JP2020050266A - 車両用サスペンションアーム - Google Patents
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Abstract
Description
たとえば、特許文献1の車両用サスペンションアームでは、断面形状が、本体部に沿いつつ、重心(断面中心)を通る軸線に対して線対称となるように設定されている。
そして、このような構成とすることで、サスペンションアームに作用する荷重の分力軸線が、重心に重なる構成となっている。
これにより、剛性に寄与しない無駄な部位を削除し、サスペンションアームの高剛性化と軽量化との両立を実現させている。
また、車両用サスペンションアームに対して、衝突事故等で車幅方向へ過大な荷重が入力された場合には、サスペンションアームが座屈して衝撃を吸収することが求められる。
このため、たとえば、球頭軸がソケットから離間する方向(引き抜き方向)へサスペンションアームが座屈した際に、車輪が車体から脱落してしまうおそれが生じる。
車輪が車体から脱落した場合、牽引による車両の移動が困難になるため、衝突時には車輪が脱落しないことが望まれる。
しかしながら、特許文献1に提案されたサスペンションアームの構成では、座屈する際に、球頭軸とソケットとが近接(圧縮)、離間(引き抜き)のどちらになるか分からないため、衝突時に車輪が脱落する可能性が高いという問題を抱えている。
図1、図2に示すように、本実施形態では、懸架装置SUSを構成するロアアーム1として車両用サスペンションアームが用いられている。
本実施形態の懸架装置SSは、車両の進行方向を変える操舵輪(車輪WH)を車体に対して転舵可能に支持するもので、本実施形態ではストラット式サスペンションが採用されている。
そして、ストラット式サスペンションは、ナックルSS1、ストラット組立体SS2、ロアアーム1(車両用サスペンションアーム)、ボールジョイント20(連結部材)を備えている。
ナックルSS1は、ストラット組立体SS2とロアアーム1とを介して車体に支持されている。そして、ナックルSS1は、ストラット組立体SS2に対して一体に固定されている。また、ナックルSS1は、ボールジョイント20を介して、ロアアーム1に連結されている。
ストラット組立体SS2は、車体とナックルSS1との間に配置されており、車両走行中に路面の凹凸によって上下動する車輪WHから車体へ伝わる振動、衝撃を吸収、緩和する。
ストラット組立体SS2は、スプリングSS3、ショックアブソーバSS4を備えている。
ロアアーム1は、平面視で略L字形状を備え、転舵する車輪WHを避けつつ、ナックルSS1を支持する、いわゆるL形アームである。また、ロアアーム1は、アルミニウム合金等の鋳物材に鍛造加工を施すことによって、断面略H字形状に形成されている(図6参照)。
また、ロアアーム1は、一側から他側に沿って、長手方向に連続する車輪側部分1Aと車体側部分1Bとで構成されている。
つまり、車輪側部分1Aは、ロアアーム1における車輪支持部13から前側車体設置部14までの領域を構成し、車体側部分1Bは、前側車体設置部14から後側車体設置部15までの領域を構成している。
車体側部分1Bは、車輪側部分1Aの湾曲した車体側端部に連結している。
車輪側部分1Aの直線部分と、車体側部分1Bとは、荷重の分力軸線LFに対して斜めに交差するように配置されている。
また、車輪側部分1Aは、車体側部分よりも幅広、且つ薄肉に設定されている。
そして、車輪側部分1Aには、オフセット部16が設定されている。
なお、オフセット部16については、後述する。
そして、荷重の分力軸線LFは、ボールジョイント20(連結部材)とロアアーム1との締結部分の中心と、前側車体設置部14(車体設置部)の中心とを結ぶ直線で示される。
側壁12は、アーム本体11の各幅方向端縁(側縁)に、アーム本体11の板面から車両上方と車両下方に向かって立設されている(図4、図6参照)。そして、アーム本体11と各側壁12とによって、ロアアーム1は、その断面形状が略H字形状に形成されている。
また、アーム本体11から車両上方に立する内側壁12aを上方内側壁12a1、アーム本体11から車両下方に立する内側壁12aを下方内側壁12a2、とそれぞれ称する。
各側壁12は、幅寸法W12、および高さ寸法H12が、部位毎に適宜設定されている。
また、アーム本体11の形状は、運転者による転舵操作(操舵)によって、車輪WHが左右に転舵した際に、車輪側部分1Aの内側縁が、外側縁よりも車輪WHに近接するように、設定されている。
つまり、前側車体設置部14は、荷重の分力軸線LFが車幅方向に対して斜めになる位置に配置されている。
また、前側カラーには、車両前後方向に沿って車体から延びる前側支持軸が嵌挿される。
