JP2013038117A - 微細パターンを転写するための転写ヘッド及びそれを用いた微細パターンの形成方法 - Google Patents

微細パターンを転写するための転写ヘッド及びそれを用いた微細パターンの形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 有機EL用の回折基板のような光学部品をナノインプリントで製造するのに好適な転写ヘッドを提供する。
【解決手段】 転写ヘッド10は、光硬化性樹脂を硬化させるための光を照射する光源12と、光透過性の基部14と、基部14の光出射面に取り付けられ、遮光部16cにより区画された開口16bを有するマスク板16と、微細パターンMPを有し、前記開口16bを透過した光を透過するモールド18とを備える。マスク板16の開口16bが微細パターンMPよりも小さい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ナノインプリント等に使用される微細パターンを転写するための転写ヘッド及びそれを用いた転写方法に関する。
半導体集積回路のような微細パターンを形成する方法として、リソグラフィ法が知られている。リソグラフィ法で形成されるパターンの解像度は、光源の波長や光学系の開口数に依存しており、近年の微細化デバイスの需要に応えるために、より短波長の光源が要望されている。しかしながら、短波長光源は高価であり、その開発は容易ではなく、そのような短波長光を透過する光学材料の開発も必要である。また、従来のリソグラフィ法で大面積のパターンを製造することは、大型の光学素子を必要とし、技術的にも経済的な面でも困難を伴う。それゆえ、大面積を有する所望のパターンを形成する新規な方法が検討されていた。
従来のリソグラフィ装置を使わずに、微細パターンを形成する方法としてナノインプリント法が知られている。ナノインプリント法は、樹脂をモールド(型)と基板で挟み込むことでナノメートルオーダーのパターンを転写することができる技術であり、使用材料によって、熱ナノインプリント法、光ナノインプリント法、室温ナノインプリント法などが検討されている。光ナノインプリント法の場合で説明すると、基本的に、i)樹脂層の塗布、ii)モールドによるプレス、iii)光硬化及びiv)離型の四工程からなり、このような単純なプロセスでナノサイズの加工を実現できる点で優れている。しかも、使用する装置が簡易であり、高スループットが期待できるため、半導体デバイスのみならず、LEDや有機EL素子の輝度向上用回折格子基板や、太陽電池の変換効率向上用反射基板、偏光素子、広帯域波長板、反射防止基板などの光学部材、MEMS(Micro Electro Mechanical System)、バイオチップなど多くの分野で実用化が期待されている。
ナノインプリント法により大面積の微細パターンを形成する方法として、ステップアンドリピート法が検討されている。ステップアンドリピート法では、上記四工程を、基板面内でモールドをステップ移動させながら繰り返し行う。例えば、図8(a)に示すような光硬化性樹脂104が塗布された基板102に所定パターンを有するモールド106を押し付けると、図8(b)に示すように、モールドの転写部(パターン)の側部に樹脂の盛り上がり部104aが生じることがある。また、モールド106の転写部の外側にはみ出した樹脂がモールド側部に付着することがある。モールド側部に付着した樹脂が露光用のUV光により硬化すると、モールドを基板から離型する際に大きな力が作用し、モールドまたは基板に損傷を与えるおそれがある。また、樹脂の盛り上がり部104aが硬化すると、ステップアンドリピート法を用いて転写領域に続いて次の領域にモールド106を押し付けて転写する際に、盛り上がり部分104aを隔てて転写しなければならず、隣設するパターンにおいてもそのような盛り上がり部104bが発生するために、それらの盛り上がり部104a、104bが転写部間のつなぎ目108として残る(図8(c)参照)。このようなつなぎ目は、本来不要な箇所であり、大面積パターンにおけるパターンの不均一性をもたらすことになる。特許文献1では、露光光が盛り上り部104a、104bを照射して硬化させることを防止するために、モールドの非パターン部に遮光膜を設けている。
特許文献2は、図9に示すように、透明な基材201の表面に凹凸パターン203を備えたパターン領域204と、パターン領域204の周囲に位置する非パターン領域205とを備え、基材201のパターン領域204の表面204aは非パターン領域205の表面205aに対して凸状であるナノインプリント用モールドを開示している。基材202の非パターン領域205の表面205aには、遮光膜208と機能性膜209を有する機能性膜(光吸収膜あるいは低反射膜)が形成されることにより、パターン領域204以外の部位への露光光の照射が防止されている。
特開2007−103924号公報 特開2010−258326号公報
しかしながら、本発明者の実験によると、特許文献1及び2に記載のような遮光膜を備えたナノインプリント用モールドを用いても、前述のような盛り上がり部の硬化を十分に防止できないことが分かった。そのような盛り上がり部が硬化したまま残留すると、転写部間のつなぎ目を短くすることができず、大面積のパターンの均一性を低下させる原因となっていた。特に、比較的大面積の有機EL素子の輝度向上用回折格子基板のような凹凸基板に使用する場合においては、そのような硬化した盛り上がり部の幅広のつなぎ目は発光ムラやリーク電流発生による発光不良などの原因となる可能性が高い。
そこで、本発明の目的は、ナノオーダーのような微細パターンを有する光学部品の製造に好適であり、転写領域以外の不要な領域の樹脂を硬化させずに光を照射することができる微細パターン転写用の転写ヘッド及びそれを用いたパターンの形成方法を提供することにある。
