにくい。よって、初期段階では、展開速度を保つことができる。そして、巻き始めに近い位置が展開される際には、通気度が高くなる織り組織とされている離隔領域から内圧を逃がすことができる。このように、エアバッグが保護対象と衝突する際の衝撃を緩和しつつ、展開速度も保つことができる。
エアバッグがジャバラ状に折り畳まれた状態で車両に設置され、気体流入口から離れた先端側のヒダに通気度が高くされた離隔領域が設けられる場合には、以下の作用効果を奏する。即ち、ジャバラ状に折り畳まれた状態で車両に設置されるエアバッグは、まず、気体流入口側のヒダが先に膨張し、徐々に気体流入口から離れたヒダ、即ち、先端側のヒダが膨張するように展開していく。このエアバックでは、気体流入口側のヒダが膨張する展開の初期段階では、先端側のヒダは折り畳まれた未展開の状態となっている。従って、通気度が高くされている離隔領域も未展開の状態であるから、ここからは気体が漏れにくい。よって、初期段階では、展開速度を保つことができる。そして、先端側のヒダが展開される際には、離隔領域が形成されたヒダも展開されて、この離隔領域から内圧を逃がすことができる。このように、エアバッグが保護対象と衝突する際の衝撃を緩和しつつ、展開速度も保つことができる。
通気度が高くされた離隔領域の外周が、角のない曲線により形成されている場合には、以下の作用効果を奏する。離隔領域の外周が、角のある形態であると、この角部に過度の応力が集中するおそれがある。この発明では、離隔領域の外周が、角のない曲線により形成されているので、応力集中が緩和される。
カーテンシールドエアバッグの場合に、本発明の構成を採用すると、エアバッグと側頭部との衝撃を緩和することができ、効果的である。
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部位を示す。
本エアバッグの組織の一例を示す説明図である。 本エアバッグの組織の他例を示す説明図である。 本エアバッグの断面の一例を示す説明図である。 本エアバッグの断面の他例を示す説明図である。 本エアバッグの断面の他例を示す説明図である。 本エアバッグの一例における断面及び組織を示す説明図である。 本エアバッグの他例における断面及び組織を示す説明図である。 本エアバッグの一例の平面形態を示す説明図である。 本エアバッグがロール状に巻かれた状態である場合における離隔領域の作用を説明する説明図である。 本エアバッグがジャバラ状に折り畳まれた状態である場合における離隔領域の作用を説明する説明図である。 実施例で用いたエアバッグの平面形態を示す説明図である。 実施例で用いたエアバッグの平面形態を示す説明図である。 実施例及び比較例の各エアバッグの内圧と気体リーク量との相関を示すグラフである。
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
本発明のエアバッグ(10)は、気体の流入により膨張する袋部(11)を備えたエアバッグである。この袋部(11)は、2層の織物層(12、12a及び12b)が、互いに離間可能に重ねられているとともに、その周囲を閉部(13)により囲まれている。
更に、袋部(11)の織物層(12)では、閉部(13)から所定距離だけ離れた位置の離隔領域(14)の織り組織(以下、単に「織組織」という)が、その周囲(15)の織組織よりも、通気度が高くなる織組織とされている。
即ち、本発明のエアバッグ(10)は、閉部(13)から所定距離だけ離れた位置に、その周囲(15)により通気度が高くなるように織られた離間領域(14)を有する。この離間領域(14)を有することにより、袋部(11)を膨張させながら、流入された気体の一部を袋部(11)外へリークできる。これにより、エアバッグ(10)の内圧を下げることができる。更に、離間領域(14)が、閉部(13)から所定距離だけ離れて配置されていることにより、離間領域(14)が閉部(13)に隣接して配置される場合に比べてリーク量を軽減できる。
