JP2020057693A - 積層圧電体膜 - Google Patents

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【課題】鉛含有量を少なくして環境負荷を低減し、かつ緻密な膜質と高い圧電特性を有する積層圧電体膜を提供する。【解決手段】基板の電極上にPZT層と非鉛層とが交互に積層された圧電体膜であって、積層された層数は少なくとも3であり、PZT層の厚さは少なくとも30nmであり、かつ非鉛層の厚さは30nm以上400nm以下である。非鉛層が(Bi,Na)TiO3−(Bi,K)TiO3層、(K,Na)NbO3層又は(Bi,Na)TiO3−BaTiO3層のいずれかのペロブスカイト構造の金属酸化物層であることが好ましい。【選択図】図3

Description

本発明は、鉛含有量を少なくして環境負荷を低減し、かつ緻密な膜質と高い圧電特性を有する積層圧電体膜に関する。本明細書において、PZTは、チタン酸ジルコン酸鉛((Pb,Zr)TiO3)の略称であり、BNT−BKTは、(Bi,Na)TiO3−(Bi,K)TiO3の略称である。またKNNは、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO3)の略称であり、BNT−BTは、(Bi,Na)TiO3−BaTiO3の略称である。
アクチュエータや超音波デバイスなどのMEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる装置に搭載される圧電素子の圧電体膜として、高い圧電特性を有するPZTがこれまで用いられてきた。しかし、環境面において鉛の含有量を抑えた圧電材料の開発が求められている。その一つの圧電材料として、Bi系材料を用いた圧電体膜や、KNNを用いた圧電体膜など様々な圧電材料が開発されている。
従来、KNN膜の上及び下の少なくとも一方にPZT膜が形成された複合膜が開示されている(例えば、特許文献1(段落[0008])参照。)。具体的には、この複合膜は、基板上に所定の結晶面に配向した下地膜上を形成し、この下地膜上に結晶性酸化物であるPZT膜をゾルゲル法により形成し、このPZT膜上に、K、Na及びNbを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類と不飽和脂肪酸類を含有するゾルゲル溶液を複数回塗布し、仮焼して塗布膜からなるKNN材料膜を成膜して作製される。
特許文献1には、KNN材料膜の成膜及び結晶化を繰り返すことにより、膜厚2μm以上のKNN膜を形成することも可能であること、結晶化された結晶性酸化物であるPZT膜は、KNN材料膜の上下両面に成膜された場合の合計厚さは、1〜30nmであること、KNN材料膜の一方のみに形成されている場合は、その一方の結晶性酸化物であるPZT膜の厚さが1〜30nmであること、結晶性酸化物であるPZT膜における結晶がKNN材料膜を結晶化する際の核となるため、ペロブスカイト構造に結晶化されにくいKNN材料膜の結晶化を迅速に進められること、及びKNN材料膜を結晶性酸化物であるPZT膜によって挟んだ状態で結晶化の熱処理を行うと、KNN材料膜中のKとNaが抜けることを抑制でき、結晶化されたKNN膜の膜質を向上し得ることが記載されている。
国際公開第2012/169078号
しかしながら、特許文献1の複合膜では、KNN膜の上及び下の一方の面にPZT膜が形成される場合、KNN膜が厚くなると、PZT膜の影響が低くなり、KNN材料膜の結晶化が不十分となって、緻密な圧電体膜にならない不具合があった。またKNN膜の上下両面にPZT膜が形成される場合、PZT膜の合計厚さは1〜30nmであって、片側のPZT膜の厚さは30nm未満になる。片側のPZT膜の厚さが30nm未満である場合、KNN材料膜を上下両面で挟んだPZT膜は熱処理中、KNN材料膜中のKとNaが抜けることを防止できるものの、PZT膜が十分に厚くなく、熱処理中、KNN材料膜の応力緩和が十分に行われず、KNN膜にクラックが発生したり、KNN材料膜の結晶化が不十分となって、緻密な圧電体膜にならない不具合があった。
本発明の目的は、鉛含有量を少なくして環境負荷を低減し、かつ緻密な膜質と高い圧電特性を有する積層圧電体膜を提供することにある。
本発明者らは、少なくとも30nm厚のPZT層で非鉛層を挟むようにPZT層と非鉛層とをゾルゲル法により交互に積層すると、熱処理中、非鉛層の応力緩和が十分に行われて、非鉛層にクラックが発生せず、非鉛層の結晶化が十分行われて、緻密な膜質が得られ、結果として圧電特性に優れた圧電体膜が得られることを知見し、本発明に到達した。
本発明の第1の観点は、基板の電極上にPZT層と非鉛層とが交互に積層された圧電体膜であって、前記積層された層数は少なくとも3であり、前記PZT層の厚さは少なくとも30nmであり、かつ前記非鉛層の厚さは30nm以上400nm以下であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、非鉛層が(Bi,Na)TiO3−(Bi,K)TiO3層、(K,Na)NbO3層又は(Bi,Na)TiO3−BaTiO3層のいずれかのペロブスカイト構造の金属酸化物層である積層圧電体膜である。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記積層された層数が少なくとも4であって、前記PZT層の間に積層される非鉛層は同種の金属酸化物層又は異種の金属酸化物層である積層圧電体膜である。
本発明の第1の観点の積層圧電体膜は、少なくとも30nm厚のPZT層で非鉛層を挟むようにPZT層と非鉛層とをゾルゲル法により交互に積層すると、熱処理中、非鉛層の応力緩和が十分に行われて、非鉛層にクラックが発生せず、非鉛層の結晶化が十分行われて、緻密な膜質が得られる効果を奏する。また非鉛層中のペロブスカイト構造のAサイトの金属が抜けにくくなる特長を有し、この結果、高い圧電特性が得られる。
