JP2020050900A - 磁性合金の粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡便な手段でスラリーを撹拌して水性の分散媒体に磁性合金の粒子を分散させ、濃度が安定したスラリーを、気流乾燥機を用いた乾燥手段に供給可能な磁性合金の粉末の製造方法を提供する。【解決手段】貯留装置の撹拌容器内に、水性の分散媒体に磁性合金の粒子が分散した状態のスラリーを貯留する貯留工程と、前記攪拌容器から接続管路を通して送られたスラリーを、気流乾燥機を用いた乾燥手段で乾燥して磁性合金の粉末とする乾燥工程と、を有し、前記貯留装置は、前記撹拌容器内のスラリーを吸込み加圧して前記撹拌容器内へ戻すポンプと、前記撹拌容器内のスラリーに浸漬し、前記ポンプからのスラリーを噴出して撹拌するノズルとを備えた、磁性合金の粉末の製造方法とする。【選択図】 図1
Description
本発明は、磁性合金の粉末の製造方法に関する。
一般に、トランス、インダクタ、リアクトル等に用いられる磁心を粉末冶金にて作製する場合に、磁心を構成する軟磁性金属材料の粉末として、流動性等の観点からアトマイズ粉に代表される粒状粉が好適に用いられる。特にガスアトマイズ、水アトマイズ等のアトマイズ法は、展性や延性が高く、粉砕しにくい合金の粉末作製に好適であって、水アトマイズ法は比較的球状に近く、粒径が35μm以下の微細な金属粉末を得る上でも好適であることが知られている。
水アトマイズ法は、高周波溶解された溶融金属をタンディッシュからセラミック製の耐熱ノズル内を通じて流下させて、それに高圧の水を噴射して粉末化する方法である。得られた金属粉末は水を分散媒体としたスラリーとして排出される。スラリー中の金属粉末の濃度(固形分濃度)は凡そ1質量%〜17質量%程度となっていて、スラリーから自然沈降あるいは磁気吸着等の方法により分散媒体の水と金属粉末とを分離(固液分離)することが行なわれる。
自然沈降では、金属粉末が粒子の自重により分散媒体と分離するので複雑な設備装置を必要とせず、また金属粉末が磁性か非磁性かどうかは問われない。しかしながら沈降槽を用いたバッチ方式が通常であって、連続して処理することが難しい。またメジアン径で規定される平均粒径D50が15μm以下の比較的微細な粒度の粒子を有する金属粉末の場合、粒子の沈降に時間を要し、金属粉末を短時間で、かつ高い回収率で分離するのは困難であった。
また磁気吸着による固液分離では、一部がスラリーに浸漬された磁気回転ドラムによって金属粉末の粒子を吸着して分離する。磁気吸着により金属粉末は通常10質量%〜30質量%の水分を有する濃縮スラリーとなっているため、更に水分を除くことが必要である。例えば特許文献1の装置では、磁選機と呼ばれる装置で磁気吸着による固液分離の後、フィルタープレスや熱風乾燥機等の気流乾燥機を用いて乾燥することが記載されている。
特許文献1では特に注意を払われていないが、特に気流乾燥機を用いた乾燥では、供給されるスラリーの濃度にばらつきがあると、乾燥に必要な熱量をスラリーの濃度が低い条件で見込まざるを得ず、無用なエネルギー消費を招く場合がある。そのため、脱水、乾燥に至る前段で、水性の分散媒体に磁性合金の粒子を分散させ、スラリー中の金属粉末の自然沈降を防ぐようにスラリーを撹拌することが必要となる。
スラリーの撹拌の手法として回転翼を使用する場合があるが、スラリーの撹拌は回転翼の回転方向に支配的で容器内の上下方向の流動が少ないため、比重が大きい粒子ほど容器の下部に堆積し易く、また微細な粒子は液面に浮き上がり易く、また濃度が高いスラリーを撹拌するのに、回転翼及びそれを駆動するモータ等への負荷が大きい問題があった。