離間領域(14)は、閉部(13)から離れて配置されていればよいが、通常、少なくとも5mm以上離間されている。閉部(13)から5mm以上離間して離間領域(14)を配置することで、閉部(13)近傍から気体がリークしようとすることによる織糸の目開きすることを抑制して、リーク量を軽減できる。この距離は5〜200mmが好ましく、5〜100mmがより好ましい。また、通常、上記の離間距離は織糸の本数にして15本以上である。
離間領域(14)は、その周囲(15)に比べて通気度が高くなるように織られていればよい。即ち、離間領域(14)を構成する織組織は、その周囲(15)の織組織よりも粗い織組織であればよい。離間領域(14)における具体的な織組織は特に限定されないが、例えば、平織り、綾織り、朱子織り、及びこれらの組合せによる織組織などを採用できる。ここで、織組織Bが織組織Aよりも通気度が高く織られているとは、例えば、下記〈1〉〜〈3〉の態様が例示される。
〈1〉織組織Aが1/1平織組織であって、織組織Bが1/1平織組織以外の織組織である場合。具体的には、織組織Bが、2/2平織組織(図1参照)、3/3平織組織(図2参照)、4/4平織組織、2/1綾織組織、2/2綾織組織、2/3綾織組織、3/3綾織組織、3/4綾織組織、4/4綾織組織等の組織である場合が挙げられる。
〈2〉織組織Aが2/1綾織組織であって、織組織Bが、1/1平織組織及び2/1綾織組織以外の織組織である場合。具体的には、織組織Bが、2/2平織組織、3/3平織組織、4/4平織組織、2/2綾織組織、2/3綾織組織、3/3綾織組織、3/4綾織組織、4/4綾織組織等の織組織である場合が挙げられる。
〈3〉織組織Aが2/2平織組織であって、織組織Bが、1/1平織組織、2/1綾織組織、2/2綾織組織、及び2/2平織組織以外の織組織である場合。具体的には、織組織Bが、3/3平織組織、4/4平織組織、2/3綾織組織、3/3綾織組織、3/4綾織組織、4/4綾織組織等の織組織である場合が挙げられる。
本エアバッグ(10)では、周囲(15)の織組織が1/1組織(1/1平織組織)である場合に、離間領域(14)の織組織として2/2組織を選択できる。この2/2組織としては、2/2平織組織及び2/2綾織組織のうちの少なくとも一方を選択できる。なかでも、特に2/2平織組織を選択できる(図1参照)。
本エアバッグ(10)では、2層の織物層(12、12a及び12b)のうちのいずれか一方の織物層のみが離間領域(14)を備えてもよく、両方の織物層が離間領域(14)を備えてもよい。即ち、織物層(12a)のみが離間領域(14a)、即ち、周囲15aよりも通気度が高い織組織の領域を備えてもよい。また、織物層(12b)のみが離間領域(14b)、即ち、周囲(15b)よりも通気度が高い織組織の領域を備えてもよい。更には、織物層(12a)が離間領域(14a)を備え且つ織物層(12b)が離間領域(14b)を備えてもよい(図5参照)。
離間領域(14)の大きさは特に限定されず、袋部(11)の大きさ及び袋部(11)からリークさせる気体量等に応じて適宜設定される。例えば、袋部(11)の平面積全体(表裏の合計面積)を100%とした場合に、離間領域(14)の合計面積(表裏に存在する離間領域の合計面積)は5〜80%とすることができる。この面積割合は、更には10〜60%であることが好ましく、15〜40%がより好ましい。
また、本エアバッグ(10)が、気体を袋部(11)へ流入させるための気体流入口(20)を備える場合には、離間領域(14)は気体流入口(20)から離れた位置に設けられることが好ましい。即ち、袋部(11)内で気体がたどる流路の下流側に位置されることが好ましい。離間領域(14)が流路の下流側に位置されることで、膨張の前半では気体がリークされず、流入気体を袋部(11)の膨張の目的のみに効率よく利用できる。このため、エアバッグ(10)の展開・膨張の時間は、短く維持しながら衝撃緩衝前に気体をリークさせることができる。このため、袋部(11)が最大に膨張した状態で衝撃緩衝されるのに比べて、より高い緩衝作用を得ることができる。
