JP2023006757A - 吸音材 - Google Patents

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直樹 高木
Naoki Takagi
真史 下田
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Abstract

【課題】850Hz程度の低周波数域から5000Hz程度の高周波数域までの幅広い周波数の音に対して、優れた吸音特性を有する吸音材を提供する。【解決手段】基材と、前記基材の一方面側に、厚み方向に延在する縦長孔を有する多孔質層と、前記基材の他方面側に、通気層と、を有しており、前記多孔質層側が、音源側である吸音材。【選択図】図1

Description

本発明は、吸音材に関するものである。
多孔質樹脂膜は、様々な用途に広く用いられており、例えば、吸音材、分離用フィルター、緩衝材、合成皮革、断熱材、絶縁材などに用いられている。吸音材は、例えば、建築物、電気製品、車両等における騒音源からの音を吸収して騒音を低減するために用いられている。例えば、吸音や防音を目的として建築材料などに用いられる多孔質材が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されている多孔質材は、基材の内部に、中低音域に共鳴周波数を備える粉体、および中低音域の所定周波数以上で振動する特性を備える粉体の一方を収容した中空層と、前記基材の表面に開口する連続孔とが形成されている。
特開平11-314976号公報
上記特許文献1では、多孔質材の吸音特性を、125Hz以上、2000Hz以下における吸音率に基づいて評価している。しかし、多孔質材を用いる場所によっては、2000Hzを超え、例えば、5000Hz程度の高周波数域の音に対しても吸収特性を示すことが求められている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、850Hz程度の低周波数域から5000Hz程度の高周波数域までの幅広い周波数の音に対して、優れた吸音特性を有する吸音材を提供することにある。
本発明は、以下の通りである。
[1] 基材と、前記基材の一方面側に、厚み方向に延在する縦長孔を有する多孔質層と、前記基材の他方面側に、通気層と、を有しており、前記多孔質層側が、音源側であることを特徴とする吸音材。
[2] 前記縦長孔は、孔の直径に対する孔の長さの比(孔の長さ/孔の直径)が1.6以上である[1]に記載の吸音材。
[3] 前記吸音材の厚み方向断面において、前記通気層の平均空孔率は、前記多孔質層の平均空孔率よりも大きいものである[1]または[2]に記載の吸音材。
[4] 前記多孔質層は、湿式凝固法で形成されたものである[1]~[3]のいずれかに記載の吸音材。
[5] 前記多孔質層の比重は、前記通気層の比重より大きいものである[1]~[4]のいずれかに記載の吸音材。
[6] 前記多孔質層の比重は、0.15以上、1.0以下である[1]~[5]のいずれかに記載の吸音材。
[7] 前記通気層の比重は、0.01以上、0.1以下である[1]~[6]のいずれかに記載の吸音材。
[8] 前記多孔質層の表面には、開口が存在している[1]~[7]のいずれかに記載の吸音材。
[9] 前記通気層は、発泡体である[1]~[8]のいずれかに記載の吸音材。
[10] JIS A1405-2の試験方法に準じて測定した垂直入射吸音率が、周波数850Hz以上、5000Hz以下において0.3以上である[1]~[9]のいずれかに記載の吸音材。
[11] 前記周波数に対する前記垂直入射吸音率を示す曲線が、周波数850Hz以上、3000Hz以下の領域に最大吸音ピークを有する[10]に記載の吸音材。
本発明の吸音材は、基材と、該基材の一方面側に、多孔質層の厚み方向に延在する縦長孔を有する多孔質層と、該基材の他方面側に、通気層と、を有する積層体であり、前記多孔質層側を、音源側に配置して用いることにより、低周波数域から高周波数域までの幅広い周波数の音に対して、優れた吸音特性を発揮させることができる。
図1は、周波数と数直入射吸音率の関係を示すグラフである。 図2は、積層体aの厚み方向断面を撮影した写真である。 図3は、積層体aの厚み方向断面を撮影した写真である。
本発明に係る吸音材は、基材と、前記基材の一方面側に、多孔質層の厚み方向に延在する縦長孔を有する多孔質層と、前記基材の他方面側に、通気層と、を有する積層体である。そして、本発明の吸音材は、前記多孔質層側が、音源側となるように配置して用いる必要がある。多孔質層を音源側に配置することにより、入射した音が多孔質層内の厚み方向に延在する縦長孔を通って基材に到達し、膜振動により吸収される。このとき基材の他方面側(即ち、音源とは逆側)に通気層が配置されることにより、低周波数域から高周波数域までの幅広い周波数の音に対して、優れた吸音特性を発揮させることができる。なお、上記積層体を、前記通気層側が音源側となるように配置して用いた場合は、比較的高周波数域の音に対する吸音特性は示すものの、意外なことに、比較的低周波数域の音に対する吸音特性が発揮されないことが分かった。このことについては実施例で実証する。