本発明の第1の態様に従えば、光硬化性樹脂に微細パターンを転写するために用いられる転写ヘッドであって、前記光硬化性樹脂を硬化するための光を透過するとともに、当該光を出射する面を有する基部と、一面に微細パターンが設けられ、前記光を透過するモールドと、前記基部の前記光出射面と前記モールドとの間に設けられ、遮光部と当該遮光部により区画された光透過部を有するマスク板とを備え、前記マスク板の前記光透過部が前記微細パターンよりも小さく、前記マスク板の光入射側から見て前記マスク板の前記光透過部が前記微細パターンの内側に存在するようにマスク板がモールドに対して配置されていることを特徴とする転写ヘッドが提供される。
本発明の転写ヘッドによれば、マスク板の光透過部が前記微細パターンよりも小さく、マスク板の光入射側から見てマスク板の光透過部が微細パターンの内側に存在するようにマスク板がモールドに対して配置されている。それゆえ、マスク板によりモールドに入射する光が有効に制限され、微細パターンから出射する光が微細パターンの面方向の外側に漏れ出ることが防止される。本発明では特にマスク板がモールドの別部材として、モールドに装着されるために、上記のようなマスク板とモールドの微細パターンとの寸法関係及び配置が可能となる。
本発明の転写ヘッドにおいて、前記マスク板とモールドとの間及び/または前記基部と前記マスク板との間に、弾性部材が設けられていることが好ましい。弾性部材は、モールドの微細パターンから光硬化性樹脂にかかる押圧力をパターンの面方向で均一化するように作用する。それゆえ、樹脂などで形成されたモールドにうねりが存在している場合や光硬化性樹脂の表面に対して微細パターン面が傾斜している場合でも、微細パターンの前面に渡ってパターンの凹凸を忠実に反映した転写を実現することができる。
前記マスク板の光透過部は、前記微細パターンよりも0.1〜3mm小さいことが好ましい。こうすることで、基部及びマスク板に入射する光が転写ヘッドの光軸に対して多少傾いていても、微細パターンから出射する光が微細パターンの面方向の外側に漏れ出ることが一層有効に防止される。
前記モールドが、樹脂モールドであり、微細パターン上の凹凸の平均ピッチが100〜600nmの範囲であり、凹凸の平均高さは、20〜200nmの範囲であることが更に好ましい。本発明の転写ヘッドはこのようなパターンのナノインプリントに好適である。また、モールドの厚みは、0.2mm〜5.0mmの範囲であることが好ましい。
本発明の転写ヘッドは、前記光を照射する光源を備えていてよく、前記光源が前記基部の光出射面と反対側に取り付けられ得る。
本発明の第2の態様に従えば、上記本発明の転写ヘッドを用いたパターンの形成方法であって、前記光硬化性樹脂を基板に塗布する工程と、前記転写ヘッドのモールドを基板上の光硬化性樹脂の所定領域に押し付けて前記微細パターンを前記光硬化性樹脂に押し付ける加圧工程と、前記光源からの光を前記モールドを通じて光硬化性樹脂に照射して前記光硬化性樹脂の転写部分を硬化する光照射工程と、前記転写ヘッドを光硬化性樹脂から離して前記モールドを光硬化性樹脂から離型する離型工程と、前記転写ヘッドを前記所定領域から該所定領域に隣設する領域に対向するように移動する工程とを備え、前記加圧工程、光照射工程、離型工程及び移動工程を、複数回繰り返すことによって、前記基板上の光硬化性樹脂に、前記微細パターンが複数転写されたパターンを形成した後、前記基板を有機溶剤にて洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするパターン形成方法が提供される。
本発明の転写ヘッドを用いることによって、ステップアンドリピート法によって転写パターンをつなぎ合わせる際に、硬化した盛り上がり部が残留することが防止され、その結果、短いつなぎ目幅で転写パターン(転写領域)をつなぎ合わせることができる。それゆえ、比較的大面積のパターンをムラなく形成することが可能となる。前記所定領域から該所定領域に隣設する領域に転写ヘッドを移動する際に、その移動量を前記微細パターンのサイズ+1μm以内にすることが可能となる。
前記光硬化性樹脂として酸素阻害性を有する樹脂を用いることにより、転写ヘッドのモールドと接触している部分のみを光照射で硬化させることができる。この場合、前記光照射工程を大気雰囲気下で実行することが好ましい。一方、加圧工程は、光硬化性樹脂内に気泡を生じさせることを防止するために、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明の転写ヘッドを用いることで転写された領域以外の部分の樹脂の硬化を有効に防止することができる。それゆえ、ステップアンドリピート法を用いて微細パターンを繰り返し転写しても、転写パターン間のつなぎ目を極めて狭くし、ムラのない均一な大面積のパターンを形成することができる。
本発明の転写ヘッドの構造を示す概略図である。 マスク板の光出射面側から見た斜視図である。 マスク板の光入射側から見たマスク板の光透過部とモールドのパターンの外縁との位置及び寸法関係を示す概念図である。 転写ヘッドにより、移動ステージ上に載置された基板の光硬化性樹脂にパターンを転写するプロセスを概略的に示した図である。 つなぎ目幅t1〜t4と移動ステージのステップ移動量の関係を求めるために予備転写された領域とつなぎ目幅を示す基板の概略平面図である。 実施例1で用いる回折基板用モールドの樹脂表面の凹凸解析画像を示す図である。 実施例1で得られた4つの転写領域がつながって得られたパターンを示すとともに凹凸のピッチ及び深さが観測された領域を示す平面図である。 図8(a)〜(c)は、ステップアンドリピート法によりモールドをステップ移動させながら樹脂基板に転写した場合に生じる問題点を説明する図である。 従来技術の転写ヘッドの構造を概略的に示す図である。
以下、本発明の転写ヘッド及びそれを用いたパターンの形成方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[転写ヘッド及び転写装置]
図1に示すように、転写装置50は、基板102上に塗布された光硬化性樹脂104に微細パターンをナノインプリントにより転写して形成するための装置であり、主に、転写ヘッド10と、鉛直方向に延在するガイドバー22を通じて転写ヘッド10を鉛直方法(Z方向)に移動させるための駆動部40と、基板102を保持しつつ、ステージベース21上を水平方向(図中、XまたはY方向)にステップ移動可能な移動ステージ20とを備える。転写装置50は、真空チャンバ50a内に収容されている。転写ヘッド10は、光源12と、光源12から照射された光を透過する基部14と、マスク板16と、微細パターンMPが形成されたモールド18とを主に有する。ガイドバー22はステージベース21上に支持されている。