特に、本エアバッグ(10)が、図9に例示されるように、ロール状に巻かれた状態で車両に設置される場合、その巻き始めに近い位置(21)に離間領域(14)が設けられることが好ましい。このような構成では、エアバッグ(10)は、気体を流入させることができるように気体流入口(20)から離れた位置から巻き始めることができる{図9(a)参照}。そして、膨張される際は、気体流入口(20)から気体が流入されて、巻き終わりの部分(22)が先に膨張し、徐々に巻き始めの部分(21)へ向かって膨張が進行されるとともに、エアバッグ(10)の展開が進む{図9(b)参照}。そして、巻き始めに近い位置(21){図9(c)参照}まで展開が進むと、気体が離隔領域(14)に達し、離間領域(14)から袋部(11)外へとリークされて、内圧を逃がすことができる。このようにして、エアバッグ(10)の展開速度を高く維持しながら、保護対象との衝突前にエアバッグ(10)の最大膨張の状態よりも内圧を低下させた状態を得ることができる。即ち、展開速度を落とすことなく、より高い緩衝作用を得られる。
本エアバッグ(10)が、ロール状に巻かれた状態で車両に設置される場合であって、その巻き始めに近い位置(21)に離間領域(14)を設ける場合、その離間領域(14)の具体的な位置は特に限定されない。この場合、例えば、前述のように、閉部(13)よりも離間領域(14)は5mm以上離間されていることが好ましく、5〜200mmがより好ましく、5〜100mmが更に好ましい{例えば、図3参照}。更に、1つの離間領域(14)(複数の離間領域が存在する場合には、その個々の離間領域)のうちで最も気体流入口(20)から近い位置は300mm以上の距離が維持されていることが好ましい。この距離は100〜300mmが好ましく、200〜300mmがより好ましい。
更に、本エアバッグ(10)が、図10に例示されるように、ジャバラ状に折り畳まれた状態で車両に設置される場合、気体流入口(20)から離れた先端側(24){即ち、図10における端部層(16)の側}のヒダ(23)に離隔領域(14)が設けられることが好ましい{図10(a)参照}。このような構成のエアバッグが膨張される際は、気体流入口(20)から気体が流入されて、気体流入口(20)に近い部分(25)が先に膨張し、徐々に気体流入口(20)から離れた先端側(24)へ向かって膨張が進行されるとともに、エアバッグ(10)の展開が進む{図10(b)参照}。即ち、気体流入口(20)側のヒダ(23)が先に膨張し、徐々に気体流入口から離れたヒダ(23)が膨張するように展開が進む。そして、離間領域(14)が形成されたヒダ(23)が展開されると、離隔領域(14)に達した気体は、この離間領域(14)から外へとリークされ、内圧を逃がすことができる。このようにして、エアバッグ(10)の展開速度を高く維持しながら、保護対象との衝突前にエアバッグ(10)の最大膨張の状態よりも内圧を低下させた状態を得ることができる。即ち、展開速度を落とすことなく、より高い緩衝作用を得られる。
本エアバッグ(10)が、ジャバラ状に折り畳まれた状態で車両に設置される場合であって、気体流入口(20)から離れた先端側(24)のヒダ(23)に離隔領域(14)を設ける場合、離間領域(14)の具体的な位置は特に限定されない。例えば、閉部(13)からの離間領域(14)の離間距離、及び、1つの離間領域(14)のうちで最も気体流入口(20)から近い位置等については、前述のロール状に巻かれた状態で車両に設置されるエアバッグ(10)と同様とすることができる。
更に、離間領域(14)は、角のない曲線により形成されていることが好ましい。これにより離間領域(14)への応力集中を緩和できる。即ち、袋部(11)内の気体は、周囲より通気度が高く織られた離間領域(14)から多くリークされるが、この際の応力集中を緩和でき、生地の破損を防止できる。
