JP2020050799A - 吸音材 - Google Patents
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Abstract
Description
また特許文献2の吸音材は、多孔質樹脂粒子からセル膜が除去されたセル骨格のみで構成されているため、もろく、圧縮や衝撃を受けるとセル骨格が破壊されて吸音性能が低下してしまうという問題があった。
このように、吸音材には用いられる場所や求められる性能が様々であり、依然として様々な態様や性能の吸音材が求められており、本発明は特に低周波領域における吸音性能および遮音性能に優れた吸音材を提供するものである。
前記短繊維を、前記多孔質樹脂粒子と前記繊維塊と前記短繊維との合計質量に対して15〜70%の質量割合で含むことを特徴としている。
その際、各多孔質樹脂粒子に形成された複数の突起部が入射した音により振動し、さらに音のエネルギーの一部を熱エネルギーに変換することで、軽量でありながら、効果的に音を吸音することができる。
前記多孔質樹脂粒子2は、図2に示す500倍の拡大写真に示すように、多孔質樹脂からなる最大フェレ径Aが10〜100μm程度の粒子となっており、各多孔質樹脂粒子2の外面には複数の突起部2aが形成されている。
前記繊維塊3は、図3に示す100倍の拡大写真に示すように、玉状に絡まった繊維3aの間に、微細な弾性樹脂3bが入り込んだ、直径50〜150μm程度の粒子となっている。
前記短繊維4には綿、レーヨン、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリプロピレンなどの短繊維を使用することができ、中でもポリエステル系繊維が好ましく、特に、材料の入手が容易で、強度、耐熱性に優れる点でポリエチレンテレフタレート(PET)繊維が好ましい。
短繊維4の繊維長は1〜80mmの範囲が好ましく、1.5〜50mmの範囲がより好ましく、2〜30mmの範囲がさらに好ましい。また繊度は1〜20dtexの範囲が好ましく、1.5〜10dtexの範囲がより好ましく、2〜5dtexの範囲がさらに好ましい。
さらに、短繊維4の構造として芯鞘複合の熱融着短繊維を採用することも可能であり、例えば、芯がポリエステル、鞘が低融点の共重合ポリエステル、或いは、ポリエチレンからなる芯鞘複合の熱融着短繊維が挙げられる。熱融着短繊維を使用することにより、吸音材を低密度にした場合に融着部が骨格として機能し、吸音材の剛性を向上させることができる。
多孔質樹脂粒子2よりも剛性の高い繊維塊3を吸音材1に含有させることで、繊維塊3が骨材としての役割を果たし、吸音材1の剛性をあげるとともに、2000Hz以下の低〜中周波領域における吸音性を向上させることができる。
短繊維4が15%以上であれば空隙率が向上することで高い吸音効果を得ることができ、70%以下であれば高い遮音性を得ることができる。添加する短繊維の量が多いほど、吸音率のピーク値を高周波側にすることができ、短繊維の量が少ないほど、遮音性(透過損失)を向上させることができ、目的に応じて短繊維の量を調整すればよい。
前記供給ローラ12には、前記多孔質樹脂粒子2を採取するための多孔質ポリウレタンからなるシートS、もしくは前記繊維塊3を採取するための樹脂含浸不織布からなるシートSが巻回されている。
そして前記供給ローラ12から前記シートSを送り出しながら、前記回収ローラ15によって前記シートSを巻き取ることで、所定の速度でシートSを移動させるようになっている。
また前記供給ローラ12と回収ローラ15との間には、前記バフローラ13に対向した位置に保持ローラ16が設けられており、前記シートSはバフローラ13と保持ローラ16との間を通過しながら、前記バフローラ13によって研削されるようになっている。
前記バフローラ13の外周には所要の粗さのサンドペーパーが装着され、当該バフローラ13を回転させながら前記シートSに押し当てることで、当該シートSの表面を研削し、その際に発生した粒子が前記多孔質樹脂粒子2や繊維塊3となって、前記回収ボックス14に回収されるようになっている。
前記ポリウレタンシートSを研削することにより得られる多孔質樹脂粒子2には、ポリウレタンシートSの小さな開孔に基づく、最小フェレ径1〜10μmの開孔を有しており、前記開孔の最大フェレ径/最小フェレ径の値が1.5〜5.0であるような楕円の開孔を有する。
フェレ径の測定方法は、SEMで観察を行った吸音材の画像ファイルを例えば画像解析用ソフトウェアImageJ(登録商標)を用いて求めることができる。なお、最大フェレ径とは対象を平行線ではさんだ場合に、平行線の間隔が最も大きくなる径のことであり、30点の多孔質樹脂粒子の最大フェレ径を測定しそれらの平均値を最大フェレ径Aとした。