本発明の第2の観点の積層圧電体膜では、非鉛層がBNT−BKT層((Bi,Na)TiO3−(Bi,K)TiO3層)、KNN層((K,Na)NbO3層)又はBNT−BT層((Bi,Na)TiO3−BaTiO3層)のいずれかのペロブスカイト構造の金属酸化物層であるため、積層圧電体膜中の鉛含有量を減らして、より高い圧電特性が得られる。
本発明の第3の観点の積層圧電体膜では、積層された層数が少なくとも4であって、PZT層の間に積層される非鉛層が、同種の金属酸化物層である場合、使用する薬液の削減の効果があり、異種の金属酸化物層である場合、アルカリ等の使用量の削減が見込まれる。
本実施形態の基板上にPZT層、非鉛層及びPZT層の3層が積層された積層圧電体膜の断面図である。 本実施形態の基板上にPZT層、非鉛層、PZT層及び非鉛層の4層が積層された積層圧電体膜の断面図である。 本実施形態の基板上にPZT層、非鉛層、PZT層、非鉛層、PZT層及び非鉛層の6層が積層された積層圧電体膜の断面図である。
本発明を実施するための形態を説明する。
〔PZT層形成用液組成物〕
本実施形態のPZT層を形成するための液組成物は、PZT前駆体を含むゾルゲル液(PZT前駆体液)である。
PZT前駆体は、Pb、Zr、Tiの各金属元素がPZT層を形成する量比になるように各金属元素の原料が配合されたものである。Pbの原料としては、酢酸鉛三水和物等の酢酸塩や、鉛ジイソプロポキシド:Pb(OiPr)2等のPbアルコキシドが挙げられる。また、Ti化合物としては、チタンテトラエトキシド:Ti(OEt)4、チタンテトライソプロポキシド:Ti(OiPr)4、チタンテトラn−ブトキシド:Ti(OnBu)4、チタンテトライソブトキシド:Ti(OiBu)4、チタンテトラt−ブトキシド:Ti(OtBu)4、チタンジメトキシジイソプロポキシド:Ti(OMe)2(OiPr)2等のアルコキシドが挙げられる。更にZr化合物としては、上記Ti化合物と同様のアルコキシド類が好ましい。また、PZT層にMn,Nb,Ta等をドープする場合、それらの原料として、例えば、これらの元素のアルコキシド類を用いることができる。
Pb、Zr、Tiの各原料、溶媒、及び、必要に応じてドープする元素の原料を反応容器に入れ、不活性雰囲気下で加熱し還流してPZT前駆体液を製造する。各金属元素の原料はPZT層を製造する金属元素比になる量が混合される。
液組成物中のPZT前駆体の濃度は酸化物換算濃度で17〜35質量%が好ましく、20〜25質量%がより好ましい。17質量%未満では十分なPZT層の厚さを得ることができず、一方、35質量%を超えるとクラックが発生しやすくなる。
溶媒は、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3―プロパンジオール等のジオールを用いることができる。ジオールを溶媒に用いることによって液組成物の保存安定性を高めることができる。
他の溶媒としては、カルボン酸、ジオール以外のアルコール、エステル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル)、シクロアルカン類(例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノール)、芳香族系(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、その他テトラヒドロフラン等を用いることができる。
〔非鉛層形成用液組成物〕
本実施形態の非鉛層としては、BNT−BKT層、KNN層、BNT−BT層等が挙げられる。以下、BNT−BKT層、KNN層及びBNT−BT層を形成する液組成物について説明する。
〔BNT−BKT層形成用液組成物〕
本実施形態のBNT−BKT層形成用液組成物は、有機ビスマス化合物と有機ナトリウム化合物と有機チタン化合物と有機カリウム化合物とを含む有機金属化合物と溶媒を含む。この液組成物から形成されるBNT−BKT層は、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi,Na)TiO3)のペロブスカイト型構造の有機金属化合物とチタン酸ビスマスカリウム((Bi,K)aTiO3)のペロブスカイト型構造の有機金属化合物の複合酸化物により構成される。
Biの原料としては、酢酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマス、硝酸ビスマス(III)・五水和物等が挙げられる。Naの原料としては、ナトリウムメトキシド:Na2(OMe)、ナトリウムエトキシド:Na2(OEt)、ナトリウムt−ブトキシド:Na2(OtBu)等のナトリウムアルコキシドが挙げられる。Tiの原料としては、上述したPZT層形成用液組成物と同一のTiの原料が用いられる。Kの原料としては、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等が挙げられる。
BNT−BKT層形成用液組成物の溶媒としては、PZT層形成用液組成物と同様の溶媒を用いることができる。
〔KNN層形成用液組成物〕
本実施形態のKNN層形成用液組成物は、有機カリウム化合物と有機ナトリウム化合物と有機ニオブ化合物を含む有機金属化合物と溶媒を含む。この液組成物から形成されるKNN層は、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO3)のペロブスカイト型構造の有機金属化合物の複合酸化物により構成される。本実施形態にかかる複合酸化物は、Aサイトに、カリウム(K)及びナトリウム(Na)を含み、Bサイトにニオブ(Nb)を含む。このペロブスカイト型のABO3型構造では、Aサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)を形成しており、このAサイトにカリウム及びナトリウムが、Bサイトにニオブが位置している。
