JP2020055398A - マスタシリンダ - Google Patents

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陽介 三田
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Abstract

【課題】内部における作動液の流れを改善することができるマスタシリンダを提供すること。【解決手段】マスタシリンダ2は、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の先端部分に、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23がシリンダ本体21に対して第一位置にある場合にポート21a,21cと第一液圧室A及び第二液圧室Bとを連通し、シリンダ本体21に対して第一位置よりも前進した第二位置にある場合に前方側シール部材213によりポート21a,21cと第一液圧室A及び第二液圧室Bとの連通が遮断されるように、軸線方向に沿って延設され、且つ、周壁部221b,231bの周方向に沿って配置された複数の連通路223及び連通路233と、周方向に沿って延設されて複数の連通路223,233を接続する接続路225及び接続路235と、を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、マスタシリンダに関する。
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された制御付ブレーキシステム用マスタシリンダ(以下、単に「従来のマスタシリンダ」と称呼する。)が知られている。この従来のマスタシリンダは、ハウジングと、ハウジング内を移動可能な少なくとも一つのピストンと、ピストンを液圧室から密封するシール部材と、ピストンに形成されていて液圧室と加圧されていないリザーバタンクとを接続可能な制御通路と、を備えている。
特許第5976545号公報
近年、車両においては、運転者によるブレーキ操作に拘わらず、自動的に車両を制動する自動ブレーキ機能が搭載される場合がある。この自動ブレーキ機能においては、マスタシリンダよりも下流側に設けられたポンプによってマスタシリンダの液圧室の作動液が吸引されて、吸引された作動液が加圧されて各車輪のホイールシリンダに供給される。このような自動ブレーキ機能においては、ポンプがマスタシリンダから作動液を速やかに且つ必要十分な量を吸引して、制動力を発生させる際の応答性を高める必要がある。
ところで、上記従来のマスタシリンダにおいては、制御通路を流れる作動液に発生する流動抵抗を低減することにより、下流側にて作動液が吸引された場合にリザーバタンクに貯留された作動液を制御通路を介して下流側に供給するようになっている。このような作動液の吸い込み性については、更に改善する必要がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、内部における作動液の流れを改善することができるマスタシリンダを提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明に係るマスタシリンダは、一端が閉塞し且つ他端が開口したシリンダ本体と、シリンダ本体の内部にシリンダ本体の軸線方向に沿って摺動可能に収容され、且つ、シリンダ本体の内周面と共に液圧室を区画する底壁部及び底壁部に連結された周壁部を有する有底筒状のマスタピストンと、シリンダ本体に設けられて、作動液を貯留するリザーバタンクに連通するポートと、マスタピストンの周壁部における先端部分とポートとの間に配置されて、シリンダ本体の内周面とマスタピストンの先端部分を含む外周面との間をシールするシール部材と、を備えたマスタシリンダであって、先端部分に、マスタピストンがシリンダ本体に対して第一位置にある場合にポートと液圧室とを連通し、マスタピストンがシリンダ本体に対して第一位置よりも前進した第二位置にある場合にシール部材によりポートと液圧室との連通が遮断されるように、軸線方向に沿って延設され、且つ、周壁部の周方向に沿って配置された複数の連通路と、周方向に沿って延設されて複数の連通路を接続する接続路と、を有する。
これによれば、マスタピストンの先端部分にて周方向に沿って複数設けられた連通路は、周方向に沿って延設された接続路によって接続される。これにより、マスタピストンの先端部分においては、ポート(リザーバタンク)から連通路を介して液圧室に流れる作動液の流路断面積が接続路によって拡大される。従って、リザーバタンクと液圧室との間における作動液の流れがスムーズとなるように改善することができる。
その結果、マスタシリンダを車両のブレーキ装置に適用した場合において、自動ブレーキ機能によって車両のブレーキ装置のポンプがマスタシリンダの液圧室に存在する作動液を吸引する際、即ち、液圧室の液圧が低下した際には、速やかに且つ必要十分な量の作動液を吸引することができる。従って、車両のブレーキ装置においては、自動ブレーキ機能作動時におけるポンプ圧をホイールシリンダに供給して制動力を発生させる際の応答性を高めることが可能となる。
