JP2020059193A - 樹脂製モールド、及び光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このインプリント技術は、転写すべきパターンが予め形成された原版の型(モールド)を、基材上の液状樹脂等の被転写材料へ押し付け、光を加えながら硬化させたり、熱可塑性の被転写材料に押し付けることによってモールドのパターンを被転写材料に転写する方法である。微細な凹凸パターンとしては、10nmレベルのナノスケールのものから、100μm程度のものまで存在し、半導体材料、電子・光学デバイス、記録メディア、バイオ、環境、マイクロマシン等、様々な分野で用いられている。
そこで、小面積のモールドを用いたインプリントを、加工領域が重ならないようにモールドの位置をずらしながら繰り返し行うことによって大面積のインプリントを可能にする方法が提案されている(ステップアンドリピート法)。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
また、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表す。
本開示の樹脂製モールドは、支持体と、前記支持体上に形成された、凹凸パターンを有する樹脂層と、を有し、前記凹凸パターンは、同じパターン形状を有する2以上のパターン区域が連設してなり、前記パターン区域は、所定の方向に延在する2つ以上の線状凸部が平行に繰り返し配列されたパターン形状を有し、前記凹凸パターンに含まれるパターン区域の中から任意に選ばれる隣り合う2つのパターン区域を第1のパターン区域及び第2のパターン区域としたときに、前記第1のパターン区域と前記第2のパターン区域とが境界部において重なり合っており、且つ、前記境界部において重なり合った領域において前記第1のパターン区域に含まれる線状凸部に対し、前記第2のパターン区域に含まれる線状凸部が平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾いている、樹脂製モールドである。
図1は、本開示の樹脂製モールドを示す図であり、図1(a)は模式的断面図であり、図1(b)は模式的平面図である。本開示の樹脂製モールド100は、図1(a)に示すように、支持体1上に、凹凸パターン51を有する樹脂層50を有している。凹凸パターン51は、同じパターン形状を有する2以上のパターン区域52…52が繰り返し配列されて構成されている。各パターン区域52…52は、図1(a)に示すように、それぞれ所定の方向に延在する複数の線状凸部53が平行に繰り返し配列されたパターン形状を有しており、これらのパターン区域52…52が、支持体1の面方向に連設されて構成されている。以下、各パターン区域52…52において、各線状凸部53の間に形成された凹部を線状凹部54という。
以下、第1のパターン区域52−1に含まれる線状凸部53を第1の線状凸部53−1といい、第2のパターン区域52−2に含まれる線状凸部53を第2の線状凸部53−2という。また、以下、第1の線状凸部53−1の間に形成された、第1のパターン区域52−1に含まれる凹部を第1の線状凹部54−1といい、第2の線状凸部53−2の間に形成された、第2のパターン区域52−2に含まれる凹部を第2の線状凹部54−2という。
図2において、符号53−1は、第1のパターン区域52−1に形成した凹凸パターン51の第1の線状凸部を示しており、符号10aは、第2のパターン区域52−2に凹凸パターンを形成する位置に配置したモールドの凸部を示している。従って、図2中符号10aで示す部分は、図1(a)において第2の線状凹部54−2となる部分であり、符号10aで示す部分で挟まれた領域が、図1(a)において第2の線状凸部53−2となる部分である。
図2に示すように、第1のパターン区域52−1と第2のパターン区域52−2の重複領域55において、第1の線状凸部53−1に対し、第2の線状凸部53−2(図2においてモールドの凸部10aで挟まれた領域)が、樹脂層50の表面を上方から見下ろす方向から見た平面視において0°を超え1°未満の角度θをなして傾いている。
図3に、第1の線状凸部53−1に対し、第2の線状凸部53−2が平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾いて配置されている重複領域55周辺の樹脂製モールド100表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図2中B部分は、上記したように、第1のパターン区域52−1に凹凸パターンを形成した後、第2のパターン区域52−2に凹凸パターンを形成する際に、凹凸パターンの形成位置に配置したモールド10の凸部10aが、第1のパターン区域52−1に先に形成された凹凸パターンの凸部53−1に重なることで、図4(a)(拡大写真図)に示すように、先に形成された凹凸パターンの凸部が所定の高さよりも低く賦形されたり、凸部の形状が維持されなくなり、先に形成された凹凸パターンの一部が消えてしまうことにより、得られる樹脂製モールド100において、境界の不整形状が比較的目立つ短線状の接続痕56Bとして現れる。
図2中C部分は、上記したように、第1のパターン区域52−1に凹凸パターンを形成した後、第2のパターン区域52−2に凹凸パターン形状を形成する際に、第2のパターン区域52−2の凹凸パターンの形成位置に配置したモールド10の凸部10aが、第1のパターン区域52−1に先に形成された凹凸パターンの凹部54−1に嵌まり込み、モールド10の凹部は、第1のパターン区域52−1に先に形成された凹凸パターンの凸部53−1に嵌まり込む。このため、先に形成された凹凸パターンの形状が維持される。これにより、図3中の56C部分では、図4(b)に示すように、第1のパターン区域52−1又は第2のパターン区域52−2の凹凸パターンと略同様のパターン形状が形成され、得られる樹脂製モールド100において、境界の不整形状が抑制されたシームレス部56Cとして現れる。
これにより、例えば図5の写真図に示すように、重複領域55に沿って、連続的な直線状の移行部J1が発生している場合と比較して、第1のパターン区域52−1と第2のパターン区域52−2との境界を判別し難く、外観及び光学特性に優れた樹脂製モールド100を得ることができる。
なお、図5の写真図は、重複領域55において、第1の線状凸部53−1と第2の線状凸部53−2とのなす角度(以下、ずれ角度という)が、平面視において略0°である樹脂製モールド100の表面を撮像した写真図であり、重複領域55に現れた、連続的な直線状の移行部J1は、第2のパターン区域52−2の凹凸パターン形状を形成する際に、第1のパターン区域52−1において硬化した第1の線状凸部53−1に、モールド10の凸部10aが重なって乗り上げることにより、第2のパターン区域52−2のうち、第1のパターン区域52−1と隣接する領域Rに、モールド10が押し込まれず、凹凸パターンを有しない領域が発生し、この部分が連続的な直線状の移行部J1として現れたものである(図6参照)。