本実施形態にかかる有機金属化合物、即ち複合酸化物の金属モル比は、特に限定されるものではないが、K:Na:Nbは、x:1−x:y(ただし、0.1≦x≦0.7、0.7≦y≦1.4)とすることが好ましい。なお、yが0.7未満ではNb源が少な過ぎて異相を生じるおそれがあり、yが1.4を超えるとNb源が多過ぎて異相を生じるおそれがある。
本実施形態の有機カリウム化合物及び有機ナトリウム化合物は、それぞれ一般式Cn2n+1COOH(ただし、4≦n≦8)で表されるカルボン酸の金属塩である。nが4未満では膜が緻密にならず、8を超えると主溶媒が固体となり溶媒として適さない。nは6〜8の範囲が好ましい。また本実施形態の有機ニオブ化合物はニオブアルコキシド又は上記一般式で表されるカルボン酸の金属塩である。有機カリウム化合物及び有機ナトリウム化合物がカルボン酸の金属塩でなく、例えばカリウムアルコキシド又はナトリウムアルコキシドである場合には、液組成物からKNN層が形成される過程で、異相を生じる。有機ニオブ化合物がカルボン酸の金属塩でなく、ニオブアルコキシドであっても差し支えない。
本実施形態のKNN層形成用液組成物に含まれる溶媒のうち、主たる溶媒はカルボン酸であって、上記液組成物100質量%に対して50質量%〜90質量%、好ましくは70質量%〜80質量%含まれる。主溶媒のカルボン酸が50質量%未満では液組成物の調製途中で沈殿を生じる不具合があり、90質量%を超えると形成できる膜が薄すぎて生産性が低下する不具合がある。上記カルボン酸以外の溶媒としては、アルコール、酢酸、水等が挙げられる。ここで、有機金属化合物であるカルボン酸の金属塩が、例えば2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ニオブ等の2−エチルヘキサン酸の金属塩であれば、主たる溶媒も2−エチルヘキサン酸であることが溶液中に多種の副生成物を生じないため、好ましい。即ち金属塩を構成するカルボン酸と、主たる溶媒のカルボン酸は同種であることが好ましい。ニオブアルコキシドとしては、ペンタエトキシニオブ(別名、エトキシニオブ)等を用いることができる。
〔BNT−BT層形成用液組成物〕
本実施形態のBNT−BT層形成用液組成物は、有機ビスマス化合物と有機ナトリウム化合物と有機チタン化合物と有機バリウム化合物とを含む有機金属化合物と溶媒を含む。この液組成物から形成されるBNT−BT層は、チタン酸ビスマスナトリウム(Bi,Na)TiO3のペロブスカイト型構造の有機金属化合物とチタン酸バリウム(BaTiO3)のペロブスカイト型構造の有機金属化合物の複合酸化物により構成される。
Biの原料、Naの原料及びTiの原料は、上述したBNT−BKT層形成用液組成物のBiの原料、Naの原料及びTiの原料と同じである。Baの原料としては、2-エチルヘキサン酸バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
BNT−BT層形成用液組成物の溶媒としては、PZT層形成用液組成物と同様の溶媒を用いることができる。
〔非鉛層形成用液組成物の調製方法〕
本実施形態のBNT−BKT層、KNN層及びBNT−BT層を形成するための液組成物は、上述した複数種類の金属源と、上述した溶媒に溶解して調製される。
〔BNT−BKT層形成用液組成物の調製方法〕
先ず容器に上述した溶媒と有機ナトリウム化合物を入れ、130℃〜170℃のオイルバスで30分〜60分間還流することにより、赤褐色の懸濁液を得る。そこに有機チタン化合物を加えて、同一の温度でオイルバスで30分〜60分間還流して第1溶液を調製する。この第1溶液に有機ビスマス化合物と有機カリウム化合物と上述した溶媒を加えて、同一の温度でオイルバスで30分〜60分間還流して第2溶液を調製する。更に第2溶液にアセチルアセトン、酢酸等の安定化剤を加えて、同一の温度でオイルバスで30分〜60分間還流して第3溶液を調製する。ここで上記有機ビスマス化合物(Bi源)、上記有機ナトリウム化合物(Na源)、上記有機チタン化合物(Ti源)及び上記有機カリウム化合物(K源)は、金属モル比(Bi:Na:K:Ti)が5:4:1:10になるようにそれぞれ秤量する。
続いて減圧蒸留して第3溶液から溶媒を脱離して、有機溶媒及び反応副生成物を除去する。得られた溶液に、アルコール、水等を添加し、液を酸化物換算で6質量%〜20質量%まで希釈する。得られた液をフィルターでろ過することにより残留物を取り除き、BNT−BKT層形成用液組成物を得る。酸化物換算で6質量%未満では、良好なBNT−BKT層は得られるものの、層厚が薄すぎるため、所望の厚さを得るまでに生産性が悪くなる。20質量%を超えると、BNT−BKT層形成用液組成物に沈殿が生じやすい。
〔KNN層形成用液組成物の調製方法〕
先ず容器に上述したカルボン酸等の有機溶媒と有機ナトリウム化合物を入れ、130℃〜170℃のオイルバスで30分〜60分間還流することにより、赤褐色の懸濁液を得る。そこに有機カリウム化合物及び有機ニオブ化合物を加えて、同一の温度のオイルバスで30分〜60分間還流を続けて、合成液を調製する。ここで上記有機カリウム化合物(K源)、上記有機ナトリウム化合物(Na源)及び上記有機ニオブ化合物(Nb源)は、金属モル比(K:Na:Nb)がx:1−x:y(ただし、0.1≦x≦0.7、0.7≦y≦1.4)になるようにそれぞれ秤量する。以下、BNT−BKT層形成用液組成物を調製する方法と同様にして、KNN層形成用液組成物を得る。
〔BNT−BT層形成用液組成物の調製方法〕