また、本エアバッグ(10)を構成する2層の織物層(12)は、別体の生地{第1の織物層(12a)及び第2の織物層(12b)}を用いて形成することができる。別体の生地を用いたエアバッグとは、離間可能に配置された第1の織物層(12a)及び第2の織物層(12b)によって形成された袋部(11)と、その袋部(11)の端縁を縫製又は接着等の方法によって閉じた閉部(13)と、を有するエアバッグ(10)が挙げられる(図5参照)。
また、本エアバッグ(10)は、袋織によって製織され、袋部(11)及び閉部(13)に共通した経糸W及び緯糸Wを用いて一体に織られたエアバッグ(10)とすることができる(図3及び図4参照)。
これらのうちでは、後者が好ましい。即ち、袋部(11)と閉部(13)とが一体に織られた袋織のエアバッグ(10)(即ち、袋織エアバッグ)が好ましい。
また、閉部(13)は、袋部(11)の周囲を囲んで配置されている。そして、閉部(13)は、袋部(11)に流入された気体の漏出を抑制することができる。
閉部(13)としては、図5に示すように、〈1〉第1の織物層(12a)と、第2の織物層(12b)と、を閉部(13)で縫合又は接着した態様が挙げられる。
また、図3に示すように、〈2〉第1の織物層(12a)の構成糸(経糸及び/又は緯糸)と、第2の織物層(12b)の構成糸(経糸及び/又は緯糸)と、を一層の端部層(16)として織り込んだ態様が挙げられる。
更に、図4に示すように、〈3〉第1の織物層(12a)の構成糸(経糸及び/又は緯糸)と、第2の織物層(12b)の構成糸(経糸及び/又は緯糸)と、を上下に交差させて閉部(13)を形成した態様が挙げられる。この態様では、更に、第2の織物層(12b)が反転された第1の延接層(17a)を形成し、第1の織物層(12a)が反転された第2の延接層(17b)を形成して、第1の延接層(17a)と第2の延接層(17b)とが離間可能に織られた延接部(17)を形成した態様とすることができる。
上記〈1〉−〈3〉の態様では、〈2〉及び〈3〉の態様が好ましく、更には、〈3〉の態様が特に好ましい。〈3〉の態様は、〈2〉の態様に比べて、閉部(13)に緩衝作用を付与できる。即ち、袋部(11)及び延接部(17)の経糸が互いに交差された閉部(13)では、この交差された経糸同士が経糸方向へずれることができる。そのため、閉部(13)に加わる衝撃を緩和することができる。従って、〈2〉の態様に比べて、〈3〉の態様のエアバッグでは閉部(13)の耐久性を向上させることができる。
閉部(13)の平面形状は直線により形成(図8参照)されてもよいが、曲線により形成(図11参照)することができる。曲線とすることにより、エアバッグ(10)の設計の自由度を高めると共に、ガス圧を適度に分散できる。
また、延接部(17)は、閉部(13)を介して袋部(11)と反対の側に配設された部分である。延接部(17)は、第1の延接層(17a)と第2の延接層(17b)とを備え、これらが互いに離間可能とされている。但し、延接部(17)は袋部(11)と同様に袋織りにされているが、袋部(11)を膨張させるための気体の流入はなく、延接部(17)は膨張されない部分である。前述の作用からこの延接部(17)を備えることで、エアバッグ(10)の閉部(13)の耐久性を向上させることができる。
延接部(17)を構成する第1の延接層(17a)及び第2の延接層(17b)は、いずれもどのように製織されていてもよい。その組織としては、平織り、綾織り、朱子織り、及びこれらの組合せによる織組織などが適宜用いられるが、袋部(11)の各層における粗織部と同様の組織を有することが好ましい。
即ち、延接部(17)を備える場合、第1の延接層(17a)は、第2の織物層(12b)における離間領域(14)の周辺(15)の組織が反転された組織(反転組織)であることが好ましい。また、第2の延接層(17b)(図6及び図7参照)は、第1の織物層(12a)における離間領域(14)の周辺(15)の組織が反転された組織(反転組織)であることが好ましい。
このように、第1の織物層(12a)を構成した構成糸が、第2の延設部(17b)を形成し、第2の織物層(12b)を構成した構成糸が、第1の延設部(17a)を形成するように、互いに交差されることが好ましい。