本発明の実施形態に係るマスタシリンダが設けられるブレーキ装置の構成を示す図である。 図1のマスタシリンダの構成を示す断面図である。 図2のマスタピストンの構成を示す斜視図である。 第一変形例に係るマスタピストンの構成を示す斜視図である。 第二変形例に係るマスタピストンの構成を示す斜視図である。 その他の変形例に係る連通路及び接続路を説明するための断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態及び各変形例の相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。又、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
本実施形態における車両のブレーキ装置1は、図1に示すように、マスタシリンダ2、ブレーキブースタ3、ホイールシリンダ4、ブレーキアクチュエータ5及びリザーバタンク6を備えている。マスタシリンダ2は、後に詳述するように、シリンダ本体21、及び、マスタピストンとしての第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23と、を含んで構成されている。ブレーキブースタ3は、例えば、負圧式の倍力装置であり、運転者による踏力を倍力して第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23に伝達する。
ホイールシリンダ4は、各輪に設けられたホイールシリンダ41、ホイールシリンダ42、ホイールシリンダ43及びホイールシリンダ44から構成される。各ホイールシリンダ41〜44は、ブレーキアクチュエータ5(以下、単に「アクチュエータ5」とも称呼する。)を介して、マスタシリンダ2に接続されている。ホイールシリンダ41は、車両の左後輪RLに配置されている。ホイールシリンダ42は、車両の右後輪RRに配置されている。ホイールシリンダ43は、車両の左前輪FLに配置されている。ホイールシリンダ44は、車両の右前輪FRに配置されている。これにより、ホイールシリンダ4は、作動液としてのブレーキフルードがマスタシリンダ2又は後述するポンプによって加圧されてアクチュエータ5を介して供給されると、左後輪RL、右後輪RR、左前輪FL及び右前輪FRに制動力を発生させる。
アクチュエータ5は、詳細な図示を省略するが、各ホイールシリンダ41〜44に対応して設けられた管路、電磁弁及び逆止弁等を有している。これにより、アクチュエータ5は、図示を省略する制御装置(マイクロコンピュータ)によって電磁弁が連通状態又は遮断状態に切替制御されると、マスタシリンダ2によって加圧されたブレーキフルードを各ホイールシリンダ41〜44に供給したり、内蔵するポンプによって加圧されたブレーキフルードを調圧して各ホイールシリンダ41〜44に供給したりする。尚、アクチュエータ5の作動については、本発明に直接関係しないので、その詳細な説明を省略する。
車両のブレーキ装置1においては、運転者がブレーキペダル7を踏み込むと、マスタシリンダ2に気密的に連結された負圧式のブレーキブースタ3により踏力が倍力され、シリンダ本体21内の第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が押圧される。押圧された第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23は、例えば、車両前後方向(軸線方向)にて前方に向けて前進し、それぞれ、マスタシリンダ2(より詳しくはシリンダ本体21)の内部にリザーバタンク6から供給されたブレーキフルードを加圧する。これにより、マスタシリンダ2においては、マスタシリンダ圧が発生し、マスタシリンダ圧がアクチュエータ5を介して各ホイールシリンダ41〜44に供給(伝達)される。
又、車両のブレーキ装置1においては、例えば、自動ブレーキ機能の作動時や、走行中又は制動時の車両の挙動を修正するために、アクチュエータ5に内蔵したポンプを作動させる。これにより、ポンプは、例えば、自動ブレーキ機能の作動時においては、マスタシリンダ2を介してリザーバタンク6に貯留されているブレーキフルードを吸引し、吸引したブレーキフルードを加圧してポンプ圧を発生させる。そして、ポンプ圧は、アクチュエータ5によって調圧されて、各ホイールシリンダ41〜44に供給(伝達)される。
(1.マスタシリンダ2の構成の詳細)
マスタシリンダ2は、図2に示すように、マスタピストンである第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23を摺動可能に収容するシリンダ本体21を備えている。シリンダ本体21は、一端が底部211を有して閉塞し且つ一端が開口した有底筒状のシリンダである。シリンダ本体21の開口側には、ブレーキブースタ3が気密的に連結される(図1を参照)。