先ず容器に上述した溶媒と有機ナトリウム化合物を入れ、130℃〜170℃のオイルバスで30分〜60分間還流することにより、赤褐色の懸濁液を得る。そこに有機チタン化合物を加えて、同一の温度でオイルバスで30分〜60分間還流して第1溶液を調製する。この第1溶液に有機ビスマス化合物と有機バリウム化合物と上述した溶媒を加えて、同一の温度でオイルバスで30分〜60分間還流して第2溶液を調製する。更に第2溶液にアセチルアセトン、酢酸等の安定化剤を加えて、同一の温度でオイルバスで30分〜60分間還流して第3溶液を調製する。ここで上記有機ビスマス化合物(Bi源)、上記有機ナトリウム化合物(Na源)、上記有機チタン化合物(Ti源)及び上記有機バリウム化合物(Ba源)は、金属モル比(Bi:Na:Ti:Ba)が4.7:4.7:0.6:10になるようにそれぞれ秤量する。以下、BNT−BKT層形成用液組成物を調製する方法と同様にして、BNT−BT層形成用液組成物を得る。
〔積層圧電体膜の形成方法〕
次に図面に基づいて積層圧電体膜の形成方法について説明する。
〔3層構造の積層圧電体膜の形成方法〕
図1に3層構造の積層圧電体膜10を示す。この圧電体膜10が形成される基板12は、シリコン製又はサファイア製の耐熱性のある基板本体13を有する。シリコン製の基板本体13の場合、この基板本体13上にSiO2膜14が設けられ、このSiO2膜14上にPt、TiOx、Ir、Ru等の導電性を有し、かつ積層圧電体膜と反応しない材料からなる下部電極15が設けられる。例えば、下部電極15を、基板本体側から順にTiOx膜15a及びPt膜15bの2層構造にすることができる。上記TiOx膜の具体例としては、TiO2膜が挙げられる。更に上記SiO2膜は密着性を向上するために形成される。
次いで、基板12上に、第1PZT層16aを形成するためのPZT層形成用液組成物を塗布し仮焼した後、焼成する。次にこの上に第1非鉛層17aを形成するための非鉛層形成用液組成物を塗布し仮焼した後、焼成する。続いてこの上に第2PZT層16bを形成するためのPZT層形成用液組成物を塗布し仮焼した後、焼成する。このような方法によって、3層構造の積層圧電体膜10を形成する。
〔4層構造の積層圧電体膜の形成方法〕
図2に4層構造の積層圧電体膜20を示す。図1に示した3層構造の積層圧電体膜の第2PZT層16bを形成するためのPZT層形成用液組成物を塗布し仮焼した後に焼成し、この上に第2非鉛層17bを形成するための非鉛層形成用液組成物を塗布し仮焼した後に焼成する。このような方法によって、4層構造の積層圧電体膜20を形成する。
〔6層構造の積層圧電体膜の形成方法〕
図3に6層構造の積層圧電体膜20を示す。図2に示した4層構造の積層圧電体膜の第2非鉛層17bを形成するための非鉛層形成用液組成物を塗布し仮焼した後に焼成し、第3PZT層16cを形成するためのPZT層形成用液組成物を塗布し仮焼した後に焼成し、更に続いてこの上に第3非鉛層17cを形成するための非鉛層形成用液組成物を塗布し仮焼した後に焼成する。このような方法によって、6層構造の積層圧電体膜30を形成する。
なお、前述の各積層圧電体膜の形成方法においては、PZT層及び非鉛層を形成するための各液組成物を塗布し仮焼する度に焼成を行っているが、これに限らず、焼成を一括で行ってもよい。すなわち、例えば、3層構造の積層圧電体膜を形成する場合、基板12上に、第1PZT層16aを形成するためのPZT層形成用液組成物を塗布し仮焼する。次にこの上に第1非鉛層17aを形成するための非鉛層形成用液組成物を塗布し仮焼する。続いてこの上に第2PZT層16bを形成するためのPZT層形成用液組成物を塗布し仮焼する。そして最後に仮焼した3層を一括して焼成することで3層構造の積層圧電体膜10を形成することができる。
上記液組成物の塗布は、スピンコーティング、ディップコーティング、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法又は静電スプレー法等により行われる。塗布量は、PZT層形成用液組成物の場合、焼成した後の時点で、30nm以上の厚さを有するPZT層になるように決められる。非鉛層形成用液組成物の場合、焼成した後の時点で、30nm以上400nm以下の厚さを有する非鉛層になるように決められる。
上記液組成物を塗布した後の仮焼は、例えば、ホットプレート又は赤外線急速加熱炉(RTA)により、150℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下の温度で行われる。仮焼する温度が150℃未満では、ゲル状にならない不具合がある。400℃を超えると、圧電体膜が結晶化しにくくなる。
上記仮焼した後の焼成は、酸素(O2)が含まれる雰囲気中で、仮焼した積層体をRTAで10℃/秒以上の速度で600℃以上800℃以下の温度まで昇温し、0.5分以上5分以下の時間保持することにより行われる。好ましい昇温速度は40℃/秒以上60℃/秒以下であり、好ましい焼成温度は650℃以上750℃以下である。昇温速度が10℃/秒未満、焼成温度が600℃未満では、作製される積層圧電体膜の結晶化度が十分でなく、その密度が低くなる。焼成温度が800℃を超えると、基板等にダメージが生じる。
〔積層圧電体膜〕
本発明における積層圧電体膜10,20,30は、図1〜図3に示すように、基板12上PZT層16a,16b,16c及び非鉛層17a,17b,17cが交互に積層された構造となっている。本発明においては、積層された層数は3以上である。好ましくは、積層された層数を4〜6とするとよい。積層圧電体膜10、20、30の厚さは特に限定されるものではないが、500nm以上3000nm以下とすることが好ましい。500nm以下の場合基板の影響を受け圧電体膜としての性能が低下するおそれがあり、3000nmを超えた場合、クラックが発生するおそれがある。
PZT層16a,16b,16cは(Pb,Zr)TiO3層である。なお、PZT層16a,16b,16cを構成する(Pb,Zr)TiO3には、Mn,Nb,Ta等がドープされていてもよい。PZT層16a,16b,16cの厚さは30nm以上である。厚さが30nm未満であった場合には圧電特性が低下する。厚さの上限は特に限定されるものではないが、100nm以下とするとよい。PZT層16a,16b,16cの厚さの好ましい範囲は、60nm以上100nm以下の範囲内である。