以下、本発明の吸音材について詳述する。
(基材)
基材は、例えば、繊維を用いて形成された織物、編物、または不織布などが好ましく、これらの中でも編物または不織布がより好ましい。
基材を構成する繊維の種類は特に限定されず、無機繊維であってもよいし、有機繊維であってもよい。吸音材に耐熱性が要求される場合は、無機繊維を用いることが好ましく、耐熱性はそれほど要求されず、コストを重視する場合は、有機繊維を用いることが好ましい。
無機繊維としては、例えば、金属繊維やガラス繊維などを用いることができる。有機繊維としては、例えば、綿、麻、絹などの天然繊維、レーヨン、キュプラ、テンセルなどの再生繊維、ポリエステル、ナイロン、ポリアミドなどの合成繊維を用いることができ、これらが混紡、または交織されたものであってもよい。これらのなかでも、多孔質層との親和性や汎用性の点で、有機繊維を用いることがより好ましく、更に好ましくは合成繊維である。
基材の比重は、例えば、0.15以上、0.35以下であることが好ましい。基材の比重は、より好ましくは0.18以上、更に好ましくは0.20以上であり、より好ましくは0.33以下、更に好ましくは0.30以下である。基材の比重は、JIS L1096 A法に準じて計測した目付から厚みで単位換算し、算出すればよい。
基材の厚みは特に限定されず、吸音材に要求される強度に応じて調整すればよいが、例えば、0.1mm以上、1.1mm以下が好ましい。基材の厚みは、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.4mm以上であり、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.9mm以下である。
基材は、通気性を有するものが好ましい。基材は、空気および湿気を透過し、JIS L1096で測定した通気度が2.0cm3/cm2・sec以上、80.0cm3/cm2・sec以下を満足することが好ましい。
(多孔質層)
多孔質層は、該多孔質層の厚み方向に延在する縦長孔を有しており、例えば、球状の孔は、縦長孔に含まれない。縦長孔は、多孔質層の一方面側から他方面側に連通していてもよいし、連通していなくてもよい。
多孔質層内に形成されている縦長孔は、孔の直径に対する孔の長さの比(孔の長さ/孔の直径。以下、アスペクト比という)が1.6以上であることが好ましい。縦長孔のアスペクト比は、より好ましくは1.7以上、更に好ましくは1.8以上である。縦長孔のアスペクト比の上限は特に限定されないが、例えば、4以下が好ましく、より好ましくは3.5以下である。縦長孔のアスペクト比は、多孔質層の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡で観察し、撮影した写真に基づいて算出すればよい。なお、孔の直径は、孔の最大直径を意味する。また、孔の長さは、多孔質層の厚み方向における孔の長さを意味する。
多孔質層は、例えば、湿式凝固法で形成することができる。湿式凝固法とは、溶媒に樹脂を溶解させた溶液を塗布した基材を、凝固用液に浸漬し、溶液に含まれる溶媒と凝固用液とを置換(相転換)することにより基材上の樹脂を凝固させつつ樹脂を多孔質化する方法である。湿式凝固法については、後で詳述する。
多孔質層の比重は、例えば、0.15以上、1.0以下であることが好ましい。多孔質層の比重は、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下である。多孔質層の比重は、JIS L1096 A法に準じて計測した目付から厚みで単位換算し、算出すればよい。
多孔質層の表面には、開口が存在していなくてもよいが、開口が存在していることが好ましい。
多孔質層を構成する樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリエステル[例えば、ポリエチレンフタレート、ポリエチレンナフタレートなど]、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾールなどが挙げられる。これらのなかでも、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはポリウレタンである。
多孔質層は、吸音材の特性を損なわない範囲で、耐久性等の物性向上、透気性等の機能向上、耐薬品性、帯電防止性、耐熱性の付与、難燃性の付与、意匠性の付与等のために必要に応じて添加剤、孔調整剤、充填剤等の他の成分を含んでいてもよい。物性向上のための添加剤としては、例えば、アクリルビーズ、セラミックビーズなどが挙げられる。耐熱性の付与のための添加剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤などが挙げられる。難燃性の付与のための添加剤としては、例えば、難燃剤が挙げられる。難燃剤は、液体のものや固体のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン系、ハロゲン-アンチモン系、リン酸エステル系、リン窒素系、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリコン系等の従来公知の難燃剤を用いることができる。意匠性の付与のための添加剤としては、例えば、着色剤が挙げられる。着色剤は、湿式凝固法に適した従来公知のものを選択することが好ましい。