そこで本発明は、簡便な手段でスラリーを撹拌して水性の分散媒体に磁性合金の粒子を分散させ、濃度が安定したスラリーを得て、それを、気流乾燥機を用いた乾燥手段に供給可能な磁性合金の粉末の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、貯留装置の撹拌容器内に、水性の分散媒体に磁性合金の粒子が分散した状態のスラリーを貯留する貯留工程と、前記攪拌容器から接続管路を通して送られたスラリーを、気流乾燥機を用いた乾燥手段で乾燥して磁性合金の粉末とする乾燥工程と、を有し、前記貯留装置は、前記撹拌容器内のスラリーを吸込み加圧して前記撹拌容器内へ戻すポンプと、前記攪拌容器と前記ポンプとを繋ぐ循環管路と、前記循環管路に繋がるノズルと、を備え、前記ノズルは前記撹拌容器内のスラリーに浸漬し、前記ポンプから送り出されたスラリーを前記ノズルから前記スラリー内に噴出して、前記スラリーを撹拌する、磁性合金の粉末の製造方法である。
本発明においては、前記貯留工程の前に、溶湯からアトマイズ法によって磁性合金の粒子を形成し、水性の分散媒体に前記磁性合金の粒子が分散したスラリーを得るアトマイズ工程と、磁気による磁性合金の粒子と分散媒体の水との分離手段によって、前記スラリーから磁性合金の粒子を分離して磁性合金の粒子の濃度を高めたスラリーを得るスラリー濃縮工程と、を有することが好ましい。
また本発明においては、前記貯留工程でバインダを含むスラリーとし、前記乾燥工程の気流乾燥機を用いた乾燥手段が噴霧乾燥であることが好ましい。
本発明によれば、簡便な手段でスラリーを撹拌して水性の分散媒体に磁性合金の粒子を分散させ、濃度が安定したスラリーを得ることができる。そして、その濃度の安定したスラリーを、気流乾燥機を用いた乾燥手段に供給して、磁性合金の粉末を製造することが出来る。
以下、本発明の一実施形態に係る磁性合金の粉末の製造方法について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。また説明に使用した図面は発明の要旨の理解が容易なように要部を主に記載し、細部については適宜省略するなどしている。
図1は本発明の一実施形態の磁性合金の粉末の製造方法を示すフロー図である。また図2に図1のフロー図に対応する製造装置の構成例を説明するための図を示す。図示した実施形態では、磁性合金の粉末の製造方法において、まず、アトマイズ工程においてアトマイズ装置110によって所望の組成を有する磁性合金の粒子をアトマイズ法により作製する。
アトマイズ法では粉砕の機構によって、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法などのように、水やガスを溶湯の粉砕手段とする方法や、火炎を超音速または音速に近い速度でフレームジェットとして噴射する高速燃焼炎アトマイズ法がある。
水アトマイズ法であれば、所定の合金組成となるように秤量された素原料を、高周波加熱炉(図示せず)により溶融させ、あるいは予め合金組成となるように作製された合金インゴットを、高周波加熱炉により溶融させて溶融金属(以下、「溶湯」と言う)とし、タンディッシュ(図示せず)の底部に設けられたノズル(図示せず)を介して溶湯を流下させる。そして、流下された溶湯に高速且つ高圧で噴射された水を衝突させることによって、微細粒化とともに冷却して磁性合金の粒子を得る。得られる磁性合金の粒子の平均粒子径は、メジアン径D50で5〜35μmであるのが好ましい。
磁性合金は、例えば、Fe、NiあるいはCoを主成分(最も多く含有する成分)とする合金である。例えば、FeSi合金、FeCr合金、FeCrSi合金、FeAl合金、FeAlSi合金、FeAlCr合金、FeAlCrSi合金、FeNi合金、Co基もしくはFe基の結晶質あるいは非晶質の合金である。