そして、前側車体設置部14が前側カラーを介して前側支持軸の周りを回動自在に車体に支持されることで、車輪WHは、上下動が許容されつつ、車体に支持される。
後側車体設置部15は、車両上下方向に面して開口する円筒状の部材で構成されており、円筒状の筒内には、後側ブッシュが配置される。
そして、後側車体設置部15が後側ブッシュを介して車体に支持されることで、車輪WHは車両走行中に発生する車両前後方向、および車幅方向への振動が吸収されつつ、車体に支持される。
ボールジョイント20は、ナックルSS1とロアアーム1とを連結する自在継手であり、ボール軸21、ソケット22、ブーツ23を備えている。
ボール軸21は、軸部24、球頭部25を備えている。
軸部24は、雄ネジ24aをナックルSS1を貫通させつつ、フランジ24bをナックルSS1に突き当てた状態で、雄ネジ24aにナットNTを螺着することで、ナックルSS1に締結されている。
球頭部25は、その中心が軸部24の中心軸AX24上に位置する球形状を備えている。
ソケット22は、ロアアーム1を構成する車輪支持部13の上面側に重ねて配置されている。また、ソケット22は、3つの貫通孔22bを備え、車輪支持部13と3本のボルトBTによって締結されている。
ブーツ23は、軸部24とソケット22との挿嵌部分を覆った状態で、その一端側がフランジ24bに嵌合、密着し、他端側がソケット22に嵌合、密着している。そして、ブーツ23の筒内部には、グリス等の潤滑剤が充填、密封されている。
これによって、ボール軸21とソケット22とは、互いに揺動可能、且つ軸周りに回転可能に連結されている。
本実施形態におけるオフセット部16とは、車輪支持部13と前側車体設置部14(車体設置部)とを結ぶ直線(荷重の分力軸線LF)よりも重心C16(断面中心)が上方にオフセットした部位を指している。
なお、重心C16とは、任意の断面における断面積と断面1次モーメントとから求められる、断面上の点である。
図6(a)は、オフセット部16中央の外側に位置するオフセット部16の断面図、(b)、(c)は、オフセット部16中央付近における断面図である。また、図6(d)は、オフセット部16中央の外側に位置するオフセット部16の断面図、(e)は、車輪側部分1Aにおけるオフセット部16以外の部位の断面図である。
オフセット部16では、薄板状のアーム本体11は、長手方向の両端部分の高さが低く、オフセット部16の中央部分が頂部となるように、車両上方に向かって凸の山形(山折り)になるように設定されている。
たとえば、内側壁12aでは、オフセットした方向と反対の方向に向かって立設する側壁である下方内側壁12a2(逆側壁)の幅寸法W12a2が、オフセット部16以外の部位よりも大きくなるように設定されている。
また、オフセットした方向に向かって立設する側壁である上方内側壁12a1(順側壁)の高さ寸法H12a1が、車輪側部分1Aにおけるオフセット部16以外の部位(たとえば、図6(e))よりも低くなるように設定されている。
さらに、上方外側壁12b1の高さ寸法H12b1が、オフセット部16以外の部位よりも高く設定されている。
加えて、下方外側壁12b2の高さ寸法H12b2が、オフセット部16以外の部位よりも低く設定されている。
これによって、上下方向のたわみ剛性を低下させることなく、車両上方へのより大きなオフセット量D16を設定することができる。
このため、ロアアーム1の各断面について、車幅方向外側から内側への過大な荷重が車輪WHに入力された際には、荷重の分力軸線LFから重心C16に向かって前斜め上方向へ応力が作用する(図6参照)。
このため、車幅方向外側から内側への過大な荷重が車輪WHに入力された際には、車輪側部分1Aは車両前方へ座屈するよりも先に、車両上方へ山形(山折り)に座屈する。
つまり、車両上方へのオフセット量D16が大きくなるほど、車幅方向外側から内側への過大な荷重が車輪WHに入力された際、オフセット部16での山形(山折り)の座屈がより確実になる。
図5では、過大な荷重によって、車輪側部分1Aの座屈する様子が点線を使って模式的に表わされている。
車幅方向外側から内側へ荷重が入力された場合、車輪WH(ナックルSS1)がP1からP2へ移動する。
そして、車輪WHの移動に伴い、車輪側部分1Aは、状態S1からオフセット部16中央が上昇しつつ撓み、状態S2となる。
そしてさらに、荷重が入力されると、オフセット部16が弾性限界を超えて座屈する。
本実施形態のロアアーム1(車両用サスペンションアーム)には、重心C16(断面中心)が荷重の分力軸線LFからオフセットしつつ、荷重の分力軸線LFよりも上方に位置するオフセット部16が設定されている。
このため、車幅方向外側から内側への過大な荷重が車輪WHに入力された際には、ロアアーム1がオフセット部16で山形(山折り)に座屈する。
これによって、過大な荷重によるボール軸21とソケット22との分離が抑制され、車体からの車輪WHの脱落が抑制される。さらにこのことから、側面から衝突された場合であっても、車輪WHを使用し、車両を牽引、移動させることができる。