多孔質層の平均厚みは、0.1mm以上、0.8mm以下が好ましい。多孔質層の平均厚みをこのような範囲にすることによって吸音性を向上でき、しかも通気性および透湿性も良好にできる。多孔質層の平均厚みは、より好ましくは0.15mm以上、更に好ましくは0.2mm以上であり、より好ましくは0.7mm以下、更に好ましくは0.6mm以下である。多孔質層の厚みは、吸音材の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡で観察して測定すればよく、任意の3箇所で測定した厚みの平均値を平均厚みとすればよい。
多孔質層の表面には、表面処理層が形成されていてもよい。表面処理層としては、例えば、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの樹脂層が挙げられる。
多孔質層の表面、および/または、表面処理層の表面には、例えば、柄加工が施されていてもよい。柄加工が施されることにより、意匠性が良好となる。柄の種類は、例えば、皮シボ柄、ダイヤ柄、三角柄、毛穴柄などが挙げられる。
(通気層)
通気層は、空気および湿気を透過し、JIS L1096で測定した通気度が2.0cm3/cm2・sec以上、80.0cm3/cm2・sec以下を満足する層である。
通気層の比重は、例えば、0.01以上、0.1以下であることが好ましい。通気層の比重は、より好ましくは0.013以上、更に好ましくは0.015以上であり、より好ましくは0.08以下、更に好ましくは0.06以下である。通気層の比重は、JIS L1096 A法に準じて計測した目付から厚みで単位換算し、算出すればよい。
通気層の比重は、多孔質層の比重と同じでもよいが、通気層の比重と多孔質層の比重は、異なっていることが好ましい。通気層の比重と多孔質層の比重が異なっている場合は、通気層の比重は、多孔質層の比重より小さい(即ち、多孔質層の比重は、通気層の比重より大きい)ことが好ましい。通気層の比重に対する多孔質層の比重は、例えば、8倍以上、30倍以下であることが好ましい。通気層の比重に対する多孔質層の比重は、より好ましくは10倍以上、更に好ましくは12倍以上であり、より好ましくは28倍以下、更に好ましくは26倍以下である。
通気層の形態は特に限定されず、例えば、不織布や発泡体が好ましい。不織布には、繊維を熱、機械的、または化学的な作用によって接着または絡み合わせて布状にしたものの他、ヒツジやラクダなどの動物の毛、更にはリサイクル繊維などを混合したものを圧縮してシート状にしたフェルトも含まれる。これらのなかでも発泡体であることが好ましい。
通気層は、多孔質であってもよいが、多孔質の場合は、通気層の厚み方向に延在する縦長孔は有していないものである。通気層の厚み方向に延在する縦長孔とは、孔の直径に対する孔の長さの比(孔の長さ/孔の直径。アスペクト比)が1.6以上の孔を意味する。なお、通気層は、アスペクト比が1.6未満の孔は有していてもよい。なお、孔の直径は、孔の最大直径を意味する。また、孔の長さは、多孔質層の厚み方向における孔の長さを意味する。
通気層は、樹脂で構成されていることが好ましく、通気層を構成する樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリエステル[例えば、ポリエチレンフタレート、ポリエチレンナフタレートなど]、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ、メラミン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらのなかでも、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはポリウレタンである。
通気層の平均厚みは、7mm以上、15mm以下が好ましい。通気層の平均厚みをこのような範囲にすることによって、吸音性を向上でき、しかも通気性および透湿性も良好にできる。通気層の平均厚みは、より好ましくは8mm以上、更に好ましくは9mm以上であり、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは12mm以下である。
通気層の厚みは、吸音材の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡で観察して測定すればよく、任意の3箇所で測定した厚みの平均値を平均厚みとすればよい。
(吸音材)
本発明の吸音材は、多孔質層、基材、通気層がこの順で積層されており、多孔質層側が、音源側となるように配置して用いる。
吸音材は、通気層の比重よりも基材の比重の方が相対的に大きく、基材の比重と多孔質層の比重は同じであるか、基材の比重よりも多孔質層の比重の方が相対的に大きいことが好ましく、通気層の比重よりも基材の比重の方が相対的に大きく、基材の比重よりも多孔質層の比重の方が相対的に大きいことがより好ましい。