アトマイズ法で得られた水性の分散媒体に分散した磁性合金の粒子を含むスラリーは、アトマイズ装置110からバルブ310を介して流出する。水性の分散媒体とは、例えば水、または水と分散剤との混合媒体である。防錆対策として分散媒体である水に防錆剤等を加えても良い。磁性合金の粒子の表面は自然酸化被膜により覆われていれば、それによって粒内への酸素の進入が抑制され、新たな酸化物の形成を防ぐことができる。したがって、磁性合金の粒子は自然酸化被膜に覆われていることが好ましい。
またアトマイズの初期では数mm程度の粗い金属粉末が生じ易い。スラリーに粗い金属粉末が混ざると、スラリーを圧送するポンプ210、215にて噛み込みを生じさせインペラ(羽根車)に損傷を与える場合がある。その為、前記スラリーを湿式分級機115に通して磁性合金の粒子の粗粉を除いたスラリーとする粗粉除去工程を、アトマイズ工程とスラリー濃縮工程との間に設けるのが好ましい。湿式分級機115には振動篩や液体サイクロンを用いれば良い。スラリーの搬送にポンプを用いない場合には粗粉除去工程は省略しても構わない。
アトマイズ装置の造粒能力と後工程の処理能力に差がある場合などには、アトマイズ工程を経たスラリーを貯留容器120に一時的に留めるのが好ましい。後工程に定量供給することが出来るとともに、貯留容器120内のスラリーを攪拌して磁性合金の粒子が槽内に沈殿しないようにすれば、安定した濃度のスラリーを後工程に供給することが出来る。
アトマイズ工程を経たスラリーは供給経路を通ってスラリー濃縮工程へと送られる。
スラリー濃縮工程は磁気による分離手段を採用するのが好ましい。磁気による分離手段としては、例えば回転ドラム式磁気分離装置(以下分離装置)500を好適に用いることが出来る。分離装置の構造例の一例を示す断面図を図3に示す。
スラリー濃縮工程は磁気による分離手段を採用するのが好ましい。磁気による分離手段としては、例えば回転ドラム式磁気分離装置(以下分離装置)500を好適に用いることが出来る。分離装置の構造例の一例を示す断面図を図3に示す。
詳細には、円弧状に連なって固定配置された複数の磁石で構成された磁気回路部と、前記磁石が配置されない磁気開放部と、前記磁気回路部と磁気開放部の外側を回転可能な外装スリーブと、を含む回転ドラム510と、前記外装スリーブの外周に沿って回転方向とは逆方向にスラリー80を流す流路72と、前記流路72に供給するスラリー80を溜める貯留部70と、前記磁気開放部の位置を通過する外装スリーブに接するように設けられたスクレイパー550と、を備える。
分離装置500は全体として箱型の枠体に、それを横断して回転ドラム510がその回転軸を前記枠体の底部に対して水平となるように配置されている。枠体は回転ドラム510によって上流側と下流側とに2分割され、上流側がアトマイズ工程からのスラリー80を溜める貯留部70を構成し、下流側が分離された分散媒体である排水溜り部75となる。
回転ドラム510の表面に現れる外装スリーブはステンレス鋼などの非磁性材料で形成されていて、その内側に内装スリーブが同心に配置される。外装スリーブと内装スリーブとの間に凡そ内装スリーブの外周の3/4に連続して磁石が並べられ、固定配置されて磁気回路部を構成する。外装スリーブは磁気回路部がスラリー80に浸漬された状態となるように配置されていて、スラリー80の流れ方向とは逆方向に回転する外装スリーブの外周には、貯留部70から排水溜り部75までの間で磁性合金の粒子が吸着される。内装スリーブの残り1/4には磁石がなく磁気回路部の影響も受けにくいように構成された磁気開放部となっている。磁性合金の粒子は、磁力により外装スリーブに吸着し、外装スリーブの回転によってスラリー80から引き上げられる。この引き上げられた磁性合金の粒子は、分散媒体の水を含むが、分離前のスラリーに比較し、磁性合金の粒子の濃度を高めた濃縮スラリーとなっている。例えば、70質量%を超えるスラリー濃度に濃縮された濃縮スラリーとなっている。なおスラリー濃度は、単位体積あたりのスラリーの質量に対する磁性合金の粒子の質量の比率として定義される。