光源12は、光硬化性樹脂104に光照射して硬化させるための光源であり、光硬化性樹脂の種類に適した波長の光を照射する。例えば、中心波長365nmのUV−LEDランプなどを用いることができる。光源は、光源フレーム12a内に収容されている。光源12から照射された光を基板102に指向性よく送光するためにコリメータレンズなどの光学部材を光源12または光源12と基部14との間に装着してもよい。光源12は基部14の上面14a(光入射面)に取り付けられる。基部14は、光源12から照射された光をマスク16及びモールド18に導くための光学部材であり、照射光を透過する材料から形成されており、例えば、石英、ガラス等から形成され得る。
モールド18は平板状のモールドであり、一方の面(基板に対向する下面)がパターン面18aであり、凹凸状の微細パターンMPが形成されている。パターン面18aと反対側の面(光源側の上面)は平坦面18bであり、弾性部材15bを介してマスク板16と接合される。モールド18は、石英、ガラス、照射光を透過する透明樹脂などから形成することができるが、ガラスなどの基板上に微細パターンを有する透明樹脂層を積層したものを用いてもよい。
微細パターンMPは、本出願人らによる特願2011−006487号に記載されたブロック共重合体の自己組織化(ミクロ相分離)を利用する方法(以下、適宜「BCP(Block Copolymer)法」という)や、本出願人らによるWO2011/007878A1に開示された蒸着膜上のポリマー膜を加熱・冷却することにポリマー表面の皺による凹凸を形成する方法(以下、適宜「BKL(Buckling)法」という)を用いることが好適である。BKL法及びBCP法に代えて、フォトリソグラフィ等の任意の方法で形成してもよい。パターン面18aには、パターン18a全面を覆うように微細パターンMPが形成されているのが好ましい。微細パターンMPの凹凸のピッチ及び高さは、任意であるが、例えば、可視領域の光を散乱または回折する用途に転写パターンを用いる場合には、凹凸の平均ピッチとしては、100〜600nmの範囲にあることが好ましく、200〜600nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折角が小さくなり、回折格子としてのとしての機能が失われてしまう傾向にある。凹凸の平均高さは、20〜200nmの範囲であることが好ましく、50〜150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均高さが前記下限未満では、可視光の波長に対して高さが低すぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、有機EL素子の光取り出し用の光学素子として使用した場合に、EL層内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリークが生じ易くなったり、寿命が短くなる傾向にある。
微細パターンMPがパターン面18aの外縁から所定のマージンを隔てて内側に形成されていてもよいが、後述するステップアンドリピートにより微細パターンを繰り返して転写することでそれらの微細パターンをつないで大型パターンを形成する場合には、マージンがつなぎ目となって残留するために望ましくない。モールドの厚さは、0.2mm〜5.0mmの範囲であることが好ましい。モールドの厚みが前記下限未満では、モールドの作製、取り扱いが難しくなる点や、加圧時に割れて破損してしまう可能性がある点、モールドを加圧する際に光硬化性樹脂104のはみ出した部分とマスク板16とが接触する可能性がある。他方、上限を超えると、光照射する際に、モールド端部から光が漏れて、所望の部分以外を硬化させてしまう可能性がある。モールドの剥離性を向上するために、パターン面18aにフッ素系の材料やシリコーン樹脂等の離型剤を塗布するか、あるいは熱または照射光で離型し易くなる離型処理を施してもよい。
基部14とモールド18との間にマスク板16が挿入されている。マスク板16は、図2に示すように、例えばガラスまたは石英などの光透過性の基板16aの一面に遮光膜16cが形成されている。遮光膜16cの中央には開口16bが形成されている。遮光膜16cがマスク部として機能し、開口16bが光透過部として機能する。遮光膜16cは照射光を吸収または反射できる材料から形成されていればよく、例えば、UV照射光に対して、クロム、酸化クロム、白金などの金属薄膜を用い得る。金属薄膜は単層膜のみならず、例えば、クロム及び酸化クロムを積層した積層膜でも構わない。そのような金属薄膜は、例えば、スパッタリングや蒸着などの気相法や無電解メッキなどの液相法で形成することができる。基部14から出射された照射光はマスク板16の開口16bのみを透過してマスク板を出射する。なお、開口16bに相当する基板16a上の領域に光透過性の材料が成膜されていてもよい。開口16bを遮光膜16cと同じ膜厚で光透過性膜を成膜してマスク16bの光射出側の面を平坦にすることにより、マスク板16を通じてモールドに加えられる転写圧力をマスク面内で均一化することができる。金属薄膜を遮光膜とするマスク板に代えて、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂基板上に銀塩ゼラチン乳剤などのエマルジョン層を遮光膜として形成したフィルムマスクや、ガラス基板上に遮光膜としてエマルジョン層を形成したガラスマスクを用いてもよい。