延接部(17)の大きさは特に限定されないが、例えば、図6及び図7に示すように、「D」方向の糸を経糸Wとし、「D」方向の糸を緯糸Wとし、第1の織物層(12a)を形成する経糸を経糸WA1とし、第1の織物層(12a)を形成する緯糸を緯糸WE1とする。この場合の第1の延接層(17b)の大きさは、緯糸WE1の本数において、通常、2本以上の大きさである。第1の延接層(17a)の大きさは、緯糸WE1換算において2〜30本が好ましく、3〜20本がより好ましく、4〜15本が更に好ましい。とりわけ4〜15本においては、延接部(17)を設けることによる閉部(13)の耐久性を向上させる効果を十分に得ることができる。
同様に、第2の織物層(12b)を形成する経糸WA2とし、第2の織物層(12b)を形成する緯糸を緯糸WE2とする。この場合の第2の延接層(17b)の大きさは、緯糸WE2の本数において、通常、2本以上の大きさである。この第2の延接層(17b)の大きさは、緯糸WE2換算において2〜30本が好ましく、3〜20本がより好ましく、4〜15本が更に好ましい。とりわけ4〜15本においては、延接部(17)を設けることによる閉部(13)の耐久性を向上させる効果を十分に得ることができる。
本エアバッグ(10)では、閉部(13)に加えて、延接部(17)の外周にも他の閉部(18)(以下、単に「第2閉部」という)を設けることができる。第2閉部(18)は、第1経糸WA1、第1緯糸WE1、第2経糸WA2、及び、第2緯糸WE2が、一層に織り込まれてなる織部である。この第2閉部(18)は、どのように製織されていてもよい。その組織としては、平織り、綾織り、朱子織り、及びこれらの組合せによる織組織などを適宜用いることができる。特に本エアバッグでは、3/3組織を含めることが好ましい。
第2閉部(18)の大きさは特に限定されない。例えば、図6及び図7に示すように、「D」の方向の糸を経糸Wとし、「D」の方向の糸を緯糸Wとする。この場合における第2閉部(18)の大きさは、緯糸Wの本数において、通常、2本以上の大きさである。この第2閉部(18)の大きさは、緯糸W換算において2〜30本が好ましく、3〜20本がより好ましく、4〜15本が更に好ましい。
本エアバッグ(10)に用いられる各糸は特に限定されず、マルチフィラメントを用いてもよく、モノフィラメントを用いてもよい。これらのうちでは、マルチフィラメントが好ましい。また、フィラメントを構成する材質も特に限定されないものの、通常、合成樹脂が用いられる。合成樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。なかでも、特にポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂がより好ましい。
各糸の繊度は限定されず、エアバッグの種類、及び平面形状、寸法等により、適宜設定できる。特に、繊度は235〜700デシテックス、特に350〜470デシテックスが好ましく、なかでもマルチフィラメントが好ましい。マルチフィラメントにあっては、糸を構成するフィラメント数は36〜200本が好ましく、72〜144本がより好ましい。更に、フィラメントの間隙を減ずるために、異形断面糸を用いることができる。その断面形状は限定されないが三角形及び六角形等を利用できる。
本エアバッグ(10)では、樹脂でコーティングすることができる。コーティングに利用する樹脂の種類は特に限定されないが、気密性、浸透性、可撓性、耐火、耐熱等の観点からシリコーン樹脂が好ましい。
本エアバッグ(10)は、各種のエアバッグとして利用できる。即ち、各種の乗り物において、乗員の周辺に収納されるとともに、車両等が衝突した際に、インフレータから供給される高圧ガスにより膨張し、展開して、乗員と車両等の構成部材との間隙に介在させて利用できる。例えば、カーテンシールドエアバッグ、運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、ニーエアバッグ及びITSヘッド・エアバッグ等が挙げられる。これらのなかでも、本エアバッグ10は、カーテンシールドエアバッグとして利用することが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