ここで、以下の説明では、シリンダ本体21の軸線方向即ち車両前後方向において、シリンダ本体21の底部211側を「前方」とし、シリンダ本体21の開口側を「後方」とする。又、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23は、ブレーキペダル7が操作されていない場合にはマスタシリンダ2(シリンダ本体21)に対して原位置から前進していない「第一位置」にある。更に、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23は、ブレーキペダル7が操作された場合には第一位置から前進した「第二位置」にある。
図2に示すように、シリンダ本体21の内周面212には、周方向に沿って形成された収容溝212aが、シリンダ本体21の軸線方向に沿って第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23のそれぞれに対応して二つずつ、計四つ設けられている。尚、以下の説明において、特に区別する場合、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23のそれぞれに対して前方側の収容溝212aを「前方側収容溝212a」と称呼し、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23のそれぞれに対して後方側の収容溝212aを「後方側収容溝212a」と称呼する。
前方側収容溝212aには、シール部材である前方側シール部材213が収容される。又、後方側収容溝212aには、後方側シール部材214が収容される。前方側シール部材213及び後方側シール部材214は、弾性部材(例えば、ゴム材料)から形成されており、例えば、一端が開放された断面形状としてU字状のカップシールである。前方側シール部材213及び後方側シール部材214の外周縁は、収容溝212aの底面(内周面)と当接する。
前方側シール部材213の内周縁は、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第一位置にある場合には、後述する連通路223及び連通路233とガイド部224及びガイド部234と接続路225及び接続路235とが形成される先端部分における外周面と当接する。これにより、前方側シール部材213は、後述するように、連通路223,233を介したブレーキフルードの流動を許容する。
又、前方側シール部材213の内周縁は、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第二位置にある場合には、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の先端部分よりも後方の外周面と当接する。これにより、前方側シール部材213は、連通路223,233を介したブレーキフルードの流動を禁止する。
後方側シール部材214の内周縁は、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の第一位置及び第二位置に拘わらず、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の先端部分よりも後方の外周面と当接する。従って、後方側シール部材214は、常に、ブレーキフルードの流動を禁止する。
第一マスタピストン22は、ブレーキブースタ3に気密的に連結されており、シリンダ本体21の内部にて同軸的且つ軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って前進及び後進可能に配置されている。第一マスタピストン22は、図2に示すように、本体部221と、突出部222と、連通路223と、ガイド部224と、接続路225と、から構成されている。
本体部221は、前方に位置する先端が開口する有底筒状(中空状)に形成されており、後方に設けられた底壁部221aと、底壁部221aに連結された周壁部221bと、から構成されている。突出部222は、本体部221の底壁部221aの端面から後方に突出した円筒状の部分である。突出部222は、ブレーキブースタ3の内部に気密的に収容されている。突出部222の後方端部は、ブレーキブースタ3の図示を省略する入力部材と当接して押圧されるようになっている。
連通路223は、図3に示すように、本体部221の先端にて周方向に沿って複数設けられている。連通路223は、軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って溝状に形成されている。連通路223の軸線方向(即ち、車両前後方向)にて後方の基端223aは、第一マスタピストン22が第一位置にある場合において、図3にて破線により示す前方側シール部材213の内周縁におけるシール線よりも後方となるように形成される。又、連通路223の軸線方向(即ち、車両前後方向)にて前方の先端223bは、前方側シール部材213のシール線よりも前方となるように形成される。尚、基端223aは、第一マスタピストン22が第二位置にある場合において、前方側シール部材213のシール線よりも前方となる。