遮光膜16cの開口16bは、モールド18の微細パターンMPの寸法より小さく、図3に示すように、マスク16の光入射側(+Z方向または上方)から見てモールド18の微細パターンMPの内側に完全に包含されるようにマスク板16とモールド18とが接合される。例えば、開口16bはモールド18の微細パターンMPの寸法より0.1〜3mm小さく、すなわち、モールド18の微細パターンMPの外縁18cと遮光膜16cの内縁16dとの間隔wが0.05〜1.5mmが好ましく、さらに好ましくは 0.2〜1.5mmである。こうすることにより、開口16bを透過する光がモールド18の微細パターンMPの外側(側方)に漏れ出ることが防止され、モールド18の光硬化性樹脂への押圧で生じる盛り上がり部の硬化を防止することができる。0.1mmより小さい場合は、微細パターンから出射する光の散乱、又は、光軸の傾きにより微細パターンの外側に漏れ出ることを防げない。また、モールドが前記の厚さであれば、モールド18の微細パターンMPの寸法より3mm以下で十分な効果を発現でき、3mmより大きい場合は遮光面積が大きいために、転写した際に必要なパターンサイズが得られない。
本発明では、マスク板16とモールド18は一体ではなく別部材から形成されているので、遮光部16cの開口16b、即ち、光透過部を、モールド18の外形、特にモールド18の光入射部または微細パターンMPよりもよりも小さい面積に設定することができる。また、製品のタイプや用途ごとにモールドの寸法やパターンが相違するので、それらに応じたマスク16の開口16bの寸法を調整することが製造上、必要となるが、このような場合においても、マスク板とモールドを別部材としてそれらを重ね合わせて使用することが有利となる。また、マスク板とモールドを別部材とすることによりモールドを安価に作製でき、パターン面の傷つきがあった場合や異なるパターンを転写する場合などでモールドを交換する際には、同様のマスク板を用いたままモールドのみを交換すればよく、効率よく低コストに対応できる。
図1に示すようにマスク板16と基部14の間並びに、マスク板16とモールド18との間には、弾性部材15a及び15bがそれぞれ挿入されている。弾性部材15a及び15bは、転写ヘッド10のモールド18を基板102上の光硬化性樹脂104に押し付けた際に、モールド18の微細パターンMPaを通じて光硬化性樹脂104にかかる押圧力を基板102の面内で均一化させるように作用する。平板状のモールド18(パターン面18aまたは平坦面18b)には作製起因による撓みや反り、うねりが存在する場合がある。また、モールド18を転写ヘッド10に装着する時に、モールド18が基部や照射光の光軸に対して傾いて装着される場合がある。そのような場合であっても、弾性材料は、モールド18の微細パターンMP(パターン面18a)を介して基板102の光硬化性樹脂104にかかる圧力を基板102の面内で均一化させることができる。弾性部材15a及び15bとしては、例えば、光透過性の弾性体であって、モールドやマスク板、基部など他の構成部材よりも変形しやすいものを使用することができる。また、それら転写ヘッドの構成部材間は固定する必要があるため、接着性をもつ弾性部材が好ましい。通常室温でゴム状である粘着剤が好ましく、例えばアクリル系やシリコーン系粘着剤が使用可能である。弾性部材の弾性特性としては、動的粘弾性測定により測定される室温での貯蔵弾性率が10−3MPa〜10MPaであり、弾性体がゴム状であることが好ましい。前記貯蔵弾性率が前記下限未満では、流動してしまい弾性部材として形状を保持することが難しい傾向にあり、他方、上限を超えると、ガラス状態となり硬くなりすぎて押圧力の面内均一化の効果が小さくなる傾向にある。また例えば、貯蔵弾性率が上記範囲以上の支持基材の両側に粘着剤が予め塗布された弾性テープを用いてもよい。弾性部材15a及び15bは、必ずしも装着する必要はなく、その一方または両方を省略してもよい。
[パターン形成方法]
次に、転写装置50を用いてステップアンドリピート法により基板102上に所定面積のパターンを形成する方法について図1及び図4を参照しながら説明する。
基板102上に、光硬化性樹脂104を大気雰囲気下で塗布し、この基板102を、転写ヘッド10に対向配置された移動ステージ20上にセットする(図4(a))。光硬化性樹脂104の塗布は、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、インクジェット法等の知られた塗布方法を用い得る。光硬化性樹脂104は、酸素が存在すると硬化反応が進行し難い酸素阻害性を有する樹脂を用いることが好ましい。大気雰囲気下では、モールド18のパターン18bが押し付けられている部分(転写部分)は酸素と接することができず、それ以外の非転写部分は酸素と接する雰囲気下にあるので、非転写部分に迷光などの意図しない光が照射されてもその部分の硬化を防止することができるからである。酸素阻害性を有する光硬化性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性のUV硬化樹脂を用いることができる。ラジカル反応性のUV硬化樹脂としては、アクリル系UV硬化樹脂が好ましい。基板102として、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)等の樹脂基板を用い得る。それら基板上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよい。
次に、転写装置50を収容するチャンバ50a内を減圧して真空雰囲気にする(図4(b))。減圧するのは、転写ヘッド10を光硬化性樹脂104に押し付ける際に、モールド18と光硬化性樹脂104との間に気泡を介在させないためである。次いで、図1に示すように駆動装置40を駆動して転写ヘッド10をガイドバー22に沿って下降させて、移動ステージ20上に載置された基板102上の光硬化性樹脂4にモールド18に押し付けて加圧する(図4(c))。次いで、この加圧状態を維持したまま、チャンバ内を大気開放する(図4(d))。次いで、加圧状態を保持したまま、光源12からUV光を、マスク板16及びモールド18を介して光硬化性樹脂104に照射する(図4(e))。光硬化性樹脂104は、モールド18と光硬化性樹脂104が接触している部分のうち、UV光が照射された部分だけが硬化して、それ以外のUV光が照射されなかった部分は硬化しない。UV光がマスク板16を通過する際、遮光板16bにより部分的に遮光される。ここで、マスク板16の遮光部16cにより制限された開口16bはモールド18の微細パターンMPよりも狭いために、多少の斜め入射光があっても微細パターンMPに入射したUV光はその外側に広がることはない。従って、微細パターンMPが押し付けられた光硬化性樹脂104の部分(転写領域)だけが硬化し、転写領域の両脇の盛り上がり部分(図8(b)参照)は、硬化しない。