一方、最小フェレ径とは対象を平行線ではさんだ場合に、平行線の間隔が最も小さくなる径のことであり、30点の多孔質樹脂粒子の細孔の最大フェレ径及び最小フェレ径を測定し、それらの平均値を最大フェレ径B1及び最小フェレ径B2とした。
ポリウレタン樹脂は、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用いることができ、DIC(株)製の商品名「クリスボン」や、三洋化成工業(株)製の商品名「サンプレン」、大日精化工業(株)製の商品名「レザミン」など、市場で入手可能な樹脂を用いてもよく、所望の特性を有する樹脂を自ら製造してもよい。
このポリウレタン樹脂を20〜40重量%の範囲となるようにDMFに溶解させる。また、添加剤としては、開孔の大きさや量(個数)を制御するため、開孔を促進させる親水性添加剤、ポリウレタン樹脂の再生を安定化させる疎水性添加剤等を用いることができる。
非弾性フィラーが30質量%以内である場合、ポリウレタン樹脂シートが伸びやすく、引き伸ばされた突起部2aを形成しやすい。非弾性フィラーが0質量%以上であれば突起部が形成されやすい。非弾性フィラーが1質量%以上であれば、ポリウレタン樹脂の種類によって伸びやすく破断しにくい場合であっても、カーボンブラックがフィラーとして働き伸びを抑制することができるため好ましい。
なお、モジュラスとは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を断面積で割った値である(以下、100%モジュラスと呼ぶことがある。)。この値が高い程、硬い樹脂である事を意味する。吸音材より樹脂モジュラスを確認する場合、吸音材をDMFで溶解し、低濃度のポリウレタン樹脂DMF溶液を得たのち、繊維等をフィルターでろ過しキャスト法によりDMFを気化させ無発泡の樹脂シートを形成することで測定することができる。
ここで前記破断伸度は50〜300%であることが好ましい。破断伸度は樹脂を破断するまで伸長させたときの伸長度合を示し、値が大きいほど伸び易く変形し易い。
また、破断強度は0.5〜5.0kg/mm2であることが好ましい。破断強度は樹脂を破断するまで伸長させたときの応力を示し、値が大きいほど破断しにくい強靭な樹脂であり剛性が大きい。
そして、破断強度(kg/mm2)×破断伸度(%)の値が25〜1500の範囲にあると、引き伸ばされて変形した樹脂が塑性変形し元に戻らず伸びたままの突起部2aを形成することができ、吸音特性を向上させることができる。
破断強度(kg/mm2)×破断伸度(%)の値が25より小さいと、樹脂がちぎれ易すく伸びにくいため、突起部2aが形成されにくい。反対に、破断強度(kg/mm2)×破断伸度(%)のが1500を超える場合は、引き伸ばされた樹脂が元に戻ってしまい、突起部2aが形成されにくい。
ポリウレタンシートの破断伸度は、前記引張り測定における破断した時の伸度である。引張時の破断強度および伸度は株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能試験機RTCにて日本工業規格(JIS K6550)に準じた方法で測定する。
吸音材より破断強度および破断伸度を確認する場合、吸音材をDMFで溶解し、低濃度のポリウレタン樹脂DMF溶液を得たのち、繊維等をフィルターでろ過しキャスト法によりDMFを気化させ無発泡の樹脂シートを形成することで測定することができる。
このとき、ナイフコータ等と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液の塗布厚み(塗布量)を調整する。本例では、乾燥後のウレタンシートの厚み(成膜厚み)が200〜3000μmの範囲となるように、塗布厚みを調整する。
成膜基材としては、樹脂製フィルム、布帛、不織布等を用いることができるが、本例では、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルムを用いる。
凝固液中では、まず、ポリウレタン樹脂溶液と凝固液との界面に皮膜が形成され、皮膜の直近のポリウレタン樹脂中にスキン層を構成する無数の微多孔が形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液中のDMFの凝固液中への拡散と、ポリウレタン樹脂中への水の浸入との協調現象により連続発泡構造を有するポリウレタン樹脂の再生が進行する。