尚、以下では、図6及び図7において、D方向に織り込まれた糸を経糸Wとし、Dの方向に織り込まれた糸を緯糸Wとする。更に、第1の織物層12aを形成する経糸をWA1とし、緯糸をWE1とし、第2の織物層12bを形成する経糸をWA2とし、緯糸をWE2とする。
(1)実施例1のエアバッグ
72本のフィラメントにより構成される繊度470デシテックスのナイロン製のマルチフィラメントを使用し、図8に示す平面形状のカーテンシールドエアバッグ10(実施例1)を得た。製品寸法は横方向が1800mm、縦方向が400mm(気体導入口20等の凸状部は含まない)である。
この実施例1のエアバッグ10について、その平面形状を図8に示し、図8におけるA−A’の断面と対応する組織を図6に示した。
図6に示すように、袋部11は、離間可能な第1の織物層12aと、第2織物層12bと、から構成される(即ち、袋組織である)。また、第1の織物層12aの基本組織(即ち、離間領域14の周囲15)は1/1平織組織とされている。更に、閉部13から緯糸WE1の本数で44本分(約14mm)、内側に面積645cmの離間領域14が2/2平織組織で形成されている。また、離間領域14の平面形状は図8に示すように、略長方形状とされているが、その外周は、角のない曲線により形成されている。尚、第2の織物層12bも、第1の織物層12aと対称となるように同じ構成とされている。
更に、第1の織物層12aと第2の織物層12bとは、その袋部11の端部で経糸W及び緯糸Wともに上下で交差されて閉部13を成している。また、閉部13おいて上下交差された第1の織物層12aの経糸WA1及び緯糸WE1によって、第2の延接層17bが形成されている。同様に、閉部13において上下交差された第2の織物層12bの経糸WA2及び緯糸WE2によって、第1の延接層17aが形成されている。これらの第1の延接層17aと第2の延接層17bとは離間可能に織られた袋組織であり、延接部17を成している。延接部17は、各々の緯糸Wの本数で8本の組織である。
第2の延接層17bを構成する経糸WA1及び緯糸WE1、第1の延接層17aを構成する経糸WA2及び緯糸WE2は、各々延接部17の端部で一体化(一層化)させて、図6に示す第2閉部18を形成している。第2閉部18は、袋部11に近い側から、緯糸4本分の2/2平織組織と、緯糸6本分以上の3/3平織組織と、から形成されている。
更に、本エアバッグの外表面は、その全面が塗布量30g/mとなるようにシリコーン樹脂でコーティングされている。
(2)実施例1のエアバッグの作用
実施例1のエアバッグ10は、図8に示すように、気体流入口20から離れた側の端部層16を、巻き始めの部分21としてロール状に巻かれた状態で車両に設置することができる。
そして、気体流入口20に接続されたインフレータ(図示されない)によって発生された気体は、気体流入口20から袋部11内へと流入され、袋部11を膨張する。袋部11の膨張に伴い、次第にロール状に巻かれたエアバッグ10が展開される。即ち、巻き終わりの部分22{図9((b)}が先に膨張されて、徐々に巻き始めの部分21{図9((b)}へ向かって膨張が進行する。そして、巻き始めに近い位置21{図9(c)}まで展開が進むと、気体は離隔領域14から袋部11外へとリークされる。
(3)実施例1のエアバッグの効果
実施例1のエアバッグ10によれば、短時間で膨張して展開するための気密性及び強度を維持しながら、通気度が高くなる織り組織とされている離隔領域14から内圧を逃がすことができる。これにより、エアバッグが保護対象と衝突する際の衝撃を緩和できる。