次に、駆動装置40により転写ヘッド10を上昇させてモールド18を光硬化性樹脂104から離型する(図4(f)参照)。こうして、モールド18の微細パターンMPが転写されたパターンが光硬化性樹脂104の第1領域71に形成される。次に、光硬化性樹脂104の第2領域72上に転写ヘッド10が対向するように、移動ステージ20を転写ヘッド10に対してX方向にステップ移動する(図4(g))。ステップ移動後、真空チャンバを減圧して真空雰囲気として、図4の(b)〜(f)の動作を順次行う。この後、光硬化性樹脂104の第2領域に隣接する第3領域上に転写ヘッド10が位置付けられるように、移動ステージ20を転写ヘッド10に対してX方向(またはY方向)にステップ移動し(図4(g))、真空チャンバを減圧した後、図4(b)〜図4(f)の動作を順次行う。このような動作を、所定回数繰り返すことで基板102上の光硬化性樹脂102にパターン18bの転写パターンがつながり大面積の所望のパターンが形成される。
こうして所望の大面積のパターンが形成された後に、基板102を移動ステージ20から取り外し、第1領域71と第2領域72のつなぎ目のような領域間つなぎ目や基板の縁部に存在する未硬化樹脂を除去するために有機溶剤により洗浄する。有機溶剤としては、硬化前の樹脂は溶解可能で硬化樹脂は溶解させないものを選択して使用可能である。例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール系溶剤等の公知のものから選択できる。
[つなぎ目幅の予備測定]
上記のようなパターン形成プロセスにおいて、隣り合って形成された転写領域のつなぎ目幅は、移動ステージ20のステップ移動量に依存するために、ステップ移動量を適切に設定する必要がある。ステップアンドリピート法により、例えば、有機EL素子の回折基板(回折格子基板)のような大面積のパターンを得るためには、隣接する転写領域間のつなぎ目が殆ど無いことが望ましい。一方で、半導体素子のような回路パターンの場合には、一定のマージンを残して複数のパターン(ダイ)が配列した方が望ましい。いずれにしても、図8(c)に示したような隣合う転写領域間の樹脂盛り上がり部の存在などにより、つなぎ目幅はかなり影響すると考えられる。それゆえ、移動ステージ20の移動量に対する目標とするつなぎ目幅の関係を予め測定しておき、その結果に応じて、目標つなぎ目幅に対する移動ステージの移動量(ステップ量)を決定するのが製造上好ましい。そこで、図5に示すように、基板102上で、所定のパターンを異なるステップ量で移動しながら異なる領域81〜85に予備転写を行う。こうして予備転写された異なる転写領域間のつなぎ目幅t1〜t4を実測して、その転写領域間を移動した移動ステージのステップ移動量とを比較する。こうすることによって、目標つなぎ目幅に応じたステップ移動量を求めることができ、上記のような実際のパターン形成プロセスにおいて目標つなぎ目幅に対する移動ステージのステップ移動量を制御することができる。
上記のようにしてステップアンドリピート法で得られた比較的大面積のパターンを有する基板102は、例えば、有機EL素子用の回折基板、ワイヤグリッド偏光子、反射防止フィルム、あるいは太陽電池の光電変換面側に設置することにより太陽電池内部への光閉じ込め効果を付与するための光学素子として使用することができる。あるいは、上記パターンを有する基板102をモールド(マザー)として用いて上記パターンをさらに別の樹脂に転写してもよい。この場合、転写された樹脂パターンは基板102上のパターンの反転パターンであるために、転写された反転パターンをさらに別の樹脂に転写することで基板102のレプリカとしてのモールドを作製してもよい。それらのモールドにNi等による電鋳処理を施して金属モールドを形成することもできる。それらのモールドを用いることにより、有機EL素子用の回折基板などの光学部品を効率よく量産することができる。
[実施例1]
図1に示したような転写ヘッド10に装着するモールド(母型)18を以下のようにBCP法を用いて作製した。なお、このモールドは、有機EL素子の輝度向上用回折格子基板を製造するためのものである。
最初に、ポリスチレン(以下、適宜「PS」と略する)とポリメチルメタクリレート(以下、適宜「PMMA」と略する)とからなるPolymer Source社製のブロック共重合体を用意した。PSセグメントの数平均分子量(Mn)は868,000であり、PMMAセグメントの数平均分子量は857,000であり、ブロック共重合体の数平均分子量は1,725,000であった。また、PSセグメントとPMMAセグメントの体積比(PS:PMMA)は53:47であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)で表す分子量分布(Mw/Mn)は1.30、PSセグメントのガラス転移点Tgは96℃、PMMAセグメントのガラス転移点Tgは110℃であった。
このブロック共重合体150mgとポリエチレンオキシドとして38mgの東京化成製ポリエチレングリコール4,000(Mw=3000、Mw/Mn=1.10)に、トルエンを、総量が10gになるように加えて溶解させた。この溶液を孔径0.5μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体溶液を、基材としてのポリフェニレンスルフィドフィルム(東レ(株)製トレリナ)上に、スピンコートにより200〜250nmの膜厚で塗布した。スピンコートは、回転速度500rpmで10秒間行った後、引き続いて800rpmで30秒間行った。スピンコートで塗布された薄膜を室温で10分間放置して乾燥した。
次いで、薄膜が形成された基材を、170℃のオーブン中で5時間加熱した(第1アニール処理)。加熱後の薄膜の表面には、凹凸が観察されて、薄膜を構成するブロック共重合体がミクロ層分離していることが分かった。