境界部において重なり合った領域において、第1のパターン区域に含まれる線状凸部に対し、第2のパターン区域に含まれる線状凸部が平面視において、0.01°以上0.99°以下の角度をなして傾いているのが好ましく、0.10°以上0.90°以下の角度をなして傾いているのがより好ましく、0.15°以上0.85°以下の角度をなして傾いているのがさらに好ましい。
欠陥の発生を抑えるという観点から、ここでいう「略垂直」の方向とは、隣り合う2つのパターン区域における各線状凸部同士の一定部分以上が重なり合うような方向であればよい。パターン区域が連接する方向に対し「略垂直」の方向とは、例えば、パターン区域が連接する方向に対し60°〜120°の角度をなす方向であってもよいし、パターン区域が連接する方向に対し70°〜110°の角度をなす方向であってもよいし、パターン区域が連接する方向に対し80°〜100°の角度をなす方向であってもよい。
図19(a)は、凹凸パターンに含まれる矩形形状の各パターン区域が、基準線に対し傾かない状態で連設している様子を示す模式図である。以下、図19(a)〜(c)及び図11(a)及び(b)においては、説明の便宜上、パターン区域を3つ含む凹凸パターンを例にとり、かつ各パターン区域の形状は、頂点が丸みを帯びていてもよい、一辺がlの正方形とする。
図19(a)の場合、各パターン区域は隙間なく配置される。この場合、得られる凹凸パターンの連設方向の長さLAは3lである。したがって、凹凸パターン全体の面積(以下、有効面積という場合がある。)は、3l2と広い。しかし、このような配置の場合、上述したように、連続的な繋ぎ目やスジ等の欠陥が発生しやすいという問題がある。また、このようなパターン区域の配置を機械によって精密に行うのは困難であり、特に大きな面積を有する凹凸パターン形成の点からは実用的でないという問題がある。
図11(a)に示すように、この場合、各パターン区域52は、基準線60と一点で接し、かつ同じ方向に傾いて配置される。本開示において基準線とは、パターン区域が連接する方向に直線状に延在する共通の線であって、当該線上に矩形形状の頂点の一つが一致する線を意味する。図11(a)中の鋭角θ1〜θ3は、いずれも0°を超え1°未満の角度である。各パターン区域中の線状凸部の延在方向にもよるが、鋭角θ1〜θ3は、互いに同じ角度であってもよいし、それぞれ異なる角度であってもよい。ただし、上述したように、隣り合うパターン区域同士は、これらに含まれる線状凸部同士が平面視において0°を超え1°未満の角度をなす必要がある。このような観点から、隣り合うパターン区域同士の基準線に対する角度は、互いに異なっていてもよい。
上述した図2に示す角度θは、あくまで隣り合うパターン区域の線状凸部同士の関係を規定するものである。隣り合うパターン区域の線状凸部同士について図2に示す角度θを適用したとしても、離れたパターン区域同士において必ずしも線状凸部の延在方向が一定の方向に揃うとは限らない。これに対し、図11(a)に示すようにパターン区域を配置することにより、連接する全てのパターン区域の傾きを規定することができ、その結果、平面視において、凹凸パターン全体における線状凸部の延在方向のズレを最小限に留めることができる。また、図11(a)に示すような傾きの程度であれば、視認性の点では許容範囲であるため、大きな面積を有する凹凸パターン形成の機械化が可能となる結果、実用性の高い樹脂製モールドが得られる。
例えば、図11(a)の場合、パターン区域同士の重複部分を微小面積とみなすと、得られる凹凸パターンの連設方向の長さL1は下記式(I)の通りである。
式(I)
L1=(l/cosθ1)+(l/cosθ2)+(l/cosθ3)
≒l[{1+(1/2)θ0 2}+{1+(1/2)θ0 2}+{1+(1/2)θ0 2}] (∵ θ1〜θ3≒θ0,θ0は微小)
=l{3+(3/2)θ0 2}
上記同様、θ1〜θ3≒θ0、かつθ0は微小であるとすると、得られる凹凸パターンの高さ(連接方向に垂直な長さ)H1は、H1≒l・cosθ0+l・sinθ0≒l{1+θ0−(1/2)θ0 2}である。
したがって、図11(a)の場合の有効面積は、L1・H1≒l2{3+3θ0+(3/2)θ3}である。
式(II)
LB=(l/cosθ1)+(l/cosθ2)+(l/cosθ3)−l・sinθ3
≒l[{1+(1/2)θ0 2}+{1+(1/2)θ0 2}+{1+(1/2)θ0 2}−θ0] (∵ θ1〜θ2≒θ0,θ0は微小)
=l(3−θ0+(3/2)θ0 2)
得られる凹凸パターンの高さ(連接方向に垂直な長さ)HBは、H1と同様にl{1+θ0−(1/2)θ0 2}である。
したがって、図19(b)の場合の有効面積は、LB・HB≒l2(3+2θ0−θ0 2)<L1・H1である。
式(III)
LC=(l/cosθ1)+(l/cosθ2)+(l/cosθ3)−2l・sinθ3
≒l[{1+(1/2)θ0 2}+{1+(1/2)θ0 2}+{1+(1/2)θ0 2}−2θ0] (∵ θ1〜θ3≒θ0,θ0は微小)
=l{3−2θ0+(3/2)θ0 2}
得られる凹凸パターンの高さ(連接方向に垂直な長さ)HCは、H1と同様にl{1+θ0−(1/2)θ0 2}である。
したがって、図19(c)の場合の有効面積は、LC・HC≒l2(3+θ0−2θ0 2)<L1・H1である。
各パターン区域の矩形形状は、その頂点が丸みを帯びていてもよい。ここでいう、頂点が丸みを帯びている場合としては、パターン区域の矩形形状の頂点が実際に丸みを帯びている場合の他、パターン区域の矩形形状の頂点の場所が判別し難く特定しづらい場合も含まれる。図11(b)は、本開示の変形例であって、凹凸パターンに含まれる、頂点が丸みを帯びた矩形形状の各パターン区域が、基準線に対し角度をなして同じ方向に傾いた状態で連設している様子を示す模式図である。図11(b)は、パターン区域の形状以外は図11(a)と同様である。頂点が丸みを帯びたパターン区域52aについても、基準線に対して同じ方向に傾けて配置することにより、凹凸パターンの大面積化を図ることができる。ただし、頂点が丸みを帯びる分、図11(b)に示すH2が図11(a)に示すH1よりも短くなることからも明らかなように、図11(b)に示す凹凸パターンの面積(L2・H2)は、図11(a)に示す凹凸パターンの面積(L1・H1)よりも小さい。このように、頂点が丸みを帯びる矩形形状を採用する場合の有効面積は、通常、頂点が丸みを帯びない矩形形状を採用する場合の有効面積よりも小さくなる。