ガイド部224は、図3に示すように、第一マスタピストン22の本体部221の外径と同一の外径を有しており、本体部221の先端まで軸線方向に沿って延設されている。これにより、ガイド部224は、前進又は後進する第一マスタピストン22の先端をシリンダ本体21の内周面212に対して案内する。ガイド部224は、周方向に沿って互いに離間して、即ち、複数(図3にて二つ)の連通路223を挟むように形成される。
接続路225は、複数(図3にて二つ)の連通路223を先端223bにて連通し、連通路223同士を接続するものである。接続路225は、第一マスタピストン22の本体部221の外径よりも小径で本体部221の先端にて周方向に沿って形成されており、ガイド部224によって区画されている。
本体部221の周壁部221bの内部には、スプリング226が収容されている。スプリング226は、一端が第一マスタピストン22の底壁部221aに当接し、且つ、他端が第二マスタピストン23(より詳しくは、後述する底壁部231a)に当接するように収容されている。スプリング226は、第一液圧室Aの液圧を増大させるように軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って前進した第一マスタピストン22を軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って後退させるように付勢力を付与する。
第二マスタピストン23は、シリンダ本体21の内部において、第一マスタピストン22の前方にて同軸的且つ軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って前進及び後進可能に配置されている。第二マスタピストン23は、図2に示すように、本体部231と、突出部232と、連通路233と、ガイド部234と、接続路235と、から構成されている。
本体部231は、シリンダ本体21の底部211に対向する先端が開口する有底筒状(中空状)に形成されており、後方に設けられた底壁部231aと、底壁部231aに連結された周壁部231bと、から構成されている。突出部232は、本体部231の底壁部231aの端面から後方に突出した円筒状の部分である。
連通路233は、図3に示すように、本体部231の先端にて周方向に沿って複数設けられている。連通路233は、軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って溝状に形成されている。連通路233の軸線方向(即ち、車両前後方向)にて後方の基端233aは、第二マスタピストン23が第一位置にある場合において、図3にて破線により示す前方側シール部材213の内周縁におけるシール線よりも後方となるように形成される。又、連通路233の軸線方向(即ち、車両前後方向)にて前方の先端233bは、前方側シール部材213のシール線よりも前方となるように形成される。尚、基端233aは、第二マスタピストン23が第二位置にある場合において、前方側シール部材213のシール線よりも前方となる。
ガイド部234は、図3に示すように、第二マスタピストン23の本体部231の外径と同一の外径を有しており、本体部231の先端まで軸線方向に沿って延設されている。これにより、ガイド部234は、前進又は後進する第二マスタピストン23の先端をシリンダ本体21の内周面212に対して案内する。ガイド部234は、周方向に沿って互いに離間して、即ち、複数(図3にて二つ)の連通路233を挟むように形成される。
接続路235は、複数(図3にて二つ)の連通路233を先端233bにて連通し、連通路233同士を接続するものである。接続路235は、第二マスタピストン23の本体部231の外径よりも小径で本体部231の先端にて周方向に沿って形成されており、ガイド部234によって区画されている。
本体部231の周壁部231bの内部には、スプリング236が収容されている。スプリング236は、一端が第二マスタピストン23の底壁部231aに当接し、且つ、他端がシリンダ本体21の底部211に当接するように収容されている。スプリング236は、第二液圧室Bの液圧を増大させるように軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って前進した第二マスタピストン23を軸線方向(即ち、車両前後方向)に沿って後退させるように付勢力を付与する。
ここで、第一マスタピストン22の本体部221を形成する底壁部221a及び周壁部221bの内面と、シリンダ本体21の内周面212と、第一マスタピストン22に対応する前方側シール部材213と、第二マスタピストン23を形成する底壁部231a及び突出部232の内面と、第二マスタピストン23に対応する後方側シール部材214と、によって「第一液圧室A」が区画される。又、第二マスタピストン23の本体部231を形成する底壁部231a及び周壁部231bの内面と、シリンダ本体21の内周面212及び底部211(閉塞端)と、第二マスタピストン23に対応する前方側シール部材213と、によって「第二液圧室B」が区画される。