上記のように加熱された薄膜を、以下のようにしてエッチング処理して基材上のPMMAを選択的に分解除去する。薄膜に、高圧水銀灯を用いて30J/cmの照射量(波長365nm)で紫外線を照射した。次いで、薄膜を酢酸中に浸漬し、イオン交換水で洗浄した後、乾燥した。この結果、上記加熱処理により薄膜表面に現れた凹凸よりも明らかに深い凹凸パターンが基材上に形成された。
次いで、エッチング処理により形成された凹凸パターンを山形構造(底部よりも上部の開口面積が大きい凹凸構造であり、断面が山形)に変形(山形化処理)するために、基材を140℃のオーブン中で1時間の加熱処理(第2アニール処理)を行った。山形化処理された薄膜の表面に、スパッタにより、シード層として10nm程度の薄いニッケル層を形成した。次いで、この薄膜付き基材をスルファミン酸ニッケル浴中に入れ、温度50℃で、電鋳(最大電流密度0.05A/cm)処理してニッケルを厚み250μmになるまで析出させた。こうして得られたニッケル電鋳体から薄膜付き基材を機械的に剥離した。次に、ニッケル電鋳体をアルカリ系洗浄液である日本シービーケミカル製ケミゾール2303中に浸漬し、50℃にて2時間攪拌しながら洗浄した。その後、ニッケル電鋳体に、アクリル系UV硬化樹脂を塗布して硬化し、剥離することを3回繰り返すことで、電鋳体の表面に一部付着していたポリマー成分を除去した。
次いで、ニッケル電鋳体をダイキン工業(株)社製オプツールHD−2100THに約1分浸し、乾燥した後、一晩静置した。翌日、ニッケル電鋳体を、ダイキン工業(株)社製オプツールHD−TH中に浸漬して約1分間超音波処理洗浄を行った。こうして離型処理されたニッケルモールド(ニッケル基板)を得た。次に、15mm×15mm、厚さ0.7mmの旭硝子製無アルカリガラス基板AN100上に、信越化学製シランカップリング処理剤KBM−5103で表面処理したものを準備した。その上にフッ素系UV硬化性樹脂を塗布し、ニッケルモールドを押し付けながら、紫外線を600mJ/cmで照射することでフッ素系UV硬化性樹脂を硬化させた後、ニッケルモールドを硬化した樹脂から剥離した。こうしてニッケルモールドの表面形状が転写された樹脂膜付きガラス基板からなる転写モールドを得た。
この転写モールドについて、樹脂表面の凹凸形状を原子間力顕微鏡(SIIナノテクノロジー社製の環境制御ユニット付走査型プローブ顕微鏡「NanonaviIIステーション/E−sweep」)を用いて解析画像を得た(測定モード:ダイナミックフォースモード、カンチレバー:SI−DF40)。得られた転写モールドの樹脂表面の凹凸解析画像を図6に示す。転写モールドの任意の位置に3μm角(縦3μm、横3μm)の測定領域を測定して、上記のようにして凹凸解析画像を求めた。かかる凹凸解析画像中における、任意の凹部及び凸部との深さ方向の距離を100点以上測定し、その平均を算出して凹凸の平均高さ(深さ)とする。この例で得られた解析画像より凹凸パターンの平均高さは62nmであった。得られた凹凸解析画像に対し、1次傾き補正を含むフラット処理を施した後に、2次元高速フーリエ変換処理を施すことによりフーリエ変換像を得、得られたフーリエ変換像を画像解析した結果、波数2.38μm−1が最も強く、このことより平均ピッチは420nmであることが分かった。
この転写モールドについて、パターン面の面内のうねり(凹凸の頂部の面内における高低差)を、(株)小坂研究所製微細形状測定機ET4000Aを用いて測定した。パターン面内の13×13mm角の範囲で測定したところ、面内のうねりは7μmであった。
こうして得られた転写モールドと、以下のようなマスク板及び基部を含む部品を弾性材料を介して接合して、図1に示したような構造の転写ヘッド10を組み立てた。光源12としてUV−LEDランプ(ピーク波長365nm、照度10mW/cm)を用い、基部は、石英製であり、寸法50mm×50mm×10mmであった。マスク16として、正方形のガラス板(寸法50mm×50mm×2.3mm)の表面に中央の開口16bの寸法が13mm×13mmとなるように周囲をクロム遮光膜16cで覆ったマスク板を用いた。図3に示すように、マスク板16の開口16bの中心とモールド18の微細パターンMPの中心が一致するように配置した。モールド18とマスク板16は、貯蔵弾性率1.5×10−2MPa(25℃)のアクリル系透明粘着剤(15mm×15mm×25μm)をそれらの間に挿入することで接合した。また、マスク板16と基部14は、貯蔵弾性率1.5×10−2MPa(25℃)のアクリル系透明粘着剤(50mm×50mm×25μm)をそれらの間に挿入することで接合した。これらの粘着剤は弾性部材として機能する。
こうして組み立てられた転写ヘッド10を、図1に示した転写装置50に装着して、モールド18の微細パターンMPを以下のようにしてステップアンドリピート法により順次転写した。まず転写基板として旭硝子製無アルカリガラス基板AN100(100mm×100mm×0.7mm)上に、信越化学製シランカップリング処理剤KBM−5103で表面処理したものを準備した。次に酸素阻害性のアクリル系光硬化性樹脂(粘度15mPa・s)を酢酸イソブチルで5倍希釈した後、スピンコート法により2000rpm×20sの条件で塗布し、100℃のホットプレートで3分乾燥して溶剤を除去して、転写基板上に厚み350nmの光硬化樹脂層を形成した。この基板を移動ステージ20上に保持した。次いで、転写装置50を収容するチャンバ50a内を1000Paに減圧し、転写ヘッド10をガイドバー22に沿って下降させて、光硬化性樹脂104にモールド18に0.6kNの圧力で押し付けて加圧した。次いで、この加圧状態を維持したまま、チャンバ内を大気開放した。大気開放後、加圧状態を保持したまま、光源12から照射量500mJ/cmの照射光を照射した。この後、転写ヘッド10を上昇させてモールド18を光硬化性樹脂104から離型した。こうして、基板102上の第1領域に転写パターンが形成された。次に、移動ステージ20を水平方向(X方向)に15.001mmステップ移動し、上記と同様にして真空チャンバを減圧して真空雰囲気とし、モールドによる加圧、大気開放、光照射及び離型を行い、第1領域に隣接する第2領域に転写パターンを形成した。