図示した実施形態では、回転ドラムと当接して回転する絞りローラー520が設けられていて、所定の押圧力を外装スリーブ表面の濃縮スラリーに作用させて分散媒体の水を脱水して除くように構成されている。それにより、一層スラリー濃度が上がった濃縮スラリーを得ることが出来る。絞りローラー520には弾性ゴムやポリウレタンやポリエステル等の樹脂を用いれば良い。
磁気開放部に至った濃縮スラリーは、外装スリーブの表面に当接するヘラ状のスクレイパー550にて掻きとられ、傾斜する回収経路555を自重にて滑り落ちる。また分離された分散媒体の水は、排水として排水溜り部75から排出経路65を通って排水容器800へ排水される。
スラリー濃縮工程後のスラリーは貯留工程へと送られる。貯留工程では、濃縮されたスラリーを撹拌しながら貯留する。貯留工程で使用される貯留装置の構造例を図4に示す。図4においては内部構造が分かり易いように容器の一部を切断した状態として示している。なお本貯留装置は、アトマイズ工程とスラリー濃縮工程との間の貯留容器120としても用いることが出来る。
図4に示した貯留装置900は、磁性合金の粒子と溶媒とを含むスラリー(図示せず)を貯留する撹拌容器20と、スラリーの噴出口を有するノズル30と、撹拌容器20内のスラリーを吸込み、加圧して前記ノズル30へ送り出すポンプ40と、スラリーの循環経路の循環管路を構成する管路50、51と、循環経路を切り替えるバルブ53と、容器中のスラリー液面の高さを検出するセンサ(図示せず)を撹拌容器20内に備えている。
ポンプ40は、スラリーを吸込み、加圧して撹拌容器20内へ戻す。スラリーは、ポンプ40を介して撹拌容器20とノズル30とを繋ぐ管路50を含む第1循環経路と、ポンプ40とノズル30との間の管路50から分岐した管路51を含む第2循環経路とで循環される。図示した実施形態では分岐した管路51を単一としているが、分岐の後、複数に枝分かれする管路であっても良い。以降、管路50を主管路と呼び、管路51を副管路と呼ぶ場合がある。
撹拌容器20内のスラリーの液面のレベルをセンサで検出し、前記センサからのレベル情報に基づいてスラリーの循環経路をバルブ53で切り替えることができる。スラリーの循環経路は、スラリーの液面がノズル30よりも上側では第1循環経路を選択し、撹拌容器20内のスラリーに浸漬されたノズル30からスラリーを噴出して、撹拌容器20内のスラリーを撹拌することができる。
一方、スラリーの液面がノズル30よりも下側では第2循環経路を選択することがよい。副管路51はノズル30よりも鉛直方向の下側に吐出口52を有していて、そこからスラリーを吐出することで、撹拌容器20内の下部に残るスラリーを撹拌することができる。
図4 に示す撹拌容器20は、Z方向(鉛直方向)の上側が円筒形状の円筒部23であって、下側が円錐形状で、下方へ向かって次第に断面積が縮小する縮径部21となっていて、傾斜角度θ1をもった内底面22を有している。傾斜角度θ1はスラリーの撹拌を考慮すれば鉛直方向に対して25°〜50°であるのが好ましい。内底面22の傾斜角度θ1は25°〜40°であることが更に好ましい。撹拌容器20は、その下部を設置面よりも上方に位置させて設置場所に立設するための支持脚を有している。
撹拌容器20は、スラリーを貯留する内筒とその外周に外筒を設けた二重構造としても良い。内筒と外筒との間に、水や油などの熱媒体を液温管理し循環させることで、貯留するスラリーの温度調整を行い、溶媒の蒸散を防ぐことが出来る。撹拌容器20のスラリーと接する部分の材質は耐摩耗性、耐腐食性の観点からステンレス系等の金属材料で形成するのが好ましい。
撹拌容器20の天井の少なくとも一部は、スラリーを構成する溶媒や粉末を供給可能なように開閉可能な蓋構造となっているのが好ましい。また天井には外空間に設けられたポンプ40と接続し、撹拌容器20の内空間にて上側から下方の内底面に向かって鉛直方向に伸びる管路50aが設けられている。なお図示した例では天井の略中央部から管路50bを撹拌容器20の内空間に導入するが、導入位置は撹拌容器20の上部側であれば良く、特に限定されるものではない。撹拌容器20の底部近傍にも管路50bが設けられていて、管路50a、50bはポンプ40を介して接続されていてスラリーの循環経路を構成する。