有効面積をより広く確保する観点、及び隙間なく凹凸パターンを形成する観点から、パターン区域の矩形形状の各辺において、一辺の長さの80%以上が直線であることが好ましく、一辺の長さの90%以上が直線であることがより好ましく、一辺の長さの95%以上が直線であることがさらに好ましい。また、パターン区域の形状として、頂点が丸みを帯びない矩形形状を採用することが特に好ましい。
本開示におけるパターン区域の面積は、特に限定されない。パターン区域の面積は、例えば、1μm2〜1m2であってもよく、1mm2〜0.1m2であってもよく、1cm2〜100cm2であってもよい。各パターン区域の面積は、等しくてもよく、異なっていてもよい。
本開示の樹脂製モールドの面積は、上記の各条件を満たすために支障のない限りにおいて、特に限定されない。樹脂製モールドの面積は、例えば、1mm2〜100m2であってもよく、10mm2〜10m2であってもよく、1cm2〜1m2であってもよい。
本開示の樹脂製モールドに含まれるパターン区域の個数は、上記の各条件を満たすために支障のない限りにおいて、特に限定されない。樹脂製モールドに含まれるパターン区域の個数は、目的とする樹脂製モールドに求められる特性や面積、及びパターン区域の面積等に合わせて適宜選択できる。樹脂製モールドに含まれるパターン区域の個数は、例えば、2〜10,000,000個であってもよく、5〜10,000個であってもよく、10〜100個であってもよい。
本開示の樹脂製モールドの製造方法の一実施形態は、支持体上に、熱可塑性樹脂層を有する凹凸パターン形成用基板を準備する工程(1)と、
前記熱可塑性樹脂層が所定の賦形温度に加熱された状態で、モールドを押圧することにより、前記モールドの凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層の一部に転写する工程(2)と、
前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却することにより、前記熱可塑性樹脂層の一部に、所定の方向に延在する2つ以上の線状凸部が平行に繰り返し配列されたパターン形状を有する凹凸パターンを有する領域(X)を形成する工程(3)と、
冷却により凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層の、未だ凹凸パターンを形成していない領域のうち少なくとも次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、すでに凹凸パターンを有する領域(X)のうち次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)とを、所定の賦形温度に部分加熱された状態で、前記領域(X)の凹凸パターンの線状凸部に対して平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾けてかつ前記領域(X)の凹凸パターンとつなげるように、前記モールドの凹凸パターンを前記領域(X)の一部に重ねて前記モールドを押圧することにより、前記モールドの凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層の一部に転写する工程(4)と、
前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却することにより、前記熱可塑性樹脂層の一部に、更に、凹凸パターンを有する領域(X)を拡大する工程(5)とを有し、
工程(4)〜工程(5)を繰り返してよい、樹脂製モールドの製造方法である。
なお、本開示の樹脂製モールドの製造方法により製造される樹脂製モールドは、一部に樹脂材料とは異なる材料を含んでいても良いし、前記凹凸パターン形成用基板の前記支持体が剥離されていても良い。
図12〜図16は、本開示の樹脂製モールド製造方法の一例を示す工程図である。
本開示の樹脂製モールド100の製造方法においては、まず、図12に示すように、支持体1上に、熱可塑性樹脂層2を有する凹凸パターン形成用基板3を準備する(工程(1))。
次に、図13に示すように、前記熱可塑性樹脂層2が加熱装置11’により所定の賦形温度に加熱11された状態で、モールド10を押圧装置12’を用いて押圧12することにより、前記モールド10の凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層2の一部に転写する(工程(2))。
次に、図14に示すように、前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却することにより、前記熱可塑性樹脂層の一部に、所定の方向に延在する2つ以上の線状凸部53−1が平行に繰り返し配列されたパターン形状を有する凹凸パターンを有する領域(X)を形成する(工程(3))。なお、図14(b)では、凹凸パターンを有する領域(X)を分かり易く示すために、前記熱可塑性樹脂層を冷却後に前記モールド10を剥離している場合を示している。
次に、図15(a)に示すように、熱可塑性樹脂層2のうち次に凹凸パターンを形成する領域を中心とした部分を部分加熱する。具体的には、熱可塑性樹脂層2に含まれる部分のうち、未だ凹凸パターンを形成していない領域のうち少なくとも次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、すでに凹凸パターンを有する領域(X)のうち次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)とを部分加熱11する。当該部分加熱11により、次に凹凸パターンを形成する予定の領域と、すでに凹凸パターンを有する領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)の熱可塑性樹脂層は、軟化し、未硬化乃至半硬化の状態になる。この状態で、前記領域(X)の凹凸パターンの線状凸部53−1に対して、前記モールド10の線状凹凸パターンすなわち前記領域Xに形成されている線状凸部に対応する反転パターン形状を有する凹凸パターンを、平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾けてかつ前記領域(X)の凹凸パターン25とつなげるように、前記領域(X)の一部に重ねて前記モールド10を押圧装置12’を用いて押圧12することにより、前記モールド10の凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層2の一部に転写する(工程(4))。