非鉛層17a,17b,17cは、鉛を含まない圧電体膜からなる層であり、例えば、(Bi,Na)TiO3−(Bi,K)TiO3層、(K,Na)NbO3層又は(Bi,Na)TiO3−BaTiO3層等のペロブスカイト構造の金属酸化物層とすることができる。非鉛層17a,17b,17cの厚さは30nm以上400nm以下の範囲内である。非鉛層17a,17b,17cの厚さが30nm未満であった場合には、緻密な積層圧電体膜10、20、30が得られないという不具合があり、400nmを超えた場合には、非鉛層17a,17b,17cにクラックが生じ、積層圧電体膜10,20,30のリーク電流が高くなり、圧電特性が発現しない。非鉛層17a,17b,17cの厚さは、60nm以上200nm以下の範囲内とすることが好ましい。
また、PZT層の間に積層される非鉛層17a,17b,17cは、それぞれが同種の金属酸化物層であってもよいし、異種の金属酸化物層であってもよい。また、同種の金属酸化物層であっても、それぞれが組成の異なる金属酸化物層であってもよい。
更に、PZT層の間に積層される非鉛層17a,17b,17cは、同種の金属酸化物層であり組成の異なる金属酸化物層を、2層以上積層していてもよい。或いは、異種の金属酸化物層が2層以上積層されてもよい。なお、異種の金属酸化物層が2層以上積層されているとは、例えば、KNN層上にBNT−BKT層を積層するような構成である。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
先ず、次の方法により、非鉛層形成用のBNT−BKT層形成用液組成物、KNN層形成用液組成物及びBNT−BT層形成用液組成物をそれぞれ別々に調製した。
(1)第1非鉛層形成用液組成物であるBNT−BKT層形成用液組成物の調製
フラスコにテトラチタンイソプロポキシド(Ti源)とアセチルアセトンを投入し、30分間還流して第1溶液を調製した。この第1溶液にエタノールとナトリウムエトキシド(Na源)とカルシウムエトキシド(K源)を添加し、10分間還流して第2溶液を調製した。この第2溶液に酢酸ビスマス(Bi源)と大過剰の酢酸を添加し、30分間還流して第3溶液を調製した。続い第3溶液から溶媒を脱離して、エタノール及び反応副生成物を除去した。得られた溶液に酢酸を添加し、酸化物換算で10質量%まで希釈した。更にこの希釈した液に安定化剤として、2−ジメチルアミノエタノールをTi:安定化剤がモル比で1:1となるように添加し、続けて酢酸で液を酸化物換算で8質量%まで希釈した。得られた液をフィルターでろ過することによりゴミを取り除き、第1非鉛層形成用液組成物であるBNT−BKT層形成用液組成物を得た。
ここでエタノールの添加量は、Tiの原料に対してモル比(Ti:エタノール)で1:12であった。ナトリウムエトキシドの添加量は、Tiの原料に対してモル比(Ti:ナトリウムエトキシド)で1:0.58であった。酢酸ビスマスの添加量は、Tiの原料に対してモル比(Ti:酢酸ビスマス)で1:0.54であった。カリウムエトキシドの添加量は、Tiの原料に対してモル比(Ti:カリウムエトキシド)で1:0.24であった。
(2)第2非鉛層形成用液組成物であるKNN層形成用液組成物の調製
フラスコに、2-エチルヘキサン酸と、無水酢酸と、2-エチルヘキサン酸ナトリウム(Na源)と、コハク酸ジメチルとを、5:3:1:4のモル比になるように加えて懸濁液を調製した。次いでフラスコ内の得られた懸濁液を150℃のオイルバスで150℃で30分間還流を行った。還流後、還流した液に2-エチルヘキサン酸カリウム(K源)と、エトキシニオブ(Nb源)を加え、150℃のオイルバスで150℃で30分間還流することにより合成液を調製した。ここで上記2-エチルヘキサン酸カリウム(K源)、上記2-エチルヘキサン酸ナトリウム(Na源)及び上記エトキシニオブ(Nb源)は、金属モル比(K:Na:Nb)が50:50:100になるようにそれぞれ秤量した。還流後、還流した液に水とエタノールを加え、再び150℃のオイルバスで150℃で30分間還流を行った。還流後、アスピレータで0.015MPaまで減圧蒸留した。これにより未反応生成物を除去して、第3非鉛層形成用液組成物であるKNN層形成用液組成物を得た。この液組成物中に占める金属酸化物の濃度が10質量%になるように、液組成物に溶媒としての2-エチルヘキサン酸を加えて液組成物を希釈した。希釈した液組成物100質量%に対して主溶媒としての2-エチルヘキサン酸の含有割合は70質量%であった。希釈液をフィルタでろ過することにより残留物を除去した。
(3)第3非鉛層形成用液組成物であるBNT−BT層形成用液組成物の調製
上述したBNT−BKT層形成用液組成物を調製する際に、第1溶液に、酢酸バリウム(Ba源)を酢酸ビスマス(Bi源)及び大過剰の酢酸とともに添加した。この酢酸バリウムの添加量は、Tiの原料に対してモル比(Ti:酢酸バリウム)で1:0.15であった。それ以外は、BNT−BKT層形成用液組成物の調製方法と同様にして、第2非鉛層形成用液組成物であるBNT−BT層形成用液組成物を調製した。
(4)積層圧電体膜の形成
基板の電極上にPZT層と非鉛層とが交互に積層された圧電体膜を次の方法により形成した。先ず、4インチのシリコン基板を熱酸化することにより、シリコン基板上に500nmの酸化膜を形成した。酸化膜上にTiをスパッタリング法により20nm堆積させ、その上にスパッタリング法により厚さ100nmの(111)配向のPt下部電極を形成した。得られた基板上に、三菱マテリアル社製のPbZrTiO3−E1液(濃度1質量%、組成:Pb/Ti/=125/100)の10質量%濃度のPZT層形成用液組成物(三菱マテリアル社製、E1溶液)を 所定量滴下し、所定の回転速度で所定時間スピンコートを行った。続いてスピンコートされた液を乾燥した。更に、300℃のホットプレートで5分間仮焼を行った。その後、酸素雰囲気下、RTAにて昇温速度50℃/秒で700℃の温度で保持時間1分で焼成を行い、Pt電極上に所定の厚さの第1PZT層を形成した。