このとき、成膜基材のPET製フィルムが水(凝固液)を浸透させないため、DMFと水との置換がスキン層側で生じ、成膜基材側がスキン層側より大きな開孔が形成される。
このため、スキン層が形成された後では、凝固前のポリウレタン樹脂溶液中のポリウレタン樹脂がスキン層側に移動し凝集することとなる。これに伴い成膜基材側でポリウレタン樹脂量が減少するため、スキン層側と比べて成膜基材側が肥大化した発泡が形成される。
DMFのポリウレタン樹脂溶液からの脱溶媒、すなわち、DMFと水との置換により、大きな発泡が形成され、スキン層の微多孔、および、大きな発泡が小さな発泡と網目状に連通する。
ポリウレタン樹脂の乾燥には、本例では、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機を用いる。ポリウレタン樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。乾燥後のポリウレタンシートSをロール状に巻き取る。
本実施形態では、バフローラ13にサンドペーパーが使用されるが、ダイヤモンドバフローラー等、均一な処理(研削除去)ができるものであればいずれも使用することができる。複数の突起部2aは、ポリウレタンシートに使用するポリウレタン樹脂モジュラスに応じて、バフ番手や供給ローラとシートの送り速度、バフローラの回転数等を調整することにより得られる。
前記バフローラ13がポリウレタンシートSの表面に回転しながら接触すると、ポリウレタンシートSの表面ではバフローラ13との摩擦によってポリウレタン樹脂の一部が引っ張られて伸び、当該伸びた部分がさらに細くなってその後破断する。
さらに、ポリウレタンシートSより離脱した多孔質樹脂粒子2には、前記破断した部分が引き伸ばされ塑性変形して尖った幾何学的な突起部2aが複数形成され、各突起部2aにも引き伸ばされることで一方向に伸びた略楕円状の開孔を有するものもある。
このような複数の突起部2aは、音エネルギーを受けた際に振動することにより、音が振動に変換され吸音作用を生じさせる。また突起部2aにおける引き伸ばされた開孔内に音が入り込むと、内部で衝突や摩擦を受けて熱エネルギーに変換されて吸音されることとなる。
不織布に使用する繊維としては、特に限定はなく、天然繊維(改質繊維を含む)、合成繊維等から製造される不織布であればよい。例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の樹脂繊維や、綿、麻等の天然繊維を用いてもよいが、製造工程中でN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)等の有機溶媒や水等の洗浄液を吸収することによる原料繊維の膨潤を防止することや原料繊維の量産性を考慮すれば、吸水(液)性を有していないポリエステル繊維等の樹脂繊維を用いることが好ましい。原料繊維には、繊度1〜50dtex、繊維長20〜100mmの繊維を用いることが好ましい。
これらの中でも、本発明は、ニードルパンチ法を用いて繊維基体を製造することが好ましい。ニードルパンチ法を用いて繊維基体を製造すると、繊維同士が接着樹脂や融着繊維などにより固定されず機械的に絡められた状態のため、繊維が引き出されやすく繊維塊3を形成しやすい。
不織布基材の厚さは、1.5mm未満ではポリウレタン樹脂溶液に含浸後の乾燥時に厚さ方向でポリウレタン樹脂の移動(樹脂マイグレーション)が発生しポリウレタン樹脂の被覆厚さが偏りやすく、5.0mmを超えると不織布基材の内部までポリウレタン樹脂溶液が浸透できなくなるので、1.5〜5.0mmの範囲とすることが好ましい。
不織布基材の密度は、0.1g/cm3未満ではポリウレタン樹脂溶液に含浸してもポリウレタン樹脂が繊維の間隙を通じて流出し繊維に付着しにくく、0.3g/cm3を超えるとポリウレタン樹脂の付着量が大きくなり繊維の間隙を塞いでしまうので、0.1〜0.2g/cm3の範囲とすることが好ましい。
本例では、繊度2〜3dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維が用いられている。樹脂層は、湿式凝固法により形成されたポリウレタン樹脂が、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート化合物(架橋剤)で架橋処理されて形成されている。
樹脂含浸工程で用いるポリウレタン樹脂は、多価イソシアネート化合物と混合して有機溶媒のDMFに溶解させる。このとき、ポリウレタン樹脂溶液のポリウレタン樹脂の固形分濃度が、10重量%未満では不織布の密度を目標とする値に調整することが難しくなり、40重量%を超えるとポリウレタン樹脂が溶解しにくくなる。