次に、図16に示すように、前記モールド10が圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層2を冷却13することにより、前記熱可塑性樹脂層2の一部に、更に、凹凸パターン25を有する領域(X)を拡大する(工程(5))。なお、図16(b)では、凹凸パターンを有する領域(X)を分かり易く示すために、前記熱可塑性樹脂層を冷却後に前記モールド10を剥離している場合を示している。
そして、更に、前記工程(4)〜工程(5)を繰り返してよい。
図16に次いで、図17に示すように、凹凸パターン25が形成された凹凸パターン形成用基板3の熱可塑性樹脂層2の、次に凹凸パターンを形成する領域を中心とした部分を部分加熱する。具体的には、熱可塑性樹脂層2に含まれる部分のうち、未だ凹凸パターンを形成していない領域のうち少なくとも次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、すでに凹凸パターンを有する領域(X)のうち次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)とを部分加熱11する。当該部分加熱11により、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、すでに凹凸パターンを有する領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)の熱可塑性樹脂層は、軟化し、未硬化乃至半硬化の状態になる。この状態で、前記領域(X)の凹凸パターンの線状凸部53−1に対して、前記モールド10の線状凹凸パターンすなわち前記領域Xに形成されている線状凸部に対応する反転パターン形状を有する凹凸パターンを、平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾けてかつ前記領域(X)の凹凸パターン25とつなげるように、前記領域(X)の一部に重ねて前記モールド10を押圧装置12’を用いて押圧12することにより、前記モールド10の凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層2の一部に転写する(工程(4))。
次に、図18に示すように、前記モールド10が圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層2を冷却13することにより、前記熱可塑性樹脂層2の一部に、更に、凹凸パターンを有する領域(X)を拡大する(工程(5))。なお、図18(b)では、凹凸パターンを有する領域(X)を分かり易く示すために、前記熱可塑性樹脂層を冷却後に前記モールド10を剥離している場合を示している。
次いで、凹凸パターンが形成された熱可塑性樹脂層の次に凹凸パターンを形成する領域を中心とした部分が所定の賦形温度に部分加熱された状態で、前記領域(X)の凹凸パターンの線状凸部53−1に対して、前記モールド10の線状凹凸パターンすなわち前記領域Xに形成されている線状凸部に対応する反転パターン形状を有する凹凸パターンを、平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾けてかつ前記領域(X)の凹凸パターンとつなげるように、前記領域(X)のうち前記凹凸パターン形成予定領域(Y)と隣接する側の部分(X’)の少なくとも一部を含めて前記領域(X)の一部に重ねて前記モールドを押圧し、パターンを熱転写することにより、転写されたパターンの間にパターンが形成されていない部分が発生することなく、小面積のモールドによるパターン同士をつなぐことが可能となり、且つ、領域(X)の重ねる部分のうち前記部分(X’)が熱可塑性を有していることから、パターンが上書きされつつ小面積のパターン区域同士を接続した部分(繋ぎ目)に生じた段差が抑制された乃至段差がない樹脂製モールドを製造することができる。
また、前記領域(X)の凹凸パターンの線状凸部に対して、前記モールド10の線状凹凸パターンすなわち前記領域Xに形成されている線状凸部に対応する反転パターン形状を有する凹凸パターンを、平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾けて、前記領域(X)のうち前記凹凸パターン形成予定領域(Y)と隣接する側の部分(X’)の少なくとも一部を含めて、前記領域(X)の一部に重ねて前記モールドを押圧し、パターンを熱転写することにより、得られる樹脂製モールドにおいて、短線状の接続痕56Bとシームレス部56Cとが交互に現れた、点線状の移行部を有する重複領域55が、前記領域(X)により形成されるパターン区域と、これに隣接するパターン区域との間に形成された樹脂製モールドを得ることができる。このため、例えば重複領域55に沿って連続的な直線状の移行部J1(図5参照)が発生する場合と比較して、第1のパターン区域52−1と第2のパターン区域52−2との境界を判別し難く、外観及び光学特性に優れた樹脂製モールド100を得ることができる。
また、前記領域(X)の凹凸パターンの線状凸部53−1に対して、前記モールド10の線状凹凸パターンを、平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾けて配置するため、0°で配置する場合と比較して、モールドの配置位置を決定し易く、上記した樹脂製モールドを、高い精度で製造することができる。
また、前記凹凸パターンとつながるように、前記凹凸パターンのうち部分加熱されていないため固化状態となっている一部に重ねて前記モールドを熱転写してもよい。本開示では、予め層として形成された熱可塑性樹脂層を用いているので、特許文献1のように光硬化性樹脂を滴下してモールドを押し付けて広げる場合と異なり、固化状態の凹凸パターンにモールドを重ねて凹凸パターンを転写しても、重ねた部分に樹脂が乗り上げて繋ぎ目部分に凸部の高さ程度かそれ以上の段差が生じることが抑制される。その結果、転写されたパターンの間にパターンが形成されていない部分が発生することなく、小面積のパターン区域同士を接続した部分に生じた段差が抑制された乃至段差がない樹脂製モールドを製造することができる。
以下、樹脂製モールドの製造方法の各工程について、詳細に説明する。
工程(1)は、支持体上に、熱可塑性樹脂層を有する凹凸パターン形成用基板を準備する工程である。
支持体としては、例えば、透明支持体であっても、不透明支持体であってもよく、特に限定されない。前記透明支持体の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂、ソーダ硝子、カリ硝子、無アルカリガラス、鉛ガラス等の硝子、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられる。前記不透明支持体の材料としては、例えば、必要に応じて顔料、染料等の着色剤を含んだ紙、布帛、木材、陶磁器、金属、石材及びこれらの2種以上を積層、混合等により複合した複合材料、並びにこれらと前記透明支持体の材料との複合材料等が挙げられる。