吸音材は、厚み方向断面において、通気層の平均空孔率は、多孔質層の平均空孔率よりも大きいことが好ましい。
多孔質層の空孔率は、多孔質層の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡で観察し、多孔質層の厚みをd1としたとき、基材に平行な長さ500μmの線分をd1/2位置に引き、長さ500μmの線分に占める空孔の長さの割合として算出すればよい。任意の3箇所で測定した空孔率の平均値を平均空孔率とすればよい。
通気層の空孔率は、通気層の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡で観察し、通気層の厚みをd2としたとき、基材に平行な長さ1mmの線分をd2/2位置に引き、長さ1mmの線分に占める空孔の長さの割合として算出すればよい。任意の3箇所で測定した空孔率の平均値を平均空孔率とすればよい。
吸音材は、JIS A1405-2の試験方法に準じて測定した垂直入射吸音率が、周波数850Hz以上、5000Hz以下において0.2以上であり、850Hz程度の低周波数域から5000Hz程度の高周波数域までの幅広い周波数の音に対して、優れた吸音特性を有している。前記垂直入射吸音率は、周波数850Hz以上、5000Hz以下において0.3以上であることがより好ましい。また、吸音材は、前記垂直入射吸音率が、周波数1000Hz以上、5000Hz以下において0.3以上であることが好ましい。また、吸音材は、前記垂直入射吸音率が、周波数1600Hz以上、2100Hz以下において0.8以上であることが好ましい。
吸音材は、垂直入射吸音率を測定し、周波数に対する曲線を描いたときに、該曲線は、周波数850Hz以上、3000Hz以下の領域に最大吸音ピークを有することが好ましい。この領域に最大吸音ピークを有することにより、比較的低周波数域の音に対して優れた吸音特性を示すこととなる。
吸音材の総厚みは、例えば、8mm以上、15mm以下が好ましい。吸音材の総厚みは、より好ましくは9mm以上、更に好ましくは10mm以上であり、より好ましくは14mm以下、更に好ましくは13mm以下である。
吸音材は、例えば、建築物、電気製品、車両等における騒音源からの音を吸収して騒音を低減するために用いることができる。具体的には、室内インテイリア、航空機の内装、車両の内装材として好適に用いることができる。
次に、本発明の吸音材を製造する方法について説明する。本発明の吸音材は、基材の一方面に、溶媒に樹脂を溶解させた溶液を接触させる工程(以下、溶液接触工程ということがある。)、前記溶媒を除去することにより前記樹脂を多孔質化する工程(以下、多孔質化工程ということがある。)、前記基材の他方面に、通気層を形成する工程(以下、通気層形成工程ということがある。)、を含む方法によって製造できる。以下、各工程について詳細に説明する。
[溶液接触工程]
溶液接触工程では、基材の一方面に、溶媒に樹脂を溶解させた溶液を接触させる。
基材の一方面に付着させる上記溶液の量は、例えば、900g/m2以上、1600g/m2以下が好ましい。溶液の付着量を900g/m2以上とすることにより、形成される多孔質層の厚みを厚くできるため、強度を確保できる。溶液の付着量は、950g/m2以上がより好ましく、更に好ましくは1000g/m2以上である。一方、溶液の付着量が1600g/m2を超えると、形成される多孔質層の厚みが厚くなり過ぎるため、通気性および透湿性が悪化し、圧力損失が高くなることがある。従って溶液の付着量は、1600g/m2以下が好ましく、より好ましくは1500g/m2以下、更に好ましくは1400g/m2以下である。
溶媒に溶解させる樹脂としては、上記で多孔質層を構成する樹脂として例示したものを用いることができ、具体的には、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
溶液に溶解させる樹脂の濃度は、用いる溶媒に対する樹脂の溶解度に応じて任意に設定できるが、例えば、5質量%以上、60質量%以下が好ましい。樹脂の濃度を5質量%以上とすることにより、多孔質層と基材との密着性を高めることができ、使用時に多孔質層が基材から脱落することを防止できる。樹脂の濃度は、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。一方、樹脂の濃度を60質量%以下とすることにより、多孔質層の体積に対する空孔の割合(以下、多孔度ということがある。)を高めることができ、吸音材の通気性および透湿性を高めることができる。また、溶液の粘度を下げることができるため、均一な多孔質層を得ることができる。また、溶液の粘度を下げることにより、後の多孔質化工程で溶媒を除去しやすくなり、樹脂の多孔質化が容易になる。樹脂の濃度は、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