これによって、ボールジョイント20の大容量化に伴う重量増を抑止することができる。
つまり、車幅方向外側から内側に向かって荷重を受けた際に、曲げ応力がかかりやすい領域に、オフセット部16が設定されている。
これによって、車幅方向外側から内側に向かって荷重を受けた際に、オフセット部16でロアアーム1をより確実に意図したように座屈させることができる。
つまり、車幅方向外側から内側に向かって荷重を受けた際に、曲げ応力がかかりやすい部位が、より深く窪むようにオフセット部16は設定されている。
これによって、車幅方向外側から内側に向かって荷重を受けた際に、オフセット部16でロアアーム1をさらに確実に意図したように座屈させることができる。
また、ロアアーム1は、車輪側部分1Aの内側縁に、オフセットした方向(車両上方)と反対の方向(車両下方)に向かって立設する下方内側壁12a2(逆側壁)が形成されている。
そして、オフセット部16の上方内側壁12a1の高さ寸法H12a1は、車輪側部分1Aにおけるオフセット部16以外の部位よりも低くなるように設定されている。
そして、上方内側壁12a1の高さ寸法H12a1を小さくできることで、オフセット部16での座屈がより確実になる上に、車輪WHの転舵動作を妨げることがない。
たとえば、鋼板のような板状の金属材にプレス加工を施し、アーム本体11、側壁12を形成する製造方法を用いることが可能である。
つまり、オフセット部16の設定が可能な製造方法、およびロアアーム1(車両用サスペンションアーム)の形態であれば、採用が可能であり、本実施形態と同様の作用効果が得られる。
たとえば、ダブルウィッシュボーン式サスペンションを構成するアッパーアーム(図示せず)に採用することが可能である。
アッパーアームにオフセット部16を設定する場合には、重心C16(断面中心)が荷重の分力軸線LFよりも下方に位置するように各部を設定する。
つまり、適用する部材に応じて、座屈する方向を適宜設定することができ、同様の作用効果が得られる。
たとえば、本実施形態の車輪側部分1A、および前側車体設置部14に相当する部材のみで、車体側部分1B、後側車体設置部15を省略し、直線的な形状のロアアームを構成することも可能である。
また、車輪側部分に相当する部材が略V字形状を備えた形状のロアアームを構成することも可能である。
このような構成の場合には、ロアアームが車輪を1箇所で支持し、車体に2箇所で支持される形態となる。
1A 車輪側部分
12a1 上方内側壁(順側壁)
H12a1 上方内側壁(順側壁)の高さ寸法
12a2 下方内側壁(逆側壁)
W12a2 下方内側壁(逆側壁)の幅寸法
13 車輪支持部
14 前側車体設置部(車体設置部)
16 オフセット部
D16 オフセット量
C16 重心
20 ボールジョイント(連結部材)
WH 車輪
LF 分力軸線(ボールジョイント(連結部材)と前側車体設置部(車体設置部)とを結ぶ直線)
Claims (4)
- 連結部材を介して車輪を支持する車輪支持部と、
車体に設置される車体設置部と、
該車輪支持部と該車体設置部とを連結する車輪側部分と、
を備える車両用サスペンションアームであって、
該車両用サスペンションアームの該車輪側部分は、オフセット部を備え、
該オフセット部は、車両側方から車輪に荷重が入力された際に車輪から車体へ作用する分力を示す荷重の軸線よりも、重心が上方、または下方にオフセットした断面形状を有する
ことを特徴とする車両用サスペンションアーム。 - 請求項1に記載の車両用サスペンションアームにおいて、
前記オフセット部は、
前記連結部材と前記車体設置部とから略等距離に位置する前記車輪側部分上の領域に設定された
ことを特徴とする車両用サスペンションアーム。 - 請求項1、または請求項2に記載の車両用サスペンションアームにおいて、
前記オフセット部のオフセット量は、
前記車輪支持部、または前記車体設置部から前記オフセット部の中央に近づくに従って大きくなるように設定された
ことを特徴とする車両用サスペンションアーム。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用サスペンションアームにおいて、
前記車輪側部分には、
運転者による操舵によって前記車輪が左右に転舵した際に、より該車輪に近接する側の側縁に、
オフセットした方向と反対の方向に向かって立設する逆側壁と、
オフセットした方向に向かって立設する順側壁と、
を備え、
該オフセット部の該順側壁の高さ寸法が、該オフセット部では該オフセット部以外の部位よりも低くなるように設定された
ことを特徴とする車両用サスペンションアーム。
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