次に、移動ステージ20を、第1回目のステップ移動と直交する方向(Y方向)に15.001mmステップ移動して、真空チャンバの減圧、モールドによる加圧、大気開放、光照射及び離型を行った。こうして、第2領域に隣り合う第3領域を形成した。次に、移動ステージ20を第1回目のステップ移動と逆方向(−X方向)に15.001mmステップ移動し、上記と同様にして真空チャンバを減圧して真空雰囲気として、モールドによる加圧、大気開放、光照射及び離型を行った。こうして、第3領域に隣り合う第4領域を形成した。このようにしてステップアンドリピート法により、図7に示すような同一のパターンを4つの転写領域91〜94に転写して基板102上に、4つのパターンが正方状につながった比較的大面積の所望パターン202が形成された。なお、この実施例では、予めつなぎ目幅とステージ移動量を予備測定して、1μmのステージ移動量でつなぎ目幅が1μmを達成することができることを確認しておいた。
次いで、基板102を移動ステージ20から取り外し、パターン202周辺やつなぎ目近傍に残存する未硬化のUV硬化樹脂をイソプロピルアルコールで洗浄した。こうして得られた基板102を観察したレーザ顕微鏡で観察したところ、隣り合う転写領域91と92、隣り合う転写領域91と93、隣り合う転写領域92と94、隣り合う転写領域93と94のつなぎ目幅は、いずれも約1μmであり、つなぎ目の高さはいずれも0μmであった。
また、図7に示すような転写領域91中の部位1−1、1−2、1−3における凹凸の平均ピッチと平均高さを前述の転写モールドの樹脂表面の凹凸形状を解析した方法と同じ方法で測定した。すなわち各位置において3μm角(縦3μm、横3μm)の面積に渡って図6と同様の凹凸解析画像を求め、かかる凹凸解析画像中における任意の凹部及び凸部との深さ方向の距離を100点以上測定し、その平均を算出して凹凸の平均高さ(深さ)とした。また、得られた画像に対し、1次傾き補正を含むフラット処理を施した後に、2次元フーリエ変換処理を施すことによりフーリエ変換像を得、得られたフーリエ変換像を解析することで凹凸の平均ピッチを求めた。同様にして転写領域92から94についても図7に示す各位置について凹凸の平均ピッチと平均高さを測定した。測定結果を下記表1に示す。
Figure 2013038117
前述のようにモールドは7μmのうねりが存在していたが、表1の結果から分かるように、得られた転写領域の凹凸のピッチや高さは面方向においてバラツキが殆ど無かった。
[実施例2]
モールドとマスクの間の接合並びにマスクと基部との間の接合に、それぞれ、実施例1で用いた貯蔵弾性率1.5×10−2MPa(25℃)のアクリル系透明粘着剤を用いる代わりに、それらの間の接合を貯蔵弾性率1.0×103MPa(25℃)のアクリル系UV硬化型接着剤で行った以外は、実施例1で作製したモールド(うねりが7μm)を用い、実施例1と同様にして転写ヘッドを組み立てた。この転写ヘッドを用いて、実施例1と同様にして、基板上の光硬化性樹脂に対して、真空チャンバの減圧、モールドによる加圧、大気開放、光照射及び離型の工程を、移動ステージのステップ移動を繰り返しながら4回実施した。最後に、実施例1と同様にして基板102を移動ステージ20から取り外し、イソプロピルアルコールで洗浄した。こうして得られた基板102を観察したレーザ顕微鏡で観察したところ、それぞれの転写されたパターンのつなぎ目幅は1μmであり、つなぎ目の高さは0μmであった。
実施例1と同様に、図7に示すような転写領域91〜94中の各位置における凹凸の平均ピッチと平均高さを求めた。結果を表2に示す。
Figure 2013038117
平均ピッチにはばらつきは見られないものの、実施例1の結果と比べると、測定位置1−2、2−2、3−2、4−2の高さが他の測定位置と比較して低くこれはモールドのうねりを反映しているものと考えられる。
[比較例1]
マスクの遮光部に囲まれた開口部(光出射部)の寸法をモールドのパターンの外形寸法(15mm)と同一にすることにより、マスクの開口部を完全にパターンと重なるようにした以外は、実施例1と同様にして転写ヘッドを組み立てた。この転写ヘッドを用いて、実施例1と同様にして、基板上の光硬化性樹脂に対して、真空チャンバの減圧、モールドによる加圧、大気開放、光照射及び離型の工程を、移動ステージのステップ移動を繰り返しながら4回実施した。つなぎ目幅と移動量の予備測定において、ステージの移動量を実施例1と同様にして、予めつなぎ目幅とステージ移動量を予備測定したが、15.001mmのステージ移動量でつなぎ目幅が1μmを達成することができなかった。これは、モールドにより転写された領域の両側に硬化した盛り上がり部が残留したため、ステップ移動量15.001mmでは硬化した盛り上がり部にモールドが乗り上げてしまい、モールドの均一な加圧ができなくなるためである(図8(c)参照)。それゆえ、ステップアンドリピートにおけるステージのステップ移動量を15.005mmに変更した。最後に、実施例1と同様にして基板102を移動ステージ20から取り外し、イソプロピルアルコールで洗浄した。こうして得られた基板102を観察したレーザ顕微鏡で観察したところ、それぞれの転写されたパターンのつなぎ目幅は5μmであり、つなぎ目の高さが25μmであり、盛り上がり部が残留していたことが分かった。このため、微細パターンが基板面内に渡って均等には転写されていなかった。
[有機EL素子の製造と発光ムラの観測]
実施例1、実施例2及び比較例で微細パターンMPのつなぎ合わせでできた転写基板を有機EL素子の輝度向上用回折基板として用いて、有機EL素子を以下のようにして作製した。転写基板の樹脂層上に、透明電極(ITO、厚み:120nm)をスパッタ法にて、正孔輸送層[N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン、厚み:40nm]、電子輸送層(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、厚み:30nm)、フッ化リチウム層(厚み:1.5nm)、及び金属電極(アルミニウム、厚み:150nm)を、硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状が維持されるようにして、それぞれ蒸着法により積層して有機EL素子を作製した。有機EL素子の金属電極側に負電圧、透明電極側に正電圧が印加されるように直流電源を接続し、3Vの電圧を印加し、発光状態をデジタルカメラにて撮像した。