また、支持体は、シートであってもフィルムであってもよく、また、巻き取れるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。支持体の厚みは、用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常、10μm以上1000μm以下程度の範囲である。
本開示で用いられる熱可塑性樹脂層は、室温(23℃)においては固体状態で層を成しているものであり、加熱によって軟化して凹凸パターンを転写でき、それを室温(23℃)に冷却すれば凹凸パターンの形状を保持でき、再加熱によって再度軟化して凹凸パターンを転写可能な層であれば、適宜選択して用いることができる。
熱可塑性樹脂層の軟化温度は、TMA(熱機械分析)装置を用いてJIS K7196:2012 に準拠して測定することができる。
熱可塑性樹脂層を形成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂等が挙げられ、具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアセタール系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
熱可塑性樹脂層が離型剤を含有することは、熱可塑性樹脂層に押し付けたモールドを取り外す時に樹脂の版取られを抑制し、モールドを長期間連続して使用することができるようになる点から、好ましい。
特に好ましいのはシリコーン系離型剤であり、水の接触角を90°以上とすることも可能である。シリコーン系離型剤には、ポリシロキサン、変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等がある。
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端を変性したものであり、例えばアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、(メタ)アクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、フッ素変性等が挙げられる。一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
シリコーン系アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル変性シリコーンオイルや、ケイ素を含有するモノマーを共重合或いはグラフト化したアクリル樹脂が用いられる。
上記シリコーン系離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
前記塗布する方法としては、所望の厚みで精度良く成膜できる方法であればよく、適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
熱可塑性樹脂層の厚みは、例えば、50nm以上100μm以下が挙げられ、更に、100nm以上2μm以下が挙げられる。
乾燥して形成された熱可塑性樹脂層(未硬化状態)のナノインデンターによる前記所定の賦形温度での押し込み硬さは、具体的に例えば、モールドの凹凸パターンのナノインデンターによる前記所定の賦形温度での押し込み硬さの20%以下であることが好ましく、更に、10%以下であることが好ましい。
ここでの所定の賦形温度は、凹凸パターンを転写する工程において、熱可塑性樹脂層が加熱される温度である。
ナノインデンターによる押し込み硬さは、例えば、微小押込み試験機(例えば、TI950 Triboindenter (HYSITRON社製))で、バーコビッチ圧子を使用し、100μN荷重で押し込み測定し、測定することができる。
なお、前記4.3.5評価 は、製品規格に規定する乾燥時間を過ぎたとき、次のいずれかの方法によって乾燥の程度を調べる。
a)指触乾燥 塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れない状態。
b)半硬化乾燥 塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態。
c)硬化乾燥 塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態。
工程(2)は、前記熱可塑性樹脂層が所定の賦形温度に加熱された状態で、モールドを押圧することにより、前記モールドの凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層の一部に転写する工程である。
一方で加熱する温度が高すぎると、前記熱可塑性樹脂層が劣化する恐れがあることから、加熱する温度は150℃以下であることが好ましい。
或いは、後述するモールドを加熱しておき、当該加熱されたモールドを用いることにより、前記熱可塑性樹脂層が所定の賦形温度に加熱された状態で、モールドを押圧する方法も用いることができる。
さらに別の方法として、後述する押圧ロール等の押圧装置の押圧する部分を加熱して高温とし、モールドと熱可塑性樹脂層を押圧すると同時に加熱して凹凸パターンを転写する方法、当該凹凸パターンを転写する工程のプロセス雰囲気を高温として装置全体を賦形温度として転写する方法等がある。
工程(2)で使用されるモールドは、例えば、合成石英製などの原版から、例えば光硬化性樹脂を用いてナノインプリント法で形成された、樹脂製中間版であることが、生産性の点から好ましい。
モールドを押圧する装置としては、モールドとパターン形成用基板を平行に対向させ、モールド全面を加圧する直押し転写方式や、押圧ローラーでモールドを圧着するローラー方式の装置等が挙げられる。
工程(3)は、前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却することにより、前記熱可塑性樹脂層の一部に、所定の方向に延在する2つ以上の線状凸部が平行に繰り返し配列されたパターン形状を有する凹凸パターンを有する領域(X)を形成する工程である。
なお、前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却する際には、前記モールドにパターン転写時の押圧する圧力と同様の圧力がかかっていなくても良く、転写された凹凸パターンの形状が維持される程度に前記モールドと前記熱可塑性樹脂層が一体化された状態で冷却されれば良い。