この第1PZT層上に第1、第2又は第3非鉛層形成用液組成物のいずれかを所定量滴下し、所定の回転速度で所定時間スピンコートを行った。続いてスピンコートされた液を乾燥した。更に、300℃のホットプレートで5分間仮焼を行った。その後、酸素雰囲気下、RTAにて昇温速度50℃/秒で700℃の温度で保持時間1分で焼成を行い、第1PZT層上に所定の厚さの第1、第2又は第3非鉛層を形成した。
この第1、第2又は第3非鉛層上に上記PZT層形成用液組成物を 所定量滴下し、所定の回転速度で所定時間スピンコートを行った。続いてスピンコートされた液を乾燥した。更に、300℃のホットプレートで5分間仮焼を行った。その後、酸素雰囲気下、RTAにて昇温速度50℃/秒で700℃の温度で保持時間1分で焼成を行い、第1、第2又は第3非鉛層上に所定の厚さの第2PZT層を形成した。以下、次に述べる実施例及び比較例毎に、第1PZT層、第1、第2又は第3非鉛層の前駆体層、第2PZT層がこの順に積層された3層構造の積層圧電体膜を形成するか、又は第2PZT層上に更に第1、第2又は第3非鉛層形成用液組成物のいずれかを所定量滴下し、所定の回転速度で所定時間スピンコートを行い、続いてスピンコートされた液を乾燥し、更に300℃のホットプレートで5分間仮焼を行って、その後、酸素雰囲気下、RTAにて昇温速度50℃/秒で700℃の温度で保持時間1分で焼成を行い、第2PZT層上に所定の厚さの第1、第2又は第3非鉛層を形成した4層構造の積層圧電体膜を形成した。次に述べる実施例7では同様にして、6層構造の積層圧電体膜を形成した。
<実施例1>
実施例1では、基板上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。この上に第1非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BKT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1BNT−BKT層を形成した。この上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第2PZT層を形成した。この上に上記第1非鉛層形成用液組成物であるBNT−BKT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第2BNT−BKT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ60nmのPZT層、厚さ70nmのBNT−BKT層、厚さ60nmのPZT層及び厚さ70nmのBNT−BKT層からなる4層構造の積層圧電体膜を形成した。各層の厚さは焼成後の厚さである(以下、同じ。)。
<実施例2>
実施例2では、実施例1のBNT−BKT層形成用液組成物の代わりに、第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を実施例1と同じ条件でスピンコート、仮焼及び焼成を行って、基板上に、厚さ60nmのPZT層、厚さ70nmのBNT−BT層、厚さ60nmのPZT層及び厚さ70nmのBNT−BT層からなる4層構造の積層圧電体膜を形成した。
<実施例3>
実施例3では、実施例1のBNT−BKT層形成用液組成物の代わりに、第2非鉛層形成用液組成物である上記KNN層形成用液組成物を実施例1と同じ条件でスピンコート、仮焼及び焼成を行って、基板上に、厚さ60nmのPZT層、厚さ70nmのKNN層、厚さ60nmのPZT層及び厚さ70nmのKNN層からなる4層の積層圧電体膜を形成した。
<実施例4>
実施例4では、実施例1のBNT−BKT層形成用液組成物の代わりに、第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を用いた。先ず、基板上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。この上に第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼することを3回繰返し、その後、焼成することで、第1BNT−BT層を形成した。この上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコート、仮焼及び焼成を行って第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ30nmのPZT層、厚さ200nmのBNT−BT層及び厚さ30nmのPZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<実施例5>
実施例5では、第1PZT層の前駆体層上に、非鉛層の前駆体層として、第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を実施例1と同じ条件でスピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行った。また第2PZT層上に、非鉛層の前駆体層として、実施例1のBNT−BKT層形成用液組成物を実施例1と同じ条件でスピンコートを行った後、仮焼及び焼成した。これにより、基板上に、厚さ60nmのPZT層、厚さ70nmのBNT−BT層、厚さ60nmのPZT層及び厚さ70nmのBNT−BKT層からなる4層の積層圧電体膜を形成した。
<実施例6>