実施例1及び実施例2の有機EL素子から520nmを中心波長とする発光が生じており、発光ムラやリーク電流の発生は観測されなかった。一方、比較例の有機EL素子ではリーク電流が発生しており、発光させることができなかった。
以上、本発明を有機EL素子用の回折基板の製造を例に挙げて説明してきたが、本発明の転写ヘッド及びそれを用いたパターンの製造方法は、ワイヤグリッド偏光子、反射防止フィルム、あるいは太陽電池用の光学素子など任意の光学部品の製造に用いることができる。本発明の転写ヘッドを構成するパーツの材料や寸法は一例にすぎず、上記用途に応じて本発明の技術的範囲内で任意に変更することが可能である。上記実施例では、光源が装着された転写ヘッドを例示したが、光源は転写ヘッドと別体でも構わない。この場合、例えば、光源からの光を転写ヘッドの基部に光ファイバや光導波路を用いて導くことができる。また、上記実施例では、転写ヘッドを用いてステップアンドリピート法を実施する場合を例に挙げて説明したが、単独の転写処理でも構わない。
本発明の転写ヘッド及びそれを用いたパターンの製造方法によれば、有機EL素子や各種デバイスの光学部品に用いられる比較的大面積のパターンをナノインプリントによりつなぎ目幅を狭くしつつ、精密且つ容易に製造することが可能となる。
10 転写ヘッド
12 光源、12a 光源枠
14 基部
15a、15b 弾性部材
16 マスク板、16a 透明基板、16b 開口、 16c 遮光部
18 モールド、18a パターン面、18b 平坦面、18c 外縁
20 移動ステージ
22 ガイドバー
50 転写装置
81〜85、91〜94 転写領域
102 基板
104 光硬化性樹脂、104a,104b 盛り上がり部
106 転写ヘッド
203 パターン面、MP 微細パターン

Claims (12)

  1. 光硬化性樹脂に微細パターンを転写するために用いられる転写ヘッドであって、
    前記光硬化性樹脂を硬化するための光を透過するとともに、当該光を出射する面を有する基部と、
    一面に微細パターンが設けられ、前記光を透過するモールドと、
    前記基部の前記光出射面と前記モールドとの間に設けられ、遮光部と当該遮光部により区画された光透過部を有するマスク板とを備え、
    前記マスク板の前記光透過部が前記微細パターンよりも小さく、前記マスク板の光入射側から見て前記マスク板の前記光透過部が前記微細パターンの内側に存在するようにマスク板がモールドに対して配置されていることを特徴とする転写ヘッド。
  2. 前記マスク板とモールドとの間及び/または前記基部と前記マスク板との間に、弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の転写ヘッド。
  3. 前記マスク板の前記光透過部が前記微細パターンよりも0.1〜3mm小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の転写ヘッド。
  4. 前記モールドの微細パターンが樹脂から形成されており、前記微細パターン上の凹凸の平均ピッチが100〜600nmの範囲であり、凹凸の平均高さは、20〜200nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の転写ヘッド。
  5. 前記モールドの厚みが0.2mm〜5.0mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の転写ヘッド。
  6. さらに前記光を照射する光源を備え、前記光源が前記基部の光出射面と反対側に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転写ヘッド。
  7. 請求項1に記載の転写ヘッドを用いたパターンの形成方法であって、
    前記光硬化性樹脂を基板に塗布する工程と、
    前記転写ヘッドのモールドの前記微細パターン面を基板上の光硬化性樹脂の所定領域に押し付ける加圧工程と、
    前記光源からの光を前記モールドを通じて光硬化性樹脂に照射して前記光硬化性樹脂を硬化する光照射工程と、
    前記転写ヘッドを光硬化性樹脂から離して前記モールドを光硬化性樹脂から離型する離型工程と、
    前記転写ヘッドを前記所定領域から該所定領域に隣設する領域に対向するように移動する工程とを備え、
    前記加圧工程、光照射工程、離型工程及び移動工程を、複数回繰り返すことによって、前記基板上の光硬化性樹脂に、前記微細パターンが複数転写されたパターンを形成した後、前記基板を有機溶剤にて洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
  8. 前記所定領域から該所定領域に隣設する領域に移動する移動量が、前記微細パターンのサイズ+1μm以内であることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
  9. 前記光硬化性樹脂が酸素阻害性を有する樹脂であることを特徴とする請求項7または8に記載のパターン形成方法。
  10. 前記光照射工程を大気雰囲気下で実行することを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
  11. 前記加圧工程を減圧雰囲気下で実行することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
  12. 前記転写ヘッドのモールドのパターンはブロック共重合体の自己組織化により形成することを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
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