マスタシリンダ2のシリンダ本体21には、内部と外部とを連通するポート21a、ポート21b、ポート21c及びポート21dが形成されている。以下、各ポート21a〜ポート21dを具体的に説明する。
ポート21aは、図2に示すように、第一マスタピストン22に対応する前方側シール部材213及び後方側シール部材214の間に形成されており、リザーバタンク6とシリンダ本体21の内部とを連通している。そして、ポート21aは、第一マスタピストン22に形成された連通路223及び接続路225を介して第一液圧室Aに連通可能となっている。ポート21bは、第一液圧室Aとアクチュエータ5(図1を参照)とを連通する。
ポート21cは、図2に示すように、第二マスタピストン23に対応する前方側シール部材213及び後方側シール部材214の間に形成されており、リザーバタンク6とシリンダ本体21の内部とを連通している。そして、ポート21cは、第二マスタピストン23に形成された連通路233及び接続路235を介して第二液圧室Bに連通可能となっている。ポート21dは、第二液圧室Bとアクチュエータ5(図1を参照)とを連通する。
(2.マスタシリンダ2の作動について)
次に、マスタシリンダ2の作動について具体的に説明する。車両のブレーキ装置1が自動ブレーキ機能により作動する場合、アクチュエータ5に内蔵されたポンプは、第一液圧室A及び第二液圧室Bに存在しているブレーキフルードを吸引する。そして、ポンプはブレーキフルードをポンプ圧まで加圧し、アクチュエータ5が調圧して各ホイールシリンダ41〜44に供給(伝達)する。これにより、各ホイールシリンダ41〜44は、それぞれ、対応する車輪RL〜FRに制動力を発生させる。
このように、マスタシリンダ2の下流側に配置されたポンプがブレーキフルードを吸引すると、第一液圧室A及び第二液圧室Bの液圧は基準液圧よりも低下し、例えば、負圧になる。ところで、自動ブレーキ機能によってポンプが作動する場合、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23は、第一位置(原位置)にある。第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第一位置にある場合、図3に示すように、連通路223の基端223a及び連通路233の基端233aは、前方側シール部材213のシール線(図3にて破線により示す)よりも後方に位置する。即ち、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第一位置にある場合には、連通路223はポート21aを介してリザーバタンク6と連通し、連通路233はポート21cを介してリザーバタンク6と連通している。
又、本実施形態においては、二つの連通路223のそれぞれの先端223bは一つの接続路225によって接続され、二つの連通路233のそれぞれの先端233bは一つの接続路235によって接続される。これにより、二つの連通路223に流入したブレーキフルードは、第一マスタピストン22の本体部221の先端にて周方向に沿って設けられた接続路225を流路端として第一液圧室Aに流れる。同様に、二つの連通路233に流入したブレーキフルードは、第二マスタピストン23の本体部231の先端にて周方向に沿って設けられた接続路235を流路端として第二液圧室Bに流れる。
即ち、二つの連通路223が接続路225によって接続されることにより、リザーバタンク6から第一液圧室Aにブレーキフルードが流れるときの流路断面積は接続路225の周方向に沿った長さに比例して大きくなる。同様に、二つの連通路233が接続路235によって接続されることにより、リザーバタンク6から第二液圧室Bにブレーキフルードが流れるときの流路断面積は接続路235の周方向に沿った長さに比例して大きくなる。
これにより、自動ブレーキ機能によりポンプがマスタシリンダ2の第一液圧室A及び第二液圧室Bからブレーキフルードを吸引することにより、連通路223,233及び接続路225,235を介して、リザーバタンク6からブレーキフルードが必要十分な量だけスムーズに流入する。従って、ポンプは必要十分な量のブレーキフルードを速やかに吸引してポンプ圧を増圧することができる。その結果、各ホイールシリンダ41〜44は、供給(伝達)されたポンプ圧に応じた制動力を各車輪RL〜FRに応答性良く発生させることができる。