樹脂を溶解させる溶媒(以下、第1溶媒ということがある。)としては、湿式凝固法で通常用いられる有機溶媒を用いることができ、例えば、非プロトン性極性溶媒、ハロゲン系溶媒、ケトン系溶媒、環状エーテル系溶媒、および芳香族系有機溶媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;ジメチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒;などを用いることができる。これらの溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。上記有機溶媒のうち、環境への影響、湿式凝固法における加工性、簡便性等の点で、非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。
上記溶液には、吸音材の特性を損なわない範囲で、耐久性等の物性向上、透気性等の機能向上、耐薬品性、帯電防止性、耐熱性の付与、難燃性の付与、意匠性の付与等のために必要に応じて添加剤、孔調整剤、充填剤等の他の成分を添加することができる。孔の形状などを調整する孔調整剤としては、例えば、ノニオン性、カチオン性、アニオン性の界面活性剤、アルコール系溶媒、ポリエチレンオキサイド等の親水性高分子添加剤、パラフィン系オイル、芳香族系溶媒等の疎水性添加剤が挙げられる。上記孔調整剤は、2種類以上を用いてもよい。孔調整剤の量は、通常用いられる程度でよく、例えば、溶液全体の質量に対して0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。
基材の一方面に上記溶液を接触させる方法は、例えば、コンマコーティング法、ダイコーティング法、ドクターナイフコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、バーコーティング法などが挙げられ、これらの方法は、低粘度溶液を塗工するのに適している。これらのなかでも、コンマコーティング法またはダイコーティング法で接触させることがより好ましい。
[多孔質化工程]
多孔質化工程では、基材に付着させた溶液から溶媒を除去することにより樹脂を多孔質化し、多孔質層の厚み方向に延在する縦長孔を有する多孔質層を形成する。これにより基材と多孔質層は直接接続されることになる。
基材に付着させた溶液から溶媒を除去する方法としては、溶媒の沸点以上の温度に加熱する方法や、湿式凝固法などが挙げられ、湿式凝固法が好ましい。湿式凝固法では、溶液を付着させた基材を、上記溶媒(第1溶媒)と相溶性を有する第2溶媒と接触させることにより、第1溶媒と第2溶媒を置換し、樹脂を多孔質化できる。このとき第2溶媒は、樹脂を溶解しないか、溶解しにくい溶媒を用いることにより、樹脂を凝固させることができる。
第2溶媒としては、例えば、水またはアルコール系溶媒を用いることが好ましく、2種以上を混合して用いてもよい。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノールやエタノールなどを用いることができる。
上記溶液を付着させた基材を第2溶媒と接触させるに先立って、第1溶媒と第2溶媒の混合液に接触させてもよい。第1溶媒と第2溶媒の混合液に接触させた後、第2溶媒に接触させることにより、第1溶媒を第2溶媒に確実に置換できるため、第1溶媒が残存せず、樹脂の多孔質化を促進できる。第1溶媒と第2溶媒の混合液としては、例えば、非プロトン性極性溶媒と水との混合液を用いることが好ましい。
多孔質層を形成した後は、表面処理層を形成してもよい。表面処理層としては、上述したポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの樹脂層が挙げられる。
また、多孔質層の表面、および/または、表面処理層の表面に、柄加工を施してもよい。柄加工を施す方法としては、例えば、エッチングが挙げられる。エッチング液としては、多孔質層および/または表面処理層を溶解する溶媒を用いればよい。
[通気層形成工程]
通気層形成工程では、基材の他方面に通気層を形成し、これにより吸音材が得られる。基材の他方面に通気層を形成する方法は特に限定されず、基材と予め形成しておいた通気層とを貼り合わせて接続すればよい。
貼り合わせて接続する方法としては、例えば、フレームラミネート加工や、接着剤を用いて貼り合わせる方法が挙げられる。接着剤を用いて貼り合わせる場合は、例えば、通気性を有する両面テープを用いたり、接着剤を接着面全体に塗るのではなく、部分的に塗って通気性を確保する方法が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。実施例において、特に断らない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
(実施例1)
実施例1では、基材の一方面側に、湿式凝固法により多孔質層を形成し、該基材の他方面側に、通気層を形成した。基材としては、ポリエステル100%トリコットを用いた。基材の通気度は、54.4cm3/cm2・secであった。