工程(4)は、凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層が所定の賦形温度に部分加熱された状態で、前記領域(X)の凹凸パターンとつなげるように、前記モールドの凹凸パターンを前記領域(X)の一部に重ねて前記モールドを押圧することにより、前記モールドの凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層の一部に転写する工程である。
工程(4)における凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層が所定の賦形温度に部分加熱された状態とする方法としては、以下の方法が例示できる。まず、図15(a)に示すように、熱可塑性樹脂層の、未だ凹凸パターンを形成していない領域のうち少なくとも次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、すでに凹凸パターンを有する領域(X)のうち次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)とを、部分加熱11する。図15(a)中の一点鎖線は、部分加熱領域と、加熱しない領域との境を示す。当該部分加熱11により、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、前記凹凸パターンを有する領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)の熱可塑性樹脂層は、軟化し、未硬化乃至半硬化の状態になる。
また、工程(4)において、好適には、平面視において、前記凹凸パターンに含まれる各パターン区域は、頂点が丸みを帯びていてもよい矩形形状を有しており、パターン区域が連接する方向に直線状に延在する共通の基準線の上に矩形形状の頂点の一つを一致させ、当該基準線に対し同じ方向に傾き、且つ、基準線とパターン区域の一辺がなす鋭角が0°を超え1°未満の角度をなして傾くように配置されている。
このうち、部分Bでは、モールド10の凸部10aが、前記部分(X’)に形成された凹凸パターンの凸部53−1と重なり、前記部分(X’)に形成された凹凸パターンの凸部が所定の高さよりも低く賦形されたり、凸部の形状が維持されなくなる。また、部分Cでは、モールド10の凸部10aが、前記部分(X’)に形成された凹凸パターンの凹部54−1に嵌まり込み、モールド10の凹部は、前記部分(X’)に形成された凹凸パターンの凸部53−1に嵌まり込むため、前記部分(X’)に形成された凹凸パターンの形状が維持される。
凹凸パターンの一部に重ねる幅は、モールドの凹凸パターンにおける繰り返しパターンの1周期分以上であることが好ましい。モールドの凹凸パターンにおける繰り返しパターンの1周期の長さにより適宜調整されれば良いが、プロセス工程上、1μm以上であることが好ましい。
工程(5)は、前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却することにより、前記熱可塑性樹脂層の一部に、更に、凹凸パターンを有する領域(X)を拡大する工程である。
前記熱可塑性樹脂層を前記モールドと共に冷却することにより、工程(4)において前記熱可塑性樹脂層の一部に転写された凹凸パターンがそのまま固化することにより、所望の凹凸パターンを有する領域(X)を拡大することができる。
他の工程としては、例えば、離型処理、帯電防止処理等の表面処理や、他材料との積層、表面保護層貼合工程等があげられる。
本開示の凹凸パターンの形成方法の1実施形態は、支持体上に、熱可塑性樹脂層を有する凹凸パターン形成用基板を準備する工程(1)と、
前記熱可塑性樹脂層が所定の賦形温度に加熱された状態で、モールドを押圧することにより、前記モールドの凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層の一部に転写する工程(2)と、
前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却することにより、前記熱可塑性樹脂層の一部に、所定の方向に延在する2つ以上の線状凸部が平行に繰り返し配列されたパターン形状を有する凹凸パターンを有する領域(X)を形成する工程(3)と、
冷却により凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層の、未だ凹凸パターンを形成していない領域のうち少なくとも次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、すでに凹凸パターンを有する領域(X)のうち次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)とを、所定の賦形温度に部分加熱された状態で、前記領域(X)の凹凸パターンの線状凸部に対して、前記モールド10の線状凹凸パターンすなわち前記領域Xに形成されている線状凸部に対応する反転パターン形状を有する凹凸パターンを、平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾けてかつ前記領域(X)の凹凸パターンとつなげるように、前記領域(X)の一部に重ねて前記モールドを押圧することにより、前記モールドの凹凸パターンを前記熱可塑性樹脂層の一部に転写する工程(4)と、
前記モールドが圧着された状態で前記熱可塑性樹脂層を冷却することにより、前記熱可塑性樹脂層の一部に、更に、凹凸パターンを有する領域(X)を拡大する工程(5)とを有し、
工程(4)〜工程(5)を繰り返してよい、凹凸パターンの形成方法である。
また、本開示の凹凸パターンの形成方法によれば、前記本開示の樹脂製モールドの製造方法において説明した作用と同様の作用により、短線状の接続痕56Bとシームレス部56Cとが交互に現れた、点線状の移行部を有する重複領域55を有する凹凸パターンを形成することができる。
本開示の光学素子の製造方法は、前記本開示の樹脂製モールドを用いる製造方法である。本開示の光学素子の製造方法は、前記樹脂製モールドの製造方法、又は、前記凹凸パターンの形成方法の工程を有していてもよい。
本開示の光学素子の製造方法を用いて製造された光学素子は、前記本開示の樹脂製モールドを用いることから、凹凸パターンにおける小面積のパターン区域同士の接続部分(繋ぎ目)の段差が抑制されており、且つ、繋ぎ目部分に凹凸パターンが無い部分が存在せずパターン同士が繋がれているので、当該段差に起因する欠陥が抑制された光学素子を製造することができる。
一方で、ガラス基板上にアルミニウム層とシリカ層が積層された積層体を準備する。
前記ガラス基板上にアルミニウム層とシリカ層が積層された積層体の、シリカ層上に、感光性組成物(レジスト)を塗布してレジスト層を形成する。
次いで、前記レジスト層に、樹脂製モールドを押し付け、樹脂製モールドを押し付けたまま樹脂製モールド側から露光し、レジスト層を硬化させ、レジスト層に樹脂製モールドの凹凸パターンを転写する。