ここで、ブレーキペダル7が踏み込み操作される通常ブレーキ時においては、運転者によるブレーキペダル7に対する踏力及びブレーキブースタ3による倍力によって、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第一位置から第二位置に前進する。そして、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第二位置にある場合には、連通路223の基端223a及び連通路233の基端233aは、図3にて一点鎖線により示す前方側シール部材213のシール線よりも前方に位置する。その結果、前方側シール部材213は、内周縁が全周にわたり第一マスタピストン22の本体部221の外周面及び第二マスタピストン23の本体部231の外周面に接触してシールする。従って、連通路223とポート21aとの連通及び連通路233とポート21cとの連通が遮断されるため、即ち、第一液圧室Aとリザーバタンク6との連通及び第二液圧室Bとリザーバタンク6との連通が遮断されるため、第一液圧室A及び第二液圧室Bの液圧が基準液圧よりも増大する。
これにより、第一液圧室A及び第二液圧室Bの液圧は、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の前進に伴う体積の減少によって増大した状態、即ち、マスタシリンダ圧で適切に維持される。その結果、各ホイールシリンダ41〜44は、供給(伝達)されたマスタシリンダ圧に応じた制動力を車輪RL〜FRに発生させることができる。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態のマスタシリンダ2は、シリンダ本体21と、シリンダ本体21の内部にてシリンダ本体21の軸線方向(車両前後方向)に沿って摺動可能に収容されたマスタピストンとしての第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23と、を備える、シリンダ本体21は、一端が底部211を有して閉塞し且つ他端が開口する。第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23は、シリンダ本体21の内周面212と共に液圧室である第一液圧室A及び第二液圧室Bを区画する底壁部221a、底壁部231a及び底壁部221a,231aに連結された周壁部221b、周壁部231bを有する有底筒状である。又、マスタシリンダ2は、シリンダ本体21に設けられて、作動液であるブレーキフルードを貯留するリザーバタンク6に連通するポート21a及びポート21cと、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の周壁部221b、231bにおける先端部分とポート21a,21cとの間に配置されて、シリンダ本体21の内周面212と第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の先端部分を含む外周面との間をシールするシール部材である前方側シール部材213と、を備える。
そして、マスタシリンダ2は、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の先端部分に、第一マスタピストン22(本体部221)及び第二マスタピストン23(本体部231)がシリンダ本体21に対して第一位置にある場合にポート21a,21cと第一液圧室A及び第二液圧室Bとを連通し、第一マスタピストン22(本体部221)及び第二マスタピストン23(本体部231)がシリンダ本体21に対して第一位置よりも前進した第二位置にある場合に前方側シール部材213によりポート21a,21cと第一液圧室A及び第二液圧室Bとの連通が遮断されるように、軸線方向に沿って延設され、且つ、周壁部221b,231bの周方向に沿って配置された複数の連通路223及び連通路233と、周方向に沿って延設されて複数の連通路223,233を接続する接続路225及び接続路235と、を有する。この場合、接続路225,235は、先端部分のうち周壁部221b,231bの先端に設けることができる。
これらによれば、第一マスタピストン22(本体部221)及び第二マスタピストン23(本体部231)の先端部分にて周方向に沿って複数設けられた連通路223,233は、周方向に沿って延設された接続路225,235によって接続される。これにより、第一マスタピストン22(本体部221)及び第二マスタピストン23(本体部231)の先端部分においては、ポート21a,21c(リザーバタンク6)から連通路223,233を介して第一液圧室A及び第二液圧室Bに流れるブレーキフルードの流路断面積が接続路225,235によって拡大される。従って、リザーバタンク6と第一液圧室A及び第二液圧室Bとの間におけるブレーキフルードの流れがスムーズとなるように改善することができる。
その結果、マスタシリンダ2を車両のブレーキ装置1に適用した場合において、自動ブレーキ機能によって車両のブレーキ装置1のポンプがマスタシリンダ2の第一液圧室A及び第二液圧室Bに存在するブレーキフルードを吸引する際には、リザーバタンク6から連通路223,233及び接続路225,235を介して第一液圧室A及び第二液圧室Bにスムーズにブレーキフルードが供給されて、ポンプは速やかに且つ必要十分な量のブレーキフルードを吸引することができる。従って、車両のブレーキ装置1においては、自動ブレーキ機能作動時におけるポンプ圧をホイールシリンダ4に供給して制動力を発生させる際の応答性を高めることが可能となる。