主管路50の途中から副管路51が分岐し、分岐部分にはバルブ53が取り付けられている。バルブ53は例えばピンチバルブなどを使用することが出来る。主管路50と副管路51のそれぞれにピンチバルブを介在させて、センサからのレベル情報に基づいて流れの通路を開閉することで、スラリーの循環経路を切り替えることが出来る。
図示した実施形態では、撹拌容器20の下部であって円錐形状の内底面の頂点位置に管路50bを接続している。そこからスラリーを吸込んで循環させるため、粒子が沈降しても撹拌容器20の内底面22に沿って流れて、底部に溜まるのを防ぐことが出来る。
また、主管路50bにバルブ54を介してスラリーを容器外へ送出する送出管路70が接続されている。送出管路70は他のポンプと接続して後工程の乾燥機と連通させるのが好ましい。
撹拌容器20内の管路50aの下端には複数のノズル30が接続されている。ノズル30は噴出口側がXY平面(水平方向)よりも下側に傾斜し、ノズル30の噴出口が撹拌容器20の内底面22に向かうように配置されている。ノズル30の噴出口と撹拌容器20の内底面22を近接させ、ノズル30から噴出されるスラリーを撹拌容器20の内底面22に衝突させることで上下、回転対流を生じさせてスラリーを撹拌する効果を高めることができる。
ノズル30は、水平方向に対する角度θ2が15°〜45°であるように管路50aに取り付けられるのが好ましい。ノズル30の角度θ2、撹拌容器20の内底面22の傾斜角度θ1を適宜設定して、撹拌容器20の内底面22に沿ったスラリーの流動を形成し、上下方向や周方向にスラリーを旋回させて撹拌することで、スラリーが粒子と溶媒とに分離してしまうのを抑制し、それによって高い分散性を維持して、濃度が安定したスラリーを後工程に供給することが出来る。この角度θ1、θ2が所定の角度外であると、ノズル30から噴出されるスラリーのエネルギーが減衰してスラリーの流動が不十分となって撹拌が不均一となる場合がある。ノズル30の角度θ2は20°〜40°であることが更に好ましい。
ノズル30の数は特に限定は無いが、ノズル30の管路50aに取り付け可能な数であるとともに、撹拌容器20の容量(スラリー量)や、ポンプ40からのスラリーの流量とノズル30から噴出可能なスラリーの流量とのバランスや、撹拌の状態を考慮して適宜設定するのが好ましい。例えば、ノズル30は3個以上であることが好ましく、4個以上であることが更に好ましい。
撹拌されて濃度が安定したスラリーを、撹拌容器20から管路を通してポンプ等で圧送して乾燥工程へ送出する。なお、乾燥工程でスラリーを噴霧乾燥して顆粒とする場合には、貯留工程にてPVA(ポリビニルアルコール)、アクリル、ウレタン、PVP(ポリビニルポリピロリドン)などの各種有機バインダがスラリーに加えられる。
乾燥工程で使用される乾燥装置はスラリーを供給でき、乾燥できるものであれば特に限定はないが、管チャンバー内に熱風(気流)を導入して流れに乗せて粉末を乾燥する気流乾燥機や、熱風気流中にスラリーを噴霧し乾燥するスプレードライヤーであるのが好ましい。
図5に気流乾燥機の構造例を示す。気流乾燥機600は、スラリーを供給する供給部601と、スラリーを乾燥させる環状の管チャンバー615と、管チャンバー615内に熱風を送る送風部651と、乾燥した粉末を管チャンバー615から排出する排出部603を備える。
管チャンバー615内に一定の供給量で濃度が安定したスラリーが供給されるので、乾燥のための空気の温度や流速、流量の設定でスラリー濃度のばらつきを見込む必要がなく、乾燥に過剰なエネルギーを消費するのを防ぐことが出来る。