まず、大日精化工業株式会社製の「レザミンCU9443」100部、クラリアントジャパン製の「ペコフレームSTC」5部、硫酸バリウム8部、大日精化工業株式会社製の「セイカセブンBS780(S)」5部、ジメチルホルムアミド130部を、高速撹拌機ディスパーを用いて2000rpmで攪拌し、ポリウレタン溶液を調製した。調製したポリウレタン溶液を、基材上にヒラノテクシード社製のコンマコーター(登録商標)を用いてWETコート量が1100g/m2となるよう流延し、その後、ポリウレタン溶液でコートした基材を、25℃のジメチルホルムアミド10%水溶液中に約300秒間浸漬し、基材に付着させたポリウレタン溶液からジメチルホルムアミドを除去しつつ、ポリウレタンを凝固させた。次いで、40℃の温水中に15分間浸漬した後、圧カ0.4MPaのマングルで絞り、オーブンにて140℃で乾燥した。その結果、基材と多孔質層が積層している構造体が得られた。
次に、DIC株式会社(旧大日本インキ化学工業株式会社)製の「クリスボンNB-637N」100部、ジメチルホルムアミド100部、メチルエチルケトン100部を混合し、エッチング液を調製した。調製したエッチング液を、上記構造体の多孔質層表面にグラビアコーターを用いて塗工した後、オーブンにて140℃で乾燥し、多孔質層の表面をエッチングし、柄を形成した。柄は皮革調毛穴柄とした。これにより、多孔質層の表面に皮革調の意匠を有しながら、溶解した部分が表面開口した柄付き構造体を得た。
次に、上記柄付き構造体における多孔質層を形成した側とは反対側の基材表面に、通気層として厚みが10mmのポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材(クラボウ株式会社製の「クララフォーム」)をフレームラミネート加工により貼り合せ、基材の一方面側に多孔質層を有し、他方面側に通気層を有する積層体aを製造した。ポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材の通気度は、75.5cm3/cm2・secであった。得られた積層体aについて次の手順で各種物性を評価した。結果を表1に示す。
(1)積層体の総厚み
ダイヤルシックネスゲージを用いて積層体aの3箇所の厚みを測定し、平均値を総厚みとした。
(2)多孔質層および通気層の平均厚み
積層体aから100mm角の試験片を切り出し、試験片から無作為に抽出した3箇所を液体窒素で凍結しながら切断し、厚み方向断面を日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡で、倍率150倍で観察し、写真を撮影した。撮影した画像に基づいて、多孔質層および通気層のそれぞれ3箇所の厚みを測定し、平均値を算出した。
(3)多孔質層における孔の形状
走査型電子顕微鏡で、積層体aの厚み方向断面を、倍率50倍で観察し、写真を撮影した。撮影した画像に基づいて、多孔質層の厚み方向に延在する縦長孔が多孔質内に形成されているかどうかを評価した。また、縦長孔が形成されている場合は、縦長孔の直径に対する縦長孔の長さの比(アスペクト比)を測定した。なお、縦長孔の直径は、縦長孔の最大直径を意味する。また、縦長孔の長さは、多孔質層の厚み方向における縦長孔の長さを意味する。
(4)多孔質層および通気層の平均空孔率
多孔質層の空孔率は、多孔質層の厚み方向断面を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150倍で観察し、多孔質層の厚みをd1としたとき、d1/2位置に基材に平行に長さ500μmの線分を引き、d1/2位置における長さ500μmの線分に対する空孔率を3箇所ずつ測定し、平均値を算出した。通気層の空孔率は、通気層の厚み方向断面を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率50倍で観察し、通気層の厚みd2としたとき、d2/2位置に基材に平行に長さ1mmの線分を引き、d2/2位置における長さ1mmの線分に対する空孔率を3箇所ずつ測定し、平均値を算出した。
(5)多孔質層、基材、および通気層の比重
多孔質層、基材、および通気層の比重は、JIS L1096 A法に準じて計測した目付を厚みで単位換算し、それぞれ算出した。
(6)積層体aの通気度
積層体aの通気度は、カトーテック株式会社製通気性試験機(形式:KES-F8)により測定した。
(7)吸音特性
JIS A1405-2(垂直入射吸音率)に準じて積層体aの垂直入射吸音率を測定し、測定結果に基づいて吸音特性を評価した。測定は、積層体aの多孔質層側が音源側となるように配置して行った。周波数と垂直入射吸音率の関係を図1に示す。
(実施例2)
実施例2では、上記実施例1と同様、基材の一方面側に、湿式凝固法により多孔質層を形成し、該基材の他方面側に、通気層を形成した。実施例2では、基材としてポリエステル100%不織布を用いた。基材の通気度は、78.1cm3/cm2・secであった。
基材上に上記実施例1で調製したポリウレタン溶液をヒラノテクシード社製のコンマコーター(登録商標)を用いてWETコート量が1300g/m2となるよう流延し、その後、ポリウレタン溶液でコートした基材を、25℃のジメチルホルムアミド10%水溶液中に約360秒間浸漬し、基材に付着させたポリウレタン溶液からジメチルホルムアミドを除去しつつ、ポリウレタンを凝固させた。次いで、40℃の温水中に20分間浸漬した後、圧カ0.4MPaのマングルで絞り、オーブンにて140℃で乾燥した。その結果、基材と多孔質層が積層している構造体が得られた。