この場合、二つ以上の連通路223,233ごとに周方向おいて互いに離間するように配置され、且つ、軸線方向に沿って延設されて、接続路225,235を周方向に沿って区画すると共に第一位置にて前方側シール部材213を支持し、第二位置にて先端部分の外周面をシリンダ本体21の内周面212に対して案内するガイド部224,234を有することができる。
これによれば、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第一位置又は第二位置に向けて前進又は後進する場合であっても、ガイド部224,234は、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23を確実に案内できると共に前方側シール部材213を適切に支持できる。これにより、ガイド部224,234は、前方側シール部材213に対して連通路223,233及び接続路225,235が相対移動する際に、前方側シール部材213に加わる負荷を低減することができる。
(3.第一変形例)
上記実施形態においては、第一マスタピストン22がガイド部224を有すると共に第二マスタピストン23がガイド部234を有するように構成した。これに代えて、例えば、第一液圧室A及び第二液圧室Bへのブレーキフルードの流入量を増加させる必要がある場合には、図4に示すように、ガイド部224及びガイド部234の少なくとも一方を省略して構成することも可能である。
この場合、ガイド部224,234の省略に伴い、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が前進又は後進した場合、前方側シール部材213の支持が不安定になる虞がある。このため、例えば、上記実施形態における連通路223の基端223a及び連通路233の基端233aの位置に比べて、第一変形例における連通路223の基端223a及び連通路233の基端233aの位置をより後方とすることが可能である。
これにより、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が第一位置にある場合において、前方側シール部材213が本体部221の周壁部221b及び本体部231の周壁部231bの外周面によって支持されるため、前方側シール部材213を適切に支持することができる。尚、この第一変形例においては、本体部221の周壁部221b及び本体部231の周壁部231bの外周面によって、第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23が支持される。従って、この第一変形例においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
(4.第二変形例)
上記実施形態及び上記第一変形例においては、第一マスタピストン22の連通路223及び第二マスタピストン23の連通路233が、図3及び図4に示すように、軸線方向に沿って平行、即ち、連通路223,233の周方向における幅が一定となるように設けた。又、上記実施形態においては、第一マスタピストン22のガイド部224及び第二マスタピストン23のガイド部234が、図3に示すように、軸線方向に沿って平行、即ち、ガイド部224,234の周方向における幅が一定となるように設けた。
これに代えて、図5に示すように、連通路223,233の周方向の幅が軸線方向にて接続路225,235に向けて広くなるように設けることも可能である。又、ガイド部224,234の周方向の幅が軸線方向にて接続路225,235に向けて狭くなるように設けることも可能である。このように、連通路223,233の周方向の幅を広くし、又は(及び)、ガイド部224,234の周方向の幅が狭くなるように設けた場合においては、第一液圧室A及び第二液圧室Bに流れるブレーキフルードの流路断面積を増大させることができる。従って、必要十分な量のブレーキフルードをスムーズに第一液圧室A及び第二液圧室Bに流すことができ、その結果、上記実施形態及び上記第一変形例と同様の効果が得られる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び上記各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び上記各変形例においては、図3及び図4に示すように、連通路223及び連通路233を断面形状が矩形となるように設けた。しかしながら、連通路223及び連通路233の断面形状は、矩形に限定されるものではなく、他の形状(例えば、溝の底面が円弧状)を採用可能であることは言うまでもない。この場合においても、上記実施形態及び上記各変形例と同様の効果が得られる。