実施例6では、実施例1のBNT−BKT層形成用液組成物の代わりに、第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を用いた。先ず、基板上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼することを2回行い、その後、焼成して第1PZT層を形成した。この上に第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコート、仮焼及び焼成を行って第1BNT−BT層を形成した。この上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼することを2回行い、その後焼成して第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ100nmのPZT層、厚さ60nmのBNT−BT層及び厚さ100nmのPZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<実施例7>
実施例7では、実施例1の4層の積層圧電体膜上に、更に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、4000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第3PZT層を形成した。この上に第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成して第3BNT−BT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ60nmのPZT層、厚さ70nmのBNT−BT層、厚さ60nmのPZT層、厚さ70nmのBNT−BT層、厚さ60nmのPZT層及び厚さ70nmのBNT−BT層からなる6層の積層圧電体膜を形成した。
<実施例8>
実施例8では、基板上に、上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。この上に、BNT−BT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼することを6回繰返し、その後、焼成することで第1BNT−BT層を形成した。この上に、PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコート、仮焼及び焼成を行って第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ60nmの第1PZT層、厚さ360nmの第1BNT−BT層及び厚さ60nmの第2PZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<実施例9>
実施例9では、基板上に、上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。BNT−BT層形成用液組成物を酢酸で1.5倍に希釈し、これを第1PZT層の上に0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1BNT−BT層を形成した。この上に、PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコート、仮焼及び焼成を行って第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ60nmの第1PZT層、厚さ40nmの第1BNT−BT層及び厚さ60nmの第2PZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<比較例1>
比較例1では、先ず、上記PZT層形成用液組成物をブタノールで2倍に希釈し、これを基板上に0.05ml滴下し、4000rpmで30秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。この上に第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼することを2回行い、その後焼成して第1BNT−BT層を形成した。この上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼することを2回行い、その後焼成して第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ10nmのPZT層、厚さ125nmのBNT−BT層、厚さ125nmのPZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<比較例2>
比較例2では、先ず、上記PZT層形成用液組成物をブタノールで3倍に希釈し、これを基板上に0.05ml滴下し、3000rpmで30秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。この上に第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1BNT−BT層を形成した。上記PZT層形成用液組成物をブタノールで3倍に希釈し、これを第1BNT−BT層上に0.05ml滴下し、5000rpmで30秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ5nmのPZT層、厚さ60nmのBNT−BT層、厚さ5nmのPZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<比較例3>
比較例3では、先ず、基板上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。この上に第3非鉛層形成用液組成物である上記BNT−BT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼することを8回行い、その後焼成して第1BNT−BT層を形成した。この上に上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ60nmのPZT層、厚さ500nmのBNT−BT層、厚さ60nmのPZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<比較例4>