また、B型回転粘度計を用いて20℃で測定したポリウレタン樹脂溶液の粘度が8000cp以下であると好ましく、100cp〜5000cpであるとより好ましく、400cp〜3000cpであると更に好ましい。
従って、含浸工程におけるポリウレタン樹脂溶液は、濃度が10〜40重量%の範囲で粘度が100cp〜5000cpの範囲とすることが好ましい。また、多価イソシアネート化合物の固形分濃度は、1〜4重量%の範囲で用いる。
このときのポリウレタン樹脂溶液の温度は、5〜40℃の範囲に調整することが好ましく、20〜30℃の範囲が更に好ましい。含浸工程をこの温度範囲で行うことで、多価イソシアネート化合物による架橋反応の進行が抑制される。
繊維基体を構成する繊維が溶出しない限り、凝固液の温度や浸漬時間に特に制限はなく、例えば10〜30℃(好ましくは、10〜20℃)で30〜1440分間(好ましくは30〜90分間)浸漬すればよい。
前記バフローラ13が樹脂含浸不織布の表面に回転しながら接触すると、樹脂含浸不織布の表面ではバフローラ13との摩擦によって不織布を構成する繊維3aが引き出され、引き出された繊維3aが捲縮して糸玉状に絡まる。
その際、前記不織布に含浸された多孔質樹脂は、前記繊維3aが引き出されるのに伴って周囲の樹脂からちぎれ、その後繊維3aが絡まるのに伴って当該繊維3aの内部に取り込まれることとなる。
そして、その後さらに前記バフローラ13の摩擦が作用することで、前記糸玉状に絡まった繊維3aの根元部分が破断し、前記玉状に絡まった繊維3aに微細な弾性樹脂3bが保持された繊維塊3となって離脱することとなる。この時、弾性樹脂3bは繊維3aに付着しているものと、繊維3aに付着することなく、玉状に絡まった繊維3a内に取り込まれて保持されているものが存在する。
前記バインダーを用いて前記多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4を結合して前記吸音材1を作成する際には、所定の割合で前記多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4をミキサーに投入し、これらを攪拌しながら、或いは、前記多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4をボールミルとともに撹拌しながら、スプレーガン等でバインダーを噴霧する。
これにより多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4の表面がバインダーでコーティングされ、その後当該バインダーの付着した多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4を金型内に投入し、その後所定温度で所定時間乾燥させることにより、吸音材1を得ることができる。
ここで、前記バインダーを使用する量は、多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4の重量に対して好ましくは0.5〜50%、より好ましくは1〜15%の割合で使用するのが望ましい。バインダーが50%以下であれば、後に説明する前記多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4の間に形成される空間による吸音効果を得ることができ、またバインダーが0.5%以内であることにより、吸音材1の形状を維持することができる。
次に、本実施形態の吸音材1の作用等について説明する。
一般的に、吸音材1による吸音のメカニズムとしては、吸音材1に音波が入射すると、振動した空気が吸音材1の内部で衝突や摩擦による粘性抵抗を受けて、熱エネルギーに変換されて散逸し、音響エネルギーの減衰により吸音がなされるとされている。
本実施形態にかかる吸音材1によれば、前記多孔質樹脂粒子2、繊維塊3、短繊維4によって形成された空間により、侵入した音波の経路を複雑化させることができ、より効率的に音響エネルギーを減衰させることができる。
つまり、粒子状や塊状の多孔質樹脂粒子、繊維塊の中に、直線状の短繊維を多方向に分散させることで、短繊維が骨格を形成し、空隙を広げることができ、直線状の繊維のみからなる吸音材よりも、より効率的に音響エネルギーを減衰させることができ、吸音率の向上が図れる。
また、吸音材1を低密度化することができ、粒子状物のみからなる吸音材と比べて軽量化することができる。よって、軽量化と吸音性能の両立を図ることができる。