次に、上記構造体の多孔質層表面に、上記実施例1で調製したエッチング液を、グラビアコーターを用いて塗工した後、オーブンにて140℃で乾燥し、多孔質層の表面にエッチングにより柄を形成した。柄は皮革調毛穴柄とした。これにより、多孔質層の表面に皮革調の意匠を有しながら、溶解した部分が表面開口した柄付き構造体を得た。
次に、上記柄付き構造体における多孔質層を形成した側とは反対側の基材表面に、通気層として厚みが10mmのポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材(クラボウ株式会社製の「クララフォーム」)をフレームラミネート加工により貼り合せ、基材の一方面側に多孔質層を有し、他方面側に通気層を有する積層体bを製造した。上記実施例1における積層体aの代わりに積層体bを用い、上記実施例1と同じ手順で各種物性を評価した。結果を表1に示す。なお、吸音特性は、積層体bの多孔質層側が音源側となるように配置して垂直入射吸音率を測定し、評価した。
(比較例1)
比較例1では、基材の両面に、湿式凝固法により多孔質層を形成して積層体cを製造した。即ち、上記実施例1において、上記柄付き構造体における多孔質層を形成した側とは反対側の基材表面に、上記実施例1で調製したポリウレタン溶液を、ワイヤーバーを用いてWETコート量が1100g/m2となるよう流延し、その後、ポリウレタン溶液付き基材を、25℃のジメチルホルムアミド10%水溶液中に約400秒間浸漬し、基材に付着させたポリウレタン溶液からジメチルホルムアミドを除去しつつ、ポリウレタンを凝固させた。次いで、40℃の温水中に20分間浸漬した後、圧カ0.4MPaのマングルで絞り、オーブンにて140℃で乾燥した。その結果、基材の両面に多孔質層を有する積層体cが得られた。上記実施例1における積層体aの代わりに積層体cを用い、上記実施例1と同じ手順で各種物性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
比較例2では、基材の両面に、通気層を形成して積層体dを製造した。比較例2では、基材としてポリエステル100%トリコットを用いた。基材表面に、通気層として厚みが10mmのポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材(クラボウ株式会社製の「クララフォーム」)をフレームラミネート加工により貼り合せ、基材とポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材を積層させた構造体を製造した。次に、上記構造体におけるポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材を積層させた側とは反対側の基材表面に、通気層として厚みが10mmのポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材(クラボウ株式会社製の「クララフォーム」)をフレームラミネート加工により貼り合せ、基材の両面に通気層を有する積層体dを製造した。上記実施例1における積層体aの代わりに積層体dを用い、上記実施例1と同じ手順で各種物性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
比較例3では、上記実施例1で製造した積層体aを準備し、積層体aの通気層側が音源側となるように配置して垂直入射吸音率を測定し、吸音特性を評価した。
(比較例4)
比較例4では、基材の一方面側に、通気層を形成して積層体eを製造した。比較例4では、基材としてポリエステル100%トリコットを用いた。基材表面に、厚みが10mmのポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材(クラボウ株式会社製の「クララフォーム」)をフレームラミネート加工により貼り合せ、基材とポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材を積層させて積層体eを製造した。上記実施例1における積層体aの代わりに積層体eを用い、上記実施例1と同じ手順で各種物性を評価した。結果を表1に示す。なお、吸音特性は、積層体eの基材側が音源側となるように配置して垂直入射吸音率を測定し、評価した。
(比較例5)
比較例5では、厚みが10mmのポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材(クラボウ株式会社製の「クララフォーム」)をそのまま試験片として用いた。上記実施例1における積層体aの代わりにポリエーテル系軟質ウレタンフォーム材を用い、上記実施例1と同じ手順で各種物性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2023006757000002