投入されたスラリーは、管チャンバー615内を加熱空気とともに循環しながら水分を失い乾燥するとともに、粒子同士が衝突することで凝集が解かれた磁性合金の粒子となる。供給される空気は200℃以上と高温だが専ら潜熱として消費される。循環経路610で乾燥が進行するに従い被乾燥物の重量が軽くなり、磁性合金の粒子として環状の管チャンバー615の内周側を通り排出部603から排出空気とともに排出される。乾燥が不十分な被乾燥物はその自重で管チャンバー615内の外周側を循環し乾燥が継続する。
気流乾燥機600から回収された磁性合金の粒子はホッパーに送られて容器に回収される。得られた磁性合金の粒子の粒径は分布を持っているので、必要に応じて複数の粒度に分級しても良い。分級の方法としては図示したように、気流乾燥機600の後に複数のサイクロン集塵機700、750を配置して、磁性合金の粒子の粒度に応じて分級し、バルブ312,313を通して容器410,411に回収しても良い。また振動篩等を用いたふるい分級でも良い。
磁性合金の粒子を有機バインダにより結着させて造粒して顆粒としても良い。造粒して得られた顆粒を用いることで流動性を増して、圧縮成形時の金型内での充填性を向上できる。有機バインダは、加圧成形において顆粒同士を結着させ、成形後のハンドリングや加工に耐えうる強度を成形体に付与するのに寄与する。バインダの添加量は、磁性合金の粒子間に十分に行きわたり、十分な成形体の強度を確保できる量にすればよい。造粒方法としては、スプレードライヤーを用いた噴霧乾燥による造粒が好ましい。これによれば、大量の顆粒を得ることができる。また成形時の流動性に優れるとともに、粒子間に隙間が生じ難くなって金型内への充填性が増すために成形体が高密度になり、透磁率の高い磁心が得られ易い。
以上の説明のように、本発明の磁性合金の粉末の製造方法によれば、簡便な手段でスラリーを攪拌して水性の分散媒体に磁性合金の粒子を分散させ、濃度が安定したスラリーとし、その濃度が安定したスラリーを、気流乾燥機を用いた乾燥手段に供給することにより、容易に磁性合金の粉末を得ることが可能である。
110 アトマイズ装置
500 分離装置
900 貯留装置
600 気流乾燥機
700,750 サイクロン集塵機
500 分離装置
900 貯留装置
600 気流乾燥機
700,750 サイクロン集塵機
Claims (3)
- 貯留装置の撹拌容器内に、水性の分散媒体に磁性合金の粒子が分散した状態のスラリーを貯留する貯留工程と、
前記攪拌容器から接続管路を通して送られたスラリーを、気流乾燥機を用いた乾燥手段で乾燥して磁性合金の粉末とする乾燥工程と、を有し、
前記貯留装置は、前記撹拌容器内のスラリーを吸込み加圧して前記撹拌容器内へ戻すポンプと、前記攪拌容器と前記ポンプとを繋ぐ循環管路と、前記循環管路に繋がるノズルと、を備え、前記ノズルは前記撹拌容器内のスラリーに浸漬し、前記ポンプから送り出されたスラリーを前記ノズルから前記スラリー内に噴出して、前記スラリーを撹拌する、磁性合金の粉末の製造方法。 - 請求項1に記載の磁性合金の粉末の製造方法において、
前記貯留工程の前に、
溶湯からアトマイズ法によって磁性合金の粒子を形成し、水性の分散媒体に前記磁性合金の粒子が分散したスラリーを得るアトマイズ工程と、
磁気による磁性合金の粒子と分散媒体の水との分離手段によって、前記スラリーから磁性合金の粒子を分離して磁性合金の粒子の濃度を高めたスラリーを得るスラリー濃縮工程と、を有する、磁性合金の粉末の製造方法。 - 請求項1または2に記載の磁性合金の粉末の製造方法において、
前記貯留工程でバインダを含むスラリーとし、
前記乾燥工程の気流乾燥機を用いた乾燥手段が噴霧乾燥である、磁性合金の粉末の製造方法。
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