また前記吸音材1の短繊維4の繊維長を1〜80mmとしたことで、柔軟性、伸縮性に富んだ吸音材1を得ることができ、当該吸音材1を設置する場所が複雑な形状を有していても、これに追従させて設置することができる。
このため、吸音材1に音が侵入すると、多孔質樹脂粒子2の表面の開孔を介して開孔の内部に音が侵入し、開孔と開孔との間に形成された樹脂壁との摩擦や振動によって音のエネルギーが熱エネルギーに変換され、音のエネルギーが吸収される。
このとき、開孔が小さければ小さいほど、より樹脂壁との摩擦や振動が増え、音エネルギーが熱エネルギーに変換されやすいので、吸音性能が高くなる。多孔質樹脂粒子2に含まれる開孔の最小フェレ径を好ましくは1〜10μm、より好ましくは1〜8μmとすることで、高い吸音効果を得ることができる。
さらに、開孔の最小フェレ径B2に対する最大フェレ径B1が1.5〜5.0である楕円状の開孔を含むとともに、前記開孔は表面に開孔していない別の孔と通気する連通構造を備えることで、音の侵入を許容しやすく、高い吸音効果を得ることができる。
また、本実施形態の多孔質樹脂粒子2の表面には突起部2aが複数形成され、前記バインダーによって固定されていない突起部2aも存在する。このような突起部2aは音に対して敏感に振動し、突起部2aの振動によっても音のエネルギーを吸収することができる。
特に、前記繊維塊3は捲縮して玉状に絡まった繊維3aに微細な弾性樹脂3bが保持された構成を有していることから、繊維3aと弾性樹脂3bとの間に細かな空隙が形成されている。
このため、吸音材1に入射した音がさらに繊維塊3に入射すると、前記繊維3a、弾性樹脂3bによる複雑な空隙に入り込み摩擦や粘性抵抗を受け、前記繊維3aに付着せずに保持された微細で振動可能な弾性樹脂3bに衝突し、音のエネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて吸収されるため良好な吸音性能を得ることができる。
実験では、吸音性能を確認するためにJIS A 1405−2に基づいて垂直入射吸音率を測定するとともに、遮音性能を確認するために垂直入射透過損失を測定した。これら垂直入射吸音率、垂直入射透過損失の測定にはブリュエル・ケアー社製 4206S型音響試験器を用いた。
フェレ径は、吸音材を電子顕微鏡(日本電子社製、JMS−5500LV)にて倍率100倍で観察し、任意30点の多孔質樹脂粒子を測定用サンプルとして抽出した。
その後、抽出した画像を画像処理ソフトImageJにて解析し、画像の二値化を行い、多孔質樹脂粒子の最大フェレ径A、多孔質樹脂粒子表面に存在する細孔の最大フェレ径B1、最小フェレ径B2を測定した。
最大フェレ径A、最大フェレ径B1、最小フェレ径B2は、任意の30点の最大フェレ径、最小フェレ径の平均値として求められる。また、最小フェレ径B2に対する最大フェレ径B1の比は任意の30点の最大フェレ径/最小フェレ径の値の平均値として求められる。
実施例1にかかる吸音材1は、短繊維4として繊維長5mm、繊度1.6dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維と、前記多孔質樹脂粒子2と、前記繊維塊3とによって構成され、多孔質樹脂粒子2を48g、繊維塊3を12g、短繊維4を40g配合し、濃度10%のアクリルエマルジョンを100gスプレーガンにて吹き付けて、これらをミキサーで混合した。
続いて、前記混合物を縦23×横23×深さ1.6cmの成形容器に充填し、さらに乾燥機において80℃、4時間乾燥後、140℃で1時間乾燥させ、その後冷却させることで、厚み14.98mm、密度0.255g/cm3の吸音材1を得た。
実施例2にかかる吸音材1は、実施例1の吸音材1に対し、各材料の重量を、多孔質樹脂粒子2を32g、繊維塊3を8g、短繊維4を60g配合した以外は、前記実施例1と同様の作業を用いて作成し、その結果厚み14.89mm、密度0.257g/cm3の吸音材1を得た。
実施例3にかかる吸音材1は、実施例1、2の吸音材1に対し、短繊維4として繊維長10mm、繊度3.3dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を用い、各材料の重量を、多孔質樹脂粒子2を64g、繊維塊3を16g、短繊維4を20g配合した以外は、前記実施例1と同様の作業を用いて作成し、その結果厚み15.57mm、密度0.245g/cm3の吸音材1を得た。