また、実施例1のエアバッグ10は、袋織によって製織され、袋部11及び閉部13が、共通する経糸及び緯糸を用いて一体に織られているために、2枚の生地を重ねて縫製したエアバッグに比べて折り畳んだ際の体積を小さくできる。また、部品点数を少なくできるからコスト的に有利である。
更に、実施例1のエアバッグ10は、巻き始めに近い位置21に通気度が高くされた離隔領域14が設けられている。更に、このエアバッグ10は、ロール状に巻回された状態で収容できる。そして、インフレータによって発生された気体が袋部11に流入されると、巻き終わりの部分22が先に膨張し、徐々に巻き始めの部分21が膨張するように展開される。エアバック1では、巻き終わりの部分22が膨張する展開の初期段階では、巻き始めに近い位置21は、巻かれた未展開の状態となっている。従って、離隔領域14も未展開の状態であるから気体が漏れ難く、初期段階の展開速度を保つことができる。そして、巻き始めに近い位置21が展開される際には、離隔領域14から内圧を逃がすことができる。このため、保護対象(例えば、乗員)とエアバッグとの衝突の際にはその衝撃をより効果的に緩和できる。また、離隔領域14の外周が、角のない曲線により形成されているために、離間領域14から気体がリークされる際に角部へ応力集中するおそれなく、耐久性に耐圧性に優れる。
また、実施例1のエアバッグ10は、図4に示す態様の閉部13を有し、更に、第2の織物層12bが反転された第1の延接層17aと、第1の織物層12aが反転された第2の延接層17bと、が離間可能に織られた延接部17を有する。これにより、袋部11が膨張する際に閉部13に加わる衝撃を、袋部11と延接部17との間において緩和できる。従って、閉部13の耐久性が向上される。また、閉部13の平面形状が曲線であることにより、膨張の際のガス圧を分散して、高い耐圧性を発揮できる。
当然ながら、この実施例1における作用及び効果は、図10に例示されるジャバラ状に折り畳まれた状態で収容されるエアバックでも同様に発揮されるものである。
(4)実施例2のエアバッグの作製
ポリアミド製の108本のフィラメントにより構成される繊度350デシテックスのマルチフィラメントを使用し、図11に示す平面形状の試験用エアバッグ10を得た。製品寸法は幅Wが320mm、長さLが500mmである。
この実施例2のエアバッグ10の平面形状を図11に示し、図11におけるA−A’の断面と対応する組織を図6に示した。この図6に示す断面及び組織は、閉部13から緯糸WE1の本数で66本分(約22mm)、内側に面積157cm(表裏合計4箇所に独立して形成された離間領域の合計面積)の離間領域14が2/2平織組織で形成されている。また、離間領域14の平面形状は図11に示すように、略円形状であり、その外周は角のない曲線により形成されている。これら以外の点においては、実施例1のエアバッグ10と同様である。
(5)実施例3のエアバッグの作製
閉部13から緯糸WE1の本数で66本分(約22mm)、内側に面積357cm(表裏合計4箇所に独立して形成された離間領域の合計面積)の離間領域14が2/2平織組織で形成されている。また、また、離間領域14の平面形状は図12に示すように、略楕円形状であり、その外周は角のない曲線により形成されている。これら以外の点においては、実施例2のエアバッグ10と同様である実施例3のエアバッグ10を得た。
(6)実施例4のエアバッグの作製
閉部13から緯糸WE1の本数で66本分(約22mm)、内側に面積157cm(表裏合計4箇所に独立して形成された離間領域の合計面積)の離間領域14が3/3平織組織で形成されている。また、離間領域14の平面形状は、また、離間領域14の平面形状は図11に示すように、略円形状であり、その外周は角のない曲線により形成されている。これら以外の点においては、実施例2のエアバッグ10と同様である実施例4のエアバッグ10を得た。
(7)実施例5のエアバッグの作製