表1および図1から次のように考察できる。実施例1で得られた積層体a、実施例2で得られた積層体bは、いずれも基材の一方面側に、多孔質層の厚み方向に延在する縦長孔を有する多孔質層と、基材の他方面側に、通気層と、を有しており、本発明で規定する要件を満足する吸音材であった。また、多孔質層の表面に、皮革調毛穴柄が形成されており、意匠性も良好であった。図1から明らかなように、実施例1に基づく曲線(プロット点が黒四角である実線)と、実施例2に基づく曲線(プロット点が黒丸である実線)は、いずれも周波数850Hz~3000Hzの領域に最大吸音ピークを有していた。また、周波数850Hz~5000Hzの領域において、垂直入射吸音率は0.2以上であり、吸音特性は良好であった。また、周波数1600Hz~2000Hzの領域においては、垂直入射吸音率は0.8以上であった。また、周波数3000Hz~5000Hzの領域においては、垂直入射吸音率は0.3以上であった。このように低周波音域に高い吸音率を有しながら、広範囲の周波数に吸音特性示すメカニズムは解明されているわけではないが、膜振動による吸音性能を有しながら、多孔質層の表面に存在する孔と内部にある縦長孔内で共鳴現象が起こり、共鳴構造型の吸音性能と多孔体型の吸音性能も組み合わさり、相互的に影響し合いながらこれまでにない優れた吸音特性を示したと考えられる。
実施例1で得られた積層体aについて、走査型電子顕微鏡で、積層体aの厚み方向断面を、倍率150倍で観察して撮影した写真を図2に示し、倍率50倍で観察して撮影した写真を図3に示す。図2は、多孔質層および基材部分を撮影した写真であり、図3は、通気層を撮影した写真である。
比較例1で得られた積層体cは、基材の両面に多孔質層を有しており、本発明で規定する要件を満足しない例である。図1から明らかなように、比較例1に基づく曲線(プロット点が白三角である点線)は、周波数850Hz~3000Hzの領域に最大吸音ピークを有していなかった。また、周波数850Hz~5000Hzにおける垂直入射吸音率は0.2を下回っていた。
比較例2で得られた積層体dは、基材の両面に通気層を有しており、本発明で規定する要件を満足しない例である。図1から明らかなように、比較例2に基づく曲線(プロット点が黒ダイヤである点線)は、周波数850Hz~3000Hzの領域に最大吸音ピークを有していなかった。また、周波数850Hz~5000Hzにおける垂直入射吸音率は0.2を下回っていた。
比較例3は、上記実施例1で製造した本発明で規定する要件を満足する積層体aを用いているが、通気層側を音源側に配置した例である。図1から明らかなように、比較例3に基づく曲線(プロット点が白丸である点線)は、周波数850Hz~3000Hzの領域に最大吸音ピークを有していなかった。また、周波数850Hz~5000Hzにおける垂直入射吸音率は0.2を下回っていた。
比較例4で得られた積層体eは、多孔質層を形成しておらず、本発明で規定する要件を満足しない例である。図1から明らかなように、比較例4に基づく曲線(プロット点が黒三角である点線)は、周波数850Hz~3000Hzの領域に最大吸音ピークを有していなかった。また、周波数850Hz~5000Hzにおける垂直入射吸音率は0.2を下回っていた。
比較例5は、通気層のみを用いた例である。図1から明らかなように、比較例5に基づく曲線(プロット点が白四角である点線)は、周波数850Hz~3000Hzの領域に最大吸音ピークを有していなかった。また、周波数850Hz~5000Hzにおける垂直入射吸音率は0.2を下回っていた。

Claims (11)

  1. 基材と、
    前記基材の一方面側に、厚み方向に延在する縦長孔を有する多孔質層と、
    前記基材の他方面側に、通気層と、を有しており、
    前記多孔質層側が、音源側であることを特徴とする吸音材。
  2. 前記縦長孔は、孔の直径に対する孔の長さの比(孔の長さ/孔の直径)が1.6以上である請求項1に記載の吸音材。
  3. 前記吸音材の厚み方向断面において、前記通気層の平均空孔率は、前記多孔質層の平均空孔率よりも大きいものである請求項1または2に記載の吸音材。
  4. 前記多孔質層は、湿式凝固法で形成されたものである請求項1~3のいずれかに記載の吸音材。
  5. 前記多孔質層の比重は、前記通気層の比重より大きいものである請求項1~4のいずれかに記載の吸音材。
  6. 前記多孔質層の比重は、0.15以上、1.0以下である請求項1~5のいずれかに記載の吸音材。
  7. 前記通気層の比重は、0.01以上、0.1以下である請求項1~6のいずれかに記載の吸音材。
  8. 前記多孔質層の表面には、開口が存在している請求項1~7のいずれかに記載の吸音材。
  9. 前記通気層は、発泡体である請求項1~8のいずれかに記載の吸音材。
  10. JIS A1405-2の試験方法に準じて測定した垂直入射吸音率が、周波数850Hz以上、5000Hz以下において0.3以上である請求項1~9のいずれかに記載の吸音材。
  11. 前記周波数に対する前記垂直入射吸音率を示す曲線が、周波数850Hz以上、3000Hz以下の領域に最大吸音ピークを有する請求項10に記載の吸音材。
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