比較例4では、基板上に、上記PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1PZT層を形成した。BNT−BT層形成用液組成物を酢酸で3倍に希釈し、これを第1PZT層の上に0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った後、仮焼及び焼成を行って第1BNT−BT層を形成した。この上に、PZT層形成用液組成物を0.05ml滴下し、3000rpmで20秒間スピンコート、仮焼及び焼成を行って第2PZT層を形成した。これにより、基板上に、厚さ60nmの第1PZT層、厚さ10nmの第1BNT−BT層及び厚さ60nmの第2PZT層からなる3層の積層圧電体膜を形成した。
<13種類の積層圧電体膜の内容と比較試験>
実施例1〜9及び比較例1〜4で得られた13種類の積層圧電体膜の各層の種類と層厚を表1に示す。また10種類の積層圧電体膜について、次の方法により、(1)膜質及び(2)圧電特性を調べた。その結果を表2に示す。
(1) 積層圧電体膜の膜質
積層圧電体膜の表面をSEMにより観察してクラックの有無を調べた。また積層圧電体膜の断面をSEMにて観察し、その断面像を画像解析することにより膜の面積及び膜中のボイド部分の面積を算出し、[(膜の面積−ボイド部分の面積)/膜の面積]×100という計算を行うことにより膜密度(%)を算出した。クラックがなく、膜密度が98%を超える場合を「優秀」と判定し、クラックがなく、膜密度が90%〜97%の範囲にある場合を「良好」と判定し、クラックがあり、膜密度が90%未満である場合を「不良」と判定した。
(2) 積層圧電体膜の圧電特性(d33
積層圧電体膜の圧電特性として、圧電定数d33を測定した。具体的には積層圧電体膜の表面に、更にスパッタリング法により4mm2のPt上部電極を形成した後、RTAを用いて酸素雰囲気中、700℃の温度で1分間ダメージリカバリーアニーリングを行った圧電素子を試験用サンプルとした。この試験用サンプルについて、レーザー干渉計(aix ACCT社製、DBLI (Double Beam Laser Interferometer):TFanalyzer-2000)を用いて圧電定数d33(pm/V)の大小(高低)を測定した。ここで圧電定数の大小(高低)とは、圧電定数の絶対値の大小をいう。d33が50pm/V未満を「不良」と判定し、50pm/V〜70pm/Vを「良好」と判定し、70pm/Vを超える場合を「優秀」と判定した。
Figure 2020057693
Figure 2020057693
<比較試験及び評価>
表1及び表2から明らかなように、比較例1の3層の積層圧電体膜では、第1PZT層の厚さが10nmと薄過ぎる一方、非鉛層であるBNT−BT層及び第2PZT層がそれぞれ125nmと厚かったため、積層圧電体膜の膜質は第2層及び第3層にクラック等が見られないため「良好」であったが膜面内では均質でなかった。また圧電定数d33が35pm/Vであり「不良」であった。
比較例2の3層の積層圧電体膜では、第1PZT層及び第2PZT層がそれぞれ5nmと薄過ぎる一方、中間層の非鉛層であるBNT−BT層は60nmであったため、積層圧電体膜の膜質はBNT−BT層にクラック等が見られないため「良好」であったが膜面内では均質でなかった。またリーク電流が高かったため、積層圧電体膜の圧電定数は測定不能であった。
比較例3の3層の積層圧電体膜では、第1PZT層及び第2PZT層がそれぞれ60nmであったが、中間層の非鉛層であるBNT−BT層は500nmと厚過ぎたため、積層圧電体膜にクラックが発生し、その膜質は「不良」であった。またリーク電流が高かったため、積層圧電体膜の圧電定数は測定不能であった。
比較例4の3層の積層圧電体膜では、第1PZT層及び第2PZT層がそれぞれ60nmであったが、中間層の非鉛層であるBNT−BT層は10nmと薄過ぎたため、積層圧電体膜にクラックが発生し、緻密な膜が得られず、その膜質は「不良」であった。またリーク電流が高かったため、積層圧電体膜の圧電定数は測定不能であった。
これに対して、実施例1〜9の3層、4層及び6層の積層圧電体膜では、本発明の第1の観点の要件を満たしているため、非鉛層にクラックが発生せず、非鉛層の結晶化が十分行われて、良好な膜質が得られた。また圧電定数d33が50pm/V〜80pm/Vの範囲にあり、「優秀」又は「良好」であった。
本発明の積層圧電体膜は、アクチュエータ、超音波デバイス、振動発電素子、焦電センサ、インクジェットヘッド、オートフォーカス等のMEMSアプリケーションの圧電体膜に用いることができる。
10,20,30 積層圧電体膜
12 基板
15 下部電極
16a,16b,16c PZT層
17a,17b,17c 非鉛層

Claims (3)

  1. 基板の電極上にPZT層と非鉛層とが交互に積層された圧電体膜であって、
    前記積層された層数は少なくとも3であり、前記PZT層の厚さは少なくとも30nmであり、かつ前記非鉛層の厚さは30nm以上400nm以下であることを特徴とする積層圧電体膜。
  2. 非鉛層が(Bi,Na)TiO3−(Bi,K)TiO3層、(K,Na)NbO3層又は(Bi,Na)TiO3−BaTiO3層のいずれかのペロブスカイト構造の金属酸化物層である請求項1記載の積層圧電体膜。
  3. 前記積層された層数が少なくとも4であって、前記PZT層の間に積層される非鉛層は同種の金属酸化物層又は異種の金属酸化物層である請求項2記載の圧電体膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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