閉部13から緯糸WE1の本数で66本分(約22mm)、内側に面積357cm(表裏合計4箇所に独立して形成された離間領域の合計面積)の離間領域14が3/3平織組織で形成されている。また、また、離間領域14の平面形状は図12に示すように、略楕円形状であり、その外周は角のない曲線により形成されている。これら以外の点においては、実施例2のエアバッグ10と同様である実施例5のエアバッグ10を得た。
(8)比較例1のエアバッグの作製
離間領域14を形成することなく、袋部11の全面が1/1/組織で織られていること以外の点においては、実施例2のエアバッグ10と同様である比較例1のエアバッグ10を得た。
Figure 2014113989
(9)実施例2−5と比較例1のエアバッグの比較
実施例2−5及び比較例1の各エアバッグ10を用いて、内圧(kPa)とエアバッグ内からの気体のリーク量(L/分)を測定し、その結果を図13に示した。
その結果、図13に示すように、比較例1のエアバッグに対して、実施例2−5のエアバッグはいずれもリーク量を多く制御することができた。即ち、糸密度及び外表面の樹脂塗布量を変化させることなく、織組織のみによって気体のリーク量を精密に制御できることが分かる。とりわけ、内圧が低い範囲における内圧とリーク量との相関が、比較例1のエアバッグに対してよりリニアな相関とすることができることが分かる。
尚、この試験では、内圧を気体導入口20に位置された圧力センサで測定した。また、リーク量をエアバッグの周囲に位置した温度センサから出力される等温線から測定した。即ち、気体リークが無い場合に対称形状である等温線が、気体リークによって非対称となるのを利用し、温度差をブリッジ回路で検出するとともに、質量流量計測値に変換した。
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明は、エアバッグの技術分野において広く利用される。特に、各種乗り物においてエアバッグとして利用可能であり、とりわけ、自動車用のカーテンシールドエアバッグとして好適に利用される。
10;エアバッグ、カーテンシールドエアバッグ、
11;袋部、
12;2層の織物層、12a;第1の織物層、12b;第2の織物層、
13;閉部(第1閉部)、
14;離間領域、
15;離間領域の周囲、
16;端部層、
17;延接部、17a;第1の延接層、17b;第2の延接層、
18;他の閉部(第2閉部)、
20;気体導入口、
A1;第1経糸(第1織物層を構成する経糸)、
E1;第1緯糸(第1織物層を構成する緯糸)、
A2;第2経糸(第2織物層を構成する経糸)、
E1;第1緯糸(第1織物層を構成する緯糸)。

Claims (6)

  1. 気体の流入により膨張する袋部を備えたエアバッグであって、
    前記袋部は、2層の織物層が、互いに離間可能に重ねられているとともに、その周囲を閉部により囲まれており、
    前記袋部の前記織物層では、前記閉部から所定距離だけ離れた位置の離隔領域の織り組織が、その周囲の織り組織よりも、通気度が高くなる織り組織とされていることを特徴とするエアバッグ。
  2. 本エアバッグは、袋織によって製織されており、
    前記袋部及び前記閉部は、共通する経糸及び緯糸を用いて一体に織られている請求項1に記載のエアバッグ。
  3. 本エアバッグは、ロール状に巻かれた状態で車両に設置され、その巻き始めに近い位置に前記離隔領域が設けられる請求項1又は2に記載のエアバッグ。
  4. 本エアバックは、ジャバラ状に折り畳まれた状態で車両に設置され、気体流入口から離れた先端側のヒダに前記離隔領域が設けられている請求項1又は2に記載のエアバック。
  5. 前記離隔領域の外周は、角のない曲線により形成されている請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のエアバッグ。
  6. カーテンシールドエアバッグである請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のエアバッグ。
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