又、上記実施形態においては、互いに隣接する二つの連通路223及び連通路233を接続するように接続路225及び接続路235を設けるようにした。この場合、接続路225及び接続路235が接続する連通路223及び連通路233の数は、二つに限定されることはなく、接続路225及び接続路235が三つ以上の複数の連通路223及び連通路233を接続するように構成することも可能である。この場合、ガイド部224及びガイド部234の数が減少するが、少なくとも、周方向に沿って四つ以上のガイド部224及びガイド部234を設けることにより、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、連通路223及び連通路233を第一マスタピストン22及び第二マスタピストン23の周方向に沿って等間隔となるように複数設けるようにした。これに代えて、連通路223及び連通路233を周方向に沿って不連続に複数設けることも可能である。
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、連通路223及び連通路233の溝底面及び接続路225及び接続路235の溝底面が軸線方向(即ち、車両前後方向)に平行となるように設けられるようにした。これに代えて、図6に示すように、連通路223及び連通路233の溝底面及び接続路225及び接続路235の溝底面が先端に向けて板厚が小さくなるように傾斜させても良い。このように、傾斜を設けることによっても、ブレーキフルードの流路断面積を増大させることができ、上記実施形態及び上記各変形例と同様の効果が得られる。
更に、上記実施形態及び上記各変形例においては、連通路223及び連通路233が軸線方向に沿って延設された溝であるとした。これに代えて、連通路223及び連通路233の一部に本体部221の周壁部221b及び本体部231の周壁部231bを貫通する貫通孔を設けて構成することも可能である。この場合、貫通孔の孔形状については特に限定されるものではなく、丸形状、楕円形状、角形状等を採用可能であることは言うまでもない。
1…車両のブレーキ装置、2…マスタシリンダ、21…シリンダ本体、21a〜21d…ポート、211…底部、212…内周面、212a…収容溝、213…前方側シール部材(シール部材)、214…後方側シール部材(シール部材)、22…第一マスタピストン、221…本体部、221a…底壁部、221b…周壁部、222…突出部、223…連通路、223a…基端、223b…先端、224…ガイド部、225…接続路、226…スプリング、23…第二マスタピストン、231…本体部、231a…底壁部、231b…周壁部、232…突出部、233…連通路、233a…基端、233b…先端、234…ガイド部、235…接続路、236…スプリング、3…ブレーキブースタ、4…ホイールシリンダ、5…ブレーキアクチュエータ、6…リザーバタンク、7…ブレーキペダル、A…第一液圧室(液圧室)、B…第二液圧室(液圧室)

Claims (4)

  1. 一端が閉塞し且つ他端が開口したシリンダ本体と、
    前記シリンダ本体の内部に前記シリンダ本体の軸線方向に沿って摺動可能に収容され、且つ、前記シリンダ本体の内周面と共に液圧室を区画する底壁部及び前記底壁部に連結された周壁部を有する有底筒状のマスタピストンと、
    前記シリンダ本体に設けられて、作動液を貯留するリザーバタンクに連通するポートと、
    前記マスタピストンの前記周壁部における先端部分と前記ポートとの間に配置されて、前記シリンダ本体の内周面と前記マスタピストンの前記先端部分を含む外周面との間をシールするシール部材と、を備えたマスタシリンダであって、
    前記先端部分に、
    前記マスタピストンが前記シリンダ本体に対して第一位置にある場合に前記ポートと前記液圧室とを連通し、前記マスタピストンが前記シリンダ本体に対して前記第一位置よりも前進した第二位置にある場合に前記シール部材により前記ポートと前記液圧室との連通が遮断されるように、前記軸線方向に沿って延設され、且つ、前記周壁部の周方向に沿って配置された複数の連通路と、
    前記周方向に沿って延設されて前記複数の前記連通路を接続する接続路と、を有する、マスタシリンダ。
  2. 二つ以上の前記連通路ごとに前記周方向において互いに離間するように配置され、且つ、前記軸線方向に沿って延設されて、前記接続路を前記周方向に沿って区画すると共に前記第一位置にて前記シール部材を支持し、前記第二位置にて前記先端部分の前記外周面を前記シリンダ本体の前記内周面に対して案内するガイド部を有する、請求項1に記載のマスタシリンダ。
  3. 前記接続路は、
    前記先端部分のうち前記周壁部の先端に設けられる、請求項1又は請求項2に記載のマスタシリンダ。
  4. 前記連通路の前記周方向における幅は、前記接続路に向けて広くなる、請求項3に記載のマスタシリンダ。
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