実施例4にかかる吸音材1は、実施例3の吸音材1に対し、各材料の重量を、多孔質樹脂粒子2を48g、繊維塊3を12g、短繊維4を40g配合(実施例1と同じ質量割合)した以外は、前記実施例1と同様の作業を用いて作成し、その結果厚み14.7mm、密度0.260g/cm3の吸音材1を得た。
実施例5にかかる吸音材1は、実施例3、4の吸音材1に対し、各材料の重量を、多孔質樹脂粒子2を32g、繊維塊3を8g、短繊維4を60g配合(実施例2と同じ質量割合)した以外は、前記実施例1と同様の作業を用いて作成し、その結果厚み14.95mm、密度0.256g/cm3の吸音材1を得た。
実施例6にかかる吸音材1は、実施例1〜5の吸音材1に対し、短繊維4として繊維長5mm、繊度2.2dtexの芯鞘複合熱融着繊維(芯:ポリエステル繊維、鞘:低融点共重合ポリエステル)を用い、各材料の重量を、多孔質樹脂粒子2を64g、繊維塊3を16g、短繊維4を20g配合(実施例3と同じ質量割合)した以外は、前記実施例1と同様の作業を用いて作成し、その結果厚み17.29mm、密度0.220g/cm3の吸音材1を得た。
実施例7にかかる吸音材1は、実施例6の吸音材1に対し、各材料の重量を、多孔質樹脂粒子2を48g、繊維塊3を12g、短繊維4を40g配合(実施例1、4と同じ質量割合)した以外は、前記実施例1と同様の作業を用いて作成し、その結果厚み17.1mm、密度0.211g/cm3の吸音材1を得た。
実施例8にかかる吸音材1は、実施例6、7の吸音材1に対し、各材料の重量を、多孔質樹脂粒子2を48g、繊維塊3を12g、短繊維4を40g配合(実施例2、5と同じ質量割合)した以外は、前記実施例1と同様の作業を用いて作成し、その結果厚み16.81mm、密度0.223g/cm3の吸音材1を得た。
比較例には、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度2〜3dtex、繊維長10〜20μm)を使用しニードルパンチ法により不織布とした、厚み25mm、密度0.014g/cm3の不織布製吸音材を使用した。
表1は実施例1〜8の吸音材1と比較例の吸音材についての実験結果を示しており、測定した各波長においての吸音性能を示す垂直入射吸音率と、遮音性能を示す垂直入射透過損失の測定結果を示している。
実験結果によれば、本発明にかかる実施例1〜8の吸音材1は測定したすべての波長において比較材よりも良好な吸音性能および遮音性能を有していることが判明した。
特に低周波領域である2000hz近傍において、実施例1〜8の吸音材1は比較例に対して優れたな吸音性能を示しており、また高周波領域である5000hz近傍では優れた遮音性能を示している。
これに対し、短繊維を芯鞘複合繊維とした実施例6〜8においては、短繊維4の質量割合を40%とした実施例8が、最も優れた低周波領域における遮音性能を示した。
また、同じ質量割合で作成した実施例1、実施例4、実施例7を比較すると、芯鞘複合繊維を使用した実施例7に比べて、実施例1、4の吸音材は若干良好な吸音性能を示した。
これと同様、同じ質量割合で作成した実施例2、実施例5、実施例8を比較すると、芯鞘複合繊維を使用した実施例7に比べて、実施例1、4の吸音材は若干良好な吸音性能を示した。
3 繊維塊 4 短繊維
11 採取装置
Claims (4)
- 多孔質樹脂粒子と、捲縮された繊維と弾性樹脂とからなる繊維塊と、繊維長が1〜80mmの繊維塊以外の短繊維とを含む吸音材であって、
前記短繊維を、前記多孔質樹脂粒子と前記繊維塊と前記短繊維との合計質量に対して15〜70%の質量割合で含むことを特徴とする吸音材。 - 前記短繊維の繊度を繊度1〜20dtexとしたことを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
- 前記多孔質樹脂粒子は、複数の突起部を備え、最大フェレ径Aが10〜100μmの粒子であって、表面に最小フェレ径B21〜10μmの開孔を有するとともに、前記開孔の最小フェレ径B2に対する最大フェレ径B1の比が1.5〜5.0の開孔を含み、前記開孔は表面に開孔していない別の孔と通気する連通構造を備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の吸音材。
- 前記繊維塊は、前記弾性樹脂が捲縮された前記繊維に保持され、前記繊維の繊度が1〜50dtex、前記繊維塊の直径が25〜300μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸音材。
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