次いで、樹脂製モールドを剥離し、表面にレジスト凹凸パターンが形成されている積層体を得る。
次いで、レジスト凹凸パターンの凹部の残膜をエッチングで除去後、更に、凹部においてアルミニウム層が露出するまで、凹部のシリカ層をエッチングする。
ここで、本開示の製造方法によれば、前記樹脂製モールドにおいて、隣り合う小面積のパターン区域同士を接続した部分(繋ぎ目)に凸部の高さ程度かそれ以上の段差が生じないことから、被転写材料のレジストにも同様に段差が生じない凹凸パターンが転写される。従って、例えば特許文献1の方法を用いた場合に発生するような、高い底部を有する凹部と低い頂部を有する凸部を含む凹凸パターンがレジストに形成されるという不具合の発生が抑制されるため、レジスト凹凸パターンの凹部の残膜をエッチングする際に、高い部分の凹部に合わせると低い部分の凸部のパターンがなくなってしまうという問題が生じることがなく、欠陥が抑制された光学素子を製造することができる。
前記エッチングとしては、ドライエッチングが用いられ、ドライエッチングとしては、イオンが主として関与する反応性イオンエッチング(RIE)や、ラジカルが主として関与するプラズマエッチング(PE)等を用いることができる。前記ドライエッチングにおいて用いられるエッチャントガスとしては、ドライエッチングを行う膜の材質に合わせて適宜選択されたエッチャントガスを使用する。
次いで、凸部のシリカ層をマスクとして、凹部に露出されているアルミニウム層をエッチングすることにより、ガラス基板上にアルミニウム層による凸部を有する凹凸パターンを形成する。マスクとして用いられた凸部のシリカ層は、適宜剥離処理かエッチングにより除かれる。
ワイヤグリッド偏光子の製造方法においては、他にも従来公知の他の工程を含んでいても良い。
微小押込み試験機(例えば、TI950 Triboindenter (HYSITRON社製))で、バーコビッチ圧子を使用し、100μN荷重で押し込み測定し、測定した。
所定の賦形温度での押し込み硬さは、所定の賦形温度に加熱された状態にして、押し込み硬さを測定した。
熱可塑性樹脂層の表面について、JIS K5600−1−1 第1部−第1節:試験一般(条件及び方法)4.3.5の評価を行った。下記のb)半硬化乾燥又はc)硬化乾燥の状態である場合、表面タック性がない(タックフリー)と評価される。
a)指触乾燥 塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れない状態。
b)半硬化乾燥 塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態。
c)硬化乾燥 塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態。
(1)原版の合成石英モールドの準備
150mm×150mmで、厚さが6.35mmの合成石英の片面に、パターンエリアを100mm×100mmとして、幅50nm、深さ100nmの線状凹部を、ピッチ100nm(線状凸部幅50nm)でドライエッチングにより形成したモールドを原版として準備した。
(2)中間版のモールドの準備
上記原版の合成石英モールドの凹凸面に、紫外線硬化型樹脂(DNPファインケミカル(株)製 SF15)を滴下し、その上に厚さ100μmの易接着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡(株)製 コスモシャイン A4100)を、易接着面が紫外線硬化型樹脂と接するように重ね合わせた後、ゴムローラーで樹脂を一定厚になるように圧し伸ばし積層体を得た。
その積層体に、紫外線光源(フュージョンUVシステムズ社製、Hバルブ)を用い、300mJ/cm2(365nm)の条件で紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂を硬化させた。
PETフィルムを合成石英モールドから剥離することで、硬化した紫外線硬化型樹脂の表面に原版モールドの凹凸面の凹凸パターンが再現され、PETフィルムで裏打ちされた中間版のモールドを得た。 中間版のモールドの凹凸パターンのナノインデンターによる75℃での押し込み硬さは0.084GPaであった。
(1)凹凸パターン形成用基板の準備
厚さ100μmの易接着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡(株)製 コスモシャイン A4100)の易接着面に、自動塗工装置(テスター産業(株)製 PI−1210)を用い、熱可塑性樹脂をマイヤーバー#6でバーコートした後、定温乾燥機で110℃、30秒間乾燥することにより、塗工量1.7g/m2の塗膜を形成し、PETフィルム基材上に熱可塑性樹脂層を有する凹凸パターン形成用基板を得た。熱可塑性樹脂層のナノインデンターによる75℃での押し込み硬さは0.01GPa以下であった。また、熱可塑性樹脂層の110℃30秒乾燥後の表面は、塗面を指先で軽くこすっても跡がつかず、タックフリーであった。
成形装置 熱ロール転写装置(ナビタス RH−150)の加圧ステージ上にホットプレート(アズワン(株)製 EC−1200N)を設置して75℃に加熱しておき、ホットプレート上にA4サイズの凹凸パターン形成用基板を熱可塑性樹脂層が上面になるように載せて加熱した。
加熱した凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層上に、前記中間版のモールドを凹凸パターン面が熱可塑性樹脂層と接触するように重ねて置き、転写装置の加圧ロールでホットプレートに圧しつけて加熱加圧することで、凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層と中間版のモールドを一体化させた。(加圧ロール線圧:10kg/150mm幅、ロール速度:5mm/秒)
一体化した中間版のモールド/凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層を室温(23℃)に冷却した後、中間版のモールドを剥離することで、表面にモールドの凹凸パターンを有する領域(X)が形成された熱可塑性樹脂層を得た。
上記手順で得られた凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成用基板の熱可塑性樹脂層のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と、前記凹凸パターンを有する領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)とを含む領域について、ホットプレートで部分加熱した(図15(a)参照)。
前記領域(X)の凹凸パターンに、前記中間版のモールドのパターンが一部重なるようにモールドを重ね合わせ、転写装置の加圧ロールでホットプレートに圧しつけて加熱加圧することで、次面の凹凸パターンを転写した。なお、領域(X)と中間版のモールドとの重ね幅は2mmとした。
中間版のモールドは、領域(X)に形成された凹凸パターンに対して、予めモールドに設けておいたアライメントマークを用いて位置決めし、領域(X)に形成された凹凸パターンの凸部に対して、モールド10の凸部10aとのなす角度が0.2°となるように、角度調整を行った。
その後、上記と同様にして、室温冷却、モールド剥離を順次行った。
当該次面凹凸パターン転写のプロセスを繰り返して、熱可塑性樹脂層に中間版のモールドの凹凸パターンを多面付した樹脂製モールドを製造した。
(3)次面凹凸パターン転写において、領域(X)に形成された凹凸パターンの凸部に対して、モールド10の凸部10aのなす角度が0°となるように角度調整を行って、前記領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)の凹凸パターンに、前記中間版のモールドを重ね合わせた点以外は、実施例1と同様にして、樹脂製モールドを製造した。
(3)次面凹凸パターン転写において、領域(X)に形成された凹凸パターンの凸部に対して、モールド10の凸部10aのなす角度が1°となるように角度調整を行って、前記領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)の凹凸パターンに、前記中間版のモールドを重ね合わせた点以外は、実施例1と同様にして、樹脂製モールドを製造した。
(3)次面凹凸パターン転写において、領域(X)に形成された凹凸パターンの凸部に対して、モールド10の凸部10aのなす角度が5°となるように角度調整を行って、前記領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)の凹凸パターンに、前記中間版のモールドを重ね合わせた点以外は、実施例1と同様にして、樹脂製モールドを製造した。
(3)次面凹凸パターン転写において、領域(X)に形成された凹凸パターンの凸部に対して、モールド10の凸部10aのなす角度が10°となるように角度調整を行って、前記領域(X)のうち、次に凹凸パターンを形成する予定の領域(Y)と隣接する側の一部(X’)の凹凸パターンに、前記中間版のモールドを重ね合わせた点以外は、実施例1と同様にして、樹脂製モールドを製造した。
走査型電子顕微鏡(SEM)で、凹凸パターン表面、及び、モールドの転写境界部を観察した。なお、図3は、実施例1で得られた樹脂製モールド100表面の走査型電子顕微鏡写真であり、図5は、比較例1で得られた樹脂製モールド100表面の走査型電子顕微鏡写真であり、図10(a)は、比較例2で得られた樹脂製モールド100表面の走査型電子顕微鏡写真であり、図10(b)は、比較例3で得られた樹脂製モールド100表面の走査型電子顕微鏡写真であり、図10(c)は、比較例4で得られた樹脂製モールド100表面の走査型電子顕微鏡写真である。
(移行部の外観)
○:移行部が点線状である
×:移行部が点線状でない
(線状凸部に対し垂直方向へ伸びる接続痕(モワレ類似接続痕))
○:無し
×:有り
2 熱可塑性樹脂層
3 凹凸パターン形成用基板
10 モールド
10a モールドの凸部
11 加熱又は部分加熱
11’ 加熱装置
12 押圧
12’ 押圧装置
13 冷却
20 凹凸パターン形成予定領域
25 凹凸パターン
50 樹脂層
51 凹凸パターン
52 パターン区域
52a 頂点が丸みを帯びたパターン区域
52−1 第1のパターン区域
52−2 第2のパターン区域
53 線状凸部
53−1 第1の線状凸部
53−2 第2の線状凸部
54 線状凹部
54−1 第1の線状凹部
54−2 第2の線状凹部
55 重複領域
56B 短線状の接続痕
56C シームレス部
60 基準線
100 樹脂製モールド
J1 連続的な直線状の移行部
Claims (8)
- 支持体と、
前記支持体上に形成された、凹凸パターンを有する樹脂層と、を有し、
前記凹凸パターンは、同じパターン形状を有する2以上のパターン区域が連設してなり、
前記パターン区域は、所定の方向に延在する2つ以上の線状凸部が平行に繰り返し配列されたパターン形状を有し、
前記凹凸パターンに含まれるパターン区域の中から任意に選ばれる隣り合う2つのパターン区域を第1のパターン区域及び第2のパターン区域としたときに、前記第1のパターン区域と前記第2のパターン区域とが境界部において重なり合っており、且つ、前記境界部において重なり合った領域において前記第1のパターン区域に含まれる線状凸部に対し、前記第2のパターン区域に含まれる線状凸部が平面視において0°を超え1°未満の角度をなして傾いている、樹脂製モールド。 - 前記第1のパターン区域と前記第2のパターン区域とが重なる部分の幅が、1〜5μmである、請求項1に記載の樹脂製モールド。
- 平面視において、前記凹凸パターンに含まれる各パターン区域は、パターン区域に含まれる線状凸部が延在する方向が、パターン区域が連接する方向に対し、略垂直をなすように配置されている、請求項1又は2に記載の樹脂製モールド。
- 平面視において、前記凹凸パターンに含まれる各パターン区域は、頂点が丸みを帯びていてもよい矩形形状を有しており、パターン区域が連接する方向に直線状に延在する共通の基準線の上に矩形形状の頂点の一つを一致させ、当該基準線に対し同じ方向に傾き、且つ、基準線とパターン区域の一辺がなす鋭角が0°を超え1°未満の角度をなして傾くように配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂製モールド。
- 平面視において、前記基準線と、前記パターン区域との隙間の最大幅が、0mmを超え1mm以下である、請求項4に記載の樹脂製モールド。
- 前記第1のパターン区域と前記第2のパターン区域とが重なる部分に形成された複数の線状凸部は、それぞれの頂部の高さの差が、前記凹凸パターンの凹部の底部から前記線状凸部の頂部までの高さよりも小さい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂製モールド。
- 前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂製モールドを用いる、光学素子の製造方法。
- 光学素子が、ワイヤグリッド偏光子、反射防止板、光拡散板、集光板、接触防止板、光回折格子、導光板、及びホログラムからなる群から選ばれるいずれかの素子である、請求項7に記載の光学素子の製造方法。
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